JP2021055166A - 電着塗膜の付きまわり性を向上させる方法 - Google Patents
電着塗膜の付きまわり性を向上させる方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2021055166A JP2021055166A JP2019181524A JP2019181524A JP2021055166A JP 2021055166 A JP2021055166 A JP 2021055166A JP 2019181524 A JP2019181524 A JP 2019181524A JP 2019181524 A JP2019181524 A JP 2019181524A JP 2021055166 A JP2021055166 A JP 2021055166A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- chemical conversion
- electrodeposition coating
- metal
- aqueous solution
- acid
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Abstract
【課題】 ジルコニウム、チタンおよびハフニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属(A)を含む化成処理剤を用いた後に電着塗装を行う場合において、電着塗膜の付きまわり性を向上させる方法を提供すること。【解決手段】 化成処理剤を用いて金属基材に化成皮膜を形成する化成皮膜形成工程;得られた化成皮膜をpH8〜12の範囲内であるアルカリ水溶液に接触させるアルカリ水溶液接触工程、および;アルカリ水溶液と接触させた化成皮膜を有する金属基材を電着塗料組成物中に浸漬して電着塗装し、電着塗膜を形成する、電着塗装工程;を包含する、電着塗膜の付きまわり性を向上させる方法であって、化成処理剤は上記金属(A)、フッ素(B)、酸化剤(C)およびケイ素含有化合物(D)を含み、金属基材は鉄を含み、アルカリ水溶液と接触させた化成皮膜に含まれる金属(A)の量は金属元素換算で3〜500mg/m2の範囲内である、方法。【選択図】 なし
Description
本発明は、電着塗膜の付きまわり性を向上させる方法に関する。
カチオン電着塗装は、カチオン電着塗料組成物中に被塗物を陰極として浸漬させ、電圧を印加することにより行われる塗装方法である。この方法は、複雑な形状を有する被塗物であっても細部にまで塗装を施すことができ、自動的かつ連続的に塗装することができるので、特に自動車車体等の大型で複雑な形状を有する被塗物の下塗り塗装方法として広く実用化されている。さらに電着塗装は、被塗物に高い防食性を与えることができ、被塗物の保護効果にも優れている。
このようなカチオン電着塗装を施す被塗物には、通常、電着塗装の前に化成処理が施される。化成処理を施すことによって、耐食性、塗膜密着性等の性質を向上させることができる。化成処理として、耐食性向上などの点からリン酸亜鉛系化成処理が広く用いられている(例えば、特開平10−204649号公報(特許文献1)参照)。
しかしながら、リン酸亜鉛系化成処理剤は、金属イオンおよび酸濃度が高く、そして非常に反応性の強い処理剤であるため、排水処理における経済性および作業性が劣るという欠点がある。更に、リン酸亜鉛系化成処理剤を用いて金属表面処理を行う際には、水に不溶である塩類が生成して沈殿となって析出する。このような沈殿物は一般にスラッジと呼ばれる。リン酸亜鉛系化成処理剤を用いる場合は、塗装工程において発生するこのスラッジを除去し、廃棄するのに必要とされるコストの発生などが問題となっている。さらに、リン酸亜鉛系化成処理剤中に含まれるリン酸イオンは、環境に富栄養化をもたらすことがあり、これにより環境に対して負荷を与える恐れがある。そのため、リン酸亜鉛系化成処理剤は、廃液の処理に際して多大な労力を必要とするという問題もある。更に、リン酸亜鉛系化成処理剤による金属表面処理においては、表面調整を行うことが必要とされており、工程が長くなるという問題もある。
このようなリン酸亜鉛系化成処理剤に代わる処理剤の1例として、ジルコニウム化合物からなる金属表面処理剤について検討が行われている(例えば、特開平7−310189号公報(特許文献2)参照)。しかしながら、このようなジルコニウム化合物からなる処理剤により得られる化成皮膜は、被塗物と電着塗膜との間の密着性が、リン酸亜鉛化成処理と比較して低い傾向があり、特に鉄系基材に対する密着性が低い傾向があるという技術的課題があった。また、ジルコニウム化合物を含む化成処理剤によって形成される化成皮膜の膜厚は、リン酸亜鉛系化成処理剤によって形成される化成皮膜の膜厚と比較して、一般に1/10〜1/30程と非常に薄い。そしてジルコニウム化合物を含む化成処理剤によって形成される化成皮膜の膜厚がこのように薄いことによって、得られる硬化電着塗膜の塗膜外観が劣ることとなるという問題がある。化成皮膜の膜厚が薄いことはまた、電着塗料組成物の付きまわり性をも下げる要因となる。ここで「付きまわり性」とは、被塗物の未着部位に塗膜が順次形成される性質をいう。付きまわり性が低下すると、電着塗装において被塗物の隅々まで塗膜が形成される性能が悪くなっていくという不具合がある。下塗り塗装である化成処理および電着塗装においては、高付きまわり性であることが求められるため、付きまわり性低下の不具合は大きな問題となりうる。
例えば特開2004−269627号公報(特許文献3)では、塗料の電導度と付きまわり性について言及されている。この特許文献では、塗料の電導度を適切な値に調整することで好適な付きまわり性を付与することを目的とする。
特開2010−095678号公報(特許文献4)には、ジルコニウム化成処理剤で処理された被塗物の電着塗装に用いられるカチオン電着塗料組成物として、飽和または不飽和炭化水素基含有ジエステル部分および/またはアルキレンオキサイド部分を有するアミン変性ビスフェノール型エポキシ樹脂を含むカチオン電着塗料組成物が記載される。
上記特許文献3、4で検討されているように、ジルコニウム化成処理剤で処理した後に電着塗装する場合におけるカチオン電着塗料組成物の付きまわり性を向上させる手法について、従来から必要とされている。本発明もまた、上記従来の課題を解決することを課題とする。より特定すれば、本発明は、ジルコニウム、チタンおよびハフニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属(A)を含む化成処理剤を用いた後に電着塗装を行う場合において、電着塗膜の付きまわり性を向上させる方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は下記態様を提供する。
[1]
化成処理剤を用いて金属基材に化成皮膜を形成する、化成皮膜形成工程、
得られた化成皮膜を、pH8〜12の範囲内であるアルカリ水溶液に接触させる、アルカリ水溶液接触工程、および
上記アルカリ水溶液と接触させた化成皮膜を有する金属基材を、電着塗料組成物中に浸漬して電着塗装し、電着塗膜を形成する、電着塗装工程、
を包含する、電着塗膜の付きまわり性を向上させる方法であって、
上記化成処理剤は、
ジルコニウム、チタンおよびハフニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属(A)、
フッ素(B)、
硝酸、亜硝酸、硫酸、亜硫酸、過硫酸、リン酸、塩酸、臭素酸、塩素酸、過酸化水素、HMnO4、HVO3、H2WO4およびH2MoO4、並びにこれらの塩類からなる群から選択される少なくとも一種である酸化剤(C)、および
ケイ素含有化合物(D)
を含み、
上記金属基材は、鉄を含み、
上記アルカリ水溶液と接触させた化成皮膜に含まれる金属(A)の量は、金属元素換算で3〜500mg/m2の範囲内である、
方法。
[2]
化成処理剤を用いて金属基材に化成皮膜を形成する、化成皮膜形成工程、
得られた化成皮膜を、pH8〜12の範囲内であるアルカリ水溶液に接触させる、アルカリ水溶液接触工程、および
上記アルカリ水溶液と接触させた化成皮膜を有する金属基材を、電着塗料組成物中に浸漬して電着塗装し、電着塗膜を形成する、電着塗装工程、
を包含する、化成皮膜および電着塗膜を有する金属部材の調製方法であって、
上記化成処理剤は、
ジルコニウム、チタンおよびハフニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属(A)、
フッ素(B)、
硝酸、亜硝酸、硫酸、亜硫酸、過硫酸、リン酸、塩酸、臭素酸、塩素酸、過酸化水素、HMnO4、HVO3、H2WO4およびH2MoO4、並びにこれらの塩類からなる群から選択される少なくとも一種である酸化剤(C)、および
ケイ素含有化合物(D)
を含み、
上記金属基材は、鉄を含み、
上記アルカリ水溶液と接触させた化成皮膜に含まれる金属(A)の量は、金属元素換算で3〜500mg/m2の範囲内である、
方法。
[3]
上記ケイ素含有化合物(D)は、アルキルシリケート類およびシランカップリング剤からなる群より選択される少なくとも1種である、上記[1]または[2]に記載の方法。
[4]
上記化成処理剤はさらに、ポリアミン化合物を含む、上記[1]〜[3]いずれかに記載の方法。
[5]
上記電着塗料組成物は、
アミン変性ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)およびブロックイソシアネート硬化剤(b)を含み、
上記アミン変性ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)は、数平均分子量が1000〜5000の範囲内である、
上記[1]〜[4]いずれかに記載の方法。
[1]
化成処理剤を用いて金属基材に化成皮膜を形成する、化成皮膜形成工程、
得られた化成皮膜を、pH8〜12の範囲内であるアルカリ水溶液に接触させる、アルカリ水溶液接触工程、および
上記アルカリ水溶液と接触させた化成皮膜を有する金属基材を、電着塗料組成物中に浸漬して電着塗装し、電着塗膜を形成する、電着塗装工程、
を包含する、電着塗膜の付きまわり性を向上させる方法であって、
上記化成処理剤は、
ジルコニウム、チタンおよびハフニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属(A)、
フッ素(B)、
硝酸、亜硝酸、硫酸、亜硫酸、過硫酸、リン酸、塩酸、臭素酸、塩素酸、過酸化水素、HMnO4、HVO3、H2WO4およびH2MoO4、並びにこれらの塩類からなる群から選択される少なくとも一種である酸化剤(C)、および
ケイ素含有化合物(D)
を含み、
上記金属基材は、鉄を含み、
上記アルカリ水溶液と接触させた化成皮膜に含まれる金属(A)の量は、金属元素換算で3〜500mg/m2の範囲内である、
方法。
[2]
化成処理剤を用いて金属基材に化成皮膜を形成する、化成皮膜形成工程、
得られた化成皮膜を、pH8〜12の範囲内であるアルカリ水溶液に接触させる、アルカリ水溶液接触工程、および
上記アルカリ水溶液と接触させた化成皮膜を有する金属基材を、電着塗料組成物中に浸漬して電着塗装し、電着塗膜を形成する、電着塗装工程、
を包含する、化成皮膜および電着塗膜を有する金属部材の調製方法であって、
上記化成処理剤は、
ジルコニウム、チタンおよびハフニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属(A)、
フッ素(B)、
硝酸、亜硝酸、硫酸、亜硫酸、過硫酸、リン酸、塩酸、臭素酸、塩素酸、過酸化水素、HMnO4、HVO3、H2WO4およびH2MoO4、並びにこれらの塩類からなる群から選択される少なくとも一種である酸化剤(C)、および
ケイ素含有化合物(D)
を含み、
上記金属基材は、鉄を含み、
上記アルカリ水溶液と接触させた化成皮膜に含まれる金属(A)の量は、金属元素換算で3〜500mg/m2の範囲内である、
方法。
[3]
上記ケイ素含有化合物(D)は、アルキルシリケート類およびシランカップリング剤からなる群より選択される少なくとも1種である、上記[1]または[2]に記載の方法。
[4]
上記化成処理剤はさらに、ポリアミン化合物を含む、上記[1]〜[3]いずれかに記載の方法。
[5]
上記電着塗料組成物は、
アミン変性ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)およびブロックイソシアネート硬化剤(b)を含み、
上記アミン変性ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)は、数平均分子量が1000〜5000の範囲内である、
上記[1]〜[4]いずれかに記載の方法。
本発明の方法によれば、電着塗膜の付きまわり性を向上させることができる。
本発明は、ジルコニウム、チタンおよびハフニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属(A)を含む化成処理剤を用いた後に電着塗装を行う場合において、電着塗膜の付きまわり性を向上させる方法に関する。そして上記方法は、下記工程:
化成処理剤を用いて金属基材に化成皮膜を形成する、化成皮膜形成工程、
得られた化成皮膜を、pH8〜12の範囲内であるアルカリ水溶液に接触させる、アルカリ水溶液接触工程、および
前記アルカリ水溶液と接触させた化成皮膜を有する金属基材を、電着塗料組成物中に浸漬して電着塗装し、電着塗膜を形成する、電着塗装工程、
を包含する方法である。以下、各工程について詳述する。
化成処理剤を用いて金属基材に化成皮膜を形成する、化成皮膜形成工程、
得られた化成皮膜を、pH8〜12の範囲内であるアルカリ水溶液に接触させる、アルカリ水溶液接触工程、および
前記アルカリ水溶液と接触させた化成皮膜を有する金属基材を、電着塗料組成物中に浸漬して電着塗装し、電着塗膜を形成する、電着塗装工程、
を包含する方法である。以下、各工程について詳述する。
化成皮膜形成工程
化成皮膜形成工程は、化成処理剤を用いて金属基材に化成皮膜を形成する工程である。ここで用いられる化成処理剤は、
ジルコニウム、チタンおよびハフニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属(A)、
フッ素(B)、
硝酸、亜硝酸、硫酸、亜硫酸、過硫酸、リン酸、塩酸、臭素酸、塩素酸、過酸化水素、HMnO4、HVO3、H2WO4およびH2MoO4、並びにこれらの塩類からなる群から選択される少なくとも一種である酸化剤(C)、および
ケイ素含有化合物(D)、
を含む。
化成皮膜形成工程は、化成処理剤を用いて金属基材に化成皮膜を形成する工程である。ここで用いられる化成処理剤は、
ジルコニウム、チタンおよびハフニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属(A)、
フッ素(B)、
硝酸、亜硝酸、硫酸、亜硫酸、過硫酸、リン酸、塩酸、臭素酸、塩素酸、過酸化水素、HMnO4、HVO3、H2WO4およびH2MoO4、並びにこれらの塩類からなる群から選択される少なくとも一種である酸化剤(C)、および
ケイ素含有化合物(D)、
を含む。
金属(A)
上記化成処理剤に含まれる金属(A)は、ジルコニウム、チタンおよびハフニウムからなる群から選択される少なくとも1種である。上記金属(A)は化成皮膜形成成分である。基材に金属(A)を含む化成皮膜が形成されることにより、基材の耐食性や耐磨耗性を向上させ、更に、この化成皮膜上に形成される塗膜との密着性を高めることができる。金属(A)は、ジルコニウムを含有することが好ましく、ジルコニウムであることがより好ましい。
上記化成処理剤に含まれる金属(A)は、ジルコニウム、チタンおよびハフニウムからなる群から選択される少なくとも1種である。上記金属(A)は化成皮膜形成成分である。基材に金属(A)を含む化成皮膜が形成されることにより、基材の耐食性や耐磨耗性を向上させ、更に、この化成皮膜上に形成される塗膜との密着性を高めることができる。金属(A)は、ジルコニウムを含有することが好ましく、ジルコニウムであることがより好ましい。
上記ジルコニウムの供給源としては特に限定されず、例えば、K2ZrF6等のアルカリ金属フルオロジルコネート;(NH4)2ZrF6等のフルオロジルコネート;H2ZrF6等のフルオロジルコネート酸等の可溶性フルオロジルコネート等;フッ化ジルコニウム;酸化ジルコニウム;硝酸ジルコニウム等を挙げることができる。
上記チタンの供給源としては特に限定されず、例えば、アルカリ金属フルオロチタネート、(NH4)2TiF6等のフルオロチタネート;H2TiF6等のフルオロチタネート酸等の可溶性フルオロチタネート等;フッ化チタン;酸化チタン等を挙げることができる。
上記ハフニウムの供給源としては特に限定されず、例えば、HHfF等のフルオロハフネート酸;フッ化ハフニウム等を挙げることができる。
上記金属(A)の供給源としては、皮膜形成能が高いことからZrF6 2−、TiF6 2−、HfF6 2−からなる群より選ばれる1種または2種以上を有する化合物が好ましい。
上記ハフニウムの供給源としては特に限定されず、例えば、HHfF等のフルオロハフネート酸;フッ化ハフニウム等を挙げることができる。
上記金属(A)の供給源としては、皮膜形成能が高いことからZrF6 2−、TiF6 2−、HfF6 2−からなる群より選ばれる1種または2種以上を有する化合物が好ましい。
化成処理剤中における上記金属(A)の含有量は、化成処理剤全量に対して金属換算で下限50質量ppm、上限2000質量ppmの範囲であることが好ましい。含有量が上記下限以上であることによって、得られる化成皮膜の耐食性をより良好な状態で確保することができる利点がある。また、上記上限以下であることによって、化成処理の際に金属(A)が他の成分の析出を阻害することなく、密着性および耐摩耗性をより向上させることができる利点がある。上記下限は、300質量ppmであるのがより好ましく、450質量ppmであるのが更に好ましい。上記上限は、1000質量ppmがより好ましく、600質量ppmが更に好ましい。
フッ素(B)
上記化成処理剤に含まれるフッ素(B)は、基材のエッチング剤としての役割を果たすものである。上記フッ素(B)の供給源としては、特に限定されず、フッ素を有する金属(A)の化合物やフッ素化合物が挙げられる。
フッ素を有する金属(A)の化合物の具体例としては、K2ZrF6等のアルカリ金属フルオロジルコネート;(NH4)2ZrF6等のフルオロジルコネート;H2ZrF6等のフルオロジルコネート酸等の可溶性フルオロジルコネート等;フッ化ジルコニウム;アルカリ金属フルオロチタネート、(NH4)2TiF6等のフルオロチタネート;H2TiF6等のフルオロチタネート酸等の可溶性フルオロチタネート等;フッ化チタン;HHfF等のフルオロハフネート酸;フッ化ハフニウム等のハフニウム化合物を挙げることができる。なお、フッ素を有する金属(A)の化合物を使用する場合、金属(A)の化合物からフッ素イオンが供給されるため、別途フッ素化合物を用いなくてもよい。フッ素化合物の具体例としては、フッ化水素酸、フッ化アンモニウム、フッ化ホウ素酸、フッ化水素アンモニウム、フッ化ナトリウム、フッ化水素ナトリウム等のフッ化物を挙げることができる。また、錯フッ化物としては、例えば、ヘキサフルオロケイ酸塩が挙げられ、その具体例としてケイフッ化水素酸、ケイフッ化水素酸亜鉛、ケイフッ化水素酸マンガン、ケイフッ化水素酸マグネシウム、ケイフッ化水素酸ニッケル、ケイフッ化水素酸鉄、ケイフッ化水素酸カルシウム等を挙げることができる。
上記化成処理剤に含まれるフッ素(B)は、基材のエッチング剤としての役割を果たすものである。上記フッ素(B)の供給源としては、特に限定されず、フッ素を有する金属(A)の化合物やフッ素化合物が挙げられる。
フッ素を有する金属(A)の化合物の具体例としては、K2ZrF6等のアルカリ金属フルオロジルコネート;(NH4)2ZrF6等のフルオロジルコネート;H2ZrF6等のフルオロジルコネート酸等の可溶性フルオロジルコネート等;フッ化ジルコニウム;アルカリ金属フルオロチタネート、(NH4)2TiF6等のフルオロチタネート;H2TiF6等のフルオロチタネート酸等の可溶性フルオロチタネート等;フッ化チタン;HHfF等のフルオロハフネート酸;フッ化ハフニウム等のハフニウム化合物を挙げることができる。なお、フッ素を有する金属(A)の化合物を使用する場合、金属(A)の化合物からフッ素イオンが供給されるため、別途フッ素化合物を用いなくてもよい。フッ素化合物の具体例としては、フッ化水素酸、フッ化アンモニウム、フッ化ホウ素酸、フッ化水素アンモニウム、フッ化ナトリウム、フッ化水素ナトリウム等のフッ化物を挙げることができる。また、錯フッ化物としては、例えば、ヘキサフルオロケイ酸塩が挙げられ、その具体例としてケイフッ化水素酸、ケイフッ化水素酸亜鉛、ケイフッ化水素酸マンガン、ケイフッ化水素酸マグネシウム、ケイフッ化水素酸ニッケル、ケイフッ化水素酸鉄、ケイフッ化水素酸カルシウム等を挙げることができる。
化成処理剤中における上記フッ素(B)の含有量は、下限25質量ppm、上限2000質量ppmの範囲であることが好ましい。上記下限以上であることによって、良好なエッチング性を確保することができ、化成皮膜を好適に形成することができる利点がある。また上記上限以下であることによって、エッチング過多を効果的に防ぐことができる利点がある。上記下限は、100質量ppmがより好ましく、300質量ppmが更に好ましい。上記上限は、1000質量ppmがより好ましく、500質量ppmが更に好ましい。
酸化剤(C)
上記化成処理剤に含まれる酸化剤(C)は、硝酸、亜硝酸、硫酸、亜硫酸、過硫酸、リン酸、塩酸、臭素酸、塩素酸、過酸化水素、HMnO4、HVO3、H2WO4およびH2MoO4、並びにこれらの塩類からなる群から選択される少なくとも一種である。化成処理剤に酸化剤(C)が含まれることによって、化成皮膜の形成を良好に促進することができる利点がある。上記酸化剤(C)は、硝酸、亜硝酸、硫酸、亜硫酸、過硫酸、リン酸、塩酸、臭素酸、塩素酸、過酸化水素並びにこれらの塩類からなる群から選択される少なくとも一種であるのがより好ましい。
上記化成処理剤に含まれる酸化剤(C)は、硝酸、亜硝酸、硫酸、亜硫酸、過硫酸、リン酸、塩酸、臭素酸、塩素酸、過酸化水素、HMnO4、HVO3、H2WO4およびH2MoO4、並びにこれらの塩類からなる群から選択される少なくとも一種である。化成処理剤に酸化剤(C)が含まれることによって、化成皮膜の形成を良好に促進することができる利点がある。上記酸化剤(C)は、硝酸、亜硝酸、硫酸、亜硫酸、過硫酸、リン酸、塩酸、臭素酸、塩素酸、過酸化水素並びにこれらの塩類からなる群から選択される少なくとも一種であるのがより好ましい。
化成処理剤中における上記酸化剤(C)の含有量は、下限1000質量ppm、上限20000質量ppmの範囲であることが好ましい。酸化剤(C)の量が上記範囲内であることによって、他の成分の作用に悪影響を及ぼすことなく、化成皮膜の形成を効果的に促進させることができる利点がある。上記下限は、1500質量ppmがより好ましく、2000質量ppmが更に好ましい。上記上限は、10000質量ppmがより好ましく、8000質量ppmが更に好ましい。
ケイ素含有化合物(D)
上記化成処理剤に含まれるケイ素含有化合物(D)として、例えば、シリカ、水溶性ケイ酸塩化合物、ケイ酸エステル類、アルキルシリケート類、シランカップリング剤などが挙げられる。これらのケイ素含有化合物(D)は、1種を単独で用いてもよく、2種またはそれ以上を併用してもよい。ケイ素含有化合物(D)として、アルキルシリケート類およびシランカップリング剤からなる群より選択される少なくとも1種であるのが好ましい。
上記化成処理剤に含まれるケイ素含有化合物(D)として、例えば、シリカ、水溶性ケイ酸塩化合物、ケイ酸エステル類、アルキルシリケート類、シランカップリング剤などが挙げられる。これらのケイ素含有化合物(D)は、1種を単独で用いてもよく、2種またはそれ以上を併用してもよい。ケイ素含有化合物(D)として、アルキルシリケート類およびシランカップリング剤からなる群より選択される少なくとも1種であるのが好ましい。
アルキルシリケート類としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシランおよびこれらの部分縮重合物(例えばポリメトキシシロキサン)などが挙げられる。
シランカップリング剤として、市販されるシランカップリング剤を用いることができる。シランカップリング剤は、1分子中に少なくとも1つのアミノ基を有するアミノシランが特に好ましい。アミノシランは単量体であってもよく、また、二量体を含む加水分解重縮合物であってもよい。シランカップリング剤として、アミノシランまたはアミノシランの加水分解重縮合物を用いるのが、上記方法における工程に好適に用いることができる利点がある。
1分子中に少なくとも1つのアミノ基を有するアミノシランは、アミノ基を有するために、化成皮膜中に取り込まれた場合には密着性の向上に寄与すると考えられる。1分子中に少なくとも1つのアミノ基を有するアミノシランの具体的としては、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩等を挙げることができる。これらの化合物は金属基材への吸着と電着塗膜への密着性に優れるため、塗装後の耐食性を向上させる。市販されているアミノ基含有シランカップリング剤である「KBM−403」、「KBM−602」、「KBM−603」、「KBE−603」、「KBM−903」、「KBE−903」、「KBE−9103」、「KBM−573」、「KBP−90」(いずれも商品名、信越化学工業社製)、及び「XS1003」(商品名、チッソ社製)等を使用することができる。
上記アミノシランの加水分解重縮合物は、上記アミノシランを、必要に応じた溶媒(例えば水および/またはアルコール溶媒)の存在下において、アミノシラン濃度が例えば5質量%以上50質量%以下の範囲で重縮合させることによって調製することができる。
ケイ素含有化合物(D)として、シランカップリング剤を用いるのが好ましい。シランカップリング剤の中でも、アミノシランまたはアミノシランの加水分解重縮合物を用いるのが特に好ましい。
化成処理剤中における上記ケイ素含有化合物(D)の含有量は、ケイ素元素換算で下限50質量ppm、上限1000質量ppmの範囲であることが好ましく、下限100質量ppm、上限300質量ppmの範囲であるのがより好ましい。ケイ素含有化合物(D)の含有量が上記範囲内であることによって、化成皮膜の良好な密着性などを確保することができる利点がある。
他の成分
化成処理剤は、上記成分に加えてさらに、ポリアミン化合物を必要に応じて含んでもよい。上記樹脂を含むことによって、化成皮膜の基材に対する密着性をより向上させることができる利点がある。
化成処理剤は、上記成分に加えてさらに、ポリアミン化合物を必要に応じて含んでもよい。上記樹脂を含むことによって、化成皮膜の基材に対する密着性をより向上させることができる利点がある。
上記ポリアミン化合物は、1分子中に複数のアミノ基(好ましくは1級アミノ基)を有する高分子化合物である。このアミノ基を含有するポリアミン化合物は、化成皮膜と、その後に形成される塗膜の双方に作用するため、両者の密着性を向上させることができる。ポリアミン化合物の分子量は、特に限定されないが、150以上500000以下であることが好ましく、5000以上70000以下であることが更に好ましい。ポリアミン化合物として、例えば、ポリビニルアミン樹脂、ポリアリルアミン樹脂、ポリシロキサンなどが挙げられる。
上記樹脂が含まれる場合における、化成処理剤中における上記樹脂の含有量は、50質量ppm以上1000質量ppm以下であることが好ましく、100質量ppm以上300質量ppm以下であることが更に好ましい。上記樹脂の含有量が上記範囲内であることによって、化成皮膜の基材に対する密着性を有意に向上させることができる利点がある。
化成処理剤の調製
上記成分(A)〜(D)を含む化成処理剤は、上記成分を溶媒中に混合することによって調製することができる。化成処理剤の調製方法は、当業者において通常用いられる方法を用いることができる。溶媒として、水などの水性媒体が好ましく用いられる。上記溶媒は、必要に応じて、水性媒体と混和性を有する有機溶媒を含んでもよい。
上記成分(A)〜(D)を含む化成処理剤は、上記成分を溶媒中に混合することによって調製することができる。化成処理剤の調製方法は、当業者において通常用いられる方法を用いることができる。溶媒として、水などの水性媒体が好ましく用いられる。上記溶媒は、必要に応じて、水性媒体と混和性を有する有機溶媒を含んでもよい。
上記化成処理剤は、必要に応じて上記成分(A)〜(D)以外の成分を含んでもよい。このような成分として、例えば、化成処理剤において通常用いられる添加剤などが挙げられる。
上記化成処理剤は、pHが下限2.5上限5.5の範囲内であることが好ましい。pHが上記範囲内であることによって、エッチング性を好適な範囲に調整することができる利点がある。化成処理剤のpHを調整する手法として、例えば、硝酸、硫酸等の酸性化合物、及び、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の塩基性化合物を用いて調整する方法が挙げられる。
金属基材
化成皮膜を形成する金属基材は、鉄を含む金属基材である。鉄を含む金属基材として、例えば、冷延鋼板、熱延鋼板、ステンレス板、高張力熱延鋼板、高張力冷延鋼板、および、電気亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、亜鉛−アルミニウム合金系めっき鋼板、亜鉛−鉄合金系めっき鋼板、亜鉛−マグネシウム合金系めっき鋼板、亜鉛−アルミニウム−マグネシウム合金系めっき鋼板、アルミニウム系めっき鋼板、アルミニウム−シリコン合金系めっき鋼板、錫系めっき鋼板、高張力亜鉛めっき鋼板などが挙げられる。上記金属基材はまた、上述の鉄を含む金属と、亜鉛系金属、アルミニウム系金属、マグネシウム系金属などとの合金であってもよい。
化成皮膜を形成する金属基材は、鉄を含む金属基材である。鉄を含む金属基材として、例えば、冷延鋼板、熱延鋼板、ステンレス板、高張力熱延鋼板、高張力冷延鋼板、および、電気亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、亜鉛−アルミニウム合金系めっき鋼板、亜鉛−鉄合金系めっき鋼板、亜鉛−マグネシウム合金系めっき鋼板、亜鉛−アルミニウム−マグネシウム合金系めっき鋼板、アルミニウム系めっき鋼板、アルミニウム−シリコン合金系めっき鋼板、錫系めっき鋼板、高張力亜鉛めっき鋼板などが挙げられる。上記金属基材はまた、上述の鉄を含む金属と、亜鉛系金属、アルミニウム系金属、マグネシウム系金属などとの合金であってもよい。
金属基材は、必要に応じて予め脱脂処理、その後の水洗処理などを行ってもよい。
化成皮膜形成
上記化成処理剤を金属基材に接触させる(化成処理)ことによって、金属基材の表面に化成皮膜を形成することができる。化成処理剤を金属基材に接触させる手法として、例えば、浸漬法、スプレー法、流しかけ処理法等を挙げることができる。
上記化成処理剤を金属基材に接触させる(化成処理)ことによって、金属基材の表面に化成皮膜を形成することができる。化成処理剤を金属基材に接触させる手法として、例えば、浸漬法、スプレー法、流しかけ処理法等を挙げることができる。
化成処理における処理温度は、20℃以上70℃以下の範囲内であることが好ましく、30℃以上50℃以下の範囲内であることが更に好ましい。また、化成処理における処理時間は、2秒以上1100秒以下の範囲内であることが好ましく、30秒以上120秒以下の範囲内であることが更に好ましい。上記条件下で化成処理を行うことによって、化成皮膜形成量を好適な範囲に確保することができる利点がある。
基材上に形成される化成皮膜の量は、金属(A)の金属元素換算で3g/m2以上500g/m2以下であるのが好ましく、20g/m2以上100g/m2以下であるのがより好ましい。
アルカリ水溶液接触工程
アルカリ水溶液接触工程は、上記化成皮膜形成工程によって得られた化成皮膜を、アルカリ水溶液に接触させる工程である。ここで用いられるアルカリ水溶液は、pH8〜12の範囲内であることを条件とする。
アルカリ水溶液接触工程は、上記化成皮膜形成工程によって得られた化成皮膜を、アルカリ水溶液に接触させる工程である。ここで用いられるアルカリ水溶液は、pH8〜12の範囲内であることを条件とする。
アルカリ水溶液に含まれる塩基性化合物の例として、例えばNaOH、KOH、アンモニア、アミン及びポリアミンなどが挙げられる。これらの塩基性化合物は1種のみを用いてもよく、2種またはそれ以上を併用してもよい。アルカリ水溶液として、NaOH、KOH、アンモニアおよびアミンからなる群から選択される1種またはそれ以上を含むアルカリ水溶液が特に好ましい。
アルカリ水溶液は、必要に応じてアルコール(例えばメタノール、エタノールなど)などの水溶性有機溶剤を含んでもよい。
化成皮膜を、アルカリ水溶液に接触させる方法は、当分野において一般的に用いられる方法を用いることができる。具体的な方法として、例えば浸漬法、スプレー法、流しかけ処理法等を挙げることができる。
アルカリ水溶液接触工程は、アルカリ水溶液の温度が0℃以上100℃以下の条件で、例えば2秒以上600秒以下の時間で接触させることにより行われるのが好ましい。アルカリ水溶液の温度は、5℃以上60℃以下であることがより好ましく、15℃以上40℃以下であることが更に好ましい。上記処理時間は、60秒以上300秒以下であることがより好ましく、120秒以上240秒以下であることがさらに好ましい。
上記方法は、化成皮膜をアルカリ水溶液と接触させた後における、化成皮膜に含まれる金属(A)の量は、金属元素換算で3〜500mg/m2の範囲内であることを条件とする。アルカリ水溶液接触工程後の金属(A)の量が、金属元素換算で上記範囲内であることによって、その後の電着塗膜の付きまわり性が向上することとなる。
化成処理剤を用いて形成された化成皮膜に対してアルカリ水溶液を接触させることによって、化成皮膜に含まれる金属(A)の量が上記範囲に調節されることとなる。さらに、化成処理剤に含まれるフッ素(B)に由来するF−イオンの化成皮膜中の含有量が低減されることとなる。これにより、その後の電着塗装において、電着塗膜の付きまわり性が向上する利点がある。
電着塗装工程
電着塗装工程は、上記アルカリ水溶液接触工程でアルカリ水溶液と接触させた化成皮膜を有する金属基材を、電着塗料組成物中に浸漬して電着塗装し、電着塗膜を形成する工程である。
電着塗装工程は、上記アルカリ水溶液接触工程でアルカリ水溶液と接触させた化成皮膜を有する金属基材を、電着塗料組成物中に浸漬して電着塗装し、電着塗膜を形成する工程である。
電着塗料組成物
上記方法において用いられるカチオン電着塗料組成物は、アミン変性ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)およびブロックイソシアネート硬化剤(b)を含むバインダー樹脂エマルション、そして、中和酸、溶媒、必要に応じた顔料などを含む、カチオン電着塗料組成物であるのが好ましい。
上記方法において用いられるカチオン電着塗料組成物は、アミン変性ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)およびブロックイソシアネート硬化剤(b)を含むバインダー樹脂エマルション、そして、中和酸、溶媒、必要に応じた顔料などを含む、カチオン電着塗料組成物であるのが好ましい。
アミン変性ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)
上記カチオン電着塗料組成物に含まれるバインダー樹脂エマルションを構成するアミン変性ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)は、アミンで変性されたビスフェノール型エポキシ樹脂である。アミン変性ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)は、典型的には、ビスフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ環の全部を、アミンで開環するか、または一部のエポキシ環を他の活性水素化合物で開環し、残りのエポキシ環をアミンで開環して製造される。
上記カチオン電着塗料組成物に含まれるバインダー樹脂エマルションを構成するアミン変性ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)は、アミンで変性されたビスフェノール型エポキシ樹脂である。アミン変性ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)は、典型的には、ビスフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ環の全部を、アミンで開環するか、または一部のエポキシ環を他の活性水素化合物で開環し、残りのエポキシ環をアミンで開環して製造される。
ビスフェノール型エポキシ樹脂の典型例はビスフェノールA型またはビスフェノールF型エポキシ樹脂である。前者の市販品としてはエピコート828(油化シェルエポキシ社製、エポキシ当量180〜190)、エピコート1001(同、エポキシ当量450〜500)、エピコート1010(同、エポキシ当量3000〜4000)などがあり、後者の市販品としてはエピコート807(同、エポキシ当量170)などがある。また他の出発原料樹脂の例として、特開平5−306327号公報に記載のオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂を挙げることができる。これらのエポキシ樹脂は、ジイソシアネート化合物、またはジイソシアネート化合物のイソシアネート基をメタノール、エタノールなどの低級アルコールでブロックして得られたビスウレタン化合物と、エピクロルヒドリンとの反応によって調製することができる。
上記出発原料樹脂は、アミン類によるオキシラン環の開環反応の前に、2官能性のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ビスフェノール類、2塩基性カルボン酸などにより鎖延長して用いることができる。特にビスフェノール類は、アミン類によるオキシラン環の開環反応時に用いて、鎖延長してもよい。
また同じく、アミン類によるオキシラン環の開環反応の前に、分子量またはアミン当量の調節、熱フロー性の改良などを目的として、一部のオキシラン環に対して2−エチルヘキサノール、ノニルフェノール、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテルなどのモノヒドロキシ化合物、オクチル酸などのモノカルボン酸化合物を付加して用いることもできる。
オキシラン環を開環し、アミノ基を導入する際に使用し得るアミン類の例としては、ブチルアミン、オクチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、メチルブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミンなどの1級アミン、2級アミンまたは3級アミンおよび/もしくはその酸塩を挙げることができる。また、アミノエチルエタノールアミンメチルイソブチルケチミンなどのケチミンブロック1級アミノ基含有2級アミン、ジエチレントリアミンのケチミン化物などのケチミン化物も使用することができる。これらのアミン類は、全てのオキシラン環を開環させるために、オキシラン環に対して少なくとも当量で反応させる必要がある。アミノ基の導入に用いられるアミン類は、ケチミン化物を含むのが好ましく、ジエチレントリアミンのケチミン化物を含むのがより好ましい。
アミン変性ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)の数平均分子量は、1000〜5000の範囲内であるのが好ましい。数平均分子量が上記範囲内であることにより、上記化成皮膜形成工程および電着塗装工程において、良好な電着塗膜付きまわり性を得ることができる利点がある。アミン変性ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)の数平均分子量は1600〜3000の範囲内であるのがより好ましい。
なお、本明細書において、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量である。
アミン変性ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)のアミン価は、20〜100mgKOH/gの範囲内であるのが好ましい。アミン変性ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)のアミン価が20mgKOH/g以上であることにより、電着塗料組成物中におけるアミン変性ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)の乳化分散安定性が良好となる。一方で、アミン価が100mgKOH/g以下であることにより、硬化電着塗膜中のアミノ基の量が適正となり、塗膜の耐水性を低下させるおそれがない。アミン変性ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)のアミン価は、20〜80mgKOH/gの範囲内であるのがより好ましい。
アミン変性ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)の水酸基価は、50〜400mgKOH/gの範囲内であるのが好ましい。水酸基価が50mgKOH/g以上であることにより、硬化電着塗膜において硬化が良好となる。一方で、水酸基価が400mgKOH/g以下であることにより、硬化電着塗膜中に残存する水酸基の量が適正となり、塗膜の耐水性を低下させるおそれがない。アミン変性ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)の水酸基価は、100〜300mgKOH/gの範囲内であるのがより好ましい。
本発明の電着塗料組成物において、数平均分子量が1000〜5000であり、アミン価が20〜100mgKOH/gであり、かつ、水酸基価が50〜400mgKOH/gであるアミン変性ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)を用いることによって、被塗物に優れた耐食性を付与することができるという利点がある。
なおアミン変性ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)としては、必要に応じて、アミン価および/または水酸基価の異なるアミン化樹脂を併用してもよい。2種以上の異なるアミン価、水酸基価のアミン化樹脂を併用する場合は、使用するアミン化樹脂の質量比に基づいて算出する平均アミン価および平均水酸基価が、上記の数値範囲であるのが好ましい。また、併用するアミン変性ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)としては、アミン価が20〜50mgKOH/gであり、かつ、水酸基価が50〜300mgKOH/gであるアミン化樹脂と、アミン価が50〜200mgKOH/gであり、かつ、水酸基価が200〜500mgKOH/gであるアミン化樹脂との併用が好ましい。このような組合わせを用いると、エマルションのコア部がより疎水となりシェル部が親水となるため優れた耐食性を付与することができるという利点がある。
なおアミン変性ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)に加えて、必要に応じて、アミノ基含有アクリル樹脂、アミノ基含有ポリエステル樹脂などをさらに含んでもよい。
ブロックイソシアネート硬化剤(b)
カチオン電着塗料組成物には、ポリイソシアネートをブロック剤でブロックして得られるブロックイソシアネート硬化剤(b)が含まれる。ここでポリイソシアネートとは、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物をいう。ポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族系、脂環式系、芳香族系および芳香族−脂肪族系等のうちのいずれのものであってもよい。
カチオン電着塗料組成物には、ポリイソシアネートをブロック剤でブロックして得られるブロックイソシアネート硬化剤(b)が含まれる。ここでポリイソシアネートとは、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物をいう。ポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族系、脂環式系、芳香族系および芳香族−脂肪族系等のうちのいずれのものであってもよい。
ポリイソシアネートの具体例には、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、クルードMDI、p−フェニレンジイソシアネート、およびナフタレンジイソシアネート等のような芳香族ジイソシアネートまたは芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、およびリジンジイソシアネート等のような炭素数3〜12の脂肪族ジイソシアネート;1,4−シクロヘキサンジイソシアネート(CDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4’−ジイソシアネート、および1,3−ジイソシアナトメチルシクロヘキサン(水添XDI)、水添TDI、2,5−もしくは2,6−ビス(イソシアナートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(ノルボルナンジイソシアネートとも称される。)等のような炭素数5〜18の脂環式ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート(XDI)、およびテトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等のような芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート;これらのジイソシアネートの変性物(ウレタン化物、カーボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン、ビウレットおよび/またはイソシアヌレート変性物);等があげられる。これらは、単独で用いてもよく、または2種以上を併用してもよい。
ポリイソシアネートをエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどの多価アルコールとNCO/OH比2以上で反応させて得られる付加体ないしプレポリマーもブロックイソシアネート硬化剤として使用してよい。
脂肪族ポリイソシアネートまたは脂環式ポリイソシアネートの好ましい具体例には、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添TDI、水添MDI、水添XDI、IPDI、ノルボルナンジイソシアネート、それらの二量体(ビウレット)、三量体(イソシアヌレート)等が挙げられる。
ブロックイソシアネート硬化剤(b)は、イソシアネート基末端前駆体の遊離のイソシアネート基を活性水素基含有化合物(ブロック剤)と反応させて常温では不活性としたものであり、これを加熱するとブロック剤が解離してイソシアネート基が再生されるという性質を持つものである。
ブロックイソシアネート硬化剤(b)のブロック剤として、例えば1−クロロ−2−プロパノール等の脂肪族または複素環式アルコール類、フェノール等のフェノール類、メチルエチルケトンオキシム等のオキシム類、アセチルアセトン等の活性メチレン化合物、ε−カプロラクタム等の芳香族アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、ブチルセロソルブ等のエーテル(エーテルアルコールを含む)など、を挙げることができる。なおこれらのブロック剤は、1種のみ単独で用いてもよく、また2種以上のものを併用してもよい。上記ブロック剤はエーテルアルコールを含むのが好ましく、ブチルセロソルブを含むのがより好ましい。
本発明においては、ブロックイソシアネート硬化剤(b)として、芳香族ジイソシアネートまたは芳香族ポリイソシアネートをブロックしたブロックイソシアネートを用いるのがより好ましい。このようなブロックイソシアネート硬化剤を用いることによって、電着塗膜が未硬化の状態であっても電着塗膜中の樹脂成分の融着が生じやすくなり、塗膜析出部分における過剰な電流の流れを抑制することができ、ガスピンホールなどの塗膜異常の発生が抑制され、得られる硬化電着塗膜の塗膜外観が良好なものとなる利点がある。
顔料
上記カチオン電着塗料組成物は、通常用いられる顔料を含んでもよい。使用できる顔料の例としては、通常使用される顔料、例えば、チタンホワイト、カーボンブラックおよびベンガラのような着色顔料;カオリン、タルク、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、マイカおよびクレーのような体質顔料;リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、亜リン酸亜鉛、シアン化亜鉛、酸化亜鉛、トリポリリン酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸カルシウムおよびリンモリブデン酸アルミニウム、リンモリブデン酸アルミニウム亜鉛、水酸化ビスマス、酸化ビスマス、塩基性炭酸ビスマス、硝酸ビスマス、安息香酸ビスマス、クエン酸ビスマス、ケイ酸ビスマスのような防錆顔料等、が挙げられる。
上記カチオン電着塗料組成物は、通常用いられる顔料を含んでもよい。使用できる顔料の例としては、通常使用される顔料、例えば、チタンホワイト、カーボンブラックおよびベンガラのような着色顔料;カオリン、タルク、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、マイカおよびクレーのような体質顔料;リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、亜リン酸亜鉛、シアン化亜鉛、酸化亜鉛、トリポリリン酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸カルシウムおよびリンモリブデン酸アルミニウム、リンモリブデン酸アルミニウム亜鉛、水酸化ビスマス、酸化ビスマス、塩基性炭酸ビスマス、硝酸ビスマス、安息香酸ビスマス、クエン酸ビスマス、ケイ酸ビスマスのような防錆顔料等、が挙げられる。
上記顔料が電着塗料組成物中に含まれる場合の含有量は、電着塗料組成物の塗料固形分に対して30質量%以下の範囲で含まれるのが好ましい。顔料は、電着塗料組成物の塗料固形分に対して1〜25質量%の範囲で含まれるのがより好ましい。
顔料分散ペースト
顔料を電着塗料組成物の成分として用いる場合、一般に顔料を顔料分散樹脂と呼ばれる樹脂と共に予め高濃度で水性媒体に分散させてペースト状にする。顔料は粉体状であるため、電着塗料組成物で用いる低濃度均一状態に一工程で分散させるのは困難だからである。一般にこのようなペーストを顔料分散ペーストという。
顔料を電着塗料組成物の成分として用いる場合、一般に顔料を顔料分散樹脂と呼ばれる樹脂と共に予め高濃度で水性媒体に分散させてペースト状にする。顔料は粉体状であるため、電着塗料組成物で用いる低濃度均一状態に一工程で分散させるのは困難だからである。一般にこのようなペーストを顔料分散ペーストという。
顔料分散ペーストは、顔料を顔料分散樹脂と共に水性媒体中に分散させて調製する。顔料分散樹脂としては、一般に、カチオン性またはノニオン性の低分子量界面活性剤や4級アンモニウム基および/または3級スルホニウム基を有する変性エポキシ樹脂等のようなカチオン性重合体を用いる。水性媒体としてはイオン交換水や少量のアルコール類を含む水等を用いる。一般に、顔料分散樹脂は5〜40質量部、顔料は10〜30質量部の固形分比で用いる。
上記顔料分散樹脂および顔料を混合し、その混合物中の顔料の粒径が所定の均一な粒径となるまで、ボールミルやサンドグラインドミル等の通常の分散装置を用いて分散させて、顔料分散ペーストを得る。
他の成分
上記カチオン電着塗料組成物は、上記成分の他にブロックイソシアネート硬化剤のブロック剤の解離のための触媒を含んでもよい。このような触媒として、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫オキシド、ジオクチル錫オキシドなどの有機錫化合物、N−メチルモルホリンなどのアミン類、ストロンチウム、コバルト、銅などの金属塩などが使用できる。触媒の濃度は、カチオン電着塗料組成物中のカチオン性エポキシ樹脂とブロックイソシアネート硬化剤合計の100固形分質量部に対し0.1〜6質量部であるのが好ましい。
上記カチオン電着塗料組成物は、上記成分の他にブロックイソシアネート硬化剤のブロック剤の解離のための触媒を含んでもよい。このような触媒として、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫オキシド、ジオクチル錫オキシドなどの有機錫化合物、N−メチルモルホリンなどのアミン類、ストロンチウム、コバルト、銅などの金属塩などが使用できる。触媒の濃度は、カチオン電着塗料組成物中のカチオン性エポキシ樹脂とブロックイソシアネート硬化剤合計の100固形分質量部に対し0.1〜6質量部であるのが好ましい。
カチオン電着塗料組成物およびカチオン電着塗料組成物の調製
上記電着塗料組成物は、アミン変性ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)およびブロックイソシアネート硬化剤(b)を含むバインダー樹脂エマルション、および必要に応じた顔料分散ペーストおよび触媒を水性媒体中に分散することによって調製することができる。バインダー樹脂エマルションの調製は、アミン変性ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)およびブロックイソシアネート硬化剤(b)を用いた任意の方法により調製することができる。
上記電着塗料組成物は、アミン変性ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)およびブロックイソシアネート硬化剤(b)を含むバインダー樹脂エマルション、および必要に応じた顔料分散ペーストおよび触媒を水性媒体中に分散することによって調製することができる。バインダー樹脂エマルションの調製は、アミン変性ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)およびブロックイソシアネート硬化剤(b)を用いた任意の方法により調製することができる。
上記電着塗料組成物には中和酸が含まれる。中和酸は、アミン変性ビスフェノール型エポキシ樹脂を中和して、バインダー樹脂エマルションの分散性を向上させるものである。この中和酸はバインダー樹脂エマルションの調製に用いられる水性媒体に含める。中和酸は塩酸、硝酸、リン酸、ギ酸、酢酸、乳酸のような無機酸または有機酸である。中和酸として、酢酸およびギ酸からなる群から選択される少なくとも1種が用いられるのがより好ましい。中和酸の量は少なくとも20%、好ましくは30〜60%の中和率を達成する量である。
ブロックイソシアネート硬化剤の量は、硬化時にアミン変性ビスフェノール型エポキシ樹脂中の1級、2級または/および3級アミノ基、水酸基等の活性水素含有官能基と反応して良好な硬化塗膜を与えるのに十分でなければならず、一般にアミン変性ビスフェノール型エポキシ樹脂の硬化剤に対する固形分質量比で表して一般に90/10〜50/50、好ましくは80/20〜65/35の範囲である。
有機溶媒は、アミン変性ビスフェノール型エポキシ樹脂、ブロックイソシアネート硬化剤、顔料分散樹脂等の樹脂成分を合成する際に溶剤として必要であり、完全に除去するには煩雑な操作を必要とする。また、バインダー樹脂に有機溶媒が含まれていると造膜時の塗膜の流動性が改良され、塗膜の平滑性が向上する。
塗料組成物に通常含まれる有機溶媒としては、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノエチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等が挙げられる。このような有機溶媒を、カチオン電着塗料組成物の調製に用いられる水性媒体に含めてもよい。
塗料組成物は、上記のほかに、可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤、及び紫外線吸収剤などの常用の塗料用添加剤を含むことができる。
上記カチオン電着塗料組成物は、上記金属(A)を含む化成処理剤(いわゆるジルコニウム系化成処理剤)で処理された被塗物または未処理の被塗物を電着塗装する場合であっても、リン酸亜鉛系化成処理剤によって処理された被塗物を塗装する場合と遜色ない塗膜外観を達成することができる。一般に、ジルコニウムを含む化成処理剤によって形成される化成皮膜の膜厚は、リン酸亜鉛系化成処理剤によって形成される化成皮膜の膜厚の1/10〜1/30程度と非常に薄い。そのため、ジルコニウム系化成皮膜が形成された被塗物を電着塗装する場合、リン酸亜鉛系化成皮膜が形成された場合に比べ、電着塗膜が析出した部分においても塗膜抵抗値が低くなってしまう。これにより、塗膜析出部分において、過剰な電流の流れが生じ、電着塗料組成物のつきまわり性を下げる要因となる。塗膜析出部分において、過剰な電流の流れが生じることはまた、水素ガスの発生量が多くなり、ガスピンホールなどの塗膜異常が発生する要因となる。
これに対して、例えば上記のように、数平均分子量が上記範囲内であるアミン変性ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)を含むカチオン電着塗料組成物を用いることによって、電着塗装における付きまわり性が向上し、さらに、良好な塗膜外観を有する硬化電着塗膜を得ることができる利点がある。
電着塗装工程
一般的な電着塗装工程は、電着塗料組成物に被塗物を浸漬する過程、および、上記被塗物を陰極として陽極との間に電圧を印加し、化成皮膜を析出させる過程、から構成される。通電時間は、電着条件によって異なるが、一般には2〜4分程である。印加電圧は、被塗物を陰極として陽極との間において、例えば50〜450Vの電圧が印加される。
一般的な電着塗装工程は、電着塗料組成物に被塗物を浸漬する過程、および、上記被塗物を陰極として陽極との間に電圧を印加し、化成皮膜を析出させる過程、から構成される。通電時間は、電着条件によって異なるが、一般には2〜4分程である。印加電圧は、被塗物を陰極として陽極との間において、例えば50〜450Vの電圧が印加される。
電着塗装した後、必要に応じた水洗処理などを行う。次いで、通常は140〜180℃で10〜30分間焼き付けることによって、硬化電着塗膜が形成される。
上記工程を包含する方法によって、リン酸イオンを含まない化成処理剤であるジルコニウム系化成処理剤を用いるにも関わらず、優れたつきまわり性が発揮されることとなる。なおジルコニウムを含む化成処理剤自体は、従来から用いられている。従来のジルコニウムを含む化成処理剤においては、化成処理剤中に溶出した金属イオンがZrF6 2−のフッ素イオンを引き抜き、または、界面pHの上昇により、ジルコニウムの水酸化物または酸化物が生成され、このジルコニウムの水酸化物または酸化物が被塗物表面に析出すると考えられる。ところがこのようなジルコニウムを含む化成処理剤を用いる場合は、化成皮膜の厚みが薄いことから、その後の電着塗装工程において、電着塗膜の十分な付きまわり性が得られないおそれがある。
これに対して、上記工程を包含する方法を用いることによって、鉄を含む金属基材に対しても、優れた付きまわり性が発揮されることとなる。上記化成処理剤は、リン酸イオンを実質的に含まないため、環境に対する負荷が少なく、スラッジ(汚泥)も発生しないという利点も有している。本発明においては、上記化成処理剤を用いて被塗物に化成皮膜を形成し、アルカリ水溶液に接触させた後、カチオン電着塗料組成物を用いて電着塗膜を形成することにより、良好な塗膜外観を有する硬化電着塗膜を形成することができる。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中、「部」および「%」は、ことわりのない限り、質量基準による。
製造例1 ジルコニウム化成処理剤の製造
製造例1−1 アミノシランの加水分解縮合体の調製
アミノシランとしてKBE603(3−アミノプロピル−トリエトキシシラン、有効濃度100%、信越化学工業社製)5質量部を滴下漏斗から、脱イオン水47.5質量部とイソプロピルアルコール47.5質量部の混合溶媒中(溶媒温度:25℃)に60分かけて均一に滴下した後、窒素雰囲気下、25℃で24時間反応を行った。その後、反応溶液を減圧することにより、イソプロピルアルコールを蒸発させ、さらに脱イオン水を加え、有効成分5%のアミノシランの加水分解縮合体を得た。
製造例1−1 アミノシランの加水分解縮合体の調製
アミノシランとしてKBE603(3−アミノプロピル−トリエトキシシラン、有効濃度100%、信越化学工業社製)5質量部を滴下漏斗から、脱イオン水47.5質量部とイソプロピルアルコール47.5質量部の混合溶媒中(溶媒温度:25℃)に60分かけて均一に滴下した後、窒素雰囲気下、25℃で24時間反応を行った。その後、反応溶液を減圧することにより、イソプロピルアルコールを蒸発させ、さらに脱イオン水を加え、有効成分5%のアミノシランの加水分解縮合体を得た。
製造例1−2 化成処理剤の調製
ジルコニウムイオン供給源としての40%フッ化ジルコン酸水溶液を、ジルコニウムイオン濃度が450ppmとなる量で、製造例1−1のアミノシランの加水分解縮合体を200ppmとなる量で、さらに硝酸と水酸化ナトリウムとを用いてpHが4.0となるよう調整し、化成処理剤を調製した。この処理剤をpH4.0に調製した場合におけるフッ素イオンメーターを用いて測定した際のフリーフッ素イオン濃度は15ppmであった。
ジルコニウムイオン供給源としての40%フッ化ジルコン酸水溶液を、ジルコニウムイオン濃度が450ppmとなる量で、製造例1−1のアミノシランの加水分解縮合体を200ppmとなる量で、さらに硝酸と水酸化ナトリウムとを用いてpHが4.0となるよう調整し、化成処理剤を調製した。この処理剤をpH4.0に調製した場合におけるフッ素イオンメーターを用いて測定した際のフリーフッ素イオン濃度は15ppmであった。
製造例2 カチオン電着塗料組成物の製造例
製造例2−1 ブロックイソシアネート硬化剤(b)の製造
ジフェニルメタンジイソシアネート1250部およびメチルイソブチルケトン(以下「MIBK」という。)266.4部を反応容器に仕込み、これを80℃まで加熱した後、ジブチルスズジラウレート2.5部を加えた。ここに、ε−カプロラクタム226部をブチルセロソルブ944部に溶解させたものを80℃で2時間かけて滴下した。さらに100℃で4時間加熱した後、IRスペクトルの測定において、イソシアネート基に基づく吸収が消失したことを確認し、放冷後、MIBK336.1部を加えてブロックイソシアネート硬化剤を得た。得られたブロックイソシアネート硬化剤のTgは8℃であった。
製造例2−1 ブロックイソシアネート硬化剤(b)の製造
ジフェニルメタンジイソシアネート1250部およびメチルイソブチルケトン(以下「MIBK」という。)266.4部を反応容器に仕込み、これを80℃まで加熱した後、ジブチルスズジラウレート2.5部を加えた。ここに、ε−カプロラクタム226部をブチルセロソルブ944部に溶解させたものを80℃で2時間かけて滴下した。さらに100℃で4時間加熱した後、IRスペクトルの測定において、イソシアネート基に基づく吸収が消失したことを確認し、放冷後、MIBK336.1部を加えてブロックイソシアネート硬化剤を得た。得られたブロックイソシアネート硬化剤のTgは8℃であった。
尚、本明細書中のアミン変性ビスフェノール型エポキシ樹脂及びブロックイソシアネート硬化剤のTgは、DSC(Differental Scaning Calorymeter)セイコー電子工業を用いて測定した。
製造例2−2 アミン変性ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)の製造
攪拌機、冷却器、窒素注入管、温度計および滴下ロートを取り付けたフラスコを用意した。このフラスコにビスフェノールAとエピクロルヒドリンから合成したエポキシ当量188のエポキシ樹脂(ダウ・ケミカル社製「DER331J」)440g、メチルイソブチルケトン30g、メタノール5g、ビスフェノールA−エチレンオキシド6モル付加物(三洋化成工業(株)製BPE−60)75gおよびジブチルチンジラウレート0.01gを加え、これを攪拌しながらジフェニルメタンジイソシアネート60gを滴下した。反応は室温から始め、発熱により60℃まで昇温した。その後、30分間反応を継続した後に、さらに、反応は、主に60℃〜65℃の範囲で行い、IRスペクトルを測定しながらイソシアネート基が消失するまで継続した。次に、ジメチルベンジルアミン1gを加え、副生するメタノールを、デカンターを用いて留去させながら、エポキシ当量263になるまで130℃で反応させた。その後、赤外線分光計によれば、オキサゾリドン環のカルボニル基に基づく1750cm−1の吸収が確認された。続いてビスフェノールA135gと2−エチルヘキサン酸50gの反応容器に加えて120℃で反応させ、エポキシ当量は1118になるまで継続した。その後冷却し、N−メチルエタノールアミン40g、およびアミノエチルエタノールアミンのケチミン化物(79質量/メチルイソブチルケトン溶液)45gを加え、110℃で2時間反応させた。その後、メチルイソブチルケトンで不揮発分80%になるまで希釈し、アミン変性ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)を得た。
得られたアミン変性ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)の数平均分子量は2350であった。
攪拌機、冷却器、窒素注入管、温度計および滴下ロートを取り付けたフラスコを用意した。このフラスコにビスフェノールAとエピクロルヒドリンから合成したエポキシ当量188のエポキシ樹脂(ダウ・ケミカル社製「DER331J」)440g、メチルイソブチルケトン30g、メタノール5g、ビスフェノールA−エチレンオキシド6モル付加物(三洋化成工業(株)製BPE−60)75gおよびジブチルチンジラウレート0.01gを加え、これを攪拌しながらジフェニルメタンジイソシアネート60gを滴下した。反応は室温から始め、発熱により60℃まで昇温した。その後、30分間反応を継続した後に、さらに、反応は、主に60℃〜65℃の範囲で行い、IRスペクトルを測定しながらイソシアネート基が消失するまで継続した。次に、ジメチルベンジルアミン1gを加え、副生するメタノールを、デカンターを用いて留去させながら、エポキシ当量263になるまで130℃で反応させた。その後、赤外線分光計によれば、オキサゾリドン環のカルボニル基に基づく1750cm−1の吸収が確認された。続いてビスフェノールA135gと2−エチルヘキサン酸50gの反応容器に加えて120℃で反応させ、エポキシ当量は1118になるまで継続した。その後冷却し、N−メチルエタノールアミン40g、およびアミノエチルエタノールアミンのケチミン化物(79質量/メチルイソブチルケトン溶液)45gを加え、110℃で2時間反応させた。その後、メチルイソブチルケトンで不揮発分80%になるまで希釈し、アミン変性ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)を得た。
得られたアミン変性ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)の数平均分子量は2350であった。
製造例2−3 顔料分散樹脂の製造
攪拌装置、冷却管、窒素導入管および温度計を装備した反応容器に、イソホロンジイソシアネート(IPDI)222.0部を入れ、MIBK39.1部で希釈した後、ここヘジブチル錫ジラウレート0.2部を加えた。その後、これを50℃に昇温した後、2−エチルヘキサノール131.5部を攪拌下、乾燥窒素雰囲気中で2時間かけて滴下した。適宜、冷却することにより、反応温度を50℃に維持した。その結果、2−エチルヘキサノールハーフブロック化IPDI(樹脂固形分90.0%)が得られた。
攪拌装置、冷却管、窒素導入管および温度計を装備した反応容器に、イソホロンジイソシアネート(IPDI)222.0部を入れ、MIBK39.1部で希釈した後、ここヘジブチル錫ジラウレート0.2部を加えた。その後、これを50℃に昇温した後、2−エチルヘキサノール131.5部を攪拌下、乾燥窒素雰囲気中で2時間かけて滴下した。適宜、冷却することにより、反応温度を50℃に維持した。その結果、2−エチルヘキサノールハーフブロック化IPDI(樹脂固形分90.0%)が得られた。
次いで、適当な反応容器に、ジメチルエタノールアミン87.2部、75%乳酸水溶液117.6部およびエチレングリコールモノブチルエーテル39.2部を順に加え、65℃で約半時間攪拌して、4級化剤を調製した。
次に、エポン(EPON)829(シェル・ケミカル・カンパニー社製ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量193〜203)710.0部とビスフェノールA289.6部とを適当な反応容器に仕込み、窒素雰囲気下、150〜160℃に加熱したところ、初期発熱反応が生じた。反応混合物を150〜160℃で約1時間反応させ、次いで、120℃に冷却した後、先に調製した2−エチルヘキサノールハーフブロック化IPDI(MIBK溶液)498.8部を加えた。
反応混合物を110〜120℃に約1時間保ち、次いで、エチレングリコールモノブチルエーテル463.4部を加え、混合物を85〜95℃に冷却し、均一化した後、先に調製した4級化剤196.7部を添加した。酸価が1となるまで反応混合物を85〜95℃に保持した後、脱イオン水964部を加えて、エポキシ−ビスフェノールA樹脂において4級化を終了させ、4級アンモニウム塩部分を有する顔料分散樹脂を得た(樹脂固形分50%)。
製造例2−4 顔料分散ペーストの製造
サンドグラインドミルに製造例3で得た顔料分散用樹脂を120部、カーボンブラック2.0部、カオリン100.0部、二酸化チタン80.0部、リンモリブデン酸アルミニウム18.0部およびイオン交換水144.3部を入れ、粒度10μm以下になるまで分散して、顔料分散ペーストを得た(固形分56%)。
サンドグラインドミルに製造例3で得た顔料分散用樹脂を120部、カーボンブラック2.0部、カオリン100.0部、二酸化チタン80.0部、リンモリブデン酸アルミニウム18.0部およびイオン交換水144.3部を入れ、粒度10μm以下になるまで分散して、顔料分散ペーストを得た(固形分56%)。
製造例2−5 カチオン電着塗料組成物の調製
アミン変性ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)およびブロックイソシアネート硬化剤(b)を含むバインダー樹脂エマルションの調製
製造例2−2で得られたアミン変性ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)と製造例2−1で得られたブロックイソシアネート硬化剤(b)とを固形分比で70/30で均一になるよう混合した。これを樹脂固形分100g当たり酸のミリグラム当量(MEQ(A))が30になるように氷酢酸を添加し、さらにイオン交換水をゆっくりと加えて希釈した。減圧下でMIBKを除去することにより、固形分が36%のバインダー樹脂エマルションを得た。
アミン変性ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)およびブロックイソシアネート硬化剤(b)を含むバインダー樹脂エマルションの調製
製造例2−2で得られたアミン変性ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)と製造例2−1で得られたブロックイソシアネート硬化剤(b)とを固形分比で70/30で均一になるよう混合した。これを樹脂固形分100g当たり酸のミリグラム当量(MEQ(A))が30になるように氷酢酸を添加し、さらにイオン交換水をゆっくりと加えて希釈した。減圧下でMIBKを除去することにより、固形分が36%のバインダー樹脂エマルションを得た。
カチオン電着塗料組成物の調製
得られたバインダー樹脂エマルション1100質量部に対して、製造例2−4で得られた顔料分散ペースト129部を加え、さらにジブチル錫オキサイドが樹脂固形分に対し1質量%分とイオン交換水を加えて、固形分が20%のカチオン電着塗料組成物を得た。
得られたバインダー樹脂エマルション1100質量部に対して、製造例2−4で得られた顔料分散ペースト129部を加え、さらにジブチル錫オキサイドが樹脂固形分に対し1質量%分とイオン交換水を加えて、固形分が20%のカチオン電着塗料組成物を得た。
実施例1
化成皮膜形成
40℃に加温した製造例1−2のジルコニウム化成処理剤の液中に、脱脂処理後に水洗した被塗物(冷延鋼板)を60秒間浸漬して化成皮膜処理を行った。化成皮膜に含まれる金属(A)の量は、25mg/m2であった。なお金属量は、水洗処理後の冷延鋼板を電気乾燥炉において、80℃で5分間乾燥したうえで「ZSX Primus」(RIGAKU蛍光X線分析装置)を用いて、化成処理剤に含まれる金属量として分析した。
化成皮膜形成
40℃に加温した製造例1−2のジルコニウム化成処理剤の液中に、脱脂処理後に水洗した被塗物(冷延鋼板)を60秒間浸漬して化成皮膜処理を行った。化成皮膜に含まれる金属(A)の量は、25mg/m2であった。なお金属量は、水洗処理後の冷延鋼板を電気乾燥炉において、80℃で5分間乾燥したうえで「ZSX Primus」(RIGAKU蛍光X線分析装置)を用いて、化成処理剤に含まれる金属量として分析した。
アルカリ水溶液接触
化成皮膜が形成された被塗物を、水道水で30秒間スプレー処理し、その後、イオン交換水に水酸化ナトリウムを溶解させて調製したアルカリ水溶液(pH8.0)中に、23℃で180秒間浸漬した。
化成皮膜が形成された被塗物を、水道水で30秒間スプレー処理し、その後、イオン交換水に水酸化ナトリウムを溶解させて調製したアルカリ水溶液(pH8.0)中に、23℃で180秒間浸漬した。
電着塗装
上記製造例2−6より得られたカチオン電着塗料組成物を用いて、液温30℃で、硬化電着塗膜の膜厚が15μmとなる塗装電圧にて電着塗装した。電着塗装後水洗し、170℃で25分間焼き付け、硬化電着塗膜を得た。
上記製造例2−6より得られたカチオン電着塗料組成物を用いて、液温30℃で、硬化電着塗膜の膜厚が15μmとなる塗装電圧にて電着塗装した。電着塗装後水洗し、170℃で25分間焼き付け、硬化電着塗膜を得た。
実施例2
化成皮膜形成後に浸漬させる水溶液として、イオン交換水に水酸化ナトリウムを溶解させて調製した、pH12であるアルカリ水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順により行った。
化成皮膜形成後に浸漬させる水溶液として、イオン交換水に水酸化ナトリウムを溶解させて調製した、pH12であるアルカリ水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順により行った。
実施例3
化成処理剤の液中に浸漬させる時間を240秒に変更したこと以外は、実施例1と同様の手順により行った。
化成処理剤の液中に浸漬させる時間を240秒に変更したこと以外は、実施例1と同様の手順により行った。
実施例4
化成処理剤の液中に浸漬させる時間を240秒に変更したこと以外は、実施例2と同様の手順により行った。
化成処理剤の液中に浸漬させる時間を240秒に変更したこと以外は、実施例2と同様の手順により行った。
比較例1
化成皮膜形成後に浸漬させる水溶液として、水道水(pH5.6)を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順により行った。
化成皮膜形成後に浸漬させる水溶液として、水道水(pH5.6)を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順により行った。
比較例2
化成処理剤の液中に浸漬する時間を240秒に変更し、化成皮膜形成後に浸漬させる水溶液として、水道水(pH5.6)を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順により行った。
化成処理剤の液中に浸漬する時間を240秒に変更し、化成皮膜形成後に浸漬させる水溶液として、水道水(pH5.6)を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順により行った。
上記実施例および比較例に対して、下記評価を行った。
付きまわり性評価
付きまわり性は、いわゆる4枚ボックス法により評価した。すなわち、図1に示すように、4枚のリン酸亜鉛処理鋼鈑(JIS G3141 SPCC−SDのサーフダインSD−5000(日本ペイント社製)処理)11〜14を、立てた状態で間隔20mmで平行に配置し、両側面下部および底面を布粘着テープ等の絶縁体で密閉したボックス10を調製した。なお、鋼鈑14以外の鋼鈑11〜13には下部に8mmφの貫通穴15が設けられている。
付きまわり性は、いわゆる4枚ボックス法により評価した。すなわち、図1に示すように、4枚のリン酸亜鉛処理鋼鈑(JIS G3141 SPCC−SDのサーフダインSD−5000(日本ペイント社製)処理)11〜14を、立てた状態で間隔20mmで平行に配置し、両側面下部および底面を布粘着テープ等の絶縁体で密閉したボックス10を調製した。なお、鋼鈑14以外の鋼鈑11〜13には下部に8mmφの貫通穴15が設けられている。
カチオン電着塗料組成物4リットルを塩ビ製容器に移して第1の電着浴とした。図2に示すように、上記ボックス10を被塗装物として、電着塗料組成物21を入れた電着塗料容器20内に浸漬した。この場合、各貫通穴15からのみ塗料21がボックス10内に侵入する。
マグネティックスターラー(非表示)で塗料21を攪拌した。そして、各鋼鈑11〜14を電気的に接続し、最も近い鋼鈑11との距離が150mmとなるように対極22を配置した。各鋼鈑11〜14を陰極、対極22を陽極として電圧を印加して、鋼鈑にカチオン電着塗装を行なった。塗装は、印加開始から5秒間で電圧250Vまで昇圧し、その後115秒間電圧250Vを維持することにより行った。
塗装後の各鋼鈑は、水洗した後、170℃で25分間焼き付けし、空冷後、対極22から最も近い鋼鈑11のA面に形成された塗膜の膜厚と、対極22から最も遠い鋼鈑14のG面に形成された塗膜の膜厚とを測定し、膜厚(G面)/膜厚(A面)の比(G/A値)により付きまわり性を評価した。この値が62%以上である場合を良好と評価し、この値が62%未満である場合を不良と評価した。
実施例の方法においては、いずれも、付きまわり性が高いことが確認された。
比較例1、2は、アルカリ水溶液接触工程の代わりに、pH5.6の水道水に接触させた例である。これらの例では、付きまわり性が劣ることが確認された。
比較例1、2は、アルカリ水溶液接触工程の代わりに、pH5.6の水道水に接触させた例である。これらの例では、付きまわり性が劣ることが確認された。
上記方法によると、ジルコニウム系化成処理剤を用いた後に電着塗装を行う場合において、電着塗膜の付きまわり性を向上させることができる。
10:ボックス
11〜14:化成処理鋼板
15:貫通孔
20:電着塗装容器
21:電着塗料組成物
22:対極
11〜14:化成処理鋼板
15:貫通孔
20:電着塗装容器
21:電着塗料組成物
22:対極
Claims (5)
- 化成処理剤を用いて金属基材に化成皮膜を形成する、化成皮膜形成工程、
得られた化成皮膜を、pH8〜12の範囲内であるアルカリ水溶液に接触させる、アルカリ水溶液接触工程、および
前記アルカリ水溶液と接触させた化成皮膜を有する金属基材を、電着塗料組成物中に浸漬して電着塗装し、電着塗膜を形成する、電着塗装工程、
を包含する、電着塗膜の付きまわり性を向上させる方法であって、
前記化成処理剤は、
ジルコニウム、チタンおよびハフニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属(A)、
フッ素(B)、
硝酸、亜硝酸、硫酸、亜硫酸、過硫酸、リン酸、塩酸、臭素酸、塩素酸、過酸化水素、HMnO4、HVO3、H2WO4およびH2MoO4、並びにこれらの塩類からなる群から選択される少なくとも一種である酸化剤(C)、および
ケイ素含有化合物(D)
を含み、
前記金属基材は、鉄を含み、
前記アルカリ水溶液と接触させた化成皮膜に含まれる金属(A)の量は、金属元素換算で3〜500mg/m2の範囲内である、
方法。 - 化成処理剤を用いて金属基材に化成皮膜を形成する、化成皮膜形成工程、
得られた化成皮膜を、pH8〜12の範囲内であるアルカリ水溶液に接触させる、アルカリ水溶液接触工程、および
前記アルカリ水溶液と接触させた化成皮膜を有する金属基材を、電着塗料組成物中に浸漬して電着塗装し、電着塗膜を形成する、電着塗装工程、
を包含する、化成皮膜および電着塗膜を有する金属部材の調製方法であって、
前記化成処理剤は、
ジルコニウム、チタンおよびハフニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属(A)、
フッ素(B)、
硝酸、亜硝酸、硫酸、亜硫酸、過硫酸、リン酸、塩酸、臭素酸、塩素酸、過酸化水素、HMnO4、HVO3、H2WO4およびH2MoO4、並びにこれらの塩類からなる群から選択される少なくとも一種である酸化剤(C)、および
ケイ素含有化合物(D)
を含み、
前記金属基材は、鉄を含み、
前記アルカリ水溶液と接触させた化成皮膜に含まれる金属(A)の量は、金属元素換算で3〜500mg/m2の範囲内である、
方法。 - 前記ケイ素含有化合物(D)は、アルキルシリケート類およびシランカップリング剤からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載の方法。
- 前記化成処理剤はさらに、ポリアミン化合物を含む、請求項1〜3いずれかに記載の方法。
- 前記電着塗料組成物は、
アミン変性ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)およびブロックイソシアネート硬化剤(b)を含み、
前記アミン変性ビスフェノール型エポキシ樹脂(a)は、数平均分子量が1000〜5000の範囲内である、
請求項1〜4いずれかに記載の方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2019181524A JP2021055166A (ja) | 2019-10-01 | 2019-10-01 | 電着塗膜の付きまわり性を向上させる方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2019181524A JP2021055166A (ja) | 2019-10-01 | 2019-10-01 | 電着塗膜の付きまわり性を向上させる方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2021055166A true JP2021055166A (ja) | 2021-04-08 |
Family
ID=75272318
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2019181524A Pending JP2021055166A (ja) | 2019-10-01 | 2019-10-01 | 電着塗膜の付きまわり性を向上させる方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2021055166A (ja) |
-
2019
- 2019-10-01 JP JP2019181524A patent/JP2021055166A/ja active Pending
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP2010095678A (ja) | カチオン電着塗料組成物および複層塗膜形成方法 | |
JP2008184620A (ja) | 複層塗膜形成方法 | |
JP2009179859A (ja) | 複層塗膜形成方法 | |
JP4060620B2 (ja) | 無鉛性カチオン電着塗料を用いる電着塗装方法 | |
JP2008195925A (ja) | 電着塗膜の形成方法 | |
EP3354701B1 (en) | Method for preparing cationic electrodeposition coating composition | |
WO2018174134A1 (ja) | カチオン電着塗料組成物 | |
US20090321270A1 (en) | Electroconductivity-controlling agent for cationic electrodeposition coating composition and method for adjusting electroconductivity of cationic electrodeposition coating composition therewith | |
JP2006348316A (ja) | 電着塗膜形成方法 | |
JP2008174819A (ja) | 塗膜形成方法 | |
JP7401214B2 (ja) | カチオン電着塗料組成物 | |
WO2022014277A1 (ja) | カチオン電着塗料組成物 | |
JP5996338B2 (ja) | 電着塗料組成物 | |
JP2021055166A (ja) | 電着塗膜の付きまわり性を向上させる方法 | |
JP2022129794A (ja) | カチオン電着塗料組成物 | |
JP2008231452A (ja) | 複層塗膜形成方法 | |
JP2002356645A (ja) | 無鉛性カチオン電着塗料組成物 | |
JP2006002003A (ja) | カチオン電着塗料組成物 | |
JP2004269627A (ja) | 無鉛性カチオン電着塗料組成物 | |
WO2015147079A1 (ja) | 電着塗料組成物 | |
JP6615552B2 (ja) | カチオン電着塗料組成物 | |
JP2002285392A (ja) | 電着塗装方法 | |
JP7333198B2 (ja) | カチオン電着塗料組成物の調製方法 | |
JP2002285391A (ja) | 電着塗装方法 | |
JP2008214705A (ja) | カチオン電着塗装方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821 Effective date: 20191211 |
|
RD04 | Notification of resignation of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424 Effective date: 20200409 |