図1、図2及び図3に、本発明の建物の外壁構造の実施形態の一例を示す。この外壁構造は、壁面を構成する壁下地2と、外壁材10によって形成される外壁部1との間に、空気層として通気空間3が設けられている。なお、図1(a)は、図2のI−I断面図、図1(b)は図1(a)のII−II断面図、図3は図1(a)のIII−III断面図である。
壁下地2は、柱17に取り付けられた複数の面材20によって形成されており、外壁の下地となるものである。柱17の屋内側には適宜の内壁材によって内壁部19が形成されている。この内壁部19よりも屋内側が屋内空間となる。また、壁下地2と内壁部19とに挟まれた柱17、17間には断熱材18が配設されている。壁下地2の屋外側の表面には透湿性の防水シート14が設けられている。透湿性の防水シート14を設けることにより、湿気を適度に外内で通過させることができると共に、雨水などの水が屋内側に浸入することを防ぐことができる。内壁部19の屋外側には、図示の形態のように防湿シート14aを設けてもよい。防湿シート14aを設けることにより、屋内への湿気の侵入を防ぐことができる。なお、柱17としては、断面正方形形状のものと断面矩形状のものが適宜に用いられている。
壁下地2の柱17が配設された部分には、胴縁11が取り付けられている。胴縁11の取り付けは釘やビスなどの固定具13で行うことができる。図示の形態では、縦方向(垂直方向)に延伸する柱17に沿って、長手方向を縦方向にした縦胴縁として胴縁11が取り付けられている。また胴縁11には、外壁材10を取り付けるための外壁材取付金具12が所定の箇所に釘などの固定具13で配設されている。
建物の下部には土台部8が設けられている。土台部8の上側には、柱17などを取り付けるための基礎となる長尺の基台柱16が横方向に亘って設けられている。図示の形態では、基台柱16の上側に、基台柱16と垂直に縦方向に柱17が配設され、面材20は基台柱16と柱17とを覆うようにしてこれらの屋外側表面に配設されている。土台部8の上側における面材20の屋外側表面には、土台水切り9が横方向に亘って設けられている。土台水切り9は、土台水切り9を壁下地2に固定するための固定片9aと、屋外側に向かって突出した水切り片9bと、水切り片9bの先端から下方に垂下する水切り先端片9cとを備えて形成されている。水切り片9bは、屋外側に向かってわずかに下り傾斜しながら、外壁部1よりも突出して形成されている。
本発明において壁面とは、建物の壁を構成する面のことであり壁下地2により構成されるものであるが、概ね土台部8よりも上側でかつ軒天部7よりも下側の面状の、外壁材10を施工する壁下地2の部分である。壁面には、窓や換気口などの開口部30の領域は含まれない。
外壁材10は、壁下地2を覆うように壁面のほぼ全域にわたって壁下地2に取り付けられるものである。具体的には、外壁材10は胴縁11に取り付けられた外壁材取付金具12に係合又は載置されるなどして、壁下地2に取り付けられる。そして、取り付けられた複数の外壁材10によって、外壁部1が建物の外壁の最外層として形成される。いわば外壁部1とは、外壁材10によって形成された壁下地2に平行な層のことである。
外壁部1と壁下地2との間の通気空間3の厚みは、胴縁11の厚みと外壁材取付金具12の突出幅により確保されている。すなわち、胴縁11及び外壁材取付金具12がスペーサとなって通気空間3が形成されている。図示の形態では、胴縁11の屋外側に外壁材取付金具12が突出して設けられているために、胴縁11を挟んで横方向に隣り合う通気空間3、3は外壁材取付金具12が突出することにより形成された隙間によって連通されている。通気空間3が横方向(水平方向)に連通していることにより、横方向への空気の移動が可能となり通気空間3内での横方向の圧力差を小さくすることができる。なお、外壁材取付金具12を胴縁11から突出しないように取り付けるなどして外壁材10を胴縁11に密着させ、通気空間3が胴縁11によって横方向に分断されるように形成してもよい。通気空間3が横方向で分断されている場合、横方向への空気の移動が抑制されて、縦方向に空気を移動しやすくすることができる。
通気空間3の厚みとしては、例えば、20〜23mmに設定することができる。通気空間3の厚みがこの範囲になることにより通気を確実に確保することができる。具体的には、厚さ18mmの胴縁11と、突出幅(働き幅)5mmの外壁材取付金具12とを用いれば、厚み(外壁部1の裏面から壁下地2の表面までの幅)が23mmの通気空間3が形成される。
そして、本発明にあっては、外壁部1には、建物の外部と通気空間3とを連通する連通口4が土台部8の上側に設けられている。そして、連通口4の開口面積は、通気空間3の水平方向での最小断面積の50%以上となっている。それにより、通気空間3と外部との圧力差を小さくして屋内側に風雨が浸入することを防ぐことができ、防水性の高い外壁構造を形成することができるものである。すなわち、外壁部1の実体部である外壁材10によって壁面に向って吹く風を受けることができ、風が外壁部1において遮断される。このとき、屋内側の圧力が外部圧力よりも小さいと、外壁材10の接合部分などの外壁部1に形成された隙間において、外部からの空気の流れを吸い込みやすくなるが、本発明においては、連通口4が設けられていることにより通気空間3と外部との圧力差が小さくなり等圧に近くなるために、空気の流れを吸い込みにくくすることができ、風圧を外壁部1によって遮断することができるのである。ここで、水平方向における通気空間3の最小断面積部分は、通気空間3内で空気が流れる際の律速部分となるものであり、この律速となる最小断面積部分の半分よりも連通口4の開口面積が大きくなることにより、空気の流れを妨げることを防いで圧力差を小さくすることができるものである。そして、通気空間3には風の力がそがれた雨水が浸入するが、この浸入した雨水は重力の作用によって外壁材10の裏面をつたって下方に流下し、下方から外部に排出されるので、屋内側に雨水が浸入することを防ぐことができるのである。また、壁下地2に雨水がかかったとしても壁下地2には防水シート14が貼着されるなどして防水加工が施されており、壁下地2よりも屋内側に雨水が浸入することを防ぐことができるのである。
通気空間3の水平方向での最小断面積とは、図1(a)に示すように、外壁材10と壁下地2との間の、胴縁11と外壁材取付金具12とを除いた領域Tの面積のことである。ただし、外壁材取付金具12は断面積が他に比べて十分小さいので計算上無視してもよい。したがって、領域Tの面積は、通気空間3の幅(外壁材10と壁下地2との間の距離)と、壁面の横方向の長さとを掛け合わせ、壁面に配された胴縁11の断面積を減じたものと略等しい。なお、最小の断面積としたのは、胴縁11が通気空間3内において途中で分断している構造の場合においては、胴縁11がある位置における水平方向の断面積で計算するようにするからである。したがって、通気空間3の水平方向での断面形状が縦方向に亘って同形状である場合は、任意の位置での通気空間3の断面積としてもよい。そして、差圧をより小さくするために、連通口4の開口面積は、通気空間3の水平方向での最小断面積の70%以上であることが好ましい。例えば、連通口4の開口面積は、通気空間3の水平方向での最小断面積と同じ程度にしたり、2倍程度にしたりしてもよい。
通気空間3と外部との圧力差としては、風速20m/sec以下において通気空間3と外部との圧力差(差圧)が50Pa以下となるように通気空間3を形成することが好ましい。なお、風としては、正面風(壁面に垂直な風)と斜面風(上斜め45°から壁面に向って吹き降ろす風)との少なくとも一方、好ましくは両方で、上記の差圧を満たすことが好ましい。建物に対する散水加圧試験としては、JISA1414「建築構成材(パネル)およびその構造部分の性能試験、6.5 水密試験」に準じて行うことができる。
連通口4は、外壁材10が土台部8の上側において部分的に壁下地2を覆わないようにして形成することができる。すなわち、外壁部1の下端に配置した外壁材10は、その下端部が、土台部8や土台水切り9などに接触せずに、開放された空間を垂下しており、それにより、外壁部1の開口が形成されている。この開口によって壁面の下端部に直線状の連通口4が、外壁部1の下端に亘って形成されている。このように、連通口4が土台部8の上側に設けられていることにより、この連通口4から雨水を排出することが可能になり、また、風雨が壁下地2に直接あたる割合を低減することができる。
本形態では、連通口4は直線状に形成されているため、その開口面積は、直線の幅(隙間幅)と直線の長さ(壁面の横方向の距離)とをかけ合せて計算することができる。
連通口4は、壁面の面積に対する連通口4の開口面積が65cm2/m2以上であるように開口が設けられてもよい。すなわち、壁面1m2に対して65cm2以上の開口を設けるものである。したがって、壁面の面積をSm2とした場合に連通口4の面積の合計が65×Scm2以上となっていればよい。
また、連通口4の開口は、間口(壁面の横方向の長さ)1mあたり150cm2以上の面積の開口量であるようにすることも好ましい。開口量がこの範囲になることにより、外部と通気空間3の間における空気の連通を確実に行うことが可能となる。この値を満たすためには、例えば、横方向に直線状に延伸して開口する連通口4の場合、連通口4の上下方向の長さ(隙間幅)を10〜30mm程度、例えば、18mmにすることが好ましい。また、連通口4の上下方向の長さを胴縁11の厚みよりも大きくすることも好ましい。連通口4の上下方向の長さがこのように設定されることにより、差圧の小さい通気空間3を形成するための十分な開口を外壁部1に設けることができる。
連通口4は、図示の形態では、土台水切り9と外壁材10との間に設けられている。すなわち、土台水切り9の水切り片9bが外壁部1よりも屋外側に突出しており、壁面の下端部に配置された外壁材10の下側には、空間をおいて水切り片9bが配置されている。このような構造で土台水切り9を設置することにより、外壁材10の裏面をつたって通気空間3を流下した雨水は土台水切り9の水切り片9b上に落下し、この土台水切り9の表面をつたって外部に排出されるものであり、排出される水を所定の位置に流すことができるものである。また、土台水切り9によって通気空間3の下方が閉塞されるので、下から巻き上がる風雨が通気空間3に吹き込まれることを少なくして通気空間3内に風力が侵入することを防ぐことができるものである。
図1、図2及び図3の形態では、軒天部7の下側に、連通口4よりも小さい面積で、通気空間3と外部とを繋ぐ流気口41が形成されている。すなわち、外壁部1の上端に配置した外壁材10は、その上端部が軒天部7と接触せずに突出しており、それにより、外壁部1の開口が形成されている。そして、この開口によって壁面の上端部に直線状の流気口41が、外壁部1の上端に亘って形成されている。このように、流気口41を形成することにより、外部から通気空間3に流れ込んで再び外部に流出する外気の流れをスムーズにすることができる。
図3に示すように、流気口41の屋外側には、外壁部1から屋外側に所定の距離をおいて流気口41の開口の前面を塞ぐとともに、開口により流気口41を介して通気空間3と外部とを連通させる通気見切り縁15を横方向に亘って設けることが好ましい。通気見切り縁15を設けることにより、軒天部7の下側の開口を目立たなくすることができ、また、流気口41の開口の前面を塞ぐことによって、風雨が壁下地2に直接あたることを低減できる。
通気空間3は、連通口4及び流気口41を介して外部と連通しているために、外気が侵入し通り抜ける空間となる。本形態においては、図3の矢印で示すように、外気は(i)から(ii)の方向に流れる。すなわち、外気は土台部8側に設けられた連通口4から通気空間3内に侵入し、侵入した外気は通気空間3内を上昇し、軒天部7側に設けられた流気口41を通って再び外部に排出される。このとき、通気見切り縁15が軒天部7の下側に設けられていれば、外気の流れ方向を軒天部7から遠ざけることができ、外気をスムーズに流すことができる。また、外気が湿気を含んでいる場合であっても、外気が直接軒天部7にあたることを低減することができる。
流気口4の開口面積の合計は、壁面1m2に対して6.0cm2以下であることが好ましい。流気口4の開口面積がこれよりも大きくなると、開口を塞ぐための通気見切り縁15が大きくなりすぎるおそれがある。また、空気の流れがスムーズにならなくなるおそれもある。
軒天部7における外壁構造としては、図3の他に、図4(a)や(b)の形態も考えられる。これらの形態では、外壁部1の上端部が軒天部7内に侵入しており、外壁部1には外部と通気空間3とを連通するための流気口41が軒天部7の下側に設けられていない。そして、通気空間3は軒天部7の内部において開放されている。
図4(a)の形態では、図示の(ii)の矢印のように、通気空間3内を上昇した外気は軒天部7の内部の空間を通過し、軒天部7に設けられた軒天換気口7aを通って外部に排出される。図4(b)の形態では、図示の(ii)の矢印のように、通気空間3内を上昇した外気は、軒天部7の内部の空間から屋根部21下側の空間をつたって棟方向に流れ、棟側に形成された小屋裏換気口(不図示)から外部に排出される。図4(a)及び(b)の形態では、外気が湿気を含んでいる場合や、外気が通気空間3に存在する水分を吸って流れる場合に、軒天部7などの建物内部に湿気を通すことになるので、これらの形態よりは、図3の形態の方が好ましい。
図1(a)に示すように、建物の外壁においては、一の壁面(例えば図面において下側の壁面)と、他の壁面(例えば図面において右側又は左側の壁面)とによってコーナー部5が形成されるが、外壁構造にあっては、コーナー部5において一の壁面に設けられた通気空間3と他の壁面に設けられた通気空間3とを分断する通気分断部6が設けられていることが好ましい。本形態においては、長尺に形成された気密パッキン6aを縦方向に亘って配置することによって通気分断部6が形成されている。このように通気分断部6によって、壁面毎に通気空間3を区画することにより、一の壁面における通気空間3から他の壁面における通気空間3へ空気が流れるのを防ぐことができ、通気空間3と外部との圧力差を小さくすることができるものである。
このような通気分断部6は、図5に示すように、出隅部5aを形成するコーナー部5にも、入隅部5bを形成するコーナー部5にも、用いることができる。なお、通気分断部6の形成は、これに限られるものでなく、図6(a)及び(b)に示すように、コーナー部5においてそれぞれの壁面を構成する壁下地2に胴縁11を設け、ハット型ジョイナーといったジョイナー部材6bなどを通気分断部6として機能させて胴縁11と外壁部1との隙間を埋めて、通気空間3を分断してもよい。なお、図6の形態では、ジョイナー部材6bの屋外側にシーリング材40が設けられている。また、図6(a)の形態では、出隅部5aには、断面L字形状のコーナー用外壁材10aが配設されている。
ところで、上記の各形態では、複数の面材20を敷き詰めて壁下地2を形成するようにしている。面材20としては合板などの構造用面材を用いることができる。このように、面材20によって壁下地2を形成することにより気密性を確保することができるものである。
ここで、壁下地2の隙間は、理想的には形成されないようにすることが好ましいが、実際の外壁の施工においては、面材20と開口部30との接合部分など、具体的にはサッシ(窓枠)や換気扇といった設備の取り付け部などにおいて、わずかな隙間が形成されてしまうことがある。そこで、通気空間3と外部との圧力差を小さくするためには、壁下地2の隙間をできるだけ少なくし、その合計面積が9cm2/m2以下になるようにすることが好ましい。隙間の合計面積が9cm2/m2よりも大きいと通気空間3から屋内側へ空気が移動して通気空間3と外部との圧力差を小さくすることができなくなるおそれがある。隙間の合計面積は、開口部30などを設けずに合板などの面材20で隙間なく壁一面を覆うことができれば、理論的には0cm2/m2となるが、現場の施工においては3cm2/m2以下であることが現実的である。
開口部30など、屋内外を貫通する開口が設けられる場合は、壁下地2における開口部30の周囲に気密テープを貼着することが好ましい。それにより、気密性を確保することが可能になる。面材20と面材20との突合せ部分にも隙間ができることがあるが、この突合せ部分には、面材20間を架け渡して防水シート14を貼着するようにすれば、気密性を高めることができる。
壁下地2にはエアコン等により、外壁の施工後に、開口が設けられることがある。そこで、外壁施工時における隙間の開口面積の合計は5cm2/m2以下であることが好ましい。隙間の開口面積をこの範囲にすることにより、気密性を確保することがより可能となる。
図7(a)に、外壁構造の他の実施形態の一例を示す。この外壁構造では、連通口4から通気空間3にネズミなどの小動物Pが侵入するのを防止するための侵入防止部50が、土台部8の上側に設けられている。侵入防止部50は、金属板を折り曲げ加工等して得られる金属製のものや、セメント材料を成型して得られる窯業系のものなどで構成することができる。侵入防止部50は、土台部8の上側における壁下地2と外壁材10との間に、通気空間3を封鎖するように通気空間3に配設されている。ただし、侵入防止部50には複数の小孔51が形成されており、それにより通気空間3の通気を妨げないようになっている。このように、侵入防止部50を設けることにより、小動物Pが通気空間3に入り込んで壁下地2などに危害を加えたり、通気空間3から隙間をつたって家屋内に小動物Pが侵入したりすることを防止することができる。
図7(b)に示すように、この侵入防止部50は、釘などの固定具13で固着されて壁下地2に固定される固定部52と、固定部52と結合し屋外側に向かって突出して形成された封鎖部53とを備えている。封鎖部53は、固定部52の下端部から斜め下方に突出する封鎖基片53aと、この封鎖基片53aの先端から折返されて斜め上方に突出する封鎖先片53bとによって構成され、下方に突出する断面略V字状に形成されている。侵入防止部50の複数の小孔51は、封鎖部53、すなわち封鎖基片53aと封鎖先片53bとに設けられている。この小孔51の大きさは、小動物Pが侵入しないような大きさにすることが好ましく、例えば、円形状の場合は直径10mmの円にしたり、スリットの場合は幅5mm×長さ30mmの直線状のスリットにしたりすることができる。あるいは、封鎖部53をメッシュ状に形成して複数の小孔51を設けるようにしてもよい。侵入防止部53に設けられた複数の小孔51の面積の合計は、通気空間3の水平方向での最小断面積の50%以上であることが好ましい。あるいは、小孔51の面積の合計を、通気空間3の水平方向での最小断面積の70%以上にしたり、この最小断面積以上にしたりしてもよい。小孔51の面積の合計を大きくすることにより、通気空間3内の空気の流れをスムーズにすることができる。なお、小孔51の面積の合計は、連通口4の開口面積より小さくても大きくてもよいが、大きい方が空気の流れがスムーズになる。
侵入防止部50は、横方向に長く形成され、その一つ又は複数個が胴縁11、11間に亘って配されて壁下地2に取り付けられており、それにより、小動物Pが入る隙間が封鎖されている。すなわち、胴縁11、11間の通気空間3は侵入防止部50の封鎖部53によって小動物Pの入る隙間が封鎖され、胴縁11の位置においては胴縁11が外壁材10と接近し隙間が小さくなっていることにより小動物Pが入る隙間が封鎖されている。
封鎖部53の屋外側の先端、すなわち封鎖先片53bの先端は、外壁材10の裏面に接していてもよいし接していなくてもよいが、外壁材10の裏面を流れる雨水の流れを妨げないためには裏面に接しないようにすることが好ましい。ただし、封鎖先片53bの先端と外壁材10の裏面との間の距離は、小動物Pが侵入しない程度の長さにすることが好ましい。また、意匠性を損ねないように、封鎖部53の下端部(封鎖基片53aと封鎖先片53bとの境界部分)は、外壁材10の下端よりも上側の位置で配設されることが好ましい。
図8に、侵入防止部50の他の形態を示す。この形態では、侵入防止部50が、土台水切り9に結合して設けられている。侵入防止部50は、水切り片9bの中央部における外壁材10の裏面と同じ位置において上方に突出する突出片として、土台水切り9の横方向に亘って設けられている。このように土台水切り9に侵入防止部50が一体化されていると施工が簡単になる。侵入防止部50は、固定片9a、水切り片9b及び水切り先端片9bと一体的に成形されていてもよく、あるいは、固定片9a、水切り片9b及び水切り先端片9bからなる土台水切り9の本体部に接着等されて固着されていてもよい。そして、侵入防止部50は、外壁部1を構成するうちの下端の外壁材10の下端部と対向するように配設されている。侵入防止部50の先端は、外壁材10の下端部に接していてもよいし接していなくてもよいが、外壁材10の裏面をつたって下方に流れる雨水の流れを妨げないためには接しないようにすることが好ましい。
図8(a)の形態では、侵入防止部50は、胴縁11よりも屋外側において胴縁11を跨いで設けられており、それにより、小動物Pが入る隙間が封鎖されている。すなわち、外壁材10の下端と侵入防止部50の先端との間は、隙間がないか、あるいは小動物Pが侵入できない程度に狭くなっており、横方向に亘って侵入防止部50が形成されているために、小動物Pが入る隙間が封鎖されている。
また、図8(b)に示すように、侵入防止部50には複数の小孔51が形成されており、それにより通気空間3と外部との通気を妨げないようになっている。小孔51の大きさや形状、合計面積は、図7の形態と同様にすることができる。小孔51の面積の合計が大きくなるほど、通気空間3と外部との空気の流れがスムーズになる。
このように、侵入防止部50を設けることにより、小動物Pが通気空間3に入り込んで壁下地2などに危害を加えたり、通気空間3から隙間をつたって家屋内に小動物Pが侵入したりすることを防止することができる。
図9に、壁面の高さの高い外壁構造の形態を示す。このような形態は、二階建て又は三階建て以上の建物に用いられるものである。壁面の高さが高くなると、壁面の面積も必然的に大きくなる。
図9(a)では、土台部8の上側に面積の大きい連通口4を形成し、軒天部7の下側に面積の小さい流気口41を形成している。このように、壁面の面積が大きくなる場合は、通気をよくするために連通口4の面積を大きくしてもよい。例えば、二階建ての場合、開口幅を一階建てで設計される開口幅の2倍程度で、つまり通気空間3の最小断面積と同程度で設けることができる。
図9(b)では、階高の途中(上階部と下階部の境界部分など)に、開口面積が連通口4以下で流気口41以上の階高間隙42が形成されている。階高間隙42は、外壁部1の開口により形成され、外部と通気空間3とを連通させるものである。このように、壁面の高さが高いときに階高間隙42が設けられると、通気空間3と外部との通気を階高間隙42によって補助することが可能となる。そのため、連通口4の開口面積を小さくして連通口4を目立たなくすることができる。連通口4と階高間隙42との距離、及び、階高間隙42と流気口41との距離は、3m以内であることが好ましい。
図9(c)では、上下に隣り合う外壁材10、10間(いわゆる横目地部)に横方向に延伸する隙間として壁材間隙43が設けられている。この壁材間隙43により、外部と通気空間3とが連通されている。この形態では、壁材間隙43によって外部と通気空間3との通気を補助することができ、連通口4の開口面積を小さくして連通口4を目立たなくすることができる。なお、左右に隣り合う外壁材10、10間(いわゆる縦目地部)に隙間を形成して壁材間隙43を設けるようにしてもよい。
図10(a)及び(b)に、階高間隙42が形成された構造の一例を示す。これらの構造は、図9(b)の形態に対応するものであり、階高水切り22によって外壁部1が分断されており、この階高水切り22の上下両側に階高間隙42が設けられている。階高水切り22を用いることにより階高の途中で水切りを行うことができ、また開口を目立たなくすることができる。そして、図示の階高水切り22においては、垂下する階高水切り先端片22aが、階高水切り22の下側に設けられた階高間隙42の開口前面を覆っているので、階高水切り22の下側の階高間隙42に直接風雨が吹き込むようなことを防ぐことができる。
図10(a)では、階高水切り22は胴縁11の屋外側の表面に取り付けられている。この形態では、胴縁11が分断されておらず、縦方向に亘って取り付けられた胴縁11により、建物の強度を補強することができる。また、図10(b)では、階高水切り22は壁下地2の表面に取り付けられており、外壁部1及び胴縁11が上下方向で分断されている。この形態では、各階毎に胴縁11と外壁部1とを形成することが可能となる。図10(a)及び(b)においては、下階部と上階部との境界に屋根部が形成される場合、階高間隙42をこの屋根に隣接して形成すると開口がより目立たなくなるので好ましい。
図10(c)に、壁材間隙43が形成された構造の一例を示す。この形態は、図9(c)の形態に対応するものであり、外壁材10、10間の隙間により壁材間隙43が形成されている。外壁材10、10間の隙間によって壁材間隙43が設けられる場合、開口を分散して目立たなくすることができる。壁材間隙43の幅Lは、適宜に設計することができ、例えば1〜5mm程度、具体的には3mmなどにすることができる。壁材間隙43の幅Lは1.5mm以上であることが好ましい。
図11に、上下に隣り合う外壁材10、10の接合部分の一例を示す。図11の形態では、下側に配設される外壁材10の受け部31の屋外側に、上側に配設される外壁材10の重ね部32が配置されて、外壁部1が形成されている。このような接合構造は、上方に突出する係合部を有する外壁材取付金具12を上下の外壁材10の間に配設し、上側の外壁材10の下端部を外壁材取付金具12の係合部に係合させることにより形成することができる。
図11(a)では、上側の外壁材10の下端部と下側の外壁材10の上端部とが当接しており、隙間が形成されていない。なお、下側の外壁材10の受け部31と、上側の外壁材10の重ね部32との間には外壁材用パッキン33が設けてられていてもよい。
図11(b)は、図10(c)の形態の具体例を示すものである。この形態では、上側の外壁材10の下端部と下側の外壁材10の上端部が当接しておらず、外壁材10、10間で隙間が形成されている。外壁材10、10間に形成される隙間は、外壁材10の重ね合わせ形状に沿って屈曲し、外部と通気空間3とを連通しており、この隙間が壁材間隙43となる。そして、本形態では、通気空間3の開口部分の前方が外壁材10の重ね部32によって覆われている。このように外壁材10の重ね合わせにより開口を覆う場合、壁下地2が外部から見えないようにすることができ、壁材間隙43の開口を目立たなくすることができるとともに、この開口から通気空間3内に直接風雨が入り込むことを防止し、防水性をさらに高めることができるものである。なお、外壁材10、10間に形成される隙間が屈曲して壁材間隙43が形成される場合、隙間の幅が上下方向で最小となる値を幅Lとし、この幅Lが上記の範囲になることが好ましい。隙間の幅が最小となる部分が空気の流れの律速となるからである。
図12に、左右に隣り合う外壁材10、10の接合部分(縦目地部)の一例を示す。上下に重ね合わせて外壁材10を取り付ける場合、一般的には、左右の外壁材10、10間に隙間が発生する。この隙間はシーラーやパッキンなどの閉塞部材によって閉塞することができるが、ノンシーリング工法では、閉塞部材が外面に露出しないようにして閉塞することができる。あるいは、この隙間を壁材間隙43に用いることもできる。図12(a)(b)及び(c)は、外壁材10、10間の隙間が閉塞されている例である。図12(d)及び(e)は、外壁材10、10の隙間が閉塞されずに、外壁材10、10の隙間が壁材間隙43となって、外部と通気空間3とが連通した例である。
図12(a)及び(b)では、鋼板下地材27の表面に設けられた鋼板材26と外壁材10との間に、エプトシーラーなどのシーラー材25を設けることによって、外壁材10の隙間が閉塞され、外部と通気空間3とが分断されている。図12(a)では、側端部の端面が平坦な面となった外壁材10を用い、外壁材10を横方向に突き合せて外壁部1を形成した例を示している。図12(b)では、一方の側端部に横受け部28が形成され、他方の側端部に横重ね部29が形成された外壁材10を用い、横受け部28の屋外側に横重ね部29を重ねて外壁部1を形成した例を示している。図12(b)の場合、壁下地2を隠して隙間を目立ちにくくすることができる。なお、図12(a)及び(b)の形態では、通気空間3が横方向で分断されている。
図12(c)では、外壁材10、10間に、外壁材10、10の隙間の前面を覆う縦目地被覆部23を備えた縦目地被覆材24を配置し、この縦目地被覆部23の裏面と外壁材10の表面との間にシーラー材25を設けて外壁材10、10間の隙間を閉塞している。この形態では、外壁材10の隙間を隠して目立ちにくくすることができる。また、縦目地被覆材24の通気空間3と隣接する部分に、横方向に開口する穴を形成すれば、通気空間3を横方向に亘って連通するように形成することができる。
図12(d)では、外壁材10の隙間の位置での壁下地2に鋼板材26が取り付けられ、外壁材10の側端部の裏面にシーラー材25が設けられているが、鋼板材26とシーラー材25とは接触していない。そのため、外壁材10、10の隙間によって、外部と通気空間3とが連通している。外壁材10、10の隙間の幅Lは、例えば5〜20mm程度、具体的には12mmに設定することができる。
図12(e)では、図12(d)の形態に加えて、外壁材10、10の隙間の前面を覆う縦目地被覆部23を備えた縦目地被覆材24が、外壁材10、10間に配置されている。この形態では、外壁材10の隙間を隠して目立ちにくくすることができる。外壁材10、10の隙間の幅Lは、例えば5〜20mm程度、具体的には12mmに設定することができる。
なお、上記の縦目地構造においてはシーラー材25を用いているが、このシーラー材25は外壁の外表面に露出していないので劣化されにくくすることができるものである。
上記の実施の形態では、胴縁11として、その長手方向を縦方向(垂直方向)に沿って配置した縦胴縁を用いた外壁構造の例を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、長手方向を横方向(水平方向)に沿って配置した横胴縁を用いた外壁構造であってもよい。
図13に、胴縁11の取り付け構造の一例を示す。図13(a)は縦胴縁の例であり、図13(b)は横胴縁の例である。これらの例では、壁面の左下端部に外壁材10を取り付けた様子を示している。図13(a)の例では、矩形状の外壁材10が長手方向を横方向にして配設され、いわゆる横張りで取り付けられている。図13(b)の例では、矩形状の外壁材10が長手方向を縦方向にして配設され、いわゆる縦張りで取り付けられている。
胴縁11は通気空間3内に配置されるため空気の移動を妨げるおそれがある。したがって、空気の流れをスムーズにするために、連通口4は胴縁11の長手方向と垂直な方向に形成されること、すなわち胴縁11と連通口4とが略直交して形成されることが好ましい。したがって、図13(b)のような横胴縁を用いた形態よりも、図13(a)のような縦胴縁を用いた形態の方が好ましい。
なお、上記の実施の形態では、外壁材10を胴縁11を介して壁下地2に取り付けることにより、外壁部1と通気空間3とが形成された形態を示したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、胴縁11を用いずに、通気空間3の厚みを働き幅とする外壁材取付金具12をスペーサとして機能させ、この外壁材取付金具12を壁下地2に取り付けるとともに外壁材取付金具12に外壁材10を取り付けることにより、外壁部1と壁下地2との間に通気空間3を形成してもよい。あるいは、通気空間3の厚みを確保するためのスペーサ部材を用いるようにしてもよい。
本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
(試験例1)
図1、図2及び図3に示すような外壁構造の試験体(家屋)を用い、通気空間3に発生する差圧(外部空間との圧力差)を測定した。試験体には、厚み18mmの胴縁11、突出幅5mmの外壁材取付金具12を使用し、通気空間3の厚みを23mmとした。また、壁面を通気分断部6(気密パッキン6a)によって面毎に区画分けした。また、壁下地2には合板による構造面材を用い、軒天部7の下側には通気見切り縁15を配設した。壁面の寸法は、縦2.4m×横5.4m(面積:13.0m2)とした。通気空間3の最小断面積は0.11m2であった(比較例1を除く)。開口部30は設けなかった。軒天部7の下側(見切部)に、横方向に延伸する直線状の流気口41を設けた。連通口4の形状は、横方向に延伸する直線状とした。その他の仕様は、表1の通りである。
試験体の壁面に対して、風速5m/sec(想定風速20m/secの評価を、設備の制約上、風速5m/secにて計測し、下記換算式により換算することにより行う)にて、正面風(壁面に対し垂直方向の風、水平方向に対する角度0°)、又は、斜面風(壁面に対し斜め方向から吹く風、水平方向に対する角度45°)を当てて、通気空間3と外部との圧力差を壁面の多数箇所において測定し、その最大値に着目した。なお、想定風速20m/secにおける圧力差で評価するために、換算式P=V2×1/2×ρ (P:風圧力、V:風速、ρ:空気密度)を用いて圧力差を求めた。圧力の測定は、バラトロン(日本エム・ケー・エス(株)、220DD−00001A2B)を用い、測定箇所1点につき30秒間300点を平均することにより行った。なお、表1における差圧の平均値は、1面当たり測定箇所48点の平均で求めた。結果を表1に示す。
表1に示すように、連通口4の開口面積が大きい各実施例は、各比較例に比べて差圧が小さくなることが確認された。
(試験例2)
図1、図2及び図3に示すような外壁構造の試験体(家屋)を用い、通気空間3に発生する差圧(外部空間との圧力差)を測定した。試験体には、厚み18mmの胴縁11、突出幅5mmの外壁材取付金具12を使用し、通気空間3の厚みを23mmとした。胴縁11は縦胴縁とし、矩形状の外壁材10を横張りして外壁部1を形成した。また、壁面を通気分断部6(気密パッキン6a)によって面毎に区画分けした。壁面内では区画分けしなかった。また、壁下地2には合板による構造面材を用い、軒天部7の下側には通気見切り縁15を配設した。壁下地2の開口面積は、実際の隙間が9cm2/m2であり、抵抗を計算した有効開口面積が5cm2/m2であった。壁面の寸法は、縦2.4m×横5.4m(面積:13.0m2)とした。通気空間3の最小断面積は0.11m2であった。開口部30は設けなかった。軒天部7の下側(見切部)に、横方向に延伸する直線状の流気口41を設けた。表2に示す一部の例では、外壁材10、10間の隙間(基材部)には壁材間隙43を設けた。連通口4の形状は、横方向に延伸する直線状とした。その他の仕様は、表2の通りである。
試験体の壁面に対して、風速5m/sec(想定風速20m/secの評価を、設備の制約上、風速5m/secにて計測し、下記換算式により換算することにより行う)にて、正面風(壁面に対し垂直方向の風、水平方向に対する角度0°)、又は、斜面風(壁面に対し斜め方向から吹く風、水平方向に対する角度45°)を当てて、通気空間3と外部との圧力差を壁面の多数箇所において測定し、その最大値に着目した。なお、想定風速20m/secにおける圧力差で評価するために、換算式P=V2×1/2×ρ (P:風圧力、V:風速、ρ:空気密度)を用いて圧力差を求めた。圧力の測定は、バラトロン(日本エム・ケー・エス(株)、220DD−00001A2B)を用い、測定箇所1点につき30秒間300点を平均することにより行った。なお、想定風速20m/secにおいて、発生差圧50Pa以下になるためには差圧係数ΔCpが約0.21以下になる必要がある。結果を表2に示す。
表2に示すように、連通口4の開口面積が大きい各実施例は、各比較例に比べて発生差圧ΔPが小さくなることが確認された。