JP5992750B2 - タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、タイヤ用ゴム組成物及びそれを用いて作製した空気入りタイヤに関する。
タイヤ等に使用されるゴム組成物は、ゴム成分と、シリカやカーボンブラックのような充填剤を原料として含んでいる。ゴム成分としては、天然ゴムや石油由来の合成ゴムが使用されている。
天然ゴムは、製造できる地域が限られているため、大幅な増産は見込めず、また、天候不良による不作等の影響も受けるため、今後安定した供給が危ぶまれている。また、石油由来の合成ゴムについても、石油資源枯渇の心配があり、タイヤに使用するゴム成分の低減が求められている。
同様に資源保護の観点から、タイヤの耐久性(例えば、耐オゾン性)に対しても要求が高まっている。さらに、燃料の削減の要求から、より低燃費性に優れたタイヤが望まれている。
このような要求に対して、特許文献1には、古紙類をトレッドやサイドウォールに配合し、製造コスト、低燃費性、操縦安定性を改善した技術が開示されているが、耐オゾン性などの耐久性については詳細に検討されていない。
また、特許文献2には、粉および/または澱粉誘導体、水、可塑剤ならびにクレイからなる澱粉複合体を配合して、ウェットグリップ性能、低燃費性および耐摩耗性に優れ、環境への負荷を抑える技術が開示されているが、やはりゴム組成物の耐久性(耐オゾン性)については詳細に検討されていない。
通常、ゴム組成物には、耐オゾン性の向上のためにワックス成分が配合されている。このワックス成分として、従来から、良好な耐オゾン性が得られるという理由から、石油系ワックスが使用されてきた。しかし、石油系ワックスを使用すると、ゴムが変色(白色化)するという問題があった。また、環境、資源保護の観点から、石油系ワックスを非石油資源(バイオマス)由来のワックスに代替する要求も高まってきている。それに対して、近年、植物由来のワックスを配合する検討も行われているが、耐オゾン性の向上については改善の余地がある。
このように、環境に優しいバイオマス素材を配合しつつ、低燃費性、耐オゾン性等の耐久性を向上しながら、ゴムの使用量も低減させる技術の開発が望まれている。
特開2006−306955号公報 特開2006−306965号公報
本発明は、上記課題を解決し、良好な耐摩耗性を維持しつつ、耐オゾン性、低燃費性を向上できるとともに白色化も防止でき、さらに、石油資源やゴム成分の使用量を少なくすることができ、原料の確保も容易なタイヤ用ゴム組成物、及び該ゴム組成物を用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
本発明は、ゴム成分及び微細藻類の乾燥物を含有するタイヤ用ゴム組成物に関する。
上記微細藻類が、Euglenophyceae網に属する微細藻類であることが好ましい。
上記微細藻類が、ユーグレナ属に属する微細藻類であることが好ましい。
上記微細藻類が、好気性条件で培養した後、嫌気性条件で培養されたものであることが好ましい。
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤに関する。
本発明によれば、ゴム成分及び微細藻類の乾燥物を含有するタイヤ用ゴム組成物であるので、良好な耐摩耗性を維持しつつ、耐オゾン性、低燃費性を向上できるとともに白色化も防止できる。また、環境に優しいバイオマス素材である微細藻類の乾燥物をワックスとして使用するため、石油資源の使用量を少なくすることができ、環境へ配慮できる。また、微細藻類の乾燥物は、フィラーとして使用することができるため、微細藻類の乾燥物を配合することにより上記性能の改善効果とともに増量効果も得られ、ゴム組成物に占めるゴム成分の割合を低減でき、結果として、ゴム成分の使用量を少なくすることができる。さらに、様々な微細藻類が池、湖沼、汽水域、海水中などに生息しており、また、様々な微細藻類の工業的規模での培養も盛んに行われているため、原料の確保も容易である。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ゴム成分及び微細藻類の乾燥物を含有する。
本発明では、池、湖沼、汽水域、海水中などに存在する微細藻類を用いて、工業的規模の培養槽、湖沼、池などを利用して安価・容易かつ大量に得られる微細藻類の乾燥物を使用しており、植物由来のワックスと比べてコストや入手性の面からも有利である。更に、植物由来のワックスに比べて、耐オゾン性に優れている。
本発明で使用できるゴム成分としては、特に限定されず、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、ジエン系合成ゴム(イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)など)等が使用される。ゴム成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、タイヤの各部材において必要な性能を容易に確保できるという理由から、ジエン系ゴムが好ましく、良好な耐摩耗性、低燃費性が得られるという理由から、NR、BRがより好ましい。
BRとしては特に限定されず、例えば、日本ゼオン(株)製のBR1220、宇部興産(株)製のBR130B、BR150B等の高シス含有量のBR、宇部興産(株)製のVCR412、VCR617等のシンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR等を使用できる。なかでも、耐摩耗性が良好であるという理由から、BRのシス含量は90質量%以上が好ましい。
BRを含有する場合、ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。10質量%未満であると、耐摩耗性が低下する傾向がある。該BRの含有量は、好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。70質量%を超えると、低燃費性が悪化するおそれがある。
NRとしては特に限定されず、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
NRを含有する場合、ゴム成分100質量%中のNRの含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上である。30質量%未満であると、低燃費性が悪化する傾向がある。該NRの含有量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。90質量%を超えると、耐摩耗性が低下する傾向がある。
本発明では、微細藻類の乾燥物が使用される。
微細藻類としては、体内の栄養分の一部を炭化水素(脂肪族系炭化水素)に変換する性質を有する藻類であれば特に限定されず、二酸化炭素を資化できる藻類が好ましい。
脂肪族系炭化水素としては、微細藻類が産生する脂肪族系炭化水素であれば特に限定されず、例えば、n−ヘプタデセン等の炭素数が15〜50の飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素;n−エイコサジエン等の炭素数が15〜50の飽和又は不飽和の脂肪酸;ラウリン酸メチル、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸メチル等の炭素数が15〜50の飽和又は不飽和の脂肪酸エステル等が挙げられる。なかでも、炭素数が15〜50(好ましくは炭素数が15〜40)の飽和又は不飽和の脂肪酸エステル(特に、(高級)脂肪酸と(高級)脂肪族アルコールとのエステル)が好ましい。
微細藻類の具体例としては、Euglenophyceae網に属する微細藻類、クロレラ(Chlorella)属に属する微細藻類、イカダモ(Scenedesmus)属に属する微細藻類、デスモデスムス(Desmodesmus)属に属する微細藻類、スピルリナ(Spirulina)属に属する微細藻類、アルスロスピラ(オルソスピラ)(Arthrospira)属に属する微細藻類、ボツリオコッカス(Botryococcus)属に属する微細藻類(特に、ボツリオコッカス・ブラウニー(Botryococcus braunii))、シュードコリシスチス(Pseudochoricystis)属に属する微細藻類(特にシュードコリシスチスエリプソイディア(Pseudochoricystis ellipsoidea))等が挙げられる。これらの微細藻類は、ワックス(脂肪族系炭化水素)を生合成できることが知られている。なかでも、ワックスの生産性の観点からEuglenophyceae網に属する微細藻類が好ましい。
Euglenophyceae網に属する微細藻類としては、例えば、ユーグレナ(Euglena)属、アスタシア属、カウキネア属、トックリヒゲムシ属、ペラネマ属、ウチワヒゲムシ属、レボキンクリス属、ストロンボモナス属に属する微細藻類等が挙げられる。なかでも、ユーグレナ属に属する微細藻類が好ましい。
これは、ユーグレナ属に属する微細藻類は、培養が容易な上、好気性条件下で培養すると、炭水化物としてパラミロンを細胞内に蓄積し、その後、嫌気性条件下で培養することにより、蓄積されたパラミロンが分解されてワックス((高級)脂肪酸と(高級)脂肪族アルコールとのエステル)が生成することが知られており(特開昭59−118090号公報)、更に、本発明者らが該ワックスを細胞内に含有する微細藻類を乾燥し、タイヤ用ゴム組成物に配合することにより、本発明の効果が好適に得られ、タイヤ用ゴム組成物に耐オゾン性の向上を目的として配合されるワックスとして、更には充填剤としても当該乾燥物を好適に使用可能である(すなわち、当該乾燥物が充填剤とワックスの効果を併せ持つ配合剤である)ことを見出したからである。
また、ユーグレナ属に属する微細藻類は、培養条件によっては、乾燥菌体質量の50質量%にも達する極めて高い生産効率でワックス((高級)脂肪酸と(高級)脂肪族アルコールとのエステル)を生産することが知られており(特開昭59−118090号公報)、生産効率の点でも、他の天然由来ワックス類と比較して優れている。
ユーグレナ属に属する微細藻類は、動物学ではミドリムシ目、植物学ではEuglenophyceae網、ミドリムシ目に属する鞭毛虫の一群であり、池や沼等の天然水系に自然に生息している採取、培養が容易なものである。代表的なものとして、ユーグレナ・グラシリス・Z株、ユーグレナ・グラシリス・バシラリス変株、ユーグレナ・ビリディス、アスタシア・ロンガ等が挙げられるが、これらに限定されるものでなく、また公知の方法で処理した各種変異株も使用することができる。
ユーグレナ属に属する微細藻類は、天然のものを採取してもよく、また培養したものでもよい。
また、上記のようにユーグレナ属に属する微細藻類は、天然に存在し、培養容易な上、高効率でワックスを生産し、ユーグレナ属に属する微細藻類の乾燥物をそのまま充填剤とワックスの効果を併せ持つ配合剤として利用することができ、枯渇の心配も無く、環境にも優しいタイヤ製造が可能となる。
微細藻類の培養には、各種微生物を培養する公知の方法が適用できる。具体的には、炭素源、窒素源、無機塩、ビタミン類を適量加えた培地であれば良く、公知のものとしては、コーレン・ハットナー培地(Korren and Hutner,J.Protozool.14,Supple.17(1967))、ハットナー培地(Hutner,J.Protozool,6,23(1959))、クレマー・マイヤー培地(Cramer and Myers,Arch.Mikrobiol,17,384,(1952))等が挙げられるが、この限りではない。
また微細藻類の培養に関しては、公知の方法、例えば、北岡らの成書(「ユーグレナ」北岡正三郎編、学会出版センター(1989年))や、化学と工業(谷口道子、化学と工業、52巻、262頁(1999))などに詳しくまとめられている方法に基づいて行うことができる。また、上記微細藻類のなかでも、ユーグレナ属、クロレラ属、スピルリナ属、アルスロスピラ属に属する微細藻類等は、既に工業的規模で培養されている。
炭素源としては、グルコース、澱粉水解物、糖蜜、グルタミン酸、酢酸、エタノールなどが好ましく、2種類以上を組み合わせて用いてもかまわない。
窒素源としては、アンモニア、アンモニウム塩、グルタミン酸、アスバラギン酸などが好ましく、2種類以上を組み合わせて用いてもかまわない。また前記炭素源と窒素源の質量比(C/N)は4〜30が好ましい。
無機塩としては、カルシウム、マグネシウム、マンガン、鉄類を含む無機塩を組み合わせることが望ましい。
ビタミン類としては、ビタミンB、ビタミンB12、ビタミンB16等を組み合わせて加えることが好ましい。
培養温度は20℃〜35℃が好ましく、27℃〜33℃がより好ましい。20℃未満でも35℃を超えても培養は可能であるが、成長が遅くなりワックスの生成効率が悪くなる傾向がある。
培養は、暗所で行っても明所で行ってもよい。すなわち、光照射を行ってもよく、暗黒下や、室内光下でもよい。
液体又は懸濁液で培養する際には、適度の振とう、若しくは攪拌を行うことが望ましい。また、培養は好気性条件下で行うことが望ましく、通気は、培養液1リットル、1分間あたり0.4〜2リットルが、生育上望ましい。
また、特開昭59−118090号公報に記載のように、パラミロンのワックスへの変換を促進するため、ユーグレナ属に属する微細藻類を好気性条件下で一定期間培養してパラミロンを細胞内に蓄積した後、嫌気性条件下に移行させて培養し、ワックス((高級)脂肪酸と(高級)脂肪族アルコールとのエステル)を生成させることが望ましい。この場合、4日〜7日間好気性条件下で培養し、成長の定常期に達したところで、嫌気性条件下に変換して1〜3日間培養することが望ましい。これにより、多量のワックスを微細藻類の細胞内に効率良く生成でき、より良好な耐オゾン性が得られる。
嫌気性条件下に変換する方法としては、例えば、好気性条件下で培養した細胞を遠心分離等で集めた後、リン酸緩衝液等の溶液に懸濁し、窒素ガスを通気する方法等が挙げられる。
また、ワックス((高級)脂肪酸と(高級)脂肪族アルコールとのエステル)は、構成する脂肪酸、脂肪族アルコールの炭素数が小さいほど、また不飽和度が大きいほど低い融点を示す傾向がある。そのため、特開昭61−254193号公報に記載のように、微細藻類の培養の際に、脂肪酸を添加することによって、生成するワックスの融点を目的に応じて制御することができる。
従って、上記添加物とは別に、特定の組成のワックス(例えば、特定の炭素数を有するワックスや特定数の不飽和結合を有するワックス)を生成させる目的で、脂肪酸を添加しても構わない。脂肪酸を添加するタイミングとしては、特に限定されない。ただし、本発明のように、得られたワックスを耐オゾン性の向上を目的としてタイヤ用ゴム組成物に配合する場合、ユーグレナ属に属する微細藻類を通常の培地(脂肪酸が添加されていない培地)で培養することにより、不飽和結合が少ないワックス(25℃で固形状の脂肪酸エステル)が生成するため、培養液に、脂肪酸を添加しないことが好ましい。
脂肪酸の炭素数としては、生成するワックス(例えば、脂肪酸エステル)の望ましい融点を考慮すると、8〜40が好ましく、10〜20がより好ましい。
上記脂肪酸としては、特に限定されず、例えば、ミリストレイン酸、パルミトレインン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、ガドレイン酸、ゴンドイン酸、セトレイン酸、エルカ酸等の不飽和脂肪酸;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
自然界から採取した微細藻類及び/又は培養した微細藻類から、微細藻類の乾燥物を得る方法としては、公知のいずれの方法を用いても構わない。例えば、採取液、培養液をろ過、及び/又は遠心分離することにより細胞を集め、そのまま乾燥すればよい。また、耐オゾン性の向上効果がより好適に得られるという理由から、細胞を超音波等で破砕した後、乾燥することが好ましく、細胞を超音波等で破砕した後、遠心分離等により細胞等を集めた後、乾燥することがより好ましい。
乾燥は、減圧乾燥、熱風乾燥、ドラム乾燥、フィルタープレス、熱板乾燥、凍結乾燥等の公知の手段を用いて行うことができる。乾燥条件も特に限定されないが、例えば、乾燥温度0〜250℃、乾燥時間0.5〜5日間または凍結乾燥が好適である。
微細藻類の乾燥物中の水分量は特に限定されないが、生成するゴム組成物の物性安定の観点からは、乾燥物の水分含有率は好ましくは1〜40質量%、より好ましくは1〜30質量%、更に好ましくは1〜20質量%である。40質量%を超えると、生成するゴム組成物の強度が不十分になる傾向があり、1質量%未満であると乾燥が困難となり、過度に乾燥処理を行うことにより、細胞内に含まれるワックス成分が変質して耐オゾン性が損なわれるおそれがある。
なお、乾燥物の水分含有率は、実施例に記載の方法により測定できる。
前記微細藻類の乾燥物は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1〜100質量部、より好ましくは2〜30質量部、更に好ましくは2〜20質量部である。1質量部未満であると、充分な耐オゾン性、低燃費性が得られず、本発明の効果が好適に得られない傾向があり、100質量部を超えると、ゴム剛性、耐摩耗性が低下する傾向がある。
本発明のゴム組成物は、微細藻類の乾燥物以外にも充填剤を含むことが好ましい。充填剤としては、タイヤにおいて公知に使用されているものであれば、限定無く使用できる。前記充填剤としては、特に限定されず、例えば、シリカ、カーボンブラック、水酸化アルミニウム、クレー、炭酸カルシウム、モンモリロナイト、セルロース、ガラスバルーン、各種短繊維等が挙げられる。前記充填剤としては、シリカ、カーボンブラック、水酸化アルミニウムがタイヤ物性の面で、特に好ましい。これらは、単独で用いても、2種以上を併用しても構わない。
上記充填剤の含有量は、ゴム100質量部に対して、好ましくは10〜200質量部、より好ましくは20〜180質量部、更に好ましくは30〜150質量部である。10質量部未満であると、ゴム組成物の強度が不十分であり、200質量部を超えると、充填剤がゴムに充分に分散せず、ゴム物性が低下する傾向がある。
上記充填剤のなかでも、シリカを含むことが、タイヤの低燃費性向上の上で、特に好ましい。シリカとしては、特に制限はなく、湿式法または乾式法により調製されたものを用いることができる。
シリカのBET法によるチッ素吸着比表面積(NSA)は、50m/g以上が好ましく、100m/g以上がより好ましい。50m/g未満では、ゴム強度が低下する傾向がある。また、シリカのBET法によるチッ素吸着比表面積は250m/g以下が好ましく、200m/g以下がより好ましい。250m/gを超えると、加工性が悪化する傾向にある。なお、シリカのBET法によるチッ素吸着比表面積は、ASTM D3037−81に準拠した方法により測定することができる。
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは15質量部以上である。該シリカの含有量は、好ましくは200質量部以下、より好ましくは150質量部以下、さらに好ましくは100質量部以下、特に好ましくは70質量部以下、最も好ましくは50質量部以下である。上記範囲内にすることにより、良好な低燃費性が得られるとともに、補強効果も得られ、良好な耐摩耗性も得られる。
シリカを含有する場合、シリカと共にシランカップリング剤を配合することが好ましい。シランカップリング剤としては、ゴム工業において、従来からシリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができ、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド系、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシランなどのビニル系、3−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ系、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランのグリシドキシ系、3−ニトロプロピルトリメトキシシランなどのニトロ系、3−クロロプロピルトリメトキシシランなどのクロロ系等が挙げられる。なかでも、スルフィド系が好ましく、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドがより好ましい。なお、シランカップリング剤の配合量は、シリカ100質量部に対して、2〜15質量部が好ましい。
本発明では、カーボンブラックを配合することが好ましい。これにより、より良好な耐摩耗性が得られ、本発明の効果がより好適に得られる。
カーボンブラックのチッ素吸着比表面積(NSA)は5m/g以上が好ましく、15m/g以上がより好ましい。5m/g未満では、充分な補強性が得られず、充分な耐摩耗性が得られないおそれがある。該NSAは、100m/g以下が好ましく、70m/g以下がより好ましく、50m/g以下がさらに好ましい。100m/gを超えると、分散させるのが困難となり、低燃費性、加工性が悪化する傾向がある。
なお、カーボンブラックのNSAは、JIS K 6217−2:2001によって求められる。
カーボンブラックを含有する場合、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して1〜50質量部であることが好ましく、5〜25質量部であることがより好ましい。カーボンブラックの含有量が上記範囲内であると、本発明の効果がより好適に得られる。
微細藻類の乾燥物、シリカ、及びカーボンブラックの合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10〜100質量部、より好ましくは20〜80質量部、さらに好ましくは30〜70質量部である。該合計含有量が上記範囲内であると、本発明の効果がより好適に得られる。
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、ゴム組成物の製造に一般に使用される配合剤、例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸、加工助剤、各種老化防止剤、ワックス、粘着付与剤、硫黄などの加硫剤、加硫促進剤などを適宜配合できる。
本発明のゴム組成物は、一般的な方法で製造される。すなわち、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどで前記各成分を混練りし、その後加硫する方法等により製造できる。該ゴム組成物は、タイヤの各部材に使用でき、なかでも、トレッドやサイドウォールなどのタイヤ表面に位置し、耐オゾン性が求められる部材に好適に使用できる。
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。
すなわち、前記成分を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でサイドウォールなどの各タイヤ部材の形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤを得る。
本発明の空気入りタイヤは、乗用車用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、二輪車用タイヤ、高性能タイヤ等として用いられる。なお、本明細書における高性能タイヤとは、グリップ性能に特に優れたタイヤであり、競技車両に使用する競技用タイヤをも含む概念である。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
(製造例1(ユーグレナ培養例1))
ユーグレナ・グラシリス・Z株の野生株を、1%グルコースを炭素源とするコーレン・ハットナー培地300mlに接種し、25℃、初期pH3.5で1分間に120回振とう、培養液1リットル、1分間当たり0.5リットルの空気通気下、2000ルックスの光照射下で、6日間培養した。
その後、超音波処理で細胞を破断し、遠心分離にて菌体を採取した後、減圧乾燥機中、40℃で4日間乾燥し、微細藻類乾燥物1を3.6g得た。
(製造例2(ユーグレナ培養例2))
製造例1と同様に6日間培養を行った。その後、遠心分離により培養細胞を採取し、pH6.8のリン酸緩衝液100mlに懸濁し、1分間あたり20mlの窒素ガス通気下、室内光下、上記同様の振とう条件で2日間培養した。培養後、製造例1と同様に処理して、微細藻類乾燥物2を4.1g得た。
(微細藻類の乾燥物の水分含有率の測定)
なお、微細藻類の乾燥物(微細藻類乾燥物1、2)の水分含有率は、カールフィッシャー法により測定した。測定した結果、微細藻類乾燥物1、2の水分含有率は、それぞれ8質量%、9質量%であった。
これら得られた乾燥物を用いてゴム組成物を作製し、物性評価を行った。以下に、実施例および比較例で使用した薬品をまとめて示す。
天然ゴム(NR):RSS#3
ポリブタジエンゴム(BR):宇部興産(株)製のUBEPOL BR150B(シス含量97質量%、ML1+4(100℃)40、Mw/Mn3.3)
シリカ:EVONIK−DEGUSSA社製のウルトラジルVN3(NSA:175m/g)
カーボンブラック:新日化カーボン(株)製のニテロン#55S(NSA:28m/g)
シランカップリング剤:EVONIK−DEGUSSA社製のSi69(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
石油系ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース0355
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N−フェニル−p−フェニレンジアミン)
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「桐」
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製酸化亜鉛2種
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
<実施例及び比較例>
表1の配合処方にしたがい、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄および加硫促進剤以外の薬品を充填率が58%になるように充填し、80rpmで140℃に到達するまで混練りして混練り物を得た。
次に、オープンロールを用いて、得られた混練り物に硫黄および加硫促進剤を添加して混練りし、未加硫ゴム組成物を得た。さらに、得られた未加硫ゴム組成物を所定のサイズに成形し、150℃の条件下で20分間プレス加硫することにより加硫ゴム組成物を得、約2mm×130mm×130mmの加硫ゴムスラブシートを作成し、試験用サンプルとした。
得られた加硫ゴムスラブシートについて、以下の評価を行った。結果を表1に示した。
(粘弾性試験)
(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメーターVESを用いて、温度70℃、初期歪10%、動歪2%および周波数10Hzの条件下で加硫ゴムスラブシートの損失正接(tanδ)を測定し、比較例1の転がり抵抗指数を100とし、下記計算式により、転がり抵抗を指数表示した。転がり抵抗指数が大きいほど、転がり抵抗が低減され、好ましいことを示す。
(転がり抵抗指数)=(比較例1のtanδ)/(各配合のtanδ)×100
(耐オゾン性試験)
JIS K 6259「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−耐オゾン性の求め方」に基づき、オゾン濃度50±5pphm、温度25℃、伸張歪20±2%の条件下で、48時間試験した後の亀裂の状態を観察することで、耐オゾン性を評価した。なお、評価方法は、JISに記載の方式に従い、亀裂の数と大きさを表した。アルファベット(A、B及びC)は、Aが亀裂の数が少なく、Cが亀裂の数が大きいことを示し、数字(1〜5)は、大きいほど、亀裂の大きさが大きいことを示し、「クラック無」は、クラックが発生しなかったことを示す。破断は、試験ゴム片が大きく損傷したことを示す。
(屋外暴露試験:白色化)
試験用ゴム片を、屋外(神戸市内)に3ヶ月間放置し、その後の変色度合いを目視で評価した。
○:変色なし △:わずかに白色化 ×:激しく白色化
(耐摩耗性)
(株)岩本製作所製のランボーン摩耗試験機を用い、表面回転速度50m/分、付加荷重3.0kg、落砂量15g/分でスリップ率20%にて各加硫ゴムスラブシートの摩耗量を測定し、それらの摩耗量の逆数をとった。そして、比較例1の摩耗量の逆数を100とし、そのほかの摩耗量の逆数を指数で表した。指数が大きいほど、耐摩耗性に優れることを示す。なお、指数が95以上の場合に、良好であると判断した。
Figure 0005992750
ワックスを配合していない比較例1では、耐オゾン性が非常に低かった。また、石油系ワックスを配合した比較例2、3では、耐オゾン性は改善されたものの、低燃費性が悪化し、変色(白色化)も見られた。これに対し、微細藻類の乾燥物を配合した実施例では、良好な耐摩耗性を維持しつつ、耐オゾン性、低燃費性を向上できるとともに白色化も防止できた。また、環境に優しいバイオマス素材である微細藻類の乾燥物をワックスとして使用するため、石油資源の使用量を少なくすることができ、環境へ配慮できる。また、微細藻類の乾燥物は、フィラーとして使用することができるため、微細藻類の乾燥物を配合することにより上記性能の改善効果とともに増量効果も得られ、ゴム組成物に占めるゴム成分の割合を低減でき、結果として、ゴム成分の使用量を少なくすることができた。

Claims (6)

  1. ゴム成分及びワックスを細胞内に含有する微細藻類の乾燥物を含有するタイヤ用ゴム組成物。
  2. 前記微細藻類が、Euglenophyceae網に属する微細藻類である請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
  3. 前記微細藻類が、ユーグレナ属に属する微細藻類である請求項1又は2記載のタイヤ用ゴム組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物を製造する方法であって、
    細藻類好気性条件で培養した後、嫌気性条件で培養する工程を含むタイヤ用ゴム組成物の製造方法
  5. 請求項1〜のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤ。
  6. 請求項4に記載のタイヤ用ゴム組成物の製造方法により得られるゴム組成物を用いて空気入りタイヤを製造する空気入りタイヤの製造方法。
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