JP5983933B2 - 塗膜除去方法及びレーザー照射装置 - Google Patents

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Description

本発明は、レーザー照射により構造物の表面の塗膜を除去する技術に関し、特に、構造物として、橋梁、建築物、船舶等の固定されたもの又は大型のものに対して、可搬性のあるレーザーヘッドを用いてレーザーを照射して比較的厚い塗膜を除去する塗膜除去方法及びその装置に関する。
橋梁、高速道路、鉄道の高架線路、建築物、タンク、機械設備などの動かすことが困難な構造物を長期に渡って安全に使用するためには、腐食を防ぐために母材(鋼材)の表面に施された塗装の塗膜を定期的に剥離、除去し、塗り替える必要がある。従来、塗膜を除去する方法としては、砂を吹き付けて塗膜を除去するサンドブラスト等のブラスト処理による方法、塗膜剥離剤を使用する方法、機械工具を使用する方法があった。
ブラスト処理による方法では、二次廃棄物が大量に発生する。この二次廃棄物は、鉛、六価クロム、PCBなどの有害物質を含む塗膜の粉塵と、珪砂、ガーネットなどの研削材とが混ざったものであり、環境へ与える負荷が大きく、処理費用も大きい。また、研削材を圧縮空気で吹き付けるので、塗膜層の下の母材までも傷めるおそれがある。また、研削材が衝突する際に大きな騒音が生じるなどの問題もある。塗膜剥離剤及び機械工具を使用する方法では、何れも時間当たりの処理面積が低く効率的でないという問題があり、また、各々には、薬剤の廃棄物が発生する、騒音が大きいという問題もある。
そして、航空機等の機体外板の塗装を除去する際、従来は、塗装表面に毒性の強い薬品を吹き付け、手作業で塗装膜をかき落としていたのに対し、特許文献1には、作業効率を上げ、危険を回避するために、レーザー処理装置により塗膜を除去する方法が開示されている。特許文献1に記載されたレーザー処理装置は、レーザーを処理対象物の表面に照射するレンズ、レンズを支持し処理対象物表面からレンズまでの高さを調整可能なレンズ支持機構、レーザー照射部分にガスを吹き付けるガス噴出手段を備える。また、箱型容器内に配置されたガス吸引口が、箱型容器内のガスを排気するとともに、レーザー照射部分から飛散した除去物を排出することが記載されている。
また、レンズに入射するレーザーの光路内に配置され、レーザーの進行方向を変化させることにより、処理対象物の表面内の第1の方向にレーザーの照射位置を移動させる第1の偏向器と、レンズに入射するレーザーの光路内に配置され、レーザーの進行方向を変化させることにより、処理対象物の表面内の第1の方向と交わる第2の方向にレーザーの照射位置を移動させる第2の偏向器とを用いて、レーザーの照射位置を第1の方向に掃引する掃引工程を、該第1の方向と交差する第2の方向にずらしながら複数回実施することが記載されている。
かかるレーザー処理装置において、レーザー照射ヘッドは、マニピュレータアームの先端に取り付けられ、マニピュレータアームは、マニピュレータ本体により制御され、レーザー照射ヘッドを処理対象物の表面の所望の位置に移動させ支持することが記載されている。
特開平10−309899号公報
特許文献1に記載された技術によれば、レーザーアブレーションにより、化学薬品を使用することなく、処理対象物の表面の塗装膜を除去することができる。しかしながら、特許文献1では、走査光学系に、ガルバノミラーやポリゴンミラー等の第1の偏向器を使用し、レーザーの照射位置を直線状に走査する(以下「直線走査」という)。かかる直線走査を繰り返していく方法では、効率的に広い範囲を短時間で処理することが難しく、橋梁などの構造物の広範囲の表面を低コストで処理することができない。
特に、厚い塗膜の場合、塗膜の層を表面から少しずつ削っていかなくてはならないため、除去処理に多大の時間を要していた。
また、特許文献1に記載のレーザー照射ヘッドは、マニュピュレータアームによって支持され、所望の位置に移動されるものであるので、十分な作業空間が確保できない環境や、複雑な形状の構造物に対して使用することが難しい。また、作業者が携行しながら取り回すことも難しい。そもそも、特許文献1に記載のレーザー処理装置は、工場内に格納された航空機等の塗膜除去に適用するためのレーザー処理装置であり、かかるレーザー処理装置自体を移動させることについては考慮されていない。すなわち、特許文献1に記載の塗膜除去方法は、動かすことが困難な構造物(例えば、橋梁、高速道路、鉄道の高架線路、建築物など)の塗膜除去に適用することができない。
本発明は、前述した問題の少なくとも一部を解決することができる塗膜除去方法及びそれに用いるレーザー照射装置を提供することを目的とする。
前述した課題を解決するため、本発明は、構造物の表面の塗膜を除去する塗膜除去方法であって、塗膜に切れ込みを形成する前処理と、切れ込みを含む領域の塗膜にレーザーを照射し、塗膜の少なくとも一部を剥離する剥離処理とを備えることを特徴とする。また、その前処理において、直線及び曲線の少なくとも一方を含む切れ込みによってセグメントを形成することが好ましい。セグメントの面積が9〜2500mm2の範囲であることが好ましい。
上記塗膜除去方法において、塗膜の少なくとも一部の層を残存させてもよい。また、塗膜の膜厚が0.3mm以上であることが好ましい。また、剥離処理と同時又は後に、切れ込みを含む領域の塗膜の剥離を促進するための促進処理を有することが好ましい。
上記塗膜除去方法において、促進処理は、塗膜に流体を吹付けてもよい。また、促進処理は、塗膜に物理的な力を与えてもよい。
また、上記塗膜除去方法において、レーザー発振器と、レーザー発振器から出力されるレーザーを伝送するファイバと、ファイバを介して伝送されるレーザーを照射するレーザーヘッドとを含むレーザー照射装置であって、レーザーヘッドが、レーザーを光軸に対して偏向させるウェッジプリズムと、ウェッジプリズムを回転させる駆動手段と、を備えるレーザー照射装置を使用して前処理及び剥離処理の少なくとも一方を行ってもよい。
さらに、上記塗膜除去方法において、レーザー発振器と、レーザー発振器から出力されるレーザーを伝送するファイバと、ファイバを介して伝送されるレーザーを照射するレーザーヘッドとを含むレーザー照射装置であって、レーザーヘッドが、レーザーを光軸に対して偏向させる第1ウェッジプリズムと、第1ウェッジプリズムによって偏向されたレーザーをその光路に対してさらに偏向させる第2ウェッジプリズムと、第1ウェッジプリズム及び第2ウェッジプリズムを回転させる駆動手段と、を備えるレーザー照射装置を使用して前処理及び剥離処理の少なくとも一方を行ってもよい。
加えて、上記塗膜除去方法において、各ウェッジプリズムの回転方向及び回転速度、並びに各ウェッジプリズムの間の距離及び回転方向における位相差を制御することによって、レーザーの照射点を直線状及び曲線状に走査させて前処理を行ってもよい。
あるいは、上記塗膜除去方法において、第1及び第2ウェッジプリズムを、略同一の回転速度で同一の方向に回転させつつ、各ウェッジプリズムの間の距離又は回転方向における位相差を変更して、前処理において、大きさの異なる円又は円環状の切れ込みを形成してもよい。また、第1及び第2ウェッジプリズムを、略同一の回転速度で反対の方向に回転させて、前処理において、略直線状の切れ込みを形成してもよい。前処理において刃物を使用してもよい。
本発明は、レーザー発振器と、レーザー発振器から出力されるレーザーを伝送するファイバと、ファイバを介して伝送されるレーザーを集束させて構造物の表面の塗膜に照射するための可搬性のあるレーザーヘッドとを含むレーザー照射装置であって、レーザーヘッドは、その走査光学系が、レーザーを光軸に対して偏向させるウェッジプリズムと、ウェッジプリズムを所定の回転速度及び回転方向で光軸回りに回転させる駆動手段と、を有し、レーザーを走査して塗膜に切れ込みを形成した後、切れ込みを含む領域の塗膜にレーザーを円状に照射してその塗膜の少なくとも一部を剥離することを特徴とする。
上記レーザー照射装置において、切れ込みを含む領域の塗膜に流体を吹付ける流体吹付手段を有することが好ましい。また、レーザーヘッドの先端にアタッチメント又はフードを備え、アタッチメント又はフードに塗膜の剥離を促進するための促進手段を有することが好ましい。
本発明によれば、比較的厚い塗膜(0.3mm以上、特に1.0mm以上)を効率良く剥離することができ、広範囲の構造物の表面を低コストで処理することができる。また、本発明の塗膜除去方法によれば、前処理を施さない場合に比べて、塗膜除去後の母材のレーザー痕を目立たなくすることもできる。さらに、小型軽量のレーザーヘッドを含む運搬、移動可能なレーザー照射装置を使用して、動かすことが困難な構造物の現場において、表面の塗膜を効率良く剥離することすることができる。その他の効果については、発明を実施するための形態において述べる。
本発明の塗膜除去方法の概略を示す説明図 (A)(B)(C)(D)は、切れ込みの形状の例を示す説明図 (A)(B)は、切れ込みの断面の形状の例を示す説明図 本発明のレーザー照射装置の第1の走査光学系の例 第1の走査光学系の例によるレーザー照射点の軌跡を示す説明図 第2の走査光学系の構成の例 (A)(B)は、第2の走査光学系の例によるレーザー照射点の軌跡を示す説明図 (A)(B)は、第3の走査光学系の例、及びそれによるレーザー照射点の軌跡の例を示す説明図 (A)(B)は、第4の走査光学系の例、及びそれによるレーザー照射点の軌跡の例を示す説明図 (A)(B)は、第5の走査光学系の例、及びそれによるレーザー照射点の軌跡の例を示す説明図
従来、構造物の表面の塗膜を塗り替える際、厚い塗膜を除去するには、多大の労力、コスト、時間を要していた。本願の出願人は、鋭意研究の結果、構造物表面の塗膜において、切れ込みを形成した後、切れ込みの入った塗膜に対してレーザーを照射すると、構造物の塗膜を効率良く短時間で剥離できることを見出した。特に、厚い塗膜(例えば、0.3mm以上、特に1.0mm以上)の場合、場所によっては切れ込みに沿って一定領域の塗膜を一度に剥離することもできた。
図1に示すように、本発明の塗膜除去方法では、はじめに、構造物の処理対象の表面20上の塗膜において、適宜の切れ込み23を形成する(以下「前処理」という)。この切れ込みによってセグメント28が形成されてもよい。ここで、「セグメント」とは、切れ込みによって区画された領域である。セグメントは、切れ込みにより閉じた領域(例えば、矩形、扇形、円形など)で形成されることが好ましいが(図2(A)(B)の符号28)、一部が開いた領域(開いた領域については、切れ込みの周期性などから、仮想の切れ込みによってセグメントは区画される)を含んでいてもよい。換言すると、切れ込みはひとつながりでなくてもよく、例えば、直線状の切れ込みを等間隔で平行に配置してもよいし、複数の十字が並ぶ形状でもよい(図2(C)(D)の符号28)。図2(C)の場合は、短冊状のセグメントが形成され、図2(D)の場合は、十字の切れ込みを延ばした仮想の切れ込みによって区分される矩形のセグメントが形成される。このように、セグメントの大きさ及び形状は、適宜設定可能である。
また、「構造物」とは、橋梁、高速道路、鉄道の高架線路、大型タンク、大型設備などの設置場所に固定されていて動かすことが困難なものを含み、そのほかに、航空機、船舶、鉄道車両などの整備場所に移動可能なものも含む。この前処理では、各種の工作機械(例えば、刃物、レーザー加工機、放電加工機など)を使用することができる。
前処理の後、次いで、レーザー照射装置(1〜4)を使用して、切れ込み又はセグメントを含む領域の塗膜にレーザー30を照射し、塗膜の少なくとも一部を剥離する(以下「剥離処理」という)。また、前処理が施された切れ込み又はセグメントを含む領域であって、剥離処理の対象となる表面の領域を「剥離処理領域」という。
なお、本塗膜除去方法において、レーザー照射条件、塗膜の態様、表面の態様等によっては、塗膜をセグメント毎に剥離することもできる。例えば、厚さ1.0mm程度の厚い塗膜において、比較的劣化の激しい部分において塗膜をセグメント毎に剥離することができた。セグメント毎に剥離するとは、前処理で施した切れ込みに沿ったセグメント単体で剥離することばかりでなく、複数のセグメントからなるセグメント群で剥離することも含む。さらに、セグメントの形状、大きさ又はレーザー照射条件によっては、塗膜がセグメントより小さい断片となって剥離することもあるので、これら小断片で剥離することも含むものとする。本塗膜除去方法では、必要であれば、吸引装置(7〜9)を使用して、除去物(表面20から剥離した塗膜のほか、発生したガス、煙、粉塵等を含む))を吸引、収集してもよい。
また、剥離処理と同時又は後に、塗膜の剥離を促進するための処理(以下「促進処理」という)を行ってもよい。促進処理では、例えば、剥離処理と同時又は後に構造物の剥離処理領域に、超音波発生器等により振動を与えたり、ブラシ等により物理的な衝撃を与えたり、水や空気などの流体を噴射して衝撃を与えたりして、塗膜の剥離を促進させることができる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。ただし、本発明は、以下の例に限定されるものではない。
[前処理]
本発明では、はじめに、前処理として、塗膜に所定の深さ(例えば図3の符号d参照)の切れ込みを形成する。それらの切れ込みによってセグメントを形成してもよい。図1の例では、格子状の切れ込みを形成することによって矩形のセグメントを形成したが、これに限定されない。
セグメントは、塗膜の態様(塗膜の種類、厚さ、劣化層と活膜層の割合など)、表面の態様(湾曲の程度、塗膜下の母材の種類など)、及び剥離処理におけるレーザー照射条件(エネルギー密度、焦点位置、ビーム幅、走査形状など)に応じて、直線及び曲線の少なくとも一方を組み合わせた任意の形状に設定してよい。また、上記塗膜の態様などにもよるが、各セグメントが、おおよそ9〜2500mm2の範囲の面積となるように切れ込みを形成することが好ましい。
図2は、前処理において塗膜に形成された切れ込み及びセグメントの形状の例である。同図(A)は、斜め直線状の切れ込みを組み合わせて、菱形のセグメントを形成した例である。同図(B)は、表面20にある突起物90(例えば、ボルトなど)の周囲に、複数の同心円状の切れ込みと放射状の直線の切れ込みとを入れて、扇形のセグメントを形成した例である。また、場合によっては、閉じた領域を形成しない切れ込みを入れてもよい。同図(C)は、複数の直線状の切れ込みを一定方向に配置し、短冊状の形状とした例である。同図(D)は、複数の十字型の切れ込みを並べた例である。なお、同図の切れ込み又はセグメントの形状は単なる一例であって、種々変形が可能である。
図3は、前処理において塗膜に形成された切れ込みの断面形状の例である。同図(A)に示すように、前処理において、所定の深さdの切れ込み23が形成されると、この切れ込み23によって、塗膜22には複数のセグメント28が形成される。所定の深さdは、適宜設定することができるが、例えば、塗膜の厚さの2/3以上であることが望ましい。本塗膜除去方法によれば、後段の剥離処理において、剥離処理領域の塗膜の少なくとも一部を除去することができるし、完全に除去することもできる。本塗膜除去方法は、例えば、0.3mm以上の厚さを有する塗膜の除去に適用することが好ましく、特に1.0mm以上の厚さを有する塗膜の除去に適用することもできる。
ところで、同図(B)に示すとおり、塗膜は複数(少なくとも2以上)の性質の異なる層を含むことがある。例えば、表面側の上層24は、塗料の層であり、鋼材素地側の下層26は、防錆剤、下地処理剤、樹脂、高分子保護膜などによるコーティング層である。塗料の層は、塗布する際に塗料を重ね塗りすることで積層構造となっている場合もあり、また、塗布後、数年経過した後、修復作業として塗料の層の上から更に塗料を上塗りして性質の異なる塗料の層の積層構造となっている場合もある。また、例えば、構造物の母材(鋼材素地)21上に形成された塗膜22は、経年劣化の状態によっては、上層24として劣化層を、下層26として活膜層を含むことがある。劣化層は、外気や紫外線による劣化が進み、付着力を失いつつある表面側の層である。活膜層は、十分な付着力が残存する鋼材素地側の層である。劣化層と活膜層との割合は、経年劣化の程度に応じて様々であり、活膜層に相当する部分が残っていないこと、つまり塗膜22の全てが劣化層となっている場合もある。
上層24と下層26は、その性質の相違(水分量、インピーダンス、誘電率、透磁率など)に基づいて、接触又は非接触の検査手段によって、区別することができる。例えば、電極を接触させて塗膜のインピーダンスを測定する手段、電磁誘導式、渦電流式又は超音波式の測定手段、テラヘルツ電磁波パルスや近赤外超短パルスレーザーを用いた測定手段、後述する各種センサ、及びこれらを組み合わせた手段を用いて、各層を識別することができる。
また、劣化層と活膜層の区別は、当該構造物の塗料として求められる付着力を具備するか否かによって区別することができる。求められる付着力は、構造物、塗料の目的、環境等によって異なるものであり、構造物毎に使用等により決定される。付着力の程度は、例えば、テープ剥離試験、クロスカット試験などによって判定してもよい。また、一般に、塗膜は、劣化が進行すると、その塗膜中の分子構造が破壊され、水分を浸透させやすいものとなる。このため、上記のインピーダンス測定手段などを用いて水分量を測定し、測定された結果を所定の基準値と比較して、塗膜中の劣化層と活膜層とを区別してもよい。また、塗膜表面の画像情報から、さび、われ(塗膜われ)及びはがれ(塗膜剥離)の劣化現象を評価するシステムも提案されており(「鋼橋塗膜劣化度システム」(石川島播磨技報Vol.44 No.1(2004−1)34頁〜37頁参照)、かかるシステムにより塗膜の劣化度を測定し、測定された結果を所定の基準値と比較して、塗膜中の劣化層と活膜層とを区別してもよい。
所定の深さdは、適宜設定することができるが、上層(例えば劣化層)に相当する厚さ又は塗膜22の全体の厚さの2/3以上であることが望ましい。同図(B)に示した例では、所定の深さdは、劣化層の厚さに対応するように記載されているが、これに限定されない。切れ込みの深さは、劣化層の厚さより浅くてもよいし、深くてもよい。また、鋼材素地21に達する深さの切れ込みを入れてもよい。後段の剥離処理において、レーザー照射によるエネルギーが切れ込みにより効率良く伝わるように、所定の深さdを設定することが好ましい。
構造物の表面の塗膜を塗り替える際、鋼材素地上の塗膜を完全に除去した上で新塗膜を形成する方法を採用した場合、多大なコスト及び作業時間を要していた。これに対し、塗膜を完全に除去するのではなく、目視により劣化している判断した部分のみを除去した上で新塗膜を上塗りする方法を採用した場合、コスト及び労力を削減することができる。しかしながら、後者の場合、塗り替え後、数年のうちに、上塗りされた新塗膜が、目視では判断できなかった劣化した部分とともに剥がれてしまうことがあった。
本塗膜除去方法では、塗膜(活膜層及び劣化層)を完全に除去することもできるが、本塗膜除去方法の一態様では、少なくとも塗膜の上層(劣化層)を効率良く剥離することもできる。すなわち、少なくとも一部の下層(コーティング層又は活膜層)を残存させることもできるので、本塗膜除去方法の適用は、上記のような問題に対して好ましいのである。
[剥離処理]
前処理を実施した後、後述するレーザー照射装置によって、レーザーを適宜の走査形状で剥離処理領域の塗膜22に照射する。レーザー照射によるエネルギーは、塗膜表面だけではなく、レーザー照射を受けた領域における切れ込みからも伝搬すると考えられる。これにより、塗膜の少なくとも一部は効率よく剥離される。また、塗膜の態様、切り込みの形状や深さ、レーザー照射条件にもよるが、塗膜において、少なくとも一部の活膜層を残存させつつ劣化層を剥離することもできる。
レーザーの走査形状は、セグメントの形状又は大きさとの関係にもよるが、例えば、円又は円環としてもよい。また、円又は円環の軌跡が連続し、レーザーの照射エネルギーが一定の範囲で略均一に分布するような面状にしてもよい。剥離処理の後、適当な吸引手段によって、除去物を吸引、回収してもよい。
[レーザー照射装置]
以下、剥離処理(又は前処理、促進処理)に使用するレーザー照射装置について説明する。図1には、本発明の塗膜除去方法に使用するレーザー照射装置の概略構成が示されている。本レーザー照射装置は、レーザーの出力、焦点位置、ビーム幅、走査形状(パターン)、走査速度等の照射条件を、表面の種類、性質等に応じて適宜設定可能に構成される。
本レーザー照射装置は、レーザー発振器1と、ファイバ2を介してレーザー発振器1と接続されるレーザーヘッド3を含む。レーザーヘッド3は、レーザーの照射点を走査するための走査光学系4を含み、構造物の表面20に対してレーザーを照射可能に構成される。レーザーヘッド3は、作業者が作業場所において取り回すことが可能であるように小型軽量で可搬式であることが好ましい。レーザーヘッドの筺体は、作業者が把持しやすいように小型でグリップ性の優れた形状に構成することが好ましい。
また、本実施形態では、必要に応じて、除去物を吸引する吸引装置を使用してもよい。吸引装置は、吸引手段(ノズル)7、吸引ホース8、吸引源9を含む。レーザー発振器1、吸引源9は、運搬、移動可能に構成された装置であることが好ましく、各種ビークル100(台車、車両、台船、モノラック、モノレール、コンベアなどを含む)に搭載されてもよい。
レーザー発振器1は、励起源、レーザー媒質、光共振器(ミラー)などで構成される。励起源は、連続発振(CW)型及びパルス発振型の何れでもよく、アークランプ、フラッシュランプ等を使用することができる。また、使用する光源に応じて励起電流等を加えて駆動するための駆動手段を備えてもよい。レーザー媒質は、固体レーザー(ルビーレーザー、YAGレーザーなど)や半導体レーザー(レーザーダイオード)を採用することが好ましい。特に、固体レーザーとしてファイバレーザーを使用することが好ましい。なお、レーザー媒質は、特に限定されるものではなく、そのほか、気体レーザー(CO2レーザー、エキシマレーザーなど)、液体レーザー(色素レーザー)などを採用してもよい。レーザー発振器1から出力されたレーザーは、伝送用のファイバ2を介してレーザーヘッド3に伝送される。
本塗膜除去方法では、レーザー発振器1自体を構造物の表面(作業場所)付近まで運搬し、適宜移動させながら、取り回し可能なレーザーヘッド3によって表面に対してレーザーを照射し、塗膜除去作業を実施することができる。レーザー発振器1自体はファイバ2の届く範囲内に配置すればよい。
本レーザー照射装置は、被加工物の穴開け加工等ではなく、表面の塗膜を除去する処理又は表面の塗膜に切れ込みを形成する処理を目的としており、1回のレーザー照射で大きなエネルギー密度が得られなくても、複数回のレーザー照射で塗膜を除去できる又は塗膜に切れ込みを入れられるだけのエネルギー密度を得られればよい。よって、本処理では、低出力のレーザー発振器を使用することもできる。ただし、高出力のレーザー発振器を使用して、1回のレーザー照射で大きなエネルギー密度が得られるようにしてもよい。
また、対象とする構造物や塗膜の種類、装置の全体構成などに応じて、CW型レーザー及びパルス型レーザーの何れを選択してもよい。特に、CW型レーザーは、所望の照射エネルギーを得るのに、パルス型レーザーに比べて大きな電力を必要とするが、低コストであるので好ましい。そして、本発明者らによれば、単位時間、単位面積当たりのレーザー照射において、パルス型レーザーよりCW型レーザーの方が、塗膜除去後の表面が滑らかであることが確かめられた。このように、CW型レーザーを採用すると、塗膜除去後の塗装処理が容易となる可能性があるので好ましい。ただし、本実施形態はCW型レーザーに限定されるものではなく、対象とする構造物や塗膜の種類、装置の全体構成などに応じて、CW型レーザー及びパルス型レーザーのいずれを選択してもよい。
レーザーヘッド3は、レーザー発振器1によって出力され、ファイバ2を介して伝送されたレーザーを構造物の表面20に照射し、表面20上の塗膜を除去する装置である。このレーザーヘッド自体は、作業場所で取り回すことが可能である。レーザーヘッド3は、レーザー発振器1の出力を変更することによって、レーザー照射の強さ等を適宜設定可能できる。また、レーザーヘッド3は、走査光学系4によって、焦点位置、ビーム幅、走査形状などの照射条件を構造物や表面の状態、性質に応じて適宜設定可能に構成される。
剥離処理において、レーザーヘッド3から照射されるレーザー30は、出力が100〜2000W、波長が500nm以上であることが好ましく、特に好ましくは、出力500〜1000W、波長1060〜1100nmの範囲とする。また、焦点での単位時間あたりのエネルギー密度は、表面の材料、状態及び照射時間に応じて適宜設計することができるが、3.13×10-4〜1×10-3J/μm2の範囲とすることが好ましい。なお、レーザーのスポット径についても、エネルギー密度及び被加工物の寸法との関係で適宜設定すればよいが、好ましくは直径20〜200μmの範囲とする。
走査光学系4は、例えば、集光素子、反射素子、屈折素子、駆動手段などの組み合わせから構成され、ファイバ2の出射端から出射されたレーザーを集束させて表面20にレーザー30を照射するほか、表面20におけるレーザー30の照射点を直線的又は曲線的に走査することもできる。走査光学系4には適宜の構成を採用することができるが、レーザーヘッドを小型かつ簡易にするため、透過性の屈折素子を使用してレーザーを偏向させる構成とすることが好ましい。
吸引手段7は、吸引源9によって付与された負圧によって、レーザーの照射点から生じる除去物を吸引する。吸引源9は、例えば、吸引力を付与するポンプであり、吸引された除去物を処理する処理室、排気フィルタなどを備えてもよい。吸引手段7から吸い込まれた除去物は、吸引ホース8を介して吸引源9によって回収され、その余の無害な空気などは排気フィルタを介して排出されてもよい。なお、ファイバ2、吸引ホース8、電力ケーブル(図示省略)などは、作業場所において、作業者がレーザーヘッド3を容易に取り回せるようにするために、1本のケーブルに束ねられてもよい。
また、剥離処理において、除去物がレーザーヘッド3内部に侵入し、光学系に付着すると、光学系を損傷させる虞がある。このため、適宜の流体吹付手段(図示省略)を使用して、除去物を適宜の方向へ吹き飛ばしたり、吸引手段7に誘導したりすることが好ましい。また、除去物が光学系に付着することを防止するための遮蔽手段(例えば、図4の符号48)を設けてもよい。
流体吹付手段は、例えば、流体を吹付けるノズル、流体供給源及び供給ホースなどから構成される。ノズルは、適宜の位置に配置することができ、レーザーヘッド3の内部又は外部に配設されてもよいし、レーザーヘッド3とは別体として、レーザーヘッドの光軸方向とは異なる方向から流体を、剥離処理領域の全部又は一部に対して吹付けるように構成してもよい。また、レーザーヘッド3の内部に外気よりも高い圧力の気体を充填させ、除去物などがレーザーヘッド内部に侵入しないように構成してもよい。
流体供給源は、供給ホースを介して、ノズルに流体を圧送する。流体供給源は、例えば、タンク、ボンベ及び圧縮機などから構成され、レーザー発振器1及び吸引源9とともに、ビークル100に搭載されてもよい。また、複数のノズル、複数の流体供給源を備える構成とすれば、剥離処理領域の全部又は一部に対して、異なる方向から異なる種類や異なる圧力の流体を別々に供給することもできる。このため、かかる流体吹付手段は、後述する促進処理にも使用することができる。
流体は、作業環境や処理表面の態様に応じて、適宜の気体及び液体の少なくとも一方を選択することができる。この気体としては、乾燥空気、窒素、二酸化炭素、不活性ガス(例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴンなど)、蒸気を適宜選択することができる。特に、処理表面から有毒な反応ガス(例えば、塩素)を生じるおそれがある場合、これらの発生を低減するため、窒素又は不活性ガスを供給することが好ましい。液体(霧状(スチーム)を含む)としては、水(熱水を含む)、剥離を促進するための処理剤、塗膜除去後の下地保護剤などの薬液を選択することができる。
かかる流体吹付手段を使用すれば、剥離した塗膜だけでなく、処理表面から生じる粉塵、微小断片、煙などからレーザーヘッドを保護することができる。また、剥離した塗膜などを効率良く吸引手段7の方向へ誘導することができる。
また、後述する促進処理のため、本レーザー照射装置は、構造物表面の剥離処理領域に対して物理的な力を加えて剥離を促す促進手段を備えてもよい。かかる促進手段としては、具体的には、上記流体吹付手段のほか、剥離処理領域に対して超音波、熱などを照射する手段(超音波照射装置、超音波加熱器、ヒーターなど)、振動を直接的に伝達する手段(振動発生装置)、膜を削ぎ落とすためのスクレーパー、ブラシ、ローラー、粘着テープなど、あるいは、これらのいくつかを組み合わせたものを使用することができる。また、本レーザーヘッドは、その先端にアタッチメントを有するか、又はその筺体の少なくとも一部を覆うフードを有し、剥離処理領域に当接可能に構成されてもよい。そして、このアタッチメント又はフード(剥離処理領域への当接部にブラシなどを備える)を介して、剥離処理表面に直接的に物理的な力(振動、衝撃など)を与えてもよい。
また、レーザー照射装置は、制御部(図示省略)を備えてもよい。制御部は、走査光学系4の走査機構及び可変焦点機構、吸引装置などを制御する機能を有する。制御部は、ハードウェアとプログラムとを協働させて各種の処理を実現するように構成されてもよいし、専用の処理回路によって構成されてもよい。制御部は、レーザーヘッド本体に設けられてもよいし、レーザーヘッド本体とは別に設けてもよい。例えば、無線又は有線によって接続された端末を制御部として、これがレーザーヘッド3を制御する構成としてもよい。
また、レーザー照射装置は、操作部(図示省略)を備えてもよい。操作部は、作業者からの操作を受けてその操作内容を制御部へ出力する機能を有する。また、操作結果、塗膜除去の状況、レーザーのパラメータなどを表示する機能を有してもよい。操作部は、例えば、各種スイッチ、つまみ、ソフトウェアキーボード、表示装置などによって構成される。
さらに、レーザー照射装置は、目的に応じて、各種センサ(例えば、表面状態センサ、監視センサ、表面間距離測定センサなど)を備えてもよい。表面状態センサ(図示省略)は、表面20の下地の材質(鋼板、アルミなど)、塗膜の状態(浮き上がり、厚み、劣化層と活膜層の割合)、錆の状態(面積、程度)、腐蝕物質、汚れ、油脂の付着状態などを検知することができる。具体的には、放射温度センサ、可視域分光イメージセンサ、近赤外線カメラ、一般のカメラなどを採用することができる。
表面状態センサは、下地の材質、塗膜の状態、錆の状態、腐蝕物質、汚れ、油脂の付着状態などを検知し、制御部などに通知してもよい。また、表面状態センサとして、一般のカメラを採用する場合、当該カメラは、塗膜表面を撮影し、その画像情報を制御部(画像処理手段を含む)に渡してもよい。画像処理手段は、取得した画像情報における劣化部分(例えば、錆、割れ、剥れの部分)を各種画像処理(二値化処理、濃淡モフォロジ処理など)によって抽出し、画像に対する劣化部分の面積率を算出し、塗膜の劣化の進行の程度を判定してもよい。また、この判定結果に応じて、対象表面の塗膜における劣化層と活膜層とを区別してもよい。これらによって、「前処理」における切れ込みの深さ又は「剥離処理」におけるレーザー照射条件を決定することができる。
監視センサ(図示省略)は、例えば、CCDカメラ、CMOSカメラなどである。表面間距離測定センサ(図示省略)は、表面までの距離を赤外線などにより測定するセンサである。制御部は、かかるセンサによって検知された表面間距離に基づいて、焦点を塗膜除去に適した位置に設定することができる。具体的には、レーザーの焦点距離が、測定された表面間距離と同じか又はそれより長くなるように光学系の可変焦点機構を制御することができる。
上記レーザー照射装置を使用し、前処理が施された塗膜に対して、レーザーを照射すると、レーザー照射によりエネルギーを受けた領域は、高温、高圧の状態となってアブレーション(蒸散)が起こる。このレーザーアブレーションによる熱などが、照射領域において塗膜表面だけでなく、照射領域における切れ込みからも伝搬するものと考えられる。この作用によって塗膜の全部の層又は少なくとも一部の層(劣化層)が効率良く除去される。また、レーザー照射条件及び塗膜の態様によっては、塗膜の少なくとも一部が前処理によって施された切れ込みに沿ってセグメント単位で剥離することもある。
このように、本発明では、厚い塗膜の少なくとも一部(例えば劣化層)を効率良く剥離することができ、他の一部の層(例えば活膜層)を残すこともできる。このため、構造物の塗り替え、補修整備に要するコストを大幅に低減することができる。
また、本発明の運搬、移動可能なレーザー照射装置によれば、作業場所においてその表面の塗膜の少なくとも一部を剥離し、必要に応じて除去物を回収することができる。また、ファイバを介してレーザー発振器に接続された取り回し可能な携帯式のレーザーヘッドを使用するので作業者にとって塗膜除去作業が容易となる。
以下、本塗膜除去方法に使用するレーザー照射装置のレーザーヘッド内部の具体的な構成について説明する。レーザーヘッド内部の走査光学系には、光軸回りに回転可能なウェッジプリズムとそれを回転させる回転駆動手段を採用してもよい(第1の走査光学系の例)。これによれば、レーザーを先の拡がった円錐状になるように照射することができる。対象とする表面の領域が概ね平らであり、この表面に対して光軸が略垂直となる場合、表面においてレーザーの照射点の連続する軌跡は、光軸と表面との交点を中心とし、そのウェッジプリズムの偏向量を半径とする円状になる。ここで、レーザーの照射点を円状に走査することを、従来の直線走査に対して、「円状走査」という。作業者がこのレーザーヘッドを一定の時間保持したり、必要に応じて上下又は左右などに往復移動させたりすることによって、特定の範囲又は広い範囲の塗膜を効率的に短時間で除去することができる。
また、レーザーヘッドの走査光学系には、光軸回りに回転可能な第1ウェッジプリズムと第2ウェッジプリズムを採用することもでき、レーザーを先の拡がった円錐体状(一部中空としてもよい)のように照射することもできる(第2の走査光学系の例)。これによれば、表面上のレーザーの照射点の連続する軌跡は、第1ウェッジプリズムの偏向量を半径とする第1の円の円周上の動点を中心として、第2ウェッジプリズムの偏向量を半径とする第2の円が連続して転がる形状となる。光軸を表面に対して固定したまま、一定の時間、レーザーの照射点を走査し続けると、その連続する軌跡は、実質的に円環又は円の面とみなすことができる。ただし、本発明は、以下の例に限定されるものではない。
[第1の走査光学系の例]
第1の例では、走査光学系として、光軸回りに回転可能なウェッジプリズムとそれを回転させる駆動手段を使用し、レーザーを先の拡がった円錐状(側面表面)に照射する。表面においてレーザーの照射点の連続する軌跡は、光軸と表面との交点を中心とし、そのウェッジプリズムの偏向量を半径r1とする円C1となる。
剥離処理において、作業者は、レーザーヘッドを一定時間保持して、レーザーを塗膜に対して円状に走査させてもよいし、このレーザーヘッドを必要に応じて上下又は左右などに往復移動させて、レーザーを塗膜に対して略均一に照射してもよい。
図4は、走査光学系の第1の例の概略構成図である。走査光学系4Aは、ファイバ接続部41、集光手段42、第1ウェッジプリズム43、支持部材44、及び駆動手段49を含む。
ファイバ接続部41は、ファイバ2の出射端に取付けられた光学素子(レーザー射出コリメータ(例えば、石英レンズ))であり、ファイバ2を介して伝送されたレーザーを集光手段42に向けて平行光として出射する。
集光手段42は、一枚又は複数枚のレンズから構成される集光光学系であり、ファイバ接続部41から出力されたレーザーを高エネルギー密度に集光し、レーザー30として表面20に照射する。集光手段42は、レーザー30の焦点距離、焦点深度、ビームスポット径を適宜設定することができる。
第1ウェッジプリズム43は、光軸Lに対して偏向角θで、入射したレーザーを偏向させる光学素子である。第1ウェッジプリズム43(及び集光手段42)は支持部材44によって支持される。本例では、レーザーの光路を偏向させるための光学部材として、ウェッジプリズムを採用する。これによって、ガルバノミラーなどの光学部材を使用する場合に比べて、レーザーの光路が反射を繰り返さず簡単なものとなるので、レーザーヘッドの構成を小型かつ簡易なものとすることができる。
駆動手段49は、光軸Lの回りに支持部材44を所定の回転速度ωで回転させることによって第1ウェッジプリズム43を回転させる。駆動手段49は、モータ、回転アクチュエータなどの適宜の構成を採用することができるが、レーザーヘッドを小型かつ簡易な構成とするため、光軸の周囲に配置可能な中空モータを採用することが好ましい。
かかる走査光学系4Aによれば、レーザー30の照射点P(照射スポットも含む)は、表面20において光軸交点Oから距離rの位置に現れる。距離rは、第1ウェッジプリズム43の偏向角θ及び第1ウェッジプリズム43から表面20までの距離などに基づく偏向量である。
また、レーザーの照射点付近から生じる除去物を遮蔽するために第1ウェッジプリズム43を保護する遮蔽板48を採用することができる。遮蔽板48は、第1ウェッジプリズム43ないし支持部材44に固定され、それとともに回転可能に構成され、適宜の位置に、ウェッジプリズムの偏向角に応じて偏向されるレーザー30を通過させる開口を有する。これによって、表面20から剥離され飛来する除去物からウェッジプリズムを保護することができる。さらに、遮蔽板48の少なくとも一部に導電性の部材を設け、静電気を帯びた微細な除去物を積極的に取り除くように構成されてもよい。また、静電気対策手段として、除去物の帯電量に応じて、イオンを含むガスを供給することによって、静電気を除去してもよい。
本例では、塗膜を除去するに際して、複数回の円状走査で塗膜を除去するだけのエネルギー密度を与えることができればよいので、金属の穴開け、スポット溶接などを目的とした従来のレーザー加工装置とは異なり、焦点をレーザーの実際の照射点と一致させなくてもよい。そして、円状走査の際、略円状の軌跡の各点でレーザー30の光路長がほぼ同じとなるので、直線走査の場合とは異なり、焦点と実際の照射点との距離が回転走査時において変化せず、一定の照射エネルギーを照射することができる。また、レーザーのエネルギーを効果的に利用するためには、焦点の位置は、表面よりも奥に設定すること(マイナス側へのデフォーカス)が好ましい。また、焦点深度をある程度深く設定してもよい。これによって、突起物や段差、奥行きのある構造物の表面についても塗膜除去の処理が可能となる。
図5は、第1の走査光学系の例によるレーザー照射点の軌跡を示す説明図である。光軸Lと表面20とが略垂直であり、表面20が湾曲や凹凸のない概ね平面であった場合、第1ウェッジプリズム43が光軸Lの回りに回転速度ωで回転するので、レーザーの照射点Pは、表面20において光軸交点Oを中心とする半径rの円の円周上を回転速度ωで移動する動点となる。
言い換えると、照射点Pは、光軸交点Oを中心とする半径rの円C(略円状を含む)の軌跡を描く。したがって、走査光学系4Aを使用して、剥離処理領域にレーザー30を照射すると、表面20において円Cの円周に沿って塗膜にエネルギーが付与される。レーザー照射によるエネルギーは、塗膜表面だけではなく、照射領域における切れ込みからも伝搬し、塗膜を効率よく除去することができると考えられる。なお、説明を簡単にするため、同図では円Cの円周が幅を持たない線として表わされているが、実際は、レーザー30はスポット径の幅を有するものである。また、半径rは5〜200mmとなるように設定することが好ましい。
円Cの形状のような円状走査をしながら、自動又は作業者の操作によって、レーザーヘッド3を表面20に対して平行に上下又は左右の方向に一定の速さで移動させると、照射点Pの軌跡は実質的に帯状となる。この場合、照射点Pを表面20に対してほぼ均一に走査するので、レーザーを剥離処理領域の塗膜に略均一に照射することができる。この場合、塗膜は、前処理で加えられた切れ込みに沿ったセグメント単位若しくはそれより小さい断片の単位、又はセグメント群で剥離することもある。
なお、同図では、説明を簡単にするため、円Cがレーザーヘッドの移動方向に連続する形状を模式的に示している。しかし、実際には、レーザーヘッド(すなわち、光軸交点)を移動させつつ照射点を円状に走査するので、照射点Pの軌跡は、閉曲線である円Cが連続するのではなく、開曲線であるコイルのような形状となる。より厳密には、照射点Pの軌跡は、回転速度ωで回転する動径ベクトルrの終点の軌跡となる。
具体的には、例えば、時刻t=0のとき、照射点PがY軸上にあり、角速度ωで回転を開始する場合(円状走査のみ)、時刻tにおける照射点の軌跡(Px,Py)は、以下の式で表わされる。
Px=rsinωt
Py=rcosωt
さらに、例えば、作業者がレーザーヘッドを、X軸に対して角度φを有するベクトルの方向へ一定の速さVで移動させると、時刻tにおける照射点の軌跡(Px,Py)は、以下の式で表わされる。
Px=rsinωt+Vtcosφ
Py=rcosωt+Vtsinφ
特に、レーザーヘッドを水平方向(X軸方向)に動かす場合、以下のとおりとなる。
Px=rsinωt+Vt
Py=rcosωt
また、同図は、光軸Lと表面20とが略垂直であって、表面20が平坦であり、照射点Pの軌跡が略円状となる場合である。レーザーヘッドを表面の法線に対して傾けて保持した場合(すなわち、光軸Lと表面20とが略垂直でない場合)は、照射点Pの軌跡は楕円(略楕円状の形状を含む)となる。
また、表面20に凹凸が形成されていたり、湾曲を有したりする場合は、照射点Pの軌跡は歪んだ円、楕円となる。照射点Pの軌跡が楕円状となる場合、厳密には、軌跡上の各照射点でのレーザーの光路長は各々異なるものとなるので、あらかじめ設定された焦点が所望の位置から外れることがある。この場合、あらかじめ焦点深度をある程度大きく(光路長の変化量の範囲)に設定しておくことが好ましい。複数回の回転走査によれば、塗膜除去のための所望のエネルギー密度を累積で与えることができるので、光路長がある程度変化しても問題ない。
このように、本例の走査光学系によれば、レーザーの照射点を光軸交点を中心として円状に回転走査させるので、このレーザーヘッドを適宜移動させれば実質的に面状の走査となり、塗膜に対してレーザーを略均一に照射することもできる。
また、レーザーの光路を偏向させるための走査素子としてウェッジプリズムを使用するので、ガルバノミラーなどの光学素子を使用する場合に比べて、レーザーの光路が反射を繰り返さず簡単なものとなり、走査機構を小型かつ簡易なものとすることができる。これによって、作業場所において取り回し可能な小型のレーザーヘッドを低コストで実現できる。また、かかる円状走査では、光路長が変化しないので、レーザーヘッドの構成を簡単にすることができる。
また、焦点深度をある程度大きく設定してもよく、これによって、突起物や段差、奥行きのある構造物の表面、構造物の隅角部についても塗膜除去の処理が可能となる。また、複数回の円状の走査によって、レーザーアブレーションのための所要のエネルギー密度を与えることができ、塗膜に対して効率的にエネルギーを与えることができる。さらに、かかる円状走査によれば、表面からレーザーが反射されても、戻り光がレーザーヘッド内に入射してファイバ2を損傷するおそれがない。
[第2の走査光学系の例]
上記の第1の例では、走査光学系に一つのウェッジプリズムを用いた。これに対し、第2の例では、走査光学系として、光軸回りに回転可能なウェッジプリズムと、偏向手段とを使用して、レーザーを先の拡がった円錐体状(一部中空としてもよい)のように照射する。偏向手段は、ミラーなどの反射性光学素子でもよいが、ウェッジプリズムなどの透過性光学素子を採用することが好ましい。以下、偏向手段としてウェッジプリズムを用いる場合について説明する。表面上のレーザーの照射点の連続する軌跡は、一つ目のウェッジプリズム(第1ウェッジプリズム)の偏向量を半径とする第1の円の円周上の動点を中心として、二つ目のウェッジプリズム(第2ウェッジプリズム)の偏向量を半径とする第2の円が連続して転がる形状となる。光軸を表面に対して固定したまま、一定の時間、レーザーの照射点を走査し続けると、その連続する軌跡は、実質的に円環又は円の面とみなすことができ、ほぼ均一なレーザー照射が可能となる。
図6は、第2の走査光学系の例の概略構成図である。走査光学系4Bは、第1の例に対する追加構成として、第2ウェッジプリズム45、支持部材46、及び伝達手段47を有する。本例において、第1の例と同様の構成には、同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
第2ウェッジプリズム45は、第1ウェッジプリズム43によって光軸Lに対して偏向角θ1をもって偏向されたレーザーの光路M(以下、回転基準軸Mともいう。)に対して、レーザーの光路をさらに偏向角θ2をもって偏向させる。第2ウェッジプリズム45は支持部材46によって支持される。
伝達手段47は、第1ウェッジプリズム43を含む支持部材44と、第2ウェッジプリズム45を含む支持部材46とを連接し、駆動手段49からの駆動力を伝達する。駆動手段49は、例えば、適宜の回転比を設定可能な歯車機構を使用することができる。
本例では、駆動手段49によって支持部材44を光軸Lの回りに回転させることによって、第1ウェッジプリズム45を回転速度ω1で回転させ、さらに、支持部材46に連接された伝達手段47を介して支持部材46を光軸Lの回りに回転させることによって、第2ウェッジプリズム45を回転速度ω2で回転させる。
また、光軸Lに対して略垂直な表面20を考えた場合、二つのウェッジプリズムを光軸Lの回りに回転させると、表面20と回転基準軸Mとの交点Qが、光軸交点Oから表面上の距離r1の位置に現れる。そして、照射点R(照射スポットを含む)が、交点Qから表面上の距離r2の位置に現れる。
なお、距離r1は、第1ウェッジプリズム43の偏向角θ1及び第1ウェッジプリズム43から表面20までの距離などに基づく偏向量であり、距離r2は、第2ウェッジプリズム45の偏向角θ2及び第2ウェッジプリズム45から表面20までの距離などに基づく偏向量である。
同図では、駆動手段49が直接、第1ウェッジプリズム43に回転駆動力を与え、伝達手段47が間接的に、駆動手段49による回転駆動力を第2ウェッジプリズム45に与える構成を説明したが、これに限定されない。二つの駆動手段によって、異なる回転駆動力を各ウェッジプリズムに別々に与えてもよいし、駆動手段から伝達手段に直接与えられる回転駆動力を各ウェッジプリズムに与えてもよい。第1ウェッジプリズム43と第2ウェッジプリズム45とが異なる回転速度で回転できる構成であればよい。
図7(A)(B)は、第2の走査光学系の例によるレーザー照射点の軌跡を示す説明図である。同図(A)は第1ウェッジプリズムが一周する間の軌跡であり、同図(B)は第1ウェッジプリズムが複数回回転した場合の軌跡である。各図では、光軸Lと表面20とは略垂直であり、表面20が湾曲や凹凸のない概ね平面である場合を示している。
同図(A)では、回転基準軸Mは光軸Lの回りを回転速度ω1で回転する動径であるので、回転基準軸Mと表面20との交点Qは、光軸交点Oを中心とする半径r1の円C1の円周上を回転速度ω1で移動する動点となる(以下、動点Qともいう。)。そして、レーザーの照射点Rは、動点Qを中心とする半径r2の円C2の円周上を回転速度ω2で移動する動点となる。
なお、同図では、説明のため、回転基準軸Mが一周する際の、すなわち、円C1上の動点Qが一周する際の円C2の軌跡を模式的に示しており、見かけ上、円C2が円C1上の各点を中心として連続する形状となっている。しかし、実際には、動点Qが円C1上を移動しながら、それを中心として照射点Rが移動するので、照射点Rの軌跡は、閉曲線である個々の円C2が連続するのではなく、開曲線であるコイルの環のような形状となる。より厳密には、照射点Rの軌跡は、回転速度ω1で光軸交点Oを中心として回転する動径ベクトルr1の終点を中心としてさらに回転速度ω2で回転する動径ベクトルr2の終点の軌跡(すなわち、ベクトルr(r1+r2)の終点の軌跡)となる。
なお、回転速度ω2は、回転速度ω1より十分に大きく設定することが好ましく、回転速度ω1と回転速度ω2との比(回転比ω2/ω1)は少なくとも9/2より大きくすることが好ましい。
さらに、照射点Rの初期位置と回転基準軸Mが1周又は数周した時の照射点Rの位置とが一致することがないように回転比(ω2/ω1)を設定することが好ましい。そうすると、回転基準軸Mが何周か回転しても、照射点Rの軌跡であるC2が表面20上で重なることがないのでほぼ均一な走査が可能となる。
また、円C2の形状の走査をしながら、自動又は作業者の操作によって、走査光学系4B(レーザーヘッド)を表面20に対して平行に上下又は左右の方向に一定の速さで移動させると、照射点Rを表面20の特定の範囲に対してほぼ均一に走査することができ、表面20上の広い範囲の塗膜に効率的にエネルギーを与えることができる。
同図(B)では、一定の時間、光軸交点Oを移動させずに円C2の形状の走査をしたので、照射点の集合は、円C1を中心曲線とする円環C3の領域となり、円環C3の領域にはレーザーが略均一に照射される。
このように、本例によれば、第1の例による効果に加え、円環状又は円の面でレーザーの照射点を走査するので、構造物の表面に対してレーザーヘッドを固定したままでも、塗膜にレーザーを略均一に照射することができる。この場合、塗膜の少なくとも一部は、塗膜表面及び切れ込みから伝わるエネルギーによって、セグメント単位若しくはそれより小さい断片の単位、又はセグメント群で剥離することもある。また、中心曲線C1の半径及び円環C3の幅は、各ウェッジプリズムによる偏向量に対応するr1及びr2に依存する量であるので、r1及びr2、すなわち、第1ウェッジプリズムの偏向角θ1及び第2ウェッジプリズムの偏向角θ2を適宜設定することによって、各種の大きさ、形状の円環の照射領域を設定することもできる。中心部に照射領域のない円の形状を設定することもできる。
例えば、処理平面上にある円形の突起物の周囲の塗膜を剥離する場合、|r2−r1|がその円形の突起物の半径となるように偏向角θ1及び偏向角θ2を設定して照射領域を設ければ、その円形の突起物の周囲のみを略均一に走査することができる。また、r2≧r1となるように設定すれば、円環状ではなく、中心部に照射領域のない円全面の形状で走査することもできる。
以上のとおり、剥離処理に際して、第1及び第2の例による走査光学系を備えたレーザー照射装置を使用すれば、塗膜に対して、レーザーを広範囲に照射することができ、前処理によって施された切れ込みにより、塗膜の少なくとも一部の層を容易に効率的に剥離することができる。
なお、上記第1又は第2の例では、主にレーザー照射点を円状に走査する態様について説明したが、この走査光学系では、ウェッジプリズムを回転させずに固定のままとして、レーザーを円状に走査させないで照射することもできる。したがって、上記第1又は第2の例によるレーザー照射装置は、剥離処理だけでなく、前処理にも使用することができる。この場合、レーザーヘッド自体を適宜移動するか、あるいは、処理対象を載置するステージをレーザーヘッドに対して適宜移動すれば、直線又は曲線の任意の切れ込みを塗膜に形成することができる。レーザーの出力は、塗膜の態様に応じて適宜変更してよい。
さらに、本レーザー照射装置は、レーザーの照射強度、走査形状などを適宜設定可能に構成されているので、例えば、第2の例の走査光学系の設定を一部変更すると、かかるレーザー照射装置を使用して、塗膜の所定の深さまで切れ込みを形成する前処理を実施することもできる。切れ込みの深さ、形状は、レーザーの照射強度、走査回数、走査形状などを適宜設定することによって、任意に設定可能である。
前処理において、レーザーヘッド3から照射されるレーザー30は、出力が100〜2000W、波長が500nm以上であることが好ましく、特に好ましくは、出力500〜1000W、波長1060〜1100nmの範囲とする。また、焦点での単位時間あたりのエネルギー密度は、3.13×10-4〜1×10-3J/μm2の範囲とすることが好ましい。レーザーのスポット径については、好ましくは直径20〜200μmの範囲とする。このように、本塗膜除去方法の前処理において、剥離処理に使用するレーザー照射装置を使用すれば、前処理と剥離処理を同一の装置で実施することができるので、作業に要するコスト及び時間を低減することができる。
[第3の走査光学系の例]
図8(B)は、第3の走査光学系の例の概略構成図であり、図8(A)は、第3の例によるレーザー照射点の軌跡を示す説明図である。上記第2の例では、第2ウェッジプリズム45の回転速度ω2を、第1ウェッジプリズム43の回転速度ω1より十分に大きく設定したが(ω2>>ω1)、本例では、走査光学系4Dにおいて、回転速度ω1と回転速度ω2とを差が大きくならないように設定する(ω2≒ω1)。例えば、回転比ω2/ω1を9/10〜11/10の範囲とすることができる。
そして、r1に対してr2が十分に小さくなるように、第2ウェッジプリズム45の偏向角θ2を第1ウェッジプリズム43の偏向角θ1に比べて十分小さく設定する(θ2<<θ1)。これによって、同図(A)に示すように、レーザーの照射点の集合は、2×r2によって規定される十分に小さい幅(例えば、1〜3mm程度)の円環となる。このため、本例によれば、複数回のレーザー照射によるエネルギーが円環の領域に集中するため、塗膜に対して所定の深さの略円状の切れ込みを形成することができる。すなわち、円形のセグメントを形成することが可能である。なお、本例による走査光学系を備えたレーザー照射装置は、レーザー照射条件を適宜設定すれば、剥離処理にも適用することができる。
[第4の走査光学系の例]
図9(B)は、第4の走査光学系の例の概略構成図であり、図9(A)は、第4の例によるレーザー照射点の軌跡を示す説明図である。上記第2又は第3の例では、回転速度ω1と回転速度ω2とに差を設けたが、本例では、走査光学系4Dにおいて各回転速度を同一に設定する。この場合、第1ウェッジプリズム43及び第2ウェッジプリズム45が一緒に回転するので、レーザー照射点の軌跡は円環ではなく、幅を持たない単なる円となる。また、走査光学系4Dにおいて、第1ウェッジプリズムと第2ウェッジプリズムとの回転面における相対的な位相の差(第1ウェッジプリズムの外縁上のある基準点と第2ウェッジプリズムの外縁上のある基準点との変位)を適宜設定してもよい。この場合、同図(A)に示すように、最小で半径r1−r2の円C4から、最大で半径r1+r2の円C5までの円の軌跡を形成することができる
また、各ウェッジプリズムの間の距離を変更すれば、r1又はr2の大きさを変更することもできるので、円の径を任意に設定することができる。このため、本例によれば、例えば、表面20上にある突起物90の周囲の塗膜に対して、各種の大きさを有する円状の切れ込みを形成することができる。なお、本例による走査光学系を備えたレーザー照射装置は、レーザー照射条件を適宜設定すれば、剥離処理にも適用することができる。
[走査光学系の第5の例]
図10(B)は、第5の走査光学系の例の概略構成図であり、図10(A)は、第5の例によるレーザー照射点の軌跡を示す説明図である。本例では、走査光学系4Eにおいて、第1ウェッジプリズム43及び第2ウェッジプリズム45は、同じ形状、材質、特性を有し、互いの中心軸の延長線が一致するように、かつ、傾斜していない方の平坦の円形面同士を対向させるように位置合わせされている。すなわち、各ウェッジプリズムの偏向角は同じ大きさであるが、光軸に対して正負が異なる。
第1ウェッジプリズム43と第2ウェッジプリズム45とを、同一の回転速度で反対方向に回転さると、各プリズムが一周する間、照射点は、第1ウェッジプリズム43及び第2ウェッジプリズム45の回転に従って、同図(A)に示すように、閉じた環状の軌跡を示す。閉じた環の長手方向の長さはウェッジプリズムの偏向角に依存する2×rに対応する。走査光学系の出射面から平面までの距離がある程度長い場合、かかる環状の軌跡は、ほぼ直線とみなせる。すなわち、本例での最適な設定によれば、塗膜に対して、所定の深さの直線状の切れ込みを形成することができ、直線を組み合わせた形状のセグメントを形成することができる。なお、本例の場合、第2ウェッジプリズムの平坦面が第1ウェッジプリズム側に向くように第2ウェッジプリズムを組み直す必要がある。このため、前処理と剥離処理の際に、第2ウェッジプリズムの向きを容易に入れ替え可能であるか、あるいは交換可能なように構成することが好ましい。また、走査光学系の構成が異なる別々レーザーヘッドをあらかじめ準備しておき、作業に応じて使用するレーザーヘッド自体を選択するように構成してもよい。
以上のとおり、前処理に際して、第3及び第4の例による走査光学系を備えたレーザー照射装置を使用すれば、所望の径の円状のセグメントを生成することができる。特に、構造物の表面に突起物がある場合は、その突起物の大きさに応じて所望の径の円状又は円環状のセグメントを形成することができ、効率良く塗膜を剥離することができる。また、前処理に際して、第5の例による走査光学系を備えたレーザー照射装置を使用すれば、レーザーヘッドを固定したまま、直線状の切れ込みを形成することも可能である。これにより、直線と曲線の切れ込みとを組み合わせることができ、種々の形状のセグメントを形成することもできる。
[促進処理]
本塗膜除去方法では、レーザー照射条件(照射エネルギー、走査形状など)及び塗膜の態様(厚さ、活膜層と劣化層との割合など)を考慮して、剥離処理と同時又はその後に、塗膜の剥離を促進するための促進処理を実施することもできる。
促進処理では、前述した各種の手段等によって、剥離処理領域の塗膜に振動や衝撃等を与える。例えば、流体吹付手段を使用する場合、剥離処理領域の塗膜に一方向又は多方向から気体の圧力を加えて、剥離を促してもよい。また、例えば、細く絞ったショット状の気体又は液体の塊を剥離処理領域に打ち付けることによって、塗膜に適度な振動又は衝撃を付加し、塗膜の剥離を促進させてもよい。超音波、熱などを照射する場合や振動発生装置を使用する場合、剥離処理領域において複数の点に重点的に超音波、熱もしくは振動を与えたり、又は均等に超音波、熱もしくは振動を付加したりして、塗膜の剥離を促してもよい。さらに、レーザー照射と同時に、先端のアタッチメント又はフード(剥離処理領域への当接部にブラシなどを備える)を介して、剥離処理表面に直接的に物理的な力(振動、衝撃など)を与えてもよい。さらに、これらの促進処理の幾つかを併用してもよい。なお、促進処理は、レーザー照射装置に備わる各種の手段を用いるだけでなく、レーザーヘッドを保持する作業者が塗膜の剥離の状態を観察しながら、各種工具(ハンマー、スクレーパーなど)を適宜使用して手作業で実施してもよい。このように、レーザー照射による剥離処理に、促進処理を併用することによって、塗膜の剥離を効率的に実施することができるのである。
以上説明したように、本塗膜除去方法によれば、前処理によって塗膜に種々の形状の切れ込み又はセグメントを形成した後、レーザー照射による剥離処理を実施するので、広範囲の塗膜を効率良く除去することができる。また、塗膜のうちの一部の層を剥離することもできる。また、本発明のレーザー照射装置の一態様では、簡易な設定変更又はレーザーヘッドを保持する作業者の操作によって、塗膜に対して種々の形状の切れ込み又はセグメントを形成する前処理と、塗膜を剥離する剥離処理とを、一の装置で連続して実施することができる。また、促進処理を併用すれば、より効率的に塗膜を剥離することができる。このため、塗膜除去に要する装置設備のコストを低減することができる。
[実施例]
以下、本発明の塗膜除去方法の実施例について説明する。表面に塗膜が形成された構造物の一部のサンプルを準備した。かかるサンプルは、厚さが約10〜20mmの鋼材を母材とし、その表面に厚さ1.0〜1.2mm程度の塗膜が形成されたものである。塗膜は経年劣化しており、塗膜下の母材表層には一部錆の発生が認められる。
まず、このサンプルに対して前処理を実施した。具体的には、本発明のレーザー照射装置を使用して、直線状の複数の切れ込みを幅約3〜10mmの間隔で縦方向及び横方向に入れ、格子状のセグメント(面積約9〜100mm2)を形成した。レーザーの出力は、約200Wであり、レーザーの直線走査の速度は、約20mm/sである。切れ込みの深さは、1.0〜1.2mm程度であり、母材まで達する。なお、本例では、経年劣化の進んだ比較的厚い塗膜を除去するため、前処理時のセグメントの面積を比較的小さく設定したが、これに限定されない。塗膜の状態などに応じてセグメントの形状及び面積は適宜設定することができ、セグメントの態様に応じて、レーザー照射の態様も適宜設定することができる。
そして、このセグメントが形成されたサンプルに対して剥離処理を実施した。具体的には、本発明のレーザー照射装置を使用し、剥離処理領域に、約500Wの出力のレーザーを直径約14mmの円状の態様(回転駆動手段3000RPM)で照射しながら、レーザーを約20mm/sの速度で移動させた(図5参照)。本例では、30mm×35mmの剥離処理領域(1050mm2)の塗膜を約22秒で剥離させることができた。また、前処理を実施しない通常の塗膜除去に比べて、処理後の母材における円状のレーザーの照射痕が少なく、滑らかな仕上がりとなった。
1 レーザー発振器
2 ファイバ
3 レーザーヘッド
4 走査光学系
20 表面
23 切れ込み
28 セグメント
30 レーザー

Claims (16)

  1. 構造物の表面の塗膜を除去する塗膜除去方法であって、
    前記塗膜に切れ込みを形成する前処理と、
    前記切れ込みを含む領域の塗膜にレーザーを照射し、前記塗膜の少なくとも一部を剥離する剥離処理とを備え、
    前記前処理において、直線及び曲線の少なくとも一方を含む前記切れ込みによってセグメントを形成することを特徴とする塗膜除去方法。
  2. 構造物の表面の塗膜を除去する塗膜除去方法であって、
    前記塗膜に切れ込みを形成する前処理と、
    前記切れ込みを含む領域の塗膜にレーザーを照射し、前記塗膜の少なくとも一部を剥離する剥離処理とを備え、
    レーザー発振器と、前記レーザー発振器から出力されるレーザーを伝送するファイバと、前記ファイバを介して伝送されるレーザーを照射するレーザーヘッドとを含むレーザー照射装置であって、前記レーザーヘッドが、前記レーザーを光軸に対して偏向させるウェッジプリズムと、前記ウェッジプリズムを回転させる駆動手段と、を備えるレーザー照射装置を使用して前記前処理及び剥離処理の少なくとも一方を行うことを特徴とする塗膜除去方法。
  3. 構造物の表面の塗膜を除去する塗膜除去方法であって、
    前記塗膜に切れ込みを形成する前処理と、
    前記切れ込みを含む領域の塗膜にレーザーを照射し、前記塗膜の少なくとも一部を剥離する剥離処理とを備え、
    レーザー発振器と、前記レーザー発振器から出力されるレーザーを伝送するファイバと、前記ファイバを介して伝送されるレーザーを照射するレーザーヘッドとを含むレーザー照射装置であって、前記レーザーヘッドが、前記レーザーを光軸に対して偏向させる第1ウェッジプリズムと、前記第1ウェッジプリズムによって偏向されたレーザーをその光路に対してさらに偏向させる第2ウェッジプリズムと、前記第1ウェッジプリズム及び前記第2ウェッジプリズムを回転させる駆動手段と、を備えるレーザー照射装置を使用して前記前処理及び剥離処理の少なくとも一方を行うことを特徴とする塗膜除去方法。
  4. 前記セグメントの面積が9〜2500mm2の範囲であることを特徴とする請求項に記載の塗膜除去方法。
  5. 前記塗膜の少なくとも一部の層を残存させることを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載の塗膜除去方法。
  6. 前記塗膜の膜厚が0.3mm以上であることを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載の塗膜除去方法。
  7. 前記剥離処理と同時又は後に、前記切れ込みを含む領域の塗膜の剥離を促進するための促進処理を有することを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の塗膜除去方法。
  8. 前記促進処理は、前記塗膜に流体を吹付けることを特徴とする請求項に記載の塗膜除去方法。
  9. 前記促進処理は、前記塗膜に物理的な力を与えることを特徴とする請求項又はに記載の塗膜除去方法。
  10. 前記各ウェッジプリズムの回転方向及び回転速度、並びに前記各ウェッジプリズムの間の距離及び回転方向における位相差を制御することによって、前記レーザーの照射点を直線状及び曲線状に走査させて前記前処理を行うことを特徴とする請求項に記載の塗膜除去方法。
  11. 前記第1及び第2ウェッジプリズムを、略同一の回転速度で同一の方向に回転させつつ、前記各ウェッジプリズムの間の距離又は回転方向における位相差を変更して、前記前処理において、大きさの異なる円又は円環状の切れ込みを形成することを特徴とする請求項に記載の塗膜除去方法。
  12. 前記第1及び第2ウェッジプリズムを、略同一の回転速度で反対の方向に回転させて、前記前処理において、略直線状の切れ込みを形成することを特徴とする請求項に記載の塗膜除去方法。
  13. 前記前処理において刃物を使用することを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載の塗膜除去方法。
  14. レーザー発振器と、前記レーザー発振器から出力されるレーザーを伝送するファイバと、前記ファイバを介して伝送されるレーザーを集束させて構造物の表面の塗膜に照射するための可搬性のあるレーザーヘッドとを含むレーザー照射装置であって、
    前記レーザーヘッドは、
    その走査光学系が、前記レーザーを前記光軸に対して偏向させるウェッジプリズムと、前記ウェッジプリズムを所定の回転速度及び回転方向で光軸回りに回転させる駆動手段と、を有し、
    前記レーザーを走査して前記塗膜に切れ込みを形成した後、前記切れ込みを含む領域の塗膜に前記レーザーを円状に照射してその塗膜の少なくとも一部を剥離することを特徴とするレーザー照射装置。
  15. 前記切れ込みを含む領域の塗膜に流体を吹付ける流体吹付手段を有することを特徴とする請求項14に記載のレーザー照射装置。
  16. 前記レーザーヘッドの先端にアタッチメント又はフードを備え、前記アタッチメント又はフードに前記塗膜の剥離を促進するための促進手段を有することを特徴とする請求項14又は15に記載のレーザー照射装置。
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