始めに、実施例1のシート1の構成について、図1〜図7を用いて説明する。本実施例のシート1は、図1に示すように、自動車の運転席として構成されており、着座乗員の背凭れ部となるシートバック2と、着座部となるシートクッション3と、を備えている。シートクッション3は、車両のフロア上に左右一対のスライドレール5を間に介して設置されており、これらスライドレール5によってフロアに対するシート前後方向の設置位置を調整することができるように設けられた状態とされている。また、シートクッション3は、上述した各スライドレール5との間に、左右一対の4節リンク機構から成るリフター機構4が介在して設けられており、これらリフター機構4の作動によってフロアに対する設置高さも調整することができる構成とされている。
シートバック2は、シートクッション3の後端部に図示しないリクライナーを間に介して連結されており、これらリクライナーの作動によってシートクッション3に対する起立角度(背凭れ角度)をシート前後方向に調整することができるように設けられた状態とされている。なお、上述した各スライドレール5やリフター機構4や図示しないリクライナーの構成は、特開2010−221935号や特開2009−166808号公報や特開2010−221935号公報等の文献に開示された公知の構成と同じものとなっているため、これらの具体的な構成についての説明は省略することとする。
上述したシートクッション3は、図2に示すように、その内部骨格を成す枠状のクッションフレーム3Fと、クッションフレーム3Fの枠内に張設された布バネ12を有する支持体10と、これら支持体10とクッションフレーム3Fとによって下方側(裏面側)から支えられた状態として着座乗員の荷重を柔らかく受け止めるクッションパッド3Pと、クッションパッド3Pの表面全体を覆う布製のクッションカバー3C(図1参照)と、を有して構成されている。ここで、クッションフレーム3Fが本発明の「シートフレーム」に相当し、布バネ12が本発明の「面状体」に相当し、クッションパッド3Pが本発明の「クッション材」に相当する。
上述したクッションフレーム3Fは、シートクッション3の外周形状に沿った四角枠状の骨格形状に組まれて構成されている。具体的には、クッションフレーム3Fは、左右一対のシート前後方向に長尺な鋼板材より成るサイドフレーム3F1と、これらサイドフレーム3F1の前端部間に一体的に架橋されて設けられた鋼板製のフロントパネル3F2と、両サイドフレーム3F1の後部間に回転可能に枢着された状態として架橋された円鋼管製のリヤパイプ3F3と、によって構成されている。ここで、上述した各サイドフレーム3F1が本発明の「サイドフレーム」に相当し、フロントパネル3F2が本発明の「架橋フレーム」に相当する。上述したリヤパイプ3F3は、前述したリフター機構4を構成するリヤ側のリンクと各サイドフレーム3F1との連結軸同士を一体的に連結するコネクティングロッドとして構成とされており、そのために、これら連結軸間に架橋された状態として、各サイドフレーム3F1の後部間に回転可能に枢着された状態に設けられた状態とされている。
各サイドフレーム3F1は、それらの上縁部と下縁部とがシート内側に折り曲げられた形状とされて、曲げや捩りに対する構造強度が高められた構成とされている。フロントパネル3F2は、上述した各サイドフレーム3F1の前端部同士を繋ぐように、これらの上面部と前面部とにそれぞれ形状があてがわれてスポット溶接により一体的に結合されて設けられた状態とされている(スポット溶接部We1,We2)。詳しくは、上述したフロントパネル3F2は、シート前方側に面を向ける前板部3F2aと、シート上方側に面を向ける天板部3F2bと、天板部3F2bの後縁部からシート後ろ下方向に傾斜して延びる傾斜部3F2cと、を有する形に形成されている。
前板部3F2aは、その左右両側の各縁部が、シートクッション3の前部の形状に倣ってシート後方側に湾曲した形に形成されており、湾曲した先の各縁部が、各サイドフレーム3F1の前面部にあてがわれてスポット溶接により一体的に結合された状態とされている(スポット溶接部We1)。天板部3F2bは、その左右両側の各縁部が、各サイドフレーム3F1の上面部にあてがわれて載置された状態として、その前後2箇所の部位がスポット溶接により上面部に一体的に結合された状態とされている(スポット溶接部We2)。傾斜部3F2cは、上述した両サイドフレーム3F1の間に位置して、上述した天板部3F2bの後縁部からシート後ろ下方向に斜めに真っ直ぐ延びる傾斜面を形成した状態とされている。
上述したフロントパネル3F2は、その前述したシート前方側に面を向ける前板部3F2aが、シートクッション3の前面骨格を形成している。また、フロントパネル3F2は、そのシート上方側に面を向ける天板部3F2bが、着座乗員の大腿部の先端近傍を支えるシートクッション3の前端部領域の上面骨格を形成している。また、フロントパネル3F2は、その天板部3F2bの後縁部からシート後ろ下方向に傾斜して延びる傾斜部3F2cが、着座乗員の大腿部を前上がり状に持ち上げて支持するシートクッション3の中央領域部の上面骨格を形成している。上述した傾斜部3F2cには、後述する支持ワイヤ11の前枠部11Aをそれぞれシート前方側から引掛けて掛着させることのできる引掛け部3F2c1が、シート幅方向の4箇所に並んで形成されている。これら引掛け部3F2c1は、それぞれ、傾斜部3F2cの一部がシート前方側から上方側に斜めの角度まで切り起こされた切り起こし部として形成されている。
支持体10は、四角枠状に組まれた支持ワイヤ11と、支持ワイヤ11の枠内に張設された布バネ12と、から構成されている。ここで、支持ワイヤ11が本発明の「枠体」に相当する。上述した支持ワイヤ11は、1本の鋼線材が四角枠状に折り曲げられて構成されており、その四角枠状に組まれた前枠部11Aの中央部にてワイヤの端部同士が溶着されて無端状に結合されていることにより、曲げや捩りに対する構造強度が高められた構成とされている。上述した支持ワイヤ11は、次のようにクッションフレーム3Fの枠内に掛着されている。先ず、支持ワイヤ11の前枠部11Aを、上述したフロントパネル3F2の傾斜部3F2cに形成された各引掛け部3F2c1にシート前方側から引掛けて掛着させる。次に、支持ワイヤ11の後枠部11Cを、クッションフレーム3Fのリヤパイプ3F3にシート上方側から押し込んで撓ませながら弾性的に掛着させる。これにより、支持ワイヤ11は、その前枠部11Aと後枠部11Cとがクッションフレーム3Fのフロントパネル3F2とリヤパイプ3F3とにそれぞれ掛着された状態となって、これらの間に架橋された状態となる。
ここで、上述した支持ワイヤ11の後枠部11Cは、各横枠部11Bの後端部がシート下方側にフック状に曲げられた形に形成されていることにより、上述したリヤパイプ3F3に対してシート上方側から引掛けて掛着させることのできる形に形成された状態とされている。したがって、上述した前枠部11Aをフロントパネル3F2の各引掛け部3F2c1に引掛けた後に、後枠部11Cをリヤパイプ3F3に対してシート上方側から押し込んで撓ませながら弾性的に掛着させることにより、前枠部11Aと後枠部11Cとがフロントパネル3F2とリヤパイプ3F3との間に強く張られた状態に架橋された状態となる。
そして、上記の掛着により、併せて、支持ワイヤ11は、その各横枠部11Bの中央部から外側へ延出するように設けられた各フック部11Eが、クッションフレーム3Fの各サイドフレーム3F1の上部に引掛けられた状態となる(図3〜図4参照)。これにより、支持ワイヤ11は、図3に示すように、クッションフレーム3Fの各サイドフレーム3F1の間にも架橋された状態となって、クッションフレーム3Fに対して前後左右の各部において支持された状態としてクッションフレーム3Fの枠内に組み付けられた状態となる。
ここで、上述した各横枠部11Bに設けられた各フック部11Eは、図7に示すように、それらの各横枠部11Bの下面部にあてがわれる部分が、各横枠部11Bの下面部に掬い掛けられるようにフック状に折り曲げられた形に形成されて、各横枠部11Bの下面部に溶着された状態とされている。これにより、各フック部11Eは、各横枠部11Bに対して、各横枠部11Bにかかる重力方向の荷重を強く支えられるように強固に結合された状態とされている。そして、各フック部11Eは、上述した各横枠部11Bとの溶着部からシート外側上方に斜めに延び出した形状とされており、更にその延び出した先の山状に折り曲げられた途中の平らな各部分が、各サイドフレーム3F1の上面部に面当接するように引掛けられて掛着される構成とされている。上記の掛着により、各フック部11Eは、それらの各サイドフレーム3F1の上部に跨る山状に折り曲げられた各部分によって、各サイドフレーム3F1に対してシート幅方向に位置ずれしないように引掛けられた状態とされる。
上述した支持ワイヤ11は、図2及び図4に示すように、上述した各横枠部11Bの前部と中央部とが、それぞれ第1屈曲部11B1、及び第2屈曲部11B2として、シート高さ方向に屈曲した形に折り曲げられて形成されており、各横枠部11Bの後部が、第3屈曲部11B3として、シート幅方向の内方側に屈曲した形に折り曲げられて形成された構成とされている。具体的には、第1屈曲部11B1は、各横枠部11Bを山状に折り曲げる形に形成されており、第2屈曲部11B2は、各横枠部11Bを谷状に折り曲げる形に形成されている。これにより、支持ワイヤ11は、その枠内に張設される後述する布バネ12を、上記の折り曲げられた各位置で、山状や谷状に折り曲げた形に張設した状態とする構成となっている。
したがって、詳細は後述するが、上記支持ワイヤ11の枠内に張設された布バネ12は、図5に示すように、その支持ワイヤ11の第1屈曲部11B1によって山状に突出した形に張設された前部によって、着座乗員の大腿部を支持するクッションパッド3Pの前部3Paを、前上がり状に強く持ち上げた状態に支持することができるようになっている。また、布バネ12は、その支持ワイヤ11の第2屈曲部11B2によって谷状に折り曲げられた形に張設された中間部によって、着座乗員の臀部を支えるクッションパッド3Pの下方側に膨らんだ形の尻支え部3Pbを広く面で受け止めて支持することができるように受け入れられるようになっている。第3屈曲部11B3は、上述した第1屈曲部11B1と共に、布バネ12(被膜部11D)の支持ワイヤ11に対する位置ずれを規制するものとして機能するようになっているが、詳細は後述することとする。
続いて、布バネ12は、図2に示すように、着座乗員の荷重を受け止めることのできる高い引張り強度を備えた伸張性を有する1枚の布材によって形成されている。上記布バネ12は、その左右両側の各縁部が、上述した支持ワイヤ11の各横枠部11Bに引張り込まれた状態にセットされて、これらの合わせ部が樹脂材(熱可塑性樹脂(ポリプロピレン,塩化ビニル樹脂,ポリエチレン)や、熱硬化性樹脂(フェノール樹脂,メラミン樹脂,エポキシ樹脂,ユリア樹脂)などの樹脂材)をインサート成形して形成した被膜部11Dによってそれぞれ一体的に結合されることにより、各横枠部11Bの間に架け渡された状態として張設された状態とされている。
上述した布バネ12は、上述した支持ワイヤ11に対し、上述した第1屈曲部11B1の形成箇所より前側の領域から第3屈曲部11B3の形成箇所より後側の領域までシート前後方向に広く被せ付けられた状態として張設されている。そして、上記布バネ12の左右両側の各縁部を上述した支持ワイヤ11の各横枠部11Bに固定する各被膜部11Dは、布バネ12の各縁部の第2屈曲部11B2の形成箇所を残す全領域を各横枠部11Bに対して結合するように、前部と後部とに分かれてそれぞれ長尺状の形に形成された状態とされている。これにより、上記各被膜部11Dは、上述した支持ワイヤ11の各横枠部11Bに形成された第1屈曲部11B1と第3屈曲部11B3に跨って形成された状態とされており、これらの屈曲した形状による規制によって、各横枠部11Bに対して長手方向や回転方向に位置ずれしないように強固に一体的に結合された状態に形成された状態とされている。
上述した布バネ12は、上述した第2屈曲部11B2の形成箇所において、各縁部が各横枠部11Bに結合されておらず、自由端の構成とされていることから、図5に示すように、クッションパッド3Pの尻支え部3Pbにかかる着座乗員の臀部の荷重を受け止める際に、他の部位と比べて伸張変形しやすくなっている。これにより、布バネ12は、クッションパッド3Pの尻支え部3Pbから受ける荷重を、他の面部に伝達して広く体圧分散させて受け止められるようになっている。
上述した布バネ12は、図3に示すように、1枚の布材によって形成されているが、その張設された領域により、クッションフレーム3Fの枠内領域を覆う本体面部12Aと、フロントパネル3F2の上部に掛かる延長面部12Bと、に区画されて形成されている。本体面部12Aは、クッションフレーム3Fのフロントパネル3F2とリヤパイプ3F3との間のシート前後方向の枠内領域を広く覆った状態として張設される、布バネ12の大半領域を占める面部として形成されている。延長面部12Bは、布バネ12の前縁部分の領域を占める面部として形成されており、上述したフロントパネル3F2のシート後ろ下方向に傾斜して延びる傾斜部3F2cの上部に掛かった状態に張設された状態とされている。
詳しくは、図5に示すように、上述した傾斜部3F2cがシート後ろ下方向に傾斜して延びるように形成されているのに対して、延長面部12Bは、第1屈曲部11B1からシート前下方向に傾斜して延びるように形成されており、傾斜部3F2cからはシート上方側に浮いた位置に張設された状態とされている。また、図3に示すように、上述した傾斜部3F2cは、そのシート幅方向の中央部から左右両側の縁部に向かって、後縁部がシート後方側に円弧状に張り出していく形に形成されている。このような後縁部が湾曲した形状の傾斜部3F2cに対して、上述した延長面部12Bは、その前縁部がシート幅方向に真っ直ぐに延びる形に張設された構成となっており、上述した傾斜部3F2cに対して、シート幅方向の中央部では比較的浅く掛かり、そこから左右両側に向かって漸次掛かりが深くなっていくように張設された状態とされている。
次に、図2を参照して、クッションパッド3Pの構成について説明する。クッションパッド3Pは、軟質ポリウレタンフォーム原料を発泡成形して形成したものである。このクッションパッド3Pは、上述したクッションフレーム3Fの上部に組み付けられることにより、クッションフレーム3Fの各枠部(各サイドフレーム3F1、フロントパネル3F2、リヤパイプ3F3)や上述した支持体10によって、下方側から広く面で支えられた状態にセットされるようになっている。具体的には、クッションパッド3Pは、上述したクッションフレーム3Fの各枠部によって支持された外周部では、これらによって下方側から硬く支持された状態とされ、上述した支持体10の布バネ12によって支持された中央部では、布バネ12の張設力によって下方側から弾性的に柔らかく支持された状態とされるようになっている。
詳しくは、上述したクッションパッド3Pは、クッションフレーム3Fの各枠部(各サイドフレーム3F1、フロントパネル3F2、リヤパイプ3F3)をシート外周側からそれぞれ覆った状態となるように組み付けられてセットされている。そして、クッションパッド3Pは、上記クッションフレーム3Fの上部に組み付けられた後に、その表面全体(着座面や前後左右の各側面)が覆われるようにクッションカバー3Cが被せ付けられて、クッションカバー3Cの各周縁部がクッションフレーム3Fの底部に引張り込まれて止着されることにより、このクッションカバー3Cの張設力によって、クッションフレーム3Fの各枠部(各サイドフレーム3F1、フロントパネル3F2、リヤパイプ3F3)にそれぞれ強く押し付けられて密着した状態に組み付けられて保持された状態とされている。
詳しくは、図5に示すように、上述したクッションパッド3Pは、その前部3Paが、上述したクッションフレーム3Fのフロントパネル3F2を前側と上側とからそれぞれ覆うように組み付けられて支持された状態とされており、後部3Pcが、クッションフレーム3Fのリヤパイプ3F3を後側と上側とからそれぞれ覆うように組み付けられて支持された状態とされている。上記の組み付けにより、クッションパッド3Pは、その着座乗員の臀部から強い体圧を受ける中央の尻支え部3Pbが、上述した支持体10の布バネ12によって下方側から適切に柔らかく受け止められる構成でありながら、その外周部が、上述したクッションフレーム3Fの各枠部(各サイドフレーム3F1、フロントパネル3F2、リヤパイプ3F3)によって下方側から強く安定的に支えられた状態に保持されるようになっている。
ここで、上述したクッションパッド3Pの表側面部には、その表面全体を覆うように被せ付けられるクッションカバー3C(図1参照)の所々の部位を内部に吊り込んで止着させることのできる吊込み溝3P1が形成されている。また、クッションパッド3Pの裏側面部(底面部)には、その着座乗員の大腿部を前上がり状に持ち上げて支持するフロントパネル3F2の傾斜部3F2c上に掛かる部位に、シート下方側に棚状に膨らんだ形の凸部3P2が形成されている。上記凸部3P2は、上記クッションパッド3Pの傾斜部3F2c上に掛かるシート幅方向の大部分の領域に亘って広く形成されており、クッションパッド3Pに着座乗員の荷重がかけられた際に、他の部分に先行して下方側に押し付けられて支持されるようになっている。この凸部3P2の形成により、着座乗員の体圧を、臀部を支えるクッションパッド3Pの尻支え部3Pbに集中させることなく、凸部3P2の形成部分にも広く分散させて受け止められるようになっている。
上述した凸部3P2は、上述した支持体10の布バネ12が、フロントパネル3F2の傾斜部3F2c上に掛かるように延長面部12Bが延長されて設けられた状態とされていることにより、フロントパネル3F2にではなく延長面部12Bによって下方側から支えられるように設けられた状態とされている。これにより、上述した強い圧潰力を受けて下方側に押し付けられる凸部3P2が、フロントパネル3F2と比べると柔らかい布バネ12によって支えられる構成となるため、凸部3P2の擦り減りを少なく抑えることができる。
このように、本実施例のシート1は、枠状のクッションフレーム3Fと、クッションフレーム3Fの枠内に張設されて着座乗員の荷重を面で支える可撓性の布バネ12と、を有する構成となっており、布バネ12は、クッションフレーム3Fの両サイドフレーム3F1間に架橋されており、クッションフレーム3Fの枠内を覆う本体面部12Aと、両サイドフレーム3F1のヒップポイントHPから遠い側の端部間に架橋されたフロントパネル3F2に掛かるように延長された延長面部12Bと、を有し、延長面部12Bにおいても着座乗員の荷重を支える構成とされている。
この構成により、布バネ12は、クッションフレーム3Fの枠内の他、両サイドフレーム3F1のヒップポイントHPから遠い側の端部間に架橋されたフロントパネル3F2をも覆うように張設された状態とされる。これにより、上記布バネ12によって、着座乗員の荷重を広く面で支えられるようにすることができる。
また、クッションパッド3Pは、そのフロントパネル3F2に掛けられた布バネ12の延長面部12Bによって支えられる部分に、延長面部12Bに対する押し付け力を高める凸部3P2が突出して形成された構成とされている。このように、クッションパッド3Pの上記延長面部12Bによって支えられる部分に凸部3P2が形成されていることにより、この部分においてクッションパッド3Pの支持力を高めることができる。また、これにより、クッションパッド3Pにかけられる着座乗員の体圧を、臀部等の体圧が強く掛けられる部分に集中させることなく、上記凸部3P2の形成部分に広く分散させることができる。
また、フロントパネル3F2は、シート上方側に面を向ける天板部3F2bと、天板部3F2bの後縁部からシート後ろ下方向に傾斜して延びる傾斜部3F2cと、を有する形状とされており、布バネ12は、その延長面部12Bが上述した傾斜部3F2cにシート上方側から掛けられた状態として、延長面部12Bの前縁部が傾斜部3F2cに引っ掛けられて掛着された状態として設けられている。また、布バネ12が、着座乗員の大腿部近傍を支えるフロントパネル3F2に掛かるように設けられていることにより、布バネ12によるクッションパッド3Pの支持からフロントパネル3F2によるクッションパッド3Pの支持への移行が両者の重なった部分において行われるようになる。したがって、布バネ12とフロントパネル3F2との境界部に生じる支持力の段差を効果的に緩めることができ、布バネ12による着座乗員の荷重の支持をより良好な形で行うことができる。
特に、布バネ12が、着座乗員の大腿部を前上がり状に持ち上げて支持するフロントパネル3F2の傾斜部3F2cに掛かるように設けられていることにより、布バネ12によるクッションパッド3Pの支持からフロントパネル3F2によるクッションパッド3Pの支持への移行が傾斜部3F2cにおいて行われるようになる。したがって、布バネ12とフロントパネル3F2との境界部に生じる支持力の段差を効果的に緩めることができ、布バネ12による着座乗員の荷重の支持をより良好な形で行うことができる。
続いて、実施例2のシート1の構成について、図8〜図9を用いて説明する。なお、本実施例では、実施例1で示したシート1と実質的な構成及び作用が同じとなる箇所については、これらと同一の符号を付して説明を省略し、異なる箇所について詳しく説明することとする。本実施例では、シートバック2に対して、着座乗員の荷重を面で支える可撓性の布バネ22が設定された構成となっている。
上述したシートバック2は、その内部骨格を成す枠状のバックフレーム2Fと、バックフレーム2Fの枠内に張設された布バネ22を有する支持体20と、これら支持体20とバックフレーム2Fとによって後方側(裏面側)から支えられた状態として着座乗員の荷重を柔らかく受け止めるバックパッド2Pと、バックパッド2Pの表面全体を覆う布製のバックカバー2Cと、を有して構成されている。ここで、バックフレーム2Fが本発明の「シートフレーム」に相当し、布バネ22が本発明の「面状体」に相当し、バックパッド2Pが本発明の「クッション材」に相当する。
図9に示すように、上述したバックフレーム2Fは、シートバック2の外周形状に沿った四角枠状の骨格形状に組まれて構成されている。具体的には、バックフレーム2Fは、左右一対のシート高さ方向に長尺な鋼板材より成るサイドフレーム2F1と、各サイドフレーム2F1の上端部間に一体的に架橋されて設けられた鋼管製のアッパフレーム2F2と、両サイドフレーム2F1の下部間に回転可能に枢着された状態として架橋された円鋼管製のコネクティングパイプ2F4と、によって構成されている。上述したアッパフレーム2F2の両側部間には、横長状の鋼板材より成る架橋フレーム2F3が一体的に架橋されて設けられている。ここで、上述した各サイドフレーム2F1が本発明の「サイドフレーム」に相当し、架橋フレーム2F3が本発明の「架橋フレーム」に相当する。
上述したコネクティングパイプ2F4は、シートバック2の各サイドフレーム2F1の下部に枢着された図示しないリクライナーの操作軸同士を一体的に連結するものとして、各サイドフレーム2F1の下部間に回転可能に枢着された状態として設けられているものである。架橋フレーム2F3は、上述した各サイドフレーム2F1の上端部同士を繋ぐように架橋されたアッパフレーム2F2の両側部間に一体的に架橋された状態として設けられているものである。上述した架橋フレーム2F3には、後述する支持ワイヤ21の上枠部21Aをそれぞれシート上方側から引掛けて掛着させることのできる引掛け部2F3aが、シート幅方向の4箇所に並んで形成されている。これら引掛け部2F3aは、それぞれ、架橋フレーム2F3の一部がシート上方側から前方側に斜めの角度まで切り起こされた切り起こし部として形成されている。
支持体20は、実施例1で示した支持体10の構成と同様に、四角枠状に組まれた支持ワイヤ21と、支持ワイヤ21の枠内に張設された布バネ22と、から構成されている。ここで、支持ワイヤ21が本発明の「枠体」に相当する。上述した支持ワイヤ21は、1本の鋼線材が四角枠状に折り曲げられて構成されており、その四角枠状に組まれた上枠部21Aの中央部にてワイヤの端部同士が溶着されて無端状に結合されていることにより、曲げや捩りに対する構造強度が高められた構成とされている。上述した支持ワイヤ21は、次のようにバックフレーム2Fの枠内に掛着されている。先ず、支持ワイヤ21の上枠部21Aを、上述したアッパフレーム2F2間に架橋された架橋フレーム2F3に切り起こされて形成された各引掛け部2F3aにシート上方側から引掛けて掛着させる。次に、支持ワイヤ21の下枠部21Cを、バックフレーム2Fのコネクティングパイプ2F4にシート前方側から押し込んで撓ませながら弾性的に掛着させる。これにより、支持ワイヤ21は、その上枠部21Aと下枠部21Cとがバックフレーム2Fの架橋フレーム2F3とコネクティングパイプ2F4とにそれぞれ掛着された状態となって、これらの間に架橋された状態となる。
ここで、上述した支持ワイヤ21の下枠部21Cは、各横枠部21Bの下端部がシート後方側にフック状に曲げられた形に形成されていることにより、上述したコネクティングパイプ2F4に対してシート前方側から引掛けて掛着させることのできる形に形成された状態とされている。したがって、上述した上枠部21Aを架橋フレーム2F3の各引掛け部2F3aに引掛けた後に、下枠部21Cをコネクティングパイプ2F4に対してシート前方側から押し込んで撓ませながら弾性的に掛着させることにより、上枠部21Aと下枠部21Cとが架橋フレーム2F3とコネクティングパイプ2F4との間に強く張られた状態に架橋された状態となる。
そして、上記の掛着により、併せて、支持ワイヤ21は、その各横枠部21Bの中央部から外側へ延出するように設けられた各フック部21Eが、バックフレーム2Fの各サイドフレーム2F1の前部に引掛けられた状態となる。これにより、支持ワイヤ21は、バックフレーム2Fの各サイドフレーム2F1の間にも架橋された状態となって、バックフレーム2Fに対して上下左右の各部において支持された状態としてバックフレーム2Fの枠内に組み付けられた状態となる。
ここで、上述した各横枠部21Bに設けられた各フック部21Eは、それらの各横枠部21Bの後面部にあてがわれる部分が、各横枠部21Bの後面部に掬い掛けられるようにフック状に折り曲げられた形に形成されて、各横枠部21Bの後面部に溶着された状態とされている。これにより、各フック部21Eは、各横枠部21Bに対し、各横枠部21Bにかかる背凭れ荷重を強く支えられるように強固に結合された状態とされている。そして、各フック部21Eは、上述した各横枠部21Bとの溶着部からシート外側前方に斜めに延び出した形状とされており、更にその延び出した先の山状に折り曲げられた途中の平らな各部分が、各サイドフレーム2F1の前面部に面当接するように引掛けられて掛着される構成とされている。この掛着により、各フック部21Eは、それらの各サイドフレーム2F1の前部に跨る山状に折り曲げられた各部分によって、各サイドフレーム2F1に対してシート幅方向に位置ずれしないように引掛けられた状態とされる。
続いて、布バネ22は、着座乗員の荷重を受け止めることのできる高い引張り強度を備えた伸張性を有する1枚の布材によって形成されている。上記布バネ22は、その左右両側の各縁部が、上述した支持ワイヤ21の各横枠部21Bに引張り込まれた状態にセットされて、これらの合わせ部が樹脂材をインサート成形して形成した被膜部21Dによってそれぞれ一体的に結合されることにより、各横枠部21Bの間に架け渡された状態として張設された状態とされている。
上述した布バネ22は、1枚の布材によって形成されているが、その張設された領域により、バックフレーム2Fの架橋フレーム2F3より下側の枠内領域を覆う本体面部22Aと、架橋フレーム2F3の前部に掛かる延長面部22Bと、に区画されて形成されている。本体面部22Aは、バックフレーム2Fの架橋フレーム2F3とコネクティングパイプ2F4との間のシート高さ方向の枠内領域を広く覆った状態として張設される、布バネ22の大半領域を占める面部として形成されている。延長面部22Bは、布バネ22の上縁部分の領域を占める面部として形成されており、上述した架橋フレーム2F3の前部に掛かった状態に張設された状態とされている。
バックパッド2Pは、軟質ポリウレタンフォーム原料を発泡成形して形成したものである。このバックパッド2Pは、上述したバックフレーム2Fの前部に組み付けられることにより、バックフレーム2Fの各枠部(各サイドフレーム2F1、アッパフレーム2F2、コネクティングパイプ2F4)や上述した支持体20によって、後方側から広く面で支えられた状態にセットされるようになっている。具体的には、バックパッド2Pは、上述したバックフレーム2Fの各枠部によって支持された外周部では、これらによって後方側から硬く支持された状態とされ、上述した支持体20の布バネ22によって支持された中央部では、布バネ22の張設力によって後方側から弾性的に柔らかく支持された状態とされるようになっている。
詳しくは、上述したバックパッド2Pは、バックフレーム2Fの各枠部(各サイドフレーム2F1、アッパフレーム2F2、コネクティングパイプ2F4)をシート外周側からそれぞれ覆った状態となるように組み付けられてセットされている。そして、バックパッド2Pは、上記バックフレーム2Fの前部に組み付けられた後に、その表面全体(着座面や上下左右の各側面)が覆われるようにバックカバー2C(図8参照)が被せ付けられて、バックカバー2Cの各周縁部がバックフレーム2Fの背部に引張り込まれて止着されることにより、このバックカバー2Cの張設力によって、バックフレーム2Fの各枠部(各サイドフレーム2F1、アッパフレーム2F2、コネクティングパイプ2F4)にそれぞれ強く押し付けられて密着した状態に組み付けられて保持された状態とされている。
詳しくは、上述したバックパッド2Pは、その上部2Paが、上述したバックフレーム2Fのアッパフレーム2F2を前側と上側とからそれぞれ覆うように組み付けられて支持された状態とされており、下部2Pcが、バックフレーム2Fのコネクティングパイプ2F4を前側と下側とからそれぞれ覆うように組み付けられて支持された状態とされている。上記の組み付けにより、バックパッド2Pは、その着座乗員の腰部から強い体圧を受ける中央の腰支え部2Pbが、上述した支持体20の布バネ22によって後方側から適切に柔らかく受け止められる構成でありながら、その外周部が、上述したバックフレーム2Fの各枠部(各サイドフレーム2F1、アッパフレーム2F2、コネクティングパイプ2F4)によって後方側から強く安定的に支えられた状態に保持されるようになっている。
ここで、上述したバックパッド2Pの表側面部には、その表面全体を覆うように被せ付けられるバックカバー2C(図8参照)の所々の部位を内部に吊り込んで止着させることのできる吊込み溝2P1が形成されている。また、バックパッド2Pの裏側面部(背面部)には、その着座乗員の肩甲骨近傍を支持する架橋フレーム2F3に掛かる部位に、シート後方側に棚状に膨らんだ形の凸部2P2が形成されている。上記凸部2P2は、上記バックパッド2Pの架橋フレーム2F3上に掛かるシート幅方向の大部分の領域に亘って広く形成されており、バックパッド2Pに着座乗員の荷重がかけられた際に、他の部分に先行して後方側に押し付けられて支持されるようになっている。この凸部2P2の形成により、着座乗員の体圧を、腰部を支えるバックパッド2Pの腰支え部2Pbに集中させることなく、凸部2P2の形成部分にも広く分散させて受け止められるようになっている。
上述した凸部2P2は、上述した支持体20の布バネ22が、架橋フレーム2F3上に掛かるように延長面部22Bが延長されて設けられた状態とされていることにより、架橋フレーム2F3にではなく延長面部22Bによって下方側から支えられるように設けられた状態とされている。これにより、上述した強い圧潰力を受けて後方側に押し付けられる凸部2P2が、架橋フレーム2F3と比べると柔らかい布バネ22によって支えられる構成となるため、凸部2P2の擦り減りを少なく抑えることができる。
このように、本実施例のシート1は、枠状のバックフレーム2Fと、バックフレーム2Fの枠内に張設されて着座乗員の荷重を面で支える可撓性の布バネ22と、を有する構成となっており、布バネ22は、バックフレーム2Fの両サイドフレーム2F1間に架橋されており、バックフレーム2Fの枠内を覆う本体面部22Aと、両サイドフレーム2F1のヒップポイントHPから遠い側の端部間に架橋された架橋フレーム2F3に掛かるように延長された延長面部22Bと、を有し、延長面部22Bにおいても着座乗員の荷重を支える構成とされている。
この構成により、布バネ22は、バックフレーム2Fの枠内の他、両サイドフレーム2F1のヒップポイントHPから遠い側の端部間に架橋された架橋フレーム2F3をも覆うように張設された状態とされる。これにより、上記布バネ22によって、着座乗員の荷重を広く面で支えられるようにすることができる。
また、バックパッド2Pは、その架橋フレーム2F3に掛けられた布バネ22の延長面部22Bによって支えられる部分に、延長面部22Bに対する押し付け力を高める凸部2P2が突出して形成された構成とされている。このように、バックパッド2Pの上記延長面部22Bによって支えられる部分に凸部2P2が形成されていることにより、この部分においてバックパッド2Pの支持力を高めることができる。また、これにより、バックパッド2Pにかけられる着座乗員の体圧を、腰部等の体圧が強く掛けられる部分に集中させることなく、上記凸部2P2の形成部分に広く分散させることができる。
また、布バネ22が、着座乗員の肩甲骨近傍を支える架橋フレーム2F3に掛かるように設けられていることにより、布バネ22によるバックパッド2Pの支持から架橋フレーム2F3によるバックパッド2Pの支持への移行が両者の重なった部分において行われるようになる。したがって、布バネ22と架橋フレーム2F3との境界部に生じる支持力の段差を効果的に緩めることができ、布バネ22による着座乗員の荷重の支持をより良好な形で行うことができる。
以上、本発明の実施形態を2つの実施例を用いて説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施することができるものである。例えば、本発明の「乗物用シート」は、鉄道等の自動車以外の車両に適用されるシートであってもよく、また、航空機、船舶等の様々な乗物用に供されるシートに広く適用することができるものである。また、本発明の「乗物用シート」は、シートフレームの枠内に張設された面状体によって着座乗員の荷重を支える構成とされて、「クッション材」を備えない構成となっているものであってもよい。なお、「クッション材」は、ネット材等の着座乗員の荷重を柔らかく受け止める弾性構造を備えたパッド以外の構造物であってもよい。
また、本発明の「面状体」は、シートフレームに直接取り付けられて張設されるものであってもよく、上記各実施例で示したように枠体(支持ワイヤ11,21)を介してシートフレームに取り付けられるものであってもよい。また、「面状体」は、布材等の可撓性の面状体であればよく、伸張性のない面状体であっても構わない。具体的な「面状体」の材質としては、布帛(織物,編物,不織布)、皮革(天然皮革,合成皮革)、ネット体(繊維を網目状に織製した部材)を例示することができる。また、「面状体」は、シートフレームの枠間に架橋されて設けられるものであればよく、両サイドフレームの間でのみ架橋されたものや、前後のフレーム間でのみ架橋されたものであってもよい。