以下、本発明に係る水処理システムの実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る水処理システム1の全体構成図である。図1に示すように、本実施形態に係る水処理システム1は、加圧ポンプ2と、インバータ3と、造水装置としての濾過装置4と、貯水タンク5と、を備える。
また、水処理システム1は、流量計測手段としての流量計6と、薬剤タンク7と、塩素剤供給手段としての薬注ポンプ8と、吐出量チェッカ9と、残留塩素濃度測定手段としての残留塩素計10と、制御装置100と、を備える。図1では、電気的な接続の経路を破線で示す。
更に、水処理システム1は、一次給水ラインL1と、二次給水ラインL2と、薬剤供給ラインL3と、を備える。本明細書における「ライン」とは、流路、径路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。
本願において、「一次給水」とは、所要の保有水量を有する水槽部に供給される水であって、且つ塩素剤溶液の供給対象となる水のことをいう。また、「二次給水」とは、水槽部から送出される水であって、且つ残留塩素濃度の測定対象となる水のことをいう。本実施形態においては、後述するように、造水装置としての濾過装置4が備える処理槽を水槽部として位置付けている。
一次給水ラインL1は、一次給水W1を濾過装置4に供給するラインである。一次給水ラインL1の上流側の端部は、一次給水W1の供給源(地下水、工業用水、河川水等)に接続されている。一次給水ラインL1の下流側の端部は、濾過装置4の一次給水導入口に接続されている。
加圧ポンプ2は、一次給水W1を吸入し、濾過装置4に向けて吐出する装置である。加圧ポンプ2は、インバータ3(後述)と電気的に接続されている。加圧ポンプ2には、インバータ3から周波数が変換された駆動電力が供給される。加圧ポンプ2は、供給された駆動電力の周波数(以下、「駆動周波数」ともいう)に応じた回転速度で駆動される。
インバータ3は、加圧ポンプ2に、周波数が変換された駆動電力を供給する電気回路である。インバータ3は、制御装置100と電気的に接続されている。インバータ3には、制御装置100から電流値信号が入力される。インバータ3は、入力された電流値信号に対応する駆動周波数の駆動電力を加圧ポンプ2に出力する。
造水装置としての濾過装置4は、導入された一次給水W1中に含まれる不純物を除去して、二次給水W2を製造する設備である。濾過装置4は、濾過材(不図示)を収容するための処理槽を備えている。この処理槽は、濾過材の空隙部及びフリーボード部の存在によって所要の保有水量を有しているため、水槽部と称することもできる。なお、一次給水W1中に含まれる不純物には、一次給水W1に元々含まれているもの(例えば、コロイド粒子)のほか、一次給水W1の溶存物質(例えば、第一鉄イオン)と次亜塩素酸塩溶液(塩素剤溶液)との反応により生成されたもの(例えば、水酸化第二鉄)がある。なお、マンガンイオンは、一次給水W1に投入した次亜塩素酸塩溶液だけでは酸化しにくいため、濾過材に担持させた触媒と接触酸化させることにより除去される。
二次給水ラインL2は、濾過装置4の処理槽(水槽部)で製造された二次給水W2を、需要先(不図示)へ送出するラインである。二次給水ラインL2の上流側の端部は、濾過装置4の二次給水導出口に接続されている。二次給水ラインL2の下流側の端部は、二次給水W2の需要先(又は後処理装置)に接続されている。
貯水タンク5は、濾過装置4で製造された二次給水W2を、一時的に貯留する設備である。貯水タンク5は、二次給水ラインL2において、濾過装置4の下流側の近傍に設けられている。貯水タンク5に貯留された二次給水W2は、二次給水ラインL2を介して需要先へ送出される。
流量計6は、一次給水ラインL1を流通する一次給水W1の流量を計測する機器である。流量計6は、接続部J1において一次給水ラインL1に接続されている。接続部J1は、一次給水ラインL1において、加圧ポンプ2と濾過装置4との間に配置されている。流量計6は、制御装置100と電気的に接続されている。流量計6で計測された一次給水W1の流量(以下、「計測流量値Q」ともいう)は、制御装置100へ検出信号として送信される。
薬剤タンク7は、塩素剤溶液を貯留するタンクである。本実施形態において、塩素剤溶液は、次亜塩素酸ナトリウム溶液に代表される次亜塩素酸塩溶液である。次亜塩素酸塩溶液は、一次給水W1に含まれる鉄、マンガン、アンモニア性窒素を酸化させる酸化剤、及び菌類等の殺菌剤を兼ねている。
薬注ポンプ8は、薬剤タンク7に貯留された塩素剤溶液を、薬剤供給ラインL3を介して一次給水ラインL1に供給する装置である。薬注ポンプ8は、薬剤タンク7に併設されている。薬注ポンプ8は、例えば、ダイヤフラムを電磁駆動力により往復運動させるダイヤフラムポンプにより構成される。薬注ポンプ8は、制御装置100と電気的に接続されている。薬注ポンプ8におけるダイヤフラムポンプの作動は、制御装置100から送信されるパルス信号により制御される。すなわち、薬注ポンプ8は、制御装置100からパルス信号が入力される毎に、薬剤タンク7から予め設定された投入量の塩素剤溶液を一次給水ラインL1に供給する。
薬剤供給ラインL3は、薬剤タンク7と一次給水ラインL1との間を接続するラインである。薬剤供給ラインL3の上流側の端部は、薬注ポンプ8に接続されている。薬剤供給ラインL3の下流側の端部は、接続部J2において一次給水ラインL1に接続されている。接続部J2は、一次給水ラインL1において、接続部J1と濾過装置4との間に配置されている。薬剤供給ラインL3には、吐出量チェッカ9が設けられている。
吐出量チェッカ9は、薬剤供給ラインL3における塩素剤溶液の流通を検出する機器である。吐出量チェッカ9は、薬剤供給ラインL3において、薬剤タンク7と接続部J1との間に設けられている。吐出量チェッカ9は、制御装置100と電気的に接続されている。吐出量チェッカ9は、薬剤供給ラインL3における塩素剤溶液の流通を検出した場合には、制御装置100に検出信号を送信する。
残留塩素計10は、濾過装置4の出口側における二次給水W2の残留塩素濃度を測定する機器である。残留塩素計10は、接続部J3において二次給水ラインL2に接続されている。接続部J3は、二次給水ラインL2において、濾過装置4と貯水タンク5との間に配置されている。残留塩素計10は、制御装置100と電気的に接続されている。残留塩素計10で測定された二次給水W2の残留塩素濃度(以下、「測定残留塩素濃度値SP」ともいう)は、制御装置100へ検出信号として送信される。
本実施形態において、残留塩素計10は、連続測定式(例えば、ポーラログラフ電極式)の残留塩素計である。水処理システム1の運転中において、残留塩素計10は、検出信号として、常に4〜20mAの伝送信号を制御装置100へ出力する。
制御装置100は、CPU及びメモリを含むマイクロプロセッサ(不図示)により構成される。制御装置100は、上述した水処理システム1を構成する各部を制御する。また、制御装置100を構成するマイクロプロセッサには、時間の計時等を管理する不図示のインテグレーテッドタイマユニット(以下、「ITU」ともいう)が組み込まれている。
次に、図2を参照しながら、制御装置100の機能について説明する。図2は、本実施形態に係る水処理システム1の制御に係る機能ブロック図である。
制御装置100は、本実施形態の水処理システム1を構成する各部を制御する。図2に示すように、制御装置100は、例えば、インバータ3、流量計6、薬注ポンプ8、吐出量チェッカ9、残留塩素計10等に電気的に接続される。
制御装置100は、投入量調整部101と、投入量判定部102と、塩素剤供給制御部103と、故障判定部104と、メモリ部105と、を備える。
投入量調整部101は、薬注ポンプ8から一次給水ラインL1に供給される塩素剤溶液の単位流量当たりの流量比投入量(以下、「流量比投入量Y」ともいう)を調整する。
具体的には、投入量調整部101は、残留塩素計10で測定された測定残留塩素濃度値SPが予め設定された上限閾値SPH以上又は下限閾値SPL以下(閾値範囲外)で、且つ、(i)濾過装置4において給水開始からの開始遅延時間T1が経過した場合、又は、(ii)前回の流量比投入量Yの調整から、濾過装置4において予め設定された累積給水時間T2が経過した場合には、上限閾値SPH又は下限閾値SPLに対する測定残留塩素濃度値SPの偏差と、予め設定された塩素剤溶液の有効塩素濃度Mと、に基づいて、現在の流量比投入量Yに対する補正量ΔYを演算し、現在の流量比投入量Yと補正量ΔYとの合計値(Y+ΔY)を調整後の流量比投入量Y´とする。
なお、塩素剤溶液の有効塩素濃度Mは、塩素剤溶液1mL当たりの塩素量を示す数値である。投入量調整部101は、現在の流量比投入量Y[mL/m3]、測定残留塩素濃度値SP[gCl/m3]及び塩素消費量[gCl/m3]を取得することにより、下記の式(1)に基づいて、塩素剤溶液の有効塩素濃度M[mgCl/mL]を演算することができる。
有効塩素濃度M=
(測定残留塩素濃度値SP+塩素消費量)/流量比投入量Y (1)
投入量調整部101は、予め供給源より採取した一次給水W1の水質分析に基づいて、塩素剤溶液を投入したときの単位流量当たりの塩素消費量[gCl/m3]を演算する。塩素消費量は、酸化反応により塩素を消費する鉄イオン(Fe2+)、マンガンイオン(Mn2+)、アンモニウムイオン(NH4+)や、有機物等の各濃度及び水温により定まる。有効塩素濃度Mは、例えば、0.10〜0.15mgCl/mLの範囲に設定される。
一般に、塩素剤溶液(次亜塩素酸塩溶液)が劣化して、有効塩素濃度Mが下がると、二次給水W2の残留塩素濃度が低下する。また、塩素剤溶液の劣化が進むと、塩素酸濃度が上昇して二次給水W2の水質が悪化する。これに対して、上記式(1)を用いて有効塩素濃度Mを演算することにより、塩素剤溶液の劣化を簡単に検出することができる。
投入量調整部101は、残留塩素計10で測定された測定残留塩素濃度値SPが、予め設定された上限閾値SPH未満〜下限閾値SPL超過までの閾値範囲内であれば、流量比投入量Yを調整しない。
一方、投入量調整部101は、流量比投入量Yを調整する場合において、残留塩素計10で測定された測定残留塩素濃度値SPが予め設定された上限閾値SPH以上(閾値範囲外)であれば、現在の流量比投入量Yに下記の式(2)により演算した補正量ΔYを加える。
ΔY=(SPH−SP)/M (2)
測定残留塩素濃度値SPが上限閾値SPH以上であれば、二次給水W2における残留塩素濃度が高いため、投入量調整部101は、上限閾値SPHと測定残留塩素濃度値SPとの偏差を有効塩素濃度Mで除算することにより補正量ΔYを算出する。
また、投入量調整部101は、流量比投入量Yを調整する場合において、残留塩素計10で測定された測定残留塩素濃度値SPが予め設定された下限閾値SPL以下であれば、現在の流量比投入量Yに下記の式(3)により演算した補正量ΔYを加える。
ΔY=(SPL−SP)/M (3)
測定残留塩素濃度値SPが下限閾値SPL以下(閾値範囲外)であれば、二次給水W2における残留塩素濃度が低いため、投入量調整部101は、下限閾値SPLと測定残留塩素濃度値SPとの偏差を有効塩素濃度Mで除算することにより補正量ΔYを算出する。
次に、(i)給水開始からの開始遅延時間T1について説明する。水処理システム1は、貯水タンク5の水位に応じて給水と待機(給水停止)とを繰り返している。水処理システム1では、待機中に一次給水ラインL1へ塩素剤溶液が投入されない。そのため、投入量調整部101は、水処理システム1の待機中に、塩素剤溶液の流量比投入量Yを調整しない。
一方、水処理システム1が待機から給水へ移行した直後は、待機中に濾過装置4の処理槽内に滞留していた水を排出する操作が実行される。滞留水が排出される間、二次給水ラインL2で測定される二次給水W2の測定残留塩素濃度値SPと、一次給水ラインL1に投入される塩素剤溶液の投入量との間に相関関係はない。そのため、水処理システム1が待機から給水へ移行した後、濾過装置4の処理槽内の水が給水により数回置換されて水質が安定するまでは、塩素剤溶液の流量比投入量Yを調整しないようにする必要がある。従って、本実施形態では、水処理システム1が待機から給水へ移行した後、濾過装置4の処理槽内の水が給水により数回置換されて水質が安定するまでの時間として、給水開始からの開始遅延時間T1を設定している。給水開始からの開始遅延時間T1は、制御装置100のITU(不図示)により計時される。
また、開始遅延時間T1の代わりに、濾過装置4に対する積算流量をカウントし、給水開始から予め設定された積算流量V1の一次給水W1が通水されるまでの間、塩素剤溶液の流量比投入量Yを調整しないようにしてもよい。
なお、開始遅延時間T1(又は積算流量V1)は、濾過装置4の処理槽(水槽部)における保有水量に基づいて設定される数値である。また、開始遅延時間T1(又は積算流量V1)は、濾過装置4の処理槽における保有水量だけでなく、配管部分における保有水量を考慮して、接続部J2及びJ3の間における保有水量に基づいて設定してもよい。
次に、(ii)の累積給水時間T2について説明する。上述したように、濾過装置4において所要の保有水量を有する処理槽を備えた水処理システム1では、塩素剤溶液の流量比投入量Yを変更してから、二次給水W2の残留塩素濃度が変動するまでに時間を要する。そのため、塩素剤溶液の流量比投入量Yを調整してから、濾過装置4の処理槽内の水が給水により数回置換されて水質が安定するまでは、塩素剤溶液の流量比投入量Yを調整しないようにする必要がある。従って、本実施形態では、前回の流量比投入量Yの調整から、濾過装置4の処理槽内の水が給水により数回置換されて水質が安定するまでの時間として、前回の流量比投入量Yの調整からの累積給水時間T2を設定している。累積給水時間T2は、制御装置100のITU(不図示)により計時される。
また、累積給水時間T2の代わりに、濾過装置4に対する積算流量をカウントし、前回の流量比投入量Yの調整から予め設定された積算流量V2の一次給水W1が通水されるまでの間は、塩素剤溶液の流量比投入量Yを調整しないようにしてもよい。
なお、累積給水時間T2(又は積算流量V2)は、濾過装置4の処理槽(水槽部)における保有水量に基づいて設定される数値である。また、累積給水時間T2(又は積算流量V2)は、濾過装置4の処理槽における保有水量だけでなく、配管部分における保有水量を考慮して、接続部J2及びJ3の間における保有水量に基づいて設定してもよい。
投入量調整部101は、投入量判定部102(後述)において、調整後の流量比投入量Y´が、予め設定された補正投入量下限値YMINから補正投入量上限値YMAXまで許容範囲外であると判定された場合には、予め設定された投入量Ym(YMIN<Ym<YMAX)を調整後の流量比投入量Y´とする。ここで、投入量Ymは、例えば、システム管理者等により設定された値である。
投入量調整部101は、調整後の流量比投入量Y´が、予め設定された補正投入量下限値YMIN以下である場合、又は調整後の流量比投入量Y´が、予め設定された補正投入量上限値YMAX以上である場合には、投入量Ymを調整後の流量比投入量Y´とする。すなわち、投入量調整部101は、調整後の流量比投入量Y´が、予め設定された補正投入量下限値YMINから補正投入量上限値YMAXまでの許容範囲外であると判定された場合には、調整後の流量比投入量Y´を投入量Ymに戻す操作を行う。
なお、調整後の流量比投入量Y´が、補正投入量下限値YMINから補正投入量上限値YMAXまでの許容範囲外となる原因としては、残留塩素計10の故障による測定残留塩素濃度値SPのズレ、一次給水W1の水質変動による塩素消費量の増加、薬剤タンク7に貯留された塩素剤溶液の劣化による有効塩素濃度Mの低下等が考えられる。いずれの場合も、ズレの要因が長時間かけて蓄積した結果であるため、調整後の流量比投入量Y´が、補正投入量下限値YMINから補正投入量上限値YMAXまでの許容範囲外となった場合には、流量比投入量Yの調整を中断することなく、調整後の流量比投入量Y´を投入量Ymに戻して、塩素剤溶液の投入を継続する。
投入量調整部101は、調整後の流量比投入量Y´を投入量Ymに戻した場合には、警報装置(不図示)から警報音等を発生させて、システム管理者等にシステムの異常が発生したことを通知する。
また、投入量調整部101は、故障判定部104(後述)において、流量計6、残留塩素計10、又は薬注ポンプ8の少なくとも一つに故障が有ると判定された場合には、現在の流量比投入量Yに対する補正量ΔYを演算することなく、現在(故障前)の流量比投入量Yを維持する。
例えば、残留塩素計10が故障した場合、測定された測定残留塩素濃度値SPには信頼性がないため、流量比投入量Yの調整は実行しないほうがよい。しかし、一次給水W1への塩素剤溶液の投入を中断すると、二次給水W2の水質が悪化する。そこで、投入量調整部101では、一次給水W1への塩素剤溶液の投入を継続しながら、流量比投入量Yの調整のみ中断する。また、投入量調整部101は、警報装置(不図示)から警報音等を発生させて、システム管理者等に機器の故障が発生したことを通知する。
なお、薬注ポンプ8が複数設置されている場合において、投入量調整部101は、故障判定部104から、すべての薬注ポンプ8について故障有りの判定結果が通知されたときに、一次給水W1への塩素剤溶液の投入を継続しながら、流量比投入量Yの調整のみ中断する。
また、薬注ポンプ8が複数設置されている場合において、投入量調整部101は、少なくとも一つの薬注ポンプ8に故障がなければ、一次給水W1への塩素剤溶液の投入を継続しながら、流量比投入量Yを調整する。その場合に、投入量調整部101は、故障判定部104において、故障有りと判定された薬注ポンプ8の制御を中断する。
投入量判定部102は、投入量調整部101により演算された調整後の流量比投入量Y´が、予め設定された補正投入量下限値YMINから補正投入量上限値YMAXまでの許容範囲内にあるか否かを判定する。
塩素剤供給制御部103は、投入量調整部101により調整された流量比投入量Y、及び流量計6で計測された計測流量値Qに基づいて、薬注ポンプ8(塩素剤供給手段)から一次給水ラインL1に供給される塩素剤溶液の単位時間当たりの時間比投入量(以下、「時間比投入量Z」ともいう)を制御する。具体的には、塩素剤供給制御部103は、下記の式(4)により時間比投入量Zを演算する。
時間比投入量Z[mL/h]
=流量比投入量Y[mL/m3]×計測流量値Q[m3/h] (4)
塩素剤供給制御部103は、演算により得た時間比投入量Zに基づいて、薬注ポンプ8に必要な回数のパルス信号を出力する。
塩素剤供給制御部103は、故障判定部104(後述)において、流量計6が故障したと判定された場合には、流量計6で計測された計測流量値Qの代わりに、予め設定されたシステム定格流量Qbの値を用いて時間比投入量Zを演算する。
故障判定部104は、残留塩素計10、薬注ポンプ8、又は流量計6における故障の有無を判定し、判定結果を投入量調整部101へ通知する。
まず、残留塩素計10における故障の判定について説明する。残留塩素計10が故障した場合には、測定された測定残留塩素濃度値SPには信頼性がないため、流量比投入量Yの調整は実行しないほうがよい。そのため、水処理システム1では、残留塩素計10が故障した場合に、故障判定前に演算された時間比投入量Zで塩素剤溶液の投入を継続しながら、流量比投入量Yの調整のみ中断する。
本実施形態における残留塩素計10は、連続測定式(例えば、ポーラログラフ電極式)の残留塩素計である。故障判定部104は、残留塩素計10から送信される検出信号(測定残留塩素濃度値)が4〜20mAの範囲を超えた場合に、残留塩素計10に故障が有ると判定する。
また、残留塩素計10が間欠測定式(例えば、酸化発色試薬を用いた比色式)の残留塩素計であれば、故障判定部104は、更新許容時間T3だけ濾過装置4に給水が行われたにも関わらず、残留塩素計10から送信される測定残留塩素濃度値が更新されない場合には、残留塩素計10の故障がある(間欠的な測定が正常に行われていない)と判定する。その場合に、故障判定部104は、残留塩素計10に故障有りの判定結果を投入量調整部101へ通知する。また、それ以外の場合において、故障判定部104は、残留塩素計10に故障なしの判定結果を投入量調整部101へ通知する。
また、連続測定式の残留塩素計と間欠測定式の残留塩素計とを併用した場合には、上述したそれぞれの故障の判定方法に加えて、以下に示す故障の判定方法を用いることができる。
図1に示す二次給水ラインL2に、連続測定式の第1残留塩素計と間欠測定式の第2残留塩素計(いずれも不図示)とを設けた構成において、故障判定部104は、第1及び第2残留塩素計から送信された測定残留塩素濃度値の偏差(絶対値)が予め設定された故障判定値SPEを超過した場合には、第1又は第2残留塩素計のいずれかに故障が有ると判定する。
連続測定式の第1残留塩素計と間欠測定式の第2残留塩素計とを設けた場合には、上述したそれぞれの故障の判定方法に加えて、第1及び第2残留塩素計から送信された測定残留塩素濃度値の偏差に基づく故障の判定を併用することができる。
次に、薬注ポンプ8における故障の判定について説明する。薬注ポンプ8が故障した場合に、その状態で一次給水W1に塩素剤溶液を投入しても、適切な残留塩素濃度の制御は期待できない。そのため、水処理システム1では、薬注ポンプ8が故障した場合に、故障判定前に演算された時間比投入量Zで塩素剤溶液の投入を継続しながら、流量比投入量Yの調整のみ中断する。
故障判定部104は、薬注ポンプ8に駆動のためのパルス信号を送信しても、薬剤供給ラインL3の吐出量チェッカ9から検出信号を受信しない場合には、薬注ポンプ8に故障が有ると判定する。その場合に、故障判定部104は、薬注ポンプ8に故障有りの判定結果を投入量調整部101へ通知する。それ以外の場合において、故障判定部104は、薬注ポンプ8に故障なしの判定結果を投入量調整部101へ通知する。また、故障判定部104は、薬注ポンプ8に故障が有ると判定した場合には、警報装置(不図示)から警報音等を発生させて、システム管理者等に薬注ポンプ8に故障が発生したことを通知する。
また、薬注ポンプ8の電源用遮断器に、停電検知用センサを設けてもよい。その場合に、故障判定部104は、停電検知用センサにより停電状態が検知されたときに、薬注ポンプ8に異常が有ると判定する。停電検知用センサにより検知される停電状態としては、例えば、薬注ポンプ8の電源用遮断器が漏電等により遮断された場合、又はメンテナンス操作により遮断された場合がある。
なお、上述した停電検知用センサにより停電状態が検知されたときには、薬注ポンプ8による一次給水ラインL1への塩素剤溶液の供給ができなくなる。そのため、故障判定部104は、一次給水W1への塩素剤溶液の投入を中断すると共に、警報装置(不図示)から警報音等を発生させて、システム管理者等に薬注ポンプ8が停電中であることを通知する。
次に、流量計6における故障の判定について説明する。流量計6が故障した場合に、その状態で一次給水W1に塩素剤溶液を投入しても、一次給水W1の流量に比例した量の塩素剤溶液を投入できなくなる。そのため、水処理システム1では、流量計6が故障した場合に、故障判定前に演算された時間比投入量Zで塩素剤溶液の投入を継続しながら、流量比投入量Yの調整のみ中断する。
故障判定部104は、濾過装置4への通水中に、濾過装置4の入口側に所定の圧力(例えば、0.1MPa以上)がある状態で、流量計6からの計測流量値Qが一定時間(例えば、3分間)に亘って0m3/hに固定されている場合には、流量計6の故障と判定する。その場合に、故障判定部104は、流量計6に故障有りの判定結果を投入量調整部101へ通知する。また、それ以外の場合において、故障判定部104は、流量計6に故障なしの判定結果を投入量調整部101へ通知する。なお、濾過装置4の入口側の圧力は、一次給水ラインL1における濾過装置4の入口側の近傍に、圧力計を設けることにより計測することができる。
メモリ部105は、水処理システム1の制御に必要な制御プログラムや各種データ等を記憶する。メモリ部105は、データとして、流量比投入量Y(Y´)、計測流量値Q、時間比投入量Z、測定残留塩素濃度値SP、測定残留塩素濃度値の上限閾値SPH及び下限閾値SPL、給水開始からの開始遅延時間T1、累積給水時間T2、流量比投入量の補正投入量下限値YMIN及び補正投入量上限値YMAX等を記憶する。
次に、本実施形態の水処理システム1において、流量比投入量Yを調整する場合の動作について、図3及び図4を参照しながら説明する。図3及び図4は、制御装置100において、流量比投入量Yを調整する場合の処理手順を示すフローチャートである。図3及び図4に示すフローチャートの処理は、制御装置100のメモリ部105に記憶された制御プログラムに基づいて、制御装置100の各部により実行される。また、図3及び図4に示すフローチャートの処理は、水処理システム1の運転中において、例えば、1秒毎に繰り返し実行される。
図3に示すステップST101において、投入量調整部101は、濾過装置4への給水開始からの開始遅延時間T1が経過したか否かを判定する。このステップST101において、投入量調整部101により、給水開始からの開始遅延時間T1が経過した(YES)と判定された場合に、処理はステップST102へ移行する。また、ステップST101において、投入量調整部101により、給水開始からの開始遅延時間T1が経過していない(NO)と判定された場合に、本フローチャートの処理は終了する(ステップST101へリターンする)。また、濾過装置4への給水中でない場合も、ステップST101において、NO判定となる。
なお、ステップST101でNO判定となり、本フローチャートの処理が終了(ステップST101へリターン)した場合には、投入量調整部101において、調整後の流量比投入量Y´は演算されず、現在(前回)の流量比投入量Yが維持される。後述するステップST102〜ステップST106においてNO判定となり、本フローチャートの処理が終了(ステップST101へリターン)した場合も同じである。
ステップST102(ステップST101:YES判定)において、投入量調整部101は、濾過装置4の累積給水時間T2が経過したか否かを判定する。このステップST102において、投入量調整部101により、濾過装置4の累積給水時間T2が経過した(YES)と判定された場合に、処理はステップST103へ移行する。また、ステップST102において、投入量調整部101により、濾過装置4の累積給水時間T2が経過していない(NO)と判定された場合に、本フローチャートの処理は終了する(ステップST101へリターンする)。
ステップST103(ステップST102:YES判定)において、投入量調整部101は、故障判定部104から残留塩素計10に故障なしの判定結果が通知されたか否かを判定する。このステップST103において、投入量調整部101により、故障判定部104から残留塩素計10に故障なしの判定結果が通知された(YES)と判定された場合に、処理はステップST104へ移行する。また、ステップST103において、投入量調整部101により、故障判定部104から残留塩素計10に故障有りの判定結果が通知された(NO)と判定された場合に、本フローチャートの処理は終了する(ステップST101へリターンする)。
ステップST104(ステップST103:YES判定)において、投入量調整部101は、故障判定部104から薬注ポンプ8に故障なしの判定結果が通知されたか否かを判定する。このステップST104において、投入量調整部101により、故障判定部104から薬注ポンプ8に故障なしの判定結果が通知された(YES)と判定された場合に、処理はステップST105へ移行する。また、ステップST104において、投入量調整部101により、故障判定部104から薬注ポンプ8に故障有りの判定結果が通知された(NO)と判定された場合に、本フローチャートの処理は終了する(ステップST101へリターンする)。
ステップST105(ステップST104:YES判定)において、投入量調整部101は、故障判定部104から流量計6に故障なしの判定結果が通知されたか否かを判定する。このステップST105において、投入量調整部101により、故障判定部104から流量計6に故障なしの判定結果が通知された(YES)と判定された場合に、処理はステップST106へ移行する。また、ステップST105において、投入量調整部101により、故障判定部104から流量計6に故障有りの判定結果が通知された(NO)と判定された場合に、本フローチャートの処理は終了する(ステップST101へリターンする)。
図4に示すステップST106(ステップST105:YES判定)において、投入量調整部101は、残留塩素計10で測定された測定残留塩素濃度値SPが、予め設定された上限閾値SPH以上又は下限閾値SPL以下(閾値範囲外)であるか否かを判定する。このステップST106において、投入量調整部101により、測定残留塩素濃度値SP≧上限閾値SPH、又は測定残留塩素濃度値SP≦下限閾値SPLである(YES:閾値範囲外)と判定された場合に、処理はステップST107へ移行する。また、ステップST106において、投入量調整部101により、測定残留塩素濃度値SP≧上限閾値SPH、又は測定残留塩素濃度値SP≦下限閾値SPLではない(NO:閾値範囲内)と判定された場合に、本フローチャートの処理は終了する(ステップST101へリターンする)。
ステップST107(ステップST106:YES判定)において、投入量調整部101は、上限閾値SPH又は下限閾値SPLに対する測定残留塩素濃度値SPの偏差と、予め設定された塩素剤溶液の有効塩素濃度Mと、に基づいて、調整後の流量比投入量Y´を演算する。
ステップST108において、投入量判定部102は、投入量調整部101により演算された調整後の流量比投入量Y´が、予め設定された補正投入量下限値YMINから補正投入量上限値YMAXまでの許容範囲内にあるか否かを判定する。このステップST108において、投入量判定部102により、YMIN<Y´<YMAXである(YES:許容範囲内)と判定された場合に、処理はステップST109へ移行する。また、ステップST108において、投入量判定部102により、YMIN<Y´<YMAXではない(NO:許容範囲外)と判定された場合に、処理はステップST110へ移行する。
ステップST109(ステップST108:YES)において、塩素剤供給制御部103は、流量比投入量Y(又はステップST110で戻された投入量Ym)及び計測流量値Qに基づいて、塩素剤溶液の時間比投入量Zを制御する。これにより、本フローチャートの処理は終了する(ステップST101へリターンする)。
一方、ステップST110(ステップST108:NO)において、投入量調整部101は、調整後の流量比投入量Y´を予め設定された投入量Ymに戻す。そして、処理はステップST109へ移行する。
なお、ステップST110において、調整後の流量比投入量Y´が予め設定された投入量Ymに戻された場合に、塩素剤供給制御部103は、投入量調整部101により戻された投入量Ym及び計測流量値Qに基づいて、塩素剤溶液の時間比投入量Zを制御する。すなわち、予め設定された投入量Ym及び計測流量値Qに基づいて演算された時間比投入量Zにより、塩素剤溶液の投入が継続される。
次に、連続測定式の残留塩素計と間欠測定式の残留塩素計を併用した場合における残留塩素濃度の制御について説明する。
図5は、参考実施形態における水処理システム1Aの全体構成図である。この参考実施形態の水処理システム1Aは、図1に示す実施形態(以下、「実施形態(図1)」ともいう)の水処理システム1と主要部が共通する。そのため、参考実施形態において、実施形態(図1)と同一又は同等の構成については同じ符号を付し、その説明を適宜に省略する。参考実施形態において説明しない構成には、実施形態(図1)の説明が援用される。
図5に示すように、参考実施形態の水処理システム1Aは、上述した実施形態(図1)の残留塩素計10の代わりに、連続測定式の第1残留塩素計11と、間欠測定式の第2残留塩素計12と、を備える。
第1残留塩素計11は、貯水タンク5の出口側における二次給水W2の残留塩素濃度を測定する機器である。第1残留塩素計11は、接続部J4において二次給水ラインL2に接続されている。接続部J4は、二次給水ラインL2において、貯水タンク5の出口側の近傍に配置されている。第1残留塩素計11は、制御装置100Aと電気的に接続されている。第1残留塩素計11で測定された二次給水W2の残留塩素濃度(以下、「測定残留塩素濃度値SP1」ともいう)は、制御装置100Aへ検出信号として送信される。
第2残留塩素計12は、濾過装置4の出口側における二次給水W2の残留塩素濃度を測定する機器である。第2残留塩素計12は、接続部J3において二次給水ラインL2に接続されている。接続部J3は、二次給水ラインL2において、濾過装置4と貯水タンク5との間に配置されている。第2残留塩素計12は、制御装置100Aと電気的に接続されている。第2残留塩素計12で測定された二次給水W2の残留塩素濃度(以下、「測定残留塩素濃度値SP2」ともいう)は、制御装置100Aへ検出信号として送信される。
制御装置100Aの投入量調整部101A(図2参照)は、第1残留塩素計11で測定された測定残留塩素濃度値SP1、及び第2残留塩素計12で測定された測定残留塩素濃度値SP2をそれぞれ用いて、実施形態(図1)と同様の手法により調整後の流量比投入量Y´を個別に算出する。
すなわち、参考実施形態の投入量調整部101Aは、第1残留塩素計11で測定された測定残留塩素濃度値SP1を用いて、調整後の流量比投入量Y´を算出する。また、参考実施形態の投入量調整部101Aは、第2残留塩素計12で測定された測定残留塩素濃度値SP2を用いて、調整後の流量比投入量Y´を算出する。
このような制御を実施した場合、濾過装置4の出口側で測定される測定残留塩素濃度値SP2は、貯水タンク5の出口側で測定される測定残留塩素濃度値SP1よりも高くなることが考えられる。そのため、参考実施形態においては、測定残留塩素濃度値SP2が閾値範囲外か否かを判定する場合に用いる上限閾値SPHを、実施形態(図1)よりも高めに設定している。これによれば、水処理システム1Aでは、流量比投入量Yを調整する必要がない状態において、濾過装置4の出口側における測定残留塩素濃度値SP2が高いと判定されにくくなるため、流量比投入量Yが少なめに調整されるのを抑制できる。従って、参考実施形態の水処理システム1Aでは、二次給水W2の残留塩素濃度を適切に調整することができる。
ところで、濾過装置4で製造される二次給水W2の残留塩素濃度が一定に保たれるように、一次給水W1の流量に比例した量の塩素剤溶液を投入する、いわゆる水質追従型薬注制御の水処理システムでは、塩素剤供給手段としての薬注ポンプと、残留塩素濃度測定手段としての残留塩素計とがペアで使用される。そのため、参考実施形態の水処理システム1Aにおいても、濾過装置4及び貯水タンク5の入口側と出口側に、それぞれ薬注ポンプ及び残留塩素計を1ペアずつ設置することが望ましい。
一方、水処理システム1Aを設置する場合に、初期費用を削減するため、濾過装置4の出口側に薬注ポンプを配置しないことが考えられる。その場合、制御装置100Aは、1つの薬注ポンプの動作を、2つの残留塩素計で測定される測定残留塩素濃度値に基づいて制御する。しかし、このような構成を、一般的な水質追従型薬注制御の水処理システムに適用すると、濾過装置4の出口側で測定される測定残留塩素濃度値SP2と、貯水タンク5の出口側で測定される測定残留塩素濃度値SP1とを連携させるための制御が複雑化し、必要な設定項目が増える。従って、需要先に供給する二次給水の残留塩素濃度を適切に調整するために、水処理システムの扱いが難しくなることが考えられる。
これに対して、参考実施形態の水処理システム1Aでは、制御の複雑化や設定項目を増加させることなしに、二次給水W2の残留塩素濃度を適切に調整することができる。そのため、水処理システム1Aの扱いを容易することができる。
次に、参考実施形態の水処理システム1Aにおいて、1つの薬注ポンプ8を2系統の信号経路で制御する場合について説明する。
図6に示すように、制御装置100Aは、1つの薬注ポンプ8を制御するための2つのチャンネルch1、ch2を有する。チャンネルch1からは、制御装置100Aの投入量調整部101A(図2参照)が貯水タンク5の出口側で測定された測定残留塩素濃度値SP1を用いて流量比投入量Yを調整したときの時間比投入量Zに対応するパルス信号が出力される。チャンネルch2からは、制御装置100Aの投入量調整部101Aが濾過装置4の出口側で測定された測定残留塩素濃度値SP2を用いて流量比投入量Yを調整したときの時間比投入量Zに対応するパルス信号が出力される。
チャンネルch1、ch2と薬注ポンプ8との間は、共通の信号経路により接続されている。チャンネルch1、ch2から薬注ポンプ8へは、オープンコレクタ方式によりパルス信号が出力される。すなわち、各チャンネルch1、ch2からのパルス信号は、それぞれ独立に薬注ポンプ8へ出力される。
また、制御装置100Aの塩素剤供給制御部103A(図2参照)は、各チャンネルch1、ch2からパルス信号を出力する際に、それぞれのパルス信号が同じタイミングで出力されないように、各パルス信号を出力するタイミングを制御する。具体的には、塩素剤供給制御部103Aは、チャンネルch1、ch2からそれぞれパルス信号を出力するタイミングが重なった場合、チャンネルch2からパルス信号を出力するタイミングを、チャンネルch1パルス信号を出力するタイミングよりも遅らせるように制御する。
次に、塩素剤供給制御部103Aにおいて、パルス信号の出力のタイミングを制御した場合の具体例を図6及び図7を参照しながら説明する。
図6及び図7は、チャンネルch1、ch2から出力されるパルス信号と薬注ポンプ8に出力パルス信号との関係を示すタイミングチャートである。図6は、制御装置100Aにおいて、一般的なオープンコレクタ方式によりパルス信号を出力した場合のタイミングチャートである。図7は、制御装置100Aにおいて、参考実施形態のオープンコレクタ方式によりパルス信号を出力した場合のタイミングチャートである。
図6に示すように、制御装置100Aのチャンネルch1、ch2から出力されるパルス信号(ch1出力、ch2出力)は、その出力のタイミングが重なる場合がある(破線部参照)。その場合に、一般的なオープンコレクタ方式では、チャンネルch1、ch2から出力された2つのパルス信号が合成されるため、合成出力として、1のパルス信号が薬注ポンプ8に出力される。その結果、薬注ポンプ8からは、1のパルス信号に対応した投入量の塩素剤溶液が投入される。従って、一般的なオープンコレクタ方式では、塩素剤溶液の投入量が本来の投入量より少なくなる不具合が発生する。
一方、図7に示すように、参考実施形態では、チャンネルch1、ch2から出力されるパルス信号(ch1出力、ch2出力)の出力のタイミングが重なる場合には、制御装置100Aにおいて、チャンネルch2からパルス信号を出力するタイミングが、チャンネルch1からパルス信号を出力するタイミングよりも遅れるように制御される(破線部参照)。従って、参考実施形態では、合成出力として、2つのパルス信号(ch1出力、ch2出力)が薬注ポンプに出力される。このように、参考実施形態では、2つのパルス信号に対応した投入量の塩素剤溶液が投入されるため、塩素剤溶液の投入量が本来の投入量より少なくなる不具合を解消できる。
上述した実施形態(図1)に係る水処理システム1によれば、例えば、以下のような効果が得られる。
本実施形態に係る水処理システム1は、濾過装置4において給水開始直後の不安定な期間(開始遅延時間T1又は累積給水時間T2)が経過して、測定残留塩素濃度値SPが上限閾値SPH以上又は下限閾値SPL以下の閾値範囲外である場合に流量比投入量Yを調整する。このように、水処理システム1は、塩素剤溶液の流量比投入量Yを調整した後、二次給水W2の残留塩素濃度が安定してから次の流量比投入量Yを調整するので、一般的なPIDコントローラ等により塩素剤溶液の投入量を自動調整する手法に比べて、塩素剤溶液を投入してから二次給水W2の残留塩素濃度が変動するまでの応答遅れの影響を受けにくくすることができる。
従って、濾過装置4が保有水量の多い処理槽を備える場合において、塩素剤溶液の投入量を変更してから二次給水W2の残留塩素濃度が変動するまでに時間を要しても、本実施形態に係る水処理システム1によれば、二次給水W2の残留塩素濃度を適切に自動調整できる。
また、水処理システム1において、造水装置としての濾過装置4は、水槽部でもある処理槽を備えており、開始遅延時間T1又は累積給水時間T2は、水槽部の保有水量に基づいて設定される。そのため、水処理システム1によれば、塩素剤溶液の流量比投入量Yを調整した後、二次給水W2の残留塩素濃度が安定するまでの期間や流量等を、水槽部の保有水量に基づいて、より正確に設定することができる。
また、水処理システム1において、投入量調整部101は、投入量判定部102において、調整後の流量比投入量Y´が、予め設定された補正投入量下限値YMINから補正投入量上限値YMAXまでの許容範囲外であると判定された場合には、予め設定された投入量Ym(YMIN<Ym<YMAX)を調整後の流量比投入量Y´とする。そのため、水処理システム1によれば、フィードバック制御の暴走等により、調整後の流量比投入量Y´が許容範囲を超えた場合において、塩素剤溶液の投入量が過多となるのを抑制できる。また、この場合に、水処理システム1は、塩素剤溶液の投入を中断しないので、水質の悪化を最小限に抑制できる。
また、水処理システム1において、故障判定部104は、残留塩素計10、薬注ポンプ8、又は流量計6における故障の有無を判定する。また、投入量調整部101は、故障判定部104において、流量計6、残留塩素計10、又は薬注ポンプ8の少なくとも一つに故障が有ると判定された場合には、現在の流量比投入量Yに対する補正量ΔYを演算することなく、現在(故障前)の流量比投入量Yを維持する。そのため、水処理システム1によれば、二次給水W2の水質を管理するために使用している機器に故障が発生しても、二次給水W2の水質の悪化を最小限に抑制できる。
また、水処理システム1において、連続測定式の第1残留塩素計と間欠測定式の第2残留塩素計とを設けた構成としてもよい。その場合に、故障判定部104は、第1及び第2残留塩素計から送信された測定残留塩素濃度値の偏差(絶対値)が予め設定された故障判定値SPEを超過した場合には、第1又は第2残留塩素計のいずれかに故障が有ると判定する。これによれば、水処理システム1において、異なる検出方式の残留塩素計を2つ設けた場合においても、それぞれの残留塩素計の故障を的確に判定できる。なお、残留塩素計において、故障の自己診断機能を有する場合には、この機能と組み合わせてもよい。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかし、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
本実施形態では、造水装置としての濾過装置4が備える処理槽を水槽部とし、濾過装置4の処理槽へ供給される一次給水W1に塩素剤を供給すると共に、濾過装置4の処理槽から送出される二次給水W2の残留塩素濃度を測定する例について説明した。しかし、本発明は、濾過処理水の受水槽でもある貯水タンク5を水槽部とし、濾過処理水に塩素剤溶液を供給すると共に、貯水タンク5から送出される二次給水W2の残留塩素濃度を測定するように構成することもできる。すなわち、この変形例では、濾過装置4で製造される濾過処理水を一次給水として水槽部である貯水タンク5に供給する。
更に、本発明では、処理槽(濾過装置4)及び受水槽(貯水タンク5)を合わせて水槽部と見なすこともできる。この場合、濾過装置4の処理槽へ供給される一次給水W1に塩素剤溶液を供給すると共に、貯水タンク5から送出される二次給水W2の残留塩素濃度を測定するように構成する。
本実施形態では、造水装置として砂濾過装置等の濾過装置4を用いた例について説明した。しかし、本発明の造水装置は、これに限らず、例えば、除鉄除マンガン装置や限外濾過膜,精密濾過膜等を有する膜分離装置であってもよい。
本実施形態では、図1に示すように、薬注ポンプ8と、残留塩素計10とを備えた水処理システム1について説明した。しかし、本発明は、薬注ポンプ8(塩素剤供給手段)と残留塩素計10(残留塩素濃度測定手段)とが1:1で対応する構成であれば、本実施形態以外のシステムにも適用できる。例えば、薬注ポンプ8、濾過装置4、貯水タンク5及び残留塩素計10を一組とする構成が、一次給水ラインL1及び二次給水ラインL2に対して並列に複数接続されたシステムであってもよい。また、薬注ポンプ8、貯水タンク5及び残留塩素計10を一組とする構成において、濾過装置4が、薬注ポンプ8と貯水タンク5との間における一次給水ラインL1及び二次給水ラインL2に対して並列に複数接続されたシステムであってもよい。
本実施形態では、残留塩素計10、薬注ポンプ8、又は流量計6のいずれかに故障が有る場合に、警報装置から警報音等を発する例について説明した。しかし、この例に限らず、操作盤(不図示)の情報表示エリアにシステムや機器の故障を通知するメッセージを表示させるようにしてもよい。