JP4195722B1 - インパクトビームの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 軟質なフェライトとマルテンサイトを微細に分散させ、引張強度1480〜1160MPaであり、降伏強度710MPa〜1215MPaと、伸び9%〜18%を有する高張力鋼板を使用した冷間プレス加工によるインパクトビームの製造方法であって、板取りした高張力鋼板のブランクWを中央部の断面形状が凹形ワークW1に成形する第1プレス工程S1と、凹形ワークW1の底部に深い谷でつないだ2つ山を設けたM字状ワークW2に成形をする第2プレス工程S2と、を含むインパクトビームの製造方法。
【選択図】 図2
Description
図1の(c)に示すように、インパクトビーム1の中央部の幅Bが73mm、高さHが26.5mmであり、底部に近づけた深い谷の深さh1が23.5mm、h2が3mmである。また、コーナーR1とR2が5mmである。このように深い谷を有するM字状が成形されている。
この加熱装置によるCO2の発生量は、電力量1kwh当りCO20.36kg発生であるから、1日の使用電力量1000kwh×0.36kg/kwhとなり、1日360kgのCO2を発生させている。年間250日稼動とすれば、360kg×250日となり、年間90.0ton発生させていることになる。
また、このような高張力鋼の熱間プレス加工(ホットスタンプともいう)では、加工時間が1個当たり25秒と長いため、生産性が悪く、高コストであるという問題があった。
1)高張力鋼に冷間プレスを施した場合、応力の影響が製品に残留し、時間が経つと遅れ破壊(製品が自己崩壊する現象)が生じ、品質の確保が困難になる恐れがある。
2)単にプレス加工を施して高張力鋼からインパクトビーム等のドア補強材を製造しようとしても、ドアの補強部品として必要な強度の不足が生じ、その加工も困難である。
3)こうした事情からインパクトビームは、本体部と取付部(ブラケット)とを2ピースにしており、冷間プレス加工により一体成形は困難である。
図1は、インパクトビームを示し、(a)は全体の外観を示す斜視図、(b)は第1プレス工程での加工形状を示すA−A線の断面図、(c)は第2プレス工程での完成品の形状を示すA−A線の断面図である。このインパクトビーム1は、軟質なフェライトFとマルテンサイトMを微細に分散させて高い延性を有し、高い引張強度1180MPaとを兼ね備えた高張力鋼を開発したことにより、これまでの定説を覆して冷間プレス加工による量産加工を実現した。
図1の(a)に示すように、このインパクトビーム1は、中央部に位置するビーム本体1aと左右に位置する取付部(ブラケット)1b,1cが一体に形成されている。さらに、この取付部(ブラケット)1b,1cは、例えば、リアドアの内部にスポット溶接により装着される。また、冷間加工のため、1dにはRを設けることにより、残留応力を減らし、これにより平面のしわ防止にもなり、平面のフランジ部への影響を少なくしている。
図2は、本発明のインパクトビームの冷間プレスによる製造工程を示す工程図である。図2に示すように、高延性で、高引張強度(1480〜1160MPa)を兼ね備えた高張力鋼板を使用した冷間プレス加工によるインパクトビームの製造方法を説明する。ここでは、1180MPaの高張力鋼板での試験結果も紹介しながら、詳細に説明する。
ステップSのブランク工程は、高張力鋼板のロールから引出しながらブランクWに板取りする。または、高張力鋼板のシートからブランクWに板取りしてもよい。
ステップS1の第1プレス工程は、ブランクWを凹部状の第1ワークW1に成形する。図1の(b)に示すように、A−A線の断面形状は、横断面形状が凹形状の第1ワークW1にして2工程に分けることによって、残留応力を抑えることができる。
ステップS2の第2プレス工程は、前記凹部状の第1ワークW1をさらにM字状、2つ山状の第2ワークW2へ成形をする。図1の(c)に示すように、断面形状がRを大きくした2つ山を有するM字状のインパクトビームで完成となる。
したがって、第2工程の比較でよいことになる。
本願工法の第2工程の第1プレスS1の電力使用量は1日当たり48kwhである。
1日当たりのCO2の発生量を求めると、1kwh当たりCO2を0.36kg発生させるから、48kwh×0.36kg/kwhとなり、1日17.3kgのCO2を発生させることになる。年間250日稼動とすれば、17.3kg×250日は、年間4.3tonとなる。従来の熱間プレス加工の加熱装置によるCO2の発生量の年間90.0tonと差を求めると、年間90.0ton−年間4.3tonであるから、年間85.7ton(95%)のCO2の発生を抑えることができる。
[表1]
そこで、従来の高張力鋼板の引張強度を少々犠牲にして降伏強度を下げ、より延性の高い1180MPa級の高張力鋼板を用いて、部品断面形状の最適化、および、冷間プレスによる加工硬化を活用することにより部品強度の確保を図ることができた。
この冷間プレスによる加工硬化の活用とは、高い延性を利用し、可能なレベルでプレス加工時の加工硬化による引張強度を増加させるものである。素材強度以上の部品の強度を高めることにより、構造と材料そのものの強度に対する相乗効果を得ることができる。
図4は、本発明のインパクトビームの冷間プレス加工した際の歪を有限要素法(FEM:Finite Element Method)により計算し、その結果を濃淡で表した斜視図である。歪量の高いところほど明るい色になっている。インパクトビームは、図3の(b)に示すような深いM字形の断面形状にした場合、図4に示すように、しかも厳しい部位で10%程度の板厚減少が見られた。また、従来の高張力鋼板では、全伸びが7%しかないため、このような厳しい加工は困難であり、プレス時に割れが生じることは不可避であると考えられる。
[表2]
図6に示すように、縦軸に応力、横軸に歪(ひずみ)を取り、応力−歪曲線を示す。
永久歪を0.2%とした破線と曲線との交点が降伏強度のYSである。
YS′は、加工硬化後の降伏応力 を示し、△YSは、その増加量を示している。
加工硬化(WH)は、素材の引張応力からプレス加工により増加される引張応力であり、焼付硬化(BH)は、塗装前後にて増加する引張応力である。
このように、開発高張力鋼板は、高い加工硬化(WH)特性および焼付硬化(BH)特性を示している。一般に延性の低い高張力鋼板は、単軸引張やプレス加工において割れが発生することから、このような効果は、望めるものではない。
図9は、インパクトビームに使用する鋼材の位置に対する各引張試験片の降伏強度(YS)を示すグラフである。なお、値は3部品の平均値である。図9に示すように、インパクトビームに使用する開発部品の加工、熱処理後の降伏強度(YS)は、ダイクエンチ材のYSの報告値(約1050MPa)に比べて高い値になっている。
図10は、インパクトビームの曲げ試験の方法を説明する模式図である。図10に示すように、支持スパンLは500mmであり、荷重Pを掛ける加圧部の円弧形状R1は152.5mm、両端支持部の円弧形状R2は12.5mmである。試験片の中央部に荷重Pを掛け、移動量dまで移動してインパクトビームを曲げる。
図11は、この曲げ試験でのインパクトビームのプレス部品の荷重変位曲線を示すグラフである。図11に示すように、比較できるように、従来のダイクエンチ(熱間プレス)成形(上)と本願の冷間プレス(下)の場合を示している。従来のダイクエンチ成形(上)では最高荷重が20kNであるのに対し、インパクトビームの開発部品の冷間スタンプ(下)は約19kNとなっている。また、インパクトビームは、高い加工硬化(WH)と焼付硬化(BH)を示す高延性1180MPa級の高張力鋼板を用いたことにより、さらに、深いM字形状とすることができ、しかも、従来部品と同等以下の質量で、ほぼ同等の耐衝撃特性が達成させることができる。
インパクトビームは、本開発部品に限らず、引張強度(TS)が1180MPa以上の高張力鋼板を使用する場合、使用中の遅れ破壊が懸念されている。このため、遅れ破壊に対する安全性の確認を行った。
図12は、インパクトビームに使用する材料の遅れ破壊の発生領域を示す説明図である。下面の縦軸に応力、横軸に歪、高さ方向に侵入水素量を取る。プレス加工後に使用される自動車用薄高張力鋼板の遅れ破壊特性評価に関する報告は少ないが、薄高張力鋼板においては、冷間プレスによる加工歪の影響を考慮した遅れ破壊特性評価方法が必要と考えられる。すなわち、材料に応じて遅れ破壊が懸念される使用条件(歪、応力、侵入水素)の領域を示す。このように、予めラボサンプルにより明確にした。これにより、実際のプレス部品の加工状態、応力状態、侵入水素量と比較することで、プレス部品の実使用環境での破壊の危険性を予測できる。
供試材をU形曲げ加工したときに外観上良好に成形できるきる最小の曲げ半径(極限曲げ半径)は2mmで、曲げ半径1.5mmでは試験片の外表面に微小クラックが発生した。
一方、(b)に示すように、R=4mmの試験片では、マイクロボイドは観察されない。このことから、高延性で、引張強度1180MPaの高張力を有する材料において、限界曲げ半径の近傍の強加工領域では、加工により高張力鋼板内部にマイクロボイドが生成しており、破壊が促進された可能性がある。
このように、インパクトビームの材料を曲げ加工する際、加工限界に近い強加工領域では、遅れ破壊が促進される可能性があるので、注意が必要である。
なお、鋼中の水素量は、負荷応力によって変化すると一般に言われているが、曲げ加工では静水圧応力がゼロになるため、水素量への負荷応力の影響を考慮する必要がないと考えられる。実験においても、侵入水素量への負荷応力の影響が認められなかったことから、水素分析はボルト締付け無しのサンプルについて行った。
したがって、インパクトビームに使用する材料の使用条件(曲げ半径、応力、侵入水素量)は、M字状の曲げ半径が6.4mmであり、開発部品の応力、歪の状態は、遅れ破壊の発生領域から十分離れていると考えられる。つまり、開発部品の加工歪、応力状態は、ラボサンプルで評価した開発の高張力鋼板の遅れ破壊危険領域から外れている。また、0.1規定塩酸浸漬による侵入水素量約0.6ppmと実環境での腐食に伴う侵入水素量より高いと推定されることから、開発部品の実使用環境での遅れ破壊の危険性は小さいことが確認された。
なお、本検討では、0.1規定塩酸300時間浸漬という実環境と比較すると厳しい(侵入水素量が多い)条件での評価を実施したが、実部品の遅れ破壊のリスクを過不足なく評価するためには、浸漬液、浸漬時間の最適化が必要と考える。
なお、本確認作業においては、0.1規定塩酸300時間浸漬という実環境と比較すると厳しい(侵入水素量が多い)条件での評価を実施した。
(1)高い加工硬化量(WH)、および、焼付硬化量(BH)特性を示す高延性タイプの1180MPa級鋼を用いたインパクトビームの加工方法は、低コスト化が可能な冷間プレスとし、インパクトビームの断面形状は深いM字形状とすることにより、従来部品と同等以下の重量で、ほぼ同等の耐衝撃特性が得られ、かつ低コスト化が達成された。
(2)開発部品の加工歪、応力状態は、ラボサンプルで評価した開発の高張力鋼板の遅れ破壊危険領域から外れており、また、0.1規定塩酸浸漬による侵入水素量約0.6ppmと実環境での腐食に伴う侵入水素量より高いと推定されることから、開発部品の実使用環境での遅れ破壊の危険性は小さいことが確認された。
(3)従来の熱間プレスから、冷間プレスにすることにより、加熱装置が不要となり、電気エネルギーを削減し、地球温暖化防止のためのCO2の発生を年間85.7ton(95%)抑えることができる。
1a ビーム本体
1b,1c 取付部(ブラケット)
2 可動型
3 固定型
d 間隔
W ロール状ワーク(シート状ワーク)
W1 ブランク
W2 第1ワーク
W3 第2ワーク
Claims (1)
- 軟質なフェライトとマルテンサイトを微細に分散させ、引張強度1480〜1160MPaであり、降伏強度710MPa〜1215MPaと、伸び9%〜18%を有する高張力鋼板を使用した冷間プレス加工によるインパクトビームの製造方法であって、
板取りした高張力鋼板のブランク(W)を中央部の断面形状が凹形ワーク(W1)に成形する第1プレス工程(S1)と、
前記凹形ワーク(W1)の底部に深い谷でつないだ2つ山を設け、その2つの山を前記凹形ワーク(W1)の谷深さと略同一の高さのM字状ワーク(W2)に成形をする第2プレス工程(S2)と、
を含むことを特徴とするインパクトビームの製造方法。
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