JP5991217B2 - 溶接継ぎ手の製造方法および溶接継ぎ手の製造装置 - Google Patents

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Description

本発明は、溶接継ぎ手の製造方法および溶接継ぎ手の製造装置に関し、特に、溶接金属と母材鋼板との硬さの差が小さく、優れた成形加工性を有する溶接継ぎ手の製造方法に関する。
テーラードウェルデッドブランク材は、従来から、自動車のドアアウターやボディサイドパネルなど、車両の外板部材に用いられている。テーラードウェルデッドブランク材は、板厚や種類の異なる複数の母材鋼板を溶接して1枚としたものであり、部分的に材料特性の異なるものである。所定の材料特性を有する領域が適切に配置されているテーラードウェルデッドブランク材を車両の内外板部材に用いることにより、車体の軽量化および高強度化を図ることができる。
また、従来、高張力鋼板のレーザ溶接方法において、溶接金属の硬さを低減して成形性の良好な溶接部を形成する技術として、溶接レーザビームが通過して1秒以上経過した後に、溶接金属を含む部分を局所加熱する熱処理方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の技術では、溶接金属を含む部分を局所加熱することにより、硬度が高くなった溶接金属が焼き戻されるので、溶接部の伸びが改善される。
特開2004−209497号公報
従来のテーラードウェルデッドブランク材では、複数の母材鋼板を溶接してなる溶接継ぎ手部分における溶接金属の硬さが、母材鋼板と比較して高いため、母材鋼板と比較して成形加工性が低いことが問題となっている。
具体的には、例えば、車両の外板部材に用いられるテーラードウェルデッドブランク材に、プレス成形加工などの成形加工を行って歪を付与した場合に、溶接金属の硬さが高いため、溶接金属の表面が母材鋼板の表面の位置から盛り上がってしまうことがあった。溶接金属の盛り上がった高さが高くて、表面を塗装しても十分に隠蔽できない場合には、車両の外板部材として使用するための所定の外観を得ることは困難となる。
この問題を解決する方法としては、溶接金属を含む部分を局所加熱する熱処理を行って、溶接金属の硬さを低減することが考えられる。しかし、溶接金属を含む部分を局所加熱する場合、熱処理を行うための装置が必要であるし、手間がかかるという不都合があった。
このため、複数の母材鋼板を溶接してなる溶接継ぎ手において、熱処理を行うことなく、溶接金属と母材鋼板との硬さの差の小さくすることが要求されていた。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、溶接金属を含む部分を熱処理することなく、溶接金属と母材鋼板との硬さの差が小さく、優れた成形加工性を有する溶接継ぎ手が得られる溶接継ぎ手の製造方法および溶接継ぎ手の製造装置を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するために、溶接継ぎ手の溶接金属のミクロ組織に着目して鋭意検討を重ねた。その結果、溶接継ぎ手の溶接金属が、粒径30〜150μmのフェライトを50%以上含むものである場合、軟らかく延性に優れた組織であるフェライトによって、溶接金属の硬さと母材鋼板の硬さとの差が十分に小さい溶接継ぎ手となることを見出した。
粒径30〜150μmのフェライトを50%以上含む溶接金属を得る方法としては、溶接金属の冷却速度を遅くして、粒径30〜150μmのフェライトの生成を促進させることが考えられる。溶接金属の冷却速度を遅くするには、溶接速度を遅くすればよい。しかし、溶接速度を遅くすると生産性が低下してしまう。
そこで、本発明者は、十分な溶接速度を確保しつつ、溶接金属の冷却速度を遅くする方法について検討した。
その結果、溶接手段に備えられる光源としてダイレクトダイオードレーザーを用い、ダイレクトダイオードレーザーの集光ビームの形状を溶接方向に十分に長いものとすればよいことを見出した。そして、集光ビームの溶接方向長さと溶接直交方向長さとのアスペクト比(溶接方向/溶接直交方向)が2.5以上であって下記式(1)を満たす場合、0.5m/分以上の十分に速い溶接速度で溶接しても、粒径30〜150μmのフェライトを50%以上含み、母材鋼板との硬さの差が小さい溶接継ぎ手の溶接金属が得られることを確認し、本発明を想到した。本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1] 複数の母材鋼板を溶接してなる溶接継ぎ手の製造方法であって、光源としてダイレクトダイオードレーザーを用いて0.5m/分以上の溶接速度で溶接する溶接工程を有し、前記ダイレクトダイオードレーザーとして、ピーク強度の半値幅における集光ビームの形状が溶接方向に長く、前記集光ビームの溶接方向長さと溶接直交方向長さとのアスペクト比(溶接方向/溶接直交方向)が2.5以上であって下記式(1)を満たすものを用い、前記溶接工程において、粒径30〜150μmのフェライトを50%以上含む溶接金属を形成することを特徴とする溶接継ぎ手の製造方法。
アスペクト比≧5.0×溶接速度(m/分) ・・・式(1)
[2] 所定のひずみ比で加工される溶接継ぎ手の製造方法であって、前記ダイレクトダイオードレーザーとして,前記アスペクト比が下記式(2)を満たすものを用い,前記溶接工程において,前記粒径30〜150μmのフェライトの含有量が下記式(3)を満たす溶接金属を形成することを特徴とする[1]に記載の溶接継ぎ手の製造方法。
アスペクト比≧(5.8+1.6×ひずみ比)×溶接速度(m/分) ・・・式(2)
フェライト含有量≧53+6×ひずみ比 ・・・式(3)
[3] 前記ダイレクトダイオードレーザーとして、前記アスペクト比が下記式(4)を満たすものを用い、前記溶接工程において、前記フェライトの最大粒径が350μm以下である前記溶接金属を形成することを特徴とする[1]または[2]に記載の溶接継ぎ手の製造方法。
アスペクト比≦16.0×溶接速度(m/分)−3.0 ・・・式(4)
[4] 前記ダイレクトダイオードレーザーの平均パワー密度を0.6kW/mm以下とすることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の溶接継ぎ手の製造方法。
[5] [1]〜[4]のいずれかに記載の溶接継ぎ手の製造方法に使用される溶接継ぎ手の製造装置であって、0.5m/分以上の溶接速度で溶接する溶接手段を有し、
前記溶接手段が、光源としてピーク強度の半値幅における集光ビームの形状が溶接方向に長く、前記集光ビームの溶接方向長さと溶接直交方向長さとのアスペクト比(溶接方向/溶接直交方向)が2.5以上であって下記式(1)を満たすダイレクトダイオードレーザーを備えることを特徴とする溶接継ぎ手の製造装置。
アスペクト比≧5.0×溶接速度(m/分) ・・・式(1)
本発明の溶接継ぎ手の製造方法では、光源としてダイレクトダイオードレーザーを用いて0.5m/分以上の溶接速度で前記鋼板を溶接する溶接工程を有し、前記ダイレクトダイオードレーザーとして、ピーク強度の半値幅における集光ビームの形状が所定の形状であるものを用い、前記溶接工程において、粒径30〜150μmのフェライトを50%以上含む溶接金属を形成するので、溶接金属を含む部分を熱処理する工程を行うことなく、溶接金属と母材鋼板との硬さの差が小さく、優れた成形加工性を有する溶接継ぎ手が得られる。
したがって、本発明の製造方法を用いて得られた溶接継ぎ手は、成形加工により歪を付与した場合であっても、溶接金属の表面が母材鋼板の表面の位置から盛り上がってしまうことを防止でき、溶接金属が盛り上がったりビード表面が多少肌荒れしたりしても、必要に応じて僅かに表面を研磨し、表面を塗装することにより十分に隠蔽できるものとなる。したがって、本発明の製造方法を用いて得られた溶接継ぎ手は、例えば、プレス成形加工などの成形加工を行った後、必要ならば僅かに研磨した後に表面に塗装を行うことにより、車両の外板部材として好適に使用できる平滑で美しい外観を有する成形加工品が得られるものである。
図1は、本発明の溶接継ぎ手の製造装置の一例を説明するための概略図である。 図2は、図1に示す溶接継ぎ手の製造装置に備えられたダイレクトダイオードレーザーの集光ビームの形状を示した平面図である。 図3は、本発明の溶接継ぎ手の製造方法を用いて得られた溶接継ぎ手に歪を付与した後の状態を説明するための模式図であり、溶接方向に直交方向から見た拡大断面模式図である。 図4は、実験例27および実験例30の溶接不良の発生率とダイレクトダイオードレーザーの平均パワー密度との関係を示したグラフである。
以下、本発明の溶接継ぎ手の製造方法および溶接継ぎ手の製造装置について、詳細に説明する。
本実施形態の溶接継ぎ手の製造方法は、本実施形態の溶接継ぎ手の製造装置を用いて、複数の母材鋼板を溶接してなる溶接継ぎ手の製造方法である。図1は、本発明の溶接継ぎ手の製造装置の一例を説明するための概略図である。また、図2は、図1に示す溶接継ぎ手の製造装置に備えられたダイレクトダイオードレーザーの集光ビームの形状を示した平面図である。
図1において符号1a、1bは母材鋼板を示している。図1に示す溶接継ぎ手の製造装置は、0.5m/分以上の溶接速度で溶接する溶接手段30を有している。溶接手段30は、光源としてのダイレクトダイオードレーザー3と、溶接用のシールドガスを供給するガス供給手段4とを備えている。
図1に示すダイレクトダイオードレーザー3は、ピーク強度の半値幅における集光ビーム5の形状が、図2に示すように、溶接方向(図2における矢印の方向)に長く、集光ビームの溶接方向長さAと溶接直交方向長さBとのアスペクト比(溶接方向/溶接直交方向(図2におけるA/B))が2.5以上であって下記式(1)を満たすものである。
アスペクト比≧5.0×溶接速度(m/分) ・・・式(1)
集光ビーム5の形状は、図2に示すように、楕円形とすることができるが、アスペクト比が上記範囲を有するものであればよく、例えば長円形や卵形であってもよい。
本実施形態の製造装置を用いる本実施形態の製造方法を用いて得られた溶接継ぎ手は、成形加工により歪を付与される材料として、好適に用いられるものである。図3は、本発明の溶接継ぎ手の製造方法を用いて得られた溶接継ぎ手に歪を付与した後の状態を説明するための模式図であり、溶接方向と直交方向から見た拡大断面模式図である。図3において、符号1a、1bは母材鋼板、符号2は溶接金属を示している。
本実施形態の製造方法において、母材鋼板1a、1bとしては、特に限定されるものではないが、車両に用いられる鋼板などを好適に用いることができる。また、溶接される複数の母材鋼板は、全て同じ板厚および種類のものであってもよいし、それぞれ異なる板厚および/または種類のものであってもよい。なお、本発明の製造方法によって得られる溶接継ぎ手が、テーラードウェルデッドブランク材の溶接継ぎ手部分である場合、複数の母材鋼板は、それぞれ異なる板厚および/または種類のものとされる。
また、母材鋼板1a、1bとしては、Bの含有量が0.0006質量%以下である鋼板を用いることが好ましく、0.0003質量%以下であることがより好ましい。Bは焼入れ性に大きく影響を与える元素であり、母材鋼板1a、1bがBを含有するものである場合、溶接継ぎ手の溶接金属の硬度が高くなる。しかし、母材鋼板1a、1b中のBの含有量を0.0006質量%以下とした場合には、溶接後に形成される溶接継ぎ手の溶接金属における硬度の向上を抑制でき、0.0003質量%以下とした場合には、より効果的に溶接金属の硬度向上を抑制できる。したがって、母材鋼板1a、1bとしてBの含有量が0.0006質量%以下である鋼板を用いた場合、溶接金属と母材鋼板1a、1bとの硬さの差がより一層小さい溶接継ぎ手が得られる。
本実施形態の溶接継ぎ手の製造方法は、光源としてダイレクトダイオードレーザー3を用いて0.5m/分以上の溶接速度で溶接する溶接工程を有している。
本実施形態において用いられるダイレクトダイオードレーザー3は、集光ビームのアスペクト比(溶接方向/溶接直交方向)が2.5以上であって下記式(1)を満たすものである。
アスペクト比≧5.0×溶接速度(m/分) ・・・式(1)
本実施形態においては、溶接工程における溶接速度が0.5m/分以上であるので、効率よく溶接継ぎ手を製造できる。溶接速度は、生産性の向上、溶融池の安定性から0.5m/分以上とする。溶接速度が0.5m/分未満であると、生産性が不十分であることに加えて、溶融池の形成が不安定となり、溶接不良が発生しやすくなる。また、溶接継ぎ手の溶接金属と母材鋼板1a、1bとの硬さの差を十分に小さくしつつ、溶接速度を早くするには、式(1)に示すように、ダイレクトダイオードレーザー3の集光ビーム5のアスペクト比(溶接方向/溶接直交方向)を大きくする必要がある。溶接速度を10m/分以上にすると、アンダーカットが発生し、溶接不良となりやすくなるので、溶接速度を10m/分未満にすることが好ましい。
本実施形態においては、溶接工程における溶接速度が0.5m/分以上であって、ダイレクトダイオードレーザー3の集光ビーム5のアスペクト比が、上記範囲を有するものであるので、溶接工程において、粒径30〜150μmのフェライトを50%以上含む溶接金属2を形成できる。
なお、溶接金属2のフェライトの粒径は、溶接金属2の断面をナイタール腐食させ、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡を用いてミクロ組織を観察し、切断法や、ミクロ組織写真の画像解析を行う方法などによって算出できる。また、フェライトの含有量は、ミクロ組織写真を画像解析することによって求めたフェライトの面積率とすることができる。
溶接金属2に含まれる粒径30〜150μmのフェライトは、溶接工程において生成されるものである。粒径30μm未満のフェライトは、溶接金属2の硬さを抑制する効果が不十分である。また、粒径150μmを超えるフェライトは、成形加工により歪を付与した場合に変形不均一を生じさせる粗大粒となり、成形加工により歪を付与した後の溶接金属2の表面粗度(Rmax)を高くして、軽研磨では補正できない程度に溶接金属2の外観を低下させる恐れがある。
また、溶接金属2に含まれる粒径30〜150μmのフェライトが50%未満であると、フェライトによる溶接金属2と母材鋼板1a、1bとの硬さの差を小さくする効果が十分に得られない。また、溶接金属2に含まれる粒径30〜150μmのフェライトが95%を超えると、溶接金属2と母材鋼板1a、1bとの硬さの差が小さくなりすぎて、溶接継ぎ手が破断しやすいものとなる恐れがある。したがって、溶接金属2に含まれる粒径30〜150μmのフェライトは95%未満であることが好ましい。
なお、溶接金属2に含まれる粒径30〜150μmのフェライトが、50%以上であれば、溶接金属2と母材鋼板1a、1bとの硬さの差を小さくする効果が十分に得られるが、溶接金属2と母材鋼板1a、1bとの硬さの差をより一層小さくするために、70%以上であることが好ましい。
本実施形態の製造方法を用いて製造された溶接継ぎ手は、溶接金属2が粒径30〜150μmのフェライトを50%以上含むものであるので、溶接金属2と母材鋼板1a、1bとの硬さの差が小さく、優れた成形加工性を有するものとなる。したがって、成形加工により歪を付与した場合に、溶接金属2の表面が母材鋼板1a、1bの表面の位置から盛り上がることが防止される。
ここで、本実施形態の製造方法を用いて製造された溶接継ぎ手に、歪を付与した場合における溶接金属の表面について、図面を用いて説明する。
図3において、符号11a、11bは母材鋼板1a、1bの表面、符号21は溶接金属2の表面を示している。また、符号m1aは母材鋼板1aの表面位置の平均線、符号m1bは母材鋼板1bの表面位置の平均線、符号m2は溶接金属2の表面位置の平均線を示し、符号Ra1aは母材鋼板1aの粗度(Rmax)、符号Ra1bは母材鋼板1bの粗度(Rmax)、符号Ra2は溶接金属2の粗度(Rmax)、符号Hは溶接金属の盛り上がり量を示している。なお、本実施形態においては、母材鋼板1aと母材鋼板1bの表面位置の平均線(符号m1a、m1b)は同じとなっている。
母材鋼板1a、1bの粗度Ra1a、Ra1bは、表面粗度計を用いて測定できる。
また、溶接金属2の表面粗度Ra2は、表面粗度計を用いて溶接金属2の表面の断面曲線の粗さを測定し、その断面曲線からカットオフ波長以下の高周波成分のみを粗さ曲線として抽出し、その粗さ曲線からRmaxを算出することによって得られる。なお、断面曲線の粗さの測定方向は、溶接方向に直交方向とする。
また、溶接金属2の盛り上がり量Hは、母材鋼板1a、1bの表面位置の平均線m1a、m1bと溶接金属2の表面位置の平均線m2との差を意味している。溶接金属2の盛り上がり量Hは、溶接金属2の板厚と母材鋼板1a、1bの板厚をそれぞれ測定し、その差分の半値とすることができる。また、溶接金属2の盛り上がり量Hは、表面粗度計を用いて得られた溶接金属2の表面の断面曲線からカットオフ波長以上の低周波成分のみを形状偏差曲線として抽出し、その最大断面高さと定義してもよい。
本実施形態の製造方法を用いて製造された溶接継ぎ手は、成形加工により歪を付与した場合に、溶接金属2の表面21が母材鋼板1a、1bの表面11a、11bの位置から盛り上がることが防止される。このため、図3に示すように、溶接金属2の表面21(溶接金属2の表面位置の平均線m2参照)が盛り上がったとしても、溶接金属2の盛り上がり量Hが、溶接金属2を挟んで対向配置されて溶接されている2つの母材鋼板1a、1bの粗度Ra1a(Rmax)、Ra1b(Rmax)以下となるため、表面を塗装することにより十分に隠蔽できる溶接継ぎ手となる。
本実施形態の製造方法において、使用するダイレクトダイオードレーザー3の集光ビーム5のアスペクト比が2.5未満である場合、集光ビーム5のアスペクト比を高くすることによる溶接金属2の冷却速度を遅くする効果が不十分となる。このため、溶接工程における溶接速度を0.5m/分以上としつつ、粒径30〜150μmのフェライトの生成を十分に促進させることができなくなる。
また、集光ビーム5のアスペクト比が式(1)を満たさない場合、粒径30〜150μmのフェライトの含有量が不足して、母材鋼板1a、1bとの硬さの差が十分に小さい溶接金属2を形成できない。したがって、集光ビーム5のアスペクト比が式(1)を満たさないと、製造された溶接継ぎ手は、成形加工により歪を付与した場合に、溶接金属2の表面21が母材鋼板1a、1bの表面11a、11bの位置から母材鋼板1a、1bの粗度Ra1a、Ra1bを超える盛り上がり量Hで盛り上がり、表面を塗装しても隠蔽困難なものとなる。
本発明の製造方法を用いて、予め決定された所定のひずみ比で加工される溶接継ぎ手を製造する場合,ダイレクトダイオードレーザー3として、集光ビーム5のアスペクト比が下記式(2)を満たすものを用いることが好ましく,溶接工程において、フェライトの含有量が下記式(3)を満たす溶接金属を形成することが好ましい。
アスペクト比≧(5.8+1.6×ひずみ比)×溶接速度(m/分) ・・・式(2)
フェライト含有量≧53+6×ひずみ比 ・・・式(3)
ここでひずみ比は,2軸の応力が作用して生じたひずみ量のうち,最小主ひずみを最大主ひずみで除した値である。
テーラードウェルデッドブランク材をプレス成形する場合,通常、テーラードウェルデッドブランク材を、金型に対して溶接継ぎ手に作用する最大主ひずみ方向が溶接線方向と概ね平行となるように配置する。この理由は,最大主ひずみ方向が溶接線方向に対して角度がある状態でプレス加工を行うと,溶接継ぎ手周辺の母材鋼板に変形が集中して,破断を生じる危険性が高くなるためである。
また,溶接継ぎ手の成形加工においては、溶接線方向に加えて,溶接線方向と直交する方向にも応力が作用する場合がある。この状態を溶接継ぎ手に2軸の応力が作用する状態と呼称する。溶接継ぎ手に2軸の応力が作用する場合,溶接線直交方向に作用する応力によって、溶接継ぎ手周辺の母材鋼板が変形し,板厚が薄くなる。これは図3において,母材鋼板1a、1bの表面位置の平均線m1a、m1bの位置が低くなることと等価である。溶接金属2の盛り上がり量Hは、母材鋼板1a、1bの表面位置の平均線m1a、m1bと溶接金属2の表面位置の平均線m2との差である。したがって,溶接継ぎ手に2軸の応力が作用する場合,溶接継ぎ手の概ね溶接線方向に単軸の応力が作用する場合と比較して、溶接金属2の盛り上がり量Hが大きくなる。
本実施形態において、予め決定された所定のひずみ比で加工される溶接継ぎ手を製造する場合に,ダイレクトダイオードレーザー3として、集光ビーム5のアスペクト比が式(2)を満たすものを用い、溶接工程において、フェライトの含有量が式(3)を満たす溶接金属を形成すると、成形加工により歪を付与することによって溶接金属2の表面が盛り上がることを、効果的に抑制できる。このため、成形加工により溶接継ぎ手に2軸の応力が作用して、溶接線方向に単軸の応力が作用する場合よりも溶接金属2の盛り上がり量Hが大きくなったとしても、溶接金属2の盛り上がり量Hを、溶接金属2を挟んで対向配置されて溶接されている2つの母材鋼板1a、1bの粗度Ra1a(Rmax)、Ra1b(Rmax)以下とすることができる。
ダイレクトダイオードレーザー3として、集光ビーム5のアスペクト比が式(2)を満たさないものを用いた場合および/または溶接金属2のフェライトの含有量が式(3)を満たさない場合には,成形加工により溶接継ぎ手に2軸の応力が作用することによって溶接金属2が盛り上がる現象を、十分に抑制できず,溶接金属2が母材鋼板1a、1bの粗度Ra1a、Ra1bを超える盛り上がり量Hで盛り上がり、表面を塗装しても隠蔽困難となる恐れがある。
集光ビーム5のアスペクト比は、下記式(4)を満たすものであることが好ましい。集光ビーム5のアスペクト比が下記式(4)を満たす場合、溶接工程において、フェライトの最大粒径が350μm以下である溶接金属2を形成することができ、成形加工により歪を付与したとしても、溶接金属2に存在する粗大粒による変形不均一に起因する溶接金属2の表面粗度(Rmax)の増大が生じにくく、表面の平滑な溶接金属2を有する溶接継ぎ手が得られる。
アスペクト比≦16.0×溶接速度(m/分)−3.0 ・・・式(4)
集光ビーム5のアスペクト比が式(4)を満たさない場合、集光ビーム5のアスペクト比が高くなり、溶接金属2の冷却速度を遅くなりすぎるため、溶接金属2に含まれるフェライトの粒径が大きいものとなる。このため、溶接金属2は、最大粒径が350μmを超えるフェライトを含むものとなり、溶接金属2と母材鋼板1a、1bとの粒径差が大きい溶接継ぎ手となる。その結果、成形加工により歪を付与した場合に、溶接金属2と母材鋼板1a、1bとの粒径差による変形不均一によって、溶接金属2の表面粗度Ra2が大きくなり、表面を塗装しても、車両の外板部材として好適に使用できる平滑で美しい外観が得られにくいものとなる。
すなわち、成形加工により歪を付与した後の溶接継ぎ手の溶接金属2は、図3に示すように、表面21が母材鋼板1a、1bの表面11a、11bの位置から盛り上がっていたとしても、溶接金属2の盛り上がり量Hが母材鋼板1a、1bの表面粗度Ra1a、Ra1b以下であって、さらに、表面粗度Ra2が母材鋼板1a、1bの表面粗度Ra1a、Ra1b以下であることが好ましい。
また、本実施形態においては、ダイレクトダイオードレーザー3の平均パワー密度を0.6kW/mm以下とすることが好ましい。平均パワー密度を0.6kW/mm以下とすることにより、溶接欠陥が生じにくい熱伝導モード溶接を実現することができ、溶接不良を防止できる。平均パワー密度が0.6kW/mmを超えると、キーホールモード溶接となる。本実施形態においては、ダイレクトダイオードレーザー3として、集光ビーム5が所定のアスペクト比であるものを用いるので、キーホールモード溶接を行うと、溶融池を閉じるに足るだけの表面張力が得られず、溶接不良が生じやすくなる。平均パワー密度が低いほど、溶接不良が生じにくく好ましいが、平均パワー密度が0.01kW/mm未満であると、溶接速度を0.5m/分以上にしにくくなる。このため、平均パワー密度は、0.01kW/mm以上であることが好ましい。
また、本実施形態においては、溶接用のシールドガスとして、ガス供給手段4から酸素Oを体積%で0.5〜10%含有し、その他が不可避的不純物を含むArガスおよび/またはHeガスであるものを供給することが望ましい。
上記のシールドガスを用いた場合、シールドガス中に含まれる酸素と、母材鋼板1a、1b中に含まれるCやMnなどの焼入れ性に寄与する元素とが反応して酸化物を形成するため、焼入れ性が低下される。したがって、溶接後に形成される溶接継ぎ手の溶接金属2における硬度の向上が抑制される。
また、溶接時の加熱により母材鋼板1a、1b中に含まれるTiNが分解して、フリーのNが発生するが、このNとシールドガス中に含まれる酸素とが反応して酸化物を形成するため、固溶強化元素であるNの量が低減し、溶接後に形成される溶接継ぎ手の溶接金属2における硬度の向上が抑制される。
[実施例1]
母材鋼板として、以下に示す2枚の鋼板を使用し、表1に示す溶接速度で、表1に示す集光ビームのアスペクト比および光源のレーザーを用い、シールドガスとして酸素Oを体積%で3%含有するArガスを使用し、表1に示す平均パワー密度で溶接し、実験例1〜実験例32の溶接継ぎ手を得た。
なお、光源としてYAGレーザを用いた場合には出力を900Wとし、DDL(ダイレクトダイオードレーザ)を用いた場合には出力を500Wとした。
また、光源のピーク強度の半値幅における集光ビームは、溶接直交方向長さを0.6mmで一定とし、溶接方向長さを変化させてアスペクト比(溶接方向/溶接直交方向)を変化させた。
「鋼板」
Bを質量%で0.0002%含有し、板厚が0.8mm, 降伏応力が135.4MPa, 引張強度が287MPa, 伸びが45%、ビッカース硬度Hvが80.5、粗度Rmaxが9.1μmの合金化溶融亜鉛めっき鋼板を使用した。
Figure 0005991217
このようにして得られた実験例1〜実験例32の溶接継ぎ手の溶接金属について、以下に示す方法により、粒径30〜150μmのフェライトの面積率と、フェライトの最大粒径とを調べた。その結果を表1に示す。
「フェライトの面積率」
溶接金属の断面をナイタール腐食させ、走査型電子顕微鏡を用いて撮影したミクロ組織写真(観察視野800μm×800μm)を用いてポイントカウンティング法(6400点計測)により算出した。
「フェライトの最大粒径」
JIS G0551に規定されている方法を用いてフェライトの粒径を調べ、その最大粒径を求めた。
続いて、実験例1〜実験例32の溶接継ぎ手からJIS5号引張試験片を採取し、実験例1〜実験例32の試験片とした。なお、実験例1〜実験例32の試験片は、中央に溶接金属が引張方向と平行に位置するものとした。
次いで、実験例1〜実験例32の試験片を片面につき0.05mmずつ両面を機械研磨することによって研磨し、母材鋼板と溶接金属とにおいて表面粗度および板厚が均一となるようにした。研磨後の実験例1〜実験例32の試験片の両面の表面粗度Rmaxは3.0μm以下であり、板厚は0.7mmであった。なお、試験片の両面の表面粗度は、表面粗度計を用いて測定した。
その後、研磨後の実験例1〜実験例32の試験片について、JIS Z 2241に準拠して引張試験を行い、15%の歪を付与し、以下に示す方法により、溶接金属の盛り上がり量と、溶接金属の表面粗度とを評価した。その結果を表1に示す。
「溶接金属の盛り上がり量」
溶接金属の板厚と母材鋼板の板厚をそれぞれ測定し、その差分の半値とした。
「溶接金属の表面粗度」
表面粗度計を用いて溶接金属の表面の断面曲線の粗さを測定し、その断面曲線からカットオフ波長(0.8mm)以下の高周波成分のみを粗さ曲線として抽出し、その粗さ曲線からRmaxを算出することによって得られた値とした。なお、断面曲線の粗さの測定方向は、溶接方向と直交方向とし、測定距離は10mmとし、測定領域の中心を溶接金属の母材鋼板間の中心位置とした。
表1に示すように、本発明の実施例である実験例7、13、14、19〜23、26〜31では、溶接金属の盛り上がり量が、母材鋼板の表面粗度(9.10μm)以下となっていることがわかる。
これに対し、集光ビームのアスペクト比が上記式(1)を満たさず、溶接金属における粒径30〜150μmのフェライトが50%未満である実験例1〜6、8〜12、15〜18、24、25、32では、溶接金属の盛り上がり量が、母材鋼板の表面粗度を超えている。
これは、実験例1〜6、8〜12、15〜18、24、25、32では、溶接金属の硬度が母材鋼板と比較して高いため、歪を付与した際の溶接金属と母材鋼板との変形能が大きく異なることによるものと推定される。
また、表1に示すように、実験例7、13、14、19〜23、26〜31のうち、集光ビームのアスペクト比が上記式(4)を満たす実験例7、13、14、21〜23、29〜31では、フェライトの最大粒径が350μm以下となり、溶接金属の表面粗度が母材鋼板の表面粗度以下となっている。
また、表1に示す実験例27および実験例30の溶接条件において、平均パワー密度のみ0.4kW/mm、0.6kW/mm、0.8kW/mm、1.0kW/mmに変化させて溶接し、平均パワー密度毎にそれぞれ長さ100mmの溶接金属を1000箇所形成する溶接試験を行い、以下に示す溶接不良の判定方法により溶接不良の有無を判定し、平均パワー密度毎の溶接不良の発生率を調べた。その結果を図4に示す。
「溶接不良の判定方法」
溶接金属に板厚方向に貫通する孔(欠陥)が存在するか否かを目視にて判断し、孔が存在する場合を溶接不良「有り」とした。
図4は、実験例27および実験例30の溶接不良の発生率とダイレクトダイオードレーザーの平均パワー密度との関係を示したグラフである。
図4に示すように、実験例27および実験例30において、ダイレクトダイオードレーザーの平均パワー密度が0.6kW/mm以下である場合には、溶接不良は発生しなかった。
[実施例2]
母材鋼板として、実施例1と同じ2枚の鋼板を使用し、表2に示す溶接速度で、表2に示す集光ビームのアスペクト比および光源のレーザーを用い、シールドガスとして酸素Oを体積%で3%含有するArガスを使用し、表2に示す平均パワー密度で溶接し、実験例33〜実験例73の溶接継ぎ手を得た。
なお、光源としてDDL(ダイレクトダイオードレーザ)を使用し,その出力を500Wとした。
また、光源のピーク強度の半値幅における集光ビームは、溶接直交方向長さを0.6mmで一定とし、溶接方向長さを変化させてアスペクト比(溶接方向/溶接直交方向)を変化させた。
Figure 0005991217
このようにして得られた実験例33〜実験例73の溶接継ぎ手の溶接金属について、実施例1と同様にして、粒径30〜150μmのフェライトの面積率と、フェライトの最大粒径とを調べた。その結果を表3に示す。
Figure 0005991217
続いて、実験例33〜実験例73の溶接継ぎ手からマルシニアック試験片を採取し,実験例33〜実験例73の試験片とした。なお、実験例33〜実験例73の試験片は、中央に溶接金属の溶接方向が最大主ひずみ方向と平行に位置するものとした。
次いで、実験例33〜実験例73の試験片を片面につき0.05mmずつ両面を機械研磨することによって研磨し、母材鋼板と溶接金属とにおいて表面粗度および板厚が均一となるようにした。研磨後の実験例33〜実験例77の試験片の両面の表面粗度Rmaxは3.0μm以下であり、板厚は0.7mmであった。なお、試験片の両面の表面粗度は、表面粗度計を用いて測定した。
その後、研磨後の実験例33〜実験例73の試験片について、ISO 12004に準拠してマルシニアック試験を行なった。マルシニアック試験では,最大主ひずみとして15%のひずみを付与し、さらにひずみ比が−0.5(単軸変形),0(平面ひずみ変形),0.5,1.0(等二軸変形)となるように試験を行った。
試験後に実施例1と同様にして、溶接金属の盛り上がり量と、溶接金属の表面粗度とを評価した。その結果を表3に示す。
「ひずみ比が−0.5の場合」
表3に示すように、本発明の実施例である実験例33〜35、40〜51、54〜72では、溶接金属の盛り上がり量が、母材鋼板の表面粗度(9.10μm)以下となっていることがわかる。
これに対し、集光ビームのアスペクト比が上記式(1)および上記式(2)を満たさず、溶接金属における粒径30〜150μmのフェライトが上記式(3)より算出されるフェライト含有量50%未満である実験例36〜39、52〜53、73では、溶接金属の盛り上がり量が、母材鋼板の表面粗度を超えている。
これは、実験例36〜39、52〜53、73では、溶接金属の硬度が母材鋼板と比較して高いため、歪を付与した際の溶接金属と母材鋼板との変形能が大きく異なることによるものと推定される。
また、表2および表3に示すように、実験例33〜35、40〜51、54〜72のうち、集光ビームのアスペクト比が上記式(4)を満たす実験例33〜35、43〜51、59〜72では、フェライトの最大粒径が350μm以下となり、溶接金属の表面粗度が母材鋼板の表面粗度以下となっている。
「ひずみ比が0の場合」
表2および表3に示すように、集光ビームのアスペクト比が上記式(2)を満たす実験例33〜34、40〜48、54〜68では、溶接金属の盛り上がり量が、母材鋼板の表面粗度(9.10μm)以下となっていることがわかる。
これに対し、集光ビームのアスペクト比が上記式(2)を満たさず、溶接金属における粒径30〜150μmのフェライトが上記式(3)より算出されるフェライト含有量53%未満である実験例35〜39、49〜53、69〜73では、溶接金属の盛り上がり量が、母材鋼板の表面粗度を超えている。
これは、実験例35〜39、49〜53、69〜73では、溶接金属の硬度が母材鋼板と比較して高いため、歪を付与した際の溶接金属と母材鋼板との変形能が大きく異なることによるものと推定される。
また、表2および表3に示すように、実験例33〜34、40〜48、54〜68のうち、集光ビームのアスペクト比が上記式(4)を満たす実験例33〜34、43〜48、59〜68では、フェライトの最大粒径が350μm以下となり、溶接金属の表面粗度が母材鋼板の表面粗度以下となっている。
「ひずみ比が0.5の場合」
表2および表3に示すように、集光ビームのアスペクト比が上記式(2)を満たす実験例33、40〜47、54〜65では、溶接金属の盛り上がり量が、母材鋼板の表面粗度(9.10μm)以下となっていることがわかる。
これに対し、集光ビームのアスペクト比が上記式(2)を満たさず、溶接金属における粒径30〜150μmのフェライトが上記式(3)より算出されるフェライト含有量56%未満である実験例34〜39、48〜53、66〜73では、溶接金属の盛り上がり量が、母材鋼板の表面粗度を超えている。
これは、実験例34〜39、48〜53、66〜73では、溶接金属の硬度が母材鋼板と比較して高いため、歪を付与した際の溶接金属と母材鋼板との変形能が大きく異なることによるものと推定される。
また、表2および表3に示すように、実験例33、40〜47、54〜65のうち、集光ビームのアスペクト比が上記式(4)を満たす実験例33、43〜47、59〜65では、フェライトの最大粒径が350μm以下となり、溶接金属の表面粗度が母材鋼板の表面粗度以下となっている。
「ひずみ比が1.0の場合」
表2および表3に示すように、集光ビームのアスペクト比が上記式(2)を満たす実験例33、40〜46、54〜63では、溶接金属の盛り上がり量が、母材鋼板の表面粗度(9.10μm)以下となっていることがわかる。
これに対し、集光ビームのアスペクト比が上記式(2)を満たさず、溶接金属における粒径30〜150μmのフェライトが上記式(3)より算出されるフェライト含有量59%未満である実験例34〜39、47〜53、64〜73では、溶接金属の盛り上がり量が、母材鋼板の表面粗度を超えている。
これは、実験例34〜39、47〜53、64〜73では、溶接金属の硬度が母材鋼板と比較して高いため、歪を付与した際の溶接金属と母材鋼板との変形能が大きく異なることによるものと推定される。
また、表2および表3に示すように、実験例33、40〜46、54〜63のうち、集光ビームのアスペクト比が上記式(4)を満たす実験例33、43〜46、59〜63では、フェライトの最大粒径が350μm以下となり、溶接金属の表面粗度が母材鋼板の表面粗度以下となっている。
1a、1b…母材鋼板、2…溶接金属、3…ダイレクトダイオードレーザー、4…ガス供給手段、5…集光ビーム、11a、11b…母材鋼板の表面、21…溶接金属の表面、30…溶接手段、Ra1…母材鋼板の粗度、Ra2…溶接金属の粗度、H…溶接金属の盛り上がり量。

Claims (5)

  1. 複数の母材鋼板を溶接してなる溶接継ぎ手の製造方法であって、
    光源としてダイレクトダイオードレーザーを用いて0.5m/分以上の溶接速度で溶接する溶接工程を有し、
    前記ダイレクトダイオードレーザーとして、ピーク強度の半値幅における集光ビームの形状が溶接方向に長く、前記集光ビームの溶接方向長さと溶接直交方向長さとのアスペクト比(溶接方向/溶接直交方向)が2.5以上であって下記式(1)を満たすものを用い、
    前記溶接工程において、粒径30〜150μmのフェライトを50%以上含む溶接金属を形成することを特徴とする溶接継ぎ手の製造方法。
    アスペクト比≧5.0×溶接速度(m/分) ・・・式(1)
  2. 所定のひずみ比で加工される溶接継ぎ手の製造方法であって、
    前記ダイレクトダイオードレーザーとして,前記アスペクト比が下記式(2)を満たすものを用い,
    前記溶接工程において,前記粒径30〜150μmのフェライトの含有量が下記式(3)を満たす溶接金属を形成することを特徴とする請求項1に記載の溶接継ぎ手の製造方法.
    アスペクト比≧(5.8+1.6×ひずみ比)×溶接速度(m/分) ・・・式(2)
    フェライト含有量≧53+6×ひずみ比 ・・・式(3)
  3. 前記ダイレクトダイオードレーザーとして、前記アスペクト比が下記式(4)を満たすものを用い、
    前記溶接工程において、前記フェライトの最大粒径が350μm以下である前記溶接金属を形成することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の溶接継ぎ手の製造方法。
    アスペクト比≦16.0×溶接速度(m/分)−3.0 ・・・式(4)
  4. 前記ダイレクトダイオードレーザーの平均パワー密度を0.6kW/mm以下とすることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の溶接継ぎ手の製造方法。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の溶接継ぎ手の製造方法に使用される溶接継ぎ手の製造装置であって、
    0.5m/分以上の溶接速度で溶接する溶接手段を有し、
    前記溶接手段が、光源としてピーク強度の半値幅における集光ビームの形状が溶接方向に長く、前記集光ビームの溶接方向長さと溶接直交方向長さとのアスペクト比(溶接方向/溶接直交方向)が2.5以上であって下記式(1)を満たすダイレクトダイオードレーザーを備えることを特徴とする溶接継ぎ手の製造装置。
    アスペクト比≧5.0×溶接速度(m/分) ・・・式(1)
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