JP2019032032A - 軸受リングの異物除去方法、及び軸受リングの異物除去装置、並びに軸受の製造方法及び機械装置の製造方法 - Google Patents

軸受リングの異物除去方法、及び軸受リングの異物除去装置、並びに軸受の製造方法及び機械装置の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】異物の発生源や大掛かりな設備を使用せず、安価に且つ安定して運用でき、しかも、微小部位に対する異物除去も確実に行える軸受リングの異物除去方法及び軸受リングの異物除去装置、並びに軸受の製造方法及び機械装置の製造方法を提供する。
【解決手段】鋼材からなる軸受リング23を軸芯回りに回転させる工程と、エネルギ密度が0.2〜2J/cmのパルスレーザ光29を集光させたスポット光を、回転する軸受リング23の表面に照射し、軸受リング23とスポット光とを軸芯Lに沿って相対移動させて、スポット光を軸受リング23の表面で走査する工程とによって、軸受リング23の表面の異物をスポット光の照射によって除去する。
【選択図】図1

Description

本発明は、軸受リングの異物除去方法、及び軸受リングの異物除去装置、並びに軸受の製造方法及び機械装置の製造方法に関する。
軸受には、軸受内部からのグリース飛散や軸受外部からの水や異物等の侵入の予防対策として、図3に示すように、軸受リングである外輪1と内輪2との間の隙間に、軸方向の両端側から一対のシール部材3を挟んで取り付けたものが知られている。このようなシール付き軸受4は、例えば外輪1が回転側となる場合、固定側となる内輪2の外周面にシール溝部5が形成され、このシール溝部5に円環形状のシール部材3の内周縁部(シールリップ部3a)が挿入される。これにより、シール付き軸受4は、軸受内部からのグリース漏れや、軸受外部からの水や異物等の浸入が防止される。
ところで、シール溝部5は、熱処理済みの粗面として製品完成の段階で残っている場合がある。シール溝部5は、シール部材3のシールリップ部3aと摺動するため、シール溝部5に残っている塵埃や、溝表面の酸化膜層が溝表面からこそぎ落とされた異物が、シール付き軸受4の転動面6に混入する可能性がある。混入した異物は、転動面6とボール7との間に挟まれてキズの発生原因となったり、音響不良の発生原因となったりする。
そこで、軸受における異物の除去について種々の方法が提案されている。例えば特許文献1の軸受装置における外輪内面の滑面仕上処理方法は、熱処理前の切削加工で総型バイトを用いる。これにより、従来のバイト送り方向のカエリやバリを減らし、表面層の脱落や異物混入を生じにくくしている。更に、微小なバリや異物を除去するためにバレル処理を施している。
また、特許文献2のボールベアリングの洗浄方法は、内輪の軸心と平行に高圧液体ジェット噴射管を移動させながら、内輪を回転させる。もしくは高圧液体ジェット噴射管を内輪の回りで回転させ、高圧液体ジェット噴射管の噴射口から噴射される高圧液体ジェットを内輪の外周面に当てて、内輪のボール転動面を含む外周面を洗浄する。
また、特許文献3のリング状部品の洗浄方法は、洗浄液の満たされた洗浄槽に超音波振動板を設け、この超音波振動板によって発振される超音波を洗浄槽内に配置したリング状部品に当て、リング状部品に付着した異物を除去する。
特開2004−100754号公報 特開2003−326223号公報 特開2002−59096号公報
しかしながら、特許文献1の軸受装置における外輪内面の滑面仕上処理方法は、バイトの摩耗や、バッチ処理であるバレル加工の特性により、安定した結果が得られにくいという問題がある。また、バイトやバレルのメディア自体が異物の発生源となってしまう虞がある。
特許文献2のボールベアリングの洗浄方法は、流体を高圧で噴射するためや、洗浄設備外に流体を漏らさないようにするために、設備が大掛かりになる虞がある。また、洗浄する流体の清浄度を維持しなければならないという問題もある。更に、同文献によれば純水を使用するとの記載からランニングコストのかかる虞がある。
特許文献3のリング状部品の洗浄方法では、超音波が、波長とリングの形状によってはターゲットとしている部位に十分届かないという問題がある。また、高圧流体を用いた方法と同様に、洗浄液の清浄度を維持しなければならない点も問題である。
その他、砥石やブラシで表面層を削り取る方法も考えられるが、工具が異物源となりかねない上に、シール溝部のような微小部位では、部位の形状に合わせた工具の作製や、工具の状態の維持に困難を伴う。
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、異物の発生源や大掛かりな設備を使用せず、安価に且つ安定して運用でき、しかも、微小部位に対しても確実に異物除去が可能な軸受リングの異物除去方法、及び軸受リングの異物除去装置、並びに軸受の製造方法及び機械装置の製造方法を提供することにある。
本発明は下記構成からなる。
(1) 鋼材からなる軸受リングを軸芯回りに回転させる工程と、
エネルギ密度が0.2〜2J/cmのパルスレーザ光を集光させたスポット光を、回転する前記軸受リングの表面に照射し、前記軸受リングと前記スポット光とを前記軸芯に沿って相対移動させて、前記スポット光を前記軸受リングの表面で走査し、前記軸受リングの表面の異物を除去する工程と、
を有する軸受リングの異物除去方法。
この軸受リングの異物除去方法によれば、軸受リングが回転され、レーザ発振器からのパルスレーザ光が集光されたスポット光が、軸受リングに照射されて、軸受リングの表面で走査される。パルスレーザ光のスポット光が照射されたワークの表面は、表層の酸化膜や塵埃等の異物が除去される。このように、異物の発生源とならないレーザ光を用いることで、大掛かりな設備を使用せず、安価に且つ安定した処理が可能となり、微小部位であっても容易に異物を除去できる。
(2) 前記軸受リングの表面の凹凸に応じて、前記パルスレーザ光の集光位置を光軸方向に変更する(1)に記載の軸受リングの異物除去方法。
この軸受リングの異物除去方法によれば、集光による焦点位置のずれを適正に補正でき、パルスレーザ光のエネルギ密度の変動を抑えられる。
(3) 前記スポット光の照射により前記軸受リングから発生したヒュームを吸引して、前記スポット光の照射面から前記ヒュームを除去する(1)又は(2)に記載の軸受リングの異物除去方法。
この軸受リングの異物除去方法によれば、発生したヒュームが再び軸受リングの表面に付着することが防止される。
(4) 鋼材からなる軸受リングを着脱自在に把持するチャックと、
前記チャックに把持された前記軸受リングを回転駆動する回転主軸と、
エネルギ密度が0.2〜2J/cmのパルスレーザ光を発生するレーザ発振器と、
前記パルスレーザ光を集光させる集光レンズが搭載され、前記レーザ発振器からの前記パルスレーザ光を前記集光レンズにより集光したスポット光を、前記軸受リングの表面に照射するレーザ集光ヘッドと、
前記レーザ集光ヘッドと前記軸受リングとを、前記軸受リングの軸芯方向に相対移動させ、前記スポット光を前記軸受リングの表面で走査する送り機構と、
を備え、
前記軸受リングの表面の異物を前記スポット光の照射によって除去する軸受リングの異物除去装置。
この軸受リングの異物除去装置によれば、回転主軸が駆動されると、チャックに把持された軸受リングが回転駆動される。レーザ発振器からが出射されたパルスレーザ光は、レーザ集光ヘッドに伝送され、レーザ集光ヘッドの集光レンズにより、回転する軸受リングの表面にスポット光として照射される。このスポット光は、送り機構によってレーザ集光ヘッドと軸受リングとが相対移動されることで、軸受リングの表面で走査される。これにより、スポット光が照射された軸受リングの表面は、表層の酸化膜や塵埃等の異物が除去される。このように、異物の発生源とならないレーザ光を用いることで、大掛かりな設備を使用せず、安価に且つ安定した処理が可能となり、微小部位であっても容易に異物を除去できる。
(5) 前記送り機構は、前記レーザ集光ヘッドと前記軸受リングとを前記軸芯方向に直交する方向へ相対移動させる機構を有する(4)に記載の軸受リングの異物除去装置。
この軸受リングの異物除去装置によれば、軸受リングの表面の凹凸に応じて、パルスレーザ光の集光位置を光軸方向に変更することで、集光による焦点位置のずれを適正に補正でき、パルスレーザ光によるスポット光のエネルギ密度の変動を抑えられる。
(6) 前記スポット光の照射により前記軸受リングから発生したヒュームを吸引する集塵部を備える(4)又は(5)に記載の軸受リングの異物除去装置。
この軸受リングの異物除去装置によれば、発生したヒュームが再び軸受リングの表面に付着することが防止される。
(7) (1)〜(3)のいずれか一つに記載の軸受リングの異物除去方法により、異物除去を行う工程を有する軸受の製造方法。
この軸受の製造方法によれば、大掛かりな設備を使用せず、微小部位であっても安価に且つ安定して異物を除去できる。その結果、高品位な軸受を製造できる。
(8) (7)に記載の軸受の製造方法で製造した軸受を組み込む機械装置の製造方法。
この機械装置の製造方法によれば、高品質な機械装置が得られる。
なお、本明細書における「A〜B」の表記は、A及びBの値を含む範囲を意味する。
本発明によれば、異物の発生源や大掛かりな設備を使用せず、安価に且つ安定して運用でき、しかも、微小部位に対しても異物除去が確実に行える。
軸受リングの異物除去装置を模式的に表した構成図である。 エネルギ密度と除去量との相関を示すグラフである。 シール溝部が形成されたシール付き軸受の一部断面図である。
以下、本発明の構成例について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は軸受リングの異物除去装置を模式的に表した構成図である。
本構成の軸受リングの異物除去装置100は、回転主軸11と、チャック13と、レーザ発振器15と、レーザ集光ヘッド17と、送り機構19と、集塵部であるダストクリーナ21と、を備える。
まず、軸受リングの異物除去装置100による異物除去対象となる軸受リングについて説明する。ここで示す軸受リングは、図3に示すような外輪回転形のシール付き軸受4を構成する一対の軌道輪であって、図1には一方の軌道輪である内輪2をワークWとして示している。図3に示すように、シール付き軸受4は、シール部材3が、内輪2と他方の軌道輪である外輪1との軸方向端部に、内輪2及び外輪1を軸方向の両側から挟むように取り付けられる。
一対のシール部材3は、内輪2と外輪1との間の軸受空間を密封する。シール部材3は、円環形状の芯金8と、芯金8を被覆する円環形状の弾性部9とを有する。弾性部9の材質には、NBR、シリコンラバー等が用いられる。弾性部9からは、シールリップ部3aが延出され、シールリップ部3aの延出先端には、内輪2に形成されたシール溝部5に摺接する側面側リップが形成される。
シール部材3は、その円環形状の外周縁部3bが、回転側である外輪1に形成された内周溝10に固定される。
内輪2の外周面には、シール部材3のシールリップ部3aが挿入されるシール溝部5が形成される。シール部材3は、弾性部9の弾性力によってシールリップ部3aの側面側がシール溝部5の内壁に押し付けられる接触型であってもよく、内輪2のシール溝部5に非接触状態となる非接触型であってもよい。
以下、軸受リングとして上記の内輪2を例に説明するが、これに限らず、上記の外輪1や、他の軸受構成部品であってもよい。また、以下の説明では、内輪2を「リング状のワークW」、シール溝部5を「ワーク溝部25」と称する。
異物除去装置100は、回転主軸11が、ベースに立設されるコラム等の支持部材に回転自在に支持されて、図示しない駆動モータにより高速回転される。この回転主軸11は、例えば工作機械の主軸スピンドル装置と同様に、チャック13によりリング状のワークを支持する。
チャック13は、回転主軸11に固定され、リング状のワークWを同軸で着脱自在に把持する。このチャック13は、例えば、それぞれ半径方向に移動可能な3つの把持爪27を、円周方向に等間隔で備える。チャック13の把持爪がワークWの内径側で拡径されることにより、ワークWが回転主軸11と同軸で把持される。チャック13は、上記した手動のものの他、エアチャック、マグネットチャック等、他の方式の把持機構であってもよい。
レーザ発振器15は、パルス幅がフェムト秒オーダー〜100ナノ秒の短パルスレーザ光が出力可能なものを用いる。ここでは、一例としてナノ秒レーザ発振器を用いている。レーザ発振器15としては、上記の短パルスレーザ光が出力可能で、ヒートモード露光が可能な、高密度エネルギ光を出射できればよい。
一般的なナノ秒レーザ発振器であれば、パルス幅が数十ナノ秒で、エネルギ密度が後述する理由から照射面上で0.2〜2J/cmのパルスが発生可能である。この他、レーザ発振器15として、ピコ秒やフェムト秒オーダーの極短パルスレーザ光を出力可能なレーザ発振器であってもよい。なお、本明細書においては、「短パルスレーザ光」とは、ピコ秒やフェムト秒オーダーの「極短パルスレーザ光」を含むものとする。
レーザ集光ヘッド17は、レーザ発振器15に光ファイバ31を介して接続される。レーザ発振器15から出力された短パルスレーザ光は、光ファイバ31を通じてレーザ集光ヘッド17に伝送される。レーザ集光ヘッド17は、集光レンズ33を備え、光ファイバ31により伝送された短パルスレーザ光を、集光レンズ33により集光して、被照射面であるリング状のワークWの表面にスポット光として照射する。本構成においては、短パルスレーザ光29を、例えば直径50〜100μm程度のスポット光としてワーク溝部25に照射する。スポット径が上記範囲であることで、ワーク表面上の細かい部位(ワーク溝部25等)に選択的に照射することが可能となる。
また、ワーク溝部25の溝幅は、溝深さの増加に伴い減少するように、一対の対面する溝壁面が傾斜して形成されている。つまり、ワーク溝部25の溝延設方向に直交する断面が、ワークWの外径面に向かって広がる矩形状であるため、スポット光をワーク溝部25の直上から一方向に照射しただけでも、ワーク溝部25の溝内全体をクリーニングできる。なお、短パルスレーザ光29の焦点深度は、レンズにもよるが0.5〜1.0mm程度である。そのため、ワーク溝部25の溝深さが短パルス光29の焦点深度を超える場合には、レーザ集光ヘッド17を送り機構19によってワークWに接近又は離反する方向(X方向)へ移動させて、全ての溝深さ位置で良好なクリーニングを行う。
送り機構19は、レーザ集光ヘッド17と回転主軸11とを、回転主軸11の回転軸線L(リング状のワークWの軸芯)に沿う方向(Z方向)、及び回転主軸11の回転軸線Lに直交する方向(X方向)に相対移動可能な移動テーブル35を有する。図示例においては、回転自在に設置された回転主軸11に対して、レーザ集光ヘッド17を移動させる構成となっている。つまり、移動テーブル35は、上記のレーザ集光ヘッド17を、Z方向及びX方向へ高精度に移動可能な2軸ステージを有して構成される。
なお、レーザ集光ヘッド17は、Z方向及びX方向に直交するY方向(図1の紙面垂直方向の軸方向)を中心に揺動自在に支持されてもよい。この場合、レーザ集光ヘッド17は、Y方向の揺動軸を中心に揺動されることにより、X方向に対して傾斜した方向から短パルスレーザ光29によるスポット光をワークWに照射できる。これにより、レーザ集光ヘッド17は、例えばワークWの軸芯方向両側の端面や、ワークWの内周面にもスポット光を照射できるようになる。また、ガルバノミラー、ポリゴンミラー、集光ミラー等の光学的な手段によって短パルスレーザ光29の光路を変更することもできる。
ダストクリーナ21は、短パルスレーザ光29によるスポット光の照射によりワーク表面から発生するヒュームを集塵する。ダストクリーナ21は、例えば吸引口の向きを変更する駆動装置に搭載されていてもよい。駆動装置は、例えばレーザ集光ヘッド17の送り機構19と同期してダストクリーナ21を移動させることにより、吸引口を常にスポット光の照射位置から所定距離だけ離れた最適な位置に配置する。これにより、ダストクリーナ21は、ヒュームを常に高効率で吸引でき、集塵効果を高められる。
異物除去装置100は、上記した各部を統括して制御する制御部37を備える。制御部37は、回転主軸11の駆動部、レーザ発振器15、送り機構19に電気的に接続される。制御部37は、回転主軸11の回転速度に同期させてレーザ発振器15の出力を増減制御する。また、制御部37は、送り機構19の駆動のオンオフや、移動方向、移動速度等を制御する。例えば、レーザ集光ヘッド17は、送り機構19によるZ方向の移動により、ワークWのワーク溝部25に短パルスレーザ光29によるスポット光を螺旋状に連続して照射できる。
また、制御部37は、異物除去対象となるワークWのX方向の位置変化(表面の凹凸等)が、短パルスレーザ光29の集光の許容深度を超える場合には、送り機構19によりレーザ集光ヘッド17を光軸方向となるX方向に移動制御して、集光位置を変更する。このX方向への移動制御は、予め入力されたワークWの形状データに基づいて制御部37がレーザ集光ヘッド17の移動量を決定する他、図示はしないが、ワーク表面のX方向位置を検出するセンサを設け、センサからの出力に応じて移動量を決定する方式であってもよい。
次に、本構成の異物除去装置100を用いたワークの異物除去方法の手順を説明する。
まず、回転主軸11のチャック13にリング状のワークWを同軸に装着して、ワークWを軸芯回りに回転駆動する。ワークWの外周面には、一対のワーク溝部25が凹設されている。本構成では、このワーク溝部25に残存する酸化膜や油膜、或いはバリや塵埃等の異物を除去する。
次に、レーザ発振器15により、短パルスレーザ光を出力する。レーザ発振器15からの短パルスレーザ光29は、光ファイバ31を介してレーザ集光ヘッド17に伝送され、レーザ集光ヘッド17の集光レンズ33によって、スポット状に集光される。本構成では、短パルスレーザ光29を集光したスポット光が0.2〜2J/cmのエネルギ密度となるように、制御部37によりレーザ発振器15の出力と、移動テーブル35のX方向位置とが制御される。
そして、制御部37は、回転主軸11を回転駆動しつつ、回転主軸11とレーザ集光ヘッド17とを、回転軸線Lと平行なZ方向に沿って相対移動させ、短パルスレーザ光29によるスポット光をワークWの表面で走査させる。このとき、制御部37は、ワークWの回転速度、レーザ集光ヘッド17の送り速度、短パルスレーザ光29のパルス周波数を、パルス同士の重なり(オーバラップ)が50%以上になるように決定する。パルス同士の重なりを大きくすることで、単位面積当たりのエネルギ投入量を増加できる。
短パルスレーザ光29によるスポット光をワークWに照射すると、ワークWの表面から異物が加熱されてヒュームが生じる。制御部37は、ダストクリーナ21を駆動して、この発生したヒュームを吸引することで集塵する。
以上説明した本構成の異物除去装置100によれば、回転駆動されるリング状のワークWの表面に、短パルスレーザ光29によるスポット光が連続照射される。短パルスレーザ光29が照射されたワーク表面は、表層の酸化膜や油膜、バリや塵埃等の異物が、短パルスレーザ光29によるアブレーション(蒸発又は昇華)によって、ワーク表面から除去される。これにより発生したヒュームは、ダストクリーナ21により集塵され、浮遊したヒュームがワーク表面に付着することがない。
また、ワーク表面に照射するスポット光のエネルギ密度Qは、0.2〜2J/cmに設定されることで、ワーク表面を溶融させることなく、異物のみを選択的に除去できる。また、異物を除去するための手段がレーザ光であるので、特にワーク溝部25のような微小部位に対しても、選択的に光照射が可能となり、超音波等の届きにくい部位であっても、容易に且つ確実に異物除去が行える。
そして、ワークWを回転させながらスポット光を走査させるため、異物除去対象となる面が広くても、スポット光を均等に照射でき、確実な異物除去が行える。また、異物除去対象の部位に応じて、スポット光の走査パターンを任意に変更することで、任意の領域の異物除去が簡単に行える。例えば、ワーク表面に短パルスレーザ光を照射したくない部位が混在した場合でも、走査パターンを変更することで、容易にスポット照射領域を変更できる。
このように、本構成の異物除去装置100によれば、レーザ発振器が劣化しない限り、常に安定した異物除去が可能となる。また、レーザ光自体は異物の発生源にならないため、レーザ光により異物除去を施す領域以外では、レーザ光に起因する二次的な異物発生がない。更に、ファイバレーザ等のコンパクトなレーザ発振器を使用すれば、洗浄水を利用した異物除去方式に比べて設備を簡素化でき、しかも、ワーク溝部25等の微小部位に対しても、問題なく異物除去ができる。また、洗浄液が不要となるため、洗浄液の清浄度管理を行う必要がない。更に、工具費や溶剤費がなく、ほぼ消費電力のみの安価なランニングコストで運用できる。
そして、上記の異物除去装置100を用いた異物除去方法により、図3に示すシール付き軸受4等の軸受表面の異物除去を行うことで、高品位な軸受を製造できる。
次に、上記構成と同等の異物除去装置を用いて異物を除去した実施例を説明する。
表1に種々のエネルギ密度のレーザ光により異物を除去した結果を示す。また、図2はエネルギ密度と異物の除去量との相関を表すグラフである。
Figure 2019032032
図2に示す除去量のデータは、短パルスレーザ光のパルスの繰返し周波数が100kHz、50kHz、20kHzの3種類のデータを示している。
この実施例には、パルス幅が30nsのファイバレーザを用いた。
異物除去対象は、深溝玉軸受(軸受品番 #6203)の内輪のシール溝部とした。内輪はSUJ2(高炭素クロム軸受鋼鋼材)からなる鋼材である。
図2に示す除去量は、非接触式の形状測定機(テーラーホブソン 非接触3Dプロファイラ CCI MP−HS)を用いて計測した半径値である。
短パルスレーザ光によるスポット光をシール溝部に照射した結果、0.3〜2J/cmのエネルギ密度では表面を溶融させることなく、異物のみを除去できた。エネルギ密度Qが2J/cmを超えると、ワーク表面に溶融が発生して、内輪表面性状に乱れが生じた。また、エネルギ密度Qが7J/cmを超えるとワーク表面に溶融池が形成された。
その結果、2J/cm以下のエネルギ密度であれば、母材にダメージを与えることなく、異物のみを選択的に除去できることが知見できた。なお、下限の0.3J/cmの実験結果によれば、この下限値でも異物除去効果が十分に得られていることから、0.2J/cmのエネルギ密度であっても実用上問題ないレベルの異物除去効果が得られると考えられる。
図2によれば、エネルギ密度Qが4J/cmから除去量が顕著に高まる。これは、母材が溶け始めたことによるものと推察される。一方、エネルギ密度Qが4J/cmより小さく2J/cmを超える範囲では、除去量が高まっていない。しかし、母材は、エネルギ密度Qが、2J/cmを超えると溶融し始めることが確認されている。したがって、エネルギ密度Qが2J/cm<Q<4J/cmまでの間は、母材が溶けたり、溶けなかったりする不安定な状態と推察される。母材は、溶融することにより傷つきが著しくなり、製品価値が低下する。よって、エネルギ密度Qを2J/cm以下とすることで、母材の溶融を確実に回避できる。
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
例えば、本構成においては、シール溝部を異物除去の対象部位としたが、異物除去の対象部位はシール溝部以外の外周面でもよいし、外輪の内周面であってもよい。更に、本発明による異物除去対象としては、軸受以外にも、回転部を有する機械、例えば、自動車、オートバイ、鉄道車両等の輸送機械や、各種製造装置等の任意の部位に適用可能である。
また、本発明による軸受リングの異物除去方法により製造した軸受等を機械装置(動力の種別を問わない)に組み込むことにより、高品質な機械装置が得られる。
1 外輪(軸受リング)
2 内輪(軸受リング)
11 回転主軸
13 チャック
15 レーザ発振器
17 レーザ集光ヘッド
19 送り機構
21 ダストクリーナ
25 ワーク溝部
29 短パルスレーザ光(パルスレーザ光)
31 光ファイバ
100 異物除去装置
W ワーク(軸受リング)

Claims (8)

  1. 鋼材からなる軸受リングを軸芯回りに回転させる工程と、
    エネルギ密度が0.2〜2J/cmのパルスレーザ光を集光させたスポット光を、回転する前記軸受リングの表面に照射し、前記軸受リングと前記スポット光とを前記軸芯に沿って相対移動させて、前記スポット光を前記軸受リングの表面で走査し、前記軸受リングの表面の異物を除去する工程と、
    を有する軸受リングの異物除去方法。
  2. 前記軸受リングの表面の凹凸に応じて、前記パルスレーザ光の集光位置を光軸方向に変更する請求項1に記載の軸受リングの異物除去方法。
  3. 前記スポット光の照射により前記軸受リングから発生したヒュームを吸引して、前記スポット光の照射面から前記ヒュームを除去する請求項1又は請求項2に記載の軸受リングの異物除去方法。
  4. 鋼材からなる軸受リングを着脱自在に把持するチャックと、
    前記チャックに把持された前記軸受リングを回転駆動する回転主軸と、
    エネルギ密度が0.2〜2J/cmのパルスレーザ光を発生するレーザ発振器と、
    前記パルスレーザ光を集光させる集光レンズが搭載され、前記レーザ発振器からの前記パルスレーザ光を前記集光レンズにより集光したスポット光を、前記軸受リングの表面に照射するレーザ集光ヘッドと、
    前記レーザ集光ヘッドと前記軸受リングとを、前記軸受リングの軸芯方向に相対移動させ、前記スポット光を前記軸受リングの表面で走査する送り機構と、
    を備え、
    前記軸受リングの表面の異物を前記スポット光の照射によって除去する軸受リングの異物除去装置。
  5. 前記送り機構は、前記レーザ集光ヘッドと前記軸受リングとを前記軸芯方向に直交する方向へ相対移動させる機構を有する請求項4に記載の軸受リングの異物除去装置。
  6. 前記スポット光の照射により前記軸受リングから発生したヒュームを吸引する集塵部を備える請求項4又は請求項5に記載の軸受リングの異物除去装置。
  7. 請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の軸受リングの異物除去方法により、異物除去を行う工程を有する軸受の製造方法。
  8. 請求項7に記載の軸受の製造方法で製造した軸受を組み込む機械装置の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN112483543A (zh) * 2019-09-11 2021-03-12 斯凯孚公司 用于安装传感器轴承单元的方法以及适于该方法的单元
CN113894291A (zh) * 2021-09-23 2022-01-07 石家庄铁道大学 一种激光选区熔化成形高铁用GCr15轴承钢的方法

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