JP5983887B2 - 内燃機関の複リンク式ピストンクランク機構 - Google Patents

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Description

本発明は、内燃機関の複リンク式ピストンクランク機構に関する。
ピストンにピストンピンを介して連結されたアッパリンクと、クランクシャフトのクランピンに回転可能に取り付けられ、かつ上記アッパリンクに第1連結ピンを介して揺動可能に連結されたロアリンクと、一端が上記ロアリンクに第2連結ピンを介して揺動可能に連結されたコントロールリンクと、シリンダブロックに回転可能に取り付けられ、かつ上記コントロールリンクの他端を揺動自在に支持する偏心軸を備えたコントロールシャフトと、を備え、シリンダ中心軸線を挟んで一方の側に上記第1連結ピンが位置し、他方の側に上記第2連結ピンが位置するよう構成された内燃機関の複リンク式ピストンクランク機構が従来から知られている。
このような複リンク式ピストンクランク機構においては、構成上、ピストンに対して、クランクシャフト軸方向視で、コントロールリンクが位置する側のシリンダ内壁面に押し付ける力が作用する。
例えば、特許文献1には、上記のような複リンク式ピストンクランク機構において、クランクシャフトのクランクピン周囲のスラスト軸受面に先端が開口する油供給孔を形成し、スラスト軸受面に摺接するロアリンク側の環状フランジ面に、上記ロアリンクの所定の揺動姿勢において上記油供給孔の先端開口に合致するクランクピンの半径方向に沿って延びる油ガイド溝を形成し、この油ガイド溝に沿ってロアリンクからシリンダの内壁面に向かって潤滑油(オイルジェット)を供給するようにした構成が開示されている。
しかしながら上記複リンク式ピストンクランク機構においては、上記油ガイド溝がクランクピンの半径方向に沿って延びるように形成されているため、例えば、クランクシャフト軸方向視で、シリンダ中心軸線に対してクランクピン中心が常に上記他方の側に大きくオフセットするような構成では、上記コントロールリンク側のシリンダ内壁面よりもクランクピンが上記他方の側に位置してしまい、上記ロアリンクの揺動姿勢にかかわらず、上記コントロールリンクが位置する側のシリンダ内壁面に向かうように油ガイド溝を設定できなくなる場合がある。
特開2010−185396号公報
本発明の内燃機関の複リンク式ピストンクランク機構は、ピストンに連結されたアッパリンクと、クランクシャフトのクランクピンに回転可能に取り付けられ、かつ上記アッパリンクに第1連結ピンを介して揺動可能に連結されたロアリンクと、一端が上記ロアリンクに第2連結ピンを介して揺動可能に連結されたコントロールリンクと、シリンダブロックに回転可能に取り付けられ、かつ上記コントロールリンクの他端を揺動自在に支持する偏心軸を備えたコントロールシャフトと、を備え、シリンダ中心軸線を挟んで一方の側に上記第1連結ピンが位置し、他方の側に上記第2連結ピンが位置するよう構成され、上記ロアリンクに、該ロアリンクの所定の揺動姿勢において上記クランクピンの径方向に延在するクランクピン油路と連通して上記アッパリンクに向かって潤滑油を噴射するロアリンク油路を形成し、該ロアリンク油路から噴射された潤滑油を上記アッパリンクで反射させ、クランクシャフト軸方向視で、上記コントロールリンクが位置する側のシリンダ内壁面に供給することを特徴としている。
本発明によれば、ピストンが押し付けられる側のシリンダ内壁面、すなわち、クランクシャフト軸方向視で、コントロールリンクが位置する側のシリンダ内壁面に潤滑油を供給することができ、複リンク式ピストンクランク機構におけるピストンのスカッフを抑制することができる。
本発明に係る複リンク式ピストンクランク機構が適用されたレシプロ式可変圧縮比内燃機関を模式的に示した説明図。 本発明に係る複リンク式ピストンクランク機構が適用されたレシプロ式可変圧縮比内燃機関を模式的に示した説明図。 複リンク式ピストンクランク機構におけるスラスト方向の力が作用する向きを模式的に示した説明図。 複リンク式ピストンクランク機構のピストンに作用するスラスト力の変化を示す特性図。
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1及び図2は、本発明の複リンク式ピストンクランク機構が適用されたレシプロ式可変圧縮比内燃機関10の基本的な構成の一例を模式的に示した説明図であって、図1は低圧縮比のときを示し、図2は高圧縮比のときを示している。
シリンダブロック5に形成されたシリンダ6内に、ピストン1が摺動可能に配設されており、このピストン1に、アッパリンク11の一端がピストンピン2を介して揺動可能に連結されている。
アッパリンク11の他端は、第1連結ピンとしてのアッパピン12を介してロアリンク13の一端部に回転可能に連結されている。ロアリンク13は、その中央部にクランクシャフト3のクランクピン4が貫通するクランクピン貫通穴21を有し、クランクピン4への組み付けのために上下または左右に2分割して構成され、かつ図示せぬボルトにより一体化されている。クランクシャフト3は、点Oを中心に回転する。
ロアリンク13の他端部には、コントロールリンク15の一端が第2連結ピンとしてのコントロールピン14を介して回転可能に連結されている。このコントロールリンク15の他端は、内燃機関本体の一部に揺動可能に支持されており、かつ、圧縮比の変更のために、その揺動支点の位置が内燃機関本体に対して変位可能となっている。具体的には、クランクシャフト3と平行に延びたコントロールシャフト18を備え、このコントロールシャフト18に偏心して設けられた偏心軸19にコントロールリンク15の他端が回転可能に嵌合している。コントロールシャフト18は、シリンダブロック5に対し回転可能に支持されており、図示せぬ適宜なアクチュエータ機構に連係している。
従って、圧縮比の変更のために、上記アクチュエータ機構によりコントロールシャフト18を回転駆動すると、コントロールリンク15の揺動支点となる偏心軸19の中心位置が機関本体に対して移動する。これにより、コントロールリンク15によるロアリンク13の運動拘束条件が変化して、クランク角に対するピストン1の行程位置が変化し、ひいては機関圧縮比が変更されることになる。
なお、図1及び図2における符号7は高圧の潤滑油が流れるメインギャラリである。
ここで、可変圧縮比内燃機関10においては、シリンダ中心軸線Lを挟んで一方の側にアッパリンク11とロアリンク13とを連結するアッパピン12が位置し、他方の側にロアリンク13とコントロールリンク15とを連結するコントロールピン14が位置するよう構成されているので、図3に示すように、ピストン1に対して、クランクシャフト軸方向視で、コントロールリンク15が位置する側のシリンダ内壁面に押し付ける力が作用する。つまり、図4に示すように、ピストン1に作用するスラスト力の方向は、コントロールリンク15が位置する側(図1、図2における右方向)のシリンダ内壁面に向かう方向のみとなる。ピストン1に作用するスラスト力は、ピストン上死点位置で最大となる。
そこで、このような可変圧縮比内燃機関10において、クランクシャフト軸方向視で、コントロールリンク15が位置する側のシリンダ内壁面にロアリンク13に形成されたロアリンク油路25から噴射された潤滑油を供給する。
ロアリンク油路25は、ロアリンク13が所定の揺動姿勢のときに、クランクピン4に形成されたクランクピン油路26と連通し、クランクピン油路26から流れ込んだ潤滑油をアッパリンク12に向かって噴射するように形成されているとともに、アッパリンク11に向かって噴射した潤滑油が、アッパリンク11で反射し、クランクシャフト軸方向視で、コントロールリンク15が位置する側のシリンダ内壁面に供給されるように形成されている。クランクピン油路26は、クランクピン4の径方向に延在し、クランクシャフト3内に形成された図示せぬ油路を介してメインギャラリ7と連通している。
本実施例のロアリンク油路25は、ピストン上死点時においてクランクピン油路26と連通してアッパリンク11に向かって潤滑油を噴射する。
具体的には、可変圧縮比内燃機関10の圧縮比設定が低圧縮比のときには、図1中に太破線C1で示すように、ロアリンク油路25から噴射された潤滑油がアッパリンク11で反射して、クランクシャフト軸方向視でコントロールリンク15が位置する側のシリンダ内壁面のうちピストン1のスカート部1a付近に供給さる。つまり、可変圧縮比内燃機関10の始動時には、クランクシャフト軸方向視で、コントロールリンク15が位置する側のシリンダ内壁面に潤滑油が供給される。また、可変圧縮比内燃機関10の圧縮比設定が高圧縮比のときには、図2中に太破線C2で示すように、ロアリンク油路25から噴射された潤滑油がアッパリンク11で反射してピストン冠面の裏側に供給される。
これによって、長期間運転していない状態からの始動時や低温始動時には、ピストン1が押し付けられる側のシリンダ内壁面に対して潤滑油を供給することができ、ピストン1のスカッフを抑制することができる。
可変圧縮比内燃機関10の圧縮比設定が高圧縮比のときには、低圧縮比のときに比べて圧縮比が高くなる分ピストン温度が上昇することになるため、ピストン冠面の裏側にアッパリンク11で反射させた潤滑油を供給することで、ピストン温度の上昇を抑制することができる。
ピストン上死点時にロアリンク油路25から潤滑油が噴射されるので、低圧縮比のときには、潤滑油が噴射された直後にピストン1と摺動する壁面に対して潤滑油が供給されることになり、ピストン1のスカッフを抑制する上でより効果的である。また、高圧縮比のときには、ピストン1の温度が高くなるようなタイミングでピストン冠面の裏側に潤滑油が供給されることになり、ピストン温度の上昇を抑制する上でより効果的である。
ロアリンク油路25から噴射した潤滑油をアッパリンク11で反射させて所望の位置に供給する構成となっているので、ロアリンク油路25の設定位置の自由度が相対的に大きくなり、ロアリンク油路25をロアリンク13の応力が集中しない部位に設けることができる。
クランクシャフト軸方向視でコントロールリンク15が位置する側のシリンダ内壁面に潤滑油を供給するための構成としては、ロアリンク13からアッパリンク11へと続く油路を形成してアッパリンク11から潤滑油を噴射することも考えられるが、このような構成に比べて、アッパリンク11への油路の加工が不要であり、より安価にピストン1のスカッフを抑制することができる。また、シリンダブロック5において、クランクシャフト軸方向視でアッパリンク11が位置する側に、メインギャラリ7と連続するサブギャラリを形成し、クランクシャフト軸方向視でアッパリンク11が位置する側からコントロールリンク15が位置する側のシリンダ内壁面に向かって潤滑油を噴射することも考えられるが、このような構成に比べて、より安価にピストン1のスカッフを抑制することができる。
なお、ロアリンク油路25から噴射した潤滑油のアッパリンク11での反射角度は、アッパリンク11やロアリンク13の角度によっても調整可能であり、またアッパリンク11の潤滑油が反射する部分に、凹部や凸部等を設定することによっても調整可能である。
また、ロアリンク油路25から潤滑油が噴射されるタイミングは、上死点に以外のタイミングにすることも可能である。

Claims (5)

  1. ピストンにピストンピンを介して連結されたアッパリンクと、クランクシャフトのクランクピンに回転可能に取り付けられ、かつ上記アッパリンクに第1連結ピンを介して揺動可能に連結されたロアリンクと、一端が上記ロアリンクに第2連結ピンを介して揺動可能に連結されたコントロールリンクと、シリンダブロックに回転可能に取り付けられ、かつ上記コントロールリンクの他端を揺動自在に支持する偏心軸を備えたコントロールシャフトと、を備え、シリンダ中心軸線を挟んで一方の側に上記第1連結ピンが位置し、他方の側に上記第2連結ピンが位置するよう構成された内燃機関の複リンク式ピストンクランク機構において、
    上記ロアリンクに、該ロアリンクの所定の揺動姿勢において上記クランクピンの径方向に延在するクランクピン油路と連通して上記アッパリンクで反射するように上記アッパリンクに向かって潤滑油を噴射するロアリンク油路を形成し、該ロアリンク油路から噴射された潤滑油を上記アッパリンクで反射させ、クランクシャフト軸方向視で、上記コントロールリンクが位置する側のシリンダ内壁面に供給する内燃機関の複リンク式ピストンクランク機構。
  2. ピストン上死点時において、上記アッパリンクで反射した潤滑油は、上記ピストンのスカート部付近のシリンダ内壁面に供給される請求項1に記載の内燃機関の複リンク式ピストンクランク機構。
  3. 上記複リンク式ピストンクランク機構は、上記コントロールシャフトの偏心軸位置を機関運転条件に応じて制御することで機関圧縮比を可変可能なものであって、機関圧縮比が低圧縮比のときには、上記ピストンのスカート部付近のシリンダ内壁面に上記アッパリンクで反射した潤滑油が供給される請求項1または2に記載の内燃機関の複リンク式ピストンクランク機構。
  4. 機関圧縮比が高圧縮比のときには、上記ピストンのピストン冠面裏側に上記アッパリンクで反射した潤滑油が供給される請求項3に記載の内燃機関の複リンク式ピストンクランク機構。
  5. 上記複リンク式ピストンクランク機構は、上記コントロールシャフトの偏心軸位置を機関運転条件に応じて制御することで機関圧縮比を可変可能なものであって、
    機関圧縮比が低圧縮比のときには、ピストン上死点時において、上記ピストンのスカート部付近のシリンダ内壁面に上記アッパリンクで反射した潤滑油が供給され,
    機関圧縮比が高圧縮比のときには、ピストン上死点時において、上記ピストンのピストン冠面裏側に上記アッパリンクで反射した潤滑油が供給される請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関の複リンク式ピストンクランク機構。
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