JP2008231452A - 複層塗膜形成方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】化成処理剤を用いて被塗物に化成処理膜を形成する化成処理膜形成工程、および、得られた被塗物をカチオン電着塗料組成物中に浸漬して電着塗膜を形成する電着塗膜形成工程、を包含する、複層塗膜形成方法であって;被塗物に形成された厚さ15μmの電着塗膜の膜抵抗が800〜1600kΩ・cm2であり;この電着塗膜形成工程で用いられるカチオン電着塗料組成物は、カチオン性エポキシ樹脂およびブロックイソシアネート硬化剤を含むバインダー樹脂を含み、および;この化成処理剤は、ジルコニウム、チタン及びハフニウムからなる群より選択される少なくとも一種(A)、フッ素(B)、密着性および耐食性付与剤(C)を含有する化成処理剤である、複層塗膜形成方法。
【選択図】なし
Description
化成処理剤を用いて被塗物に化成処理膜を形成する化成処理膜形成工程、および
得られた被塗物をカチオン電着塗料組成物中に浸漬して電着塗膜を形成する電着塗膜形成工程、
を包含する、複層塗膜形成方法であって、
被塗物に形成された厚さ15μmの電着塗膜の膜抵抗が800〜1600kΩ・cm2であり、
この電着塗膜形成工程で用いられるカチオン電着塗料組成物は、カチオン性エポキシ樹脂およびブロックイソシアネート硬化剤を含むバインダー樹脂を含み、および
この化成処理剤は、ジルコニウム、チタン及びハフニウムからなる群より選択される少なくとも一種(A)、フッ素(B)、密着性および耐食性付与剤(C)を含有する化成処理剤であって、
この密着性および耐食性付与剤(C)は、下記(a)〜(h):
亜鉛、マンガン、及び、コバルトイオンからなる群より選択される少なくとも一種の金属イオン(a)、
アルカリ土類金属イオン(b)、
13族元素の金属イオン(c)、
銅イオン(d)、
ケイ素含有化合物(e)、
ポリアミン水溶性樹脂(f)、
アミノ基を有する水溶性エポキシ化合物(g)、並びに、
シランカップリング剤および/またはその加水分解物(h):
からなる群より選択される少なくとも1種を含む、
複層塗膜形成方法、を提供するものであり、これにより上記目的が達成される。
化成処理剤を用いて被塗物に化成処理膜を形成する化成処理膜形成工程、および
得られた被塗物をカチオン電着塗料組成物中に浸漬して電着塗膜を形成する電着塗膜形成工程、
を包含する方法である。以下、各工程において用いられる化成処理剤およびカチオン電着塗料組成物について、順次記載する。
本発明で用いることができる化成処理剤は、
ジルコニウム、チタン及びハフニウムからなる群より選択される少なくとも一種(A)、フッ素(B)、密着性および耐食性付与剤(C)を含有する化成処理剤であって、
密着性および耐食性付与剤(C)は、下記(a)〜(h):
亜鉛、マンガン、及び、コバルトイオンからなる群より選択される少なくとも一種の金属イオン(a)、
アルカリ土類金属イオン(b)、
13族元素の金属イオン(c)、
銅イオン(d)、
ケイ素含有化合物(e)、
ポリアミン水溶性樹脂(f)、
アミノ基を有する水溶性エポキシ化合物(g)、並びに、
シランカップリング剤および/またはその加水分解物(h):
からなる群より選択される少なくとも1種を含む、
化成処理剤、である。この化成処理剤は、リン酸イオンや、有害な重金属イオンを実質的に含有しないという特徴を有する。
上記化成処理剤に含まれるジルコニウム、チタン及びハフニウムからなる群より選択される少なくとも一種(A)は、化成処理膜形成成分である。ジルコニウム、チタン及びハフニウムからなる群より選択される少なくとも一種(A)を含む化成処理膜が被塗物に形成されることにより、被塗物の耐食性や耐磨耗性を向上させ、更に、次に形成される塗膜との密着性を高めることができる。
上記化成処理剤に含まれるフッ素(B)は、被塗物のエッチング剤としての役割を果たすものである。上記フッ素の供給源としては特に限定されず、例えば、フッ化水素酸、フッ化アンモニウム、フッ化ホウ素酸、フッ化水素アンモニウム、フッ化ナトリウム、フッ化水素ナトリウム等のフッ化物を挙げることができる。また、錯フッ化物としては、例えば、ヘキサフルオロケイ酸塩が挙げられ、その具体例としてケイフッ化水素酸、ケイフッ化水素酸亜鉛、ケイフッ化水素酸マンガン、ケイフッ化水素酸マグネシウム、ケイフッ化水素酸ニッケル、ケイフッ化水素酸鉄、ケイフッ化水素酸カルシウム等を挙げることができる。
本発明において用いることができる化成処理剤は、さらに、密着性および耐食性付与剤(C)を含有する。本発明において密着性および耐食性付与剤(C)とは、下記(a)〜(h)からなる群より選択される少なくとも一種を含有するものである。密着性および耐食性付与剤(C)を配合することにより、化成処理膜の安定性及び塗膜密着性を改善し、従来のジルコニウム化合物からなる表面処理剤による処理が不適であった鉄系基材に対しても良好な化成処理膜を形成することができる。
及び/又は、下記式(2)
が特に好ましい。上記ポリビニルアミン樹脂及びポリアリルアミン樹脂は、特に、密着性を向上する効果に優れているという利点を有する。上記ポリビニルアミン樹脂としては特に限定されず、PVAM−0595B(三菱化学株式会社製)等の市販のポリビニルアミン樹脂を使用することができる。上記ポリアリルアミン樹脂としては特に限定されず、例えば、PAA−01、PAA−10C、PAA−H−10C、PAA−D11HCl(いずれも日東紡株式会社製)等の市販のポリアリルアミン樹脂を使用することができる。また、ポリビニルアミン樹脂とポリアリルアミン樹脂とを併用して使用するものであってもよい。
本発明にかかる化成処理剤は、必要に応じてさらに化成反応促進剤を含有してもよい。化成反応促進剤を含有することにより、得られる化成処理膜の膜厚が場所によって不均一になるという問題を解決することができる。従来のジルコニウム化合物からなる表面処理剤により、エッジ部を有する被塗物を処理すると、エッジ部でアノード溶解反応が選択的に生じるため、カソード反応がエッジ部近傍で起こりやすくなり、結果としてエッジ部近傍に皮膜が析出しやすくなる。一方、被塗物の平面部では、アノード溶解反応が起こりにくいため、皮膜の析出が抑制される。このため、得られる化成処理膜にムラが生じる。本発明における化成反応促進剤は、上述したような問題を解決するために使用される化合物であり、化成処理剤に配合することによって、上述したエッジ部及び平面部における化成処理反応の差を生じることなく化成処理を行うことができるようにする性質を有するものである。
これらの化成反応促進剤を化成処理剤に配合することにより、皮膜析出の偏りを調整し、被塗物のエッジ部及び平面部においてもムラのない良好な化成処理膜を得ることができる。
化成処理剤は、上記成分(A)、(B)および(C)を水性溶媒中に混合することによって調製することができる。水性溶媒としては、水道水、イオン交換水、純水などを用いることができる。水性溶媒は、必要に応じて少量のアルコール類などを含んでいてもよい。なお、本発明にかかる化成処理剤は、実質的にリン酸イオンを含有しないものであることが好ましい。実質的にリン酸イオンを含まないとは、リン酸イオンが化成処理剤中の成分として作用する程含まれていないことを意味する。本発明にかかる化成処理剤は、実質的にリン酸イオンを含まないことから、環境負荷の原因となるリンを実質的に使用することがなく、リン酸亜鉛処理剤を使用する場合に発生するリン酸鉄、リン酸亜鉛等のようなスラッジの発生を抑制することができる。
上記化成処理剤を用いて被塗物の表面に化成処理膜を形成する方法は、特に限定されるものではなく、通常の処理条件によって化成処理剤と被塗物表面とを接触させることによって行うことができる。上記化成処理における処理温度は、下限20℃、上限70℃の範囲内であることか好ましい。上記下限は30℃であることがより好ましく、上記上限は50℃であることがより好ましい。上記化成処理における化成時間は、下限5秒、上限1200秒の範囲内であることが好ましい。上記下限は30秒がより好ましく、上記上限は120秒がより好ましい。化成処理方法としては特に限定されず、例えば、浸漬法、スプレー法、ロールコート法等を挙げることができる。
本発明の方法は、まず被塗物に化成処理膜を形成し、次いでカチオン電着塗料組成物を用いて電着塗膜を形成する。本発明において用いられるカチオン電着塗料組成物は、水性溶媒、水性溶媒中に分散するかまたは溶解した、カチオン性エポキシ樹脂およびブロックイソシアネート硬化剤を含むバインダー樹脂、中和酸、溶剤、そして必要に応じた顔料を含む。
代表的なカチオン性エポキシ樹脂として、アミン変性エポキシ樹脂が挙げられる。本発明においては、カチオン性エポキシ樹脂として、アミン変性エポキシ樹脂を用いることができる。
アミン変性エポキシ樹脂は、電着塗料組成物において一般に使用されるアミンで変性されたエポキシ樹脂を特に制限なく用いることができる。アミン変性エポキシ樹脂として、当業者に公知のアミン変性エポキシ樹脂および市販のエポキシ樹脂をアミン変性したものなどを使用することができる。
カチオン電着塗料組成物には、ポリイソシアネートをブロック剤でブロックして得られるブロックイソシアネート硬化剤が含まれる。ここでポリイソシアネートとは、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物をいう。ポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族系、脂環式系、芳香族系および芳香族−脂肪族系等のうちのいずれのものであってもよい。
本発明の方法に用いられるカチオン電着塗料組成物は、顔料を含んでもよい。含まれうる顔料の例としては、通常使用される無機顔料、例えば、チタンホワイト、カーボンブラック及びベンガラのような着色顔料;カオリン、タルク、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、マイカおよびクレーのような体質顔料;リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、亜リン酸亜鉛、シアン化亜鉛、酸化亜鉛、トリポリリン酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸カルシウム及びリンモリブデン酸アルミニウム、リンモリブデン酸アルミニウム亜鉛のような防錆顔料等、が挙げられる。
上記カチオン電着塗料組成物は、上記成分の他にブロックイソシアネート硬化剤のブロック剤解離のための解離触媒を含んでもよい。このような解離触媒として、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫オキシド、ジオクチル錫オキシドなどの有機錫化合物や、N−メチルモルホリンなどのアミン類、ストロンチウム、コバルト、銅などの金属塩が使用できる。解離触媒の濃度は、カチオン電着塗料組成物中のカチオン性エポキシ樹脂とブロックイソシアネート硬化剤合計の100固形分質量部に対し0.1〜6質量部であるのが好ましい。
本発明で用いられるカチオン電着塗料組成物は、カチオン性エポキシ樹脂、ブロックイソシアネート硬化剤、そして顔料分散ペーストおよび必要に応じた触媒を水性溶媒中に分散することによって調製される。また、通常、水性溶媒にはカチオン性エポキシ樹脂を中和して、バインダー樹脂のエマルションの分散性を向上させるために中和酸を含有させる。中和酸は塩酸、硝酸、リン酸、ギ酸、酢酸、乳酸のような無機酸または有機酸である。
一般的な電着塗装工程は、電着塗料組成物に被塗物を浸漬する過程、及び、上記被塗物を陰極として陽極との間に電圧を印加し、被膜を析出させる過程、から構成される。通電時間は、電着条件によって異なるが、一般には、2〜4分とすることができる。印加電圧は、被塗物を陰極として陽極との間に、通常100〜300Vの電圧が印加される。印加電圧が100V未満であると電着が不充分となるおそれがあり、300Vを超えると、特に亜鉛めっき鋼板などの塗装においてガスピンの塗膜不具合が発生し、異常外観となるおそれがある。電着塗装時の塗料組成物の浴液温度は、通常26〜32℃に調節される。電着塗膜の膜厚は10〜20μmとすることが好ましい。膜厚が10μm未満であると、防錆性が不充分であり、20μmを超えると、塗料の浪費につながる。
撹拌機、冷却管、窒素導入管、温度計および滴下漏斗を装備したフラスコに、液状エポキシ(エポキシ当量188)940部、メチルイソブチルケトン(以下「(MIBK)」と略すこともある。)61.4部およびメタノール24.4部を仕込んだ。反応混合物は撹拌下室温から40℃まで昇温したあと、ジブチル錫ラウレート0.01部およびトリレンジイソシアネート(以下TDIと略すこともある。)21.75部を投入した。40〜45℃で30分間反応を継続した。反応はIRスペクトルの測定において、イソシアネート基に基づく吸収が消失するまで継続した。
クルードMDI 1330部およびメチルイソブチルケトン585.6部を反応容器に仕込み、これを85〜95℃まで加熱した後、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(分子量162)486部を2.5時間かけて滴下した。滴下終了後、一時間保温した。その後メチルイソブチルケトン194.8部を投入し50℃まで冷却し、プロピレングリコール(分子量76)532部を滴下した。滴下完了後60℃に加温し、一時間保温した。ジブチル錫ラウレートを0.4部投入した後昇温し、70℃にて1時間保温した後、IRスペクトルの測定において、イソシアネート基に基づく吸収が消失したことを確認し、ガラス転位温度が8℃のブロックイソシアネート硬化剤を得た。
撹拌装置、冷却管、窒素導入管および温度計を装備した反応容器にイソホロンジイソシアネート(以下IPDIと略す)2220部MIBK342.1部を仕込み、昇温し50℃でジブチル錫ラウレート2.2部を投入し60℃でメチルエチルケトンオキシム(以下MEKオキシムと略)878.7部を仕込んだ。その後、60℃で1時間保温し、NCO当量が348となっていることを確認し、ジメチルエタノールアミン890部を投入した。60℃で1時間保温しIRでNCOピークが消失していることを確認後60℃を超えないよう冷却しながら50%乳酸1872.6部と脱イオン水495部を投入して4級化剤を得た。ついで異なる反応容器にTDI870部およびMIBK49.5部を仕込み、50℃以上にならないように2−エチルヘキサノール667.2部を2.5時間かけて滴下した。滴下終了後MIBK35.5部を投入し、30分保温した。その後NCO当量が330〜370になっていることを確認しハーフブロックポリイソシアネートを得た。
サンドグラインドミルに製造例3で得た顔料分散用樹脂(1)を106.9部、カーボンブラック1.6部、カオリン40部、二酸化チタン55.4部、リンモリブデン酸アルミニウム3部、脱イオン水13部を入れ、粒度10μm以下になるまで分散して、顔料分散ペーストを得た(固形分60%)。
攪拌機、冷却器、窒素注入管、温度計および滴下ロートを取り付けたフラスコにビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量188)752.0部、メタノール77.0部、メチルイソブチルケトン200.3部およびジラウリン酸ジブチルスズ0.3部を仕込み、室温で攪拌し均一溶液とし、2,4−/2,6−トリレンジイソシアネート80/20(質量比)混合物174.2部を50分間かけて滴下すると発熱により系内の温度が70℃に達した。IRスペクトルはイソシアネートに基づく2280cm−1の吸収の消失およびウレタンのカルボニル基に基づく1730cm−1の吸収の出現を示した。
攪拌機、冷却器、窒素導入管、温度計および滴下ロートを取り付けたフラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート型三量体(コロネートHX、日本ポリウレタン社製)199部、メチルイソブチルケトン122.8部、およびジブチルスズジラウレート0.2部を秤取し、50℃まで昇温した。外部から冷却して温度を50℃に保ちながらメチルエチルケトオキシム87部を2時間かけて滴下した。滴下終了後70℃に昇温し、この温度を保ちながらIR分析によりイソシアネート基が消失するまで反応させ、脂肪族ブロックイソシアネート硬化剤を得た。
製造例5と同様のフラスコに、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート723部、メチルイソブチルケトン350部およびジブチルスズジラウレート0.01部を仕込んだ。得られた反応混合物を70℃まで昇温し、その反応混合物が均一に溶解した後、ブチルセロソルブ546部に、ε−カプロラクタム131部を溶解させた後、その溶解物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、反応温度を90℃に保持したまま、IRスペクトルの測定において、イソシアネート基に基づく吸収が消失するまで反応を継続させて、ブロック化芳香族ポリイソシアネート硬化剤を得た(樹脂固形分80%)。
攪拌装置、冷却管、窒素導入管および温度計を装備した反応容器に、イソホロンジイソシアネート(以下、IPDIという)222.0部を入れ、MIBK39.1部で希釈した後、ジブチルスズラウレート0.2部を加えた。その後、50℃に昇温した後、2−エチルヘキサノール131.5部を攪拌しながら、乾燥窒素雰囲気中で2時間かけて滴下した。適宜、冷却することにより、反応温度を50℃に維持した。その結果、2−エチルヘキサノールハーフブロック化IPDIが得られた。
サンドグラインドミルに、製造例8で得られた顔料分散樹脂(2)を固形分で60部、カーボンブラック2部、酸化チタン48部、焼成カオリン50部、そしてイオン交換水221.7部を入れ、粒度10μm以下になるまで分散して、顔料分散ペーストを得た。
ジルコンフッ化水素酸、硝酸亜鉛およびアミノ基含有シランカップリング剤(h)であるKBM−603(N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン:有効濃度100%:信越化学工業株式会社製)を使用して化成処理剤を調製した。これらを、ジルコニウム濃度250ppm、アミノ基含有シランカップリング剤濃度100ppm、亜鉛濃度500ppmとなるように、イオン交換水に加えて混合し、さらにクエン酸鉄(III)アンモニウムを化成反応促進剤として、濃度200ppmとなるように添加し、次いで水酸化ナトリウムを用いてpH4に調整することによって、化成処理剤(1)を得た。
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計および滴下漏斗を装備したフラスコに、2,4−/2,6−トリレンジイソシアネート(重量比=8/2)92部、メチルイソブチルケトン(以下、MIBKと略す)95部およびジブチル錫ジラウレート0.5部を仕込んだ。反応混合物を攪拌下、メタノール21部を滴下した。反応は、室温から始め、発熱により60℃まで昇温した。その後、30分間反応を継続した後、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル57部を滴下漏斗より滴下した。更に、反応混合物に、ビスフェノールA−プロピレンオキシド5モル付加体42部を添加した。反応は主に、60〜65℃の範囲で行い、IRスペクトルの測定において、イソシアネート基に基づく吸収が消失するまで継続した。
ジフェニルメタンジイソシアナート1250部およびMIBK266.4部を反応容器に仕込み、これを80℃まで加熱した後、ジブチル錫ジラウレート2.5部を加えた。ここに、ε−カプロラクタム226部をブチルセロソルブ944部に溶解させたものを80℃で2時間かけて滴下した。さらに100℃で4時間加熱した後、IRスペクトルの測定において、イソシアネート基に基づく吸収が消失したことを確認し、放冷後、MIBK336.1部を加えてブロックイソシアネート硬化剤を得た。
まず、攪拌装置、冷却管、窒素導入管および温度計を装備した反応容器に、イソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと略す)222.0部を入れ、MIBK39.1部で希釈した後、ここヘジブチル錫ジラウレート0.2部を加えた。その後、これを50℃に昇温した後、2−エチルヘキサノール131.5部を攪拌下、乾燥窒素雰囲気中で2時間かけて滴下した。適宜、冷却することにより、反応温度を50℃に維持した。その結果、2−エチルヘキサノールハーフブロック化IPDI(樹脂固形分90.0%)が得られた。
サンドグラインドミルに比較製造例3で得た顔料分散用樹脂を120部、カーボンブラック2.0部、カオリン100.0部、二酸化チタン80.0部、リンモリブデン酸アルミニウム18.0部およびイオン交換水221.7部を入れ、粒度10μm以下になるまで分散して、顔料分散ペーストを得た(固形分48%)。
ジルコンフッ化水素酸を使用して化成処理剤を調製した。ジルコニウム濃度250ppmとなるように、イオン交換水に加えて混合し、さらにクエン酸鉄(III)アンモニウムを化成反応促進剤として、濃度200ppmとなるように添加し、次いで水酸化ナトリウムを用いてpH4に調整することによって、化成処理剤(2)を得た。
リン酸亜鉛系化成処理剤であるサーフダインSD−6350(日本ペイント社製)を、化成処理剤(3)として用いた。
カチオン電着塗料組成物(1)の調製
製造例1で得られたアミン変性(オキサゾリドン環含有)エポキシ樹脂(1)と製造例2で得られたブロックイソシアネート硬化剤(1)を固形分比で70/30で均一になるよう混合した。さらに2−エチルヘキシルグリコールを樹脂固形分に対し3%添加したものに樹脂固形分100g当たり酸のミリグラム当量が27になるよう氷酢酸で中和し、さらにイオン交換水をゆっくりと加えて希釈した。減圧下でMIBKを除去することにより、固形分が36%のバインダー樹脂のエマルションを得た。このバインダー樹脂のガラス転移温度は34℃であった。なお本明細書において、ガラス転移温度の測定はセイコー電子工業社製DSC220Cを用いて測定した。
脱脂処理した冷延鋼板を、製造例10の化成処理剤(1)(温度40℃)中に60秒間浸漬処理して化成処理膜を形成した。化成処理膜の皮膜量は、10mg/m2であった。なお皮膜量は、水洗処理後の冷延鋼板を電気乾燥炉において、80℃で5分間乾燥したうえで「XRF1700」(島津製作所製蛍光X線分析装置)を用いて、化成処理剤に含まれる金属の合計量として分析した。得られた被塗物を、次いで水道水で30秒間スプレー処理し、更にイオン交換水で10秒間スプレー処理した。
カチオン電着塗料組成物(2)の調製
製造例5のアミン変性エポキシ樹脂(2)とブロックイソシアネート硬化剤(2)(製造例6と製造例7のポリイソシアネート硬化剤の製造例6/製造例7の重量比1/1の混合物)を固形分配合比60:40で均一に混合した後、90%酢酸を加えてMEQ(A)が27となるように中和し、更にイオン交換水を加えてゆっくり希釈した。固形分が36.0%となるように減圧化でMIBKを除去して、バインダー樹脂のエマルションを得た。このバインダー樹脂のガラス転移温度は25℃であった。
得られたカチオン電着塗料組成物(2)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、塗膜を形成した。なお、電着終了時の残余電流から算出される塗膜抵抗値は1020KΩ・cm2であった。
被塗物として合金化亜鉛めっき鋼板を用いたこと以外は実施例1と同様にして、複層塗膜を形成した。なお、電着終了時の残余電流から算出される塗膜抵抗値は1340KΩ・cm2であった。
被塗物として合金化亜鉛めっき鋼板を用いたこと以外は実施例2と同様にして、複層塗膜を形成した。なお、電着終了時の残余電流から算出される塗膜抵抗値は1210KΩ・cm2であった。
カチオン電着塗料組成物(3)の製造
比較製造例1で得られたアミン変性エポキシ樹脂(3)と比較製造例2で得られたブロックイソシアネート硬化剤(3)とを固形分比で70/30で均一になるよう混合した。これに樹脂固形分100g当たり酸のミリグラム当量(MEQ(A))が35になるよう氷酢酸を添加し、さらにイオン交換水をゆっくりと加えて希釈した。減圧下でMIBKを除去することにより、固形分が36%のバインダー樹脂のエマルションを得た。このバインダー樹脂のガラス転移温度は12℃であった。
得られたカチオン電着塗料組成物(3)を用いて膜厚20μmの電着塗膜を形成したこと以外は実施例1と同様にして、複層塗膜を形成した。なお、電着終了時の残余電流から算出される塗膜抵抗値は660KΩ・cm2であった。
製造例10より得られた化成処理剤(1)の代わりに、比較製造例5より得られた化成処理剤(2)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして複層塗膜を形成した。なお、電着終了時の残余電流から算出される塗膜抵抗値は900KΩ・cm2であった。
製造例10より得られた化成処理剤(1)の代わりに、比較製造例5より得られた化成処理剤(2)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして複層塗膜を形成した。なお、電着終了時の残余電流から算出される塗膜抵抗値は770KΩ・cm2であった。
化成処理剤として、比較製造例5より得られた化成処理剤(2)を用いたこと以外は、比較例1と同様にして複層塗膜を形成した。なお、電着終了時の残余電流から算出される塗膜抵抗値は410KΩ・cm2であった。
製造例10より得られた化成処理剤(1)の代わりに、比較製造例6のリン酸亜鉛系化成処理剤(3)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして複層塗膜を形成した。なお、電着終了時の残余電流から算出される塗膜抵抗値は1340KΩ・cm2であった。
製造例10より得られた化成処理剤(1)の代わりに、比較製造例6のリン酸亜鉛系化成処理剤(3)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして複層塗膜を形成した。なお、電着終了時の残余電流から算出される塗膜抵抗値は1170KΩ・cm2であった。
製造例10より得られた化成処理剤(1)の代わりに、比較製造例6のリン酸亜鉛系化成処理剤(3)を用いたこと以外は、比較例1と同様にして複層塗膜を形成した。なお、電着終了時の残余電流から算出される塗膜抵抗値は830KΩ・cm2であった。
被塗物として合金化亜鉛めっき鋼板を用いたこと以外は比較例1と同様にして、複層塗膜を形成した。なお、電着終了時の残余電流から算出される塗膜抵抗値は740KΩ・cm2であった。
被塗物として合金化亜鉛めっき鋼板を用いたこと以外は比較例5と同様にして、複層塗膜を形成した。なお、電着終了時の残余電流から算出される塗膜抵抗値は1400KΩ・cm2であった。
被塗物として合金化亜鉛めっき鋼板を用いたこと以外は比較例6と同様にして、複層塗膜を形成した。なお、電着終了時の残余電流から算出される塗膜抵抗値は1220KΩ・cm2であった。
被塗物として合金化亜鉛めっき鋼板を用いたこと以外は比較例7と同様にして、複層塗膜を形成した。なお、電着終了時の残余電流から算出される塗膜抵抗値は780KΩ・cm2であった。
つきまわり性は、いわゆる4枚ボックス法により評価した。すなわち、図1にしめすように、各実施例および比較例で使用した化成処理剤で処理した4枚の冷延鋼板または合金化亜鉛めっき鋼板11〜14を、立てた状態で間隔20mmで平行に配置し、両側面下部および底面を布粘着テープ等の絶縁体で密閉したボックス10を調製した。なお、鋼鈑14以外の鋼鈑11〜13には下部に8mmφの貫通穴15が設けられている。
各実施例および比較例で使用した化成処理剤1L当たり1m2の金属基材を処理した後、化成処理剤中の濁りを目視観察した。
〇:濁りなし
×:濁りあり
11〜14:化成処理鋼板、
15:貫通穴、
20:電着塗装容器、
21:電着塗料、
22:対極。
Claims (5)
- 化成処理剤を用いて被塗物に化成処理膜を形成する化成処理膜形成工程、および
得られた被塗物をカチオン電着塗料組成物中に浸漬して電着塗膜を形成する電着塗膜形成工程、
を包含する、複層塗膜形成方法であって、
被塗物に形成された厚さ15μmの電着塗膜の膜抵抗が800〜1600kΩ・cm2であり、
該電着塗膜形成工程で用いられるカチオン電着塗料組成物は、カチオン性エポキシ樹脂およびブロックイソシアネート硬化剤を含むバインダー樹脂を含み、および
該化成処理剤は、ジルコニウム、チタン及びハフニウムからなる群より選択される少なくとも一種(A)、フッ素(B)、密着性および耐食性付与剤(C)を含有する化成処理剤であって、
該密着性および耐食性付与剤(C)は、下記(a)〜(h):
亜鉛、マンガン、及び、コバルトイオンからなる群より選択される少なくとも一種の金属イオン(a)、
アルカリ土類金属イオン(b)、
13族元素の金属イオン(c)、
銅イオン(d)、
ケイ素含有化合物(e)、
ポリアミン水溶性樹脂(f)、
アミノ基を有する水溶性エポキシ化合物(g)、並びに、
シランカップリング剤および/またはその加水分解物(h):
からなる群より選択される少なくとも1種を含む、
複層塗膜形成方法。 - 前記バインダー樹脂は、ガラス転移温度が20〜40℃である、請求項1記載の複層塗膜形成方法。
- 前記カチオン電着塗料組成物は中和酸を含み、該中和酸の量はバインダー樹脂固形分100gに対して18〜25mg当量である、請求項1記載の複層塗膜形成方法。
- 前記カチオン電着塗料組成物中に含まれる溶剤含有量が0.1〜1.0重量%である、
請求項1記載の複層塗膜形成方法。 - 請求項1〜4記載の複層塗膜形成方法により得られる複層塗膜。
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