JP5990490B2 - 気流粉砕小豆食品の製造方法 - Google Patents

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本発明は、気流粉砕小豆食品の製造方法に関し、特に、小豆を事前に茹でることなく直接製造可能な小豆の食品の製造方法に関する。
小豆(あずき,adzuki bean,Vigna angularis)は、菓子の餡(あん)、汁粉(しるこ)や善哉(ぜんざい)、羊羹(ようかん)等をはじめとする広汎な食品の材料として知られ使用されている。通常、小豆の調理に際し生小豆は熱湯中で十分に軟らかくなるまで蒸煮される。そして、砂糖等の調味料が蒸煮された小豆中に添加され、全体に味が馴染むまでさらに蒸煮される。ただし、小豆の種皮や内部から溶出する成分が灰汁(あく)となる。そこで、灰汁による雑味を抑制するため、蒸煮中こまめに灰汁は取り除かれる。
小豆の加工飲料を食品工業的に量産する場合であっても、上記と同様、はじめに小豆を蒸煮して軟らかくして、その後摩砕(まさい:すりつぶし)、調味を経ることによりできあがる(特許文献1等参照)。前出の特許文献に開示の製法によると、粒状の小豆をそのまま蒸煮していた。このため、十分に摩砕可能な軟らかさになるまでの蒸煮時間を要する。この場合、小豆の茹で汁は廃棄される。これに対し、小豆の処理に要する時間や手間を圧縮する目的から、予め生小豆を粉砕し、水、調味料等を直接缶容器内に入れて封止し、レトルト加熱を通じて小豆飲料に仕上げる製造方法が提案されている(特許文献2参照)。
小豆については、例えばその色から理解されるように、色素等の各種成分が含まれている。しかしながら、前述のとおり小豆の茹で汁は廃棄されることが多く、小豆の皮等に含まれる有効成分を十分に活用しきれていなかった。例えば、小豆の煮汁には抗腫瘍性成分が含まれていたり(特許文献3参照)、抗アレルギー成分が含まれていたり(特許文献4参照)することが明らかとなった。このことから、特許文献2等の小豆の全体利用を検討する価値は十分にある。
しかしながら、小豆の有用成分を活用しようとしても煮汁等の灰汁の雑味も加わる。このため、従前慣れ親しんできた小豆の食品との差異に違和感が生じやすい。そのため、現状では、小豆の有用成分の利用に着手したいものの、食味の問題から極めて限られた分野において実用化されているに過ぎない。
そこで、小豆の全体利用の用途を拡大してより多くの小豆食品を実現し、同時に、個々の食品自体における雑味等に由来する不味さの影響を極力回避した新たな食品が求められるに至った。
特開平11−225697号公報 特許第4257323号公報 特許第4971566号公報 特開2011−178680号公報
本発明は、前記の点に鑑みなされたものであり、小豆の有用成分の活用のため小豆自体の全体利用の用途を拡大してより多くの小豆食品を実現し、同時に、個々の食品自体における小豆の果皮等に起因する雑味等由来の不味さを極力回避した新たな食品の製造方法を提供する。
すなわち、請求項1の発明は、生状態の小豆を気流粉砕機により粉砕して最大粒径を500μm以下とし、かつ平均粒径を50μm以下とする気流粉砕小豆粉末と、糖類と、水分とを含有し、これらを加熱る小豆食品の製造方法であって、前記気流粉砕小豆粉末は前記小豆食品の全重量の5〜20重量%であり、前記気流粉砕小豆粉末のデンプン粒は直に分散されて存在していて前記小豆食品は前記気流粉砕小豆粉末に含有されるデンプンの糊化によりペースト状物に仕上がることを特徴とする気流粉砕小豆食品の製造方法に係る。
請求項2の発明は、生状態の小豆を気流粉砕機により粉砕して最大粒径を500μm以下とし、かつ平均粒径を50μm以下とする気流粉砕小豆粉末と、糖類と、寒天と、水分とを含有し、これらを加熱る小豆食品の製造方法であって、前記気流粉砕小豆粉末は前記小豆食品の全重量の1〜3.5重量%であり、前記気流粉砕小豆粉末のデンプン粒は直に分散して存在していて前記小豆食品は前記気流粉砕小豆粉末に含有されるデンプンの糊化と前記寒天によりゾル状物に仕上がることを特徴とする気流粉砕小豆食品の製造方法に係る。
請求項3の発明は、生状態の小豆を気流粉砕機により粉砕して最大粒径を500μm以下とし、かつ平均粒径を50μm以下とする気流粉砕小豆粉末と、糖類と、寒天と、水分とを含有し、これらを加熱る小豆食品の製造方法であって、前記気流粉砕小豆粉末は前記小豆食品の全重量の4〜15重量%であり、前記気流粉砕小豆粉末のデンプン粒は直に分散して存在していて前記小豆食品は前記気流粉砕小豆粉末に含有されるデンプンの糊化と前記寒天によりゲル状物に仕上がることを特徴とする気流粉砕小豆食品の製造方法に係る。
請求項4の発明は、生状態の小豆を気流粉砕機により粉砕して最大粒径を500μm以下とし、かつ平均粒径を50μm以下とする気流粉砕小豆粉末と、糖類と、キサンタンガムまたはローカストビーンガムのいずれかもしくは両方を含む増粘多糖類と、水分とを含有し、これらを加熱る小豆食品の製造方法であって、前記気流粉砕小豆粉末は前記小豆食品の全重量の1〜15重量%であり、前記気流粉砕小豆粉末のデンプン粒は直に分散して存在していて前記小豆食品は前記気流粉砕小豆粉末に含有されるデンプンの糊化と前記増粘多糖類によりゲル状物に仕上がることを特徴とする気流粉砕小豆食品の製造方法に係る。
請求項1の発明に係る気流粉砕小豆食品の製造方法によると、生状態の小豆を気流粉砕機により粉砕して最大粒径を500μm以下とし、かつ平均粒径を50μm以下とする気流粉砕小豆粉末と、糖類と、水分とを含有し、これらを加熱る小豆食品の製造方法であって、前記気流粉砕小豆粉末は前記小豆食品の全重量の5〜20重量%であり、前記気流粉砕小豆粉末のデンプン粒は直に分散されて存在していて前記小豆食品は前記気流粉砕小豆粉末に含有されるデンプンの糊化によりペースト状物に仕上がるため、小豆の有用成分の活用のため小豆自体の全体利用を実現した小豆のあんに似た新たな食品に仕上がる。
請求項2の発明に係る気流粉砕小豆食品の製造方法によると、生状態の小豆を気流粉砕機により粉砕して最大粒径を500μm以下とし、かつ平均粒径を50μm以下とする気流粉砕小豆粉末と、糖類と、寒天と、水分とを含有し、これらを加熱る小豆食品の製造方法であって、前記気流粉砕小豆粉末は前記小豆食品の全重量の1〜3.5重量%であり、前記気流粉砕小豆粉末のデンプン粒は直に分散して存在していて前記小豆食品は前記気流粉砕小豆粉末に含有されるデンプンの糊化と前記寒天によりゾル状物に仕上がるため、小豆の有用成分の活用のため小豆自体の全体利用を実現したゼリーに似た小豆の新たな食品に仕上がる。
請求項3の発明に係る気流粉砕小豆食品の製造方法によると、生状態の小豆を気流粉砕機により粉砕して最大粒径を500μm以下とし、かつ平均粒径を50μm以下とする気流粉砕小豆粉末と、糖類と、寒天と、水分とを含有し、これらを加熱る小豆食品の製造方法であって、前記気流粉砕小豆粉末は前記小豆食品の全重量の4〜15重量%であり、前記気流粉砕小豆粉末のデンプン粒は直に分散して存在していて前記小豆食品は前記気流粉砕小豆粉末に含有されるデンプンの糊化と前記寒天によりゲル状物に仕上がるため、小豆の有用成分の活用のため小豆自体の全体利用を実現したようかんやういろうに似た新たな小豆の食品に仕上がる。
請求項4の発明に係る気流粉砕小豆食品の製造方法によると、生状態の小豆を気流粉砕機により粉砕して最大粒径を500μm以下とし、かつ平均粒径を50μm以下とする気流粉砕小豆粉末と、糖類と、キサンタンガムまたはローカストビーンガムのいずれかもしくは両方を含む増粘多糖類と、水分とを含有し、これらを加熱る小豆食品の製造方法であって、前記気流粉砕小豆粉末は前記小豆食品の全重量の1〜15重量%であり、前記気流粉砕小豆粉末のデンプン粒は直に分散して存在していて前記小豆食品は前記気流粉砕小豆粉末に含有されるデンプンの糊化と前記増粘多糖類によりゲル状物に仕上がるため、小豆の有用成分の活用のため小豆自体の全体利用を実現したくずもちやようかん等に似た幅広い食べごたえに対応した新たな小豆の食品に仕上がる。
本発明の気流粉砕小豆食品の製造工程の概略図である。 気流粉砕機により小豆を粉砕したときの粒度分布図である。 カッティングミルにより小豆を粉砕したときの粒度分布図である。 従前の加工による小豆のデンプン粒の写真である。 カッティングミルを使用した小豆のデンプン粒の写真である。 気流粉砕機を使用した小豆のデンプン粒の写真である。
本発明の製造方法における気流粉砕小豆食品とは、生状態の小豆を気流粉砕機により粉砕して得た気流粉砕小豆粉末を原料とする。これに糖類、水分、その他として寒天や増粘多糖類等を添加し加熱して調製した小豆食品である。請求項1ないし4の発明に規定するように、気流粉砕小豆粉末の配合量、寒天や増粘多糖類等の有無並びに添加量に応じてできあがる食品自体の粘度、硬さの調節が可能な食品である。はじめに原料、装置について説明する。
原料の小豆は、収穫後に適宜選別された加熱されていない生状態の小豆である。気流粉砕の便宜上、乾燥した生状態の小豆が用いられる。この乾燥した生状態の小豆とは、小豆を含水により軟化することなく、収穫、洗浄後、自然乾燥あるいは通風乾燥等により水分含量を10ないし20%にまで低下させた小豆であり、一般に流通している形態である。なお、生状態の小豆には、水蒸気や炒ることにより表面を殺菌した小豆も含まれる。
通常、生状態の小豆ははじめに蒸煮され、摩砕可能な軟らかさに仕上げられる。しかし、本発明の場合、原料である生状態の小豆は気流粉砕機により粉砕される。小豆は気流粉砕により最大粒径500μm以下、かつ、平均粒径50μm以下の気流粉砕小豆粉末に加工される。気流粉砕小豆粉末の最大粒径は、装置性能を前提に後出の加熱工程における熱の通りやすさ、最終的にできあがる小豆食品の舌触り等の感触を総合的に考慮して500μm以下、好ましくは300μm以下に規定される。また、気流粉砕小豆粉末の平均粒径は、気流粉砕による気流粉砕小豆粉末の粒度分布の把握を容易にするとともに、水への分散し易さ、最終的にできあがる小豆食品の感触、デンプンの粒子の状態等を総合的に考慮して規定される。そこで、平均粒径は50μm以下、好ましくは40μm以下である。
本明細書における「平均粒径」とは、後出の実施例のレーザー回折・散乱式 粒子径・粒度分布測定装置を用いてレーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径(累積平均径)を意味する。
気流粉砕とは、粉砕装置の粉砕室内に生じた気流の渦の中に原料となる生状態の小豆を投入し、この生小豆同士が互いに衝突して砕ける現象を利用して、生状態の小豆から順次微粉末まで粒径を細かくして粉化する粉砕方法である。このことから自明なように、仮に含水して膨潤した小豆を気流粉砕機に投入した場合、湿った小豆が装置の粉砕室に貼り付く等、十分な粉砕は不可能である。従って、気流粉砕の場合、被粉砕物(小豆)は含水していない乾燥生小豆とする必要がある。
気流粉砕の結果、粉砕前の3ないし6mmの豆粒大の小豆は、前述の粉末状まで粉砕される。生小豆を粉砕する気流粉砕機として、例えば、特開2007−275849号公報に開示のジェットミル、特開2011−206621号公報に開示の気流式粉砕機等の各種装置が挙げられる。前記のジェットミルの場合、同装置の粉砕室内に圧縮空気等の気体が噴射され、気流の渦が生成される。また、前記の気流式粉砕機の場合、ファン等の回転翼が粉砕室内に備えられ、当該回転翼により気流の渦が生じる。
気流粉砕法(気流粉砕機)の一つ目の利点に、被粉砕物(生状態の小豆)が装置内の粉砕部分と接触しない点である。カッティングミル等の通常の粉砕においては、被粉砕物と粉砕用の刃や装置の壁面等との接触は不可避である。しかし、気流粉砕法によると気流に乗った被粉砕物同士の衝突であるため、被粉砕物以外の混入は他の粉砕方法と比較して抑えられる。
二つ目の利点に、粉砕により生じた粉砕物の粒度分布が比較的揃っていることである。後記実施例において詳述するが、気流粉砕機とカッティングミルとの粒度分布を比較した場合、気流粉砕機を用いた粉砕では粒度分布は小粒径側にまとまり、分散の少ない分布である。従って、気流粉砕機の使用は気流粉砕小豆粉末の品質を安定化させる観点から好ましい。
未粉砕または規定よりも大きい小豆の破片の除去とともに気流粉砕小豆粉末の粉砕後の粒径を揃えるため、篩別を加えることができる。ここでは気流粉砕小豆粉末は20メッシュないし50メッシュの適宜の目開きの篩に通される。使用する篩の規格はJIS Z 8801−1(2006)に準拠する。こうして、まず、生状態の小豆から気流粉砕小豆粉末を得ることができる。
前記の気流粉砕機とカッティングミルの粉砕方法を比較した場合、粉末化している点では共通である。ただし、粒度分布の均整では気流粉砕が優れている。形式的にはこれらの事象しか見えてこない。ところが、発明者は、双方の粉砕方法により粉砕した小豆粉末を用いて実際に加熱調理した際のデンプン粒の形態の相違を明らかにした。具体的には、気流粉砕による小豆粉末では、デンプン粒がそれぞれ独立して存在する。これに対してカッティングミル粉砕の小豆粉末では、デンプン粒が袋状物として存在する。
すなわち、食品中に存在する粒の大きさの相違から、粒の舌触りが異なると考えられる。また、個々のデンプン粒が直に散在しているため、比較的糊化しやすい性質が想定される。それゆえ、気流粉砕を採用した小豆の粉砕は、粒度制御のみならず食品の仕上がりを左右する上でも重要である。これについては後記する実施例にて詳述する。
小豆食品の主な味付け、あるいは気流粉砕小豆粉末の水溶分散等のために糖類が用いられる。糖類の種類や配合量等はできあがる小豆食品に応じて適宜である。糖類は、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、異性化糖、オリゴ糖、還元水あめ、デンプン糖化物等の一般的な糖類であり、グラニュー糖、液糖、水あめ、黒砂糖、蜂蜜、メープルシロップ等である。さらに、トレハロース等の糖類、さらにはソルビトール等の糖アルコールを加えても良い。
できあがる小豆食品の粘性や弾性等の食感の調整のため、寒天や増粘多糖類が添加される。請求項1の製造方法の発明に規定する小豆食品の場合、気流粉砕小豆粉末は相対的に多いことから、小豆自体のデンプンが熱により糊化することにより粘性を帯びる。このため、特段粘弾性を調整するための成分を加えなくても良い。しかし、気流粉砕小豆粉末の配合量いかんによりデンプン量も増減する。この場合、デンプンを補助することに加え、粘弾性に関する新たに食感を付与する上で寒天や増粘多糖類が添加される。
寒天は、一般にようかん(羊羹)等の和菓子に用いられる材料である。小豆食品に占める濃度はおよそ0.2ないし2重量%である。0.2重量%未満では保形性が悪く、液状の流動質に近い。2重量%を超えると弾力が強くなりすぎて逆に噛み切り難く食感を悪くしがちである。小豆食品の粘弾性の程度に応じて加減される。増粘多糖類は、キサンタンガムまたはローカストビーンガムのいずれか一方もしくは両方を含む成分であり、含水、加熱により粘性を帯びる。増粘多糖類の小豆食品に占める濃度は0.5ないし1重量%添加量である。この量は目安であり、どの種類を用いるのかによっても変動する。増粘多糖類は寒天と異なる粘性を食品に付与できることから適宜使い分けられる。寒天と増粘多糖類の選択は、小豆食品の風味、粘弾性の具合等を考慮して選択される。
本発明の気流粉砕小豆食品の製造工程は、図1の工程図のとおり示される。まず、生状態の小豆は気流粉砕機を用いて気流粉砕小豆粉末に粉砕される。そして、気流粉砕小豆粉末は、所定量の水の中に投入、攪拌され、水中に均一に分散される。仮に湯を用いた場合、気流粉砕小豆粉末が均一に分散する前に小豆に含まれるデンプンの一部と湯が混ざり合って塊状物(一般に「だま」と称される。)を形成してしまう。そこで、均一な分散が妨げられる。しかし、水の場合、小豆のデンプンは糊化しないため、このおそれはない。
気流粉砕小豆粉末の水分散液は沸騰するまで加熱される(蒸煮)。加熱を通じて、小豆特有の臭気やあく等を取り除くことができ、風味や味覚の調整が可能である。同時に、豆類に含まれるレクチン等の糖結合性タンパク質は熱変性される。糖類は加熱中あるいはその前後に添加され、寒天や増粘多糖類は加熱前に添加される。最終的に加熱を通じて全体の水分量が調整される。そして、所定の容器等に充填された後に冷却されて気流粉砕小豆食品(小豆食品)は完成する。
本発明の製造方法に規定する気流粉砕小豆食品(小豆食品)は、気流粉砕小豆粉末に由来する小豆の風味と糖類の甘味を併せ持つ食品である。さらに、気流粉砕小豆食品は小豆粉砕した粉末を全部用いて加工することができるため、従前の製法では小豆の煮汁、果皮等の未利用分も余すことなく混入される。そのため、小豆の有効成分を摂取する上で効果的である。同時に、従来の小豆食品の製法では不可避であった小豆の煮汁の処理負担軽減や加工時間の圧縮も可能である。このため、全体的に製造経費の少なくすることが可能であるといえる。
これより、気流粉砕小豆粉末の配合量及び寒天や増粘多糖類の有無と、できあがる小豆食品の性状、外観について順に説明する。
請求項1の製造方法の発明に規定する気流粉砕小豆食品(小豆食品−I)にあっては、小豆食品の全重量に占める気流粉砕小豆粉末の重量を5ないし20重量%とし、これと糖類と水分のみから前掲図1の工程により調整すると、気流粉砕小豆粉末に含有されるデンプンの糊化によりペースト状物に仕上がる。小豆のペースト状食品の特徴としては、既存の小豆の餡(あん)に近似しており、製菓材料として都合がよい。むろん、直接他の食品と合わせることもできる。前記のペースト状とは、トマトペースト、ピーナッツバター、マーガリン、既存の小豆のあん等の一般的な硬さ具合の範囲である。この硬さの程度は自明ながら気流粉砕小豆粉末の配合量、すなわち小豆中のデンプン量と相関する。
小豆食品−Iにおいて、気流粉砕小豆粉末の配合割合が5重量%を下回る場合、量的に希薄となり所望のペーストの性状に仕上がらない。また、20重量%を上回る場合、粘性が高く機器による充填や搬送に支障を来す。そこで、前記の5ないし20重量%の範囲が好例である。気流粉砕小豆粉末の当該配合量によるペースト状の性状では、小豆自体のデンプンの影響から芋類の食感に近くみずみずしさはあまり生じない。そのため、寒天や増粘多糖類の添加は省略される。
請求項2の製造方法の発明に規定する気流粉砕小豆食品(小豆食品−II)にあっては、小豆食品の全重量に占める気流粉砕小豆粉末の重量は1ないし3.5重量%である。これと糖類と水分、さらに寒天が添加され前掲図1の工程により調整され、気流粉砕小豆粉末に含有されるデンプンの糊化と寒天の作用によりゾル状物に仕上がる。当該小豆のゾル状食品とは、液体よりは流動性が少なく、一般的なゼリーや寒天の食品よりもさらに希釈で軟らかい。ちょうどジャムないしヨーグルトぐらいの硬さであり保形性は乏しく、振ると簡単に崩れることから、例えばスプーン等で押し当てて崩しながら喫食できる程度の軟らかさである。気流粉砕小豆粉末自体の配合量が少ないため、デンプンの糊化による影響は少なく粘性は低い。
小豆食品−IIにおいて、気流粉砕小豆粉末の配合割合が1重量%を下回る場合、当該食品に占める気流粉砕小豆粉末が量的に少なく、水っぽさが全面に出て、小豆らしい風味が失せている。また、3.5重量%を上回る場合、小豆粉末中のデンプンの糊化の影響から、柔らかくみずみずしい食感から次第に粘性が強まり、所望のゾル状物から乖離してしまう。これらの観点から、前記の1ないし3.5重量%の範囲が好例である。
請求項3の製造方法の発明に規定する気流粉砕小豆食品(小豆食品−III)にあっては、小豆食品の全重量に占める気流粉砕小豆粉末の重量は4ないし15重量%である。これと糖類と水分、さらに寒天が添加され前掲図1の工程により調整され、気流粉砕小豆粉末に含有されるデンプンの糊化と寒天の作用によりゲル状物に仕上がる。当該小豆のゲル状食品とは、前出のゾル状食品よりも粘弾性を備え、一般的なゼリーや寒天の食品ないしようかん(羊羹)やういろう(外郎)等の硬さであり十分な保形性を備える。そのため、スプーンですくうことや切り分けて喫食することも可能である。気流粉砕小豆粉末の配合量が増加しているため、これに含まれるデンプンの糊化から全体に粘性度が高まる。さらに、寒天の保水性に起因するなめらかさも加わる。そこで、概ねようかんやういろうに近似した食感に仕上がる。
小豆食品−IIIにおいて、気流粉砕小豆粉末の配合割合が4重量%を下回る場合、当該食品に占める気流粉砕小豆粉末が量的に少ない。そのため、小豆のようかんを前提にした際の小豆らしい風味が乏しく物足りなさが生じる。また、15重量%を上回る場合、デンプン量の増加に伴って粘性が高く充填時の流動性等の取り扱いが困難となる。これらを踏まえ、前記の4ないし15重量%の範囲が好例である。
請求項4の製造方法の発明に規定する気流粉砕小豆食品(小豆食品−IV)にあっては、小豆食品の全重量に占める気流粉砕小豆粉末の重量は1ないし15重量%である。これと糖類と水分、さらに増粘多糖類が添加され前掲図1の工程により調整され、気流粉砕小豆粉末に含有されるデンプンの糊化と増粘多糖類の作用によりゲル状物に仕上がる。当該小豆のゲル状食品は、粘弾性を生じさせる成分を寒天から増粘多糖類に変更したことにより、粘弾性の質も変化する。前出のゾル状食品(II)よりも粘弾性を備えるとともに、寒天のゲル状食品(III)より増粘多糖類に由来するみずみずしさや軟らかさを備えた食品である。例えば、くずもち(葛餅)やわらびもち(蕨餅)からようかん(羊羹)等まで硬さを変化させた多用な食べごたえの仕上がりとなる。
小豆食品−IVにおいては、増粘多糖類の使用によるため寒天の場合と比較して比較的気流粉砕小豆粉末の配合範囲は広い。すなわち、所望の食品の作り分けが容易であり用途、食感に応じ自由度は高い。この場合、気流粉砕小豆粉末の配合割合が1重量%を下回る場合、当該食品に占める気流粉砕小豆粉末が量的に少ない。そのため、小豆らしい風味が乏しく小豆食品のとして物足りない。また、15重量%を上回る場合、デンプン量の増加に伴って粘性が過剰となり充填時の流動性等の取り扱いが困難となる。これらを踏まえ、前記の1ないし15重量%の範囲が好例である。
[粉砕装置の選択]
発明者らは、各小豆食品を製造するに当たり、粉砕装置の違いによる影響を検討した。そこで、粉砕装置として、気流式粉砕機(ミナミ産業株式会社製,ミナクロンミル)とカッティングミル(株式会社レッチェ製,型番SM100C)を用いた。そして、生状態の小豆を粉砕して小豆粉末を得るに際し、粉砕装置に起因する粒度の相違を検証した。原料となる小生豆は北海道産(品種:エリモショウズ)、水分含量約15%とし、両粉砕装置とも共通の原料とした。両装置を用いて粉砕した後、生じた小豆粉末の粒度分布を測定した。気流式粉砕機により粉砕した小豆粉末はそのまま測定に供した。カッティングミルにより粉砕した小豆粉末は、JIS Z 8801−1(2006)に準拠した30mesh(目開き500μm)の篩により篩別し、大きい側の粒を除去した。
図2は気流式粉砕機、図3はカッティングミルの粒度分布図であり、レーザー回折・散乱式 粒子径・粒度分布測定装置(日機装株式会社製,MT3300)による測定結果である。平均粒径は、同測定装置を用いてレーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径とした。
気流式粉砕機の粒度分布図(図2)は単一のピークを有し、最大粒径(累積100%)は208.3μm、平均粒径(累積50%)は43.91μmであった。カッティングミルの粒度分布図(図3)は2つのピークを有し、最大粒径(累積100%)は1000μmを超過した。平均粒径(累積50%)は66.76μmであった。双方の粒度分布図の比較から明らかであるように、気流式粉砕機を用いた粉砕の方が、粉砕により生じた小豆粉末の均一性、ばらつきの少なさ、粒子の細かさにおいて優れている。特に、一回の粉砕処理により比較的均質な小豆粉末を得ることができるため、気流式粉砕の利点は大きい。
両図の粒度分布図から、10ないし100μmの範囲だけ着目すると傾向の相違は小さいようにも思われる。しかし、粉砕しきれていない500μm以上の粒子は無視できず、この除去のための篩別の手間が必要となる。このことからも、気流式粉砕機による粉砕の利点は大きい。
さらに、最終的に食品に至った時点でのデンプン粒の様子を勘案すると単なる粒度分布の傾向以上の相違が存在することも明らかとなった。ここで、粉砕方法の相違がデンプン粒に与える影響を説明する。図4の写真は、生状態の小豆を粉砕することなく熱湯で蒸煮(加熱)して軟らかくして摩砕した際のデンプンの様子である。いわゆる既存の調理、加工の場合である。写真のとおり、ひとつの袋状体の中に複数のデンプン粒が凝集して存在し、袋状体が分散している。次に示す図5の写真は、前出のカッティングミルを用いて生状態の小豆を粉砕し、当該粉砕粉末を熱湯で蒸煮した際のデンプンの様子である。後述する比較例の製法に相当する。この写真からわかるように、カッティングミルによる粉砕の場合も図4とデンプン粒及び袋状物の外観は近似している。
これらに対し、図6の写真は気流粉砕機を用いて生状態の小豆を粉砕し、当該粉砕粉末を熱湯で蒸煮した際のデンプンの様子である。後述する実施例の製法に相当する。写真のとおり、袋状体は見えず個々のデンプン粒が直に分散して存在している。このことは、デンプン粒の分散により糊化がより容易となり、従前の小豆の食品と比較して最終的にできあがる食品の舌触り、ざらつき感、滑らかさ等は好転する。
生状態の小豆を粉砕することにおいてはカッティングミルも気流粉砕機も同様ではある。しかし、デンプン粒の性状の相違の点から、新しい食感の小豆食品を実現する上で気流粉砕機による粉砕が好ましい。従って、生状態の小豆の粉砕に当たって気流粉砕法(気流粉砕機)を採用した。
[小豆食品の試作と配合量評価]
小豆食品の原料となる小豆について、前記の気流式粉砕機を用いて粉砕した気流粉砕小豆粉末(試作例)と、前記のカッティングミルを用いて粉砕した小豆粉末(対照例)を用意した。はじめに各性状の小豆食品−I,II,III,IVを作成し、適切な気流粉砕小豆粉末の配合量を画定した。続いて、粉砕方法の異なる小豆粉末を用いて作成した小豆食品を喫食により評価し、良否を判じた。小豆食品の作成に際し、呈味のための糖類にショ糖、水あめ、グラニュー糖等を用いた。また、味覚調整用に極少量の塩も用いた。寒天は食品製造に常用されている市販品を使用した。増粘多糖類はキサンタンガムとローカストビーンガムの両方を含む市販品を使用した。
〔小豆食品−I(ペースト状物)の作成〕
ペースト状物である小豆食品−Iの作成に際し、気流粉砕小豆粉末の配合は、最終的にできあがる小豆食品−Iの全重量中、おおよそ5、10、15、20、及び25重量%にするべく5段階の配合量とした。順に、試作例I−1(5重量%),I−2(10重量%),I−3(15重量%),I−4(20重量%),及びI−5(25重量%)とした。また、カッティングミル粉砕の小豆粉末も約15重量%の配合量とした(対照例I−0)。
水に糖類を溶解し、加熱して適宜煮詰めた。気流粉砕小豆粉末もしくはカッティングミル粉砕の小豆粉末を予め水に分散しておき、これを前記の糖類を煮詰めた液に投入してさらに加熱した。そして、水あめ、塩を添加して煮詰め、冷却した。当該小豆食品において、糖類は全体重量の約60重量%である。こうして、ペースト状物となる5品の試作例と1品の対照例の小豆食品を作成した。試作例I−1ないしI−5の5品の性状及び味覚を調べた。結果は表1である。対照例の小豆食品は後述する官能評価に供した。
Figure 0005990490
〔小豆食品−Iにおける気流粉砕小豆粉末の配合量〕
試作例I−1より、気流粉砕小豆粉末の配合が5重量%を下回る場合、ペースト状物としては流動性が多く、また、小豆の風味も薄れやすい。試作例I−4、I−5の気流粉砕小豆粉末の配合が20重量%を超過する場合、相対的にデンプンの影響が多く硬く仕上がり、流動性が低下する。従って、ペースト状物となる気流粉砕小豆食品において、小豆の風味と充填を視野に入れた現実的な流動性の観点から、気流粉砕小豆粉末の配合は5ないし20重量%が適切である。さらには、試作例I−2、I−3から8ないし18重量%がより好ましい。
〔小豆食品−II(ゾル状物)の作成〕
ゾル状物である小豆食品−IIの作成に際し、気流粉砕小豆粉末の配合は、最終的にできあがる小豆食品−IIの全重量中、おおよそ0.6、1.3、2.0、2.5、3.0、及び3.8重量%にするべく6段階の配合量とした。順に、試作例II−1(0.6重量%),II−2(1.3重量%),II−3(2.0重量%),II−4(2.5重量%),II−5(3.0重量%),及びII−6(3.8重量%)とした。また、カッティングミル粉砕の小豆粉末も約2重量%の配合量とした(対照例II−0)。
糖類と寒天を水に分散し、加熱して適宜煮詰めた。気流粉砕小豆粉末もしくはカッティングミル粉砕の小豆粉末を予め水に分散しておき、これを前記の糖類と寒天を含み煮詰めた液に投入しさらに加熱して煮詰めて冷却した。当該小豆食品において、糖類は全体重量の約22重量%、寒天は約0.3重量%とした。こうして、ゾル状物となる6品の試作例と1品の対照例の小豆食品を作成した。試作例II−1ないしII−6の6品の性状及び味覚を調べた。結果は表2である。
Figure 0005990490
〔小豆食品−IIにおける気流粉砕小豆粉末の配合量〕
試作例II−1より、気流粉砕小豆粉末の配合が1重量%を下回る場合、ゾル状物の小豆食品としては相対的に小豆の量が少なすぎであり、小豆の風味がないことから不適である。試作例II−6では全般的に好転するものの、ゾル状の範疇では小豆のデンプンにより粘性が強まりみずみずしさが幾分低下する。これらの対比から、振る程度の衝撃で砕ける程度であり、弾力の弱い軟らかめのゼリー状をしたゾル状物を所望し、かつ小豆らしさを発現した気流粉砕小豆食品を想定すると、気流粉砕小豆粉末の配合は1ないし3.5重量%が適切である。さらには、試作例II−3、II−5から2ないし3.5重量%がより好ましい。
〔小豆食品−III(ゲル状物)の作成〕
ゲル状物である小豆食品−IIIの作成に際し、気流粉砕小豆粉末の配合は、最終的にできあがる小豆食品−IIIの全重量中、おおよそ3.1、4.2、5.0、6.1、7.9、10.2、及び14.5重量%にするべく7段階の配合量とした。順に、試作例III−1(3.1重量%),III−2(4.2重量%),III−3(5.0重量%),III−4(6.1重量%),III−5(7.9重量%),III−6(10.2重量%),及びIII−7(14.5重量%)とした。また、カッティングミル粉砕の小豆粉末も約5重量%の配合量とした(対照例III−0)。
水に寒天を分散して加熱し糖類を加えて沸騰させた。気流粉砕小豆粉末もしくはカッティングミル粉砕の小豆粉末を予め水に分散しておき、これを前記の糖類と寒天を含み沸騰した液に投入しさらに加熱し続け、適量となったところで冷却した。当該小豆食品において、糖類は全体重量の約65重量%、寒天は約1.1重量%とした。こうして、ゲル状物となる7品の試作例と1品の対照例の小豆食品を作成した。試作例III−1ないしIII−7の7品の性状及び味覚を調べた。結果は表3,表4である。
Figure 0005990490
Figure 0005990490
〔小豆食品−IIIにおける気流粉砕小豆粉末の配合量〕
試作例III−1より、気流粉砕小豆粉末の配合が4重量%を下回る場合(3.1重量%)、例えばようかん(羊羹)等のゲル状物の小豆食品の想定から比較すると小豆の風味が少なく、物足りなさを感じる。試作例III−7より、気流粉砕小豆粉末の配合が14.5重量%を超える場合では、小豆の果皮等の渋みも加わり小豆の風味は十分である。ただし、寒天と小豆自体のデンプン量増加の影響から、粘性が高く流動性低下が生じる。このことから、事実上、ようかんやういろう等に近く、硬軟の幅広いゲル状食感に対応し、しかも小豆の量に応じて多彩な色調を示す配合範囲を勘案すると、気流粉砕小豆粉末の配合は4ないし15重量%が適切である。さらには、試作例III−3、III−5から5ないし8重量%がより好ましい。
〔小豆食品−IV(ゲル状物)の作成〕
ゲル状物である小豆食品−IVの作成に際し、気流粉砕小豆粉末の配合は、最終的にできあがる小豆食品−IVの全重量中、おおよそ1.3、5.6、10.0、及び15.0重量%にするべく4段階の配合量とした。順に、試作例IV−1(1.3重量%)、IV−2(5.6重量%)、IV−3(10.0重量%)、及びIV−4(15.0重量%)とした。また、カッティングミル粉砕の小豆粉末も約10重量%の配合量とした(対照例IV−0)。
はじめに糖類と増粘多糖類を混合し水に分散し加熱、沸騰した。気流粉砕小豆粉末もしくはカッティングミル粉砕の小豆粉末を予め水に分散しておき、これを前記の糖類と増粘多糖類を含み沸騰した液に投入しさらに加熱して煮詰めて冷却した。当該小豆食品において、糖類は全体重量の約35重量%、寒天は約0.8重量%とした。こうして、ゲル状物となる4品の試作例と1品の対照例の小豆食品を作成した。試作例IV−1ないしIV−4の4品の性状及び味覚を調べた。結果は表5である。
Figure 0005990490
〔小豆食品−IVにおける気流粉砕小豆粉末の配合量〕
試作例IV−1より、気流粉砕小豆粉末の配合が1重量%を下回る場合(1.3重量%)、例えばくずもち(葛餅)やわらびもち(蕨餅)の軟らかさからようかん(羊羹)等までの硬さのゲル状物の小豆食品の想定から比較すると小豆本来の風味が少なく、物足りなさを感じる。試作例IV−4より、気流粉砕小豆粉末の配合が15.0重量%を超える場合では、小豆の果皮等の渋みも加わり小豆の風味は十分である。ただし、増粘多糖類に起因した弾性やみずみずしさは後退し小豆自体のデンプン量増加の影響から粘性が高く流動性低下が生じ、充填の効率に影響する。そのため、前掲の小豆食品−IIIよりも硬軟の幅広いゲル状食感に対応し、しかも小豆の量に応じて多彩な色調を示す配合範囲を勘案すると、気流粉砕小豆粉末の配合は1ないし15重量%が適切である。さらには、試作例IV−2、IV−3から5ないし12重量%がより好ましい。
〔気流粉砕小豆粉末の配合量のまとめ〕
小豆食品−I,II,III,IVのそれぞれの試作結果に開示のとおり、個々の小豆食品の性状と相応した気流粉砕小豆粉末の食品全体に占める配合量が決まった。前記の各配合量は範囲を画定する指標であり、当該範囲内であれば、適宜の量を選択することができる。糖類やその他の調味成分いかんにより量選択の幅は広がる。さらに、本発明に規定するように、気流粉砕小豆粉末は小豆の全てを含むことから、小豆の全成分を漏れなく食品に含めることができ、これまでの未利用成分の有効活用も可能となる。従って、小豆に備わる薬理作用をより有効に摂取することができる。
[粉砕方法の相違の官能評価]
小豆食品−I,II,III,IVにおいて、気流粉砕小豆粉末を用いて作成した試作例と、カッティングミル粉砕の対照例を実際に13名の評価者に試食してもらい良否の判定、感想を求めた。13名の評価者の内訳は、男性6人(30歳代:4人,40歳代:2人)、女性7人(20歳代:4人,30歳代:3人)とした。各小豆食品とも官能評価に際しても同一の13名の評価者により評価した。
評価項目は4種類の小豆食品−I,II,III,IVとそれぞれにおける対照例とも共通とし、次の4項目(Q1ないしQ4)とした。
(Q1:味の好みの評価)
気流粉砕小豆粉末を用いた試作例と、カッティングミル粉砕の対照例の双方を喫食してもらい、いずれが好みの味であるかについて質問した。そして、いずれかもしくはいずれでもないとの人数を数えた。
(Q2:舌触りの評価)
気流粉砕小豆粉末を用いた試作例と、カッティングミル粉砕の対照例の双方を喫食してもらい、口に含んだときの舌触り、なめらかさ具合の好みについて質問した。そして、いずれかもしくはいずれでもないとの人数を数えた。
(Q3:喉越しの評価)
気流粉砕小豆粉末を用いた試作例と、カッティングミル粉砕の対照例の双方を喫食してもらい、喉を通過する際の感触の好みについて質問した。そして、いずれかもしくはいずれでもないとの人数を数えた。
(Q4:外観の評価)
気流粉砕小豆粉末を用いた試作例と、カッティングミル粉砕の対照例の双方の外観を見比べてもらい、いずれが好みであるかについて質問した。そして、いずれかもしくはいずれでもないとの人数を数えた。
〔小豆食品−Iの評価結果と考察〕
試作例I−3と対照例I−0との対比評価の結果は表6である。小豆粉末は双方とも約15重量%の配合量である。気流粉砕小豆粉末を用いて作成した試作例がいずれの項目においても過半数以上の好評価を得た。試作例I−3は小豆食品−Iのペースト状物を模した食品であるため、Q2の舌触りがなめらかである評価を得たことにおいて意義がある。
Figure 0005990490
〔小豆食品−IIの評価結果と考察〕
試作例II−3と対照例II−0との対比評価の結果は表7である。小豆粉末は双方とも約2重量%の配合量である。気流粉砕小豆粉末を用いて作成した試作例がいずれの項目においても過半数以上の好評価を得た。特に、小豆食品−IIのゾル状物の場合、希釈状態であるため、よりきめ細かい小豆粉末が好まれると考える。
Figure 0005990490
〔小豆食品−IIIの評価結果と考察〕
試作例III−3と対照例III−0との対比評価の結果は表8である。小豆粉末は双方とも約5重量%の配合量である。気流粉砕小豆粉末を用いて作成した試作例がいずれの項目においても過半数以上の好評価を得た。なお、小豆食品−IIIのゲル状物の場合、ようかん等の延長上の食品と認識されやすい。その分、どちらでもないと評価した人数が増えたと考える。
Figure 0005990490
〔小豆食品−IVの評価結果と考察〕
試作例IV−3と対照例IV−0との対比評価の結果は表9である。小豆粉末は双方とも約10重量%の配合量である。気流粉砕小豆粉末を用いて作成した試作例がいずれの項目においても過半数以上の好評価を得た。なお、小豆食品−IVのゲル状物の場合、増粘多糖類の配合に起因してみずみずしさやとろみが鋭敏に意識されている。そのため、試作例側のみの評価要因と考える。
Figure 0005990490
〔官能評価のまとめ〕
小豆食品−I,II,III,IVにおける評価は非常に明確であり気流粉砕小豆粉末が有意に優れている。気流粉砕小豆粉末では極端に大きな粒が存在せず、揃った粒度分布となったことが好要因である。また、粉砕方法の相違と関連したデンプン粒の存在形態の相違は糊化や仕上がりの食感に良い影響を与えたということができる。さらに、いずれの態様の小豆食品とする場合であっても、配合量の加減により柔軟に対応できることから極めて適用範囲は広い。特に、生状態の小豆を原料とし、小豆の全体利用が可能であるため、成分の有効活用も可能である。加えて、小豆を茹でる(蒸煮)等の事前処理の省略により、製造経費の圧縮にも貢献し得る。
本発明は、生状態の小豆を原料とし気流粉砕機を用いて得た小豆粉末を配合した小豆食品の製造方法の提案である。そこで、既存の小豆食品における製造工程の簡略化を図り、しかも、小豆の全体を混入でき機能性等を高めた新たな小豆食品を作り出すことができる。

Claims (4)

  1. 生状態の小豆を気流粉砕機により粉砕して最大粒径を500μm以下とし、かつ平均粒径を50μm以下とする気流粉砕小豆粉末と、糖類と、水分とを含有し、これらを加熱る小豆食品の製造方法であって、
    前記気流粉砕小豆粉末は前記小豆食品の全重量の5〜20重量%であり、前記気流粉砕小豆粉末のデンプン粒は直に分散されて存在していて前記小豆食品は前記気流粉砕小豆粉末に含有されるデンプンの糊化によりペースト状物に仕上がることを特徴とする気流粉砕小豆食品の製造方法
  2. 生状態の小豆を気流粉砕機により粉砕して最大粒径を500μm以下とし、かつ平均粒径を50μm以下とする気流粉砕小豆粉末と、糖類と、寒天と、水分とを含有し、これらを加熱る小豆食品の製造方法であって、
    前記気流粉砕小豆粉末は前記小豆食品の全重量の1〜3.5重量%であり、前記気流粉砕小豆粉末のデンプン粒は直に分散して存在していて前記小豆食品は前記気流粉砕小豆粉末に含有されるデンプンの糊化と前記寒天によりゾル状物に仕上がることを特徴とする気流粉砕小豆食品の製造方法
  3. 生状態の小豆を気流粉砕機により粉砕して最大粒径を500μm以下とし、かつ平均粒径を50μm以下とする気流粉砕小豆粉末と、糖類と、寒天と、水分とを含有し、これらを加熱る小豆食品の製造方法であって、
    前記気流粉砕小豆粉末は前記小豆食品の全重量の4〜15重量%であり、前記気流粉砕小豆粉末のデンプン粒は直に分散して存在していて前記小豆食品は前記気流粉砕小豆粉末に含有されるデンプンの糊化と前記寒天によりゲル状物に仕上がることを特徴とする気流粉砕小豆食品の製造方法
  4. 生状態の小豆を気流粉砕機により粉砕して最大粒径を500μm以下とし、かつ平均粒径を50μm以下とする気流粉砕小豆粉末と、糖類と、キサンタンガムまたはローカストビーンガムのいずれかもしくは両方を含む増粘多糖類と、水分とを含有し、これらを加熱る小豆食品の製造方法であって、
    前記気流粉砕小豆粉末は前記小豆食品の全重量の1〜15重量%であり、前記気流粉砕小豆粉末のデンプン粒は直に分散して存在していて前記小豆食品は前記気流粉砕小豆粉末に含有されるデンプンの糊化と前記増粘多糖類によりゲル状物に仕上がることを特徴とする気流粉砕小豆食品の製造方法
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