JP5996338B2 - 電着塗料組成物 - Google Patents
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Description
アミン化樹脂(A)、硬化剤(B)およびリン酸亜鉛(C)を含む電着塗料組成物であって、
このリン酸亜鉛(C)は、平均粒子径D50(体積50%径)が3μm以下であり、および
このリン酸亜鉛(C)は、電着塗料組成物中において、カチオン分散剤で分散された状態で含まれる、
電着塗料組成物、を提供するものであり、これにより上記課題が解決される。
本発明の電着塗料組成物は、耐食性に優れた硬化電着塗膜を形成することができるため、ジルコニウム化成処理を施した被塗物の電着塗装において好適に用いることができる。
本発明の電着塗料組成物はアミン化樹脂(A)を含む。このアミン化樹脂(A)は、電着塗膜を構成する塗膜形成樹脂である。アミン化樹脂(A)として、樹脂骨格中のオキシラン環を有機アミン化合物で変性して得られるカチオン変性エポキシ樹脂が好ましい。一般にカチオン変性エポキシ樹脂は、出発原料樹脂分子内のオキシラン環を1級アミン、2級アミンあるいは3級アミンおよび/またはその酸塩などのアミン類との反応によって開環して製造される。出発原料樹脂の典型例は、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどの多環式フェノール化合物とエピクロルヒドリンとの反応生成物であるポリフェノールポリグリシジルエーテル型エポキシ樹脂である。また他の出発原料樹脂の例として、特開平5−306327号公報に記載され公知であるオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂を挙げることができる。これらのエポキシ樹脂は、ジイソシアネート化合物、またはジイソシアネート化合物のNCO基をメタノール、エタノールなどの低級アルコールでブロックして得られたビスウレタン化合物と、エピクロルヒドリンとの反応によって調製することができる。
本発明の電着塗料組成物は、硬化剤(B)を含む。硬化剤(B)としては、電着塗装後における加熱(焼き付け)工程において、アミン化樹脂(A)を硬化させることができる成分を任意に用いることができる。硬化剤(B)として、安定性と塗装性能からブロックイソシアネート硬化剤を用いるのが好ましい。硬化剤として、メラミン樹脂、フェノール樹脂などの有機硬化剤、シランカップリング剤、金属硬化剤なども用いることができる。
本発明の電着塗料組成物はリン酸亜鉛(C)を含む。そして本発明において、このリン酸亜鉛(C)は、平均粒子径D50(体積50%径)が3μm以下であること、そしてこのリン酸亜鉛(C)は電着塗料組成物中においてカチオン分散剤で分散された状態で含まれること、を特徴とする。
1分子中に少なくとも1つのアミノ基を有するアミノシランの具体例として、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、およびN−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩などを挙げることができる。市販されているアミノ基含有シランカップリング剤である「KBM−602」、「KBM−603」、「KBE−603」、「KBM−903」、「KBE−903」、「KBE−9103」、「KBM−573」、「KBP−90」(いずれも商品名、信越化学工業社製)、および「XS1003」(商品名、チッソ社製)などを使用することができる。アミノシラン化合物としては、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシランが好ましい。
(1) リン酸亜鉛と、上記アミノシラン化合物とを混合し、分散・撹拌させることによって、平均粒子径D50(体積50%径)が3μm以下であり、カチオン分散剤で分散された状態である、リン酸亜鉛(C)を得る方法、
(2) リン酸亜鉛と、上記カチオン基を有する顔料分散樹脂とを混合し、分散・撹拌させることによって、平均粒子径D50(体積50%径)が3μm以下であり、カチオン分散剤で分散された状態である、リン酸亜鉛(C)を得る方法、
(3) 酸化亜鉛を上記カチオン基を有する顔料分散樹脂で分散し、次いで、リン酸を加えて酸化亜鉛と反応させる固液反応によって、平均粒子径D50(体積50%径)が3μm以下であり、カチオン分散剤で分散された状態である、リン酸亜鉛(C)を得る方法。
上記(1)または(2)の方法においては、分散・撹拌の条件を適宜調整することにより、所定の平均粒子径のリン酸亜鉛(C)を得ることができる。
ここで、本発明の電着塗料組成物に含まれるリン酸亜鉛(C)には、硬化触媒機能を有する亜鉛が含まれる。そのため、上記リン酸亜鉛(C)が含まれることによって、有機錫硬化触媒の使用量を低減させることができるという利点がある。
本発明の電着塗料組成物は、電着塗料組成物において通常用いられる顔料を含んでもよい。使用できる顔料の例としては、通常使用される無機顔料、例えば、二酸化チタン(チタンホワイト)、カーボンブラックおよびベンガラのような着色顔料;カオリン、タルク、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、マイカおよびクレーのような体質顔料;リン酸鉄、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、亜リン酸亜鉛、シアン化亜鉛、酸化亜鉛、トリポリリン酸アルミニウム、およびリンモリブデン酸アルミニウム、リンモリブデン酸アルミニウム亜鉛のような防錆顔料など、が挙げられる。電着塗料組成物中にこれらの顔料が含まれる場合の顔料の量は、電着塗料組成物の樹脂固形分に対して1〜30質量%であるのが好ましい。
本発明の電着塗料組成物は、さらにアミノテトラゾール(E)を含むのが好ましい。アミノテトラゾール(E)は、電着塗料組成物に含まれるアミン化樹脂(A)と硬化剤(B)との架橋硬化反応を効果的に促進し、得られる硬化電着塗膜の耐食性を向上させることができる。
本発明の電着塗料組成物は、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノエチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテルなどの有機溶媒、乾き防止剤、消泡剤などの界面活性剤、アクリル樹脂微粒子などの粘度調整剤、はじき防止剤、バナジウム塩、銅、鉄、マンガン、マグネシウム、カルシウム、イットリウム、ランタン、セリウム、ネオジウム、ジルコニウム、チタン塩などの無機防錆剤、などの慣用の塗料用添加剤を必要に応じて添加してもよい。またこれら以外に、目的に応じて公知の補助錯化剤、緩衝剤、平滑剤、応力緩和剤、光沢剤、半光沢剤、可塑剤、酸化防止剤、および紫外線吸収剤などを配合してもよい。
本発明の電着塗料組成物は、上記アミン化樹脂(A)以外にも、他の塗膜形成樹脂成分を含んでもよい。他の塗膜形成樹脂成分として、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ブタジエン系樹脂、キシレン樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。電着塗料組成物に含まれうる他の塗膜形成樹脂成分として、キシレン樹脂が好ましい。キシレン樹脂として、例えば、2以上10以下の芳香族環を有するキシレン樹脂が挙げられる。他の塗膜形成樹脂成分は、塗膜形成樹脂成分中、30質量%まで含有させることができる。
本発明の電着塗料組成物は、アミン化樹脂(A)、硬化剤(B)および必要に応じた顔料分散ペーストなどを水性溶媒中に分散させた後、リン酸亜鉛(C)そして必要に応じた顔料(D)およびアミノテトラゾール(E)などを加えて混合することによって調製することができる。
被塗物
本発明の電着塗料組成物を塗装する被塗物として、通電可能な種々の被塗物を用いることができる。使用できる被塗物として例えば、冷延鋼板、熱延鋼板、ステンレス、電気亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、亜鉛−アルミニウム合金系めっき鋼板、亜鉛−鉄合金系めっき鋼板、亜鉛−マグネシウム合金系めっき鋼板、亜鉛−アルミニウム−マグネシウム合金系めっき鋼板、アルミニウム系めっき鋼板、アルミニウム−シリコン合金系めっき鋼板、錫系めっき鋼板などから構成される被塗物が挙げられる。
電着塗装は、被塗物を陰極として陽極との間に、通常、50〜450Vの電圧を印加して行う。印加電圧が50V未満であると電着が不十分となるおそれがあり、450Vを超えると、塗膜が破壊され異常外観となるおそれがある。電着塗装時、塗料組成物の浴液温度は、通常10〜45℃に調節される。
メチルイソブチルケトン92部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名DER−331J、ダウケミカル社製)940部、ビスフェノールA350部、オクチル酸95部、ジメチルベンジルアミン2部を加え、反応容器内の温度を120℃に保持し、エポキシ当量が1170g/eqになるまで反応させた後、反応容器内の温度が110℃になるまで冷却した。ついでジエチレントリアミンジケチミン(固形分73%のメチルイソブチルケトン溶液)82部とN−メチルエタノールアミン26部、ジエタノールアミン60部の混合物を添加し、110℃で1時間反応させることにより、アミン化樹脂(カチオン変性エポキシ樹脂:樹脂A)を得た。
この樹脂の数平均分子量は2,600、アミン価は58mgKOH/g(うち1級アミンに由来するアミン価は17mgKOH/g)、水酸基価は240mgKOH/gであった。
メチルイソブチルケトン92部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名DER−331J、ダウケミカル社製)940部、ビスフェノールA350部、オクチル酸30部、ジメチルベンジルアミン2部を加え、反応容器内の温度を120℃に保持し、エポキシ当量が820g/eqになるまで反応させた後、反応容器内の温度が110℃になるまで冷却した。ついでジエタノールアミン160部を添加し、110℃で1時間反応させることにより、アミン化樹脂(カチオン変性エポキシ樹脂:樹脂B)を得た。
この樹脂の数平均分子量は2,600、アミン価は58mgKOH/g、水酸基価は310mgKOH/gであった。
ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)1680部およびメチルイソブチルケトン732部を反応容器に仕込み、これを60℃まで加熱した。ここに、トリメチロールプロパン346部をMEKオキシム1067部に溶解させたものを60℃で2時間かけて滴下した。さらに75℃で4時間加熱した後、IRスペクトルの測定において、イソシアネート基に基づく吸収が消失したことを確認し、放冷後、メチルイソブチルケトン27部を加えて固形分が78%のブロックイソシアネート硬化剤(1)を得た。イソシアネート基価は252mgKOH/gであった。
ジフェニルメタンジイソシアナート1340部およびメチルイソブチルケトン277部を反応容器に仕込み、これを80℃まで加熱した後、ε−カプロラクタム226部をブチルセロソルブ944部に溶解させたものを80℃で2時間かけて滴下した。さらに100℃で4時間加熱した後、IRスペクトルの測定において、イソシアネート基に基づく吸収が消失したことを確認し、放冷後、メチルイソブチルケトン349部を加えてブロックイソシアネート硬化剤(2)を得た(固形分80%)。イソシアネート基価は251mgKOH/gであった。
撹拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応容器にビスフェノールA型エポキシ樹脂385部、ビスフェノールA120部、オクチル酸95部、2−エチル−4−メチルイミダゾール1%溶液1部を仕込んで、窒素雰囲気下160〜170℃で1時間反応させ、ついで120℃まで冷却後、2−エチルヘキサノール化ハーフブロック化トリレンジイソシアネートのメチルイソブチルケトン溶液(固形分95%)198部を加えた。反応混合物を120〜130℃で1時間保持した後、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル157部を加えた。そして85〜95℃に冷却して均一化させた。つぎにジエチレントリアミンジケチミン(固形分73%のメチルイソブチルケトン溶液)277部を加え120℃で1時間撹拌しエチレングリコールモノn−ブチルエーテル13部を加え、アミン化樹脂を製造した。ついで18部のイオン交換水とギ酸8部を仕込み上記アミン化樹脂を混合し15分撹拌し、イオン交換水200部を混合して、1級アミノ基を有する顔料分散樹脂(平均分子量2,200)の樹脂溶液(樹脂固形分25%)を得た。
製造例1で得たアミン化樹脂(樹脂A)350g(固形分換算)と、製造例2−1で得たブロックイソシアネート硬化剤(1)および製造例2−2で得たブロックイソシアネート硬化剤(2)それぞれ75g(固形分換算)とを混合し、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテルを15g(全固形分に対して3%)になるように添加した。次にギ酸を中和率40%になるように加えて中和し、イオン交換水を加えてゆっくり希釈し、次いで固形分が36%になるように減圧下でメチルイソブチルケトンを除去して、電着塗料樹脂エマルション(Em1)を得た。
製造例1で得たアミン化樹脂(樹脂A)400g(固形分換算)と、製造例2−1で得たブロックイソシアネート硬化剤(1)100g(固形分換算)とを混合し、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテルを15g(全固形分に対して3%)になるように添加した。次にギ酸を中和率40%になるように加えて中和し、イオン交換水を加えてゆっくり希釈し、次いで固形分が36%になるように減圧下でメチルイソブチルケトンを除去して、電着塗料樹脂エマルション(Em2)を得た。
製造例2で得たアミン化樹脂(樹脂B)350g(固形分)と、製造例2−1で得たブロックイソシアネート硬化剤(1)および製造例2−2で得たブロックイソシアネート硬化剤(2)それぞれ75g(固形分)とを混合し、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテルを固形分に対して3%(15g)になるように添加した。次にギ酸を中和率40%になるように加えて中和し、イオン交換水を加えてゆっくり希釈し、次いで固形分が36%になるように減圧下でメチルイソブチルケトンを除去して、電着塗料樹脂エマルション(Em3)を得た。
イオン交換水570gに、アミノシラン(KBM603)30gを攪拌しながら添加し、30分間常温で加水分解させた。次にリン酸亜鉛(試薬)を400g添加し10分間攪拌させた。その後サンドミルを用いて、40℃において、平均粒子径D50(体積50%径)0.6μmとなるまで分散して調製し、リン酸亜鉛分散ペースト(1)(固形分43%)を得た。
なお、平均粒子径D50(体積50%径)の測定は、レーザードップラー式粒度分析計(日機装社製、「マイクロトラックUPA150」)を用いて、分散体を信号レベルが適性になるようイオン交換水で希釈して、平均粒子径D50(体積50%径)を測定した。
平均粒子径D50(体積50%径)が1.5μmとなるまで分散して調製したこと以外は製造例5−1と同様にして分散して調製し、リン酸亜鉛分散ペースト(2)(固形分43%)を得た。
イオン交換水50gに製造例3で得られた顔料分散樹脂100g(固形分換算)添加し、さらに酸化亜鉛(試薬)290gを添加し15分間攪拌した。その後サンドミルを用いて、40℃で分散させた。次いで、75%リン酸(試薬)を280g徐々に添加し、反応させながら分散調製して、リン酸亜鉛分散ペースト(3)(固形分55%、平均粒子径D50(体積50%径)0.4μm)を得た。
製造例5−1で用いたアミノシランの代わりに、製造例3で得られた顔料分散樹脂を30g(固形分換算)を用いた以外は、製造例5−1と同様にして分散して調製し、リン酸亜鉛分散ペースト(4)(平均粒子径D50(体積50%径)3.5μm)を得た。
製造例5−1で用いたアミノシランの代わりに、製造例3で得られた顔料分散樹脂を30g(固形分換算)を用い、分散固形分を40%にした以外は、製造例5−1と同様にして分散して調製し、リン酸亜鉛分散ペースト(5)(平均粒子径D50(体積50%径)0.6μm)を得た
サンドミルを用いて、製造例3で得られた顔料分散樹脂を含む以下の表1に示す配合に基づき、得られた混合物を40℃において、平均粒子径D50(体積50%径)が0.6μmとなるまで分散し、調製して、電着塗料用顔料分散ペースト(固形分49%)を得た。
サンドミルを用いて製造例6と同様にして、製造例3で得られた顔料分散樹脂を含む以下の表2に示す配合に基づき、得られた混合物を40℃において、平均粒子径D50(体積50%径)が0.6μmとなるまで分散し、調製して、顔料および錫硬化触媒を含む分散ペースト(固形分49%)を得た。得られた、顔料および錫硬化触媒を含む分散ペーストは、比較例3および参考例1に用いた。
ステンレス容器に、イオン交換水、アミン化樹脂およびブロックイソシアネート硬化剤を含む、製造例4−2の電着塗料樹脂エマルション(2)(表3中では「樹脂Em(2)」と記載)17部、製造例5−1のリン酸亜鉛分散ペースト(1)(表3中では「分散ペースト(1)」と記載)0.3部、製造例6の顔料分散ペーストを添加して混合し、その後40℃で16時間エージングした。なお下記表3において、リン酸亜鉛分散ペースト(1)の量0.3部は、リン酸亜鉛の質量であり、リン酸亜鉛分散ペーストの量ではない。また顔料の量は、二酸化チタン、カーボンブラックおよびカオリンの総質量が下記表3中の量(2.7部)となるように加えた。
ステンレス容器に、表3に記載の成分を表3に記載の配合量で混合し、その後40℃で16時間エージングした。なお下記表3において、リン酸亜鉛分散ペースト(1)〜(5)の量は、リン酸亜鉛の質量が下記表3中の量となるように加えた。また顔料の量は、実施例2〜10および比較例1〜2では、二酸化チタン、カーボンブラックおよびカオリンの総質量が下記表3中の量となるように加えた。比較例3では、二酸化チタン、カーボンブラック、カオリンおよび錫の総質量が下記表3中の量となるように加えた。
冷延鋼板(JIS G3141、SPCC−SD)を、サーフクリーナーEC90(日本ペイント社製)中に50℃で2分間浸漬して、脱脂処理した。次いで、ZrF 500ppmを含み、NaOHを用いてpH4に調整したジルコニウム化成処理液中に、40℃で90秒間浸漬して、ジルコニウム化成処理を行った。
次いで、上記実施例および比較例により得られた電着塗料組成物に、ジルコニウム化成処理を行った鋼板を浸漬して、表中に記載された条件で電圧(30秒昇圧180Vに達してから150秒間保持)を印加して、被塗物上に未硬化の電着塗膜を析出させた。次いで、表3中に記載された焼付け温度で15分間加熱して、硬化電着塗膜を形成した。得られた硬化電着塗膜を用いて、下記の評価を行った。
参考例1は、電着塗装前にリン酸亜鉛化成処理を行った参考例である。参考例1で用いる電着塗料組成物は、製造例4−1の樹脂エマルション(1)、製造例7の顔料および錫硬化触媒を含む分散ペーストを表3に記載する配合量で添加して混合し、その後40℃で16時間エージングして調製した。また顔料の量は、二酸化チタン、カーボンブラック、カオリンおよび錫の総質量が下記表3中の量となるように加えた。
参考例1では、冷延鋼板(JIS G3141、SPCC−SD)を、サーフクリーナーEC90(日本ペイント社製)中に50℃で2分間浸漬して脱脂処理し、サーフファインGL−1(日本ペイント社製)で表面調整し、次いでリン酸亜鉛化成処理液であるサーフダインSD−5000(日本ペイント社製、リン酸亜鉛化成処理液)中に40℃で2分間浸漬して、リン酸亜鉛化成処理を行った。次いで、上記より得られた電着塗料組成物を用いて、実施例1と同様に電着塗装を行った。
得られた塗装板の塗膜に、基材に達するようにナイフでクロスカット傷を入れ、JASO M609−91「自動車用材料腐食試験方法」を100サイクル行った。その後、クロスカット部からの錆やフクレ発生を観察し、実際の腐食環境に即した耐食性を評価した。評価基準は以下の通りである。
評価基準
◎:錆またはフクレの最大幅がカット部より5mm未満(両側)
○:錆またはフクレの最大幅がカット部より5mm以上7.5mm未満(両側)カット部以外にブリスターなし
○△:錆またはフクレの最大幅がカット部より5mm以上7.5mm未満(両側)カット部以外もブリスターあり
△:錆またはフクレの最大幅がカット部より7.5mm以上10mm未満(両側)
△×:錆またはフクレの最大幅がカット部より10mm以上12.5mm未満(両側)
×:錆またはフクレの最大幅がカット部より12.5mm以上(両側)
冷延鋼板(JIS G3141、SPCC−SD)を、サーフクリーナーEC90(日本ペイント社製)中に50℃で2分間浸漬して、脱脂処理した。次いで、実施例または比較例で得られた電着塗料組成物に鋼板を浸漬して、表中に記載された条件で上記と同様に電圧を印加して、被塗物上に未硬化の電着塗膜を析出させた。次いで、表3中に記載された焼付け温度で15分間加熱して、硬化電着塗膜を形成した。
硬化後の電着塗装板の塗膜に、基材に達するようにナイフで直線状の傷を入れた。この塗装板を、5%食塩水中に50℃で480時間浸漬した後、直線状の傷部からの錆やフクレ発生を観察し、評価した。評価基準は以下の通りである。
評価基準
◎:錆またはフクレが生じていない
○:錆またはフクレの最大幅がカット部より2.5mm未満(両側)ブリスターなし
○△:錆またはフクレの最大幅がカット部より2.5mm未満(両側)ブリスターあり
△:錆またはフクレの最大幅がカット部より2.5mm以上5mm未満(両側)
△×:錆またはフクレの最大幅がカット部より5mm以上10mm未満(両側)
×:錆またはフクレの最大幅がカット部より10mm以上(両側)
上記より得られた硬化電着塗膜を有する塗装物の塗膜を、メチルイソブチルケトンをしみこませたガーゼで10回擦った後、剥離状態を、下記評価基準に基づき目視評価した。
評価基準
○:剥離なし
○△:わずかに剥離
×:剥離あり
付きまわり性は、いわゆる4枚ボックス法により評価した。すなわち、図1に示すように、4枚のジルコニウム化成処理を行った鋼板11〜14を、立てた状態で間隔20mmで平行に配置し、両側面下部および底面を布粘着テープ等の絶縁体で密閉したボックス10を調製した。なお、鋼鈑14以外の鋼鈑11〜13には下部に8mmφの貫通穴15が設けられている。上記実施例および比較例により得られた電着塗料組成物4リットルを塩ビ製容器に移して第1の電着浴とした。図2に示すように、上記ボックス10を、被塗装物として電着塗料21を入れた電着塗料容器20内に浸漬した。この場合、各貫通穴15からのみ塗料21がボックス10内に侵入する。
ジルコニウム化成処理を行ったGA鋼板を浸漬して、表3中に記載された条件で電圧(30秒昇圧200Vに達してから150秒間保持)を印加して、被塗物上に未硬化の電着塗膜を析出させた。次いで、表中に記載された焼付け温度で15分間加熱して、硬化電着塗膜を形成した。得られた硬化電着塗膜を用いて、下記の評価基準に基づき評価を行った。
評価基準
○:ガスピン発生なし
△:僅かにガスピン発生
×:全面にガスピン発生
硬化電着塗膜外観における異常の有無を目視で判断した。評価基準は以下の通りとした。
評価基準
◎:極めて均一な塗膜外観を有している
○:均一な塗膜外観を有している
○△:ややムラがあると視認される部分があるものの、全体としてほぼ均一な塗膜外観を有している
△:ムラが視認される
×:塗膜外観が明らかに不均一である
電着塗料組成物を静置した状態または撹拌した状態において、塗料組成物の状態を目視にて判定し、安定性を評価した。評価基準は以下の通りとした。
評価基準
○:電着塗料組成物を静置した状態で良好に分散して安定である
○△:電着塗料組成物を静置した状態では顔料分が沈降しやすく安定ではないものの、再度撹拌することによってすぐに再分散する
△:電着塗料組成物の分散状態を維持するために連続的に撹拌し続ける必要がある
×:電着塗料組成物を連続的に撹拌し続けた状態でも分散が安定化しない
比較例1は、リン酸亜鉛分散ペーストに含まれるリン酸亜鉛の平均粒子径D50(体積50%径)が3μmを超える実験例である。この場合は、得られた硬化電着塗膜の耐食性が劣っており、さらに硬化性、付きまわり性なども劣っていた。
比較例2は、リン酸亜鉛の代わりに酢酸亜鉛を含む実験例である。この場合もまた、得られた硬化電着塗膜の耐食性が劣っており、さらに耐ガスピン性も劣り、得られた塗膜の塗膜外観も劣っていた。またこの電着塗料組成物は、付きまわり性が著しく低下した。
比較例3は、リン酸亜鉛を含まず、硬化触媒としてジブチル錫オキシドを用いた実験例である。この場合もまた、得られた硬化電着塗膜の耐食性が劣っており、さらに耐ガスピン性も劣り、付きまわり性も劣っていた。
参考例1は、リン酸亜鉛化成処理液を用いて化成処理を行った実験例である。この参考例1の結果と実施例1〜10の結果との対比により、実施例の電着塗料組成物は、ジルコニウム化成処理後に電着塗装する場合であっても、リン酸亜鉛化成処理液を用いて化成処理した後に従来の電着塗料組成物を用いて電着塗装する場合と同等またはそれ以上の耐食性および付きまわり性などが得られることが確認できた。
11〜14:化成処理鋼板
15:貫通孔
20:電着塗装容器
21:電着塗料
22:対極
Claims (6)
- アミン化樹脂(A)、硬化剤(B)およびリン酸亜鉛(C)を含む電着塗料組成物であって、
該リン酸亜鉛(C)は、平均粒子径D50(体積50%径)が3μm以下であり、および
該リン酸亜鉛(C)は、電着塗料組成物中において、カチオン分散剤で分散された状態で含まれる、
電着塗料組成物。 - 前記リン酸亜鉛(C)の平均粒子径D50(体積50%径)は1μm以下であり、および
前記電着塗料組成物はさらに、二酸化チタン、カーボンブラック、カオリンからなる群から選択される顔料(D)を含み、該顔料(D)は、電着塗料組成物中において、カチオン分散剤で分散された状態で含まれ、該顔料(D)の平均粒子径D50(体積50%径)が3μm以下である、
請求項1記載の電着塗料組成物。 - 前記リン酸亜鉛(C)の分散に用いる前記カチオン分散剤がアミノシラン化合物である、請求項1または2記載の電着塗料組成物。
- 電着塗料組成物中に含まれる前記リン酸亜鉛(C)の含有量は0.01〜10質量%である、請求項1〜3いずれかに記載の電着塗料組成物。
- 請求項1〜4いずれかに記載の電着塗料組成物の製造方法であって、下記工程
亜鉛化合物およびカチオン分散剤を分散させた状態において、リン酸を加えて反応させる固液反応によって、リン酸亜鉛(C)を調製する工程、および
得られたリン酸亜鉛(C)、および、アミン化樹脂(A)、硬化剤(B)を混合して、電着塗料組成物を調製する工程、
を包含する、
電着塗料組成物の製造方法。 - 前記電着塗料組成物はさらにアミノテトラゾール(E)を含む、請求項1〜4いずれかに記載の電着塗料組成物。
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