JP5984944B2 - レーザーレーダ装置及び測定対象物の速度算出方法 - Google Patents
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Description
レーダ装置は、例えば、電磁波や音波などの波動を空間に放射して、測定対象となる物体に反射されて戻ってきた波動を受信し、その波動の受信信号を解析することで、レーダ装置から物体までの距離や角度を計測する装置である。
また、気象レーダ装置の中でも、特に、電磁波としてレーザ光を用いるレーザーレーダ装置では、放射するビームの広がりが極めて小さいため、高い角度分解能で物体を観測することが可能であり、風向風速レーダ装置として使用されている(例えば、非特許文献1を参照)。
レーザーレーダ装置では、各高度における大気中のエアロゾルに反射されて戻ってきたレーザ光(反射光)を時間毎に区切る処理が行われる。一般的に、各時間の反射光は「レンジビン」と呼ばれる。
レーザーレーダ装置は、各々のレンジビン毎に、微小間隔でのコヒーレント積算を実施して、レンジビン内でフーリエ変換を実施する。
一般的に、N回のインコヒーレント積算が行われた場合、SNRが√N倍向上することが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
図16では、ガウシアンビームが放射された場合に取得される風速のスペクトルを表しており、当該スペクトルのピークをドップラ速度(風速)として定義している。
また、予め用意されている受信スペクトルの波形モデルのパラメータを可変して、受信信号のスペクトルとの相関が最も高いパラメータを探索し、そのパラメータを用いて測定対象物の速度を算出する最尤推定法がある(例えば、特許文献2を参照)。
サンプリング周波数をfs、データ点数をpとすると、周波数分解能Δfはfs/pで与えられる。
ピーク検出法で風速測定が行われる場合には、サンプリング周波数fsが十分でないと、図17(a)に示すように、SNRのピークを正確に検出することができない場合がある。そのため、ピーク検出法で得られる風速は、真値に対して誤差を有していることがある。
これに対して、重心演算法で風速測定が行われる場合、図17(a)に示すように、周波数分解能以上の風速測定が可能になる。
また、風速測定のための所望SNRは、ピーク検出法よりも緩和させることができる効果がある(例えば、非特許文献2を参照)。
また、同一レンジビン内に複数の風が混入している場合、それぞれの風速を測定することができるメリットがある(例えば、特許文献2を参照)。図18は最尤推定法を用いた複数の風の風速測定を説明する説明図である。
ただし、反復計算を行う必要があるため、その計算速度は、ピーク検出法及び重心演算法よりも遅く、風速測定レートが遅くなるデメリットがある。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1によるレーザーレーダ装置を示す構成図である。
図1において、光送受信部1は光発振装置2、光学系3及びレーザ光検出器4から構成されており、レーザ光を大気中に放射して、大気中に存在しているエアロゾル(測定対象物)に反射して戻ってくるレーザ光を受信し、そのレーザ光の受信信号を信号処理部5に出力する処理を実施する。なお、光送受信部1はレーザ光送受信手段を構成している。
ただし、電磁波であるレーザ光を大気中に放射して、エアロゾルに反射して戻ってくるレーザ光を受信することができればよく、図1に示す構成の光送受信部1に限るものではない。したがって、例えば、特許文献1に開示されている構成の光送受信部1であってもよい。
光送受信部1の光学系3は1以上のレンズなどから構成されており、エアロゾルに反射して戻ってくるレーザ光をレーザ光検出器4に集光させる光学部材である。
光送受信部1のレーザ光検出器4は光学系3により集光されたレーザ光を受光して、そのレーザ光の波形を電気信号に変換し、その電気信号を受信信号として信号処理部5に出力する処理を実施する。
信号処理部5の信号解析部6は例えばCPUを実装している半導体集積回路、あるいは、ワンチップマイコンなどから構成されており、光送受信部1から出力された受信信号を解析して、エアロゾルの速度(風速)を算出する処理を実施する。
信号解析部6がコンピュータで構成されている場合、信号解析部6の構成要素である雑音信号保存装置13をコンピュータのメモリ上に構成するとともに、信号解析部6の構成要素であるコヒーレント積算処理部11、スペクトル算出部12、SNR算出部14、ピークSNR検出部15及び速度算出部16の処理内容が記述されているプログラムをコンピュータのメモリに格納し、当該コンピュータのCPUが当該メモリに格納されているプログラムを実行するようにすればよい。
図2において、コヒーレント積算処理部11は光送受信部1から出力された受信信号をコヒーレント積算し、コヒーレント積算後の受信信号をスペクトル算出部12に出力する処理を実施する。なお、コヒーレント積算処理部11はコヒーレント積算手段を構成している。
スペクトル算出部12はコヒーレント積算処理部11によりコヒーレント積算された受信信号をフーリエ変換し、フーリエ変換後の受信信号をインコヒーレント積算して、その受信信号のスペクトルを算出する処理を実施する。なお、スペクトル算出部12はスペクトル算出手段を構成している。
SNR算出部14はスペクトル算出部12により算出された受信信号のスペクトルを雑音信号保存装置13により記憶されている雑音信号のスペクトルで除算することで、信号対雑音比であるSNR(Signal to Noise Ratio)を算出する処理を実施する。
なお、雑音信号保存装置13及びSNR算出部14から信号対雑音比算出手段が構成されている。
速度算出部16はエアロゾルの速度(風速)を算出する複数の速度算出手法(例えば、ピーク検出法、重心演算法、最尤推定法)の中から、ピークSNR検出部15により検出されたSNRのピーク値に対応する速度算出手法を選択し、その速度算出手法にしたがってエアロゾルの速度(風速)を算出する処理を実施する。なお、速度算出部16は速度算出手段を構成している。
図3はこの発明の実施の形態1によるレーザーレーダ装置の信号解析部6の処理内容(測定対象物の速度算出方法)を示すフローチャートである。
図4において、SNR判定部21はユーザから速度の算出精度より速度の算出レートを優先する指示を受けている場合、ピークSNR検出部15により検出されたSNRのピーク値(以下、「ピークSNR」と称する)が基準ピーク値PREFより高ければ(ピークSNR>PREF)、速度算出手法として「ピーク検出法」を選択し、そのピークSNRが基準ピーク値PREFより低ければ(ピークSNR≦PREF)、速度算出手法として「最尤推定法」を選択する処理を実施する。
また、SNR判定部21はユーザから速度の算出レートより速度の算出精度を優先する指示を受けている場合、そのピークSNRが基準ピーク値PREFより高ければ(ピークSNR>PREF)、速度算出手法として「重心演算法」を選択し、そのピークSNRが基準ピーク値PREFより低ければ(ピークSNR≦PREF)、速度算出手法として「最尤推定法」を選択する処理を実施する。
重心演算処理部23はSNR判定部21により速度算出手法として「重心演算法」が選択された場合、ピークSNR検出部15により検出された1以上のピークSNRの重心を算出し、その重心に対応する周波数からエアロゾルの速度(風速)を算出する処理を実施する。
最尤推定処理部24は予め用意されている受信スペクトルの波形モデルのパラメータを可変して、スペクトル算出部12により算出された受信信号のスペクトルとの相関が最も高いパラメータを探索し、そのパラメータを用いてエアロゾルの速度(風速)を算出する処理を実施する。
図6は速度の算出レートより速度の算出精度を優先する場合の速度算出部16の処理内容を示すフローチャートである。
まず、光送受信部1の光発振装置2がレーザ光を発振すると、そのレーザ光は、光学系3を通じて大気中に放射される。
大気中に放射されたレーザ光は、大気中に存在しているエアロゾルに反射され、反射された一部のレーザ光は、光送受信部1の光学系3によって集光される。
光送受信部1のレーザ光検出器4は、光学系3により集光されたレーザ光を受光して、そのレーザ光の波形を電気信号に変換し、その電気信号を受信信号として信号処理部5に出力する。
以下、信号解析部6の処理内容を具体的に説明する。
例えば、レーザーレーダ装置からエアロゾルまでの距離が1Kmであって、1つのレンジビンの距離幅が100mであるとすれば、レンジビン数Mは10になる。
ただし、レンジビン数Mはユーザが決定するようにしてもよく、例えば、レーザーレーダ装置からエアロゾルまでの距離が1Kmであるとき、ユーザがレンジビン数Mを20に決定すると、1つのレンジビンの距離幅が50mになる。
そして、スペクトル算出部12は、各々のレンジビンi毎に、事前に設定されている積分回数Nだけ、フーリエ変換後の受信信号をインコヒーレント積算することで(図15を参照)、その受信信号のスペクトルSPCiを算出する(ステップST2)。
ピークSNR検出部15は、SNR算出部14がSNRを算出すると、各々のレンジビンi毎に、SNRのピーク値であるピークSNRを検出する(ステップST4)。
以下、速度算出部16の処理内容を具体的に説明する。
一方、ユーザから速度の算出レートより速度の算出精度を優先する指示を受けている場合、図6に示す処理を実施することで、エアロゾルの速度(風速)を算出する。
速度算出部16のSNR判定部21は、ユーザから速度の算出精度より速度の算出レートを優先する指示を受けている場合、各々のレンジビンi毎に、ピークSNR検出部15により検出されたピークSNRと基準ピーク値PREFを比較する(図5のステップST11)。
SNR判定部21は、そのピークSNRが基準ピーク値PREFより高ければ(ピークSNR>PREF)、受信信号のSNRは十分に高く、速度算出手法として「最尤推定法」を選択しなくても、高精度にエアロゾルの速度(風速)を算出することができるため、速度算出手法として、最尤推定法より計算時間が短い「ピーク検出法」を選択する(ステップST12)。
式(1)において、λは波長である。
例えば、レーザ光の送信波形が正規分布をとっており、レーザ光の受信波形も正規分布をとっているものとすれば、振幅がA、平均ドップラ速度がμd、風速幅がσdであれば、受信信号のスペクトルのモデルは、下記の式(2)で表される。
式(3)において、最小二乗誤差Lが最小になるときのパラメータ(振幅A、平均ドップラ速度μd、風速幅σd)が、最も受信信号を模擬できているパラメータとなる。
1/ω≦σd≦K×(1/ω)
ωは送信パルス幅、Kはレンジビン内に含まれると想定される風量の個数を表している。
0<μd≦fw
fwは想定される風速によって決定されるドップラ周波数であり、その設置・計測環境に応じてユーザにより決定される。
ここでは、振幅Aも可変する例を示しているが、クラッタが存在していないと思われる場合(例えば、快晴時など)、例えば、受信信号の最大スペクトルで受信信号のスペクトルSPCiを正規化し、正規化後のスペクトルSPCiに対して最尤推定を行うことで、計算機コストを低減するようにしてもよい。
速度算出部16のSNR判定部21は、ユーザから速度の算出レートより速度の算出精度を優先する指示を受けている場合、各々のレンジビンi毎に、ピークSNR検出部15により検出されたピークSNRと基準ピーク値PREFを比較する(図6のステップST21)。
SNR判定部21は、そのピークSNRが基準ピーク値PREFより高ければ(ピークSNR>PREF)、受信信号のSNRは十分に高く、速度算出手法として「最尤推定法」を選択しなくても、高精度にエアロゾルの速度(風速)を算出することができるため、速度算出手法として、最尤推定法より計算時間が短い「重心演算法」を選択する(ステップST22)。
なお、重心に対応する周波数fdは、下記の式(4)のように表される。
式(4)において、S(f)は受信信号のスペクトルSPCi、fは当該スペクトルSPCiに対応する周波数であり、スペクトルSPCiに対して周波数fで重みをかけている。
一方、ピークSNR検出部15により検出されたピークSNRが低く、速度算出手法として「最尤推定法」を選択しなければ、高精度にエアロゾルの速度(風速)を算出することができない状況下では、速度算出手法として「最尤推定法」が選択されるので、ピークSNRが低くても、高精度にエアロゾルの速度(風速)を算出することができる。
図7はこの発明の実施の形態2によるレーザーレーダ装置の信号解析部6を示す構成図であり、図において、図2と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
速度算出部17はスペクトル算出部12により算出された受信信号のスペクトルSPCiからエアロゾルの速度幅である風速幅Swを算出し、エアロゾルの速度(風速)を算出する複数の速度算出手法(例えば、ピーク検出法、重心演算法、最尤推定法)の中から、ピークSNR検出部15により検出されたピークSNR及び風速幅Swに対応する速度算出手法を選択し、その速度算出手法にしたがってエアロゾルの速度(風速)を算出する処理を実施する。なお、速度算出部17は速度算出手段を構成している。
SNR判定部31は予め基準ピーク値として、閾値TSNR1が設定されている他に、閾値TSNR2が設定されており(TSNR1>TSNR2)、ユーザから速度の算出精度より速度の算出レートを優先する指示を受けている場合、ピークSNR検出部15により検出されたピークSNRが閾値TSNR2より高く、閾値TSNR1より低ければ(TSNR2<ピークSNR≦TSNR1)、速度算出手法として「重心演算法」を選択し、そのピークSNRが閾値TSNR2より低ければ(ピークSNR≦TSNR2)、速度算出手法として「最尤推定法」を選択する処理を実施する。
また、SNR判定部31はユーザから速度の算出レートより速度の算出精度を優先する指示を受けている場合、そのピークSNRが閾値TSNR1より低ければ(ピークSNR≦TSNR1)、速度算出手法として「最尤推定法」を選択する処理を実施する。
また、速度幅判定部32は予め基準速度幅として、閾値Twmaxが設定されている他に、閾値Twminが設定されており(Twmax>Twmin)、ユーザから速度の算出精度より速度の算出レートを優先する指示を受けている場合、ピークSNR検出部15により検出されたピークSNRが閾値TSNR1より高いとき、その風速幅Swが閾値Twmaxより広ければ(Sw>Twmax)、速度算出手法として「ピーク検出法」を選択し、その風速幅Swが閾値Twmaxより狭ければ(Twmin≦Sw≦Twmax)、速度算出手法として「重心演算法」を選択する処理を実施する。
また、速度幅判定部32はユーザから速度の算出レートより速度の算出精度を優先する指示を受けている場合、ピークSNR検出部15により検出されたピークSNRが閾値TSNR1より高いとき、その風速幅Swが閾値Twmaxより広ければ(Sw>Twmax)、速度算出手法として「最尤推定法」を選択し、その風速幅Swが閾値Twmaxより狭ければ(Twmin≦Sw≦Twmax)、速度算出手法として「重心演算法」を選択する処理を実施する。
図9は速度の算出精度より速度の算出レートを優先する場合の速度算出部17の処理内容の一部を示すフローチャートである。
図10は速度の算出レートより速度の算出精度を優先する場合の速度算出部17の処理内容の一部を示すフローチャートである。
まず、光送受信部1の光発振装置2がレーザ光を発振すると、そのレーザ光は、光学系3を通じて大気中に放射される。
大気中に放射されたレーザ光は、大気中に存在しているエアロゾルに反射され、反射された一部のレーザ光は、光送受信部1の光学系3によって集光される。
光送受信部1のレーザ光検出器4は、光学系3により集光されたレーザ光を受光して、そのレーザ光の波形を電気信号に変換し、その電気信号を受信信号として信号処理部5に出力する。
以下、信号解析部6の処理内容を具体的に説明する。
スペクトル算出部12は、コヒーレント積算処理部11からコヒーレント積算後の受信信号を受けると、上記実施の形態1と同様に、各々のレンジビンi毎に、コヒーレント積算後の受信信号をフーリエ変換する。
そして、スペクトル算出部12は、各々のレンジビンi毎に、事前に設定されている積分回数Nだけ、フーリエ変換後の受信信号をインコヒーレント積算することで(図15を参照)、その受信信号のスペクトルSPCiを算出する。
ピークSNR検出部15は、SNR算出部14がSNRを算出すると、上記実施の形態1と同様に、各々のレンジビンi毎に、SNRのピーク値であるピークSNRを検出する。
速度算出部17は、風速幅Swを算出すると、エアロゾルの速度(風速)を算出する複数の速度算出手法(例えば、ピーク検出法、重心演算法、最尤推定法)の中から、各々のレンジビンi毎に、ピークSNR及び風速幅Swに対応する速度算出手法を選択し、その速度算出手法にしたがってエアロゾルの速度(風速)を算出する。
以下、速度算出部17の処理内容を具体的に説明する。
一方、ユーザから速度の算出レートより速度の算出精度を優先する指示を受けている場合、図10に示す処理を実施することで、エアロゾルの速度(風速)を算出する。
速度算出部17のSNR判定部31は、ユーザから速度の算出精度より速度の算出レートを優先する指示を受けている場合、各々のレンジビンi毎に、ピークSNR検出部15により検出されたピークSNRと閾値TSNR1を比較する(図9のステップST31)。
ここで、図11はSNR判定部31におけるSNR判定を示す説明図である。
SNR判定部31は、そのピークSNRが閾値TSNR2より高い場合(TSNR2<ピークSNR≦TSNR1)、図11に示すように、受信信号のSNRは中程度であり、速度算出手法として「最尤推定法」を選択しなくても、高精度にエアロゾルの速度(風速)を算出することができるが、速度算出手法として「ピーク検出法」を選択すると、高精度にエアロゾルの速度(風速)を算出することができない可能性があるため、速度算出手法として「重心演算法」を選択する(ステップST33)。
式(5)において、S(f)は受信信号のスペクトルSPCiであり、fが当該スペクトルSPCiに対応する周波数である。
なお、高SNRの場合には、ピーク値に対する半値落ちした点の幅を用いて風速幅Swを導出するようにしてもよい。この場合には、少ない計算量で導出することが可能になる。
速度幅判定部32は、その風速幅Swが閾値Twmaxより広ければ(Sw>Twmax)、速度算出手法として「ピーク検出法」を選択する(ステップST37)。
速度幅判定部32は、その風速幅Swが閾値Twmaxより狭ければ(Sw≦Twmax)、その風速幅Swと閾値Twminを比較する(ステップST38)。
速度幅判定部32は、その風速幅Swが閾値Twmaxより狭いが、閾値Twminより広ければ(Twmin≦Sw≦Twmax)、速度算出手法として「重心演算法」を選択する(ステップST39)。
その風速幅Swが閾値Twminより狭ければ(Sw<Twmin)、どの速度算出手法を選択しても、高精度にエアロゾルの速度(風速)を算出することができる可能性が低いため、速度算出手法を選択せずに、エアロゾルの速度(風速)を算出する処理を終了する(ステップST40)。
例えば、2種類以上の風が混入している場合、Twmax=2/ω以上の風速幅Swとなる一方、風速幅Swが2/ω以下であれば、エアロゾルからの反射光ではなく、クラッタであると判断することができる。
このように閾値Twmax,Twminが設定された場合、クラッタが存在している状況下では、速度算出手法として、クラッタの存在が算出精度に大きく影響しない「ピーク検出法」が選択され、クラッタが存在していない状況下では、ピーク検出法より算出精度が高い「重心演算法」が選択されるようになる。
重心演算処理部23は、SNR判定部31又は速度幅判定部32が当該レンジビンiの速度算出手法として「重心演算法」を選択すると、上記実施の形態1と同様に、エアロゾルの速度である風速vdを算出する。
最尤推定処理部24は、SNR判定部31が当該レンジビンiの速度算出手法として「最尤推定法」を選択すると、上記実施の形態1と同様に、エアロゾルの速度である風速vdを算出する。
速度算出部17のSNR判定部31は、ユーザから速度の算出レートより速度の算出精度を優先する指示を受けている場合、各々のレンジビンi毎に、ピークSNR検出部15により検出されたピークSNRと閾値TSNR1を比較する(図10のステップST51)。
SNR判定部31は、そのピークSNRが閾値TSNR1より低い場合(ピークSNR≦TSNR1)、計算精度が高い「最尤推定法」を選択しなければ、高精度にエアロゾルの速度(風速)を算出することができない可能性があるため、速度算出手法として「最尤推定法」を選択する(ステップST52)。
一方、そのピークSNRが閾値TSNR1より高い場合(ピークSNR>TSNR1)、「重心演算法」又は「最尤推定法」の選択を速度幅判定部32に指示する。
速度幅判定部32は、風速幅Swを算出すると、その風速幅Swと閾値Twmaxを比較する(ステップST54)。
速度幅判定部32は、その風速幅Swが閾値Twmaxより狭ければ(Sw≦Twmax)、その風速幅Swと閾値Twminを比較する(ステップST56)。
その風速幅Swが閾値Twminより狭ければ(Sw<Twmin)、どの速度算出手法を選択しても、高精度にエアロゾルの速度(風速)を算出することができる可能性が低いため、速度算出手法を選択せずに、エアロゾルの速度(風速)を算出する処理を終了する(ステップST58)。
最尤推定処理部24は、SNR判定部31又は速度幅判定部32が当該レンジビンiの速度算出手法として「最尤推定法」を選択すると、上記実施の形態1と同様に、エアロゾルの速度である風速vdを算出する。
上記実施の形態1,2では、ピークSNRが低い場合、速度算出手法として「最尤推定法」を選択する例を示したが、速度算出手法として「最尤推定法」を選択しても、SNRが所望のSNRに満たない場合、高精度にエアロゾルの速度(風速)を算出することができない。
そこで、この実施の形態3では、SNRが所望のSNRに満たない場合でも、高精度にエアロゾルの速度(風速)を算出することができるようにしている。
即ち、この実施の形態3では、SNRが所望のSNRに満たない場合、スペクトル算出部12におけるインコヒーレント積算の積算回数を増やして、風速算出精度を高めるようにしている。
積算回数設定部18はSNR算出部14により算出されたSNRに応じて、スペクトル算出部12におけるインコヒーレント積算の積算回数Nを設定する処理を実施する。なお、積算回数設定部18は積算回数設定手段を構成している。
図13はこの発明の実施の形態3によるレーザーレーダ装置の信号解析部6の処理内容(測定対象物の速度算出方法)を示すフローチャートである。
以下、積算回数設定部18及びスペクトル算出部12の処理内容を具体的に説明する。
ただし、積算回数設定部18及びスペクトル算出部12以外は、上記実施の形態1,2と同様であるため、詳細な説明は省略する。
スペクトル算出部12が初めて受信信号のスペクトルSPCiを算出する段階では、SNR算出部14によりSNRが算出されておらず、積算回数設定部18が積分回数Nを設定することができないので、スペクトル算出部12は、各々のレンジビンi毎に、事前に設定されている積分回数Nだけ、フーリエ変換後の受信信号をインコヒーレント積算することで(図15を参照)、その受信信号のスペクトルSPCiを算出する(図13のステップST2)。
即ち、積算回数設定部18は、SNR算出部14により算出されたSNRが閾値TSNR3より低い場合(SNR<TSNR3)、そのSNRに応じて、スペクトル算出部12におけるインコヒーレント積算の積算回数Nを設定する。
あるいは、積算回数設定部18が、例えば、下記の式(6)に示す演算を実施することで、積算回数Nを更新するようにしてもよい。ただし、式(6)の演算は一例であり、他の演算を実施するようにしてもよい。
N=N+(TSNR1/SNR)2 (6)
また、速度の算出精度を優先する場合には、ユーザによって定義される所望の風速算出レート以下の処理時間+積算回数で決定されるデータ取得時間の中で、最も高い風速算出精度が期待される積算回数Nに更新するようにしてもよい。
SNR算出部14は、スペクトル算出部12が、再度、受信信号のスペクトルSPCiを算出すると、上記実施の形態1,2と同様に、各々のレンジビンi毎に、その受信信号のスペクトルSPCiを雑音信号保存装置13により記憶されている雑音信号のスペクトルで除算することで、信号対雑音比であるSNRを算出する(ステップST3)。
速度算出部17は、スペクトル算出部12が受信信号のスペクトルSPCiを算出し、ピークSNR検出部15がピークSNRを検出すると、上記実施の形態2と同様に、各々のレンジビンi毎に、その受信信号のスペクトルSPCiからエアロゾルの速度幅である風速幅Swを算出する。
速度算出部17は、風速幅Swを算出すると、エアロゾルの速度(風速)を算出する複数の速度算出手法(例えば、ピーク検出法、重心演算法、最尤推定法)の中から、各々のレンジビンi毎に、ピークSNR及び風速幅Swに対応する速度算出手法を選択し(ステップST5)、その速度算出手法にしたがってエアロゾルの速度(風速)を算出する(ステップST5)。
これにより、風速の測定が安定して行われるようになるが、全てのレンジビンにおける風速の算出精度を均一化させて、データのばらつきを一定化させることも可能になる。
したがって、例えば、突風や乱気流の検知を、統計量を用いたマッチングによって行う場合、常に一定のSNRであれば、マッチング処理に費やす処理時間を削減することができるとともに、当該統計量の不足や不安定性によって発生する誤検知を低減することができる。
Claims (6)
- レーザ光を大気中に放射して、大気中に存在している測定対象物に反射して戻ってくるレーザ光を受信し、上記レーザ光の受信信号を出力するレーザ光送受信手段と、
上記レーザ光送受信手段から出力された受信信号をコヒーレント積算するコヒーレント積算手段と、
上記コヒーレント積算手段によりコヒーレント積算された受信信号をフーリエ変換し、フーリエ変換後の受信信号をインコヒーレント積算して、上記受信信号のスペクトルを算出するスペクトル算出手段と、
上記スペクトル算出手段により算出された受信信号のスペクトルと雑音信号のスペクトルから信号対雑音比を算出する信号対雑音比算出手段と、
上記信号対雑音比算出手段により算出された信号対雑音比のピーク値を検出するピーク値検出手段と、
速度の算出精度と速度の算出レートのうち、どちらを優先して上記測定対象物の速度を算出するかを示す情報と、上記ピーク値検出手段により検出された信号対雑音比のピーク値とを用いて、複数の速度算出手法の中から、上記測定対象物の速度を算出する速度算出手法を選択し、その選択した速度算出手法にしたがって上記測定対象物の速度を算出する速度算出手段と
を備えたレーザーレーダ装置。 - 上記速度算出手段は、速度の算出精度より速度の算出レートを優先する場合、上記ピーク値検出手段により検出された信号対雑音比のピーク値が基準ピーク値より高ければ、上記速度算出手法として、上記信号対雑音比のピーク値に対応する周波数から上記測定対象物の速度を算出するピーク検出法を選択し、上記ピーク値が上記基準ピーク値より低ければ、上記速度算出手法として、予め用意されている受信スペクトルの波形モデルのパラメータを可変して、上記受信信号のスペクトルとの相関が最も高いパラメータを探索し、上記パラメータを用いて上記測定対象物の速度を算出する最尤推定法を選択し、
速度の算出レートより速度の算出精度を優先する場合、上記ピーク値が上記基準ピーク値より高ければ、上記速度算出手法として、上記信号対雑音比における1以上のピーク値の重心を算出し、上記重心に対応する周波数から上記測定対象物の速度を算出する重心演算法を選択し、上記ピーク値が上記基準ピーク値より低ければ、上記速度算出手法として、上記最尤推定法を選択する
ことを特徴とする請求項1記載のレーザーレーダ装置。 - 上記速度算出手段は、上記スペクトル算出手段により算出された受信信号のスペクトルから上記測定対象物の速度幅を算出し、
上記測定対象物の速度を算出する複数の速度算出手法の中から、上記ピーク値検出手段により検出された信号対雑音比のピーク値と上記情報と上記速度幅とに対応する速度算出手法を選択し、上記速度算出手法にしたがって上記測定対象物の速度を算出する
ことを特徴とする請求項1記載のレーザーレーダ装置。 - 上記速度算出手段は、速度の算出精度より速度の算出レートを優先する場合、上記ピーク値検出手段により検出された信号対雑音比のピーク値が基準ピーク値より高く、上記測定対象物の速度幅が基準速度幅より広ければ、上記速度算出手法として、上記信号対雑音比のピーク値に対応する周波数から上記測定対象物の速度を算出するピーク検出法を選択し、上記ピーク値が上記基準ピーク値より高く、上記測定対象物の速度幅が上記基準速度幅より狭ければ、上記速度算出手法として、上記信号対雑音比における1以上のピーク値の重心を算出し、上記重心に対応する周波数から上記測定対象物の速度を算出する重心演算法を選択し、上記ピーク値が上記基準ピーク値より低ければ、上記速度算出手法として、予め用意されている受信スペクトルの波形モデルのパラメータを可変して、上記受信信号のスペクトルとの相関が最も高いパラメータを探索し、上記パラメータを用いて上記測定対象物の速度を算出する最尤推定法を選択し、
速度の算出レートより速度の算出精度より優先する場合、上記ピーク値が上記基準ピーク値より高く、上記測定対象物の速度幅が上記基準速度幅より狭ければ、上記速度算出手法として、上記重心演算法を選択し、上記ピーク値が上記基準ピーク値より高く、上記測定対象物の速度幅が上記基準速度幅より広い場合、あるいは、上記ピーク値が上記基準ピーク値より低い場合、上記速度算出手法として、上記最尤推定法を選択する
ことを特徴とする請求項3記載のレーザーレーダ装置。 - 上記信号対雑音比算出手段により算出された信号対雑音比に応じて上記インコヒーレント積算の積算回数を設定する積算回数設定手段を設け、
上記スペクトル算出手段は、上記積算回数設定手段により設定された積算回数だけ、上記フーリエ変換後の受信信号をインコヒーレント積算して、上記受信信号のスペクトルを算出する
ことを特徴とする請求項1記載のレーザーレーダ装置。 - レーザ光送受信手段が、レーザ光を大気中に放射して、大気中に存在している測定対象物に反射して戻ってくるレーザ光を受信し、上記レーザ光の受信信号を出力するレーザ光送受信処理ステップと、
コヒーレント積算手段が、上記レーザ光送受信処理ステップで出力された受信信号をコヒーレント積算するコヒーレント積算処理ステップと、
スペクトル算出手段が、上記コヒーレント積算処理ステップでコヒーレント積算された受信信号をフーリエ変換し、フーリエ変換後の受信信号をインコヒーレント積算して、上記受信信号のスペクトルを算出するスペクトル算出処理ステップと、
信号対雑音比算出手段が、上記スペクトル算出処理ステップで算出された受信信号のスペクトルと雑音信号のスペクトルから信号対雑音比を算出する信号対雑音比算出処理ステップと、
ピーク値検出手段が、上記信号対雑音比算出処理ステップで算出された信号対雑音比のピーク値を検出するピーク値検出処理ステップと、
速度算出手段が、速度の算出精度と速度の算出レートのうち、どちらを優先して上記測定対象物の速度を算出するかを示す情報と、上記ピーク値検出処理ステップで検出された信号対雑音比のピーク値とを用いて、複数の速度算出手法の中から、上記測定対象物の速度を算出する速度算出手法を選択し、その選択した速度算出手法にしたがって上記測定対象物の速度を算出する速度算出処理ステップと
を備えた測定対象物の速度算出方法。
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