以下、本発明を具体化した一実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、本発明の外壁構造を複数階建ての建物において具体化している。図1は、図1は建物の概略を示す縦断面図である。
図1に示すように、建物10は、建物本体11と、その建物本体11の上方に形成された屋根12とを備えている。建物本体11は、一階部分13と二階部分14とを有してなる二階建て建物である。建物10の一階部分13には第一居室15等が形成され、二階部分14には第二居室16等が形成されており、第一居室15及び第二居室16はいずれも屋内空間になっている。
建物10の二階部分14には、バルコニー20が設けられている。バルコニー20は、第一居室15の上方に設けられており、いわゆるルーフバルコニーとなっている。バルコニー20は、第二居室16と隣接して設けられており、バルコニー20と第二居室16とは外壁としての外壁部17によって仕切られている。図示は省略するが、外壁部17の一部には窓部(例えば掃き出し窓)が設けられ、その窓部を通じて第二居室16とバルコニー20との間の行き来が可能となっている。
バルコニー20は、バルコニー床部21と、バルコニー床部21の周縁に沿って立設されるバルコニー腰壁部22とを備える。バルコニー床部21とバルコニー腰壁部22と外壁部17とにより囲まれる空間はバルコニー空間BSとなっている。この場合、バルコニー空間BSが屋外開放空間に相当する。
また、バルコニー20は、一階部分13の第一居室15の上方に配置されている。このため、バルコニー床部21は、第一居室15の天井部又は屋根部を形成していることにもなる。
次に、外壁部17の構成について図2〜7を参照しつつ説明する。図2は外壁部17の下端周辺の正面図、図3は隣り合う外壁パネル31の構成を示す正面図、図4は図2のA−A線断面図、図5は図2のB−B線断面図、図6は図2のC−C線断面図、図7は図2のD−D線断面図である。なお、図2においては、外壁面材41の裏側に配置された下地フレーム42を破線で示し、図3においては、壁下シート51及びシート材61における外壁面材41の裏側に配置された部分を破線で示している。
図3においては、建物10に対して固定されていない状態の外壁パネル31を示す。
図2に示すように、外壁部17は、横並びに配置された複数の外壁パネル31を有している。左右に隣り合う外壁パネル31の間には目地32が形成されており、その目地32は外壁パネル31の側辺に沿って上下方向に延びている。外壁部17は、バルコニー床部21から上方に向けて立ち上げられた立ち上がり部33の上に設けられており、その立ち上がり部33は、バルコニー20と第二居室16との間に設けられている。
目地32の下方には、目地32内に浸入した雨水等の水を屋外側(バルコニー空間BS側)に排出する水排出口34が設けられている。水排出口34は、目地32の下端から下方に向けて延びており、外壁部17と立ち上がり部33との間において屋外側に向けて開放されている。
図4に示すように、外壁パネル31は、二階部分14の床大梁又は一階部分13の天井大梁としての大梁36により支持されている。具体的には、大梁36は、H形鋼等の鋼材により形成されており、外壁部17に沿って水平方向に延びている。外壁パネル31は、支持ブラケット37を介して大梁36に固定されている。支持ブラケット37は、アングル材等により形成されており、溶接等により大梁36に対して固定されている。なお、支持ブラケット37は、大梁36の長手方向に沿って所定間隔で複数並べられている。
外壁パネル31は、外壁部17の屋外面(外壁面)を形成する外壁面材41と、外壁面材41の屋内側に配置された下地フレーム42とを有している。外壁面材41は、窯業系サイディングボード等の外装材により矩形板状に形成されている。
下地フレーム42は、外壁面材41の屋内側面に沿って上下方向に延びる縦フレーム材42aと、外壁面材41の屋内側面に沿って左右方向に延びる横フレーム材42bとを有しており(図2参照)、それらフレーム材42a,42bはいずれも断面コ字状の軽量溝形鋼により形成されている。縦フレーム材42aは、外壁面材41の側端部に沿って延びる位置に配置され、横フレーム材42bは、外壁面材41の下端部に沿って延びる位置に配置されている。なお、下地フレーム42には、支持ブラケット37が溶接等により固定されており、それによって、外壁パネル31が支持ブラケット37により支持されている。
バルコニー床部21は、図示しないバルコニー床梁により支持された床下地材45と、床下地材45の上に設置された床断熱部46と、床断熱部46の上に沿って延びるように形成された防水層47とを有している。床下地材45は、ALC(軽量気泡コンクリート)等により形成されており、床断熱部46は、硬質ウレタンフォーム等の発泡系断熱材などにより形成されている。防水層47は、防水塗料が床断熱部46の上面に対して塗布されることや、塩化ビニル等の耐水性を有する材料により形成された防水シートが床断熱部46の上面に沿って敷設されることで形成されている。
防水層47は、バルコニー床部21の床面に沿って延びているとともに、立ち上がり部33の屋外側面に沿って延びている。この場合、防水層47は、バルコニー床部21と立ち上がり部33とにより形成された入隅部を覆っていることになる。
立ち上がり部33においては、防水層47の屋内側に防水下地鋼板48が設けられている。防水下地鋼板48は、断面コ字状の溝形鋼により形成されており、溝部を屋内側に向けた状態で外壁部17の下端部に沿って延びている。この場合、防水層47における立ち上がり部分は、防水下地鋼板48のウェブの外側面に沿って延びた状態で設けられている。防水下地鋼板48は、ベースフレーム49を介して支持ブラケット37に取り付けられている。つまり、防水下地鋼板48は、ベースフレーム49及び支持ブラケット37を介して大梁36により支持されている。
ベースフレーム49は、断面コ字状の溝形鋼を複数組み合わせて構成されており、防水下地鋼板48と同様に、外壁部17の下端部に沿って延びる長尺部材とされている。ベースフレーム49は、バルコニー20と第二居室16との並び方向において、防水下地鋼板48と横並びに配置されており、防水下地鋼板48及び支持ブラケット37に対して溶接等により固定されている。防水下地鋼板48及び支持ブラケット37の各上部は、バルコニー床部21の床面よりも上方に突出しており、各突出部分により立ち上がり部33が構成されている。
立ち上がり部33において防水層47の屋外側には、壁下シート51が設けられている。壁下シート51は、クロロプレンゴム(CRゴム)等の耐水性を有する材料により形成され、柔軟性を有する防水シートであり、上下方向において外壁パネル31と立ち上がり部33とに架け渡された状態で設けられている。壁下シート51は、外壁部17の下端部に沿って延びており、壁下シート51における下端寄りの部分は、防水層47に対して屋外側から重ねられている。この場合、立ち上がり部33において防水層47と防水下地鋼板48との境界部が、壁下シート51により屋外側から覆われているため、それら防水層47と防水下地鋼板48との間に上方から水が浸入することが規制されている。また、壁下シート51は、立ち上がり部33(防水下地鋼板48)と外壁パネル31との隙間を屋外側から塞いでいることにもなる。
一方、壁下シート51における上端寄りの部分は、外壁面材41と下地フレーム42との間に挟まれた状態で、外壁面材41の屋内側面に重ねられている。この場合、壁下シート51は、外壁パネル31の下端部に配置された横フレーム材42bと外壁面材41とにより挟持されている。
図3に示すように、壁下シート51は、各外壁パネル31のそれぞれに対して個別に取り付けられている。壁下シート51は、外壁パネル31の下端部に沿って延びているが、外壁パネル31の幅方向においては、壁下シート51の端部が外壁パネル31の側端部よりも内側に配置されている。また、壁下シート51の下端寄りの部分は外壁パネル31よりも下方にはみ出している。
図2,図5に示すように、外壁部17の目地32においては、外壁面材41同士の間に設けられたシーリング材53と、そのシーリング材53の屋内側に配置されたガスケット54とが設けられている。シーリング材53及びガスケット54は、いずれもEPDMゴム等により形成された定形のシーリング材であり、目地32に嵌め込まれている。なお、ガスケット54よりも屋外側に配置されたシーリング材53を1次ガスケット、ガスケット54を2次ガスケットと称することもできる。
シーリング材53は各外壁面材41の側端面に密着しており、外壁面材41同士の間の隙間において気密性及び水密性が確保されている。ガスケット54は、シーリング材53よりも目地32の奥側において、下地フレーム42同士の間に嵌め込まれている。ここで、外壁パネル31において側端部に配置された縦フレーム材42aは、その溝部を目地32とは反対側に向けて配置されており、隣り合う外壁パネル31の各縦フレーム材42aにおいては、ウェブの外側面同士が目地32を挟んで対向している。この場合、ガスケット54は各縦フレーム材42aのウェブに密着しており、それによって、下地フレーム42同士の間の隙間において気密性及び水密性が確保されている。
なお、シーリング材53は、シリコン系材料等により形成された不定形のシーリング材とされていてもよい。この場合、シーリング材53は、流動性を有する不定形の状態で目地32に充填され、その状態で硬化したゴム状弾性体となる。
シーリング材53は、目地32の下端から上方に向けて延びているのに対して、ガスケット54は、目地32の下端から上側に離間した位置から上方に向けて延びている。ここで、目地32においてシーリング材53の裏側に水が浸入した場合、その水がさらに屋内側に浸入することがガスケット54により規制される。ガスケット54により浸入が規制された水は、ガスケット54に沿って流下し、ガスケット54の下端部から下方に落下することで、立ち上がり部33の内部等を通じてバルコニー20の下方(一階部分13の第一居室15)に浸入することが懸念される。
これに対して、本実施形態では、ガスケット54の下端部から流れ落ちた水が、立ち上がり部33の屋外側においてバルコニー床部21の上に排出されるようになっている。ここでは、目地32内に浸入した水の排出構造について説明する。
図6、図7に示すように、左右に隣り合う外壁パネル31に目地32を跨いだ状態で止水シート56が架け渡されている。止水シート56は、塩化ビニル等の耐水性を有する材料により形成された防水シートであり、柔軟性を有している。各外壁パネル31においては、止水シート56が外壁面材41と下地フレーム42との間に挟まれた状態で固定されている。つまり、止水シート56は外壁面材41と下地フレーム42とにより挟持されている。
目地32においては、左右方向(外壁パネル31の並び方向)における止水シート56の中間部分が屋外側から下地フレーム42同士の間に入り込んだ状態になっている。止水シート56における下地フレーム42同士の間に入り込んだ入り込み部分57は、屋内側に向けて突出した横断面U字形状になっており、上方、下方及び屋外側に向けて開放された内側空間を有している。ガスケット54は、止水シート56における入り込み部分57の内側空間に屋外側から嵌め込まれた状態になっており、入り込み部分57においては、止水シート56がガスケット54を屋内側から覆った状態になっている。
なお、止水シート56の入り込み部分57の内側空間においては、ガスケット54の屋内側面が入り込み部分57における屋外側を向いた側面から屋外側に離間している。この場合、外壁部17の厚み方向においては、ガスケット54と止水シート56との間に隙間が形成されており、その隙間を通じて屋外空間と壁内空間(ガスケット54よりも屋内側の空間)との間で通気が行われるようになっている。
止水シート56における入り込み部分57の屋外側には、外壁面材41同士の間に嵌め込まれたシーリング材53が存在しており、目地32において止水シート56の入り込み部分57はシーリング材53により屋外側から塞がれている。
図5に示すように、止水シート56の入り込み部分57においては、その上端寄りの部分により、ガスケット54を屋内側から覆っている被覆部58が形成されているとともに、被覆部58よりも下方部分(ガスケット54の下方部分)により、水を屋外側に案内する案内部59が形成されている。被覆部58は、ガスケット54の下端寄りの部分と横並びに配置されており、案内部59は被覆部58よりも屋外側に向けて突出している。
止水シート56は、上下方向において外壁パネル31と立ち上がり部33とに架け渡されており、止水シート56における下端寄りの部分は、立ち上がり部33の屋外側(バルコニー空間BS側)の側面に沿って延びている。ここで、立ち上がり部33において、目地32の下方部分など壁下シート51が設けられていない部分では、止水シート56が防水層47に対して屋外側から直接重ねられている。一方、壁下シート51が設けられている部分では、止水シート56が壁下シート51を介して防水層47に屋外側から重ねられている(図4参照)。なお、壁下シート51の有無にかかわらず、止水シート56における立ち上がり部33の屋外側面に重ねられた部分が重ね部に相当する。
案内部59は、止水シート56の入り込み部分57に加えて、止水シート56における目地32よりも下方(外壁パネル31よりも下方)にはみ出した部分により形成されている。案内部59においては、屋内側への入り込み寸法が下方に向かうにつれて徐々に小さくされている。この場合、案内部59は、ガスケット54の下端部から落ちた水を受け止めて屋外側に案内する案内面59aを有しており、外壁面材41(シーリング材53)に対する案内面59aの屋内側への入り込み寸法が、高さレベルが低い位置ほど小さくなっていることになる。なお、案内面59aは、屋外側の斜め上方を向いており、下方に向かうにつれて屋外側に傾斜していれば、その傾斜は直線的でも曲線的でもよい。
シーリング材53に対する案内面59aの屋内側への入り込み寸法は、目地32の下端部においてもゼロになっておらず、止水シート56の入り込み部分57の内側空間は、シーリング材53の屋内側にて下方に向けて開放されている。この場合、案内部59の内部空間が下方に向けて開放されていることになり、その開放部分により水排出口34が形成されている。止水シート56は、水排出口34の下方にて立ち上がり部33に対して固定されており、水排出口34は、外壁パネル31(外壁部17)と立ち上がり部33との間の離間部分において形成されていることになる。
図5〜図7に示すように、目地32には、下地フレーム42同士の間の離間距離を保持するためのスペーサ部材65が設けられている。スペーサ部材65は、木材等により形成され、下地フレーム42同士の間に挟まれており、目地32において止水シート56の屋内側に配置されている。この場合、スペーサ部材65は、止水シート56に当接することで、目地32において止水シート56が屋内側に入り込むことを規制していることになる。
特に、スペーサ部材65においては、被覆部58と横並びに配置された部分が被覆側部分65aとされ、案内部59と横並びに配置された部分が案内側部分65bとされており、案内側部分65bが被覆側部分65aよりも屋外側に突出している。このため、案内側部分65bは、止水シート56により形成された案内部59に当接することで、その案内部59の屋内側への入り込み寸法が被覆部58の屋内側への入り込み寸法より大きくなることを規制している。
ここで、止水シート56は、各外壁パネル31のそれぞれに設けられたシート材61が接続されることで形成されている。なお、シート材61と止水シート56との違いは大きさや形状だけとなっており、本実施形態では、単に2つのシート材61を接続したものを止水シート56と称している。
図3に示すように、シート材61は、外壁パネル31における下側の隅角部に対して配置されている。シート材61は、外壁パネル31の下端部に沿って延びているとともに、外壁パネル31の側端部に沿って上下方向に延びており、外壁パネル31の下方及び幅方向の両方にはみ出している。外壁パネル31の幅方向におけるシート材61の一部は、壁下シート51の屋外側面に対して重ねられており、シート材61と壁下シート51とでは、外壁パネル31から下方へのはみ出し寸法が同じになっている。
隣り合う位置に設けられる一対の外壁パネル31においては、それぞれの幅方向へのシート材61のはみ出し寸法が異なっている。例えば、一方の外壁パネル31についてシート材61のはみ出し寸法をL1とし、他方の外壁パネル31についてシート材61のはみ出し寸法をL2とすれば、L2(例えば65mm)がL1(例えば50mm)よりも大きくなっている。
各外壁パネル31のシート材61においては、側方へのはみ出し部分の先端側に接着面61aを有しており、それら接着面61aが接着剤等により互いに接合されることで、シート材61同士が接続される。これらシート材61は、先端同士を合わせるように接続されるのではなく、一方のシート材61の先端側が他方のシート材61の基端側(外壁面材41側)に配置される状態で接続される。
例えば、各シート材61の接着面61aの幅寸法を同じとした場合、それらシート材61の接続部分は、各外壁パネル31の真ん中ではなく、はみ出し寸法がL1のシート材61の外壁パネル31に近い側に配置されることになる。このため、止水シート56が目地32内に入り込んだ状態では、シート材61の接続部分が下地フレーム42同士の中間位置ではなく、一方の下地フレーム42側に配置されることになる(図6、図7参照)。この場合、止水シート56を目地32内に押し込む際に、シート材61同士の接続部分を直接押すのではなく、接続部分の側方部分を押すことになるため、止水シート56の押し込みに伴ってシート材61の接着面61a同士が矧がれるということを抑制できる。
また、この場合、シート材61同士の接続部分は、各下地フレーム42のうち一方のウェブ外側面に沿って延びており、その接続部分において、一方のシート材61は下地フレーム42のウェブ外壁面に当接し、他方のシート材61は、一方のシート材61よりも目地32内側に配置されている。ここで、目地32内側に配置された方のシート材61は、屋外側から屋内側に向けて延びている。このため、止水シート56の入り込み部分57の内側空間に屋外側からガスケット54を嵌め込む際に、シート材61同士の接続部分において目地32内側に配置された方のシート材61の端部にガスケット54が引っ掛かるということが生じないようになっている。これにより、目地32内へのガスケット54の嵌め込み作業に伴ってシート材61同士の接着面61aが剥がれるということを抑制できる。
また、シート材61においては、その下部が上方に向けて折り返されることで折り返し部分66が形成されている。折り返し部分66においては、シート材61が屋内側に向けて折り返されており、シート材61の端部が屋外側に露出しないようになっている(図4参照)。この場合、シート材61の折り返し部分66に屋外側から水が浸入しにくくなっている。
次に、隣り合う外壁パネル31を大梁36等の建物躯体に取り付けた後に目地32についての防水処理を施す場合の作業手順について、図8を参照しつつ説明する。図8は、目地32に施す防水処理の作業手順を説明するための図である。
図8(a)に示すように、隣り合う外壁パネル31を建物躯体に取り付けた後、各外壁パネル31のシート材61を目地32から屋外側に引き出す。この場合、シート材61及び壁下シート51における外壁パネル31の下方にはみ出した部分を、バルコニー床部21から立ち上げられた立ち上がり部33に対して接着剤等により固定しておく。また、目地32の奥側にはスペーサ部材65を設置しておく。
そして、図8(b)に示すように、各シート材61のうちはみ出し寸法が大きい方のシート材61の先端側を折り返すようにして、シート材61の接着面61a同士を接着し、それらシート材61を互いに接続する。これにより、目地32から屋外側にはみ出した状態で止水シート56を形成したことになる。なお、この場合、各シート材61のはみ出し寸法が異なっているため、それらシート材61の接着面61a同士を容易に重ね合わせることができる。
次に、図8(c)に示すように、止水シート56のうち目地32から屋外側にはみ出した部分を目地32内に押し込む。このとき、止水シート56におけるシート材61同士の接続部分の周辺が目地32の奥側に配置されるようにする。そして、目地32内において、止水シート56をスペーサ部材65に当接する程度に押し込むとともに、止水シート56の上端から下端に向けて徐々に目地32への止水シート56の入り込み寸法が小さくなるように止水シート56の形を整え、止水シート56の入り込み部分57により被覆部58及び案内部59を形成する。
ここで、止水シート56における目地32内に入り込んでいない部分(外壁面材41と下地フレーム42との間に挟み込まれた部分)と、入り込み部分57とで上下方向の長さ寸法を同じにするには、傾斜する案内面59aを有する案内部59により入り込み部分57となる止水シート56の長さ寸法を大きくする必要がある。そこで、止水シート56を目地32内に押し込む際には、目地32の下方においてシート材61の折り返し部分66の折り返し長さを小さくすることで、目地32内に押し込むことのできる止水シート56の長さ寸法を大きくできる。このようにして、止水シート56における目地32内に入り込んでいない部分と、入り込み部分57とで上下方向の長さ寸法を同じにする。
なお、図8(c)においては、止水シート56における部分Aがスペーサ部材65に当接する程度にそのまま押し込んだ部分であり、部分Bが案内部59の案内面59aを形成するために折り返した部分である。
その後、図8(d)に示すように、目地32内の下地フレーム42同士の間にガスケット54を嵌め込み、そのガスケット54の下端部が止水シート56の内側に入り込んだ状態とする。
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
外壁部17の目地32にガスケット54が嵌め込まれているため、雨水等の水が目地32内に浸入することを規制できる。仮に、目地32内においてガスケット54まで水が浸入したとしても、その水はガスケット54に沿って流下し、止水シート56により形成された案内部59により屋外側に排出されるため、ガスケット54の下端から流れ落ちた水が、外壁部17の下方(例えば一階部分13の第一居室15)に浸入することを抑制できる。加えて、止水シート56は外壁面材41と下地フレーム42とで挟持されているため、外壁面材41と下地フレーム42との間にコーキング等の充填材を充填しなくても、外壁面材41と下地フレーム42との間に水が浸入することを規制できる。以上により、目地32において屋内側への水の浸入を好適に抑制することができる。
目地32においては、ガスケット54の屋外側にシーリング材53が嵌め込まれているため、ガスケット54まで水が浸入することをシーリング材53により規制できる。したがって、目地32における防水性能を全体として向上させることができる。
案内部59においては、目地32における案内面59aの屋内側への入り込み寸法が下方に向けて徐々に小さくされているため、ガスケット54の下端から案内面59aの上に流れ落ちた水を、案内面59aに沿って流すことで屋外側に排出することができる。また、止水シートが柔軟性を有しているため、案内部59の形状を、案内面59aの入り込み寸法が下方に向けて徐々に小さくなるように整えることが容易となる。
隣り合う外壁パネル31の各シート材61が接続されることで止水シート56が形成されているため、大梁36等の建物躯体に各外壁パネル31を取り付けた後に、シート材61同士を接続してその接続部分を目地32内に押し込むことで、止水シート56により被覆部58及び案内部59を形成する作業を建築現場において容易に行うことができる。さらに、その後、目地32に対してガスケット54を押し込むという容易な作業を行うことで、ガスケット54の下端部を被覆部58の内側に挿し入れることができる。
目地32において、止水シート56の奥側にはスペーサ部材65が設けられているため、本来は下地フレーム42同士の離間距離を保持するためのスペーサ部材65により、止水シート56を奥側に押し込み過ぎることを抑制できる。この場合、止水シート56を奥側に押し込み過ぎてシート材61同士の接着面61aが剥がれるということを回避できる。しかも、スペーサ部材65においては、下端側の案内側部分65bが上端側の被覆側部分65aよりも目地32の手前側(屋外側)に突出しているため、止水シート56を被覆側部分65a及び案内側部分65bに当接する程度に押し込むことで、止水シート56における案内部59を形成する部分を被覆部58を形成する部分よりも奥側に押し込んでしまうということを抑制できる。
止水シート56の下部には折り返し部分66が設けられているため、止水シート56を目地32内に押し込んで案内部59の形を整える際に、折り返し部分66の折り返し寸法を小さくすることでその折り返し部分66から止水シート56を引き出して目地32内に押し込むことで、止水シート56における目地32内に入り込んだ部分の上下方向の長さ寸法が目地32内に入り込んでいない部分(外壁面材41と下地フレーム42とで挟まれた部分)よりも小さくなることを抑制できる。
しかも、止水シート56の折り返し部分66は屋内側に向けて折り返されているため、折り返し部分66が屋外側に向けて折り返されている場合とは異なり、屋外側から雨水等の水が折り返し部分66の内側に浸入することを阻止できる。
止水シート56における外壁パネル31及び目地32よりも下方にはみ出た部分は、バルコニー床部21から立ち上がっている立ち上がり部33の屋外側の側面に重ねられているため、案内部59の案内面59aに沿って流下してきた水を立ち上がり部33の上端や内部ではなく、立ち上がり部33よりも屋外側(バルコニー床部21側)に排出することができる。
案内部59により案内された水が排出される水排出口34が目地32の下方に配置されているため、水排出口34が上下方向における目地32の中間位置に配置されている場合とは異なり、水排出口34から排出された水が目地32に沿って流れ落ちることがなく、バルコニー床部21の床面に直接流れ出ることになる。したがって、水排出口34から排出された水によりシーリング材53や外壁面材41が汚れることを回避できる。
シート材61は、柔軟性を有している上に薄い部材であるため、工場においてあらかじめ外壁パネル31に取り付けておいても、建築現場までの外壁パネル31の運搬に際してシート材61が支障になることがないと考えられる。これに対して、被覆部58や案内部59を金属製の板材により金属部材として形成した場合は、その金属部材を外壁パネル31に取り付けた状態でその外壁パネル31を運搬するのでは、運搬に際して金属部材が邪魔になると想定される。
[他の実施形態]
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施されてもよい。
(1)上記実施形態では、隣り合う外壁パネル31において、各シート材61のはみ出し寸法L1,L2が異なる大きさとされていたが、図9に示すように、それらはみ出し寸法L1,L2は同じ大きさとされていてもよい。この構成では、各シート材61の接着面61aの幅寸法が目地32の幅寸法よりも小さくされている。この場合、図10に示すように、止水シート56を目地32内に押し込んだ状態では、外壁パネル31の並び方向においてシート材61同士の接続部分が目地32の略中央に配置され、しかも、その接続部分が案内部59の案内面59aを形成することになる。
(2)上記実施形態では、ガスケット54における下端寄りの部分が被覆部58により屋内側から覆われているが、被覆部58は、ガスケット54の上下方向における全体を屋内側から覆っていてもよい。要するに、被覆部58は、少なくともガスケット54の下端部分を屋内側から覆っていれば、ガスケット54の下端部から流れ落ちた水が、被覆部58(止水シート56)の屋内側に浸入することを抑制できる。
(3)上記実施形態では、止水シート56により形成された案内部59が目地32の下端よりも下方にまで延びているが、案内部59は目地32の下端よりも下方にまで延びていなくてもよい。つまり、案内部59により形成される水排出口34が、目地32の上下方向における中間位置に設けられていてもよい。この場合、案内部59の下端部はガスケット54よりも屋外側まで延びていることはもちろんのこと、シーリング材53よりも屋外側まで延びていることが好ましい。また、この場合、止水シート56は、外壁パネル31の下端部(目地32の下端部)よりも下方には延びていないことになる。
(4)上記実施形態では、隣り合う外壁パネル31の各シート材61が、一方のシート材61の先端が他方のシート材61の基端側に配置される状態で接続されているが、それらシート材61は、互いの先端を合わせるように接続されていてもよい。つまり、各シート材61は、接着面61a同士が重ね合わされた状態で接続されていればよい。
(5)上記実施形態では、止水シート56(各シート材61)の折り返し部分66が屋内側に折り返されていたが、屋外側に折り返されていてもよい。また、折り返し部分66は設けられていなくてもよい。この場合でも、止水シート56において、目地32の側方の部分(外壁面材41と下地フレーム42とに挟まれた部分)よりも、目地32に押し込まれる部分の上下方向の長さ寸法が大きくされていることにより、被覆部58及び案内部59を容易に形成することができる。また、止水シート56が伸縮性を有していれば、折り返し部分66を設けることや、止水シート56の中間部分の長さ寸法を他の部分に比べて大きくすることをしなくても、止水シート56を目地32内に押し込む際に伸ばすことで被覆部58及び案内部59を容易に形成することができる。
(6)上記実施形態では、隣り合う外壁パネル31のそれぞれに設けられたシート材61が接続されることで止水シート56が形成されているが、止水シート56は、隣り合う外壁パネル31に架け渡された一枚のシート材61により形成されていてもよい。例えば、隣り合う一対の外壁パネル31をユニット体として工場で製作しておき、その際にそれら外壁パネル31に止水シート56を目地32を跨いで架け渡すように取り付けておく。この場合、止水シート56は、あらかじめ被覆部58及び案内部59を有する形状に成形されていてもよい。
(7)上記実施形態では、ガスケット54よりもシーリング材53の方が下方まで延びているが、シーリング材53よりもガスケット54の方が下方まで延びていてもよい。つまり、シーリング材53が目地32の下端にまで達していなくてもよい。この場合でも、止水シート56が外壁面材41と下地フレーム42とで挟持されているため、シーリング材53の下方において外壁面材41と下地フレーム42との間に水が浸入することを阻止できる。
(8)上記実施形態では、外壁部17の厚み方向において、ガスケット54と止水シート56との間に通気用の隙間が形成されていたが、外壁部17の厚み方向において、ガスケット54と止水シート56との間を通じて通気が行われないようになっていてもよい。例えば、図11に示すように、止水シート56の入り込み部分57の内側空間において、ガスケット54の屋内側面と、入り込み部分57における屋外側を向いた側面とが当接(密着)している構成とする。これにより、屋外から水排出口34を介して入り込みの内側空間に風圧が加えられた際に、吹き上げによるガスケット54よりも屋内側への水の浸入を防止することができる。
また、ガスケット54の屋内側面は入り込み部分57の内周面に対して接着剤や接着テープにより接着されているとなおよい。ちなみに、ガスケット54の屋内側面が入り込み部分57の内周面に対して密着していなくても、入り込み部分57の内周面との隙間が小さければ、ガスケット54の屋内側面と入り込み部分57の内周面とが重なった状態になっていることにより、屋外からガスケット54よりも屋内側への水の浸入を防ぐことができる。
(9)スペーサ部材65においては、案内側部分65bが被覆側部分65aよりも屋外側に突出した形状とされていなくてもよい。例えば、直線的に延びた板材により形成されたスペーサ部材65が、その上端部よりも下端部が屋外側に位置するように設けられていれば、スペーサ部材65において、上端寄りの部分が被覆側部分65aとなり、下端寄りの部分が案内側部分65bとなる。また、案内側部分65bの屋外側面が、案内側部分65bの下端部に近付くにつれて徐々に屋外側にせり出していく構成としてもよい。この構成であれば、止水シート56を案内側部分65bの屋外側面に当接させるという容易な作業により、案内部59を案内面59aが傾斜した形状に整えることができる。
また、被覆側部分65aと案内側部分65bとが1つのスペーサ部材65として一体的に形成されているのではなく、被覆側部分65aを形成するスペーサ部材65と、案内側部分65bを形成するスペーサ部材65とが別々に設けられていてもよい。この場合でも、案内側部分65bを形成するスペーサ部材65が、被覆側部分65aを形成するスペーサ部材65よりも屋外側に配置されていれば、止水シート56により形成された案内部59が被覆部58よりも屋内側に入り込むことを抑制できる。
さらに、目地32において止水シート56の屋内側にスペーサ部材65は設けられていなくてもよい。この場合でも、止水シート56を下地フレーム42に押し込む作業を行う際に、その押し込み量を力加減で調整することにより被覆部58及び案内部59を形成することは可能である。
(10)上記実施形態では、縦フレーム材42aが断面コ字状の軽量溝形鋼により形成されていたが、縦フレーム材42aは、縦フレーム材42aのウェブの外側面のように、目地32と外壁面材41の屋内側空間とを区画する区画面を有していれば、断面L字状などの形状とされていてもよい。
(11)外壁パネル31の下端や下方には水切部材が設けられていてもよい。例えば、外壁パネル31の下方において、立ち上がり部33の屋外側の側面に対して水切部材が取り付けられている構成とする。この構成では、外壁パネル31及び目地32の下方において、水切部材が止水シート56及び壁下シート51の屋外側から防水下地鋼板48に対してビス等により固定されている。
(12)上記実施形態では、止水シート56を用いた目地32についての防水処理が、二階部分14のバルコニー20の外壁部17に適用されているが、この防水処理は、一階部分や屋上部分の外壁部17に適用されてもよい。また、一階部分や屋上部分において、屋外床部を有する屋外開放空間を屋内空間に対して仕切る外壁部17に適用されてもよい。