JP5981840B2 - インクジェット記録用水系インク - Google Patents
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Description
特許文献2には、耐擦過性、色滲み、裏抜け、色の混色などの防止と、吐出安定性、保存安定性の向上を目的として、水、自己分散型顔料、1,2−アルカンジオールを含有する有機溶剤、ポリエステル構造を有する樹脂エマルションを含有することを特徴とするインクジェットシステム用インク組成物が開示されている。
特許文献3には、耐ブロッキング性を改善し、低温かつ高速で高画質な画像定着を可能とすることを目的として、静電界を利用したインクジェット記録方式でインク組成物をインク滴として飛翔させるインクジェット記録方法において、使用するインク組成物が、分散媒、色材およびその被覆ポリマーを含む荷電粒子を含有し、かつ前記被覆ポリマーの動的弾性率が50℃で5×105Pa以上、70℃で2×105Pa以下、かつ80℃で1×103Pa以上であることを特徴とするインクジェット記録方法が開示されている。
また、インクジェット記録は、被印字物に対して非接触であるため、あらゆる記録媒体に印刷できるが、特に水系インクを用いた場合には、水や保湿剤である溶媒が完全に乾燥しにくく、また記録媒体に十分に浸透しないことから、定着性や画像の保存性に乏しいことが問題になっている。特に安価な光沢紙であるコート紙や、非吸収性媒体であるプラスチックフィルムでは、良好な画像が得られるものの、浸透が起きにくく、定着性が低く、前記特許文献の方法を用いても浸透性や定着性が不十分であった。
本発明は、前記の課題に対して、吐出性、記録媒体への初期定着性及び定着強度に優れるインクジェット記録用水系インク、その製造方法、及びインクジェット記録方法を提供することを課題とする。
すなわち、本発明は、次の[1]〜[4]を提供する。
[1]着色剤及びポリエステル系樹脂粒子(A)を含有する水系インクであって、ポリエステル系樹脂粒子(A)を構成するポリエステル系樹脂が、炭素数8〜14のα,ω−脂肪族ジオールを70モル%以上含むアルコール成分と炭素数2〜4のジカルボン酸を10モル%以上含むカルボン酸成分を縮重合させて得られる結晶性ポリエステル部分を含有し、100℃での損失弾性率(G’’100)が5×101〜1×107Paであり、140℃における損失弾性率に対する100℃における損失弾性率の比(G’’100/G’’140)が1〜15である、インクジェット記録用水系インク。
[2]着色剤及びポリエステル系樹脂粒子(A)を含有する水系インクをインクジェット記録方式で難吸収性媒体に付着させるインクジェット記録方法であって、ポリエステル系樹脂粒子(A)を構成するポリエステル系樹脂が、炭素数8〜14のα,ω−脂肪族ジオールを70モル%以上含むアルコール成分と炭素数2〜4のジカルボン酸を10モル%以上含むカルボン酸成分を縮重合させて得られる結晶性ポリエステル部分を含有し、100℃での損失弾性率(G’’100)が5×101〜1×107Paであり、140℃における損失弾性率に対する100℃における損失弾性率の比(G’’100/G’’140)が1〜15である、インクジェット記録方法。
[3]下記工程(1)〜(3)を含む、[1]に記載のインクジェット記録用水系インクの製造方法。
工程(1):非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有する結晶性ポリエステル樹脂(a1)を調製し、該結晶性ポリエステル樹脂(a1)を水性媒体と混合して、結晶性ポリエステル樹脂(a1)の水性分散液を得る工程
工程(2):工程(1)で得られた結晶性ポリエステル樹脂(a1)の水性分散液に、付加重合性モノマー(a2)を添加し、重合してグラフトポリマーを得ることにより、ポリエステル系樹脂粒子(A)の水性分散液を得る工程
工程(3):工程(2)で得られたポリエステル系樹脂粒子(A)の水性分散液と、着色剤を含有する水性分散液とを混合し、インクジェット記録用水系インクを得る工程
[4]前記[3]に記載の製造方法によって得られたインクジェット記録用水系インク。
本発明のインクジェット記録用水系インクは、着色剤及びポリエステル系樹脂粒子(A)を含有する水系インクであって、ポリエステル系樹脂粒子(A)を構成するポリエステル系樹脂が、炭素数8〜14のα,ω−脂肪族ジオールを70モル%以上含むアルコール成分と炭素数2〜4のジカルボン酸を10モル%以上含むカルボン酸成分を縮重合させて得られる結晶性ポリエステル部分を含有し、100℃での損失弾性率(G’’100)が5×101〜1×107Paであり、140℃における損失弾性率に対する100℃における損失弾性率の比(G’’100/G’’140)が1〜15であることを特徴とする。
なお、本明細書において、「インクジェット記録用水系インク」を単に「水系インク」ということがある。
本発明の水系インクは、特定のモノマーを縮重合させて得られる結晶性ポリエステル部分を含有し、特定の弾性率を有するポリエステル系樹脂粒子(A)を含有する。結晶性ポリエステル部分は、炭素数8〜14のα,ω−脂肪族ジオールを70モル%以上含むアルコール成分と炭素数2〜4のジカルボン酸を10モル%以上含むカルボン酸成分からなるが、短鎖のジカルボン酸を用いていることから、結晶性ポリエステル部分の一部にエステル基部分の多い部分が存在し、粒子の表面において、当該部分が水系インク中で水和されて、非結晶化するものと考えられる。非結晶化した部分は、インク中に広がりやすく、分散安定性を促進し、インクの吐出性を良好としていると考えられる。
更に非結晶化した部分のガラス転移温度は非常に低くなるため、通常の使用環境においても、皮膜化しやすく、樹脂粒子間、樹脂粒子と媒体、樹脂粒子と着色剤が接着しやすく、初期定着性に優れるものと考えられる。
このように得られた樹脂の膜は非結晶化された部分の運動性が高く、難吸収性メディアに対しても高い定着性を有するものと考えられる。また、皮膜化後は、再度結晶を形成することによって、強固な膜を形成し、定着強度にも優れると考えられる。
一方、該ポリエステル系樹脂は、100℃での損失弾性率が5×101〜1×107Paであり、140℃における損失弾性率に対する100℃における損失弾性率の比が1〜15である。このように温度の違いによらず、比較的高い損失弾性率を有することで得られる皮膜は靭性を有し、強固となる。以上のことから、水系インクが、吐出性、記録媒体への初期定着性及び定着強度に優れると考えられる。
以下、本発明に用いられる各成分、各工程について説明する。
本発明において着色剤とは、顔料又は染料をいう。また、後述するとおり、着色剤は、界面活性剤やポリマーを用いてインク中で安定な微粒子にしてもよい。本発明に用いる着色剤としては、特に制限はなく、顔料、疎水性染料、水溶性染料(酸性染料、反応染料、直接染料等)等を用いることができるが、インクの耐水性、分散安定性及び耐擦過性の観点から、顔料及び疎水性染料が好ましい。中でも、近年要求が強い高耐候性を発現させるためには、顔料を用いることが好ましい。
顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれであってもよい。また、必要に応じて、それらと体質顔料を併用することもできる。
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、金属酸化物等が挙げられ、特に黒色インクにおいては、カーボンブラックが好ましい。
有機顔料の具体例としては、アゾ顔料、ジアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アントラキノン顔料、キノフタロン顔料等が挙げられる。
色相は特に限定されず、イエロー、マゼンタ、シアン、ブルー、レッド、オレンジ、グリーン等の有彩色顔料をいずれも用いることができる。
また、キナクリドン固溶体顔料等の固溶体顔料も好適に用いることができる。キナクリドン固溶体顔料は、β型、γ型等の無置換キナクリドンと、2,9−ジメチルキナクリドン(C.I.ピグメント・レッド122)、又はβ型、γ型等の無置換キナクリドンと2,9−ジクロロキナクリドン、3,10−ジクロロキナクリドン、4,11−ジクロロキナクリドン等のジクロロキナクリドンからなる。キナクリドン固溶体顔料としては、無置換キナクリドン(C.I.ピグメント・バイオレット19)と2,9−ジクロロキナクリドン(C.I.ピグメント・レッド202)との組み合わせからなる固溶体顔料が好ましい。
上記の顔料は、単独で又は2種以上を任意の割合で混合して用いることができる。
疎水性染料は、ポリマー粒子中に含有させることができるものであればよく、その種類には特に制限がない。疎水性染料は、ポリマー中に効率よく染料を含有させる観点から、ポリマーの製造時に使用する有機溶媒(好ましくメチルエチルケトン)に対して、2g/L以上、好ましくは20〜500g/L(25℃)溶解するものが望ましい。ここで、疎水性染料とは、100gの水中(20℃)、溶解度が、好ましくは6質量%未満の染料のことをいう。
疎水性染料としては、油溶性染料、分散染料等が挙げられ、これらの中では油溶性染料が好ましい。
油溶性染料としては、例えば、C.I.ソルベント・ブラック、C.I.ソルベント・イエロー、C.I.ソルベント・レッド、C.I.ソルベント・バイオレット、C.I.ソルベント・ブルー、C.I.ソルベント・グリーン、及びC.I.ソルベント・オレンジからなる群から選ばれる1種以上の各品番製品が挙げられ、オリエント化学株式会社、BASF社等から市販されている。
上記の着色剤は、単独で又は2種以上を任意の割合で混合して用いることができる。
着色剤は、水系インクに使用する場合には、界面活性剤、ポリマーを用いて、インク中で安定な微粒子にすることが好ましい。特に、インクの耐滲み性、耐水性等の観点から、ポリマーの粒子中に着色剤を含有させることがより好ましく、ポリマーの粒子中に顔料及び/又は疎水性染料を含有させることが好ましく、水不溶性ポリマーの粒子中に顔料及び/又は疎水性染料を含有させることが更に好ましい。
以下に、着色剤を含有するポリマー粒子について説明する。
着色剤を含有するポリマー粒子の平均粒径は、動的光散乱法で測定されるものであり、具体的には実施例の方法によって測定される。
着色剤を含有するポリマー粒子には、インク中でのポリマー粒子の水分散性及びインクの印字濃度向上の観点から、水不溶性ポリマーを用いることが好ましい。ここで、「水不溶性ポリマー」とは、105℃で2時間乾燥させ、恒量に達したポリマーを、25℃の水100gに溶解させたときに、その溶解量が10g以下であるポリマーをいい、その溶解量は好ましくは5g以下、より好ましくは1g以下である。アニオン性ポリマーの場合、溶解量は、ポリマーのアニオン性基を水酸化ナトリウムで100%中和した時の溶解量である。
用いられるポリマーとしては、ポリエステル、ポリウレタン、ビニル系ポリマー等が挙げられるが、インクの保存安定性の観点から、ビニル単量体(ビニル化合物、ビニリデン化合物、ビニレン化合物)の付加重合により得られるビニル系ポリマーが好ましい。
(a)イオン性モノマーは、着色剤を含有するポリマー粒子をインク中で安定に分散させる観点から、水不溶性ポリマーのモノマー成分として用いられることが好ましい。イオン性モノマーとしては、アニオン性モノマー及びカチオン性モノマーが挙げられ、アニオン性モノマーが好ましい。
アニオン性モノマーとしては、カルボン酸モノマー、スルホン酸モノマー、リン酸モノマー等が挙げられる。
カルボン酸モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。
上記アニオン性モノマーの中では、着色剤を含有するポリマー粒子のインク中での分散安定性の観点から、カルボン酸モノマーが好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸がより好ましい。
(b)疎水性モノマーは着色剤を含有するポリマー粒子のインク中での分散安定性の観点から、水不溶性ポリマーのモノマー成分として用いられることが好ましい。疎水性モノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレート、芳香族基含有モノマー等が挙げられる。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素数1〜22、好ましくは炭素数6〜18のアルキル基を有するものが好ましく、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、(イソ)アミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ドデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、「(イソ又はターシャリー)」及び「(イソ)」は、これらの基が存在する場合としない場合の双方を意味し、これらの基が存在しない場合には、ノルマルを示す。また、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及び/又はメタクリレートを示す。
スチレン系モノマーとしてはスチレン、2−メチルスチレン、及びジビニルベンゼンが好ましく、スチレンがより好ましい。
また、芳香族基含有(メタ)アクリレートとしては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が好ましく、ベンジル(メタ)アクリレートがより好ましい。
(b)疎水性モノマーは、前記のモノマー2種類以上を使用することができる。スチレン系モノマーと芳香族基含有(メタ)アクリレートを併用することができ、ベンジル(メタ)アクリレートとスチレンを併用することができるが、ベンジル(メタ)アクリレートを単独で用いることがより好ましい。
(c)マクロマーは、片末端に重合性官能基を有する数平均分子量500〜100,000の化合物であり、着色剤を含有するポリマー粒子のインク中での保存安定性の観点から、水不溶性ポリマーのモノマー成分として用いられることが好ましい。片末端に存在する重合性官能基としては、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基が好ましく、メタクリロイルオキシ基がより好ましい。
(c)マクロマーの数平均分子量は1,000〜10,000が好ましい。なお、数平均分子量は、溶媒として1mmol/Lのドデシルジメチルアミンを含有するクロロホルムを用いたゲル浸透クロマトグラフィー法により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定される。
(c)マクロマーとしては、着色剤を含有するポリマー粒子のインク中での分散安定性の観点から、芳香族基含有モノマー系マクロマー及びシリコーン系マクロマーが好ましく、芳香族基含有モノマー系マクロマーがより好ましい。
芳香族基含有モノマー系マクロマーを構成する芳香族基含有モノマーとしては、前記(b)疎水性モノマーで記載した芳香族基含有モノマーが挙げられ、スチレン及びベンジル(メタ)アクリレートが好ましく、スチレンがより好ましい。
スチレン系マクロマーの具体例としては、AS−6(S)、AN−6(S)、HS−6(S)(東亞合成株式会社の商品名)等が挙げられる。
シリコーン系マクロマーとしては、片末端に重合性官能基を有するオルガノポリシロキサン等が挙げられる。
水不溶性ポリマーには、着色剤を含有するポリマー粒子のインク中での分散安定性の観点から、更に、(d)ノニオン性モノマー(以下「(d)成分」ともいう)をモノマー成分として用いることが好ましい。
(d)成分としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=2〜30、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す。以下同じ)(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(n=2〜30)等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(n=1〜30)(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシ(エチレングリコール・プロピレングリコール共重合)(n=1〜30、その中のエチレングリコール:n=1〜29)(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でもアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートが好ましく、メトキシポリエチレングリコール(n=1〜30)(メタ)アクリレートがより好ましい。
上記(a)〜(d)成分は、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
(a)成分の含有量は、着色剤を含有するポリマー粒子をインク中で安定に分散させる観点から、好ましくは3〜40質量%、より好ましくは4〜30質量%、特に好ましくは5〜25質量%である。
(b)成分の含有量は、着色剤を含有するポリマー粒子のインク中での分散安定性の観点から、好ましくは5〜91質量%、より好ましくは10〜80質量%である。
(c)成分の含有量は、着色剤を含有するポリマー粒子のインク中での分散安定性の観点から、好ましくは1〜25質量%、より好ましくは5〜20質量%である。
(d)成分の含有量は、着色剤を含有するポリマー粒子のインク中での分散安定性の観点から、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜40質量%である。
また、〔(a)成分/[(b)成分+(c)成分]〕の質量比は、ポリマー粒子のインク中での分散安定性及びインクの印字濃度の観点から、好ましくは0.01〜1、より好ましくは0.02〜0.67、更に好ましくは0.03〜0.50である。
前記水不溶性ポリマーは、モノマー混合物を公知の重合法により共重合させることによって製造される。重合法としては溶液重合法が好ましい。
溶液重合法で用いる溶媒に制限はないが、炭素数1〜3の脂肪族アルコール、ケトン類、エーテル類、エステル類等の極性有機溶媒が好ましく、具体的にはメタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトンが挙げられ、メチルエチルケトンが好ましい。
重合の際には、重合開始剤や重合連鎖移動剤を用いることができるが、重合開始剤としては、アゾ化合物が好ましく、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)がより好ましい。重合連鎖移動剤としては、メルカプタン類が好ましく、2−メルカプトエタノールがより好ましい。
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、溶媒留去等の公知の方法により、生成したポリマーを単離することができる。また、得られたポリマーは、再沈澱、膜分離、クロマトグラフ法、抽出法等により、未反応のモノマー等を除去することができる。
本発明で用いられる水不溶性ポリマーの重量平均分子量は、着色剤を含有する水不溶性ポリマー粒子のインク中での分散安定性と、インクの印字濃度の観点から、5,000〜500,000が好ましく、10,000〜400,000がより好ましく、10,000〜300,000がより好ましく、20,000〜200,000が更に好ましい。なお、重量平均分子量の測定は実施例に記載の方法により行うことができる。
着色剤を含有するポリマー粒子は、水分散体として下記のI及びIIを有する方法により、効率的に製造することができる。
工程I:水不溶性ポリマー、有機溶媒、着色剤、及び水を含有する混合物を分散処理して、着色剤を含有する水不溶性ポリマー粒子の分散体を得る工程
工程II:工程1で得られた分散体から前記有機溶媒を除去して、着色剤を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体を得る工程
また、任意の工程であるが、更に工程3を行ってもよい。
工程III:工程IIで得られた水分散体と架橋剤を混合し、架橋処理して水分散体を得る工程
工程Iでは、まず、水不溶性ポリマーを有機溶媒に溶解させ、次に着色剤、水、及び必要に応じて中和剤、界面活性剤等を、得られた有機溶媒溶液に加えて混合し、水中油型の分散体を得る方法が好ましい。水不溶性ポリマーの有機溶媒溶液に加える順序に制限はないが、水、中和剤、着色剤の順に加えることが好ましい。
水不溶性ポリマーを溶解させる有機溶媒に制限はないが、炭素数1〜3の脂肪族アルコール、ケトン類、エーテル類、エステル類等が好ましく、ケトン類がより好ましく、メチルエチルケトンが更に好ましい。水不溶性ポリマーを溶液重合法で合成した場合には、重合で用いた溶媒をそのまま用いてもよい。
水不溶性ポリマーがアニオン性ポリマーの場合、中和剤を用いて水不溶性ポリマー中のアニオン性基を中和してもよい。中和剤を用いる場合、pHが7〜11になるように中和することが好ましい。中和剤としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、各種アミン等の塩基が挙げられる。また、該水不溶性ポリマーを予め中和しておいてもよい。
水不溶性ポリマーのアニオン性基の中和度は、着色剤を含有するポリマー粒子のインク中での分散安定性の観点から、10〜300モル%であることが好ましく、20〜200モル%がより好ましく、30〜150モル%が更に好ましい。
ここで中和度とは、中和剤のモル当量を水不溶性ポリマーのアニオン性基のモル量で除したものである。
前記水不溶性ポリマーの量に対する着色剤の量の質量比〔着色剤/水不溶性ポリマー〕は、着色剤を含有するポリマー粒子のインク中での分散安定性の観点から、50/50〜90/10であることが好ましく、60/40〜80/20であることがより好ましく、70/30〜80/20であることが更に好ましい。
分散体を予備分散させる際には、アンカー翼、ディスパー翼等の一般に用いられている混合撹拌装置、なかでも高速撹拌混合装置が好ましい。
本分散の剪断応力を与える手段としては、例えば、ロールミル、ニーダー等の混練機、マイクロフルイダイザー(Microfluidics社製、商品名)等の高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ビーズミル等のメディア式分散機が挙げられる。市販のメディア式分散機としては、ウルトラ・アペックス・ミル(寿工業株式会社製、商品名)、ピコミル(浅田鉄工株式会社製、商品名)等が挙げられる。これらの装置は複数を組み合わせることもできる。これらの中では、着色剤を含有する水不溶性ポリマー粒子を小粒子径化する観点から、高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。
工程IIでは、得られた分散体から、公知の方法で有機溶媒を除去することで、着色剤を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体を得ることができる。得られた着色剤を含有する水不溶性ポリマー粒子を含む水分散体中の有機溶媒は実質的に除去されていることが好ましいが、本発明の目的を損なわない限り、残存していてもよい。残留有機溶媒の量は0.1質量%以下が好ましく、0.01質量%以下であることがより好ましい。
また必要に応じて、有機溶媒を留去する前に分散体を加熱撹拌処理することもできる。
得られた着色剤を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体は、着色剤を含有する固体の水不溶性ポリマー粒子が水を主媒体とする媒体中に分散しているものである。ここで、水不溶性ポリマー粒子の形態は特に制限はなく、少なくとも着色剤と水不溶性ポリマーにより粒子が形成されていればよい。例えば、該水不溶性ポリマーに着色剤が内包された粒子形態、該水不溶性ポリマー中に着色剤が均一に分散された粒子形態、該水不溶性ポリマー粒子表面に着色剤が露出された粒子形態等が含まれ、これらの混合物も含まれる。
工程IIIは、任意の工程であるが、工程IIで得られた水分散体と架橋剤を混合し、架橋処理して水分散体を得る工程である。工程IIIを行うことが、水分散体及びインクの保存安定性の観点から好ましい。
ここで、架橋剤は、水不溶性ポリマーがアニオン性基を有するアニオン性水不溶性ポリマーである場合において、該アニオン性基と反応する官能基を有する化合物が好ましく、該官能基を分子中に2以上、好ましくは2〜6有する化合物がより好ましい。
架橋剤の好適例としては、分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物、分子中に2以上のオキサゾリン基を有する化合物、分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物が挙げられ、これらの中では、分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物が好ましく、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルがより好ましい。
ポリエステル系樹脂粒子(A)を構成する樹脂であるポリエステル系樹脂は、吐出性、記録媒体への初期定着性及び定着強度の観点から、炭素数8〜14のα,ω−脂肪族ジオールを70モル%以上含むアルコール成分と炭素数2〜4のジカルボン酸を70モル%以上含むカルボン酸成分を縮重合させて得られる結晶性ポリエステル部分を含有し、100℃での損失弾性率(G’’100)が5×101〜1×107Paであり、140℃における損失弾性率に対する100℃における損失弾性率の比(G’’100/G’’140)が1〜15である。
結晶性ポリエステル部分は、結晶性ポリエステル部分のみからなる結晶性ポリエステル樹脂である場合、ポリエステル系樹脂粒子(A)を構成する樹脂であるポリエステル系樹脂全体のことをいい、ポリエステル系樹脂がグラフトポリマーである場合には、グラフトポリマーを構成するポリエステル樹脂セグメント(A1)のことをいう。
本発明において、結晶性ポリエステルとは、軟化点と示差走査熱量計(DSC)による吸熱の最大ピーク温度との比、(軟化点(℃))/(吸熱の最大ピーク温度(℃))で定義される結晶性指数が0.6〜1.4のものであり、トナーの低温定着性の観点から、0.8〜1.3のものが好ましく、0.9〜1.2のものがより好ましく、0.9〜1.1のものが更に好ましい。
結晶性ポリエステル部分の原料モノマーであるアルコール成分は、結晶性ポリエステルの結晶性を高め、インクの記録媒体への初期定着性及び定着強度の観点から、炭素数8〜14のα,ω−脂肪族ジオールを70モル%以上含む。
かかる脂肪族ジオールの具体例としては、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール等が挙げられ、インクの記録媒体への初期定着性及び定着強度の観点から、これらの中では、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオールが好ましく、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオールがより好ましい。
結晶性ポリエステル部分の原料モノマーであるカルボン酸成分は、他のインク成分との親和性を高めて、インクの吐出性を向上させ、さらには皮膜の形成を促進し、インクの記録媒体への初期定着性及び定着強度を向上させる観点から、炭素数2〜4のジカルボン酸を70モル%以上含む。
なお、本発明において、カルボン酸成分に記載したカルボン酸には、ポリエステルを製造する際の原料として用いることができる、遊離酸、これらの酸の無水物、及び酸の炭素数1〜3のアルキル基を有するアルキルエステルを含む。
かかるジカルボン酸の具体例としては、フマル酸、マレイン酸、シュウ酸、マロン酸が挙げられ、インクの記録媒体への初期定着性及び定着強度の観点から、これらの中では、フマル酸、マレイン酸が好ましく、フマル酸がより好ましい。
3価以上のカルボン酸としては、トリメリット酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸等の芳香族カルボン酸が挙げられる。
ポリエステル系樹脂粒子(A)を構成するポリエステル系樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂からなる主鎖セグメント(A1)及び付加重合系樹脂からなる側鎖セグメント(A2)からなるグラフトポリマーであってもよい。
この場合、グラフトポリマーを構成するセグメント(A1)とセグメント(A2)との質量比[セグメント(A1)/セグメント(A2)]は、インクの吐出性、記録媒体への初期定着性及び定着強度の観点から、好ましくは60/40以上であり、より好ましくは70/30以上であり、更に好ましくは80/20以上であり、更に好ましくは85/15以上であり、また、インクの記録媒体への初期定着性及び定着強度の観点から、好ましくは95/5以下であり、より好ましくは85/15以下である。また、好ましくは60/40〜95/5、より好ましくは70/30〜95/5、更に好ましくは80/20〜95/5であり、更に好ましくは85/15〜95/5である。
セグメント(A1)がセグメント(A2)より多く存在することで、水との親和性が上がり、造膜性に優れ、記録媒体への定着性に優れるものと考えられる。
グラフトポリマーを構成するポリエステル樹脂セグメント(A1)は、アルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して得られる樹脂セグメントであり、前記結晶性ポリエステル部分であるが、グラフトポリマー中でセグメント(A2)との結合部分を構成するために、カルボン酸成分は、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するカルボン酸、例えば不飽和脂肪族カルボン酸及び/又は不飽和脂環式カルボン酸を含むことが好ましい。該炭素−炭素不飽和結合の部分は、グラフトポリマー中でセグメント(A2)との結合部分となる場合、該不飽和結合は、飽和結合となる。
グラフトポリマーを構成するセグメント(A2)は、付加重合性モノマー(a2)(以下、「モノマー(a2)」ともいう)に由来する構成単位からなる付加重合系樹脂からなるセグメントである。セグメント(A2)は、グラフトポリマーにおける側鎖である。
本発明に用いられる付加重合性モノマー(a2)としては、スチレン、メチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、スチレンスルホン酸又はその塩等のスチレン類;(メタ)アクリル酸アルキル(炭素数1〜18)、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸エステル;エチレン、プロピレン、ブタジエン等のオレフィン類;塩化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;ビニルメチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニリデンクロリド等のハロゲン化ビニリデン;N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物等の1種又は2種以上が挙げられる。
これらの中で、インクの記録媒体への初期定着性及び定着強度を向上させる観点から、スチレン類及び(メタ)アクリル酸エステルの1種又は2種が好ましく、2種がより好ましい。
芳香族基を有する付加重合性モノマーは、スチレン、メチルスチレン、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジルメタクリレート、及びベンジルアクリレートの1種又は2種以上が好ましい。これらの中でも、スチレン及びフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレートの1種又は2種が好ましく、モノマーの原料価格の観点からは、スチレンが更に好ましい。
(メタ)アクリル酸エステルは、炭素数1〜22、好ましくは炭素数6〜18のアルキル基を有するものが好ましく、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、(イソ)アミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ドデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリルアクリレート等が挙げられ、好ましくは2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート及び(イソ)ステアリル(メタ)アクリレートの1種又は2種であり、より好ましくは2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートである。
付加重合性モノマー(a2)は、好ましくは上記の(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも1種とスチレンとの併用が好ましく、より好ましくは2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート及び(イソ)ステアリル(メタ)アクリレートの1種又は2種とスチレンとの併用であり、更に好ましくは2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートとスチレンとの併用である。
芳香族基を有する付加重合性モノマーに由来する構成単位の含有量は、吐出性、記録媒体への初期定着性及び定着強度の観点から、セグメント(A2)中、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、更に好ましくは51質量%以上であり、好ましくは100質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下、よりさらに好ましくは65質量%以下である。
また、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位は、インクの記録媒体への初期定着性及び定着強度の観点からスチレンと併用されることが好ましく、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の含有量は、インクの吐出性、記録媒体への初期定着性及び定着強度の観点から、セグメント(A2)中、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは35質量%以上であり、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、更に好ましくは49質量%以下である。
グラフトポリマーの製造方法としては、アルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有する結晶性ポリエステル樹脂(a1)(以下「樹脂(a1)」ともいう)を調製し、該ポリエステル樹脂(a1)の存在下、付加重合性モノマー(a2)を付加重合する方法が好ましい。
樹脂(a1)は、アルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して得られる、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有する結晶性ポリエステル樹脂であり、前記ポリエステル樹脂からなる主鎖セグメント(A1)を構成するのに好ましいものである。なお、「非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合」は、前記した、不飽和脂肪族カルボン酸及び不飽和脂環式カルボン酸から選ばれる1種以上に由来するものである。
インクの吐出性、記録媒体への定着強度の観点及び樹脂粒子の粒径制御の観点から、ポリエステルはシャープな分子量分布を有することが好ましく、エステル化触媒を用いて縮重合をすることが好ましい。エステル化触媒としては、スズ触媒、チタン触媒、三酸化アンチモン、酢酸亜鉛、二酸化ゲルマニウム等の金属化合物等が挙げられる。ポリエステルの合成におけるエステル化反応の反応効率の観点から、スズ触媒が好ましい。スズ触媒としては、酸化ジブチルスズ、ジ(2−エチルヘキサン)酸スズ、これらの塩等が好ましく用いられ、酸化ジブチルスズがより好ましく用いられる。また、ラジカル重合禁止剤を併用してもよい。
同様にインクの記録媒体への定着強度の観点から、樹脂(a1)の融点(Tm1)は、好ましくは50〜100℃、より好ましくは70〜100℃、更に好ましくは80〜95℃、より更に好ましくは85〜95℃である。
樹脂粒子の粒径制御の観点、インクの吐出性、記録媒体への初期定着性及び定着強度の観点から、樹脂(a1)の酸価は、5〜40mgKOH/gであり、好ましくは8〜25mgKOH/g、より好ましくは10〜20mgKOH/gであり、更に好ましくは10〜15mgKOH/gである。
融点、軟化点及び酸価はいずれも用いるモノマーの種類、配合比率、縮重合の温度、反応時間を適宜調節することにより所望のものを得ることができる。
また、インクの吐出性、記録媒体への初期定着性及び定着強度の観点から、樹脂(a1)の数平均分子量は、好ましくは1,000〜10,000、より好ましくは2,000〜10,000であり、更に好ましくは5,000〜9,000であり、より更に好ましくは7,000〜9,000である。
140℃における損失弾性率に対する100℃における損失弾性率の比(G’’100/G’’140)は、インクの吐出性、記録媒体への初期定着性及び定着強度の観点から、1〜20であり、1.5〜10が好ましく、2〜8がより好ましく、2.5〜6が更に好ましい。
樹脂(a1)の140℃での損失弾性率(G’’)は、インクの吐出性、記録媒体への初期定着性及び定着強度の観点から、上記の比(G’’100/G’’140)の好適範囲を満たすことに加え、更に1〜50,000Paが好ましく、10〜20,000Paがより好ましく、100〜5,000Paが更に好ましく、400〜2,000Paが更に好ましい。
本発明に用いられる付加重合性モノマー(a2)は、前記の通りである。
グラフトポリマーの重合方法に制限はなく、樹脂(a1)とモノマー(a2)とを直接混合して重合する方法、樹脂(a1)とモノマー(a2)とを有機溶媒に溶解して重合する方法等が挙げられるが、下記工程(1)及び(2)を有する方法によって得ることが好ましい。
工程(1):前記結晶性ポリエステル樹脂(a1)を水性媒体と混合して、前記結晶性ポリエステル樹脂(a1)の水性分散液を得る工程
工程(2):工程(1)で得られた結晶性ポリエステル樹脂(a1)の水性分散液に、付加重合性モノマー(a2)を添加し、重合してグラフトポリマーを得ることにより、ポリエステル系樹脂粒子(A)の水性分散液を得る工程
工程(1)は、結晶性ポリエステル樹脂(a1)を水性媒体と混合して、前記ポリエステル樹脂(a1)の水性分散液を得る工程である。
前記水性媒体とは、水を主成分とするもの、すなわち、水の含有量が50質量%以上の媒体である。環境安全性の観点から、水性媒体中の水の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは実質的に100質量%である。水以外の成分としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒等の、水に溶解する有機溶媒が挙げられる。
結晶性ポリエステル樹脂(a1)のケトン系溶媒への溶解操作、及びその後の中和剤の添加は、通常、ケトン系溶媒の沸点以下の温度で行う。用いられる水としては、例えば脱イオン水等が挙げられる。
ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソプロピルケトン等が挙げられる。結晶性ポリエステル樹脂(a1)の溶解性及び溶媒の留去容易性の観点から、好ましくはメチルエチルケトンである。
工程(1)で得られた水性分散液中の樹脂(a1)の体積中位粒径は、インクの吐出性及び高温での画像保存性を向上させる観点から、好ましくは0.05μm以上であり、より好ましくは0.10μm以上であり、より好ましくは0.12μm以上である。インクの初期定着性及び定着強度を向上させる観点からは、好ましくは0.30μm以下であり、より好ましくは0.20μm以下であり、更に好ましくは0.18μm以下である。
これらの観点から、樹脂(a1)の体積中位粒径は、好ましくは0.05〜0.30μmであり、より好ましくは0.10〜0.20μmであり、更に好ましくは0.12〜0.18μmである。
工程(2)は、工程(1)で得られた結晶性ポリエステル樹脂(a1)の水性分散液に、前記付加重合性モノマー(a2)を添加し、重合してグラフトポリマーを得ることにより、ポリエステル系樹脂粒子(A)の水性分散液を得る工程である。
まず、付加重合性モノマー(a2)をポリエステル樹脂(a1)の水性分散液に添加する。添加量は、インクの吐出性、記録媒体への初期定着性及び定着強度の観点から、ポリエステル樹脂(a1)と付加重合性モノマー(a2)との質量比[ポリエステル樹脂(a1)/付加重合性モノマー(a2)]で、好ましくは60/40以上であり、より好ましくは70/30以上であり、更に好ましくは80/20以上であり、更に好ましくは85/15以上であり、また、インクの記録媒体への初期定着性及び定着強度の観点から、好ましくは100/0以下であり、より好ましくは95/5以下である。また、好ましくは60/40〜100/0、より好ましくは70/30〜100/0、更に好ましくは80/20〜100/0であり、更に好ましくは80/20〜95/5であり、更に好ましくは85/15〜95/5である。
また、撹拌効率の観点から、更に水等を加えてもよい。
重合には、公知のラジカル重合開始剤、架橋剤等を必要に応じて添加する。ラジカル重合開始剤としては、水溶性のラジカル重合開始剤を用いることが好ましく、過硫酸塩を用いることがより好ましく、過硫酸ナトリウムを用いることが更に好ましい。
前記のポリエステル樹脂(a1)と付加重合性モノマー(a2)とを含有する混合液を加熱することで重合反応を進行させる。重合温度は、用いられる重合開始剤の種類にもよるが、例えば、過硫酸ナトリウムを用いる場合には、重合反応を効率的に行う観点から、好ましくは60〜100℃、より好ましくは70〜90℃であり、反応時間は、好ましくは1〜10時間であり、より好ましくは3〜8時間であり、更に好ましくは5〜7時間である。
また、前記ポリエステル系樹脂粒子(A)の水性分散液の25℃におけるpHは、ポリエステル系樹脂粒子(A)の水性分散液の保存安定性の観点から、好ましくは5〜10、より好ましくは6〜9、更に好ましくは7〜9である。
本発明に用いられるポリエステル系樹脂粒子(A)の体積中位粒径は、インクの吐出性及び定着強度を向上させる観点から、0.020μm以上であり、好ましくは0.050μm以上であり、より好ましくは0.070μm以上であり、更に好ましくは0.100μm以上であり、より更に好ましくは0.120μm以上である。定着性を向上させる観点からは、0.250μm以下であり、好ましくは0.230μm以下であり、より好ましくは0.200μm以下であり、更に好ましくは0.180μm以下である。
これらの観点から、樹脂粒子(A)の体積中位粒径は、0.020〜0.250μmであり、好ましくは0.050〜0.230μmであり、より好ましくは0.070〜0.200μmであり、更に好ましくは0.100〜0.180μmであり、更に好ましくは0.120〜0.180μmである。
ここで「体積中位粒径」とは、体積分率で測定した累積体積頻度が、粒径の小さい方から累積して50%になる粒径を意味する。その測定方法は、実施例に記載の通りである。
140℃における損失弾性率に対する100℃における損失弾性率の比(G’’100/G’’140)は、インクの記録媒体への初期定着性及び定着強度の観点から、1〜15であり、1.3〜10が好ましく、1.5〜8がより好ましく、1.5〜6が更に好ましく、1.5〜5が更に好ましい。
樹脂粒子(A)を構成するポリエステル系樹脂の140℃での損失弾性率(G’’)は、インクの記録媒体への初期定着性及び定着強度の観点から、上記の比(G’’100/G’’140)の好適な数値範囲を具備することに加え、更に70〜1,500,000Paが好ましく、500〜1,200,000Paがより好ましく、1,000〜900,000Paが更に好ましく、2,000〜400,000Paが更に好ましい。
140℃及び100℃での損失弾性率(G’’)は実施例記載の方法により測定することができる。
なお、樹脂粒子(A)は、樹脂のみにより構成されている場合の他に、樹脂成分と活性剤等の樹脂以外の成分とから構成されている場合もある。本発明において、樹脂粒子(A)を構成する樹脂の140℃及び100℃での損失弾性率(G’’)、及び融点(Tm2)とは、樹脂粒子(A)中に樹脂以外の成分が含まれる場合は、これらを含む樹脂粒子(A)全体について実施例記載の測定方法によって測定した場合の測定値のことをいう。
本発明の水系インクに含まれる着色剤の含有量は、水系インクの印字濃度及び分散安定性を高める観点から、水系インク中で、好ましくは1〜25質量%、より好ましくは2〜10質量%、更に好ましくは3〜5質量%である。
本発明の水系インクに含まれるポリエステル系樹脂粒子(A)の含有量は、水系インクの吐出性、記録媒体への初期定着性、定着強度及び高温での画像保存性を高める観点から、水系インク中で、好ましくは1〜15質量%、より好ましくは2〜10質量%、更に好ましくは3〜7質量%である。
本発明の水系インクに含まれる水の含有量は、水系インクの吐出性を良好にする観点から、水系インク中で、30〜60質量%であり、好ましくは35〜55質量%、より好ましくは35〜50質量%、より好ましくは40〜50質量%、更に好ましくは40〜45質量%である。
本発明の水系インクに含まれるポリエステル系樹脂粒子(A)に対する着色剤の質量比〔着色剤/ポリエステル系樹脂粒子(A)〕は、水系インクの吐出性及び記録媒体への初期定着性、定着強度の観点から、水系インク中で、好ましくは20/80〜80/20、より好ましくは30/70〜60/40、更に好ましくは40/60〜50/50であり、より更に好ましくは40/60〜48/52である。
本発明の水系インクは、有機溶媒、浸透剤、分散剤、界面活性剤、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤等の各種添加剤を添加することができる。
有機溶媒としては、グリセリン、1,2−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、エチレングリコール、アセチレングリコール等の多価アルコール、2−ピロリドン等のピロリドン、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のグリコールエーテルが好ましく、これらを2つ以上併用することがより好ましい。
本発明において、有機溶媒の含有量は、水系インクの吐出性を良好にする観点から、水系インク中で、好ましくは5〜30質量%、より好ましくは10〜20質量%である。
前述した本発明のインクジェット記録用水系インクは、吐出性、記録媒体への初期定着性、定着強度及び高温での画像保存性に優れるため、当該水性インクを用いたインクジェット記録方法には特に制限はないが、次に説明する本発明のインクジェット記録方法によれば、吐出性、記録媒体への初期定着性、定着強度及び高温での画像保存性をより向上させることができる。
本発明のインクジェット記録方法は、着色剤及びポリエステル系樹脂粒子(A)を含有する水系インクをインクジェット記録方式で難吸収性媒体に付着させるインクジェット記録方法であって、ポリエステル系樹脂粒子(A)を構成するポリエステル系樹脂が、炭素数8〜14のα,ω−脂肪族ジオールを70モル%以上含むアルコール成分と炭素数2〜4のジカルボン酸を70モル%以上含むカルボン酸成分を縮重合させて得られる結晶性ポリエステル部分を含有し、100℃での損失弾性率(G’’100)が5×101〜1×107Paであり、140℃における損失弾性率に対する100℃における損失弾性率の比(G’’100/G’’140)が1〜15である、インクジェット記録方法である。
なお、水性インクの詳細は、前述したとおりであるため、省略する。
本発明における難吸収性媒体とは、100m秒の吸水量が、0g/m2以上10g/m2以下である記録媒体であり、コート紙及びフィルムが挙げられる。
本発明のインクジェット記録用水系インクの製造方法は、下記工程(1)〜(3)を含むものである。
工程(1):非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有する結晶性ポリエステル樹脂(a1)を調製し、該ポリエステル樹脂(a1)を水性媒体と混合して、ポリエステル樹脂(a1)の水性分散液を得る工程
工程(2):工程(1)で得られたポリエステル樹脂(a1)の水性分散液に、付加重合性モノマー(a2)を添加し、重合してグラフトポリマーを得ることにより、ポリエステル系樹脂粒子(A)の水性分散液を得る工程
工程(3):工程(2)で得られたポリエステル系樹脂粒子(A)の水性分散液と、着色剤を含有する水性分散液とを混合し、インクジェット記録用水系インクを得る工程
工程(1)及び工程(2)は、前述したとおりである。
工程(3)では、工程(2)で得られたポリエステル系樹脂粒子(A)の水性分散液と、着色剤を含有する水性分散液と、必要に応じて前述した任意成分とを混合する。次に、工程(3)の好適例を説明する。
先ず、イオン交換水等の水と、必要に応じて任意成分である有機溶剤及び各種添加剤の少なくとも1種とを混合し、必要に応じて撹拌して、混合溶液を得る。
次いで、この混合溶液を、着色剤を含有する水性分散液に混合し、更に工程(2)で得られたポリエステル系樹脂粒子(A)の水性分散液を滴下しながら撹拌混合し、その後、必要に応じてフィルター等で濾過することにより、水系インクを好適に得ることができる。
<3>前記ポリエステル系樹脂粒子(A)の体積中位粒径が、0.020μm以上であり、好ましくは0.050μm以上であり、より好ましくは0.070μm以上であり、更に好ましくは0.100μm以上であり、より更に好ましくは0.120μm以上であり、また、0.250μm以下であり、好ましくは0.230μm以下であり、より好ましくは0.200μm以下であり、更に好ましくは0.180μm以下であり、また、好ましくは0.020〜0.250μmであり、より好ましくは0.050〜0.230μmであり、更に好ましくは0.070〜0.200μmであり、更に好ましくは0.100〜0.180μmであり、更に好ましくは0.120〜0.180μmである<1>又は<2>に記載のインクジェット記録用水系インク。
<4>前記樹脂粒子(A)を構成するポリエステル系樹脂の100℃での損失弾性率(G’’)は、600〜1,000,000Paであり、好ましくは3,000〜500,000Paであり、より好ましくは5,000〜300,000Paである、<1>〜<3>のいずれかに記載のインクジェット記録用水系インク。
<5>前記樹脂粒子(A)を構成するポリエステル系樹脂の、140℃における損失弾性率に対する100℃における損失弾性率の比(G’’100/G’’140)は、1〜15、好ましくは1.3〜10、より好ましくは1.5〜8、更に好ましくは1.5〜6、より更に好ましくは1.5〜5である、<1>〜<4>のいずれかに記載のインクジェット記録用水系インク。
<7>前記ポリエステル系樹脂粒子(A)を、1〜15質量%、好ましくは2〜10質量%、より好ましくは3〜7質量%含有する、<1>〜<6>のいずれかに記載のインクジェット記録用水系インク。
<8>水系インクに含まれる水の含有量は、水系インク中で、30〜60質量%であり、好ましくは35〜55質量%、より好ましくは35〜50質量%、より好ましくは40〜50質量%、更に好ましくは40〜45質量%である、<1>〜<7>のいずれかに記載のインクジェット記録用水系インク。
<9>ポリエステル系樹脂粒子(A)に対する着色剤の質量比〔着色剤/ポリエステル系樹脂粒子(A)〕は、好ましくは20/80〜80/20、より好ましくは30/70〜60/40、更に好ましくは40/60〜50/50であり、より更に好ましくは40/60〜48/52である、<1>〜<8>のいずれかに記載のインクジェット記録用水系インク。
<10>結晶性ポリエステル部分のアルコール成分である炭素数8〜14のα,ω−脂肪族ジオールは、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール及び1,14−テトラデカンジオールの少なくとも1種であり、好ましくは1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール及び1,12−ドデカンジオーの少なくとも1種であり、より好ましくは1,10−デカンジオール及び1,12−ドデカンジオールの少なくとも1種である、<1>〜<9>のいずれかに記載のインクジェット記録用水系インク。
<12>前記ポリエステル系樹脂が、結晶性ポリエステル樹脂からなる主鎖セグメント(A1)及び付加重合系樹脂からなる側鎖セグメント(A2)からなるグラフトポリマーである、<1>〜<11>のいずれかに記載のインクジェット記録用水系インク。
<13>前記セグメント(A1)と前記セグメント(A2)との質量比[セグメント(A1)/セグメント(A2)]が、好ましくは70/30以上、より好ましくは80/20以上、更に好ましくは85/15以上であり、また、好ましくは95/5以下であり、より好ましくは85/15以下であり、また、好ましくは60/40〜95/5、より好ましくは70/30〜95/5、更に好ましくは80/20〜95/5であり、更に好ましくは85/15〜95/5である、<12>に記載のインクジェット記録用水系インク。
<15>セグメント(A1)において、アルコール成分の水酸基とカルボン酸成分のカルボキシ基とのモル比(水酸基/カルボキシ基)は、好ましくは100/90〜100/120であり、より好ましくは100/95〜100/110、更に好ましくは100/100〜100/105である、<12>〜<14>のいずれかに記載のインクジェット記録用水系インク。
<16>セグメント(A1)において、カルボン酸成分中、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するカルボン酸の含有量は、好ましくは10モル%以上、より好ましくは50モル%以上、更に好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上であり、好ましくは10〜100モル%、より好ましくは50〜100モル%、更に好ましくは70〜100モル%、更に好ましくは80〜100モル%、更に好ましくは90〜100モル%である、<12>〜<15>のいずれかに記載のインクジェット記録用水系インク。
<17>セグメント(A2)は、付加重合性モノマー(a2)に由来する構成単位からなる付加重合系樹脂からなるセグメントであり、付加重合性モノマー(a2)は、スチレン、メチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、スチレンスルホン酸又はその塩からなるスチレン類、(メタ)アクリル酸アルキル(炭素数1〜18)、(メタ)アクリル酸ベンジル、及び(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルからなる(メタ)アクリル酸エステル、エチレン、プロピレン、及びブタジエンからなるオレフィン類、塩化ビニル等のハロビニル類、酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニルからなるビニルエステル類、ビニルメチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニリデンクロリド等のハロゲン化ビニリデン、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物、からなる1種又は2種以上であり、これらの中で、好ましくはスチレン類及び(メタ)アクリル酸エステルの1種又は2種より好ましくは2種である、<12>〜<16>のいずれかに記載のインクジェット記録用水系インク。
<18>付加重合性モノマー(a2)は芳香族基を有する付加重合性モノマーを含み、前記芳香族基を有する付加重合性モノマーは、スチレン、メチルスチレン、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジルメタクリレート、及びベンジルアクリレートの1種又は2種以上であり、これらの中でも、好ましくはスチレン及びフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレートの1種又は2種であり、より好ましくはスチレンである、<17>に記載のインクジェット記録用水系インク。
<20>前記(メタ)アクリル酸エステルは、炭素数1〜22、好ましくは炭素数6〜18のアルキル基を有するものであり、好ましくはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、(イソ)アミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ドデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート、及びラウリルアクリレートの少なくとも1種であり、より好ましくは2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート及び(イソ)ステアリル(メタ)アクリレートの1種又は2種であり、更に好ましくは2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートである、<17>〜<19>のいずれかに記載のインクジェット記録用水系インク。
<21>前記(メタ)アクリル酸エステルは、炭素数1〜22、好ましくは炭素数6〜18のアルキル基を有するものであり、好ましくはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、(イソ)アミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ドデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート、及びラウリルアクリレートの少なくとも1種であり、より好ましくは2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート及び(イソ)ステアリル(メタ)アクリレートの1種又は2種であり、更に好ましくは2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートである、<17>〜<20>のいずれかに記載のインクジェット記録用水系インク。
<22>(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位は、好ましくはスチレンと併用され、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の含有量は、セグメント(A2)中、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは35質量%以上であり、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、更に好ましくは49質量%以下である、<17>〜<21>のいずれかに記載のインクジェット記録用水系インク。
<23>前記セグメント(A2)が、スチレンを由来とする構成単位を40〜100質量%含む、<12>〜<22>のいずれかに記載のインクジェット記録用水系インク。
<25>前記セグメント(A1)は、アルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して得られる、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有する結晶性ポリエステル樹脂(a1)を含んでおり、樹脂(a1)の軟化点は、好ましくは70〜150℃、より好ましくは80〜120℃、更に好ましくは85〜110℃、より更に好ましくは85〜105℃である、<11>〜<24>のいずれかに記載のインクジェット記録用水系インク。
<26>樹脂(a1)の融点(Tm1)は、好ましくは50〜100℃、より好ましくは70〜100℃、更に好ましくは80〜95℃、より更に好ましくは85〜95℃である、<25>に記載のインクジェット記録用水系インク。
<27>樹脂(a1)の酸価は、5〜40mgKOH/gであり、好ましくは8〜25mgKOH/g、より好ましくは10〜20mgKOH/gであり、更に好ましくは10〜15mgKOH/gである、<25>又は<26>に記載のインクジェット記録用水系インク。
<28>樹脂(a1)の数平均分子量は、好ましくは1,000〜10,000、より好ましくは2,000〜10,000であり、更に好ましくは5,000〜9,000であり、より更に好ましくは7,000〜9,000である、<25>〜<27>のいずれかに記載のインクジェット記録用水系インク。
<30>樹脂(a1)の140℃における損失弾性率に対する100℃における損失弾性率の比(G’’100/G’’140)は、1〜20であり、好ましくは1.5〜10であり、より好ましくは2〜8であり、更に好ましくは2.5〜6である、<25>〜<29>のいずれかに記載のインクジェット記録用水系インク。
<31>着色剤及びポリエステル系樹脂粒子(A)を含有する水系インクをインクジェット記録方式で難吸収性媒体に付着させるインクジェット記録方法であって、ポリエステル系樹脂粒子(A)を構成するポリエステル系樹脂が、炭素数8〜14のα,ω−脂肪族ジオールを70モル%以上含むアルコール成分と炭素数2〜4のジカルボン酸を10モル%以上含むカルボン酸成分を縮重合させて得られる結晶性ポリエステル部分を含有し、100℃での損失弾性率(G’’100)が5×101〜1×107Paであり、140℃における損失弾性率に対する100℃における損失弾性率の比(G’’100/G’’140)が1〜15である、インクジェット記録方法。
<32>下記工程(1)〜(3)を含む、<1>〜<30>のいずれかに記載のインクジェット記録用水系インクの製造方法。
工程(1):非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有する結晶性ポリエステル樹脂(a1)を調製し、該結晶性ポリエステル樹脂(a1)を水性媒体と混合して、結晶性ポリエステル樹脂(a1)の水性分散液を得る工程
工程(2):工程(1)で得られた結晶性ポリエステル樹脂(a1)の水性分散液に、付加重合性モノマー(a2)を添加し、重合してグラフトポリマーを得ることにより、ポリエステル系樹脂粒子(A)の水性分散液を得る工程
工程(3):工程(2)で得られたポリエステル系樹脂粒子(A)の水性分散液と、着色剤を含有する水性分散液とを混合し、インクジェット記録用水系インクを得る工程
<33>工程(1)において、ポリエステル樹脂(a1)をケトン系溶媒に溶解させ、中和剤を加えてポリエステル樹脂(a1)のカルボキシ基をイオン化し、次いで水を加えて水系に転相し、好ましくは水を加えた後にケトン系溶媒を留去して水系に転相する、<32>に記載のインクジェット記録用水系インクの製造方法。
<35>工程(2)において、重合温度は、好ましくは60〜100℃、より好ましくは70〜90℃であり、反応時間は、好ましくは1〜10時間であり、より好ましくは3〜8時間であり、更に好ましくは5〜7時間である、<32>〜<34>のいずれかに記載のインクジェット記録用水系インクの製造方法。
<36><32>〜<35>のいずれかに記載の製造方法によって得られたインクジェット記録用水系インク。
測定溶媒を、エタノールとエーテルとの混合溶媒から、アセトンとトルエンとの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更したこと以外は、JIS K0070に従って測定した。
フローテスター「CFT−500D」(株式会社島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出した。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とした。
樹脂粒子(A)を構成する樹脂の場合、各水性分散液を、凍結乾燥機(東京理化器械株式会社製、商品名:FDU−2100)を用いて−10℃で9時間凍結乾燥させ、融点測定用の試料を作製した。
示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、商品名:「Q−100」)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却し、測定用サンプルを調製した。その後、昇温速度10℃/minで昇温し、吸熱の最大ピーク温度を融点とし、吸熱の最大ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とした。また、軟化点(℃))/(吸熱の最大ピーク温度(℃))により、結晶性指数を求めた。
以下の方法により、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより分子量分布を測定し、数平均分子量を算出した。
(1)試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mlになるように、樹脂をクロロホルムに溶解させた。次いで、この溶液をポアサイズ2μmのフッ素樹脂フィルター(住友電気工業株式会社製、商品名:FP−200)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とした。
(2)分子量測定
溶解液としてテトラヒドロフランを毎分1mlの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させた。そこに試料溶液100μlを注入して測定を行った。試料の数平均分子量は、あらかじめ作製した検量線に基づき算出した。検量線は、数種類の単分散ポリスチレン(東ソー株式会社製の単分散ポリスチレン;2.63×103、2.06×104、1.02×105(重量平均分子量)、ジーエルサイエンス株式会社製の単分散ポリスチレン;2.10×103、7.00×103、5.04×104(重量平均分子量))を標準試料として用いて作成した。
測定装置:CO−8010(東ソー株式会社製)
分析カラム:GMHXL+G3000HXL(東ソー株式会社製)
動的光散乱型粒径測定機「ZETASIZER NANO ZS」(マルバーン社製)を用いて、以下の条件で体積中位粒径(D50)を測定した。
固形分濃度:0.1質量%
測定温度:25℃
媒質:水
測定用セル:Glass Cuvette
レーザー仕様:He−Ne、4mW,633nm
検出光学系:NIBS、173℃
測定回数:10回
等温化時間:5分
解析ソフト:Zeta Sizer Software 6.2
解析方法:General Purpose Mode(キュムラント法)
樹脂粒子(A)を構成する樹脂の場合、各水性分散液を、凍結乾燥機「FDU−2100」(東京理化器械株式会社製)を用いて−10℃で9時間凍結乾燥させ、損失弾性率測定用の試料を作製した。
粘弾性測定装置(レオメーター)「ARES」(TAインスツルメント社製)を用いて測定した。直径25mmのパラレルプレートを140℃に加熱し放置して、試料1gを140℃でパラレルプレートにのせ上下のプレートで挟んだ後、90℃まで5℃/分で降温した。90℃にて5分間ホールドした後、2℃/分で150℃まで昇温して測定し、100℃及び140℃での損失弾性率(G’’)を得た。測定条件は、Strain:0.05%、周波数:6.28rad/秒、Auto strainとした。
赤外線水分計「FD−230」(株式会社ケツト科学研究所製)を用いて、水性分散液5gを乾燥温度150℃、測定モード96(監視時間2.5分/変動幅0.05%)の条件にて乾燥させ、水性分散液の水分(質量%)を測定した。固形分濃度は下記の式に従って算出した。
固形分濃度(質量%)=100−M
M:水性分散液の水分(質量%)=[(W−W0)/W]×100
W:測定前の試料質量(初期試料質量)
W0:測定後の試料質量(絶対乾燥質量)
N,N−ジメチルホルムアミドに、リン酸及びリチウムブロマイドをそれぞれ60mmol/Lと50mmol/Lの濃度となるように溶解した液を溶離液として、ゲル浸透クロマトグラフィー法〔GPC装置「HLC−8120GPC」(東ソー株式会社製)カラム「TSK−GEL、α−M」2本(東ソー株式会社製)、流速:1mL/min〕により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定した。
30mLの軟膏容器にデシケーター中で恒量化した硫酸ナトリウム10.0gを量り取り、そこへサンプル約1.0gを添加して、混合させた後、正確に秤量し、105℃で2時間維持して、揮発分を除去し、更にデシケーター内で更に15分間放置し、質量を測定した。揮発分除去後のサンプルの質量を固形分として、添加したサンプルの質量で除して固形分濃度とした。
レーザー粒子解析システム「ELS−8000」(大塚電子株式会社、キュムラント解析)を用いて測定した。測定する粒子の濃度を、約5×10-3質量%になるよう水で希釈した分散液を用いた。測定条件は、温度25℃、入射光と検出器との角度90°、積算回数100回であり、分散溶媒の屈折率として水の屈折率(1.333)を入力した。
自動走査吸液計(熊谷理機工業株式会社製、KM500win)を用いて、23℃、相対湿度50%の条件下にて、純水の接触時間100msにおける転移量を測定し、100m秒の吸水量とした。
インクをシリコンチューブを介して、インクジェットプリンター「IPSiO GX 5000」(株式会社リコー製)のシアンヘッド上部のインク注入口に充填した。
フォトショップ(アドビ社製)によりベタ印字の印刷パターン(横204mm×縦275mmの大きさ)を作成し、吐出量が14±2g/m2となるようにOHPシート「VF−10」(コクヨ株式会社製)に印刷し、基準となる印刷物を得た。気温20℃、相対湿度35%の環境下でインクジェットプリンターノズル部分を2時間にわたり大気暴露させ、その後、フォトショップによりベタ印字の印刷パターン(横204mm×縦275mmの大きさ)を作成し、OHPシート「VF−10」(コクヨ株式会社製)に印刷した。基準となる印刷物と大気暴露後の印刷物の液体組成物の塗布状態を比較して吐出性を評価した。具体的には、基準となる印刷物と比較して得られた画像を2値化処理して塗布不良領域を得、印刷領域中における塗布不良領域の面積割合(%)を算出した。値が小さいほど吐出性に優れる。
インクをシリコンチューブを介して、インクジェットプリンター「IPSiO GX 5000」(株式会社リコー製)のシアンヘッド上部のインク注入口に充填した。
フォトショップ(アドビ社製)によりベタ印字の印刷パターン(横204mm×縦275mmの大きさ)を作成し、吐出量が14±2g/m2となるようにコート紙「OKトップコートプラス」(王子製紙株式会社製、坪量104.7g/m2、100m秒での吸水量は4.9g/m2)に印刷し、気温25℃、相対湿度50%で5分間乾燥後、セルロース製不織布「ベンコットM3−II」(旭化成せんい株式会社製)に2kg荷重をかけて5往復擦った。擦る前後のベンコット表面の画像濃度を反射濃度計「RD−915」(グレタグマクベス社製)を用いて測定した。擦る前後の画像濃度差を算出し、当該算出値を用いて初期定着性を評価した。値が小さいほど初期定着性に優れる。
インクをシリコンチューブを介して、インクジェットプリンター「IPSiO GX 5000」(株式会社リコー製)のシアンヘッド上部のインク注入口に充填した。
フォトショップ(アドビ社製)によりベタ印字の印刷パターン(横204mm×縦275mmの大きさ)を作成し、吐出量が14±2g/m2となるようにOHPシート「VF−10」(コクヨ株式会社製)に印刷し、気温25℃、相対湿度50%で60分間乾燥後、セルロース製不織布「ベンコットM3−II」(旭化成せんい株式会社製)に2kg荷重をかけて5往復擦った。擦る前後のベンコット表面の画像濃度を反射濃度計「RD−915」(グレタグマクベス社製)を用いて測定した。擦る前後の画像濃度差を算出し、当該算出値を用いて乾燥後定着性を評価した。値が小さいほど乾燥後定着性に優れる。
(結晶性ポリエステル樹脂P1〜10の製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌装置及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに、表1に示した原料モノマー及びターシャリブチルカテコール5gを仕込んで140℃まで昇温し、4時間反応させた。その後200℃まで10時間かけて反応させ、8.3kPaにて30分反応させた。大気圧に戻した後、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート30g及び没食子酸1水和物3gを加え常圧で30分反応させた後、8.3kPaで表1記載の数平均分子量に達するまで反応させて、ポリエステル樹脂P1〜10を得た。
得られたポリエステル樹脂の物性等を表1に示す。
(結晶性ポリエステル樹脂を含む水性分散液Em1−1〜10−1の製造)
2000mLのSUS304製セパラブルフラスコ中に攪拌条件下、表2に示すポリエステル樹脂200g、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(東京化成(株)製、)6g、メチルエチルケトン200gとを混合し、70℃にて溶解させた。48%水酸化ナトリウム1.58gを加え中和した。その後、イオン交換水467gを加え混合した。更に、メチルエチルケトンを減圧留去した。その後、イオン交換水にて固形分30質量%に調整し、ポリエステル樹脂を含む水性分散液を得た。体積中位粒径の測定結果を表2に示す。
(ポリエステル系樹脂粒子を含む水性分散液G1〜G16の製造)
窒素導入管、還流冷却管、滴下ロート、撹拌器及び熱電対を装備した内容積2リットルの四つ口フラスコに、セグメント(A1)として表3に示す種類及び量のポリエステル樹脂を含む水性分散液、セグメント(A2)を形成するためのモノマーとして表3に示す量の付加重合性モノマーであるスチレン、アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)及びメタクリル酸ステアリル(SMA)を仕込み、30分間撹拌を行った。次に、窒素気流下、表3に示す量の過硫酸ナトリウムを加え、80℃で6時間反応させた。その後、減圧して残留した付加重合性モノマーを水とともに取り除いた。室温まで冷却し、200メッシュの金網で濾過し、イオン交換水にて固形分30質量%に調整し、ポリエステル系樹脂粒子を含む水性分散液を得た。
ただし、製造例21、31及び34では、ポリエステル樹脂を含む水性分散液Em1−1、Em3−1及びEm8−1を、そのままポリエステル系樹脂粒子を含む水性分散液G1、G11及びG14として用いた。
得られた水性分散液の物性等を表3に示す。
(1)水不溶性ポリマー(アニオン性ポリマー)の合成
ベンジルメタクリレート399部(和光純薬工業株式会社製)、メタクリル酸91部(和光純薬工業株式会社製)、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート「M−230G」(新中村化学工業株式会社製、オキシエチレン基の平均付加モル数23)140部、スチレンマクロマー「AS−6S」(東亞合成株式会社製、固形分50%)140部を混合し、モノマー混合液770部を調製した。反応容器内に、メチルエチルケトン15.75部及び重合連鎖移動剤(2−メルカプトエタノール)0.350部、前記モノマー混合液の10%(77部)を入れて混合し、窒素ガス置換を行った。
一方、滴下ロートに、モノマー混合液の80%(616部)と前記重合連鎖移動剤2.45部とメチルエチルケトン173.25部及び重合開始剤「V−65」(和光純薬工業株式会社製、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル))5.6部を混合したものを入れ、窒素雰囲気下、反応容器内の混合溶液を撹拌しながら75℃まで昇温し、滴下ロート中の混合溶液を4.5時間かけて滴下した。その後、モノマー混合液の残り10%(77部)と前記重合連鎖移動剤0.7部とメチルエチルケトン126部および前記重合開始剤1.4部を混合したものを2段目滴下として75℃、1.7時間かけて滴下した。滴下終了後、前記開始剤2.1部を混合し80℃まで昇温し、1.5時間撹拌した。この開始剤の混合、昇温及び撹拌操作をさら2回行なうことでポリマー溶液(ポリマーの重量平均分子量:2.6万)を得た。
上記(1)で得られたポリマー溶液を減圧乾燥させて得られたポリマー20部をメチルエチルケトン62.8部に溶かし、その中に中和剤5N水酸化ナトリウム水溶液5.01部と25%アンモニア水1.13部、及びイオン交換水236.5部を加え、10〜15℃でディスパー翼を用いて2000rpmで15分間撹拌混合を行なった。続いてマゼンタ顔料としてPV19「Inkjet Magenta E5B02」(クラリアント社製)45部およびPR122「6111T」(大日精化工業株式会社製)25部を加え、10〜15℃でディスパー翼を用いて7000rpmで3時間撹拌混合した。得られた分散液を200メッシュ濾過し、マイクロフルイダイザー「M−110K」(Microfluidics社製、高圧ホモジナイザー)を用いて、150MPaの圧力で20パス分散処理した。
得られた分散液を、減圧下60℃でメチルエチルケトンを除去し、更に一部の水を除去し、遠心分離し、液層部分を前記孔径5μmのフィルター(Sartorius Stedim Biotech社製)で濾過して粗大粒子を除いた。さらにこの分散液80部にグリセリン(花王株式会社製)5.0部、1,2−ベンゾイソチアゾールー3(2h)−オン「プロキセルXL2」(アビシア株式会社製)0.2部、イオン交換水14.8部を混合し、70℃で1時間の滅菌処理を行なったのち、室温まで冷却、前記孔径5μmのフィルターで濾過することで、顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子(アニオン性ポリマー粒子)の水分散体〔固形分濃度20%、平均粒径133nm〕を得た。
グリセリン(花王株式会社製)8.67部、ジエチレングリコール(和光純薬工業株式会社製)15.0部、サーフィノール104PG50(日信化学工業株式会社製、商品名、有効成分:アセチレングリコール、濡れ剤)1.50部、エマルゲン120(花王株式会社製、商品名、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、乳化剤)1.50部及びイオン交換水29.96部を混合し、マグネチックスターラーで室温で15分間撹拌して、混合溶液を得た。
次に製造例28で得られた顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子の水分散体26.67部(水系インク100部中顔料分換算4.0部)をマグネチック・スターラーで撹拌しながら、前記混合溶液を混合し、さらに表4に示すポリエステル系樹脂粒子を含む水性分散液16.7部(水系インク100部中固形分換算5.0部)をスポイトで滴下しながら撹拌混合した。最後に前記孔径1.2μmのフィルターで濾過し、水系インクを得た。得られた水系インクの評価結果を表4に示す。
実施例2〜15及び比較例1〜2及び4〜6においては、ポリエステル系樹脂粒子を含む水性分散液の種類及び添加量を表4に示すとおりとしたこと以外は実施例1と同様の操作をい、水系インクを得た。
また、比較例3においては、ポリエステル系樹脂粒子を含む水性分散液を滴下しなかったこと以外は実施例1と同様の操作を行い、水系インクを得た。
得られた水系インクの評価結果を表4に示す。
Claims (10)
- 着色剤及びポリエステル系樹脂粒子(A)を含有する水系インクであって、
ポリエステル系樹脂粒子(A)を構成するポリエステル系樹脂が、炭素数8〜14のα,ω−脂肪族ジオールを70モル%以上含むアルコール成分と炭素数2〜4のジカルボン酸を10モル%以上含むカルボン酸成分を縮重合させて得られる結晶性ポリエステル部分を含有し、100℃での損失弾性率(G’’100)が5×101〜1×107Paであり、140℃における損失弾性率に対する100℃における損失弾性率の比(G’’100/G’’140)が1〜15である、インクジェット記録用水系インク。 - 前記ポリエステル系樹脂の融点が50〜100℃である、請求項1に記載のインクジェット記録用水系インク。
- 前記ポリエステル系樹脂粒子(A)の体積中位粒径が0.02〜0.25μmである、請求項1又は2に記載のインクジェット記録用水系インク。
- 前記ポリエステル系樹脂粒子(A)を1〜15質量%含有する、請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット記録用水系インク。
- 前記ポリエステル系樹脂が、結晶性ポリエステル樹脂からなる主鎖セグメント(A1)及び付加重合系樹脂からなる側鎖セグメント(A2)からなるグラフトポリマーである、請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェット記録用水系インク。
- 前記セグメント(A1)と前記セグメント(A2)との質量比[セグメント(A1)/セグメント(A2)]が60/40〜95/5である、請求項5に記載のインクジェット記録用水系インク。
- 前記セグメント(A2)が、スチレンを由来とする構成単位を40〜100質量%含む、請求項5又は6に記載のインクジェット記録用水系インク。
- 前記炭素数2〜4のジカルボン酸が、フマル酸及びマレイン酸の少なくとも1種である、請求項1〜7のいずれかに記載のインクジェット記録用水系インク。
- 着色剤及びポリエステル系樹脂粒子(A)を含有する水系インクをインクジェット記録方式で難吸収性媒体に付着させるインクジェット記録方法であって、
ポリエステル系樹脂粒子(A)を構成するポリエステル系樹脂が、炭素数8〜14のα,ω−脂肪族ジオールを70モル%以上含むアルコール成分と炭素数2〜4のジカルボン酸を10モル%以上含むカルボン酸成分を縮重合させて得られる結晶性ポリエステル部分を含有し、100℃での損失弾性率(G’’100)が5×101〜1×107Paであり、140℃における損失弾性率に対する100℃における損失弾性率の比(G’’100/G’’140)が1〜15である、インクジェット記録方法。 - 下記工程(1)〜(3)を含む、請求項1〜8のいずれかに記載のインクジェット記録用水系インクの製造方法。
工程(1):非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有する結晶性ポリエステル樹脂(a1)を調製し、該結晶性ポリエステル樹脂(a1)を水性媒体と混合して、結晶性ポリエステル樹脂(a1)の水性分散液を得る工程
工程(2):工程(1)で得られた結晶性ポリエステル樹脂(a1)の水性分散液に、付加重合性モノマー(a2)を添加し、重合してグラフトポリマーを得ることにより、ポリエステル系樹脂粒子(A)の水性分散液を得る工程
工程(3):工程(2)で得られたポリエステル系樹脂粒子(A)の水性分散液と、着色剤を含有する水性分散液とを混合し、インクジェット記録用水系インクを得る工程
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