JP5987693B2 - 透過率向上フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、例えばタッチパネルを構成する位置入力装置の裏面等に適用される透過率向上フィルムに関するものである。
画面上の操作説明に入力動作が対応するタッチパネルは、直感的に分かりやすく操作が簡単であることから、広く普及している。このようなタッチパネルは、表示と入力の二つの機能を備え、一般的に、液晶パネルのような表示装置とタッチパッドのような位置入力装置を組合せた構成となっている。しかし、位置入力装置が使用者と表示装置との間に介在するため、タッチパネルの全光線透過率が低く視認性が悪いことが問題となっている。そのため、位置入力装置の裏面に両面テープを介して透過率向上フィルムを貼り合せ、視認性を高める方法が一般的に採用されている。
従来、この種の透過率向上フィルムには反射防止層が積層されるが、当該反射防止層は、全光線透過率を向上させるために高屈折率層と低屈折率層とを複数層積層させた多層構成が一般的であった。しかし、より低屈折率である材料を用いれば、低屈折率層だけの単層構成でも反射を抑えることが可能となる。
特許文献1には、単層構成の反射防止フィルムとして、透明基材フィルムの表面に易接着層を介して低屈折率層が積層されて構成されている。前記易接着層は屈折率が1.50〜1.65で厚みが1〜50nmであり、且つ、低屈折率層の屈折率が1.20〜1.50である反射防止フィルムが知られている。
特開2010−170089号
特許文献1方法では、全光線透過率は満足するが、易接着層を介して低屈折率層を形成しているため、易接着層に起因した外観上のムラが問題である。この反射防止フィルムは、タッチパネルの最表面での使用を想定している。そこで、防汚性を得るために、低屈折率層の材料としてフッ素原子を含有した活性エネルギー線硬化型樹脂を用いることも推奨されている。しかし、フッ素原子を含有する活性エネルギー線硬化型樹脂を用いた場合、フッ素原子によって反射防止フィルム表面の表面エネルギーが低下する。これでは、両面テープとの粘着力が悪くなるといった問題がある。更に、特許文献1の方法では、耐擦傷性に対する対策がなんら施されておらず、耐擦傷性に乏しいといった問題がある。また、透明基材フィルムの低屈折率層と反対側の面には何ら処理を施していない。そのため、当該透過率向上フィルムを位置入力装置に組み込む際、若しくは位置入力装置に組み込んだ後に表示装置と合わせる際に、加熱処理工程がある場合は、加熱処理後に透過率向上フィルムのヘイズが上昇するといった課題がある。
そこで、本発明の目的とするところは、両面テープとの粘着性、全光線透過率、及び耐擦傷性に優れ、外観上の反射ムラが抑制された透過率向上フィルムを提供することにある。
上記課題を解決する手段としては透明基材フィルムの表面に、該透明基材フィルムよりも屈折率の低い低屈折率層を直接積層する。当該低屈折率層は、中空シリカ微粒子と、フッ素原子を含まない活性エネルギー線硬化型樹脂と、光重合開始剤と、アルミナ微粒子とからなる。該中空シリカ微粒子、フッ素原子を含まない活性エネルギー線硬化型樹脂、光重合開始剤、及びアルミナ微粒子の合計100wt%に対して、前記中空シリカ微粒子を28.0〜69.0wt%、前記フッ素原子を含まない活性エネルギー線硬化型樹脂を27.0〜69.0wt%、前記光重合開始剤を1.0〜9.0wt%、前記アルミナ微粒子を0.1〜0.9wt%含有する。すなわち、低屈折率層は、防汚性を積極的に発現するようなフッ素樹脂やシリコン樹脂からなる表面調整剤を含んでいない。
前記透明基材フィルムの裏面には、オーバーコート層を積層することが好ましい。当該オーバーコート層は、フッ素原子を含まない活性エネルギー線硬化型樹脂と、シリカ微粒子と、光重合開始剤とからなる。なお、ここでのシリカ微粒子は、中実(非中空)シリカ微粒子と中空シリカ微粒子の双方を意味する。該フッ素原子を含まない活性エネルギー線硬化型樹脂、シリカ微粒子、及び光重合開始剤の合計100wt%に対して、前記フッ素原子を含まない活性エネルギー線硬化型樹脂を85.0〜95.0wt%、前記シリカ微粒子を1.0〜10.0wt%、前記光重合開始剤を1.0〜9.0wt%含有する。すなわち、オーバーコート層は、防汚性を積極的に発現するようなフッ素樹脂やシリコン樹脂からなる表面調整剤を含んでいない。更に、前記オーバーコート層の光学膜厚はkλ/4(但し、λは光の波長400〜700nm、kは1又は3又は5)である。
透明基材フィルムの表面に低屈折率層が直接積層されていれば、透過率向上フィルム延いてはこれを備えるタッチパネル等の全光線透過率に優れ、且つ外観上の反射ムラを抑制できる。加えて、前記低屈折率層は中空シリカ微粒子、フッ素原子を含まない活性エネルギー線硬化型樹脂、光重合開始剤、及びアルミナ微粒子からなることから、両面テープとの粘着性、且つ耐擦傷性に優れる。
透明基材フィルムの裏面にオーバーコート層が形成されていれば、加熱処理後に透過率向上フィルムのヘイズが上昇しない。更に、オーバーコート層の光学膜厚がkλ/4(但し、λは光の波長400〜700nm、kは1又は3又は5)であれば、上記効果に加えて、更に全光線透過率に優れる。
以下、本発明を具体化した実施形態について詳細に説明する。透過率向上フィルムは、透明基材フィルム上に低屈折率層が直接積層されている。更に、透過率向上フィルムの裏面にオーバーコート層を積層することもできる。
〔透明基材フィルム〕
透明基材フィルムは、透過率向上フィルムの基材(ベース材)となるものである。透明基材フィルムとしては、透明樹脂フィルム等が用いられ、低屈折率層が積層される面に易接着層が無いこと以外は特に制限されない。低屈折率層と透明基材フィルムとの間に易接着層が形成されると、外観上のムラが発生するからである。光の反射を抑えるためには、透明基材フィルムの屈折率(n)は1.55〜1.70が好ましい。透明基材フィルムの具体的材料としては、例えばポリ(メタ)アクリル系樹脂、トリアセテートセルロース(TAC、n=1.49)系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET、n=1.65)系樹脂、ポリカーボネート(PC、n=1.59)系樹脂、ポリアリレート(PAR、n=1.60)及びポリエーテルスルフォン(PES、n=1.65)等が挙げられる。これらの中でも、汎用性などの観点からトリアセテートセルロース系樹脂又はポリエチレンテレフタレート系樹脂が好ましい。透明基材フィルムの厚みは、通常10〜500μm、好ましくは25〜200μmである。なお、本明細書において「(メタ)アクリル系樹脂」とは、アクリル系樹脂又はメタクリル系樹脂を意味する。後述の「(メタ)アクリル酸」や「(メタ)アクリロイル基」等も同様である。
〔低屈折率層〕
低屈折率層は、反射防止層として機能する層である。低屈折率層は、中空シリカ微粒子と、フッ素原子を含まない活性エネルギー線硬化型樹脂と、光重合開始剤と、アルミナナノ粒子とからなり、これらを混合した低屈折率層用塗液を紫外線(UV)硬化させて形成される。上記各組成物の配合量は、中空シリカ微粒子、フッ素原子を含まない活性エネルギー線硬化型樹脂、光重合開始剤、及びアルミナ微粒子の合計を100wt%として、その内中空シリカ微粒子を28.0〜69.0wt%、フッ素原子を含まない活性エネルギー線硬化型樹脂を27.0〜69.0wt%、光重合開始剤を1.0〜9.0wt%、アルミナ微粒子を0.1〜0.9wt%含有し、その他の成分は含まない。従って、防汚性を積極的に発現するようなフッ素樹脂やシリコン樹脂からなる表面調整剤を含んでいない。その他の成分を含むと、両面テープとの粘着力が弱くなる。但し、低屈折率層用塗液中には、塗工性の観点から通常希釈溶剤が含まれる。
低屈折率層は、中空シリカ微粒子の屈折率とフッ素原子を含まない活性エネルギー線硬化型樹脂の屈折率との相対関係によって、屈折率が1.35〜1.47になるように調整されることが好ましい。乾燥硬化後の膜厚は好ましくは50〜130nm、より好ましくは80〜125nmである。屈折率と膜厚がこの範囲外では、5°正反射での可視領域における反射率が最低値となる最小反射率波長が450〜650nmの範囲外となり、全光線透過率の向上が見られない。
低屈折率層に用いられる中空シリカ微粒子の屈折率は、1.2〜1.4が好ましい。一方、フッ素原子を含まない活性エネルギー線硬化型樹脂としては、屈折率が1.3〜1.7であることが好ましい。中空シリカ微粒子の屈折率が1.4より大きい場合、フッ素原子を含まない活性エネルギー線硬化型樹脂の混合量が相対的に少量となり、塗膜強度が弱くなる。即ち、耐擦傷性が悪くなる傾向が見られる。また、中空シリカ微粒子の屈折率が1.2より小さい場合においては、中空シリカの強度が弱く、耐擦傷性が悪くなる傾向が見られる。
中空シリカ微粒子の配合量は、28.0〜69.0wt%とする。28.0wt%より少ない場合は、低屈折率層の屈折率が1.47以上となるため相応しくない。一方、69.0wt%より多い場合は、フッ素原子を含まない活性エネルギー線硬化型樹脂の量が少なく、塗膜としての強度が弱くなるため好ましくない。
また、中空シリカ微粒子の平均粒子径は低屈折率層の厚みを大きく超えないことが好ましい。具体的には、中空シリカ微粒子の平均粒子径は0.1μm以下であることが好ましい。中空シリカ微粒子の平均粒子径が低屈折率層の厚みを大きく超えると、光の散乱が生じる等、低屈折率層の光学性能が低下する傾向にある。なお、本明細書において「平均粒子径」とは、粒子径分布測定装置〔大塚電子(株)製、PAR−III〕を使用し、レーザー光を用いた動的光散乱法により平均粒子径を測定することで求めた値である。
低屈折率層に用いられる中空シリカ微粒子は、例えば特開2006−21938号公報に開示された、外殻内部に空洞を有する中空で球状のシリカ系微粒子の製造方法により合成することもできる。すなわち、シリカ系微粒子は下記の工程(a)、(b)、(d)及び(e)を経て製造される。
工程(a):珪酸塩の水溶液又は酸性珪酸液と、アルカリ可溶の無機化合物水溶液とをアルカリ水溶液中に所定の比率で添加して複合酸化物微粒子分散液を調製する際に電解質塩を添加する工程。
工程(b):前記複合酸化物微粒子分散液に酸を加えてシリカ系微粒子分散液とする工程。
工程(d):前記シリカ系微粒子分散液を常温〜300℃の範囲で熟成する工程。
工程(e):50〜300℃の範囲で水熱処理する工程。
更に、中空シリカ微粒子は、(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤等により表面が修飾されることが望ましい。(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤等で中空シリカ微粒子表面を修飾することにより、フッ素原子を含まない活性エネルギー線硬化型樹脂との共有結合が生じ、塗膜強度が強くなる傾向が見られる。
低屈折率層で用いられるフッ素原子を含まない活性エネルギー線硬化型樹脂としては、屈折率の低減を目的としたフッ素原子を含んでいない、活性エネルギー線硬化型樹脂が用いられる。フッ素原子を含んでいると、フッ素原子に起因した透過率向上フィルム表面の表面エネルギーの低下が生じ、両面テープとの粘着力が悪くなる。このような活性エネルギー線硬化型樹脂としては、単官能単量体、多官能単量体の中から1種又は2種以上が選択して用いられる。単官能単量体として具体的には、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸(ポリ)エチレングリコール基含有(メタ)アクリル酸エステル等が好ましい。多官能単量体としては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物、ウレタン変性アクリレート等の(メタ)アクリロイル基を2個以上含む多官能重合性化合物等が挙げられる。
フッ素原子を含まない活性エネルギー線硬化型樹脂の配合量は、27.0〜69.0wt%とする。27.0wt%より少ない場合は、塗膜強度が弱くなる傾向があり好ましくない。一方、69.0wt%より多い場合は、低屈折率層の屈折率が1.47以上となるため相応しくない。
低屈折率層で用いられるアルミナ微粒子は、耐擦傷性向上を目的に用いられる。アルミナ微粒子の平均粒子径は低屈折率層の厚みを大きく超えないことが好ましい。具体的には、アルミナ微粒子の平均粒子径は、0.1μm以下であることが好ましい。アルミナ微粒子の平均粒子径が低屈折率層の厚みを大きく超えると光の散乱が生じる等、低屈折率層の光学性能が低下する傾向にある。
アルミナ微粒子の配合量は、0.1〜0.9wt%とする。0.1wt%よりも少ないと、耐擦傷性向上に寄与しない。一方、0.9wt%よりも多い場合は、フッ素原子を含まない活性エネルギー線硬化型樹脂とアルミナ微粒子との屈折率差に起因した散乱が生じ、低屈折率層の光学性能が低下する傾向にある。
低屈折率層で用いられる光重合開始剤は、低屈折率層用塗液を紫外線(UV)硬化させるために用いられる。光重合開始剤の配合量は、1.0〜9.0wt%とする。1.0wt%より少ないと、硬化が不十分となる。一方、9.0wt%よりも多い場合は、不必要に多くなり、低屈折率層の光学性能が低下する傾向にある。そのような光重合開始剤としては、例えば1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン等が用いられる。
〔オーバーコート層〕
オーバーコート層は、フッ素原子を含まない活性エネルギー線硬化型樹脂と、シリカ微粒子と、光重合開始剤とからなる。オーバーコート層は、これらを混合したオーバーコート層用塗液を紫外線(UV)硬化させて形成される。上記各組成物の配合量は、フッ素原子を含まない活性エネルギー線硬化型樹脂、シリカ微粒子、及び光重合開始剤の合計を100wt%として、その内フッ素原子を含まない活性エネルギー線硬化型樹脂85.0〜95.0wt%、シリカ微粒子1.0〜10.0wt%、光重合開始剤1.0〜9.0wt%であり、その他の成分は含まない。従って、防汚性を積極的に発現するようなフッ素樹脂やシリコン樹脂からなる表面調整剤を含んでいない。その他の成分を含むと、位置入力装置と透過率向上フィルムとを粘着剤を備える両面テープで貼合した際に、両面テープとの粘着力が弱く、位置入力装置の剥れが生じるおそれがある。但し、オーバーコート層用塗液中には、塗工性の観点から通常希釈溶剤が含まれる。
オーバーコート層の乾燥硬化後の光学膜厚は、kλ/4(但し、λは光の波長400〜700nm、kは1、3、又は5)であり、屈折率は1.3〜1.7である。膜厚と屈折率がこの範囲外では、5°正反射での可視領域における反射率が最低値となる最小反射率波長が450〜650nmの範囲外となり、全光線透過率の向上が見られない。また、オーバーコート層の光学膜厚が1λ/4より薄い場合は、透過率向上フィルムを位置入力装置等に組み込む際、若しくは、透過率向上フィルムへ組み込んだ後に表示装置と合わせる際に、加熱処理工程がある場合は透過率向上フィルムのヘイズが上昇する。一方、5λ/4よりも厚い場合は、不必要に厚くなるのみで好ましくない。
なお、透過率向上フィルムを位置入力装置等に組み込む際や、透過率向上フィルムへ組み込んだ後に表示装置と合わせる際に加熱処理を行う場合は、50〜150℃程度で1〜60分程度行えばよい。加熱処理前後のヘイズの差((加熱処理後のヘイズ)−(加熱処理前のヘイズ))は、0.5%未満であることが好ましい。
オーバーコート層で用いられるフッ素原子を含まない活性エネルギー線硬化型樹脂としては、屈折率の低減を目的としたフッ素原子を含んでいない、活性エネルギー線硬化型樹脂が用いられる。フッ素原子を含んでいると、フッ素原子に起因した透過率向上フィルム表面の表面エネルギーの低下が生じ、両面テープとの粘着性が悪くなる。そのような活性エネルギー線硬化型樹脂としては、単官能単量体、多官能単量体の中から1種又は2種以上が選択して用いられる。単官能単量体として具体的には、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸(ポリ)エチレングリコール基含有(メタ)アクリル酸エステル等が好ましい。多官能単量体としては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物、ウレタン変性アクリレート等の(メタ)アクリロイル基を2個以上含む多官能重合性化合物等が挙げられる。
フッ素原子を含まない活性エネルギー線硬化型樹脂の配合量は、85.0〜95.0wt%とする。85.0wt%より少ない場合は、シリカ微粒子の配合量が多くなり光の散乱が生じる等、光学性能が低下する傾向にある。95.0wt%より多い場合は、透過率向上フィルムをロールtoロールで製造する場合、ブロッキングが生じ好ましくない。
オーバーコート層には、透過率向上フィルムをロールtoロールで製造する場合のブロッキングを防止するために、シリカ微粒子が添加される。すなわち、ここでのシリカ微粒子はオーバーコート層の屈折率を積極的に低下させるためのものではない。したがって、オーバーコート層で使用するシリカ微粒子は、低屈折率層で使用するシリカ微粒子よりも屈折率は高くてもよい。具体的には、中空シリカ微粒子のほか、これよりも屈折率の高い中実シリカ微粒子を使用することもできる。中空シリカ微粒子の屈折率は1.2〜1.4であることに対し、中実シリカ微粒子の屈折率は1.4〜1.5である。シリカ微粒子の屈折率が1.5より大きい場合、フッ素原子を含まない活性エネルギー線硬化型樹脂とシリカ微粒子の屈折率差に起因した光の散乱が生じ、光学性能が低下する傾向にある。シリカ微粒子の屈折率が1.2より小さい場合、中空シリカ微粒子の強度が弱く、耐擦傷性が悪くなる傾向が見られるが、オーバーコート層に用いられるシリカ微粒子の配合量は少ないため、耐擦傷性悪化への影響は小さい。よって、シリカ微粒子の屈折率は1.2以下でも技術的には問題無い。
シリカ微粒子の配合量は、1.0〜10.0wt%である。1.0wt%より少ない場合は、透過率向上フィルムをロールtoロールで製造する場合、ブロッキングが生じ好ましくない。一方、10.0wt%より多い場合は、フッ素原子を含まない活性エネルギー線硬化型樹脂とシリカ微粒子の屈折率差に起因した光の散乱が生じ、光学性能が低下する傾向にある。
オーバーコート層で用いられる光重合開始剤は、オーバーコート層用塗液を紫外線(UV)硬化させるために用いられる。光重合開始剤の配合量は、1.0〜9.0wt%とする。1.0wt%より少ないと、硬化が不十分となる。一方、9.0wt%よりも多い場合は、不必要に多くなり、オーバーコート層の光学性能が低下する傾向にある。このような光重合開始剤としては、例えば1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン等が用いられる。
低屈折率層用やオーバーコート層用の塗液の塗布方法は特に制限されず、通常行なわれている塗布方法、例えばロールコート法、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ダイコート法、インクジェット法、グラビアコート法等公知のいかなる方法も採用される。塗布に際しては、密着性を向上させるために、予め透明基材フィルム表面にコロナ放電処理等の前処理を施すことができる。
活性エネルギー線の照射に用いられる活性エネルギー線源としては、例えば高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、窒素レーザ、電子線加速装置、放射性元素等の線源等が使用される。この場合、活性エネルギー線の照射量は、紫外線の波長365nmでの積算光量として50〜5000mJ/cmであることが好ましい。照射量が50mJ/cm未満のときには、塗液の硬化が不十分となるため好ましくない。一方、5000mJ/cmを超えるときには、活性エネルギー線硬化型樹脂が着色する傾向を示すため好ましくない。
得られた透過率向上フィルムは、静電容量式タッチパネルや抵抗膜式タッチパネル等のタッチパネルにおいて、例えばタッチパネルを構成する位置入力装置の裏面等に適用される。
以下に、製造例、実施例及び比較例を挙げて本発明の実施形態をさらに具体的に説明する。ここで、各実施例及び比較例の透過率向上フィルムは、透明基材フィルム上に直接低屈折率層が積層され、更に、透過率向上フィルムの裏面にオーバーコート層が積層された構成のものである。また、各例における粘着力、全光線透過率、耐擦傷性、反射ムラ、加熱処理後のヘイズ上昇については、下記に示す方法により測定した。
<粘着力>
(1)透過率向上フィルムの低屈折率層面を、日東電工(株)製の両面テープ No.500に貼合する。
(2)JIS Z0237に準拠し、卓上型材料試験機 株式会社オリエンテック製STA−1150を使用し、引きはがし角度90°で低屈折率層面と両面テープとの粘着力を測定。
<ヘイズ値・全光線透過率>
ヘイズメーター 日本電色工業(株)製、NDH2000を用いてヘイズ値・全光線透過率を測定した。
<耐擦傷性>
(株)本光製作所製消しゴム摩耗試験機の先端に、#0000のスチールウールを固定し、2.5N(255gf)の荷重をかけて、被擦傷体であるフィルムの表面を10往復摩擦した後の表面の傷を目視で観察し、下記の3段階で評価した。
○:ほぼ傷なし(傷4本以下)
△:少数の傷あり(傷5〜15本)
×:多数の傷あり(傷16本以上)
<反射ムラ>
三波長光源下、作成した反射防止フィルムの裏面に黒色粘着層を施したフィルムを貼合して目視で観察し、以下の3段階で評価した。
○ :ほぼムラ無し
△ :弱いムラ有り
× :強いムラ有り
<加熱処理後のヘイズ上昇>
透過率向上フィルムに対し、150℃60分の加熱処理を実施。加熱処理前後のヘイズの差((加熱処理後のヘイズ)−(加熱処理前のヘイズ))を評価した。
〔低屈折率層用塗液の調製〕
低屈折率層用塗液として次の原料を使用し、各原料を表1、2に記載した組成で混合して、低屈折率層用塗液L−1〜L13を調整した。なお、表1、2中の数値はwt%である。
中空シリカ微粒子:
日揮触媒化成(株)製 アクリル修飾中空シリカ微粒子スルーリアNAU
日揮触媒化成(株)製 アクリル修飾中空シリカ微粒子V8208
フッ素原子を含まない活性エネルギー線硬化型樹脂:日本化薬(株)製 DPHA
光重合開始剤:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製I−907
アルミナ微粒子:
ビックケミー・ジャパン(株)製NANOBYK−3601
ビックケミー・ジャパン(株)製NANOBYK−3602
ビックケミー・ジャパン(株)製NANOBYK−3610
溶媒:イソプロピルアルコール
Figure 0005987693
Figure 0005987693
〔オーバーコート層用塗液の調製〕
オーバーコート層用塗液として次の原料を使用し、各原料を表3に記載した組成で混合して、オーバーコート層用塗液O−1〜O−7を調整した。なお、表3中の数値はwt%である。
フッ素原子を含まない活性エネルギー線硬化型樹脂:日本化薬(株)製 DPHA
シリカ微粒子:
日揮触媒化成(株)製 アクリル修飾中空シリカ微粒子V8208
日揮触媒化成(株)製 アクリル修飾中空シリカ微粒子スルーリアNAU
光重合開始剤:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製 I−907
溶媒:イソプロピルアルコール
Figure 0005987693
(実施例1−1)
低屈折率層用塗液(L−1)を、透明基材フィルムとして厚み50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に直接、硬化後の膜厚が100nmとなるようにロールコーターにて塗布し、乾燥後、120W高圧水銀灯〔日本電池(株)製〕により紫外線を照射し(積算光量400mJ/cm)、硬化させて透過率向上フィルムを作製した。
(実施例1−2)
低屈折率層用塗液をL−2とし、硬化後の膜厚を125nmとした以外は、実施例1−1と同様にして透過率向上フィルムを作製した。
(実施例1−3)
低屈折率層用塗液をL−3とし、硬化後の膜厚を80nmとした以外は、実施例1−1と同様にして透過率向上フィルムを作製した。
(実施例1−4)
低屈折率層用塗液をL−4とした以外は、実施例1−1と同様にして透過率向上フィルムを作製した。
(実施例1−5)
低屈折率層用塗液をL−5とした以外は、実施例1−1と同様にして透過率向上フィルムを作製した。
(実施例1−6)
低屈折率層用塗液をL−6とした以外は、実施例1−1と同様にして透過率向上フィルムを作製した。
(実施例1−7)
低屈折率層用塗液をL−7とした以外は、実施例1−1と同様にして透過率向上フィルムを作製した。
(比較例1−1)
低屈折率層用塗液をL−8とした以外は、実施例1−1と同様にして透過率向上フィルムを作製した。
(比較例1−2)
低屈折率層用塗液をL−9とした以外は、実施例1−1と同様にして透過率向上フィルムを作製した。
(比較例1−3)
低屈折率層用塗液をL−10とした以外は、実施例1−1と同様にして透過率向上フィルムを作製した。
(比較例1−4)
低屈折率層用塗液をL−11とした以外は、実施例1−1と同様にして透過率向上フィルムを作製した。
(比較例1−5)
低屈折率層用塗液をL−12とした以外は、実施例1−1と同様にして透過率向上フィルムを作製した。
(比較例1−6)
低屈折率層用塗液をL−13とした以外は、実施例1−1と同様にして透過率向上フィルムを作製した。
(実施例2−1)
実施例1−1で作製した透過率向上フィルムの裏面に、オーバーコート層用塗液(O−1)を、硬化後の光学膜厚がkλ/4(k:1、λ:550nm)=138nmとなるようにロールコーターにて塗布し、乾燥後、120W高圧水銀灯〔日本電池(株)製〕により紫外線を照射し(積算光量400mJ/cm)、硬化させて透過率向上フィルムを作製した。
(実施例2−2)
オーバーコート層用塗液をO−2とし、オーバーコート層の膜厚をkλ/4(k:3、λ:550nm)=412nmとした以外は、実施例2−1と同様にして透過率向上フィルムを作製した。
(実施例2−3)
オーバーコート層用塗液をO−3とし、オーバーコート層の膜厚をkλ/4(k:5、λ:550nm)=688nmとした以外は、実施例2−1と同様にして透過率向上フィルムを作製した。
(実施例2−4)
オーバーコート層用塗液をO−4とした以外は、実施例2−1と同様にして透過率向上フィルムを作製した。
(実施例2−5)
オーバーコート層用塗液をO−5とした以外は、実施例2−1と同様にして透過率向上フィルムを作製した。
(比較例2−1)
オーバーコート層用塗液をO−6とした以外は、実施例2−1と同様にして透過率向上フィルムを作製した。
(比較例2−2)
オーバーコート層用塗液をO−7とした以外は、実施例2−1と同様にして透過率向上フィルムを作製した。
各実施例の各試験結果を表4〜6に示す。
Figure 0005987693
Figure 0005987693
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表3、4に示した結果より、実施例1−1〜7の透過率向上フィルムは、両面テープとの粘着性、全光線透過率、耐擦傷性の全てに優れるうえ、外観上の反射ムラも無いことを実現できた。また、実施例2−1〜5の透過率向上フィルムは、オーバーコート層を透過率向上フィルムの裏面に所定の光学膜厚で形成したことから全光線透過率がより優れ、更に加熱処理後にヘイズが上昇しないことを実現できた。
一方、比較例1−1は、中空シリカ微粒子の配合量が少なく、全光線透過率が悪かった。比較例1−2は、中空シリカ微粒子の配合量が多く、耐擦傷性(表面)が悪い結果となった。比較例1−3は、アルミナ微粒子が配合されてないことから耐擦傷性(表面)が悪い結果となった。比較例1−4は、アルミナ微粒子の配合量が多く、全光線透過率が悪い結果となった。比較例1−5は、光重合開始剤が配合されてないことから耐擦傷性(表面)が悪い結果となった。比較例1−6は、光重合開始剤の配合量が多く、全光線透過率が悪い結果となった。
比較例2−1は、シリカ微粒子が配合されてないことからブロッキング性が悪い結果となった。比較例2−2は、光重合開始剤が配合されてないことから耐擦傷性(裏面)が悪い結果となった。

Claims (6)

  1. 透明基材フィルムの表面に、該透明基材フィルムよりも屈折率の低い低屈折率層が直接積層されている透過率向上フィルムであって、
    前記低屈折率層はシリコーンオイルを含有せず、中空シリカ微粒子、フッ素原子を含まない活性エネルギー線硬化型樹脂、光重合開始剤、及びアルミナ微粒子からなり、
    該中空シリカ微粒子、フッ素原子を含まない活性エネルギー線硬化型樹脂、光重合開始剤、及びアルミナ微粒子の合計100wt%に対して、
    前記中空シリカ微粒子を28.0〜69.0wt%、
    前記フッ素原子を含まない活性エネルギー線硬化型樹脂を27.0〜69.0wt%、
    前記光重合開始剤を1.0〜9.0wt%、
    前記アルミナ微粒子を0.1〜0.9wt%含有する、透過率向上フィルム。
  2. 請求項1に記載の透過率向上フィルムであって、
    前記透明基材フィルムの屈折率が1.55〜1.70であり、
    前記低屈折率層の屈折率が1.35〜1.47である、透過率向上フィルム。
  3. 請求項1または請求項2に記載の透過率向上フィルムであって、
    前記低屈折率層の膜厚が50〜130nmであり、
    前記中空シリカ微粒子及びアルミナ微粒子の平均粒子径が0.1μm以下である、透過率向上フィルム。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の透過率向上フィルムであって、
    前記透明基材フィルムの裏面にオーバーコート層が積層されており、
    前記オーバーコート層は、フッ素原子を含まない活性エネルギー線硬化型樹脂、シリカ微粒子、及び光重合開始剤からなり、
    該フッ素原子を含まない活性エネルギー線硬化型樹脂、シリカ微粒子、及び光重合開始剤の合計100wt%に対して、
    前記フッ素原子を含まない活性エネルギー線硬化型樹脂を85.0〜95.0wt%、
    前記シリカ微粒子を1.0〜10.0wt%、
    前記光重合開始剤を1.0〜9.0wt%含有し、
    前記オーバーコート層の光学膜厚はkλ/4(但し、λは光の波長400〜700nm、kは1、3、又は5)である、透過率向上フィルム。
  5. 請求項4に記載の透過率向上フィルムであって、
    前記オーバーコート層の屈折率が1.3〜1.7である、透過率向上フィルム。
  6. 請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の透過率向上フィルムであって、
    タッチパネルを構成する位置入力装置の裏面に適用される、透過率向上フィルム。


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