JP2008189960A - 電着塗膜形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】クリアランス部塗装性に優れた電着塗膜形成方法を提供すること。
【解決手段】カチオン電着塗料組成物中に被塗物を浸漬して通電し、次いでカチオン電着塗料組成物中から被塗物を少なくとも1回引き上げてその後に被塗物をカチオン電着塗料組成物中に再度浸漬して通電する、電着塗装工程、を包含する、電着塗膜形成方法であって、このカチオン電着塗料組成物から得られる、厚さ15μmの電着塗膜の膜抵抗値が1000〜2000kΩ・cmである、電着塗膜形成方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、クリアランス部塗装性に優れた電着塗膜形成方法に関する。
電着塗装は、被塗物の細部にまで塗装を施すことができ、自動的かつ連続的に塗装することができるので、特に自動車車体等の大型な被塗物の下塗り塗装方法として広く実用化されている。電着塗装は、電着塗料中に被塗物を電極として浸漬させ、電流を通電することにより行われる。こうして形成される電着塗膜は、耐食性に優れるという利点を有する。
電着塗装は、被塗物の未着部位に塗膜が順次形成される、付きまわり性に優れた塗装方法である。しかしながら、被塗物が例えば自動車の車体鋼板であるなどの複雑な形態を有する場合は、被塗物の部分毎によって表面電位が異なる場合が多い。被塗物のうち、対極である陽極に近い部分や陽極に面した部分(一般に「外板面」と言われる。)は、電圧の印加によってすぐに表面電位が高くなり、これに伴って電着塗膜の析出が生じる。一方、被塗物のうち、対極から離れ、かつ奥まった部分(一般に「内板面」と言われる。)は、電圧を印加してもなかなか表面電圧は上昇せず、そして長時間電圧を印加することによって徐々に表面電圧が上昇することとなる。このような内板面の電着塗膜の膜厚を向上させるためには、低い表面電圧領域における電着塗膜の析出性を高める必要がある。
内板面における電着塗膜の析出性を高める方法としては、一般に、中和酸量を低減させるなどの方法が用いられる。しかしながらこのような方法を用いると、低い表面電圧領域における電着塗膜の析出性が向上するのみならず、高い表面電位領域における電着塗膜の析出性も向上してしまう。このような中和酸量が低減された電着塗料組成物を用いて、クリアランス部を有する被塗物を電着塗装すると、外板面に該当するクリアランス部の入口付近に、多くの電着塗膜が析出してしまい、そしてこの析出した電着塗膜が入口部分を塞いでしまうこととなる。そのため、その後にクリアランスの内部の表面電位が高まっても、入口部分が電着塗膜によって塞がれているため、この内部では電着塗膜の析出が良好に生じない。さらには、電着塗装後に、このクリアランスの内部に封じ込められた未硬化の電着塗料組成物が流れ出ることによる塗膜外観不良も生じてしまう。この塗膜外観不良は、一般に「2次タレ」といわれている。
ところで自動車車体などの塗装物は非常に複雑な形状を有するため、これを構成する被塗物自体も複雑な形状であることがある。例えば1つの被塗物が、複数枚の鋼板から構成されることもある。そして複数枚の鋼板から構成される被塗物は、一般に、鋼板の接合部に多少の隙間(クリアランス)を有する。このようなクリアランス部は電着塗装が困難であるため、電着塗装後も未塗装の状態のままとなることがあり、これにより耐食性が低下することがある。
従来は、このようなクリアランス部を有する被塗物については、電着塗装した後にシーラーなどを別途塗装することによって、耐食性を確保していた。例えば特開平5−163446号公報(特許文献1)には、電着塗装鋼板同士の接合部に適用される自動車用ボディーシーラーが記載されている。しかしながら、電着塗装後にこのようなシーラーを塗布することは、塗装工程が増加することとなるため、塗装ラインコストおよび塗装時間などの面で不利益となる。
特公平6−86674号公報(特許文献2)には、特定の顔料を含むカチオン塗料(I)を用いて被塗物を陰極として第1回目の電着塗装を行なった後、未硬化のままで、カチオン塗料(I)とは異なるエマルシヨン型カチオン型電着塗料(II)を第2回目に電着塗装し、ついで加熱硬化して複合硬化塗膜を形成することを特徴とする電着塗装方法が記載されている。この方法によって、塗膜の平滑性などの塗面状態を損なうことなく、エッジ部の防食性に優れた電着塗膜を形成することができると記載されている。しかしながらこの方法は、第1回目に用いられるカチオン塗料と第2回目に用いられるカチオン塗料とが異なっていなければならない点、および電着塗料組成物に特定の顔料を含む点において、本発明の電着塗膜形成方法とは異なる。また本発明は、クリアランス部塗装性に優れた電着塗膜形成方法である一方、特許文献2に記載の発明はエッジ部(端面)の防食性および糸さび抵抗性に優れた複合塗膜を形成する電着塗装方法である点についても、本発明と特許文献2に記載される発明とは異なるものである。特に、特許文献2に記載される方法は、異なる塗料組成物である電着塗料組成物を用いた電着塗装方法である。これに対して本願発明の方法は、同一組成の電着塗料組成物を用いており、特許文献2に記載される方法とは異なるものである。
特開2002−79172号公報(特許文献3)には、工程1:自動車ボディなどの金属製被塗物に、塗膜の塗色が灰色、又は黒であるカチオン電着塗料(1)を塗装して電着塗膜を形成する工程、工程2:次いで、上記で得られた電着塗膜を有する被塗物を水洗し、余分に付着したカチオン電着塗料(1)を除去する工程、工程3:カチオン電着塗膜(1)を有する被塗物に、塗膜の塗色が有彩色、又は白であるカチオン電着塗料(2)を塗装して電着塗膜を形成する工程、工程4:上記工程において得られた電着塗膜を有する被塗物を水洗し、余分に付着したカチオン電着塗料(2)を除去する工程、工程5:工程1〜工程4で得られた塗膜を同時に加熱して硬化乾燥する工程、を特徴とする塗膜形成方法、が記載されている。この特許文献3に記載される発明は、2回目に塗装される電着塗膜の塗色が、次に塗装される塗膜の塗色とマンセル表示の色相で同系色有彩色または白の塗色とする発明であり、塗膜の色彩面に関して意匠性を向上させる発明である。一方、本発明は、クリアランス部塗装性に優れた電着塗膜形成方法であり、特許文献3に記載される発明とは、その目的および構成が大きく異なる。
特開2003−82498号公報(特許文献4)には、カチオン電着塗料の塗装において、電流密度の最高値(I)が通電開始から5秒間以内に発現し、かつ電流密度の最高値(I)の1/2の電流密度(0.5I)以上を有する時間が5秒間以内であることを特徴とする隙間部における塗膜形成方法が記載されている。そしてこの方法によって、隙間部におけるつきまわり性(クリアランス塗装性)に優れた塗膜形成方法を形成することができると記載されている。しかしながら、特許文献4に記載される方法は、1回だけの電着塗装であり、2回以上電着塗装することについては記載されていない。
特開平5−163446号公報 特公平6−86674号公報 特開2002−79172号公報 特開2003−82498号公報
本発明は上記従来の問題を解決するものであり、その目的とするところは、より簡便な方法による、クリアランス部塗装性に優れた電着塗膜形成方法を提供することにある。
本発明は、
カチオン電着塗料組成物中に被塗物を浸漬して通電し、次いでカチオン電着塗料組成物中から被塗物を少なくとも1回引き上げてその後に被塗物をカチオン電着塗料組成物中に再度浸漬して通電する、電着塗装工程、を包含する、電着塗膜形成方法であって、
このカチオン電着塗料組成物から得られる、厚さ15μmの電着塗膜の膜抵抗値が1000〜2000kΩ・cm2である、
電着塗膜形成方法、を提供するものであり、これにより上記目的が達成される。
上記電着塗膜形成方法で用いられるカチオン電着塗料組成物は、分子量2000〜4000であるカチオン性エポキシ樹脂を含むのが好ましい。
また、上記電着塗膜形成方法で用いられるカチオン電着塗料組成物中に含まれる揮発性有機分含有量は0.1〜1.0重量%であるのが好ましい。
上記方法は、カチオン電着塗料組成物中に浸漬した被塗物を揺動させることをさらに含むのが好ましい。
本発明は、硬化電着塗膜も提供する。このような硬化電着塗膜として、上記電着塗膜形成方法により得られる電着塗膜を加熱硬化して得られる、硬化電着塗膜が挙げられる。
本発明の方法を用いることによって、クリアランス部を有するような複雑な形状の被塗物をも良好に電着塗装することができる。本発明の方法により、クリアランス部の付きまわり性が大幅に向上し、かつ良好な膜厚を有する電着塗膜を形成することができる。本発明の方法はさらに、被塗物に実際に通電する時間を短縮することができ、塗装エネルギーの面でも有利である。
内板面における電着塗膜の析出性を高める方法としては、一般に、中和酸量を低減させるなどの方法が用いられる。しかしながらこのような方法を用いると、低い表面電圧領域における電着塗膜の析出性が向上するのみならず、高い表面電位領域における電着塗膜の析出性も向上してしまう。これに対して、本発明による電着塗膜形成方法は、電着塗料組成物中の中和酸量を低減させる必要はない。そのため、電着塗膜の析出性が高く、かつクリアランス部の塗装性にも優れるという、優れた効果を有している。つまり本発明の電着塗膜形成方法は、いわゆる付きまわり性に優れた方法であって、なおかつ、クリアランス(隙間)部のように通電が困難でありそして電着塗料組成物が滞留しやすい部分であっても良好な電着塗膜を形成することができるという、優れた方法である。
本発明の方法は、さらにエアポケットの発生による電着塗装不良をも改善することができる。ここで「エアポケット」とは、被塗物が電着塗料組成物中に浸漬されている状態において、被塗物の表面の一部に空気が残ることにより、塗装されていない部分が生じる状態をいう。この塗装不良は、複雑な形状を有する被塗物を電着塗料組成物に浸漬させる場合に、被塗物が空気を巻き込むために生じる。本発明の方法においては、電着塗料組成物中から被塗物を少なくとも1回引き上げて再度浸漬することによって、エアポケットの発生位置が異なることとなる。これにより、未塗装部分の発生を低減させることができる。
カチオン電着塗料組成物
本発明において用いられるカチオン電着塗料組成物は、水性溶媒、水性溶媒中に分散するか又は溶解した、カチオン性エポキシ樹脂及びブロックイソシアネート硬化剤を含むバインダー樹脂、中和酸、有機溶媒を含み、そして必要に応じて顔料を含む。
カチオン性エポキシ樹脂
カチオン性エポキシ樹脂には、アミンで変性されたエポキシ樹脂が含まれる。カチオン性エポキシ樹脂は、典型的には、ビスフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ環の全部をカチオン性基を導入し得る活性水素化合物で開環するか、または一部のエポキシ環を他の活性水素化合物で開環し、残りのエポキシ環をカチオン性基を導入し得る活性水素化合物で開環して製造される。
ビスフェノール型エポキシ樹脂の典型例はビスフェノールA型またはビスフェノールF型エポキシ樹脂である。前者の市販品としてはエピコート828(油化シェルエポキシ社製、エポキシ当量180〜190)、エピコート1001(同、エポキシ当量450〜500)、エピコート1010(同、エポキシ当量3000〜4000)などがあり、後者の市販品としてはエピコート807(同、エポキシ当量170)などがある。
特開平5−306327号公報に記載される、下記式
Figure 2008189960
[式中、Rはジグリシジルエポキシ化合物のグリシジルオキシ基を除いた残基、R’はジイソシアネート化合物のイソシアネート基を除いた残基、nは正の整数を意味する。]で示されるオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂をカチオン性エポキシ樹脂に用いてもよい。耐熱性及び耐食性に優れた塗膜が得られるからである。
エポキシ樹脂にオキサゾリドン環を導入する方法としては、例えば、メタノールのような低級アルコールでブロックされたブロックイソシアネート硬化剤とポリエポキシドを塩基性触媒の存在下で加熱保温し、副生する低級アルコールを系内より留去することで得られる。
特に好ましいエポキシ樹脂はオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂である。耐熱性及び耐食性に優れ、更に耐衝撃性にも優れた塗膜が得られるからである。
二官能エポキシ樹脂とモノアルコールでブロックしたジイソシアネート(すなわち、ビスウレタン)とを反応させるとオキサゾリドン環を含有するエポキシ樹脂が得られることは公知である。このオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂の具体例及び製造方法は、例えば、特開2000−128959号公報第0012〜0047段落に記載されており、公知である。
これらのエポキシ樹脂は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、および単官能性のアルキルフェノールのような適当な樹脂で変性しても良い。また、エポキシ樹脂はエポキシ基とジオール又はジカルボン酸との反応を利用して鎖延長することができる。
これらのエポキシ樹脂は、開環後0.3〜4.0meq/gのアミン当量となるように、より好ましくはそのうちの5〜50%が1級アミノ基が占めるように活性水素化合物で開環するのが望ましい。
カチオン性基を導入し得る活性水素化合物としては1級アミン、2級アミン、3級アミンの酸塩、スルフィド及び酸混合物がある。1級、2級又は/及び3級アミノ基含有エポキシ樹脂を調製するためには1級アミン、2級アミン、3級アミンの酸塩をカチオン性基を導入し得る活性水素化合物として用いる。
具体例としては、ブチルアミン、オクチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、メチルブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエチルアミン塩酸塩、N,N−ジメチルエタノールアミン酢酸塩、ジエチルジスルフィド・酢酸混合物などのほか、アミノエチルエタノールアミンのケチミン、ジエチレントリアミンのジケチミンなどの1級アミンをブロックした2級アミンがある。アミン類は複数の種類を併用して用いてもよい。
本発明で用いられるカチオン性エポキシ樹脂は、分子量が2000〜4000であるのが好ましい。上記範囲の分子量を有するカチオン性エポキシ樹脂を用いることによって、付きまわり性に優れた電着塗料組成物を調製することができる。分子量が2000未満である場合は、塗膜抵抗が低下することにより塗膜の膜厚が増加し易くなり、所望以上の膜厚となるおそれがある。分子量が4000を超える場合は、塗膜抵抗が増大しすぎて所望の膜厚を得ることができないおそれがある。
ブロックイソシアネート硬化剤
ブロックイソシアネート硬化剤の調製にはポリイソシアネートが使用される。このポリイソシアネートとは、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物をいう。ポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族系、脂環式系、芳香族系および芳香族−脂肪族系等のうちのいずれであってもよい。
ポリイソシアネートの具体例には、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、p−フェニレンジイソシアネート、及びナフタレンジイソシアネート等のような芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、及びリジンジイソシアネート等のような炭素数3〜12の脂肪族ジイソシアネート;1,4−シクロヘキサンジイソシアネート(CDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4’−ジイソシアネート、及び1,3−ジイソシアナトメチルシクロヘキサン(水添XDI)、水添TDI、2,5−もしくは2,6−ビス(イソシアナートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(ノルボルナンジイソシアネートとも称される。)等のような炭素数5〜18の脂環式ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート(XDI)、及びテトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等のような芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート;これらのジイソシアネートの変性物(ウレタン化物、カーボジイミド、ウレトジオン、ウレトンイミン、ビューレット及び/又はイソシアヌレート変性物);等があげられる。これらは、単独で、または2種以上併用することができる。
ポリイソシアネートをエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどの多価アルコールとNCO/OH比2以上で反応させて得られる付加体ないしプレポリマーもブロックイソシアネート硬化剤に使用してよい。
ブロック剤は、ポリイソシアネート基に付加し、常温では安定であるが解離温度以上に加熱すると遊離のイソシアネート基を再生し得るものである。
顔料
本発明の方法に用いられるカチオン電着塗料組成物は、顔料を含んでもよい。含まれうる顔料の例としては、通常使用される無機顔料、例えば、チタンホワイト、カーボンブラック及びベンガラのような着色顔料;カオリン、タルク、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、マイカおよびクレーのような体質顔料;リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、亜リン酸亜鉛、シアン化亜鉛、酸化亜鉛、トリポリリン酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸カルシウム及びリンモリブデン酸アルミニウム、リンモリブデン酸アルミニウム亜鉛のような防錆顔料等、が挙げられる。
顔料を電着塗料の成分として用いる場合、一般に顔料を予め高濃度で水性溶媒に分散させてペースト状(顔料分散ペースト)にする。顔料は粉体状であるため、電着塗料組成物で用いる低濃度均一状態に一工程で分散させるのは困難だからである。一般にこのようなペーストを顔料分散ペーストという。
顔料分散ペーストは、顔料を顔料分散樹脂ワニスと共に水性溶媒中に分散させて調製する。顔料分散樹脂としては、一般に、カチオン性又はノニオン性の低分子量界面活性剤や4級アンモニウム基及び/又は3級スルホニウム基を有する変性エポキシ樹脂等のようなカチオン性重合体を用いる。水性溶媒としてはイオン交換水や少量のアルコール類を含む水等を用いる。一般に、顔料分散樹脂は、顔料100質量部に対して固形分比20〜100質量部の量で用いる。顔料分散樹脂ワニスと顔料とを混合した後、その混合物中の顔料の粒径が所定の均一な粒径となるまで、ボールミルやサンドグラインドミル等の通常の分散装置を用いて分散させて、顔料分散ペーストを得ることができる。
他の成分
上記カチオン電着塗料組成物は、上記成分の他にブロックイソシアネート硬化剤のブロック剤解離のための解離触媒を含んでもよい。このような解離触媒として、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫オキシド、ジオクチル錫オキシドなどの有機錫化合物や、N−メチルモルホリンなどのアミン類、ストロンチウム、コバルト、銅などの金属塩が使用できる。解離触媒の濃度は、カチオン電着塗料組成物中のカチオン性エポキシ樹脂とブロックイソシアネート硬化剤合計の100固形分質量部に対し0.1〜6質量部である。
カチオン電着塗料組成物は、上記のほかにさらに、可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤、及び紫外線吸収剤などの常用の塗料用添加剤を含むことができる。アミノ基含有アクリル樹脂、アミノ基含有ポリエステル樹脂等の樹脂成分をさらに含んでもよい。
カチオン電着塗料組成物の調製
本発明で用いられるカチオン電着塗料組成物は、上に述べたカチオン性エポキシ樹脂、ブロックイソシアネート硬化剤、そして顔料分散ペーストおよび必要に応じた触媒を水性溶媒中に分散することによって調製される。また、通常、水性溶媒にはカチオン性エポキシ樹脂を中和して、バインダー樹脂エマルションの分散性を向上させるために中和酸を含有させる。中和酸は塩酸、硝酸、リン酸、ギ酸、酢酸、乳酸のような無機酸または有機酸である。
使用される中和酸の量は、カチオン性エポキシ樹脂及びブロックイソシアネート硬化剤を含むバインダー樹脂固形分100gに対して、下限15mg当量、上限30mg当量の範囲であるのが好ましい。上記下限は20mg当量であるのがより好ましく、上記上限は25mg当量であるのがより好ましい。中和酸の量が15mg当量未満であると水への親和性が十分でなく水への分散ができないか、安定性に欠ける状態となるおそれがある。一方、30mg当量を越えると析出に要する電気量が増加し、塗料固形分の析出性が低下し、つきまわり性が劣る状態となる。
カチオン電着塗料組成物は、カチオン性エポキシ樹脂、及びブロックイソシアネート硬化剤を、水性溶媒に分散させることにより、調製することができる。ブロックイソシアネート硬化剤の量は、硬化時にカチオン性エポキシ樹脂中の1級、2級アミノ基、水酸基、等の活性水素含有官能基と反応して良好な硬化塗膜を与えるのに十分な量が必要とされる。好ましいブロックイソシアネート硬化剤の量は、カチオン性エポキシ樹脂とブロックイソシアネート硬化剤との固形分重量比(カチオン性エポキシ樹脂/硬化剤)で表して90/10〜50/50、より好ましくは80/20〜65/35の範囲である。カチオン性エポキシ樹脂とブロックイソシアネート硬化剤との固形分量比の調整により、造膜時の塗膜(析出膜)の流動性および硬化速度が改良され、塗膜の平滑性が向上する。
有機溶媒は、カチオン性エポキシ樹脂、ブロックイソシアネート硬化剤、顔料分散樹脂等の樹脂成分を合成する際に溶媒として必要であり、完全に除去するには煩雑な操作を必要とする。また、バインダー樹脂に有機溶媒が含まれていると造膜時の塗膜の流動性が改良され、塗膜の平滑性が向上する。カチオン電着塗料組成物に通常含まれる有機溶媒としては、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノエチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等が挙げられる。
従来の電着塗料組成物においては、樹脂成分からこれらの有機溶媒を完全には除去せず、また、別途有機溶媒を加えることにより、電着塗料組成物中の揮発性有機分含有量をある程度高めている。一般的な電着塗料組成物の揮発性有機分含有量は、重量基準で1〜5%程度である。揮発性有機分とは、沸点250℃以下の有機溶媒のことをいい、上記で具体的に列挙したものが該当する。
これに対し、本発明の電着塗料組成物では、有機溶媒の含有量を従来と比較して低くすることが好ましい。具体的には、電着塗料組成物の揮発性有機分含有量を下限0.1重量%、上限1.0重量%とするのが好ましい。上記下限は0.2重量%であるのがより好ましい。また上記上限は0.8重量%であるのがより好ましく、0.5重量%であるのがさらに好ましい。揮発性有機分含有量を0.1〜1.0重量%とすることによって、塗膜抵抗の制御が可能となる。電着塗料組成物の揮発性有機分含有量が上記範囲から外れる場合は、析出塗膜に対する流動性改良により塗膜抵抗値が減少し、塗料のつきまわり性が低下するおそれがある。
電着塗料組成物の揮発性有機分含有量を1.0重量%以下にする方法としては、反応温度を上げ低溶剤又は無溶剤で反応させることによって、反応時の粘度調整に使用される有機溶媒などを削減することができる。また、低沸点の溶媒を使用し、反応後に脱ソルベントなどの工程で回収することにより、揮発性有機分含有量を下げることもできる。電着塗料組成物の揮発性有機分含有量の測定は、内部標準法によるガスクロマトグラフィー測定を実施することにより、測定することができる。
電着塗膜形成
一般的な電着塗装工程は、電着塗料組成物に被塗物を浸漬する過程、及び、上記被塗物を陰極として陽極との間に電圧を印加し、被膜を析出させる過程、から構成される。通電時間は、電着条件によって異なるが、一般には、2〜4分とすることができる。印加電圧は、被塗物を陰極として陽極との間に、通常50〜450Vの電圧が印加される。印加電圧が50V未満であると電着が不充分となるおそれがあり、450Vを超えると、塗膜が破壊され異常外観となるおそれがある。電着塗装時の塗料組成物の浴液温度は、通常10〜45℃に調節される。
そして本発明の方法においては、電着塗料組成物中に被塗物を浸漬して通電した後、電着塗料組成物中から被塗物を引き上げ、その後、再度被塗物を電着塗料組成物中に浸漬させて通電することを特徴とする。電着塗料組成物中から被塗物を引き上げる回数は、少なくとも1回である。この引き上げは複数回行うことも可能であるが、電着塗装に費やされる時間および手間との関係からは、1回のみ引き上げるのが好ましい。
最初に被塗物を浸漬する電着塗料組成物と、引き上げた後に浸漬する電着塗料組成物とは、同じ電着塗料組成物を用いてもよく、また異なる電着塗料組成物を用いてもよい。但し、異なる電着塗料組成物を用いる場合であっても、電着塗膜の膜抵抗値が上記所定の範囲となるような電着塗料組成物を用いることを条件とする。本発明の塗膜形成方法の例として、電着塗料組成物を保持する電着塗料槽に被塗物を浸漬した後、被塗物を上に引き上げて、再度同じ電着塗料槽に被塗物を浸漬する方法が挙げられる。他の方法として、電着塗料槽を保持する電着塗料槽を2またはそれ以上設置し、被塗物を順次搬送し浸漬することによって電着塗膜を形成する方法が挙げられる。
本発明の方法において、被塗物に実際に通電する時間(通電時間)は、通常の電着塗装における通電時間より短くすることができる。例えば、被塗物を電着塗料槽に浸漬して通電し、次いで被塗物を電着塗料槽から引き上げ、さらに同じ電着塗料槽に再度浸漬して通電する場合において、このような一連の工程に要する時間を、従来の電着塗装における通電時間と同程度の時間で行うことができる。なお、一連の工程で要する時間は、搬送手段にも依存しうる。これにより、被塗物に実際に通電する時間は、従来より短くなる。そして本発明の電着塗膜形成方法においては、実際の通電時間が従来の方法と比べて短くなっているにもかかわらず、良好なクリアランス部塗装性、付きまわり性、そして十分な膜厚を有する電着塗膜を得ることができるという利点を有する。
本発明の方法において、最初の浸漬での通電時間と、引き上げ後の浸漬での通電時間との比は、3:7〜7:3とすることができる。この通電時間の比は、好ましくは、4:6〜6:4である。また、本発明の方法において、最初の浸漬での通電により析出される膜厚と、引き上げ後の浸漬での通電により析出される膜厚との比は、3:7〜7:3とすることができる。この膜厚の比は、好ましくは、4:6〜6:4である。
本発明の方法における印加電圧は、50〜450Vであるのが好ましく、150〜250Vであるのがより好ましい。この好ましい範囲は、最初に電着塗料組成物中に浸漬した場合、および引き上げて再度浸漬した場合の、両方の場合において好ましい範囲である。
電着塗膜の膜厚は、一般に5〜25μmの範囲で形成することができる。膜厚が5μm未満であると、防錆性が不充分となる恐れがある。また、本発明の方法においては、電着塗膜の膜抵抗値が膜厚15μmにおいて1000〜2000kΩ・cm2の範囲となる電着塗料組成物を用いる。電着塗膜の膜抵抗値が1000kΩ・cm2未満であると十分な電気抵抗が得られていないため、つきまわり性に劣る恐れがあり、また2000kΩ・cm2を超えると所望の膜厚を得ることが難しくなる恐れがある。塗膜の膜抵抗は、より好ましくは1200〜1500kΩ・cm2である。
塗膜の膜抵抗値は、最終塗装電圧(V)における、塗膜の残余電流値(A)より、下記の式にて求められる。
膜抵抗値(FR)=V/A × 塗装面積(cm2
電着塗膜の膜抵抗値を上記範囲に調整する方法として、分子量2000〜4000のカチオン性エポキシ樹脂を用いること、電着塗料組成物中の揮発性有機分含有量を0.1〜1.0重量%に調整することなどが挙げられる。
上述のようにして得られる電着塗膜を、電着過程の終了後、そのまま又は水洗した後、120〜260℃、好ましくは140〜220℃で、10〜30分間加熱して硬化させることによって、硬化電着塗膜が形成される。なお本発明中の「電着塗膜」とは、電圧の印加により被塗物上に析出された塗膜であって、焼付け硬化前の未硬化の塗膜をいう。
本発明による電着塗膜形成方法は、電着塗料組成物中の中和酸量を低減させる必要はない。そのため、電着塗膜の析出性が高く、かつクリアランス部の塗装性にも優れるという、優れた効果を有している。つまり本発明の電着塗膜形成方法は、いわゆる付きまわり性に優れた方法であって、なおかつ、クリアランス(隙間)部のように通電が困難でありそして電着塗料組成物が滞留しやすい部分であっても良好な電着塗膜を形成することができるという、優れた方法である。
本発明の方法によってクリアランス部の塗装性が向上する理由として、理論に拘束されるものではないが、次のように考察できる。被塗物を電着塗装した後、一旦被塗物を電着塗料組成物中から引き上げることによって、被塗物上に析出した電着塗膜の膜抵抗値が、一時的に高くなると考えられる。その理由としては、被塗物が引き上げられることによって、析出した電着塗膜表面が乾燥し、一時的に膜抵抗値が高くなることが考えられるが、定かではない。そして再度電着塗料組成物中に浸漬して電着塗装することによって、一時的に膜抵抗値が高くなっている電着塗膜上に、再度電着塗膜が析出することとなり、これにより高い付きまわり性が確保されることとなると考えられる。
本発明の方法において、被塗物の搬送手段として塗料分野で用いられている種々の搬送手段を用いることができる。例えば特開2005−335945号公報に示される公知の搬送設備を本発明に用いることも可能である。この搬送設備は、吊下支持装置と、この吊下支持装置を昇降させる昇降手段と、吊下支持装置を作動して被搬送体の姿勢を調整する姿勢調整装置と、を有する装置である。この搬送設備は、被搬送体の位置制御が容易であるという利点を有しており、被搬送体の姿勢を大きく変化させることが可能である。この搬送設備は、電着塗料組成物中から被塗物を容易に引き上げることが可能であるため、本発明においてより好ましく用いられる。
さらに、このような搬送設備を用いることによって、被塗物を電着塗装組成物中に浸漬した後に、電着塗料組成物中で被塗物を容易に揺動させることができる。これにより、エアポケットによる塗装不良を、さらに改善することができる。この揺動は、少なくとも1回行うことを含み、さらに必要に応じて2回またはそれ以上行うことも含む。また、電着塗料組成物中で被塗物を揺動させることによって、電着塗料組成物中に含まれる顔料が沈降することによる、顔料の被塗物の水平面への降り積もりをも改善することができる。この被塗物の揺動は、最初に電着塗料組成物中に浸漬した場合、および引き上げて再度浸漬した場合の、何れか一方の場合において行ってよく、また両方の場合において行ってもよい。
本発明の方法は、クリアランス部塗装性が改善された電着塗膜形成方法である。そして本発明の方法を用いることによって、これまで塗装が非常に困難であった箱型構造物をも良好に電着塗装することが可能となる。図1は、箱型構造物の断面構造を示す模式図である。図1に示されるような箱型構造物1を電着塗装する場合、従来は、穴部5を十分に大きく設けることによって、この構造物の外部および内部の両方部の電着塗装を可能としていた。しかし、穴部5を大きく設けると、この箱型構造物1の強度が低下することとなる。一方、穴部5の大きさを小さくすることによって、この箱型構造物1の内部を電着塗装することができなくなってしまう。またこの箱型構造物1は、クリアランス部3を有する。従来の電着塗装では、クリアランス部3は電着塗装することができなかった。そのため、この構造物1を電着塗装した後に、クリアランス部3にシーラーを塗布し、これにより耐食性を確保していた。
本発明の方法は、クリアランス部塗装性に優れ、かつ付きまわり性も高い方法であるため、このような箱型構造物の電着塗装も容易となった。箱型構造物1を、本発明の方法を用いて電着塗装する場合は、穴部5の大きさが従来より小さい場合であっても、その内部まで良好に電着塗装することができる。そして穴部5の大きさを従来より小さくすることによって、箱型構造物1の強度を確保することができる。箱型構造物1の塗装において本発明の方法を用いることによって、箱型構造物の強度を確保しつつ、その内部まで良好に電着塗膜を形成することが可能となる。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中、「部」および「%」は、ことわりのない限り、重量基準による。
カチオン電着塗料組成物の調製
製造例1 アミン変性エポキシ樹脂の調製
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計および滴下漏斗を装備したフラスコに、2,4−/2,6−トリレンジイソシアネート(重量比=8/2)92部、メチルイソブチルケトン(以下、MIBKと略す)95部およびジブチル錫ジラウレート0.5部を仕込んだ。反応混合物を攪拌下、メタノール21部を滴下した。反応は、室温から始め、発熱により60℃まで昇温した。その後、30分間反応を継続した後、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル50部を滴下漏斗より滴下した。更に、反応混合物に、ビスフェノールA−プロピレンオキシド5モル付加体53部を添加した。反応は主に、60〜65℃の範囲で行い、IRスペクトルの測定において、イソシアネート基に基づく吸収が消失するまで継続した。
次に、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンから既知の方法で合成したエポキシ当量188のエポキシ樹脂365部を反応混合物に加えて、125℃まで昇温した。その後、ベンジルジメチルアミン1.0部を添加し、エポキシ当量410になるまで130℃で反応させた。
続いて、ビスフェノールA61部およびオクチル酸33部を加えて120℃で反応させたところ、エポキシ当量は1190となった。その後、反応混合物を冷却し、ジエタノールアミン11部、N−エチルエタノールアミン24部およびアミノエチルエタノールアミンのケチミン化物の79重量%MIBK溶液25部を加え、110℃で2時間反応させた。その後、MIBKで不揮発分80%となるまで希釈し、ガラス転移温度が2℃のアミン変性エポキシ樹脂(樹脂固形分80%)を得た。
製造例2 ブロックイソシアネート硬化剤の調製
ジフェニルメタンジイソシアナート1250部およびMIBK266.4部を反応容器に仕込み、これを80℃まで加熱した後、ジブチル錫ジラウレート2.5部を加えた。ここに、ε−カプロラクタム226部をブチルセロソルブ944部に溶解させたものを80℃で2時間かけて滴下した。さらに100℃で4時間加熱した後、IRスペクトルの測定において、イソシアネート基に基づく吸収が消失したことを確認し、放冷後、MIBK336.1部を加えてガラス転移温度が0℃のブロックイソシアネート硬化剤を得た。
製造例3 顔料分散樹脂の調製
まず、攪拌装置、冷却管、窒素導入管および温度計を装備した反応容器に、イソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと略す)222.0部を入れ、MIBK39.1部で希釈した後、ここヘジブチル錫ジラウレート0.2部を加えた。その後、これを50℃に昇温した後、2−エチルヘキサノール131.5部を攪拌下、乾燥窒素雰囲気中で2時間かけて滴下した。適宜、冷却することにより、反応温度を50℃に維持した。その結果、2−エチルヘキサノールハーフブロック化IPDI(樹脂固形分90.0%)が得られた。
次いで、適当な反応容器に、ジメチルエタノールアミン87.2部、75%乳酸水溶液117.6部およびエチレングリコールモノブチルエーテル39.2部を順に加え、65℃で約半時間攪拌して、4級化剤を調製した。
次に、エポン(EPON)829(シェル・ケミカル・カンパニー社製ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量193〜203)710.0部とビスフェノールA289.6部とを適当な反応容器に仕込み、窒素雰囲気下、150〜160℃に加熱したところ、初期発熱反応が生じた。反応混合物を150〜160℃で約1時間反応させ、次いで、120℃に冷却した後、先に調製した2−エチルヘキサノールハーフブロック化IPDI(MIBK溶液)498.8部を加えた。
反応混合物を110〜120℃に約1時間保ち、次いで、エチレングリコールモノブチルエーテル463.4部を加え、混合物を85〜95℃に冷却し、均一化した後、先に調製した4級化剤196.7部を添加した。酸価が1となるまで反応混合物を85〜95℃に保持した後、脱イオン水964部を加えて、エポキシ−ビスフェノールA樹脂において4級化を終了させ、4級アンモニウム塩部分を有する顔料分散用樹脂を得た(樹脂固形分50%)。
製造例4 顔料分散ペーストの調製
サンドグラインドミルに製造例3で得た顔料分散用樹脂を150部、ジブチル錫オキサイド5部、カーボンブラック1.0部、カオリン40.0部、二酸化チタン50.0部およびイオン交換水110部を入れ、粒度10μm以下になるまで分散して、顔料分散ペーストを得た(固形分48%)。
製造例5 カチオン電着塗料組成物(1)の調製
製造例1で得られたアミン変性エポキシ樹脂と製造例2で得られたブロックイソシアネート硬化剤とを固形分比で80/20で均一になるよう混合した。これに樹脂固形分100g当たり酸のミリグラム当量(MEQ(A))が30になるよう氷酢酸を添加し、さらにイオン交換水をゆっくりと加えて希釈した。減圧下でMIBKを除去することにより、固形分が36%のエマルションを得た。
このエマルション964部および製造例4により得られた顔料分散ペースト284部と、イオン交換水1250部とを混合して、固形分20重量%のカチオン電着塗料組成物を得た。
比較製造例1 カチオン電着塗料組成物(2)の調製
製造例1で得られたアミン変性エポキシ樹脂と製造例2で得られたブロックイソシアネート硬化剤とを固形分比で80/20で均一になるよう混合した。これに樹脂固形分100g当たり酸のミリグラム当量(MEQ(A))が30になるよう氷酢酸を添加し、さらにイオン交換水をゆっくりと加えて希釈した。減圧下でMIBKを除去することにより、固形分が36%のエマルションを得た。
このエマルション964部および製造例4により得られた顔料分散ペースト284部と、イオン交換水1250部とを混合して、固形分20重量%のカチオン電着塗料組成物を得た。
実施例1
リン酸亜鉛処理鋼板(JIS G 3141 SPCC−SD、サーフダインSD−2500(日本ペイント社製)を用いて処理)(寸法:70mm×150mm、厚さ0.7mm)2枚を用いて、試験片を作成した。試験片の模式断面図、模式平面図および模式上面図を図2に示す。一方のリン酸亜鉛処理鋼板13に、所定の厚さを有する2つのスペーサー15(ポリプロピレン、寸法:10mm×150mm)を、鋼板の両端に置き、テープを用いて貼り付けた。図2の平面図では、このスペーサー15はリン酸亜鉛処理鋼板13の下に隠れており、点線で示されている。このスペーサー上にもう一方のリン酸亜鉛処理鋼板を乗せ、テープを用いて貼り付けることにより、試験片を作成した。スペーサーとして、厚さ200μm、400μm、600μm、700μm、800μm、900μm、1000μmを有するスペーサーを用いて、試験片を作成した。このスペーサーの厚さが、試験片のクリアランス部の幅11となる。
製造例5により得られたカチオン電着塗料組成物(1)を電着塗装槽に注ぎ、そして上記の通り作成した、200μm、400μm、600μm、700μm、800μm、900μmまたは1000μmのクリアランス部を有する各試験片を、電着塗料組成物中に15cm浸漬した。ここで試験片の上端が、電着塗料組成物の液面と同じ高さになるように浸漬した。この試験片に電圧を印加し、20秒間かけて240Vの電圧に昇圧し、60秒間通電して電着塗装した。通電を停止し、試験片を電着塗料組成物の液面上に引き上げて、20秒間放置した。その後、試験片を再び電着塗料組成物中に浸漬し、20秒間かけて240Vの電圧に昇圧し、60秒間通電して電着塗装した。
クリアランス部の到達長さの測定
電着塗装された試験片を分解した。リン酸亜鉛処理鋼板のスペーサーを設けた面(内面)に析出した電着塗膜について、その鋼板片の下部からの塗膜の長さ(mm)を測定した。測定結果を表1および図3に示す。
クリアランス部の膜厚比率の測定
リン酸亜鉛処理鋼板のスペーサーを設けた面(内面)に析出した電着塗膜について、その鋼板片の下部から75mmの部分に析出した電着塗膜の厚さを測定した。この鋼板片のスペーサーを設けていない面(外面)の同位置の電着塗膜の厚さを測定し、内面の膜厚/外面の膜厚の比率を算出した。測定結果を表1および図4に示す。
電着塗膜の膜抵抗値の測定
上記製造例5により得られたカチオン電着塗料組成物(1)を含む電着浴に、リン酸亜鉛処理鋼板(JIS G 3141 SPCC−SD、サーフダインSD−2500(日本ペイント社製)を用いて処理)(寸法:70mm×150mm、厚さ0.7mm)を電着塗料に10cm浸漬した。この鋼板に電圧を印加し、30秒間かけて200Vの電圧に昇圧し、150秒間電着した。浴温28℃における塗膜厚15μmの塗装電圧および電着終了時の残余電流を測定して、塗膜抵抗値(kΩ・cm2)を算出した。測定結果を表1に示す。
比較例1
電着塗装について、30秒間かけて240Vの電圧に昇圧し、その後試験片を引き上げることなく150秒間通電して電着塗装したこと以外は、実施例1と同様に実施し、評価を行った。評価結果を表1、図3および図4に示す。
比較例2
電着塗料組成物として、比較製造例1により得られたカチオン電着塗料組成物(2)用いたこと以外は、実施例1と同様に実施し、評価を行った。評価結果を表1、図3および図4に示す。
比較例3
電着塗料組成物として、比較製造例1により得られたカチオン電着塗料組成物(2)用いて、電着塗装について30秒間かけて240Vの電圧に昇圧し、その後試験片を引き上げることなく150秒間通電して電着塗装したこと以外は、実施例1と同様に実施し、評価を行った。評価結果を表1、図3および図4に示す。
Figure 2008189960
表1および図3に示される通り、電着塗装後に被塗物を一旦引き上げて再度電着塗装を行うことによって、クリアランス部への付きまわり性が大幅に改善したことがわかる。また、電着塗膜の膜抵抗値が1000〜2000kΩ・cmである電着塗料組成物を用いることによって、クリアランス幅が400μmと非常に狭い試験片に対しても、その内面まで電着塗膜を形成できたことがわかる。さらに、表1および図4に示される通り、本方法によってクリアランス部の膜厚も大幅に改善されたことが分かる。ここでも、電着塗膜の膜抵抗値が1000〜2000kΩ・cmである電着塗料組成物を用いることによって、膜厚比率が改善されたことが分かる。
本発明の方法を用いることによって、クリアランス部を有するような複雑な形状の被塗物をも良好に電着塗装することができる。本発明の方法はさらに、被塗物に実際に通電する時間を短縮することができ、塗装エネルギーの面でも有利である。
箱型構造物の断面構造を示す模式図である。 試験片の模式断面図、模式平面図および模式上面図である。 実施例および比較例の方法における、クリアランス部の到達長さの測定結果を示すグラフである。 実施例および比較例の方法における、クリアランス部の膜厚比率の測定結果を示すグラフである。
符号の説明
1…箱型構造物、3…クリアランス部、5…穴部、11…クリアランス部の幅、13…リン酸亜鉛処理鋼板、15…スペーサー。

Claims (5)

  1. カチオン電着塗料組成物中に被塗物を浸漬して通電し、次いでカチオン電着塗料組成物中から被塗物を少なくとも1回引き上げてその後に被塗物をカチオン電着塗料組成物中に再度浸漬して通電する、電着塗装工程、を包含する、電着塗膜形成方法であって、
    該カチオン電着塗料組成物から得られる、厚さ15μmの電着塗膜の膜抵抗値が1000〜2000kΩ・cm2である、
    電着塗膜形成方法。
  2. 前記電着塗膜形成方法で用いられるカチオン電着塗料組成物は、分子量2000〜4000であるカチオン性エポキシ樹脂を含む、請求項1記載の電着塗膜形成方法。
  3. 前記電着塗膜形成方法で用いられるカチオン電着塗料組成物中に含まれる揮発性有機分含有量は0.1〜1.0重量%である、請求項1または2記載の電着塗膜形成方法。
  4. カチオン電着塗料組成物中に浸漬した被塗物を揺動させることをさらに含む、請求項1〜3いずれかに記載の電着塗膜形成方法。
  5. 請求項1〜4いずれかに記載の電着塗膜形成方法により得られる電着塗膜を加熱硬化して得られる、硬化電着塗膜。
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