JP5990370B2 - 防水板装置 - Google Patents

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Description

本発明は、通路から建物等へ浸水することを防止する防水板装置に関する。
大雨や洪水時において道路等が水没すると、その周りにある建物や駐車場等へも水が浸入して被害が拡大する。このとき建物や駐車場等へ続く通路に水の浸入を防止する手段が備えられていればその被害も少なく抑えることができる。かかる観点から、当該通路に設置され、所定量以上の水の浸入を防止することを可能にする防水板装置がある。
従来から、防水板装置として種々のものが提案されているが、例えば特許文献1のような防水板装置がある。特許文献1に記載の防水板装置(水防装置)には、路面より掘り下げられた溝である集水ピットの内側に集水バケットが配置され、さらに路面の異なる位置に掘り下げられた溝である収容ピットには該ピットに対して突没可能な板状の防水板(水防板)が具備されている。この集水バケットと防水板とは、吊り上げチェーン及びスプロケットにより互いが引き合うように構成されており、平常時には防水板が収容ピットの内側に収められ、防水板の上端が路面と面一となる姿勢でバランスしている。一方、水害時等には、集水バケット内に水が溜まり、その水の重量で集水バケットが下がることにより、引っ張られるように防水板が上昇する。防水板の上昇によって該防水板が通路の少なくとも一部を塞ぐように路面から突出し、それ以上の水の浸入が防止される。
特許第4644734号公報
上記した特許文献1に記載の防水板装置では、浸水時等において自動に防水板が上昇し、通路から建物等への浸水をせき止めることが可能とされ、相応の利便性が図られている。
しかしながら、このように自動に防水板が上昇することに対して問題点もあった。例えば、浸水しそうな状況となり、安全のために住人等が避難をするに際して、防水板装置に既に水が流入していたために、防水板の上昇が完了していた場合、又は避難中に防水板が上昇してきた場合には避難の妨げになる虞がある。また、洪水等の水害時以外に何らかの理由で防水板装置に水が流入した場合にも防水板は上昇してしまい、予期せぬ事態を招く虞もあった。この他、任意により自動で防水板を上昇させたくない場合も考える必要があった。
そこで本発明は、このような問題点に鑑み、防水板の動作の確実性かつ防水板の制御の自由度を向上させることができる防水板装置を提供することを課題とする。
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
請求項1に記載の発明は、通路から建物等への浸水を防止するために路面から上昇して水を堰き止め可能に形成される防水板(17)と、防水板を収容可能に路面より下に形成される溝状の防水板収容ピット(14)と、防水板収容ピットが形成される通路に設けられ、浸水時に水が流入可能に形成される溝状の集水ピット(13)と、集水ピット内に配置されて該集水ピットに流入した水を貯留し、貯留した水の重量により集水ピット内を下降可能に形成される容器である集水バケット(16)と、防水板と集水バケットとを直接又は他の部材を介して連結し、集水バケットが下降する力を防水板が上昇する力に変換する機構である伝達機構(31)と、を備え、伝達機構には、防水板(17)と集水バケット(16)とを連結するチェーン(32)と、チェーンにおける防水板と集水バケットとの間に配置され、該チェーンを巻き掛ける歯車であるスプロケット歯車(36)と、防水板が上昇することを禁止する防水板上昇禁止手段(41、43c)及び防水板が下降することを禁止する防水板下降禁止手段(40、43b)と、防水板上昇禁止手段を作動させて防水板下降禁止手段を作動させずに防水板の上昇を禁止する状態及び防水板上昇禁止手段を作動させることなく防水板下降禁止手段を作動させて防水板の上昇を許容しつつ、一度上昇した防水板が下降することを禁止する状態を切り替える切り替え手段(44)と、が設けられ、防水板上昇禁止手段は、スプロケット歯車と同軸に配置され、該スプロケット歯車の回動を禁止可能な突起状の歯であるロック歯を外周に有する歯車であるロック歯車(41)と、ロック歯車のロック歯に係止可能な突起状のロック用突起(43c)を具備する係止部材(43)と、を有し、切り替え手段により防水板の上昇を禁止する状態であるときには、防水板が上昇する方向においてロック用突起はロック歯に係止した姿勢を取り、スプロケット歯車の回動が禁止され、切り替え手段により防水板の上昇を許容しつつ、一度上昇した前記防水板が下降することを禁止する状態であるときには、防水板が上昇する方向においてロック用突起はロック歯に係止していない姿勢を取り、スプロケット歯車の回動が許容される、防水板装置(1)である。
本発明によれば、防水板の上昇に関して利用者の意思に沿った動作をさせることができ、防水板の制御について自由度の高い防水板装置となる。
第一実施形態にかかる防水板装置が設置された通路の斜視図であり、図1(a)は通路が開放された状態、図1(b)は通路の一部が閉鎖された状態を示している。 図1にIIで示した方向から見た防水板装置の正面図である。 図1にIII-IIIで示した線に沿った断面図を矢印の方向から見た図である。 図3と同じ視点で防水板が上昇した場面の図である。 図3にVで示した部位に注目した図で、水抜き手段の1つの姿勢を示した図である。 図5と同じ視点で水抜き手段の他の姿勢を示した図である。 図3にVIIで示した部位に注目した図である。 図7と同じ視点の部位の他の姿勢を表した図である。 防水板装置の動作を説明する図である。 第二実施形態にかかる防水板装置のうち、図7に相当する図である。 第二実施形態にかかる防水板装置のうち、図8に相当する図である。
本発明の上記した作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。以下本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。しかし本発明は当該実施形態に限定されるものではない。
図1は第一実施形態にかかる防水板装置1が通路に設置された状態における斜視図である。図1(a)は防水板17が防水板収容ピット14(図3参照)内に収められ、通路が開放された姿勢を表し、図1(b)は防水板17が防水板収容ピット14から突出するように通路の一部を閉鎖した姿勢を表している。図2は図1(a)に矢印IIで示した方向、すなわち通路正面方向から防水板装置1を見た図である。図3は、図1(a)に一点鎖線III-IIIで示した鉛直線に沿った防水板装置1の断面図のうち矢印方向のものである。図4は、図3と同じ視点の断面図であり、防水板17が上昇した姿勢を示している。図1〜図4及び適宜示す各図を参照しつつ防水板装置1について説明する。図1〜図4、及び以下の説明で参照する各図では、説明のため適宜部材を透視して示している。また、各図では図の見易さのために一部の部材は省略している場合もある。
なお、本実施形態では図1(a)、図1(b)の紙面斜め左下方、及び図3、図4の紙面左が通路入側を表し、その反対側が通路出側を表している。従って図2は通路入側から防水板装置1を見た図である。すなわち、水害時等には、通路入側から水が侵入する。
防水板装置1は、通路開閉部2及び機構収容部3を備えている。図1、図2からわかるように、機構収容部3は通路開閉部2の一端と他端のそれぞれに対向して立設するように設けられている。そして、図1(a)、図1(b)からわかるように、防水板装置1は壁の間に形成される通路に設置され、通路を形成する路面に通路開閉部2が埋設され、通路を形成する壁のそれぞれに機構収容部3が配置される。これにより平常時には図1(a)のように通路は開放されており出入りが可能となっている。一方、水害時等には、図1(b)のように防水板17が上昇して通路の一部を閉鎖してこれ以上の水の侵入を防止することができる。以下、通路開閉部2及び機構収容部3のそれぞれについて詳しく説明する。
通路開閉部2は、図1〜図4に表れているように仕切り部材10、11、12、取水溝15、集水バケット16、防水板17、フタ部材18、導水部材19、防水板押さえ20、21、シール部材22、及び水抜き手段23を備えている。なお、上記したように通路開閉部2は通路のうちの路面に埋設されるので、通路開閉部2を構成する各部材も一部の部材を除いて埋設されることを基本としている。
仕切り部材10、11、12は、図3、図4に断面が表れているように断面形状が略矩形の部材であり、防水板装置1の左右方向(図2の紙面左右方向、図3の紙面奥/手前方向)に延びる板状の部材である。各仕切り部材10、11、12は、その板面が対向するように、通路入側出側方向(図2の紙面奥/手前方向、図3の紙面左右方向)に所定の間隔を有して、並べられるように配置される。本実施形態では通路入側から通路出側に向けて、仕切り部材10、仕切り部材11、仕切り部材12の順に並べられている。
ここで、仕切り部材10と仕切り部材11との間隙により集水ピット13が形成され、仕切り部材11と仕切り部材12との間隙により防水板収容ピット14が形成される。
また、集水ピット13の上端開口にはフタ部材18が被せられるように配置され、通路面の一部を形成している。フタ部材18の路面側となる表面には、複数の凸部が形成されていることが好ましい。これにより、歩行者や車両のスリップが防止される。
また、集水ピット13及び防水板収容ピット14の底部にはそれぞれ排水手段13a、14aが設けられている。これにより集水ピット13内及び防水板収容ピット14内への水の貯留を防止することができる。排水手段13a、14aの具体例としては、集水ピット13及び防水板収容ピット14の底部から、下水道等に通じる水路を挙げることができる。ここで、排水手段13a、14aには、水が逆流して集水ピット13や防水板収容ピット14に流入してしまうことを防止する逆流防止弁が備えられることが好ましい。
取水溝15は、図3、図4にその断面が表れ、図1、図2に長手方向が表れているように、所定の断面を有して防水板装置1の左右方向に延びる部材である。取水溝15は取水溝本体15aとグレーチング15bとを備えている。取水溝本体15aは、溝状断面を有する部材で、該溝状の開口部が上になる向きで配置されている。グレーチング15bは取水溝本体15aの開口部に覆い被せられるように配置される合成樹脂材料や金属材料等を格子状に組んだ溝フタである。
このような取水溝15は、仕切り部材10よりも通路入側に配置される。
集水バケット16は、集水ピット13内へ流入する水を貯留するための容器であり、図3、図4に表れた断面を有し、図2に表れているように防水板装置1の左右方向に延びる部材である。集水バケット16は、集水ピット13内に収容されており、該集水ピット13内を上昇及び下降可能とされている。すなわち、集水バケット16は、防水板装置1の左右方向において、集水ピット13よりも若干小さく形成されており、その上部開口から内側に水が流入し、これを貯留することが可能となっている。
集水バケット16は、その全高が集水ピット13の深さの1/2以下とされるとともに、集水バケット16の上下動における最も下になる位置で、該集水バケット16が集水ピット13の底面に衝突しないように構成されていることが好ましい。
集水バケット16の底部には、後述する水抜き手段23の栓27が挿入される排水口16aが設けられている(図5、図6参照)。排水口16aの大きさは、洪水時等に多量の水が集水バケット16に流入した場合に排水が追い付かず、集水バケット16内に水が貯留するように形成されている。
また、集水バケット16の上端にはシール部材16bが配置されている。シール部材16bは集水バケット16と集水ピット13の内壁面との隙間を塞ぐように取り付けられている。これにより集水バケット16と集水ピット13との隙間に水が入りこみ、集水ピット13内に水が溜まることを抑制することができる。
防水板17は、上昇した姿勢で通路の一部を閉鎖して水をせき止めることができる厚板状の部材で、図3、図4に示した断面を有し、図2に表れているように防水板装置1の左右方向に延びるものである。
防水板17は、水を堰き止めるための堰板となる防水板本体17aと、防水板本体17aの上端部に固着されて路面の一部となる鋼板製のフタ部材17bとを備えている。
防水板本体17aは、その内部が発泡スチロール等の軽量かつ強度を有する発泡材パネルで形成され、この発泡材パネルの表面全体にステンレス鋼板などの耐腐食性と強度を有した薄板材が被装されることで形成されている。このように防水板17は、その防水板本体17aの内部に軽量でかつ比重が小さな発泡材パネルが用いられるので軽量化が図られている。これにより、後述するように防水板17を上げ下げ可能に吊るために要する力を軽減することができる。しかも、発泡材パネルの表面は、それよりも硬質の薄板材によって被覆されるので、発泡材パネルの損傷を防止することも可能である。
ここでは防水板本体17aに発泡材パネルを用いる例を示したが、他の材料が用いられることを妨げるものではなく、例えばハニカムコア材を用いることができる。これによれば強度を向上させることが可能となる。
フタ部材17bは、防水板本体17aの上端部に固着されて路面の一部となる鋼板製の板状である。フタ部材17bの路面側となる表面には、複数の凸部が形成されていることが好ましい。これにより、歩行者や車両のスリップが防止される。なお、フタ部材17bに用いられる縞板鋼板は、上記した防水板本体17aの薄板材と同じ材料で形成することが好ましい。
このような防水板17のうち、防水板本体17aは防水板収容ピット14に突没可能に配置される。すなわち、防水板本体17aは、その全部が防水板収容ピット14内に収まる姿勢と、その一部が防水板収容ピット14内に収まり、他の一部が通路に突出している姿勢と、をとることができるように設置されている。
また、フタ部材17bは、防水板本体17aの全部が防水板収容ピット14内に収められた姿勢で、該防水板収容ピット14の開口をフタするように覆う。
ここで、防水板17は、集水バケット16と後述する水抜き手段23と連結ブラケット37と移動スプロケット38との合計重量より重く構成されている。これにより後で説明するように、平常時において防水板17を防水板収容ピット14の内側に適切に収容しておくことが可能となる。
導水部材19は、図3、図4に表れているように仕切り部材10の上端面に沿って、その板面が上下方向を向くように配置された板状の部材である。導水部材19の通路出側端部(図3、図4の紙面右側)は、集水ピット13にまで延びるように配置されている。これにより取水溝15から溢れた水を効率よく集水バケット16に導くことができる。導水部材19はステンレスや鋼により形成されることが好ましい。また、図3、図4からわかるように、導水部材19の通路出側端部は集水ピット13の底部に向けて折り曲げられていてもよい。これによりさらに効率よく水を集水バケット16内に導くことができる。
図3、図4に表れているように、防水板収容ピット14の壁面のうち、通路入側(図3、図4の紙面左側)上部には防水板押さえ部材20が配置されている。防水板押さえ部材20は、図3、図4からわかるように通路出側(図3、図4の紙面右側)上方に向かうように傾斜する部位を有している。
一方、防水板17のうち通路入側下部には、押さえ部材20に対応する押さえ部材21が備えられている。押さえ部材21も押さえ部材20と同様に傾斜する部位を有している。
また、防水板収容ピット14の壁面のうち通路出側上部には止水パッキン22が配置されている。
このような押さえ部材20、21及び止水パッキン22によれば、図4に示したように防水板17が上昇した姿勢において、押さえ部材20と押さえ部材21とが重なるように配置される。このとき、押さえ部材20、21の傾斜した部位同士の接触の効果により、押さえ部材20、21が防水板17を通路出側に押圧する。これにより防水板17が止水パッキン22にしっかりと押さえつけられるので、止水がより確実におこなわれる。
水抜き手段23は、集水バケット16の底に配置され、集水バケット16に設けられた排水口16aの開放及び閉鎖をする手段である。図5には図3にVで示した部位を拡大し、水抜き手段23に注目した図を示した。図5は排水口16aが開放されているときの水抜き手段23の姿勢が表れている。一方、図6には、水抜き手段23により排水口16aが閉鎖されているときの該水抜き手段23の姿勢を示した。
水抜き手段23は、図5、図6からわかるように、支柱24、傾動部材25、浮動部材26、及び栓27を備えている。
支柱24は、集水バケット16の底部から立設する部材である。傾動部材25は、支柱24の上部に設けられた回動軸の一方と他方に延びるように形成された部材である。従って傾動部材25は回動軸を中心にその傾きを変えることができる。
浮動部材26は、傾動部材25のうち一端側に設けられた浮き部材で、水に浮くことができるように構成された部材である。
栓27は、傾動部材25のうち他端側に設けられた栓であり、集水バケット16に設けられた排水口16aを閉鎖可能な位置に配置されている(図6参照)。
このような水抜き手段23によれば、図5に示したように浮動部材26側が下がり、栓27側が上がって排水口16aが開放されている状態と、図6に示したように浮動部材26側が上がり、栓27側が下がって排水口16aが閉鎖されている状態とにすることができる。
すなわち、集水バケット16内に水が流入していないときや、水が流入していても少量であって排水口16aからの排水量で足りるときには、集水バケット16内に水が貯留することがなく、図5に示した姿勢が保持される。
一方、洪水時等において、集水バケット16内に多量の水が流入したときには、排水口16aによる排水が間に合わないので、集水バケット16内に水が貯留し、浮動部材26が上昇するので図6に示した姿勢となり、栓27が排水口16aを閉鎖する。
次に機構収容部3について説明する。機構収容部3は上記したように通路開閉部2の左右方向端部のそれぞれに設けられ、通路を形成する壁に備えられる。従って、図1、図2からもわかるように機構収容部3は2つ設けられている。ただし、2つの機構収容部3の基本的な構造は同じなので、ここでは一方の機構収容部3についてのみ説明する。
機構収容部3は、筐体30、及び該筐体30内に収容される伝達機構31を備えている。
筐体30は機構収容部3の外殻を形成する部材であり、箱状とされることによりその内側に伝達機構31を含むことができるように構成されている。従って筐体30は板状の部材が組み合わされる等して形成されている。
伝達機構31は、上記集水バケット16と防水板17とを連動させて互いの上昇及び下降を関連付ける機能を有する機構である。すなわち、防水板17と集水バケット16とを連結し、集水バケット16が下降する力を防水板17が上昇する力に変換する機構である。
伝達機構31は、吊り上げチェーン32、第一ガイドスプロケット35、第二ガイドスプロケット36、連結ブラケット37、移動スプロケット38、ロック機構39、及び防水板押しつけ部材45、46を備えている。
吊り上げチェーン32は、力伝達部材として機能し、集水バケット16と防水板17とを連動させるように両者間の力を伝達させるチェーンである。吊り上げチェーン32は、その一端が筐体30に固定部材34により固定されている。従って固定部材34により固定された端部は移動が禁止される。一方、吊り上げチェーン32の他端は、防水板17の左右方向側面に固定部材33により固定されている。従って吊り上げチェーン32の当該他端は防水板17の上昇、下降と同じに上下動する。
また、吊り上げチェーン32の両端間は、後述する第一ガイドスプロケット35、第二ガイドスプロケット36、及び移動スプロケット38に巻き掛けられることにより筐体30内に保持される。
第一ガイドスプロケット35は、上記吊り上げチェーン32に係合可能な複数の歯が外周に形成されているスプロケット歯車である。従って第一ガイドスプロケット35はその中心を軸として回動可能とされるとともに、該軸は筺体30に固定されており移動が禁止されている。従って第一ガイドスプロケット35は筺体30の所定の場所に固定されつつ回動することができるように配置されている。
また、第一ガイドスプロケット35は、防水板17の上方に配置され、その高さ位置(図3、図4の紙面上下方向位置)は、防水板17が最も上昇した姿勢でも該防水板17を吊り上げチェーン32で保持することができる位置である。一方、第一ガイドスプロケット35の通路出入側方向の位置(図3、図4の紙面左右方向位置)は、特に限定されることはないが、第一ガイドスプロケット35の通路出側(図3、図4の紙面右側)から吊り下げチェーン32の一端側が鉛直下方に延び、その一端が防水板17に固定される形態となることが好ましい。これによれば防水板17を真上に引き上げることが可能となり、防水板17のより円滑な上下動が図られる。
第二ガイドスプロケット36は、第一ガイドスプロケット35と同様、上記吊り上げチェーン32に係合可能な複数の歯が外周に形成されているスプロケット歯車である。従って第二ガイドスプロケット36はその中心を軸として回動可能とされるとともに、該軸は筺体30に固定されており移動が禁止されている。従って第二ガイドスプロケット36は筺体30の所定の場所に固定されつつ回動することができるように配置されている。
第二ガイドスプロケット36は、上記第一ガイドスプロケット35よりも通路入側(図3、図4の紙面左側)に配置され、その高さ位置も第一ガイドスプロケット35と概ね同じとされている。
連結ブラケット37は、第二ガイドスプロケット36よりも通路入側に配置される上下方向に長い板状の部材であり、その下部は集水バケット16の左右方向(図3、図4の紙面奥/手前方向)側面に固定されている。一方、連結ブラケット37の上部には移動スプロケット38が配置されている。
移動スプロケット38は、上記吊り上げチェーン32に係合可能な複数の歯が外周に形成されているスプロケット歯車である。従って移動スプロケット38はその中心を軸として回動可能とされるとともに、該軸は連結ブラケット37に固定されている。
上記したように集水バケット16は上下動可能に配置されているので、連結ブラケット37及び移動スプロケット38も集水バケット16に追随して上下動することができる。
以上説明した第一ガイドスプロケット35、第二ガイドスプロケット36、及び移動スプロケット38には、次のように吊り上げチェーン32が掛けられている。すなわち、吊り上げチェーン32の通路入側端部と通路出側端部との間において、第一ガイドスプロケット35及び第二ガイドスプロケット36に対して、上側から吊り上げチェーン32が掛けられる。一方、移動スプロケット38は、第二ガイドスプロケット36と吊り上げチェーン32の通路入側端部との間で、吊り上げチェーン32に載せられるように掛けられる。すなわち、移動スプロケット38、連結ブラケット37、及び集水バケット16が吊り上げチェーン32に引っ掛けられるようにぶら下げられる。これらの具体的な動作は後で詳しく説明する。
ロック機構39は、防水板上昇禁止手段及び防水板下降禁止手段を兼ね備えて機能するものである。図7には図3にVIIで示した部位を拡大して表した。図7にはロック機構39が拡大されて示されている。図8には、図7と同じ視点で、ロック機構39が図7とは異なる姿勢とされたときの図を示している。
ロック機構39は、ラチェット歯車40、ロック歯車41、及び係止部材42を備えている。ロック機構39は、第二ガイドスプロケット36の回動を制限して防水板17の上昇を禁止することが可能な防水板上昇禁止手段、及び、第一ガイドスプロケット35の回動を制限して防水板17の下降を禁止することが可能な防水板下降禁止手段を備えている。以下に説明する。
ラチェット歯車40は、防水板下降禁止手段を構成する1つであり、係止部材42の係止突起43bが係止可能な複数の係止歯が外周に形成されている歯車である。ラチェット歯車40は、図7、図8からわかるように第一ガイドスプロケット35に同軸に設けられ、ラチェット歯車40と第一ガイドスプロケット35とは、第一ガイドスプロケット35が図7にVIIbで示した方向に回動する向きには連動し、第一ガイドスプロケット35が図7にVIIaで示した方向に回動する際には連動しないように構成されている。すなわち、本実施形態では、第一ガイドスプロケット35とラチェット歯車40とがラチェット機構を介して同軸に重ね合わされている。そのためのラチェット機構は特に限定されるものではなく、公知のラチェット機構でよい。
ロック歯車41は、防水板上昇禁止手段を構成する1つであり、係止部材42のロック用突起43cが係止可能な複数のロック歯が外周に形成されているロック用の歯車である。ロック歯車41は、図7、図8からわかるように第二ガイドスプロケット36に同軸に設けられ、ロック歯車41と第二ガイドスプロケット36とは常に連動するように固定されている。
係止部材42は、ラチェット歯車40及びロック歯車41の下方で、両歯車の間となる位置に配置されており、本体43及び切り替え手段としての切り替え手段44を有して構成されている。
本体43は、図7、図8からわかるように、この視点において短い下底と、下底より長い上底を有する略台形の部材で、下底側に矩形の切り欠き43dを有している。さらに本体43の上底の端部には、ラチェット歯車40に近い端部には、防水板下降禁止手段を構成する1つの部材である係止突起43bが突出するように設けられ、ロック歯車41に近い端部には、防水板上昇禁止手段を構成する1つの部材であるロック用突起43cが突出するように備えられている。また、本体43は、上底の中央近くに設けられた軸43aを中心に回動可能とされている。
切り替え手段44は、切り替え手段として機能し、本体43の図7に示した姿勢と図8に示した姿勢とを切り替える機能を有する部材である。すなわち、防水板下降禁止手段と防水板上昇禁止手段とを切り替えて、防水板の上昇及び下降を禁止・許容するものである。
切り替え手段44は偏心した円板状の部材である偏心円板44aを備えている。該偏心円板44aは、本体43の切り欠き43dの内側に配置される。これによれば、例えば図7の姿勢において、偏心円板44aの長い径が右側に存し、このときには本体43は、係止突起43bがラチェット歯車40に係止することができるように紙面右上に傾いている。これに対して偏心円板44aを回転させて図8に示したような姿勢とすれば、偏心円板44aの長い径は左側となり、偏心円板44aが切り欠き43dの内壁を押圧して本体43の傾きを変えることができる。すなわち、このときには本体43はロック用突起43cがロック歯車41に係止することができるように紙面左上に傾いている。
ここで、ラチェット歯車40の係止歯及び係止突起43bの形状は、係止突起43bがラチェット歯車40をいずれの方向への回動も禁止させることができるように構成されていればよく、その形状は限定されるものではない。ロック歯車41のロック歯及びロック用突起43cの形状も同様に、ロック用突起43cがロック歯車41をいずれの方向への回転も禁止させることができるように構成されていればよく、その形状は限定されるものではない。
初めに図8に示した姿勢、すなわちロック歯車41とロック用突起43cとが係止した姿勢における動作について説明する。
ロック歯車41とロック用突起43cとが係止した姿勢では、ロック歯車41はいずれの方向への回動も禁止される。従って、ロック歯車41に連動する第二スプロケット36も同様に回動が禁止される。
なお、このときには係止突起43bはラチェット歯車40のラチェット歯に係止していないので、ラチェット歯車40及び第一ガイドスプロケット35の回動自体は特に禁止されない。
この場合には後述するように、防水板上昇禁止手段が動作し、防水板下降禁止手段が動作しない状態となる。
次に図7に示した姿勢、すなわちラチェット歯車40と係止突起43bとが係止した姿勢における動作について説明する。なお、ロック歯車41とロック用突起43cとが係止した姿勢(図8)から、ラチェット歯車40と係止突起43bとが係止した姿勢(図7)への本体43の変更は、上記したように切り替え手段44により行うことができる。
このとき、本体43の係止突起43bはラチェット歯車40の係止歯に係止されているので、ラチェット歯車40はいずれの方向にも回動することができなくなっている。従って、上記したように、第一ガイドスプロケット35は、ラチェット歯車40に対して一方向のみの回動が許容されており、図7にVIIaで示した方向の回動が許容され、VIIbで示した方向の回動が禁止される。
なお、このときにはロック用突起43cがロック歯車41のロック歯に係止していないので、ロック歯車41及び第二ガイドスプロケット36の回動自体は特に禁止されない。
この場合には後述するように、防水板下降禁止手段が動作し、防水板上昇禁止手段が動作しない状態となる。
ここで示したロック機構39と防水板17の移動との関係については後で詳しく説明する。
ここで、本体43には、例えばリミットスイッチ等を接触させることにより、現在の本体の傾き方向を表示してもよい。これにより、現在は防水板の自動上昇が停止されているか等について判断することができる。
図1〜図4に戻り、他の部材について説明を続ける。防水板押しつけ部材45、46は、防水板押しつけ部材45と防水板押しつけ部材46とで対をなす部材であり、図3、図4からわかるように、対向して配置されたときに互いに接する面が斜面であるように形成されたブロック状の部材である。防水板押しつけ部材45は筐体30に固定されている。一方、防水板押しつけ部材46は防水板17の左右方向側面に固定されている。本実施形態では防水板押しつけ部材45は、固定部材33を兼ねている。防水板押しつけ部材45と防水板押しつけ部材46とは、図4からわかるように、防水板17が上昇した姿勢で斜面同士が接するように配置される。これにより、くさびの効果で防水板17を通路出側に押しつけることが可能となり、防水板17による止水性能を向上させることができる。
次に、以上のように構成された防水板装置1の動作について説明する。図9には動作説明のための図を示した。図9(a)は図3に対応し、図9(b)は図4に対応する。すなわち、図9(a)は、防水板17が最も下にあるとともに、集水バケット16が最も上にある状態を示し、平常時の姿勢である。一方、図9(b)は、防水板17が上昇して通路の一部を遮断し、集水バケット16が下がっている状態を示し、浸水時の姿勢である。図9では図の見やすさを優先するため、多くの符号を省略した。符号は図9に対応する図3、図4を参照することができる。
初めに、洪水時等において防水板17が自動に上昇可能である状態について説明する。このときにはロック機構39は図7に示した姿勢、すなわち係止突起43bがラチェット歯車40の係止歯に係止している状態としておく。従って防水板上昇禁止手段は作動することなく、防水板下降禁止手段が作動している状態である。
図3、図9(a)に表れているように、防水板装置1は平常時において、集水バケット16が集水ピット13の上部に配置され、防水板17の防水板本体17aの全部が防水板収容ピット14内に収容されている状態となるように設置される。すなわち、集水バケット16と防水板17とは伝達機構31を介してその重量によりバランスが取られることにより動作が決まるので、平常時において図3、図9(a)の姿勢とするために、上記のように防水板17の重量は、集水バケット16と水抜き手段23と連結ブラケット37と移動スプロケット38との合計の重量よりも重くなるように構成されている。
なお、図3からわかるように、このときには水抜き手段23を図5に示した姿勢としておき、排水口16aが開放されている。
図3、図9(a)に示した姿勢によれば、通路は開放されているので人や車等の通行を阻害することがない。また、グレーチング15b、フタ部材17b、18により路面にできるだけ段差がないように構成されているので、通行の快適が図られている。
一方、洪水等に伴う増水によって水位が増加すると、それに連動して取水溝15内の水位も変化する。ここで、平常時、又は、洪水等に伴う増水により水位上昇はあるものの取水溝15内の水位が路面より低く、かつ、導水部材19より低いときは、路面からグレーチング15bを通じて取水溝15内へ流入した雨水等の水は、不図示の排水口から下水管などの排水処理施設へと排出される。又は、導水部材19を越えて水が集水バケット16に入った場合でも、集水バケット16の排水口16aから十分に排水可能な水量であれば排水口16a及び排水手段13aから排水される。つまり、これらのような場合には、集水バケット16に水が貯留することがなく、その重量が変化しないので集水バケット16が下降動作することはない。従って、図3、図9(a)のような姿勢を維持することができる。
これに対して、洪水等に伴う増水によって図9(a)にIXaで示したようにグレーチング15bを介して水が流入して取水溝15内の水位が上昇し、その水位が導水部材19より高くなると、図9(a)にIXbで示したように、取水溝15から導水部材19を介して集水バケット16内に水が貯留し始める。このような大きな流入量の水では、排水口16aからの排水が追い付かず、集水バケット16に水が貯留しはじめる。すると、水抜き手段23の浮動部材26が浮き、図6に示した姿勢となって排水口16aを閉鎖する。そして、このような高い水位が維持されると、順次集水バケット16内に水が貯留する。
ここで、上記のように、集水バケット16と防水板17とは伝達機構31を介してその重量によりバランスが取られることにより動作が決まるが、このように集水バケット16内に所定以上の水が貯留したときには、集水バケット16、水抜き手段23、連結ブラケット37及び移動スプロケット38の重量と当該貯留した水の重量の方が、防水板17の重量より重くなるように構成されている。これにより、上記のように集水バケット16内へ流入して貯留された貯留水が所定重量に達すると、防水板17の重量を上回り、図9(a)にIXcで示したように、集水バケット16が集水ピット13内で下降する。すると、この集水バケット16の下降力によって、集水バケット16と一緒に連結ブラケット37を介して移動スプロケット38が略鉛直に下降する。
この下降によって、移動スプロケット38が、図3、図9(a)の視点において時計方向へ回転され、第一ガイドスプロケット35、及び第二ガイドスプロケット36が反時計方向へ回転され、固定部材34と第二ガイドスプロケット36との間に存する吊り上げチェーン32の部分が長くなり、下方へと引き下げられる。
このように吊り上げチェーン32が引き下げられることによって、この吊り上げチェーン32のうち、防水板17が取りつけられた端部が引き上げられ、図9(a)にIXdに示したように防水板17がこれに追随して上昇し、通路内へとせりあがる。その結果、この防水板17によって通路への浸水が堰き止められる。
このような伝達機構31によれば、吊り上げチェーン32と各スプロケット35、36、38を用いて構成されるので、吊り上げチェーン32を各スプロケット35、36、38に係合させた状態で移動させて引き上げることができ、防水板17への上昇力の伝達に伴う、吊り上げチェーン32と各スプロケット35、36、38との摩耗や滑りが抑制される。
以上説明したように、ロック機構39が図7に示した姿勢、すなわち係止突起43bがラチェット歯車40の係止歯に係止して防水板下降禁止手段が動作し、ロック用突起43cがロック歯車41のロック歯には係止していない状態において防水板17が上昇する基本的な動作が行われる際には、上記したように第一ガイドスプロケット35は図3、図9(a)の視点で反時計方向に回転される。すなわち図7にVIIaで示した方向への回転である。このような回転に対してロック機構39は上記説明したようにその回転を許容する。従ってロック機構39は防水板17の上昇を阻害することなく動作する。
一方、例えば想定された雨水の量を超えるような水量の流入等、何らかの理由により、防水板17の上昇後、又は上昇の途中で、集水ピット13内にも水が浸入して浸水してしまった場合を考える。この場合には集水バケット16の内外が水により満たされてしまい、集水バケット16内にのみ水が満たされた場合における下降力が失われてしまう。すると、上記したように、もともと集水バケット16の重量よりも防水板17の重量の方が重くなるように構成されているので、防水板17の上昇を維持することができず、防水板17が下降する方向に力が作用してしまう。
このように防水板17が下降しようとするとき、第一ガイドスプロケット35は図3、図9(a)の視点で時計方向に回転されるはずである。しかしながら、防水板装置1では、ロック機構39が備えられ、本例の場合には当該ロック機構39は係止突起43bがラチェット歯車40の係止歯に係止して防水板下降禁止手段が動作している状態なので、上記したように、第一ガイドスプロケット35の時計方向への回転(図7にVIIbで示した方向の回転)を禁止している。これにより一度上昇した防水板17がその位置よりも降下してしまうことを防止することができる。従って、防水板17が上昇すべくして上昇した後に、意図しない防水板17の下降が起こることを防止することができる。すなわち、防水板17の動作の確実性を向上させることができる。
上記説明した防水板17の上昇時、及び上昇後の姿勢において、防水板装置1に備えられる部材により次のような他の効果を奏する。
図3、図4に表れた集水バケット16の開口の縁に沿って設けられたシール部材16aによれば、集水ピット13の内壁面と集水バケット16との隙間を塞ぐことができるので、集水ピット13内への水の浸入を抑制することが可能となる。
また、防水板押さえ20、21及び防水板押しつけ部材45、46によれば、その斜面の接触による楔の効果によって、防水板17を止水パッキン22に押し付けるので止水性の向上が図られる。
次に、たとえ洪水時等においても防水板17が自動に上昇することのない状態について説明する。このときにはロック機構39は図8に示した姿勢、すなわちロック用突起43cがロック歯車41のロック歯に係止して防水板上昇禁止手段が動作する状態としておく。
本例において、平常時等、集水バケット16に水が貯留しない場合にはついては、上記したように結果的に防水板17が上昇しようとする動作自体がおこらないので、ここでは説明を省略する。
これに対して、洪水等に伴う増水によってグレーチング15bを介して水が流入して取水溝15内の水位が上昇し、その水位が導水部材19より高くなると、上記説明した防水板17が自動に上昇可能である場合と同様に、取水溝15から導水部材19を介して集水バケット16内に水が貯留し始める。このような大きな流入量の水では、排水口16aからの排水が追い付かず、集水バケット16に水が貯留しはじめる。すると、水抜き手段23の浮動部材26が浮き、図4に示した姿勢となって排水口16aを閉鎖する。そして、このような高い水位が維持されると、順次集水バケット16内に水が貯留する。
このような場合において、防水板17が自動に上昇可能である状態であれば、図3、図9(a)の姿勢から上記のようにして防水板18が自動に上昇して通路の少なくとも一部を閉鎖する。しかしながら、本例のように、ロック部材39が図8に示した姿勢、すなわちロック用突起43cがロック歯車41のロック歯に係止している状態であり防水板上昇禁止手段が動作している場合には、防水板17の上昇が行われない。
より詳しくは、ロック部材39がこのような姿勢とされたときに防水板17が上昇しようとすると、第二ガイドスプロケット36は図8の視点で反時計方向に回転されるはずである。しかしながら、防水板装置1では、ロック機構39が備えられ、本例の場合には当該ロック機構39はロック用突起43cがロック歯車41のロック歯に係止している状態なので、上記したように、第二ガイドスプロケット36の反時計方向への回転(図8にVIIIbで示した方向の回転)を禁止している。これにより防水板17の上昇を禁止することができる。
これにより、例えば防水板装置1を管理する者が近くにいる等して、必ずしも自動に防水板17を上昇させる必要がない場合、浸水しそうなの状況となり、安全のために住人等が避難をするに際して、防水板装置には既に水が流入していたために、防水板の上昇が完了していた場合、避難中に防水板が上昇してきた場合、又は洪水等の水害時以外に何らかの理由で防水板装置に水が流入した場合等において防水板17が自動に上昇してしまうことを禁止することができる。
もちろん、防水板17を自動に上昇させる場合も必要なので、防水板装置1では、防水板17が自動に上昇可能な場合と自動に上昇しない場合とを切り替え手段44を用いて切り替えられるものとしている。このとき、特定した管理者の任意でしか切り替えられないようにするために、切り替え手段に錠を設けて切り替え手段の回転を制限させることもできる。
防水板装置1によれば防水板17の上昇に関して利用者の意思に沿ってその制御の自由度を向上させることが可能となる。
図10、図11には第二実施形態にかかる防水板装置のうち、ロック機構139の部位に注目した図を表した。図10、図11は図7、図8と同じ視点による図である。本実施形態の防水板装置では、第一実施形態にかかる防水板装置に備えられるロック機構39の代わりにロック機構139が用いられたのみであり、他の部位については共通する。従って、ここで図10、図11を参照しつつロック機構139について説明し、他の部位については説明を省略する。
ロック機構139は、防水板上昇禁止手段及び防水板下降禁止手段として機能するものであり、第一ブレーキドラム140、第二ブレーキドラム141、及びブレーキレバー142を備えている。ロック機構139は、摩擦によって回転を禁止するいわゆるブレーキを構成するものであり、第一ガイドスプロケット35の一方向の回動を許容し、その反対方向の回動を禁止するものである。さらにロック機構139は、第二ガイドスプロケット36の回動を制限して防水板17の上昇を禁止することが可能なロック機能を備えている。以下に説明する。
第一ブレーキドラム140は、円板状の部材であり、その外周面が後述するブレーキレバー142の第一ブレーキシュー143bとの摩擦により、第一ブレーキドラム140の回転が禁止されるように形成されている。第一ブレーキドラム140に用いられる材料はこのようにブレーキシューとの関係でブレーキドラムとして機能することが可能な公知のものでよい。
第一ブレーキドラム140は、図10、図11からわかるように第一ガイドスプロケット35に同軸に設けられ、第一ブレーキドラム140と第一ガイドスプロケット35とは、第一ガイドスプロケット35が図10にXbで示した方向に回動する向きには連動し、第一ガイドスプロケット35が図10にXaで示した方向に回動する際には連動しないように構成されている。すなわち、本実施形態では、第一ガイドスプロケット35と第一ブレーキドラム140とが不図示のラチェット機構を介して同軸に重ね合わされている。そのためのラチェット機構は特に限定されるものではなく、公知のラチェット機構でよい。
第二ブレーキドラム141も円板状の部材であり、その外周面が後述するブレーキレバー142の第二ブレーキシュー143cとの摩擦により、第二ブレーキドラム141の回転が禁止されるように形成されている。第二ブレーキドラム141に用いられる材料はこのようにブレーキシューとの関係でブレーキドラムとして機能することが可能な公知のものでよい。
第二ブレーキドラム141は、図10、図11からわかるように第二ガイドスプロケット36に同軸に設けられ、第二ブレーキドラム141と第二ガイドスプロケット36とは常に連動するように固定されている。
ブレーキレバー142は、第一ブレーキドラム140及び第二ブレーキドラム141を下側及び側面からこれらを囲むように配置されており、本体143及び切り替え手段144を有して構成されている。
本体143は、図10、図11からわかるように、この視点において短い下底と、下底より長い上底を有する略台形の部材で、下底側に矩形の切り欠き143dを有している。さらに本体143の上底の端部には、第一ブレーキドラム140に近い端部には第一ブレーキシュー143bが設けられ、第二ブレーキドラム141に近い端部には第二ブレーキシュー143cが備えられている。また、本体143は、図10、図11の紙面左右方向に移動可能とされている。
第一ブレーキシュー143b、第二ブレーキシュー143cは、円弧状の部材で、第一ブレーキドラム140、第二ブレーキドラム141の外周の一部を囲むように配置される。上記したように第一ブレーキシュー143b、第二ブレーキシュー143cは、第一ブレーキドラム140、第二ブレーキドラム141との関係でブレーキシューとして機能するように構成されている。
また第一ブレーキシュー143b、第二ブレーキシュー143cの一端は上記のように本体143に回動可能に固定され、他端は筺体30に回動可能に固定されている。
切り替え手段144は、本体143の図10に示した姿勢と図11に示した姿勢とを切り替える機能を有する部材である。切り替え手段144は偏心した円板状の部材である偏心円板144aを備えている。該偏心円板144aは、本体143の切り欠き143dの内側に配置される。これによれば、例えば図10の姿勢において、偏心円板144aの長い径が紙面左側に存し、このときには本体143は、第一ブレーキシュー143bが第一ブレーキドラム140に押し当てられる。これに対して偏心円板144aを回転させて図11に示したような姿勢とすれば、偏心円板144aの長い径は紙面右側となり、偏心円板144aが切り欠き143dの内壁を押圧して本体143を移動させることができる。すなわち、このときには図11のように本体143は、第二ブレーキシュー143cが第二ブレーキドラム141に押し当てられる。
初めに図10に示した姿勢、すなわち第一ブレーキシュー143bが第一ブレーキドラム140に押し当てられた姿勢における動作について説明する。このときには、ブレーキの効果により、第一ブレーキドラム140はいずれの方向にも回動することができなくなっている。従って、上記したように、第一ガイドスプロケット35は、第一ブレーキドラム140に対して一方向のみの回動が許容されており、図10にXaで示した方向の回動が許容され、Xbで示した方向の回動が禁止される。
このような場合においては、上記説明したように防水板17が上昇する方向には第一ガイドスプロケット35の回動が許容され、防水板17が下降する方向には第一ガイドスプロケット35の回動が禁止される。すなわち、第一実施形態の防水板装置1に備えられたロック機構39と同様の効果を奏するものとなる。
なお、このときには第二ブレーキシュー143cは、第二ブレーキドラム141には接触していないので、両者の回動自体は特に禁止されていない。
次に図11に示した姿勢、すなわち第二ブレーキシュー143cが第二ブレーキドラム141に押し当てられた姿勢における動作について説明する。第一ブレーキシュー143bが第一ブレーキドラム140に押し当てられた姿勢(図10)から、第二ブレーキシュー143cが第二ブレーキドラム141に押し当てられた姿勢(図11)への本体143の変更は、上記したように切り替え手段144により行うことができる。
図11に示した姿勢では、第二ブレーキドラム141はいずれの方向への回動も禁止される。従って、第二ブレーキドラム141に連動する第二スプロケット36も同様に回動が禁止される。
なお、このときには第一ブレーキシュー143bは、第一ブレーキドラム140には接触していないので、両者の回動自体は特に禁止されていない。
このような場合においては、防水板17の上昇及び下降が禁止される。これは、例えば防水板装置を管理する者が近くにいる等して、必ずしも自動に防水板17を上昇させる必要がない場合等、防水板17の自動の上昇を禁止しておくことが望まれるときに用いることができる。この場合には防水板装置を管理する者がその場を離れて無人となるときに、切り替え手段144により図10に示した姿勢とし、自動に防水板17が上昇するように設定すればよい。
以上説明した各実施形態では、第二ガイドスプロケット36側にロック機能を有する例を説明したが、これに限らず、第一ガイドスプロケット35側にロック機能を有するように構成してもよい。
1 防水板装置
2 通路開閉部
3 機構収容部
13 集水ピット
14 防水板収容ピット
15 取水溝
16 集水バケット
17 防水板
23 水抜き手段
31 伝達機構
32 吊り上げチェーン(チェーン)
35 第一ガイドスプロケット(スプロケット歯車)
36 第二ガイドスプロケット(スプロケット歯車)
37 連結ブラケット
38 移動スプロケット
39 ロック機構
40 ラチェット歯車(防水板下降禁止手段)
41 ロック歯車(防水板上昇禁止手段)
43b 係止突起(防水板下降禁止手段)
43c ロック用突起(防水板上昇禁止手段)
44 切り替え手段
139 ロック機構

Claims (1)

  1. 通路から建物等への浸水を防止するために路面から上昇して水を堰き止め可能に形成される防水板と、
    前記防水板を収容可能に前記路面より下に形成される溝状の防水板収容ピットと、
    前記防水板収容ピットが形成される通路に設けられ、浸水時に水が流入可能に形成される溝状の集水ピットと、
    前記集水ピット内に配置されて該集水ピットに流入した水を貯留し、貯留した水の重量により前記集水ピット内を下降可能に形成される容器である集水バケットと、
    前記防水板と前記集水バケットとを直接又は他の部材を介して連結し、前記集水バケットが前記下降する力を前記防水板が前記上昇する力に変換する機構である伝達機構と、を備え、
    前記伝達機構には、
    前記防水板と前記集水バケットとを連結するチェーンと、
    前記チェーンにおける前記防水板と前記集水バケットとの間に配置され、該チェーンを巻き掛ける歯車であるスプロケット歯車と、
    前記防水板が上昇することを禁止する防水板上昇禁止手段及び前記防水板が下降することを禁止する防水板下降禁止手段と、
    前記防水板上昇禁止手段を作動させて前記防水板下降禁止手段を作動させずに前記防水板の上昇を禁止する状態及び前記防水板上昇禁止手段を作動させることなく前記防水板下降禁止手段を作動させて前記防水板の上昇を許容しつつ、一度上昇した前記防水板が下降することを禁止する状態を切り替える切り替え手段と、が設けられ、
    前記防水板上昇禁止手段は、
    前記スプロケット歯車と同軸に配置され、該スプロケット歯車の回動を禁止可能な突起状の歯であるロック歯を外周に有する歯車であるロック歯車と、
    前記ロック歯車の前記ロック歯に係止可能な突起状のロック用突起を具備する係止部材と、を有し、
    前記切り替え手段により前記防水板の上昇を禁止する状態であるときには、前記防水板が上昇する方向において前記ロック用突起は前記ロック歯に係止した姿勢を取り、前記スプロケット歯車の回動が禁止され、
    前記切り替え手段により前記防水板の上昇を許容しつつ、一度上昇した前記防水板が下降することを禁止する状態であるときには、前記防水板が上昇する方向において前記ロック用突起は前記ロック歯に係止していない姿勢を取り、前記スプロケット歯車の回動が許容される、
    防水板装置。
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