JP2007313420A - カチオン電着塗装方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】カチオン電着塗装方法において、ブリッジング現象を防止する方法の提供。
【解決手段】カチオン電着塗料浴中で被塗物を電着塗装する際に、カチオン電着塗料の最低造膜温度を塗装温度より5℃以上低く設定することを特徴とするカチオン電着塗装方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、カチオン電着塗装方法、特に被塗物の継目などの間隙部に生じる、いわゆるブリッジングを防止するカチオン電着塗装方法に関する。
カチオン電着塗装は、複雑な形状を有する被塗物であっても細部にまで塗装を施すことができ、自動的かつ連続的に塗装することができるので、特に自動車車体などの大型で複雑な形状を有する被塗物の下塗り塗装方法として広く実用化されている。カチオン電着塗装は、カチオン電着塗料中に被塗物を陰極として浸漬させ、電圧を印加することにより行なわれる。
自動車車体の被塗物は、通常複数の鋼板が組み合わされて構成され、鋼板と鋼板の継目には狭い間隙が形成されている。電着塗装は、理想的には、このような間隙部分でもそれぞれの面に均一な塗膜が形成され、焼付工程において焼付硬化されて間隙部分が維持されたまま均一な硬化塗膜が形成される。しかしながら、狭い間隙部では電流が集中しやすく、電着塗料の固形分が異常析出して、いわゆるブリッジングが形成される。ブリッジングは、後述する比較例1の写真(図2)に見られるように、間隙内に両方の金属面から塗料が積み重なってつながったような状態になっていることをいう。このブリッジングが生じ、外観異常となる。
このようなブリッジングをつきまわり性観点から解決を試みたのが、特開平7−286297号公報(特許文献1)である。特許文献1には、電着浴温−膜厚の関係における連続皮膜形成最低温度幅が5〜20℃の電着塗料を形成し、その連続皮膜形成最低温度幅の温度領域の最高温度よりも低い温度に設定された電着塗料中で電着塗装することが提案されている。この方法は有効な手段であるが、コントロール方法が必ずしも容易ではない。
特開2001−19878号公報(特許文献2)には、カチオン電着塗料の最低造膜温度を扱う出願として、カチオン電着塗装設定温度の±5℃以内に最低造膜温度を設定する方法が提案されている。この方法によれば、ガスピンホール発生を抑制し、つきまわり性も高くなるが、ブリッジング現象の改善は検討されていない。
特開平7−286297号公報 特開2001−19878号公報
本発明は、カチオン電着塗装方法において、上記ブリッジングを防止することを目的とする。
本発明者等は、塗装温度と最低造膜温度との関係を検討して、本発明をなすに到った。即ち、本発明は、カチオン電着塗料浴中で被塗物を電着塗装する際に、カチオン電着塗料の最低造膜温度を塗装温度より5℃以上低く設定することを特徴とするカチオン電着塗装方法を提供する。
上記最低造膜温度をコントロールする方法として、浴内の疎水性溶剤量を0.8〜1.0重量%にし、ナトリウムイオンの量を30ppm以下にする方法も提案する。
本発明では、カチオン電着塗料の最低造膜温度を塗装温度より5℃以上低く設定するだけで、種々の塗膜欠陥の原因となる間隙内で起こるブリッジングを防止することができるのであり、簡単かつ容易に実施できる方法であるので有用性が極めて高い。何故ブリッジングが防止できるかについては、必ずしも限定的な理由ではないが、次のように考えることができる。電着塗装時には被塗物表面上に粒子形状で塗料樹脂が付着していき、塗装時に発生するジュール熱で塗料粒子が融着していくが、塗装温度に塗料樹脂の最低造膜温度が近いか、最低造膜温度が塗装温度より高いと、この融着が不十分になって、不連続なまま塗料粒子が存在して絶縁膜とならないので、通電が確保され、電着が粒子間の隙間から更に進行していくことにより、塗料粒子の上方に重なり合った状態が形成され、ブリッジング現象が起こる。しかし、本発明では、最低造膜温度を塗装温度より十分低く、即ち5℃以上低く設定しておけば、電着で付着した塗料粒子が融着して、絶縁性を確保し、上方への粒子の電着付着を防止することができることを見いだしたのである。
本発明では、また、最低造膜温度をどのようにコントロールするかについても、電着浴内の疎水性溶剤の量とナトリウムイオンの量とから可能にすることができ、簡単かつ容易な実施方法と極めて有用である。
本明細書で、「最低造膜温度」とは、カチオン電着塗料中の塗料粒子が結合して造膜するのに最低必要な温度を意味する。最低造膜温度(「MFT(Minimum Film−forming Temperature)」と呼ばれることもある。)の測定方法は以下の通りである。電着浴温度を10℃〜40℃まで2℃毎に変化させ、塗装電圧200Vで3分間通電して電着塗装したものを所定焼付条件で焼付乾燥させた後の塗装膜厚を測定し、その塗装膜厚が最低となる温度を最低造膜温度(MFT)とする。
また、本明細書中で、「電着塗装温度」とは、電着塗装ラインにおいて電着浴の液温度として設定する温度をいう。
本発明では、カチオン電着塗料浴中のカチオン電着塗料の最低造膜温度を電着塗料塗装温度よりも5℃以上、好ましくは5℃を超えて低く設定しなければならない。最低造膜温度が塗装温度より低くても、5℃より少ない場合は、析出樹脂粒子間の融着が不十分になり、ブリッジング現象を防止する効果が十分でなくなる。カチオン電着塗料浴内のカチオン電着塗料の最低造膜温度は、塗装温度より5℃以上低ければよいのであるが、必要以上に低くすることもできないので、好ましくは塗装温度より5〜10℃低く、より好ましくは5〜8℃低く設定することが有用な範囲である。
上記最低造膜温度を、塗装温度より5℃以上低くするには、種々の方法が考えられるが、電着浴内の疎水性溶剤量とナトリウムイオン量を所定範囲にする方法が上げられる。本発明では、特に電着浴内の疎水性溶剤の量を電着塗料浴重量に対して0.8〜1.0重量%にし、ナトリウムイオンの量を30ppm以下設定することにより、最低造膜温度を所定範囲内に納めることができる。
疎水性溶剤は、カチオン電着塗料浴内に配合される有機溶媒であって、疎水性を示すもの、具体的にはエーテル類、例えばエチレングリコールモノー2−エチルへキシルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル等が上げられる。疎水性溶剤の量が0.8重量%より少ないと、最低造膜温度が高くなり、ブリッジングの防止が難しくなる。逆に、1.0重量%を超えると、有機溶媒含有量が増えて、環境基準を満足しなくなる。疎水性溶剤の使用が浴内のカチオン電着塗料の樹脂成分を可塑化する傾向にあるが、必要以上に多くすることは環境に悪影響を与える。
ナトリウムイオンの量は好ましくは0〜30ppm、より好ましくは0〜10ppmである。ナトリウムイオンの量が、30ppmを超えると、最低造膜温度が電着塗装温度より5℃以上低くならず、析出樹脂の融着が起こらず、ブリッジング現象を防止することができない。ナトリウムイオンがカチオン電着塗料浴に存在することは、従来から被塗物の前処理工程から持ち込まれるので認識されていたが、その存在量が浴内のカチオン電着塗料の最低造膜温度の影響を与えることを本発明により初めて認識した。
カチオン電着塗料
次に、カチオン電着塗料について説明する。一般にカチオン電着塗料は、カチオン性のエポキシ樹脂(特に、アミン変性エポキシ樹脂)とその樹脂の硬化剤(特に、ブロック化イソシアネート硬化剤)を基本的成分としており、その他に顔料や添加剤を含み、水性媒体中に分散したものである。
カチオン性エポキシ樹脂
本発明で用いるカチオン性エポキシ樹脂には、アミンで変性されたエポキシ樹脂が含まれる。カチオン性エポキシ樹脂は、典型的には、ビスフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ環の全部をカチオン性基を導入し得る活性水素化合物で開環するか、または一部のエポキシ環を他の活性水素化合物で開環し、残りのエポキシ環をカチオン性基を導入し得る活性水素化合物で開環して製造される。
ビスフェノール型エポキシ樹脂の典型例はビスフェノールA型またはビスフェノールF型エポキシ樹脂である。前者の市販品としてはエピコート828(油化シェルエポキシ社製、エポキシ当量180〜190)、エピコート1001(同、エポキシ当量450〜500)、エピコート1010(同、エポキシ当量3000〜4000)などがあり、後者の市販品としてはエピコート807、(同、エポキシ当量170)などがある。
特開平5−306327号公報に記載される、下記式
Figure 2007313420
[式中、Rはジグリシジルエポキシ化合物のグリシジルオキシ基を除いた残基、R’はジイソシアネート化合物のイソシアネート基を除いた残基、nは正の整数を意味する。]で示されるオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂をカチオン性エポキシ樹脂に用いてもよい。耐熱性及び耐食性に優れた塗膜が得られるからである。
エポキシ樹脂にオキサゾリドン環を導入する方法としては、例えば、メタノールのような低級アルコールでブロックされたブロックポリイソシアネートとポリエポキシドを塩基性触媒の存在下で加熱保温し、副生する低級アルコールを系内より留去することで得られる。
二官能エポキシ樹脂とモノアルコールでブロックしたジイソシアネート(すなわち、ビスウレタン)とを反応させるとオキサゾリドン環を含有するエポキシ樹脂が得られることは公知である。このオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂の具体例及び製造方法は、例えば、特開2000−128959号公報第0012〜0047段落に記載されており、公知である。
これらのエポキシ樹脂は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、および単官能性のアルキルフェノールのような適当な樹脂で変性しても良い。また、エポキシ樹脂はエポキシ基とジオール又はジカルボン酸との反応を利用して鎖延長することができる。
これらのエポキシ樹脂は、開環後0.3〜4.0meq/gのアミン当量となるように、より好ましくはそのうちの5〜50%が1級アミノ基が占めるように活性水素化合物で開環するのが望ましい。
カチオン性基を導入し得る活性水素化合物としては1級アミン、2級アミン、3級アミンの酸塩、スルフィド及び酸混合物がある。1級、2級又は/及び3級アミノ基含有エポキシ樹脂を調製するためには1級アミン、2級アミン、3級アミンの酸塩をカチオン性基を導入し得る活性水素化合物として用いる。
具体例としては、ブチルアミン、オクチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、メチルブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエチルアミン塩酸塩、N,N−ジメチルエタノールアミン酢酸塩、ジエチルジスルフィド・酢酸混合物などのほか、アミノエチルエタノールアミンのケチミン、ジエチレントリアミンのジケチミンなどの1級アミンをブロックした2級アミンがある。アミン類は複数のものを併用して用いてもよい。
硬化剤
本発明で使用する硬化剤は、ポリイソシアネートをブロック剤でブロックして得られたブロックポリイソシアネートが好ましく、ここでポリイソシアネートとは、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物をいう。ポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族系、脂環式系、芳香族系および芳香族−脂肪族系等のうちのいずれのものであってもよい。
ポリイソシアネートの具体例には、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、p−フェニレンジイソシアネート、及びナフタレンジイソシアネート等のような芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、及びリジンジイソシアネート等のような炭素数3〜12の脂肪族ジイソシアネート;1,4−シクロヘキサンジイソシアネート(CDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4’−ジイソシアネート、及び1,3−ジイソシアナトメチルシクロヘキサン(水添XDI)、水添TDI、2,5−もしくは2,6−ビス(イソシアナートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(ノルボルナンジイソシアネートとも称される。)等のような炭素数5〜18の脂環式ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート(XDI)、及びテトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等のような芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート;これらのジイソシアネートの変性物(ウレタン化物、カーボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン、ビューレット及び/又はイソシアヌレート変性物);等があげられる。これらは、単独で、または2種以上併用することができる。
ポリイソシアネートをエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどの多価アルコールとNCO/OH比2以上で反応させて得られる付加体ないしプレポリマーも硬化剤として使用してよい。
ポリイソシアネートは、脂肪族ポリイソシアネート又は脂環式ポリイソシアネートであることが好ましい。形成される塗膜が耐候性に優れるからである。
脂肪族ポリイソシアネート又は脂環式ポリイソシアネートの好ましい具体例には、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添TDI、水添MDI、水添XDI、IPDI、ノルボルナンジイソシアネート、それらの二量体(ビウレット)、三量体(イソシアヌレート)等が挙げられる。
ブロック剤は、ポリイソシアネート基に付加し、常温では安定であるが解離温度以上に加熱すると遊離のイソシアネート基を再生し得るものである。
ブロック剤としては、低温硬化(160℃以下)を望む場合には、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタムおよびβ−プロピオラクタムなどのラクタム系ブロック剤、及びホルムアルドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、シクロヘキサンオキシムなどのオキシム系ブロック剤を使用するのが良い。
カチオン性エポキシ樹脂と硬化剤とを含むバインダーは、一般に、電着塗料組成物の全固形分の25〜85質量%、好ましくは40〜70質量%を占める量で電着塗料組成物に含有される。
顔料
本発明で用いられる電着塗料組成物は、通常用いられる顔料を含んでもよい。使用できる顔料の例としては、通常使用される無機顔料、例えば、チタンホワイト、カーボンブラック及びベンガラのような着色顔料;カオリン、タルク、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、マイカおよびクレーのような体質顔料;リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、亜リン酸亜鉛、シアン化亜鉛、酸化亜鉛、トリポリリン酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸カルシウム及びリンモリブデン酸アルミニウム、リンモリブデン酸アルミニウム亜鉛のような防錆顔料等、が挙げられる。
顔料は、一般に、電着塗料組成物の全固形分の1〜35質量%、好ましくは10〜30質量%を占める量で電着塗料組成物に含有される。
顔料分散ペースト
顔料を電着塗料の成分として用いる場合、一般に顔料を顔料分散樹脂と呼ばれる樹脂と共に予め高濃度で水性媒体に分散させてペースト状にする。顔料は粉体状であるため、電着塗料組成物で用いる低濃度均一状態に一工程で分散させるのは困難だからである。一般にこのようなペーストを顔料分散ペーストという。
顔料分散ペーストは、顔料を顔料分散樹脂ワニスと共に水性媒体中に分散させて調製する。顔料分散樹脂ワニスとしては、一般に、カチオン性又はノニオン性の低分子量界面活性剤や4級アンモニウム基及び/又は3級スルホニウム基を有する変性エポキシ樹脂等のようなカチオン性重合体を用いる。水性媒体としてはイオン交換水や少量のアルコール類を含む水等を用いる。一般に、顔料分散樹脂ワニスは5〜40質量部、顔料は10〜30質量部の固形分比で用いる。
上記顔料分散用樹脂ワニスおよび顔料を混合した後、その混合物中の顔料の粒径が所定の均一な粒径となるまで、ボールミルやサンドグラインドミル等の通常の分散装置を用いて分散させて、顔料分散ペーストを得る。
電着塗料組成物の調製
電着塗料組成物は、カチオン性エポキシ樹脂、硬化剤、及び顔料分散ペーストを水性媒体中に分散することによって調製される。また、通常、水性媒体にはカチオン性エポキシ樹脂の分散性を向上させるために中和剤を含有させる。中和剤は塩酸、硝酸、リン酸、ギ酸、酢酸、乳酸のような無機酸または有機酸である。その量は少なくとも20%、好ましくは30〜60%の中和率を達成する量である。
硬化剤の量は、硬化時にカチオン性エポキシ樹脂中の1級、2級又は/及び3級アミノ基、水酸基等の活性水素含有官能基と反応して良好な硬化塗膜を与えるのに十分でなければならず、一般にカチオン性エポキシ樹脂の硬化剤に対する固形分質量比で表して一般に90/10〜50/50、好ましくは80/20〜65/35の範囲である。
電着塗料は、ジラウリン酸ジブチルスズ、ジブチルスズオキサイドのようなスズ化合物や、通常のウレタン開裂触媒を含むことができる。鉛を実質的に含まないものが好ましい。
電着塗料組成物は、水混和性有機溶剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、及び顔料などの常用の塗料用添加剤を含むことができる。尚、疎水性溶剤の量は、本発明では、電着塗料浴に対して0.8〜1.0重量%に限定される。
電着塗料組成物を用いて電着塗装を行う場合の被塗物は、予め、浸漬、スプレー方法等によりリン酸亜鉛処理等の表面処理の施された導体であることが好ましいが、この表面処理が施されていないものであっても良い。また、導体とは、電着塗装を行うに当り、陰極になり得るものであれば特に制限はなく、金属基材が好ましい。
電着が実施される条件は一般的に他の型の電着塗装に用いられるものと同様である。印加電圧は所望の膜厚に応じて変化するが、通常は1ボルト〜数百ボルトの範囲であってよい。
本発明によれば、カチオン電着塗料浴中の疎水性溶剤量およびナトリウムイオン量をそれぞれ0.8〜1.0重量%および300ppm以下に調整することにより、カチオン電着塗料の最低造膜温度が塗装温度より5℃以上低く設定することができるのである。従って、疎水性溶剤の量が低下すれば、塗料浴中に添加すれば良く、多くなってきたら添加を控えるか、限外濾過に付した後限外濾液を廃棄する。また、ナトリウムイオン量は、多くなると、限外濾過に付した後限外濾液を廃棄する。
本発明の電着塗装方法によって電着した後、ウェット塗膜を昇温下に通常の方法、例えば焼付炉中、焼成オーブン中あるいは赤外ヒートランプで焼付ける。焼付け温度は変化してもよいが、通常約140℃〜180℃である。本発明の電着塗装システムによって塗装された塗装物は、最終水洗の後、焼付けされることによって、硬化電着塗膜が形成され、これにより塗装工程が完了する。
本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。本発明はこれら実施例に限定されるものと解してはならない。
電着塗装試験片の作成
冷延鋼板(JIS G3141、SPCC−SD;70mm×150mm)をサーフダインSD−5000(日本ペイント社製)で処理することにより、リン酸亜鉛処理された冷延鋼板を得た。得られた冷延鋼板2枚を図1に示すようにスペーサを挟んで重ね合わせて固定して、所定のクリアランスを有する試験片を作成した。試験片のクリアランスは、0.3mmとなるように調整した。
製造例1
カチオン性基を有する樹脂1の製造
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計及び滴下漏斗を装備した反応容器に、2,4−/2,6−トリレンジイソシアネート(質量比=8/2)21.8部、メチルイソブチルケトン(以下MIBKという)88.7部及びジブチル錫ジラウレート0.01部を加えた。窒素雰囲気下、室温でメタノール24.4部を添加したところ、発熱により系内の温度は60℃まで昇温した。その後30分間反応を継続した後に、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート132.3部、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル29.1部を1時間かけて滴下した。更に反応混合物に、ビスフェノールA−プロピレンオキシド5モル付加体82.0部を添加した。反応は、主に60〜65℃の範囲で行い、IRスペクトルを測定しながらイソシアネート基の吸収が消失するまで継続した。
次に、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとから合成したエポキシ当量188のエポキシ樹脂940.0部を加え、125℃まで昇温した。その後、更にベンジルジメチルアミン2.03部を加え、エポキシ当量284になるまで、副生するメタノールをデカンターを用いて留去しながら130℃で反応させた。続いてビスフェノールA262.0部及び2−エチルへキサン酸76.9部を加えて130℃で反応させたところエポキシ当量は1070となった。その後、反応混合物を冷却し、ジブチルアミン27.7部、N−メチルエタノールアミン65.3部及びアミノエチルエタノールアミンのケチミン化物(79質量%MIBK溶液)93.6部を加え、110℃で2時間反応させた。その後、MIBKで不揮発分86%になるまで希釈し、オキサゾリドン環を含有したアミン化エポキシ樹脂1を得た。得られた樹脂1のアミン価は、107mgKOH/g、数平均分子量は2400であった。
製造例2
ブロックイソシアネート硬化剤1の製造
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計及び滴下漏斗を装備した反応容器に、コロネート2357(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、日本ポリウレタン工業社製)199.1部、MIBK36.4部及びジブチル錫ジラウレート0.2部を加え、窒素雰囲気下70℃に加熱した。内容物を均一に溶解させた後、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル87.0部とメチルエチルケトンオキシム43.5部との混合溶液を、反応混合物の温度を70〜75℃に加熱保持しながら、2時間かけて滴下した。同温度で30分間エージングした後、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル3.5部を配合した。IRスペクトルにより、イソシアネート基の吸収の消失を確認した後、MIBK42.3部で希釈して、ブロックイソシアネート硬化剤1を得た。
製造例3
エマルションの製造
製造例1で得られたオキサゾリドン環を含有したアミン化エポキシ樹脂1及び製造例5で得られたブロックイソシアネート硬化剤1を固形分配合比75:25で均一に混合した後、エチレングリコールモノヘキシルエーテルを固形分に対して7%になるように添加した。更に酢酸水を加えて中和率35.5%となるように中和、攪拌してW/O型エマルションを形成する。次いで、イオン交換水をゆっくり加えて希釈し、相転換させO/W型エマルションを形成する。減圧下でMIBKを留去することにより、固形分濃度36.0%のエマルションを得た。得られたエマルションのpHは6.2、平均粒子径は75nmであった。
製造例4
顔料分散ペースト1の調製
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計及び滴下漏斗を装備した反応容器にイソホロンジイソシアネート222.0部を加え、MIBK39.1部で希釈した後、ジブチル錫ジラウレート0.2部を加えた。窒素雰囲気下50℃に昇温後、2−エチルヘキサノール131.5部を2時間かけて滴下した。適宜冷却を実施し、反応温度を50℃に維持することにより、不揮発分90%のハーフブロック化イソシアネートを得た。
次に攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計及び滴下漏斗を装備した別の反応容器にエポン828(シェル化学社製 エポキシ樹脂、エポキシ当量190)351.6部及びビスフェノールA99.2部を仕込み、窒素雰囲気下130℃まで加熱した。ここに、ベンジルジメチルアミン1.41部を添加し、170℃で約1時間反応させることにより、エポキシ当量450のビスフェノールA型エポキシ樹脂を得た。反応溶液を140℃まで冷却した後、先に得られたハーフブロック化イソシアネート218.3部を加え、140℃で1時間加熱保持した。ここにジプロピレングリコールモノブチルエーテル172.3部を加えて希釈した後、反応溶液を100℃に冷却し、SHP−100(1−(2−ヒドロキシエチルチオ)−2−プロパノール、三洋化成社製)408.0部(固形分136.0部)、ジメチロールプロピオン酸134.0部及びイオン交換水144.0部を加え、70〜75℃で酸価3.0以下になるまで反応させた。この反応により、3級スルホニウム化率70.6%のスルホニウム基変性エポキシ樹脂を得た。これをジプロピレングリコールモノブチルエーテル324.8部及びイオン交換水1204.8部で希釈し、不揮発分30%のスルホニウム基含有顔料分散用樹脂を得た。
このようにして得られたスルホニウム基含有顔料分散用樹脂180部、MA−100(カーボンブラック、三菱化学社製)9部、沈降性硫酸バリウムB−30(堺化学工業社製)76部、LFボウセイPM−303W(リンモリブデン酸アルミニウム亜鉛系無機顔料、キクチカラー社製)15部、ジブチル錫オキサイド8部及びイオン交換水36部を混合し、サンドグラインドミルで粒度10μm以下になるまで粉砕して顔料分散ペースト1を調製した。
MFTの測定方法
電着浴温度を10℃〜40℃まで2℃毎に変化させ、塗装電圧200Vで3分間通電して電着塗装したものを所定焼付条件で焼付乾燥させた後の塗装膜厚を測定し、その塗装膜厚が最低となる温度を最低造膜温度(MFT)とした。
実施例1
(カチオン電着塗料の調製)
製造例3で得られたカチオン性のO/W型エマルション972部、製造例4で得られた顔料分散ペースト250部及びイオン交換水1700部を混合して、それぞれのカチオン電着塗料を調製した。このカチオン電着塗料の最低造膜温度を前述の方法で測定したら、22℃であった。また、電着塗料浴中の疎水性溶剤であるエチレングリコールモノヘキシルエーテルの量は、1.0重量%であり、ナトリウムイオンの量を25ppmに調整した。
4Lステンレスビーカに、上記カチオン電着塗料組成物を入れた。作成した試験片をクリアランスとなる部分がすべてつかるように浸漬し、液温30℃となるように昇温し、150秒間200ボルトを保持して電圧を印加して、電着塗膜を形成し、膜厚20μmのウェット塗膜を形成した。この電着塗膜を形成した試験片を水道水/純水で洗浄した後、10分間セッティングし、160℃で10分間加熱硬化した。但し、硬化時の昇温スピードは20℃/分であった。
この実施例1では、カチオン電着塗料浴の水温が30℃で、最低造膜温度が22℃であるので、その差は8℃であった。
試験を行った電着塗料の最低造膜温度、疎水性溶剤量、ナトリウムイオン量および塗料浴温と最低造膜温度との差、さらには得られた塗膜の塗料性能としてブリッジング性を評価した。結果を表1および表2に示す。ブリッジング性は以下の通り評価した。
ブリッジング性の評価
電着塗装後、焼付け前と焼付後の両方で、図1の試験片の2枚の塗板の間隙部の閉塞状態を目視で観察する。評価は次の通り行った。図1の試験片を利用する方法は、ラボ評価とした。また、同様の評価を実際の塗装ラインでも行った。その評価も下記基準で行った。塗装ラインの評価も表1および表2に示した。
◎…間隙部の閉塞が全くない(閉塞率0%)
○…間隙部の閉塞率5%以下
○△…間隙部の閉塞率5〜10%
△…間隙部の閉塞率10〜50%
×…間隙部の閉塞率50〜70%
××…間隙部の閉塞率70%以上
×××…間隙部の閉塞率100%
実施例2〜4および比較例1〜6
実施例1のカチオン電着塗料について、表1および表2に示すように、ナトリウムイオン量及び溶剤(エチレングリコールモノヘキシルエーテル)量を変化させることによって塗料の最低造膜温度を調整し、それぞれの最低造膜温度を有するカチオン電着塗料を作成し、各塗料について、実施例1と同様にブリッジング性の評価を行った。試験を行った電着塗料の最低造膜温度、疎水性溶剤量、ナトリウムイオン量および塗料浴温と最低造膜温度との差、およびブリッジング性の評価結果を表1および表2に示す。
ナトリウムイオン量を増加する方法は、電着塗料に10%酢酸ナトリウム水溶液を最終のナトリウムイオン量になるように添加することにより行った。ナトリウムイオンを添加した後に、電着塗料は120分撹拌した後、電着塗装を実施した。
溶剤(エチレングリコールモノヘキシルエーテル)の量を減少する場合(例えば、比較例3にある0.6重量%)には、製造例3において添加するエチレングリコールモノヘキシルエーテルの添加量を塗料中0.6重量%になるように調整した。また、その他の例の溶剤量は、比較例3の0.6重量%のものに、溶剤を加えることにより行った。
Figure 2007313420
Figure 2007313420
実施例および比較例で用いた試験片の模式的説明図。 比較例1のブリッジングの状態を撮影した写真。

Claims (4)

  1. カチオン電着塗料浴中で被塗物を電着塗装する際に、カチオン電着塗料の最低造膜温度を塗装温度より5℃以上低く設定することを特徴とするカチオン電着塗装方法。
  2. カチオン電着塗料浴において、浴内の疎水性溶剤量を0.8〜1.0重量%、ナトリウムイオンの量を30ppm以下にすることにより最低造膜温度を調整する請求項1記載のカチオン電着塗装方法。
  3. 疎水性溶剤量0.8〜1.0重量%およびナトリウムイオン量30ppm以下にコントロールされたブリッジングを生じないカチオン電着塗料浴。
  4. 疎水性溶剤量0.8〜1.0重量%およびナトリウムイオン量30ppm以下にコントロールすることを特徴とするカチオン電着塗料の最低造膜温度をカチオン電着塗装温度より5℃以上低くする方法。
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