JP5989423B2 - コンクリート構造物の保護構造及びコンクリート構造物の保護工法 - Google Patents
コンクリート構造物の保護構造及びコンクリート構造物の保護工法 Download PDFInfo
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Description
コンクリート構造物と、前記コンクリート構造物の表面を覆う保護シートと、を備え、前記保護シートは、樹脂から成る基材と、炭素膜とを含むことを特徴とする。
本発明によれば、保護シートでコンクリート構造物の表面を覆うことで、その中性化を抑制できる。そのため、塗材を多層に塗布する工法に比べて、施工に要する時間や労力が少なくて済む。また、保護シートが、樹脂から成る基材と炭素膜とを含むので、中性化を抑制する効果が特に高い。さらに、保護シートが上記の構成を有することにより、コンクリート構造物の振動、コンクリート構造物に存在するひび割れの開閉(例えば列車や車両の通過により生じる振動やひび割れの開閉)や、温度変化に起因する収縮等により、保護シートに繰り返し応力が加わっても、保護シートにひび割れや破断等が生じ難く、中性化抑制効果を維持できる。
前記基材としては、例えば、フィルム状のものが好ましい。基材の膜厚は、例えば、1〜1000μmの範囲が好ましく、10〜500μmの範囲が特に好ましい。この範囲内であることにより、中性化抑制効果が一層高い。基材を構成する樹脂としては、各種樹脂を用いることができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ブタジエン等が挙げられる。
前記保護シートは、例えば、その基材側(炭素膜が存在する側とは反対側)をコンクリート構造物に接着してもよいし、炭素膜が存在する側をコンクリート構造物に接着してもよい。特に、前者の接着方法をとれば、保護シートとコンクリート構造物との接着力が一層高くなる。
<実施例>
1.保護シートの製造
ポリエチレンテレフタレート(PET)のフィルム(以下、PETフィルムとする)として、東レ株式会社製のルミラーシリーズを用意した。このPETフィルムには、膜厚50μmのものと、膜厚100μmのものとの2種類がある。PETフィルムは、樹脂から成る基材の一実施形態である。
(i)PETフィルムの膜厚:50μm、DLC膜の膜厚:0.2μm
(ii) PETフィルムの膜厚:50μm、DLC膜の膜厚:1μm
(iii)PETフィルムの膜厚:50μm、DLC膜の膜厚:2μm
(iv)PETフィルムの膜厚:100μm、DLC膜の膜厚:0.2μm
(v) PETフィルムの膜厚:100μm、DLC膜の膜厚:1μm
(vi)PETフィルムの膜厚:100μm、DLC膜の膜厚:2μm
なお、DLC膜の膜厚は、走査型電子顕微鏡(SEM)で断面を観察する方法で測定した。
水平断面が1辺70cmの正方形であるコンクリート高架橋の柱(コンクリート構造物の一実施形態)を施工対象とした。まず、コンクリート高架橋の柱の表面における脆弱層、付着物、及び粉塵をブラスト又は電動工具により除去した。次に、コンクリート高架橋の柱の表面を完全に乾燥させてから、その表面に、エポキシ系接着剤(日本ペイント株式会社製、商品名:タフガードEパテ−2)を、ヘラ又はコテを用いて塗布した。塗布量は、0.5Kg/m2とした。エポキシ系接着剤は、後に保護シートを貼る領域全体に塗布した。
図4(a)に示すコンクリート高架橋301(コンクリート構造物の一実施形態)を施工対象とした。コンクリート高架橋301は、梁303、柱101、跳ね出しスラブ305、及び中央スラブ307を備えている。なお、梁303には、コンクリート高架橋301の長手方向(列車等の進行方向)に沿うものと、短手方向に沿うものとがあるが、両方を施工対象とした。
また、跳ね出しスラブ305、及び中央スラブ307については、それらの下面に、隙間無く保護シート103を接着した。隣接する保護シート103同士は、約20mmの重複部分において重複している。このとき、保護シート103のうち、DLC膜17が形成されていない面を接着面とした。そのため、跳ね出しスラブ305、及び中央スラブ307の表面に、接着剤層を介して、保護シート103のうちのPETフィルム15側が接着され、DLC膜17は外側となる。なお、各保護シート103と跳ね出しスラブ305、及び中央スラブ307との接着強度は充分に高かった。
(1)耐疲労性の評価
(1−1)評価方法
JIS A1436−2006「建築用被覆材料の下地不連続部における耐疲労性試験方法」を準用し、保護シートの耐疲労性を評価した。具体的には、以下のように評価を行った。
PETフィルムの膜厚が50μmであり、DLC膜の膜厚が2μmであるもの
PETフィルムの膜厚が100μmであり、DLC膜の膜厚が1μmであるもの
PETフィルムの膜厚が100μmであり、DLC膜の膜厚が2μmであるもの
(1−2)評価結果
いずれの保護シートについても、ひび割れや破断は見られなかった。この評価結果から、保護シートに対し、コンクリート構造物の振動やひび割れの開閉に起因する応力が繰り返し加わっても、保護シートにひび割れや破断等が生じ難いことが確認できた。
(2)中性化抑止性の評価
(2−1)評価方法
JIS R5210−1997「セメントの物理試験方法」の10.4「試供体の作り方」に規定される方法で、水、セメント、標準砂の質量比が0.65:1:2であるモルタルを、100×100×400mmの型枠を用いて成型した。そのモルタルを、23±2℃、湿度80%以上の状態で24時間養生したのち脱型し、材令7日まで、23±2℃の下、水中養生した。その後、上記のモルタルから、1片が100mmの立方体を切り出した。この立方体のモルタルにおいて、成型時に型枠の側面に接しており、互いに対向する2面に、エポキシ系接着剤(日本ペイント株式会社製、商品名:タフガードEパテ−2)を用いて保護シートを接着するとともに、他の4面には、エポキシ樹脂(コニシ製、商品名:クイックメンダー)を塗装し、試験体とした。なお、保護シートを接着するときは、DLC膜が形成されていない面を接着面とした。その後、14日間養生した。
PETフィルムの膜厚が50μmであり、DLC膜の膜厚が2μmであるもの
PETフィルムの膜厚が100μmであり、DLC膜の膜厚が1μmであるもの
PETフィルムの膜厚が100μmであり、DLC膜の膜厚が2μmであるもの
(2−2)評価結果
いずれの保護シートを用いた場合でも、断面全体が赤く変化し、中性化の進行は皆無であった。この評価結果から、保護シートでコンクリート構造物の表面を覆うことで、その中性化を抑制できることが確認できた。
(3)耐候性の評価
(3−1)評価方法
JIS K5600(塗料一般試験方法)7−7:1999促進耐候性(キセノンランプ法)に基づき耐候性を評価した。具体的には、以下のように行った。
PETフィルムの膜厚が50μmであり、DLC膜の膜厚が2μmであるもの
PETフィルムの膜厚が100μmであり、DLC膜の膜厚が0.2μmであるもの
PETフィルムの膜厚が100μmであり、DLC膜の膜厚が1μmであるもの
PETフィルムの膜厚が100μmであり、DLC膜の膜厚が2μmであるもの
(3−2)評価結果
いずれの保護シートを用いた場合でも、保護シートの割れ、はがれ、変色は見られなかった。
(4)耐アルカリ性の評価
(4−1)評価方法
モルタル板(70×70×20mm)の上面に、エポキシ系接着剤(日本ペイント株式会社製、商品名:タフガードEパテ−2)を用いて保護シートを接着し、これを試験体とした。試験体を、図6に示すように、飽和水酸化カルシウム溶液に、30日間、半浸漬した。その後、試験体を引き上げ、引き上げから2時間後に、保護シートの割れ、はがれ、軟化、溶出を目視により評価した。 また、上記のように飽和水酸化カルシウム溶液に浸漬後、引き上げた試験体において、JSCE K531−1999「表面保護材の付着強さ試験方法」により、保護シートとモルタル板との接着性を評価した。試験は、以下の保護シートのそれぞれについて行った。
PETフィルムの膜厚が100μmであり、DLC膜の膜厚が1μmであるもの
(評価結果)
いずれの保護シートにおいても、割れ、はがれ、軟化、溶出は見られなかった。また、保護シートとモルタル板との接着力は、約1MPaであり、充分に高かった。
(5)ひび割れ追従性の評価
(評価方法)
JSCE K532−1999「表面被覆材のひび割れ追従性試験方法」に基づき、保護シートのひび割れ追従性を評価した。具体的には、以下のように評価を行った。
PETフィルムの膜厚が100μmであり、DLC膜の膜厚が1μmであるもの
また、評価は、標準条件と、低温(10℃)条件とのそれぞれにおいて行った。
(評価結果)
追従性の評価値は、標準条件で0.68mm以上、低温条件で0.70mm以上であり、非常に高かった。
例えば、保護シートで表面を覆うコンクリート構造物は、コンクリート高架橋の代わりに、コンクリート桁橋、電架柱、ビル、住宅等であってもよい。
11・・・雰囲気ガス、13・・・パルス電源、15・・・PETフィルム、
17・・・DLC膜、101・・・コンクリート高架橋の柱、103・・・保護シート、
103a、103b・・・端部、105・・・重複部分、201・・・試験体、
203、205・・・基板、301・・・コンクリート高架橋、303・・・梁、
305・・・跳ね出しスラブ、307・・・中央スラブ
Claims (2)
- コンクリート構造物と、
前記コンクリート構造物の表面を覆う保護シートと、
接着剤層と、
を備え、
前記保護シートは、樹脂から成る基材と、前記基材における一方の表面に設けられたダイヤモンドライクカーボンの膜とを含み、
前記接着剤層は、前記基材における前記一方とは反対側の表面と前記コンクリート構造物の表面とを接着していることを特徴とするコンクリート構造物の保護構造。 - コンクリート構造物の表面を、樹脂から成る基材と前記基材における一方の表面に設けられたダイヤモンドライクカーボンの膜とを含む保護シートにより覆うコンクリート構造物の保護工法であって、
前記基材における前記一方とは反対側の表面を接着剤により、前記コンクリート構造物の表面に接着することを特徴とするコンクリート構造物の保護工法。
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