JP5999104B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、空気入りタイヤに関する。
更に詳しくは、カーカス層の内側にタイゴム層を介して、熱可塑性樹脂を主成分とするフィルムからなるインナーライナーをタイヤに内貼りし、該フィルムのタイヤ周方向端部がタイヤ幅方向にわたってタイゴムを介して重なっている(オーバーラップしている)オーバーラップスプライス部を有してなる空気入りタイヤにおいて、該空気入りタイヤの走行を開始した後、オーバーラップスプライスされたインナーライナーの該スプライス部分付近においてクラックが発生することがなく、耐久性に優れた空気入りタイヤに関する。
近年、熱可塑性樹脂を主成分とするフィルムを空気入りタイヤのインナーライナーに使用するという提案がされ、検討されている(特許文献1)。
この熱可塑性樹脂を主成分とするフィルムを、実際に空気入りタイヤのインナーライナーに使用するにあたっては、通常、熱可塑性樹脂を主成分とするフィルムと該フィルムと加硫接着されるタイゴムシートを積層した積層体シートを、タイヤ成形ドラムに巻き付けてラップスプライスして、タイヤの加硫成形工程に供するという製造手法がとられる。
しかし、ロール状の巻き体をなして巻かれた熱可塑性樹脂を主成分とするフィルムとタイゴム層とからなる積層体シートを、ロール状巻き体から所要の長さ分を引き出して切断し、タイヤ成形ドラムに巻き付けて該ドラム上等においてオーバーラップスプライスし、更に加硫成形をしてタイヤを製造したとき、タイヤ走行開始後にインナーライナーを構成している熱可塑性樹脂を主成分とするフィルムと、該フィルムと加硫接着されたタイゴム層とが剥離してしまう場合があった。
これを図で説明すると、図4(a)に示したように、熱可塑性樹脂を主成分とするフィルム2とタイゴム層3とからなる積層体シート1は、刃物などで所要サイズ(長さ)に切断されて、タイヤ成形ドラム上にて、その両端部にスプライス部Sを設けて環状を成すようにして重ね合わされ(オーバーラップされ)オーバーラップスプライスされる。なお、該積層体シート1は、1枚の使用のときは、その両端部がオーバーラップスプライスされて環状を成すように形成され、あるいは複数枚の使用のときは、それら相互の端部同士がオーバーラップスプライスされて繋ぎ合わされ全体で一つの環状を成すように形成される場合、などがある。
そして、更にタイヤの製造に必要なパーツ材(図示せず)が巻かれ、ブラダーで加硫成形される。加硫成形後においては、図4(b)にモデル図で示したように、熱可塑性樹脂を主体としたフィルム2がインナーライナー層10を成し、オーバーラップスプライス部付近では、熱可塑性樹脂を主成分とするフィルム2が、内腔側に露出している部分と、タイヤ外周側でタイゴム層3の中に埋設している部分とで、タイゴム3′を介して重なっていて該オーバーラップスプライス部が形成されている。図4上、上の方がタイヤ内腔側であり、下の方がタイヤ外周側であり、X−X方向がタイヤ周方向である。
すなわち、該フィルム2のタイヤ周方向端部がタイヤ幅方向にわたってタイゴム3′を介して重なっているスプライス部を有し、該スプライス部はタイヤ幅方向E−Eにわたって存在して空気入りタイヤTが形成されている(図5)。
そして、上述した熱可塑性樹脂を主成分とするフィルム2と、該フィルム2と加硫接着されたタイゴム層3とが剥離してしまう現象は、特に、図4(b)で示した熱可塑性樹脂を主成分とするフィルム2が露出していてかつその先端部付近4などにおいて発生し、まずクラックが発生する。
日本国特開2009−241855号公報
本発明者らは、上述したような従来方法によるものの不都合点であるインナーライナー10を成している熱可塑性樹脂を主成分とするフィルム2と、該熱可塑性樹脂を主成分とするフィルム2と加硫接着されたタイゴム層3とが相互間で剥離する原因について種々検討した結果、以下の知見を得た。
すなわち、上述の積層体シート1を、通常の方法で準備した場合、図4(a)、(b)に示した積層体シート1の両端のスプライス部S付近では、上下に存在する剛性の大きな熱可塑性樹脂を主成分とするフィルム2に上下を挟まれたタイゴム3′に大きな応力が発生し、そのため、熱可塑性樹脂を主成分とするフィルム2の先端部付近4などにおいてクラックの発生が生ずると考えられるのであった。
本発明の目的は、上述したような点に鑑み、カーカス層の内側にタイゴム層を介して、熱可塑性樹脂を主成分とするフィルムからなるインナーライナーをタイヤに内貼りし、該フィルムのタイヤ周方向端部がタイヤ幅方向にわたってタイゴムを介して重なっているオーバーラップスプライス部を有してなる空気入りタイヤにおいて、空気入りタイヤの走行を開始した後、インナーライナー層のオーバーラップスプライス部分付近においてクラックを発生することがなく、耐久性に優れたタイヤを提供することにある。
上述した目的を達成する本発明の空気入りタイヤは、以下の(1)の構成を有する。
(1)カーカス層の内側にタイゴムシートを介して、熱可塑性樹脂を主成分とするフィルムからなるインナーライナーをタイヤに内貼りし、前記フィルムのタイヤ周方向端部がタイヤ幅方向にわたってタイゴムを介して重なっているオーバーラップスプライス部を有してなる空気入りタイヤにおいて、
(a)該オーバーラップスプライス部においてタイヤ内腔側に位置するフィルムのタイヤ内腔側の面は、該オーバーラップスプライス部での該フィルム厚さが該オーバーラップスプライス部以外の該フィルム厚さよりも薄くなるように窪みを形成されていること、
(b)該オーバーラップスプライス部においてタイヤ内腔側に位置するフィルムのタイヤ外周側の面は、該オーバーラップスプライス部と該オーバーラップスプライス部以外の部分間とで平坦に形成されていること、
(c)該オーバーラップスプライス部においてタイヤ外周側に位置するフィルムのタイヤ内腔側の面およびタイヤ外周側の面は、該オーバーラップスプライス部と該オーバーラップスプライス部以外の部分間とで平坦に形成されていること、
の3要件を満足することを特徴とする空気入りタイヤ。
かかる本発明の空気入りタイヤにおいて、更に、以下の(2)〜(5)のいずれかの構成からなることが好ましい。
(2)前記(a)のオーバーラップスプライス部においてタイヤ内腔側に位置するフィルムのタイヤ内腔側の面に形成されている窪みは、該オーバーラップスプライス部での該フィルムの厚さが、オーバーラップスプライス部以外の該フィルムの厚さの20〜80%となるように形成されていることを特徴とする上記(1)記載の空気入りタイヤ。
(3)前記オーバーラップスプライス部の周方向のオーバーラップ長さが3〜30mmであることを特徴とする上記(1)または(2)記載の空気入りタイヤ。
(4)前記オーバーラップスプライス部で、タイヤ内腔側に位置するフィルムのタイヤ内腔側の面上において前記窪みが形成されている部分の面積が、オーバーラップスプライス部の面積に対して10%以上100%以下であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
(5)前記オーバーラップスプライス部で、タイヤ内腔側に位置するフィルムのタイヤ内腔側の面上において前記窪みが形成されている部分が、タイヤ子午線断面上で、少なくともベルト端部からビードフィラー部の外周側端部の間に存在していることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
(6)前記窪みの形成が、レーザー光を使用した加工によるものであることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
請求項1にかかる本発明によれば、タイヤ走行開始後に、インナーライナーを成している熱可塑性樹脂を主成分とするフィルムと、該熱可塑性樹脂を主成分とするフィルムと加硫接着されたタイゴムシートにクラックが発生することがなく、優れた走行耐久性を有する空気入りタイヤが提供される。
請求項2〜請求項6のいずれかにかかる本発明の空気入りタイヤによれば、上記請求項1にかかる本発明の効果を有するとともに、その効果をより確実にかつより効果的に得ることができる。
図1(a)、図1(b)は、本発明の空気入りタイヤの1実施例をモデル的に示したものであり、図1(a)はオーバーラップスプライス部付近の側面断面図、図1(b)はその平面図である。 図2(a)、図2(b)は、本発明の空気入りタイヤの実施例を、タイヤ加硫成形前のオーバーラップした状態をモデル的に示して説明するものであり、スプライス部付近の側面断面図である。 図3(a)および図3(b)は、本発明の空気入りタイヤの他の実施例を、タイヤ加硫成形前のオーバーラップした状態をモデル的に示して説明するものであり、図3(a)、図3(b)それぞれにおいて、左側にオーバーラップスプライス部付近の側面断面図を示し、右側にその平面図を示している。 図4(a)および図4(b)は、従来技術の問題点を説明するものであり、図4(a)は、熱可塑性樹脂を主成分とするフィルムと、該熱可塑性樹脂を主成分とするフィルムと加硫接着するタイゴムを積層した積層体シートを所定長さで切断し、タイヤ成形ドラムに巻き付けて、該積層体シート1の両端部をオーバーラップスプライスした状態を示すモデル図であり、図4(b)は、図4(a)に示した状態でタイヤ加硫成形した後の状態を示したモデル図である。 図5は、本発明にかかる空気入りタイヤの形態の1例を示した一部破砕斜視図である。 図6は、本発明にかかる空気入りタイヤを説明するタイヤ子午線方向の断面図であり、タイヤ幅方向E−Eにおいて全幅にわたりオーバーラップスプライス部が存在する中で、該オーバーラップスプライス部におけるタイヤ内腔側のフィルムのタイヤ内腔側表面に、オーバーラップスプライス部以外の該フィルム厚さよりも薄く形成されている窪みを設けることが好ましい領域Zをモデル的に示したものである。
以下、更に詳しく本発明の空気入りタイヤについて、説明する。
本発明の空気入りタイヤは、図1に示したように、カーカス層(図1で図示せず。図5および図6で14)の内側にタイゴム層3を介して、熱可塑性樹脂を主成分とするフィルム2からなるインナーライナー10をタイヤに内貼りし、該フィルム2のタイヤ周方向端部がタイヤ幅方向にわたってタイゴム3′を介して重なっているオーバーラップスプライス部WSを有してなる空気入りタイヤにおいて、以下の(a)〜(c)の3要件を満足することを特徴とするものである。
(a)該オーバーラップスプライス部WSにおいてタイヤ内腔側に位置するフィルム2Aのタイヤ内腔側の面は、該オーバーラップスプライス部WSでの該フィルム厚さが該オーバーラップスプライス部WS以外の該フィルム厚さよりも薄くなるように窪み5を形成されていること、
(b)該オーバーラップスプライス部WSにおいてタイヤ内腔側に位置するフィルム2Aのタイヤ外周側の面は、該オーバーラップスプライス部WSと該オーバーラップスプライス部WS以外の部分間とで平坦に形成されていること、
(c)該オーバーラップスプライス部WSにおいてタイヤ外周側に位置するフィルム2Bのタイヤ内腔側の面およびタイヤ外周側の面は、該オーバーラップスプライス部WSと該オーバーラップスプライス部WS以外の部分間とで平坦に形成されていること。
図1において、5が前記(a)の窪みであり、該オーバーラップスプライス部WSにおいてタイヤ内腔側に位置するフィルム2Aのタイヤ内腔側の面上にて、図1(b)に2点鎖線の斜線で示したように、一段の段差を呈した窪みとしてオーバーラップスプライス部WSの全面に形成され、該オーバーラップスプライス部WSでは、該フィルム2Aの厚さが該オーバーラップスプライス部WS以外の該フィルム2の厚さよりも薄くして形成されている。
一方、オーバーラップスプライス部WSにおいてタイヤ内腔側に位置する該フィルム2Aのタイヤ外周側の面は、該オーバーラップスプライス部WSと該オーバーラップスプライス部WS以外の部分間とで平坦に形成されているものであり(図1(a))、窪みの形成はされていない。また、オーバーラップスプライス部WSにおいてタイヤ外周側に位置するフィルム2Bのタイヤ内腔側の面およびタイヤ外周側の面は、該オーバーラップスプライス部WSと該オーバーラップスプライス部WS以外の部分間とで平坦に形成されている。
すなわち、本発明の空気入りタイヤでは、該オーバーラップスプライス部WSに位置しているタイヤ内腔側のフィルム2A、タイヤ外周側のフィルム2Bの各2面の全4面のうち、フィルム2Aのタイヤ内腔側の面だけが窪み形成加工をされている。
ここで、本発明において「窪み」とは、フィルム2Aの厚さが部分的に薄くなるように該フィルム2Aの内腔側の面上にて、タイヤ周方向および/またはタイヤ幅方向に、連続的にあるいは不連続的に、かつ全面的にあるいは一部分的に形成された凹部をいう。「凹部」であるので、貫通孔は含んでいない。
本発明において、「フィルムの面が、オーバーラップスプライス部WSとオーバーラップスプライス部WS以外の部分間とで平坦に形成されている」とは、該オーバーラップスプライス部WSで、該フィルム面上のいずれの箇所においても、窪みが形成されていないことを意味する。すなわち、図1(a)において一部拡大して示したように、前述した要件(b)の「タイヤ内腔側に位置するフィルム2Aのタイヤ外周側の面」(2AO)は、該フィルム2が有する本来の面のままで平坦に形成されている。また、前述した要件(c)の「タイヤ外周側に位置するフィルム2Bのタイヤ内腔側の面」(2BI)および「タイヤ外周側に位置するフィルム2Bのタイヤ外周側の面」(2BO)も、該フィルム2が有する本来の面のままで平坦に形成されている。
本発明によれば、上述のようなオーバーラップスプライス部WSの構造とすることにより、該熱可塑性樹脂を主成分とするフィルムと加硫接着されたタイゴムシートにクラックが発生することがなく、優れた走行耐久性を発揮する。
そのメカニズムは、本発明の空気入りタイヤにおいては、フィルム2Aのタイヤ内腔側の面が、窪み形成加工をされているため、オーバーラップスプライス部WSの全体の剛性が非常に小さくなり、オーバーラップスプライス部WSとオーバーラップスプライスしていない部分で発生する歪の差が少なくなり、その歪の差によって発生する剪断力が小さくなる。この剪断力は内腔側のフィルムとタイゴム部との間で発生し、内腔側のフィルムが薄いほどめくれや剥がれの力が減少する。これにより、オーバーラップスプライス部でのタイゴムのクラックの発生を著しく緩和することができ、耐久性に優れた空気入りタイヤを得ることができるのである。
特に、オーバーラップスプライス部WSの位置において、タイヤ内腔側に位置しているフィルム2Aの外周側の面、タイヤ外周側に位置しているフィルム2Bの内腔側および外周側の2面の計3面は、タイゴムシート3との接合界面を形成するものであるが、これら3面に窪みが形成された状態でタイゴムシート3と接合されていることは、タイヤ成形時に、フィルムの凹凸部がタイゴム部との密着性を悪化させるため、スプライス部WSにおいてタイヤ成形時にフィルムとタイゴム部が剥離するという製造故障が発生してしまう。
すなわち、一般に、該窪み部分の起点や段差付近などでの応力集中を招き、あるいは、該フィルムとタイゴムシート間での均斉な密着状態を得られにくくし、それらが原因となって成形時のめくれや剥離を誘発することがあるので好ましくないのである。
また、例えば、フィルム表面の窪みの形成をレーザー光の照射加工で行う場合などでは、本発明者らの知見によれば、該加工法で形成された窪み部分はタイゴムシート3との接合力を高く発揮することができず(レーザー光の照射を受けた部分で接合力が小さくなる)、それが原因となって、めくれや剥離を誘発することになるので好ましくなく、該3面は、オーバーラップスプライス部WS以外の部分と同じに平坦なままに形成されていることが、該フィルム面とタイゴムシート3との接合を強固にできてめくれや剥離を誘発することが少なくなるので重要なことである。
前記要件(a)のオーバーラップスプライス部WSにおいてタイヤ内腔側に位置するフィルム2Aのタイヤ内腔側の面に形成されている窪みは、図1(a)に示したように、該オーバーラップスプライス部WSでの該フィルム2Aの厚さtが、オーバーラップスプライス部以外の該フィルムの本来の厚さTFの20〜80%となるように形成されていることが、本発明の効果を確実にかつ大きく得る上で好ましい。該WS部でのフィルム2Aの厚さtは、あまりに薄くすると、それが要因となってのクラックが発生しやすくなり、オーバーラップをさせてスプライスをした効果が小さくなるので好ましくない。
該オーバーラップスプライス部WSにおいてタイヤ内腔側に位置するフィルム2Aのタイヤ内腔側の面に形成されている窪みは、図2(a)に示したように、タイヤ周方向で見て、該オーバーラップスプライス部WSの面積に対して100%の全面積で形成されていてもよいが、面積比で40〜80%程度であってもよい。本発明者らの知見によれば、窪みの深さにもよるが、該オーバーラップスプライス部WSの面積に対する面積比で60%以上100%以下で形成されていることが好ましい。より好ましくは、80%以上100%以下である。該オーバーラップスプライス部WSの面積に対して一部領域での窪みの形成であっても、該オーバーラップスプライス部WSの剛性を効果的に低下させることができ、本発明の効果を得ることができるからである。該オーバーラップスプライス部WSの面積に対して100%の全面積で形成されていない場合の例を図2(b)に示した。
また、フィルム2Aの窪み部分5のタイヤ周方向長さは、オーバーラップ部WSの長さL(図1(b))とほぼ等しい長さにして形成すること(オーバーラップスプライス部WSの面積に対する面積比で100%)が好ましいが、生産性の点などから、多少はオーバーラップスプライス部WSの長さLを超えてあるいは長さL未満で形成されていてもよく、具体的には該長さLの+15%以内程度としてもよく、好ましくは該長さLの+10%以内程度として構成してもよい。長さL未満で形成する場合には、上述のWSの面積比と同様の数値である対L比で60%以上100%以下で形成されていることが好ましく、より好ましくは80%以上100%以下である。オーバーラップスプライス部WSの全域に窪みを形成しない場合、該窪み部分はフィルム2Aの先端部寄りの位置に形成することが好ましい。
また、窪み5は、タイヤ周方向のX−X断面形状が、図2(a)に示したように階段状に薄くなっている形状であることが、効果を確実かつ大きく発揮できる点で好ましい。図2(a)に示した階段状の形状は1段の階段状であるが、複数段のものであってもよい。
図2(b)に示したものは、オーバーラップスプライス部WSの全域に窪みを形成せずに、2分割して形成した例を示している。
窪み5の形状としては、平面視方向から見た形状として、正方形状もしくは長方形状などの方形状、散点模様のような円形状もしくは楕円形状、環状(ドーナツ状)、多角形状などのさまざまなものの一種あるいは複数種の混在で形成をしてもよい。
図3の(a)および(b)は、窪み5の形状の他の例を、図2と同様に、タイヤ加硫成形前のオーバーラップした状態でモデル的に示して説明するものであり、(a)、(b)それぞれにおいて、左側にオーバーラップスプライス部付近の側面断面図を示し、右側にその平面図を示している。図3(a)はタイヤ幅方向に互いに平行して走る細い複数本のストライプ状のもの、(b)は楕円形状のもので、タイヤ幅方向に1列に並んでいる例を示している。このように部分的であっても、窪み5を規則的に形成することによって所望する効果を得ることができる。
オーバーラップスプライス部WSの周方向の長さは、3〜30mmであることが好ましい。3mmに満たないと、スプライスする力が小さく好ましくなく、また、30mmを超えるとタイヤのユニフォミティを悪化させる場合があるので好ましくない。
フィルムを薄くして窪みを形成する加工は、タイゴムシートと積層する以前のフィルム単体の段階で、あるいは積層した後の段階で、例えば、該フィルムの所定面(フィルム2Aの内腔側となる面)に対して、レーザー加工をタイヤ幅方向に行うことなどにより行うことができる。すなわち、窪み5の形成は、例えば、フィルムシート面に対して、その垂直方向からレーザー光を照射しながら該フィルムシート材の面方向に移動させていく加工法などにより行うことができ、このレーザー光を用いた加工は、非接触方式であることから好ましいものである。レーザー光の照射は、移動させながら連続的に行ってもよく、あるいは移動させながら間歇的に行ってもよい。特に、レーザー光照射の移動速度と強さを調整することにより、形成される窪みの深さ、フィルムの厚さを調整することができるので、レーザー光を照射する加工方法は最も適している。レーザー光は、赤外線レーザー、あるいはCO2 (炭酸ガス)レーザーを用いることが好ましく、中でもCO2 (炭酸ガス)レーザーを用いることが加工性の良さ、制御性などの点で好ましい。YAGレーザーはフィルムシート材の素材にもよると思われるが、加工性、制御性の上で上記のものよりは劣ることが多い。レーザー光を使用して窪み形成加工をする際、被加工領域の全面積を隙間なく加工することは必ずしも必要ではなく、該被加工領域の全域に対して「線描」のように、一部の隙間を残しながら全域に加工処理するようにしてもよい。該線描のようにしてレーザー光を使用して、ある程度の面積を持つ領域に対して窪みを形成する場合、レーザー光による加工の被処理幅(線幅)は、0.2〜1mm程度とすることが好ましい。
本発明では、タイゴムシートとの接合界面上で窪みを形成するものではないので、タイゴムシートと積層した後のフィルム表面に対して加工できることも一つの利点である。そのため、積層後のフィルム表面の端部領域に対して、レーザー光によって上述した「線描」のようにして所望するだけの面積で窪み形成加工が簡単にできることは、大きな利点である。
特に限定はされないが、本発明で使用されるフィルム2は厚さで30〜300μmのものを使用することが好ましく、タイゴムシートは厚さで0.2〜1.2mmのものを使用することが好ましい。
図5は、本発明にかかる空気入りタイヤの形態の1例を示した一部破砕斜視図である。
空気入りタイヤTは、トレッド部11の左右にサイドウォール部12とビード部13を連接するように設けている。そのタイヤ内側には、タイヤの骨格たるカーカス層14が、タイヤ幅方向に左右のビード13、13間に跨るように設けられている。トレッド部11に対応するカーカス層4の外周側にはスチールコードからなる2層のベルト層15が設けられている。矢印Eはタイヤ幅方向を示し、矢印Xはタイヤ周方向を示している。カーカス層14の内側には、インナーライナー層10が配され、そのスプライス部Sがタイヤ幅方向に延びて存在している。
本発明にかかる空気入りタイヤでは、タイヤ内周面上でこのスプライス部S付近で従来は生じやすかったクラックの発生、インナーライナー10を形成している熱可塑性樹脂を主体とするシート2とタイゴム層3の間のクラックの発生、剥離の発生が抑制されて耐久性が著しく向上する。
オーバーラップによるスプライス部WSは、タイヤ全幅にわたり存在するが、そのタイヤ全幅のスプライス部にわたりフィルム2Aの窪み5が設けられている必要はなく、タイヤ幅方向で、少なくとも、図6において領域Zで示した、「幅がより大きいベルト15bの端部からビードフィラー16の先端部までの間の領域」には存在していることが好ましい。特に、ショルダー部付近は走行中、変形が大きく、そのためフィルムやタイゴムのクラックが生じやすく、サイドウォール部も含めて、少なくとも該領域Z内に設けられることが好ましいのである。
本発明でインナーライナーを成す「熱可塑性樹脂を主成分とするフィルム」とは、代表的には、「熱可塑性樹脂」からなるフィルムか、あるいは「熱可塑性樹脂を主成分として維持しつつ、該樹脂にエラストマーをブレンドした熱可塑性エラストマー組成物」からなるフィルムの2者を総称していう。後者の場合であっても主成分は熱可塑性樹脂とするものであり、熱可塑性樹脂を主成分とするフィルムは、ゴム100%のシートなどと比較して、一般に剛性が大きいという特質を有するのである。それ故に、上述した本発明の構成として、インナーライナーのスプライス部付近を保護することが、空気入りタイヤの寿命を長くする上で重要なものである。
以下に、本発明で用いることのできる熱可塑性樹脂、エラストマーについて説明する。
本発明で用いることのできる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂〔例えば、ナイロン6(N6)、ナイロン66(N66)、ナイロン46(N46)、ナイロン11(N11)、ナイロン12(N12)、ナイロン610(N610)、ナイロン612(N612)、ナイロン6/66共重合体(N6/66)、ナイロン6/66/610共重合体(N6/66/610)、ナイロンMXD6(MXD6)、ナイロン6T、ナイロン9T、ナイロン6/6T共重合体、ナイロン66/PP共重合体、ナイロン66/PPS共重合体〕及びそれらのN−アルコキシアルキル化物、例えば、ナイロン6のメトキシメチル化物、ナイロン6/610共重合体のメトキシメチル化物、ナイロン612のメトキシメチル化物、ポリエステル系樹脂〔例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、PET/PEI共重合体、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、液晶ポリエステル、ポリオキシアルキレンジイミドジ酸/ポリブチレンテレフタレート共重合体などの芳香族ポリエステル〕、ポリニトリル系樹脂〔例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、(メタ)アクリロニトリル/スチレン共重合体、(メタ)アクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体〕、ポリメタクリレート系樹脂〔例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル〕、ポリビニル系樹脂〔例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニルアルコール/エチレン共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体、塩化ビニリデン/アクリロニトリル共重合体(ETFE)〕、セルロース系樹脂〔例えば、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース〕、フッ素系樹脂〔例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリクロルフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフロロエチレン/エチレン共重合体〕、イミド系樹脂〔例えば、芳香族ポリイミド(PI)〕等を好ましく用いることができる。
また、本発明で使用できる熱可塑性エラストマー組成物を構成する熱可塑性樹脂とエラストマーは、熱可塑性樹脂については上述のものを使用できる。エラストマーとしては、例えば、ジエン系ゴム及びその水添物〔例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、エポキシ化天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR、高シスBR及び低シスBR)、ニトリルゴム(NBR)、水素化NBR、水素化SBR〕、オレフィン系ゴム〔例えば、エチレンプロピレンゴム(EPDM、EPM)、マレイン酸変性エチレンプロピレンゴム(M−EPM)、ブチルゴム(IIR)、イソブチレンと芳香族ビニル又はジエン系モノマー共重合体、アクリルゴム(ACM)、アイオノマー〕、含ハロゲンゴム〔例えば、Br−IIR、CI−IIR、臭素化イソブチレン−p−メチルスチレン共重合体(BIMS)、クロロプレンゴム(CR)、ヒドリンゴム(CHR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、塩素化ポリエチレンゴム(CM)、マレイン酸変性塩素化ポリエチレンゴム(M−CM)〕、シリコンゴム〔例えば、メチルビニルシリコンゴム、ジメチルシリコンゴム、メチルフェニルビニルシリコンゴム〕、含イオウゴム〔例えば、ポリスルフィドゴム〕、フッ素ゴム〔例えば、ビニリデンフルオライド系ゴム、含フッ素ビニルエーテル系ゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレン系ゴム、含フッ素シリコン系ゴム、含フッ素ホスファゼン系ゴム〕、熱可塑性エラストマー〔例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、エステル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ボリアミド系エラストマー〕等を好ましく使用することができる。
特に、エラストマーの50重量%以上が、ハロゲン化ブチルゴムまたは臭素化イソブチレンパラメチルスチレン共重合ゴムまたは無水マレイン酸変性エチレンαオレフィン共重合ゴムであることが、ゴム体積率を増やして低温から高温に至るまで柔軟、高耐久化できる点で好ましい。
また、熱可塑性エラストマー組成物中の熱可塑性樹脂の50重量%以上が、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6/66共重合体、ナイロン6/12共重合体、ナイロン6/10共重合体、ナイロン4/6共重合体、ナイロン6/66/12共重合体、芳香族ナイロン、およびエチレン/ビニルアルコール共重合体のいずれかであることが、空気透過防止性と耐久性を両立できる点で好ましい。
また、前記した特定の熱可塑性樹脂と前記した特定のエラストマーとの組合せでブレンドをしてブレンド物を得るに際して、相溶性が異なる場合は、第3成分として適当な相溶化剤を用いて両者を相溶化させることができる。ブレンド系に相溶化剤を混合することにより、熱可塑性樹脂とエラストマーとの界面張力が低下し、その結果、分散相を形成しているエラストマーの粒子径が微細になることから両成分の特性はより有効に発現されることになる。そのような相溶化剤としては、一般的に熱可塑性樹脂およびエラストマーの両方または片方の構造を有する共重合体、あるいは熱可塑性樹脂またはエラストマーと反応可能なエポキシ基、カルボニル基、ハロゲン基、アミノ基、オキサゾリン基、水酸基等を有した共重合体の構造をとるものとすることができる。これらはブレンドされる熱可塑性樹脂とエラストマーの種類によって選定すればよいが、通常使用されるものには、スチレン/エチレン・ブチレンブロック共重合体(SEBS)及びそのマレイン酸変性物、EPDM、EPM、EPDM/スチレン又はEPDM/アクリロニトリルグラフト共重合体及びそのマレイン酸変性物、スチレン/マレイン酸共重合体、反応性フェノキシン等を挙げることができる。かかる相溶化剤の配合量には特に限定されないが、好ましくは、ポリマー成分(熱可塑性樹脂とエラストマーとの合計)100重量部に対して、0.5〜10重量部がよい。
熱可塑性樹脂とエラストマーがブレンドされた熱可塑性エラストマー組成物において、特定の熱可塑性樹脂とエラストマーとの組成比は、特に限定されるものではなく、熱可塑性樹脂のマトリクス中にエラストマーが不連続相として分散した構造をとるように適宜決めればよく、好ましい範囲は重量比90/10〜30/70である。
本発明において、熱可塑性樹脂、または熱可塑性樹脂とエラストマーをブレンドしたブレンド物を含む熱可塑性エラストマー組成物には、インナーライナーとしての必要特性を損なわない範囲で相溶化剤などの他のポリマーを混合することができる。他のポリマーを混合する目的は、熱可塑性樹脂とエラストマーとの相溶性を改良するため、材料の成型加工性を良くするため、耐熱性向上のため、コストダウンのため等があり、これに用いられる材料としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ABS、SBS、ポリカーボネート(PC)等を例示することができる。
また、一般的にポリマー配合物に配合される充填剤(炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナ等)、カーボンブラック、ホワイトカーボン等の補強剤、軟化剤、可塑剤、加工助剤、顔料、染料、老化防止剤等をインナーライナーとしての必要特性を損なわない限り任意に配合することもできる。熱可塑性エラストマー組成物は、熱可塑性樹脂のマトリクス中にエラストマーが不連続相として分散した構造をとる。かかる構造をとることにより、インナーライナーに十分な柔軟性と連続相としての樹脂層の効果により十分な空気透過防止性を併せ付与することができると共に、エラストマーの多少によらず、成形に際し、熱可塑性樹脂と同等の成形加工性を得ることができるものである。
また、エラストマーは、熱可塑性樹脂との混合の際に、動的に加硫することもできる。動的に加硫する場合の加硫剤、加硫助剤、加硫条件(温度、時間)等は、添加するエラストマーの組成に応じて適宜決定すればよく、特に限定されるものではない。
このように熱可塑性エラストマー組成物中のエラストマーが動的加硫をされていることは、得られる樹脂フィルムシートが加硫エラストマーを含んだシートとなるので、外部からの変形に対して抵抗力(弾性)があり、特に凹み構造、窪み構造を維持しやすく、本発明の効果を確実に得ることができることになり好ましい。
加硫剤としては、一般的なゴム加硫剤(架橋剤)を用いることができる。具体的には、イオウ系加硫剤としては粉末イオウ、沈降性イオウ、高分散性イオウ、表面処理イオウ、不溶性イオウ、ジモルフォリンジサルファイド、アルキルフェノールジサルファイド等を例示でき、例えば、0.5〜4phr〔本明細書において、「phr」は、エラストマー成分100重量部あたりの重量部をいう。以下、同じ。〕程度用いることができる。
また、有機過酸化物系の加硫剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジ(パーオキシルベンゾエート)等が例示され、例えば、1〜20phr程度用いることができる。
更に、フェノール樹脂系の加硫剤としては、アルキルフェノール樹脂の臭素化物や、塩化スズ、クロロプレン等のハロゲンドナーとアルキルフェノール樹脂とを含有する混合架橋系等が例示でき、例えば、1〜20phr程度用いることができる。
その他として、亜鉛華(5phr程度)、酸化マグネシウム(4phr程度) 、リサージ(10〜20phr程度)、p−キノンジオキシム、p−ジベンゾイルキノンジオキシム、テトラクロロ−p−ベンゾキノン、ポリ−p−ジニトロソベンゼン(2〜10phr程度)、メチレンジアニリン(0.2〜10phr程度)が例示できる。
また、必要に応じて、加硫促進剤を添加してもよい。加硫促進剤としては、アルデヒド・アンモニア系、グアニジン系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チウラム系、ジチオ酸塩系、チオウレア系等の一般的な加硫促進剤を、例えば、0.5〜2phr程度用いることができる。
具体的には、アルデヒド・アンモニア系加硫促進剤としては、ヘキサメチレンテトラミン等、グアジニン系加硫促進剤としては、ジフェニルグアジニン等、チアゾール系加硫促進剤としては、ジベンゾチアジルジサルファイド(DM)、2−メルカプトベンゾチアゾール及びそのZn塩、シクロヘキシルアミン塩等、スルフェンアミド系加硫促進剤としては、シクロヘキシルベンゾチアジルスルフェンアマイド(CBS)、N−オキシジエチレンベンゾチアジル−2−スルフェンアマイド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアマイド、2−(チモルポリニルジチオ)ベンゾチアゾール等、チウラム系加硫促進剤としては、テトラメチルチウラムジサルファイド(TMTD)、テトラエチルチウラムジサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド(TMTM)、ジペンタメチレンチウラムテトラサルファイド等、ジチオ酸塩系加硫促進剤としては、Zn−ジメチルジチオカーバメート、Zn−ジエチルジチオカーバメート、Zn−ジ−n−ブチルジチオカーバメート、Zn−エチルフェニルジチオカーバメート、Te−ジエチルジチオカーバメート、Cu−ジメチルジチオカーバメート、Fe−ジメチルジチオカーバメート、ピペコリンピペコリルジチオカーバメート等、チオウレア系加硫促進剤としては、エチレンチオウレア、ジエチルチオウレア等を挙げることができる。また、加硫促進助剤としては、一般的なゴム用助剤を併せて用いることができ、例えば、亜鉛華(5phr程度)、ステアリン酸やオレイン酸及びこれらのZn塩(2〜4phr程度)等が使用できる。
熱可塑性エラストマー組成物の製造方法は、予め熱可塑性樹脂とエラストマー(ゴムの場合は未加硫物)とを2軸混練押出機等で溶融混練し、連続相(マトリックス)を形成する熱可塑性樹脂中に分散相(ドメイン)としてエラストマーを分散させることによる。エラストマーを加硫する場合には、混練下で加硫剤を添加し、エラストマーを動的加硫させてもよい。また、熱可塑性樹脂またはエラストマーへの各種配合剤(加硫剤を除く)は、上記混練中に添加してもよいが、混練の前に予め混合しておくことが好ましい。熱可塑性樹脂とエラストマーの混練に使用する混練機としては、特に限定はなく、スクリュー押出機、ニーダ、バンバリミキサー、2軸混練押出機等が使用できる。中でも熱可塑性樹脂とエラストマーの混練およびエラストマーの動的加硫には、2軸混練押出機を使用するのが好ましい。更に、2種類以上の混練機を使用し、順次混練してもよい。溶融混練の条件として、温度は熱可塑性樹脂が溶融する温度以上であればよい。また、混練時の最大剪断速度は300〜7500sec-1であるのが好ましい。混練全体の時間は30秒から10分、また加硫剤を添加した場合には、添加後の加硫時間は15秒から5分であるのが好ましい。上記方法で製作されたポリマー組成物は、射出成形、押出し成形等、通常の熱可塑性樹脂の成形方法によって所望の形状にすればよい。
このようにして得られる熱可塑性エラストマー組成物は、熱可塑性樹脂のマトリクス中にエラストマーが不連続相として分散した構造をとる。かかる構造をとることにより、インナーライナー層として使用されるときは、十分な柔軟性と連続相としての樹脂層の効果により、十分な空気透過防止性あるいは強度を併せ付与することができると共に、エラストマーの多少によらず、成形に際して、熱可塑性樹脂と同等の成形加工性を得ることができる。
熱可塑性樹脂および熱可塑性エラストマー組成物のヤング率は、特に限定されるものではないが、好ましくは1〜500MPa、より好ましくは25〜250MPaにするとよい。
以下、実施例などにより、本発明の空気入りタイヤについて具体的に説明する。
なお、各評価特性の測定方法は、以下に記載の方法による。
(1)スプライス部の耐クラック性の評価:
ドラム試験機にて内圧120kPa、荷重7.24kN、速度81km/hで80時間の走行試験をして後、各試験タイヤ(各実施例、従来例で、各10本)の内腔のインナーライナー層のスプライス部付近でのタイゴムのクラックの発生の有無の状況(発生本数、大きさ)を観察して評価を行った。評価は、従来例1のものを指数100として行い、数値が大きいほど優れているものである。数値は、5%以上で「優位さあり」と判断し、10%以上で「顕著な優位さあり」と判断した。
(2)ユニフォミティの評価:
JASO C−607−87に従いRFVを測定して評価をした。n数は10とし、その平均値を従来例1のタイヤを100として指数で表示した。数値が大きいほどユニフォミティが優れていることを示している。数値は、2%以上で「優位さあり」と判断し、5%以上で「顕著な優位さあり」と判断した。
(3)製造時の故障
各試験タイヤの製造時に(各実施例、従来例で各10本)、インナーライナー層のスプライス部で剥がれやめくれの発生の有無の状況を観察して評価を行った。評価は従来例1のものを指数100として行い、数値が大きいほど優れているものである。
実施例1〜10、従来例1、比較例1〜3
試験タイヤとして、ベルト2層、カーカス2層のタイヤ構造を有するタイヤサイズ195/65R15 91H(15x6J)の試験タイヤを、各実施例1〜10、従来例1、比較例1〜3ごとに各10本を作製した。
各試験タイヤにおいて、インナーライナーを形成する熱可塑性樹脂を主成分とするフィルムは、熱可塑性樹脂としてN6/N66を用い、エラストマーとしてBIMS(臭素化イソブチレン−p−メチルスチレン共重合体)を用い、これをブレンドして、厚さ130μmのフィルムを用いた。
実施例1〜10、比較例1〜3のフィルムは、それぞれ所要の長さ×幅に切断したものを、タイヤ周方向の端部でタイヤ幅方向に沿ってレーザー光を繰り返し当てる処理により、窪みを形成した。
いずれも、窪みを形成した後、厚さ0.7mmの表1に示した組成のタイゴムシートと接合した。
Figure 0005999104
それぞれのオーバーラップスプライス部WSについて、そのオーバーラップスプライス部長さ(Lmm)、スプライス部付近の側面断面形状と、窪みが形成されている部分の面積比(%)、該窪みが形成された部分のフィルム厚さtをフィルムの厚さT(130μm)に対する百分率(%)として表2、表3に示した。
それぞれの試験タイヤについて、スプライス部の耐クラック性の評価をした結果と、ユニフォミティの評価をした結果を表2、表3に示した。
本発明の実施例1−10による空気入りタイヤは、いずれも、耐クラック性、ユニフォミティおよび製造時の故障について総合的に判断して優れていることがわかる。
Figure 0005999104
Figure 0005999104
1:積層体シート
2:熱可塑性樹脂を主成分とするフィルム
2A:オーバーラップスプライス部においてタイヤ内腔側に位置するフィルム
2B:オーバーラップスプライス部においてタイヤ外周側に位置するフィルム
3:タイゴム層
3′:タイゴム
4:熱可塑性樹脂を主成分とするフィルム2の先端部付近
5:窪み
10:インナーライナー
11:トレッド部
12:サイドウォール部
13:ビード
14:カーカス層
15:ベルト層
16:ビードフィラー
E−E:タイヤ幅方向
L:ラップスプライス部の周方向オーバーラップ長さ
WS:オーバーラップスプライス部
S:ラップスプライス部
X−X:タイヤ周方向

Claims (6)

  1. カーカス層の内側にタイゴムシートを介して、熱可塑性樹脂を主成分とするフィルムからなるインナーライナーをタイヤに内貼りし、前記フィルムのタイヤ周方向端部がタイヤ幅方向にわたってタイゴムを介して重なっているオーバーラップスプライス部を有してなる空気入りタイヤにおいて、
    (a)該オーバーラップスプライス部においてタイヤ内腔側に位置するフィルムのタイヤ内腔側の面は、該オーバーラップスプライス部での該フィルム厚さが該オーバーラップスプライス部以外の該フィルム厚さよりも薄くなるように窪みを形成されていること、
    (b)該オーバーラップスプライス部においてタイヤ内腔側に位置するフィルムのタイヤ外周側の面は、該オーバーラップスプライス部と該オーバーラップスプライス部以外の部分間とで平坦に形成されていること、
    (c)該オーバーラップスプライス部においてタイヤ外周側に位置するフィルムのタイヤ内腔側の面およびタイヤ外周側の面は、該オーバーラップスプライス部と該オーバーラップスプライス部以外の部分間とで平坦に形成されていること、
    の3要件を満足することを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記(a)のオーバーラップスプライス部においてタイヤ内腔側に位置するフィルムのタイヤ内腔側の面に形成されている窪みは、該オーバーラップスプライス部での該フィルムの厚さが、オーバーラップスプライス部以外の該フィルムの厚さの20〜80%となるように形成されていることを特徴とする請求項1記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記オーバーラップスプライス部の周方向のオーバーラップ長さが3〜30mmであることを特徴とする請求項1または2記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記オーバーラップスプライス部で、タイヤ内腔側に位置するフィルムのタイヤ内腔側の面上において前記窪みが形成されている部分の面積が、オーバーラップスプライス部の面積に対して10%以上100%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
  5. 前記オーバーラップスプライス部で、タイヤ内腔側に位置するフィルムのタイヤ内腔側の面上において前記窪みが形成されている部分が、タイヤ子午線断面上で、少なくともベルト端部からビードフィラー部の外周側端部の間に存在していることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
  6. 前記窪みの形成が、レーザー光を使用した加工によるものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
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