JP6000725B2 - 筆記体と摺動部材との連結構造 - Google Patents

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本発明は、樹脂製の軸部材を有した筆記体を、前方の先窄み部に先端開口部を有した軸筒内へ収容し、前記軸部の後端に連結した摺動部材を前後動させることにより、筆記体の筆記先端を軸筒の先端開口部から出没させる繰出式多芯筆記具における筆記体と摺動部材との連結構造に関する。
従来より、筆記具の軸筒内に複数の筆記体を収容し、特許文献1に記載されているように、軸筒の側面より突出させた摺動部材の膨出部を直接前後動させたり、特許文献2に記載されているように、後軸を前軸に対して回転させ、軸筒内の回転カムを回動して摺動部材を前後動させることにより、筆記体の筆記先端が軸筒の先端開口部より出没する構造の繰出式多芯筆記具はよく知られている。
このような繰出式多芯筆記具では、複数の筆記体に対応する複数の摺動部材が軸筒の中心に対して放射状に配列されており、筆記先端が突出する先端開口部が軸筒の中心に位置していることから、筆記体の筆記先端を軸筒の先端開口部から突出させる際には、軸部材の中間部を撓ませるようにするか、摺動部材に対して軸部材を傾斜させる構造にする必要がある。特に筆記体がシャープペンシル体である場合には、軸部材の内部に収容してある芯が折れないようにするために、摺動部材に対して軸部材が全体的に傾斜する構造が必要となる。この場合の筆記体の軸部材と摺動部材との連結構造は、軸部材が金属パイプで形成されているものでは、金属パイプの側方から軸部材に挿通させた摺動部材の先端部をカシメて、カシメ部を基点に筆記体が摺動部材に対して揺動可能となるよう連接させた構造が広く採用されている。また、軸部材が樹脂パイプで形成されているものでは、摺動部材の先端部に側方へ突出する突起部を形成し、軸部材の内面に突起部を嵌着させて、突起部を基点に筆記体が摺動部材に対して揺動可能となるよう連接させた構造が広く採用されている。
ところで、金属パイプで軸部材を構成したものでは、材料費やカシメ加工費などのコスト面において、樹脂パイプで軸パイプを構成したものに比べて劣り、また樹脂パイプで軸部材を構成したものでは、軸部材の曲げ方向に対する強度面で金属パイプより劣ることになる。そこで軸部材を、高剛性ポリプロピレンのように硬く曲がりにくい樹脂材で形成することが求められたが、前記のように硬い樹脂に対して、一般的な樹脂で成形した摺動部材の先端部に形成した突起部を嵌着させる場合、軸部材の内面に対して摺動部材の突起部が十分な嵌着力で連結されずに、摺動部材から軸部材が外れ易くなるといった問題が生じてしまった。
特開2007−38635号公報 特開2002−144784号公報
本発明では、摺動部材に対して筆記体が揺動できるように、硬い樹脂で成形した筆記体の軸部材に対して摺動部材を簡単に嵌着させることができ、且つ外れ難い筆記体と摺動部材との連結構造を得る。
本発明は、
「1.樹脂材からなる筒状の軸部材を後方に有した筆記体を、前方の先窄み部に先端開口部を有した軸筒内へ収容し、軸部材の後方に連結された射出成形により形成した樹脂製の摺動部材を前後動させることにより、筆記体の筆記先端を軸筒の先端開口部から出没させる繰出式多芯筆記具における筆記体と摺動部材との連結構造であって、摺動部材を分割金型により射出成形し、且つ摺動部材の前方部に軸部材の内径より細い延出部を形成し、延出部の両側面に、軸心に沿った方向と軸心に向かう方向とに直交する方向へ突出させた突起部を形成すると共に、突起部の軸心に沿った方向に分割金型によるパーティションラインでエッジ部を構成した段部を形成することにより、摺動部材の延出部を軸部材に挿通させた際に、摺動部材の突起部に形成したエッジ部を軸部材の内面に食い込ませ、且つ突起部の段部を基点に軸部材が摺動部材に対して揺動可能となるよう連接させたことを特徴とする筆記体と摺動部材との連結構造。
2.摺動部材の段部が延出部の軸心に向かう方向における巾の中心に位置することを特徴とする1項に記載の筆記体と摺動部材との連結構造。」である。
本発明における摺動部材に形成する突起部は、例えば筆記具が繰出式多芯筆記具である場合には、摺動部材に形成した軸筒の側面から突出する膨出部を正面視したときに、摺動部材の前方に形成した延出部の両側へ突出した状態となり、軸部材の内面に当接している突起部を基点に、軸部材と摺動部材とが軸筒の軸径方向に揺動できる構造とする。また、軸部材を形成する樹脂材は、高剛性ポリプロピレンのように曲げ弾性率が2200MPa以上である硬い樹脂で筒状に成形することにより、摺動部材が前進して筆記体の筆記先端が軸筒の先端開口部から突出する際においても、軸部材が撓み難くなり、筆記体がシャープペンシル体であった場合には、軸部材内に収容した芯が折れ難い構造となる。
尚、本発明では、突起部の軸心に沿った方向に分割金型によるパーティションラインでエッジ部を構成した段部を形成するので、加工上の丸みが生じてしまう内面を削って形成する金型とは異なりその角を鋭く形成することができ、鋭くエッジが形成された段部によって突起部を硬い樹脂からなる軸部材の内面に対しても食い込ますことができ、筆記体と摺動部材とを外れ難くさせることができる。また、摺動部材の段部を、延出部の軸心に向かう方向における巾の中心に位置させることにより、軸部材の内面に当接して揺動の基点となる突起部の段部が、軸部材の内部において中心に位置するので、軸部材と摺動部材とを軸筒の軸径方向に対して巾広く揺動させることができるものとなる。
本発明は前述した構造なので、摺動部材に対して筆記体が揺動できるように、硬い樹脂で成形した筆記体の軸部材に対して摺動部材を簡単に嵌着させることができ、且つ外れ難い筆記体と摺動部材との連結構造を得ることができた。
本実施例の繰出式多芯筆記具であり、シャープペンシル体とボールペン体とを取り外した状態の斜視図である。 本実施例の繰出式多芯筆記具の断面図である。 ボールペン体を操作した状態の断面図である。 シャープペンシル体を操作した状態の斜視図である。 シャープペンシル体を操作した状態の断面図である。 シャープペンシル体の軸部材と摺動部材とを分解した状態を示す要部姿図である。 図6の軸部材と摺動部材とを連結させた状態を示す要部姿図である。 図7のA−A線断面図である。 摺動部材に対して軸部材を揺動させた状態を示す図である。 軸筒に筆記体を装着する状態を示す図である。 シャープペンシル体に芯を補充する状態を示す図である。 摺動部材を射出成形している状態を示す要部断面図である。
以下、図面を参照して本発明を採用した繰出式多芯筆記具の実施例について説明を行う。尚、図面中の同じ部材、同じ部品については同じ番号を付してある。また、本実施例の説明においては図面の下方を前方と表現し反対側を後方と表現し、軸部材および摺動部材の傾斜方向ならびに前後方向に直交する方向を側方と表現する。
図1,図2に示すように繰出式多芯筆記具1は、前軸2の雌螺子部2aと後軸3の雄螺子部3aとを螺合して構成した軸筒4の後方に、軸芯に沿った方向に開口した3つの切欠窓3b、3c、3dを形成してあり、軸筒4内に収容されるシャープペンシル体10,ボールペン体20,ボールペン体30の後方部に連結して一体とした摺動部材11,21,31を、前記切欠窓3b,3c,3dへ摺動可能に配設する構造である。尚、図2では、前記シャープペンシル体10と、ボールペン体20とを見せた断面としてあり、ボールペン体30は省略した図としてある。
シャープペンシル体10は、
曲げ弾性率が2300MPaである高剛性ポリプロピレン(日本ポリプロ社製ノバテックEA9FT)からなる軸部材10aを、後軸3内のコイルスプリング5aおよび後軸4内に装着した隔壁部材6の底面61に形成した貫通孔6aに挿通させて配設してある。また、ボールペン体20は、一般的な曲げ弾性率が1800MPaであるポリプロピレンからなる軸部材20aを、後軸3内のコイルスプリング5bおよび後軸3内に装着した隔壁部材6の底面61に形成した貫通孔6bに挿通させて配設してある。本実施例では、コイルスプリング5a,5bを、隔壁部材6の底面61および摺動部材11,21の支持部11a,21aに当接させ、シャープペンシル体10およびボールペン体20を軸筒4の後方へ弾発する構造としてある。シャープペンシル体10の軸部材10aの前方には芯繰出機構部10bを設けてあり、ボールペン体20の軸部材20aの前方にはボールペンチップ20bを設けてある。
図1示すように本実施例における軸筒4の後方部は、後軸3の後方部にクリップ7の基部7aを延設してあり、クリップ7の基部7aの上部に、蓋体8の蓋本体部8aに延設した脚部8bを回動可能なヒンジ構造として保持させてある。尚、蓋本体部8aには二つの掛止孔8cを設けてあり、蓋本体部8aを閉じた状態においては、後軸3に形成した二つの掛止爪3eを蓋本体部8aの掛止孔8cに掛止させて、図2に示す軸筒4内のコイルスプリング5a,5bに弾発されたシャープペンシル体10と、ボールペン体20とが飛び出さないように蓋本体部8aで押さえてある。
次に、本実施例のスライド繰出式多芯筆記具における繰出操作について説明を行う。図3に示すように、摺動部材21の突部21bを前進させたボールペン体20は、軸筒4の前軸2に設けた先端開口部2bから、ボールペンチップ20bを突出させている。さらに詳述すると、ボールペン体20のボールペンチップ20bを前軸2の先端開口部2bから突出させた状態においては、摺動部材21の後方内側に形成した係止突起21cが、後軸3の内面に形成した係止受部3fに係止して、ボールペンチップ20bが軸筒4の先端開口部2bから突出した状態を維持できる。尚、ボールペン体20の軸部材20aは可撓性を有する樹脂パイプで形成してあり、また摺動部材21の圧入部21eがボールペン体20の軸部材20aに隙間なく密嵌されていることから、ボールペンチップ20bが軸筒4の先端開口部2b側に向かうときには、図3に示すように、軸部材20aが撓むことにより摺動部材21に対して軸部材20aが傾斜する構造である。
また図3の状態から、摺動部材11の突部11bを前方へスライドさせることで、摺動部材11に形成した係止解除突起11dにより、後軸3の係止受部3fに係止してある摺動部材21の係止突起21cを解除して、ボールペン体20のボールペンチップ20bを軸筒4内に没入させ、さらに摺動部材11を前進させることにより、摺動部材11の後端部に形成した係止突起11cを後軸3の係止受部3fに係止させ、図4,図5に示すように、シャープペンシル体10の先端部10cを軸筒4の先端開口部2bから突出した状態で維持させることができる。このような出没操作は、後軸3の切欠窓3b,3cから突出させた各摺動部材の突部をスライドさせることによって繰り返し行うことができる。尚、本実施例のシャープペンシル体10の芯繰出機構部10bは、摺動部材11のノック操作により、軸部材10aを介して、芯繰出機構部10bの前方を前軸2の内面に当接させて、先端部10cから芯(図示せず)を繰り出す一般的なシャープペンシル機構であるため説明は省略する。
図6は、シャープペンシル体の軸部材と摺動部材とを分解した状態を示す要部姿図で、図7は、軸部材と摺動部材とを嵌着させた状態を示す要部姿図である。摺動部材11の前方には、軸部材10aの外径D1より太く形成した円柱部11eを形成してあり、円柱部11eの前方には軸部材10aの内径D2より細く形成した延出部11fを形成してある。また、延出部11fの両側面には、軸心に沿った方向Yと軸心に向かう方向Zとに直交する方向Xへ突出させた突起部11gを形成してあり、突起部11gは、延出部11fの側面より円弧状に突出させた小径部11hと、延出部11fの側面より円弧状に突出させた大径部11iと、小径部11hと大径部11iとの境界に形成される段部11jとで構成してある。尚、段部11jは、延出部11fの軸心に向かう方向における巾(図5におけるZ方向の巾)の中心に形成してある。
尚、本実施例の突起部11gは、小径部11hおよび大径部11iの外径を軸部材10aの内径より大きく形成してあり、段部11jは、摺動部材11を射出成形する分割金型のパーティションラインが段部11jの位置と一致するようにしてあり、段部11jに鋭いエッジ部11kが形成されるようにしてある。したがって、摺動部材11の延出部11fを軸部材10aの開口部10dに挿通させた際には、硬い高剛性ポリプロピレンで成形した軸部材10aであっても、段部11jのエッジ11kが内面10eに食い込み、図8に示すように軸部材10aと摺動部材11とを容易に嵌着させることができた。また、エッジ11kが軸部材10aの内面10eに食い込んでいることから、摺動部材11と軸部材10aとが簡単に外れることはなかった。
また本実施例の摺動部材11は、前述の通り、段部11jが延出部11fの軸心に向かう方向(図6におけるZ方向)における巾の中心に位置するので、図8に示すように、軸部材10の中心位置に突起部11gの最も突出した段部11jが位置して、図9に示したように、軸部材10と摺動部材11とを、軸筒の軸径方向(Z方向)に対して巾広く揺動させることができるものとなった。尚、図9の状態は、図5に示したように、摺動部材11を前進させてシャープペンシル体10の先端部10cを軸筒4の前軸2に設けた先端開口部2bから突出させた使用状態のときであるが、この状態で軸部材10aは曲がることなく傾斜してシャープペンシル体10の先端部10cを突出させることができ、また摺動部材11の突部11bをノック操作して、芯繰出機構部10bにて芯を繰り出す際においても、軸部材10aが曲がることなく芯を繰り出すことができ、軸部材10の内部に収容した芯が折れることはなかった。
図9では、摺動部材11に対して軸部材10aが軸心方向Z1方向に傾斜した状態を示しているが、軸心反対方向Z2に対しても傾斜することが可能であり、それにより図10に示すように、軸筒4からシャープペンシル体10を着脱する際に、摺動部材11を軸部材10aに対して軸心反対方向Z2へ傾斜させて、軸部材10aを曲げることなく着脱させることができた。したがって軸部材10aの内部に芯(図示せず)を収容していても、軸部材10aを曲げないでシャープペンシル体10の着脱が行えることから、芯が折れることはなかった。また、シャープペンシル体10の芯繰出機構部10bは、軸部材10aに対して後部を挿着させており、図11に示すように、繰出機構部10bを軸部材10aから外して替え芯5を軸部材10a内に補充することができる。
尚、図12は、摺動部材11を分割金型M,Nで射出成形している状態を示しており、図12Aは樹脂を流し込んでいる状態の摺動部材11と分割金型M,Nとの関係を示し、図12Bは成形された摺動部材11と分割金型M,Nとの関係を示している。本実施例の摺動部材11は、図12Aに示すように、分割金型M,NのパーティションラインPLの位置で、摺動部材11の突起部11gのエッジ部11kが形成されるようにしてあり、エッジ部11kを丸みのない鋭く形成することができた。
本発明は、芯に色が着いており強度が弱く折れ易い色芯を使用する場合に特に好適である。
1…繰出式多芯筆記具、2…前軸、2a…雌螺子部、2b…先端開口部、
3…後軸、3a…雄螺子部、3b、3c、3d…切欠窓、
3e…掛止爪、3f…係止受部、
4…軸筒、
5a…コイルスプリング、5b…コイルスプリング、
6…隔壁部材、61…底面、6a…貫通孔、6b…貫通孔、
7…クリップ、7a…基部、
8…蓋体、8a…蓋本体部、8b…脚部、8c…の掛止孔、
10…シャープペンシル体、10a…軸部材、10b…芯繰出機構部、
10c…先端部、10d…開口部、10e…内面、
11…摺動部材、11a…支持部、11b…突部、11c…係止突起、
11d…係止解除突起、11e…円柱部、11f…延出部、11g…突起部、
11h…小径部、11i…大径部、11j…段部、11k…エッジ部、
20…ボールペン体、20a…軸部材、20b…ボールペンチップ、
21…摺動部材、21a…支持部、21b…突部、21c…係止突起、
21d…係止解除突起、21e…圧入部、
30…ボールペン体、31…摺動部材、
M,N…分割金型、PL…パーティションライン。

Claims (2)

  1. 樹脂材からなる筒状の軸部材を後方に有した筆記体を、前方の先窄み部に先端開口部を有した軸筒内へ収容し、軸部材の後方に連結された射出成形により形成した樹脂製の摺動部材を前後動させることにより、筆記体の筆記先端を軸筒の先端開口部から出没させる繰出式多芯筆記具における筆記体と摺動部材との連結構造であって、摺動部材を分割金型により射出成形し、且つ摺動部材の前方部に軸部材の内径より細い延出部を形成し、延出部の両側面に、軸心に沿った方向と軸心に向かう方向とに直交する方向へ突出させた突起部を形成すると共に、突起部の軸心に沿った方向に分割金型によるパーティションラインでエッジ部を構成した段部を形成することにより、摺動部材の延出部を軸部材に挿通させた際に、摺動部材の突起部に形成したエッジ部を軸部材の内面に食い込ませ、且つ突起部の段部を基点に軸部材が摺動部材に対して揺動可能となるよう連接させたことを特徴とする筆記体と摺動部材との連結構造。
  2. 摺動部材の段部が延出部の軸心に向かう方向における巾の中心に位置することを特徴とする請求項1に記載の筆記体と摺動部材との連結構造。
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