JP6586660B2 - 水系インク - Google Patents
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Description
特許文献2には、吐出性、記録媒体への定着性及び高温での画像保存性に優れるインクジェット記録用水系インクを提供することを目的として、着色剤及びポリエステル系樹脂粒子を含有する水系インクであって、ポリエステル系樹脂粒子を構成するポリエステル系樹脂が、ポリエステル樹脂からなる主鎖セグメント及び付加重合系樹脂からなる側鎖セグメントからなるグラフトポリマーであり、前記ポリエステル系樹脂粒子の体積中位粒径が特定の範囲にあるインクジェット記録用水系インクが開示されている。
〔1〕着色剤及び樹脂粒子を含有する水系インクであって、
前記樹脂粒子が、ポリエステル樹脂とイソシアネート化合物との反応物を含有し、
該ポリエステル樹脂の酸価が5mgKOH/g以上18mgKOH/g以下であり、
前記樹脂粒子のガラス転移温度が75℃以上である、水系インク。
〔2〕工程1:アルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合させてポリエステル樹脂を得る工程、
工程2:工程1で得られたポリエステル樹脂とイソシアネート化合物とを反応させて、ウレタン変性ポリエステル樹脂を得る工程、
工程3:工程2で得られたウレタン変性ポリエステル樹脂を水性媒体へ分散し、樹脂粒子の水性分散液を得る工程、及び
工程4:工程3で得られた樹脂粒子の水性分散液と、着色剤とを混合し、水系インクを得る工程
を有する水系インクの製造方法であって、工程1で得られたポリエステル樹脂の酸価が5mgKOH/g以上18mgKOH/g以下であり、樹脂粒子のガラス転移温度が75℃以上である、水系インクの製造方法。
〔3〕前記〔1〕に記載の水系インクをインクジェット記録方式で樹脂製記録媒体に付着させた後、該水系インクが付着した樹脂製記録媒体を40℃以上100℃以下に加熱する、インクジェット記録方法。
本発明の水系インクは、着色剤及び樹脂粒子を含有する。印刷時にインクが樹脂製記録媒体上に付着すると、樹脂粒子に含まれるウレタン変性ポリエステル樹脂が樹脂製記録媒体の印刷面上に拡散し、着色剤の定着助剤として作用する。ここで、ウレタン変性ポリエステル樹脂は、極性の高いエステル結合及びウレタン結合を有し、かつ、線形で高分子量化していることから、樹脂の凝集力が高まる。そのため、本発明の水系インクは、樹脂製記録媒体の中でも比較的極性の高いPET及びPVCフィルムに対して、密着性が増すものと考えられる。また、比較的低酸価のポリエステル樹脂を使用することにより、インク中での樹脂粒子の可塑化を抑制でき、その結果としてインク濃縮時の不要な凝集を抑制できる。そのため、フィルム上に形成される樹脂皮膜は、平滑性が高くなり、印刷画像の光沢性が向上するものと考えられる。さらに、樹脂粒子のガラス転移温度を高くすることにより、フィルム上に形成される樹脂皮膜が強固なものとなり、印刷画像の耐熱性が向上するものと考えられる。
なお、本明細書において、ポリエステル系樹脂をイソシアネート化合物で鎖伸長反応させた樹脂を「ウレタン変性ポリエステル樹脂」ともいう。また、「水系インク」を単に「インク」ということがある。本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」又は「メタクリル酸」を意味し、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」又は「メタクリレート」を意味する。また、(イソ又はtert−)及び(イソ)の表記は、これらの基が存在している場合とそうでない場合の双方を意味し、これらの基が存在していない場合には、ノルマルであることを意味する。
本明細書において、好ましいとされている規定は任意に採用することができ、好ましいもの同士の組合せはより好ましい。
本発明における樹脂粒子は、PET及びPVCフィルムへの密着性、並びに形成した画像の光沢性及び耐熱性に優れた水系インクを得る観点から、ポリエステル樹脂とイソシアネート化合物との反応物を含有する。樹脂粒子中、ポリエステル樹脂とイソシアネート化合物との反応物の含有量は、同様の観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは98質量%以上、より更に好ましくは100質量%である。
樹脂粒子は、樹脂粒子の水性分散液の形態で取り扱うことが水系インクの製造上の観点から好ましい。
樹脂粒子のガラス転移温度は、形成した画像の耐熱性に優れた水系インクを得る観点から、好ましくは80℃以上、より好ましくは85℃以上であり、そして、PET及びPVCフィルムへの密着性に優れた水系インクを得る観点から、好ましくは105℃以下、より好ましくは100℃以下、更に好ましくは95℃以下である。
ポリエステル樹脂は、アルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合して得られる、すなわちアルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物であるポリエステルである。ポリエステル樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
アルコール成分としては、ジオール、3価以上の多価アルコール等が挙げられ、好ましくはジオールである。ジオールとしては、主鎖炭素数2以上12以下の脂肪族ジオール、芳香族ジオール、及び脂環式ジオールが挙げられる。
x及びyは、アルキレンオキシドの付加モル数に相当する。更に、カルボン酸成分との反応性の観点から、xとyの和の平均値は、好ましくは2以上であり、そして、好ましくは7以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは3以下である。
また、x個のOR1とy個のR2Oは、各々同一であっても異なっていてもよいが、PET及びPVCフィルムへの密着性、並びに形成した画像の光沢性及び耐熱性に優れた水系インクを得る観点から、同一であることが好ましい。
カルボン酸成分としては、ジカルボン酸、3価以上の多価カルボン酸が挙げられる。中でも、優れた密着性を得る観点から、カルボン酸成分は、好ましくはジカルボン酸を含み、より好ましくはジカルボン酸からなる。ジカルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、及び脂環式ジカルボン酸が挙げられる。
なお、本明細書においては、カルボン酸成分には、遊離酸だけでなく、反応中に分解して酸を生成する無水物、及び各カルボン酸の炭素数1以上3以下のアルキルエステルも含まれる。
ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、PET及びPVCフィルムへの密着性、並びに形成した画像の光沢性及び耐熱性に優れた水系インクを得る観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは70℃以上であり、そして、好ましくは95℃以下、より好ましくは90℃以下、更に好ましくは85℃以下である。
ポリエステル樹脂の酸価は、水性媒体中での樹脂粒子の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは6mgKOH/g以上、より好ましくは6.5mgKOH/g以上、更に好ましくは7mgKOH/g以上であり、そして、形成した画像の光沢性を向上させる観点から、好ましくは15mgKOH/g以下、より好ましくは12mgKOH/g以下、更に好ましくは10mgKOH/g以下である。
ポリエステル樹脂は、アルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合反応させることによって製造することができる。例えば、前記アルコール成分と前記カルボン酸成分とを不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じてエステル化触媒、エステル化助触媒及びラジカル重合禁止剤を用いて、120℃以上250℃以下の温度で重縮合することにより製造することができる。
エステル化触媒の使用量に制限はないが、アルコール成分とカルボン酸成分との総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上であり、そして、好ましくは1.5質量部以下、より好ましくは1.0質量部以下である。
エステル化助触媒の使用量は、反応性の観点から、アルコール成分とカルボン酸成分との総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.2質量部以下である。
イソシアネート化合物としては、ジイソシアネート、多価イソシアネート、並びにそれらのプレポリマー型、イソシアヌレート型、ウレア型、カルボジイミド型変性体等が挙げられる。中でも、優れた密着性を得る観点から、イソシアネート化合物は、好ましくはジイソシアネートを含み、より好ましくはジイソシアネートからなる。ジイソシアネートとしては、脂肪族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
樹脂粒子に含まれるポリエステル樹脂とイソシアネート化合物との反応物であるウレタン変性ポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂の水酸基とイソシアネート化合物のイソシアネート基とが反応して得られる。
ポリエステル樹脂の水酸基とイソシアネート化合物のイソシアネート基とのモル比率(OH/NCO)は、PET及びPVCフィルムへの密着性、並びに形成した画像の光沢性及び耐熱性を向上させる観点から、好ましくは1.0以下、より好ましくは1.0未満であり、そして、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.7以上である。
後述するように、本発明における樹脂粒子のガラス転移温度は、PET及びPVCフィルムへの密着性、並びに形成した画像の耐熱性に優れた水系インクを得る観点から、75℃以上である。そのため、樹脂粒子が実質的にウレタン変性ポリエステル樹脂からなる場合には、ウレタン変性ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、好ましくは75℃以上、より好ましくは80℃以上、更に好ましくは85℃以上であり、そして、好ましくは105℃以下、より好ましくは100℃以下、更に好ましくは95℃以下である。
ただし、後述するように、ウレタン変性ポリエステル樹脂を付加重合性モノマーと反応させて複合樹脂にすることで、樹脂のガラス転移温度を調整することができる。そのため、樹脂粒子が実質的に複合樹脂からなる場合には、ウレタン変性ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、更に好ましくは80℃以上であり、そして、好ましくは105℃以下、より好ましくは100℃以下、更に好ましくは95℃以下である。
ウレタン変性ポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂とイソシアネート化合物とを反応させることによって製造することができる。例えば、ポリエステル樹脂とイソシアネート化合物を不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じてウレタン化触媒を用いて反応させることにより製造することができる。
ウレタン化触媒の使用量に制限はないが、ポリエステル樹脂とイソシアネート化合物との総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、そして、好ましくは1.5質量部以下、より好ましくは1.0質量部以下である。
有機溶媒を使用する場合の有機溶媒の使用量は、反応性の観点から、ポリエステル樹脂とイソシアネート化合物との総量100質量部に対して、好ましくは30質量部以上、より好ましくは50質量部以上、更に好ましくは70質量部以上であり、そして、好ましくは500質量部以下、より好ましくは300質量部以下、更に好ましくは200質量部以下である。
ウレタン変性ポリエステル樹脂を水性媒体へ分散することで、ウレタン変性ポリエステル樹脂粒子の水性分散液を得ることができる。本発明の樹脂粒子としては、該ウレタン変性ポリエステル樹脂粒子を使用することができるが、後述するように、ウレタン変性ポリエステル樹脂を付加重合性モノマーと反応させて複合樹脂を得、複合樹脂粒子とすることが好ましい。
ウレタン変性ポリエステル樹脂粒子の水性分散液の製造方法としては、ウレタン変性ポリエステル樹脂溶液に対して水性媒体を徐々に添加し、樹脂を有機相から水相に転相して乳化する方法(転相乳化法)が好ましい。
水以外の成分としては、炭素数1以上5以下のアルキルアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の炭素数3以上5以下のジアルキルケトン;テトラヒドロフラン等の環状エーテル等の水に溶解する有機溶媒が用いられる。
ウレタン変性ポリエステル樹脂のケトン系溶媒への溶解操作、及びその後の中和剤の添加は、通常、ケトン系溶媒の沸点以下の温度で行う。
ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソプロピルケトン等が挙げられる。ウレタン変性ポリエステル樹脂の溶解性及び溶媒の留去容易性の観点から、好ましくはメチルエチルケトンである。
ウレタン変性ポリエステル樹脂の酸基に対する前記中和剤の使用当量(モル%)は、ウレタン変性ポリエステル樹脂粒子の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは10モル%以上、より好ましくは50モル%以上であり、そして、好ましくは150モル%以下、より好ましくは120モル%以下、更に好ましくは100モル%以下である。
なお、中和剤の使用当量(モル%)は、下記式によって求めることができる。中和剤の使用当量は、100モル%以下の場合、中和度と同義であり、下記式で中和剤の使用当量が100モル%を超える場合には、中和剤が樹脂の酸基に対して過剰であることを意味し、この時の樹脂の中和度は100モル%とみなす。
中和剤の使用当量(モル%)=〔{中和剤の添加質量(g)/中和剤の当量}/[{樹脂の酸価(mgKOH/g)×樹脂の質量(g)}/(56×1000)]〕×100
全量添加後の、有機溶媒に対する水性媒体の質量比(水性媒体/有機溶媒)は、好ましくは40/60以上、より好ましくは50/50以上、更に好ましくは60/40以上であり、そして、好ましくは90/10以下、より好ましくは85/15以下、更に好ましくは80/20以下である。
水性媒体の添加速度は、ウレタン変性ポリエステル樹脂粒子の分散安定性を向上させる観点から、転相が終了するまでは、水系へ分散させる樹脂100質量部に対して、好ましくは0.5質量部/分以上、より好ましくは1質量部/分以上、更に好ましくは3質量部/分以上であり、そして、好ましくは50質量部/分以下、より好ましくは30質量部/分以下、更に好ましくは20質量部/分以下である。転相後の水性媒体の添加速度には制限はない。
有機溶媒の除去方法は、特に限定されず、任意の方法を用いることができるが、水と溶解しているため蒸留することが好ましい。また、有機溶媒は、完全に除去されず水性分散液中に残留していてもよい。この場合、有機溶媒の残存量は、水性分散液中、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下である。
なお、固形分は樹脂、必要に応じて添加されうる界面活性剤、着色剤等の任意成分等の不揮発性成分の総量である。ウレタン変性ポリエステル樹脂粒子の水性分散液の固形分濃度は、実施例に記載の方法で求められる。
本発明において、ポリエステル樹脂とイソシアネート化合物との反応物は、PET及びPVCフィルムへの密着性、並びに形成した画像の光沢性及び耐熱性に優れた水系インクを得る観点から、ウレタン変性ポリエステル樹脂からなる主鎖セグメントと付加重合系樹脂からなる側鎖セグメントとを有する複合樹脂であることが好ましい。複合樹脂は、前記のウレタン変性ポリエステル樹脂からなる主鎖セグメント及び付加重合系樹脂からなる側鎖セグメントからなるグラフトポリマーである。複合樹脂とすることで樹脂粒子のガラス転移温度を高くすることができ、ひいては印刷画像の光沢性及び耐熱性を向上することができる。
複合樹脂を構成するセグメント(A1)は、ウレタン変性ポリエステル樹脂からなるセグメントである。セグメント(A1)は、複合樹脂(すなわちグラフトポリマー)における主鎖である。ウレタン変性ポリエステル樹脂については、前述のとおりである。
側鎖セグメント(A2)は、付加重合系樹脂からなるセグメントであり、付加重合系樹脂は、付加重合性モノマーに由来する構成単位からなる。セグメント(A2)は、複合樹脂(すなわちグラフトポリマー)における側鎖である。
前述したように、本発明における樹脂粒子のガラス転移温度は、PET及びPVCフィルムへの密着性、並びに形成した画像の光沢性及び耐熱性に優れた水系インクを得る観点から、75℃以上である。そのため、樹脂粒子が実質的に複合樹脂からなる場合には、複合樹脂のガラス転移温度は、PET及びPVCフィルムへの密着性、並びに形成した画像の光沢性及び耐熱性に優れた水系インクを得る観点から、好ましくは75℃以上、より好ましくは80℃以上、更に好ましくは85℃以上であり、そして、好ましくは105℃以下、より好ましくは100℃以下、更に好ましくは95℃以下である。
複合樹脂の製造方法に制限はなく、ウレタン変性ポリエステル樹脂と付加重合性モノマーとを直接混合して重合する方法、ウレタン変性ポリエステル樹脂と付加重合性モノマーとを有機溶媒に溶解して重合する方法等が挙げられるが、ウレタン変性ポリエステル樹脂を水性媒体と混合して、ウレタン変性ポリエステル樹脂粒子の水性分散液を得た後に、該水性分散液に付加重合性モノマーを添加して重合して複合樹脂を得、複合樹脂粒子を含有する水性分散液を得る方法が好ましい。
ウレタン変性ポリエステル樹脂と付加重合性モノマーとを含有する混合液を加熱することで重合反応を進行させる。重合温度は、用いられる重合開始剤の種類にもよるが、例えば、過硫酸ナトリウムを用いる場合には、重合反応を効率的に行う観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上であり、そして、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下である。同様の観点から、反応時間は、好ましくは1時間以上、より好ましくは3時間以上、更に好ましくは5時間以上であり、そして、好ましくは10時間以下、より好ましくは8時間以下、更に好ましくは7時間以下である。
なお、固形分は樹脂、必要に応じて添加されうる界面活性剤、着色剤等の前記の任意成分等の不揮発性成分の総量である。複合樹脂粒子の水性分散液の固形分濃度は、実施例に記載の方法で求められる。
本発明において着色剤とは、顔料又は染料をいう。また、着色剤は、界面活性剤や分散用ポリマーを用いてインク中で安定な微粒子にしてもよい。
着色剤としては、顔料、疎水性染料、水溶性染料(酸性染料、反応染料、直接染料等)等が挙げられる。これらの中でも、インクの分散安定性、印刷物の耐水性、光沢性、及び表面平滑性を向上させる観点から、好ましくは、顔料及び疎水性染料から選ばれる少なくとも1種、より好ましくは顔料である。着色剤は、1種を単独で又は2種以上の組合せを任意の割合で混合して用いることができる。
無機顔料としては、カーボンブラック、金属酸化物等が挙げられ、黒色インクに用いる場合、好ましくはカーボンブラックである。
有機顔料としては、アゾ顔料、ジアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アントラキノン顔料、キノフタロン顔料等が挙げられ、これらの中でも、好ましくはフタロシアニン顔料、より好ましくは銅フタロシアニンである。
色相は特に限定されず、イエロー、マゼンタ、シアン、ブルー、レッド、オレンジ、グリーン等の有彩色顔料をいずれも用いることができる。
着色剤は、界面活性剤、ポリマー等を用いて、インク中で安定な微粒子にしてもよい。用いられるポリマーとしては、ポリエステル、ポリウレタン、ビニル系ポリマー等が挙げられる。例えば、特開2006−152241号公報、特開2015−13971号公報等に記載の方法により、着色剤を含有するポリマー粒子として用いてもよい。
本発明の水系インクには、有機溶媒、浸透剤、分散剤、界面活性剤、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤、pH調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の各種添加剤を添加することができる。
環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等が挙げられる。
含窒素複素環化合物としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ε−カプロラクタム等が挙げられる。
アミドとしては、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
アミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。
含硫黄化合物としては、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール、チオジグリコール等が挙げられる。
これらの中でも、多価アルコール、多価アルコールアルキルエーテル及び含窒素複素環化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、グリセリン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソブチルエーテル及び2−ピロリドンからなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、プロピレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソブチルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種が更に好ましい。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物等が挙げられる。
防腐剤及び防黴剤としては、例えば、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキシドナトリウム、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム等が挙げられる。
防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール等が挙げられる。
pH調整剤としては、調合されるインクに悪影響を及ぼすことなくpHを7以上に調整できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて任意の物質を使用することができ、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物等が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤等が挙げられる。
水系インクに含まれる樹脂粒子の含有量は、PET及びPVCフィルムへの密着性、並びに形成した画像の光沢性及び耐熱性に優れた水系インクを得る観点から、インク中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、更に好ましくは7質量%以下である。
水系インクに含まれるウレタン変性ポリエステル樹脂粒子又は複合樹脂粒子の含有量は、PET及びPVCフィルムへの密着性、並びに形成した画像の光沢性及び耐熱性に優れた水系インクを得る観点から、インク中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
水系インクに含まれる水の含有量は、インクの粘度を適正に保つ観点から、インク中、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上であり、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下である。
本発明の水系インクの製造方法としては、PET及びPVCフィルムへの密着性、並びに形成した画像の光沢性及び耐熱性に優れた水系インクを得る観点から、以下の工程1〜4を有する水系インクの製造方法が好ましい。
工程1:アルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合させてポリエステル樹脂を得る工程、
工程2:工程1で得られたポリエステル樹脂とイソシアネート化合物とを反応させて、ウレタン変性ポリエステル樹脂を得る工程、
工程3:工程2で得られたウレタン変性ポリエステル樹脂を水性媒体へ分散し、樹脂粒子の水性分散液を得る工程、及び
工程4:工程3で得られた樹脂粒子の水性分散液と、着色剤とを混合し、水系インクを得る工程
工程1は、アルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合させてポリエステル樹脂を得る工程である。工程1で得られるポリエステル樹脂は、ウレタン変性ポリエステル樹脂及び複合樹脂の原料となる。
工程1では、例えば、前記アルコール成分と前記カルボン酸成分とを不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じてエステル化触媒、エステル化助触媒及びラジカル重合禁止剤を用いて、ポリエステル樹脂を製造することができる。詳細については前述のとおりである。
工程2は、工程1で得られたポリエステル樹脂とイソシアネート化合物とを反応させて、ウレタン変性ポリエステル樹脂を得る工程である。
工程2では、例えば、ポリエステル樹脂とイソシアネート化合物を不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じてウレタン化触媒を用いて反応させることによりウレタン変性ポリエステル樹脂を製造することができる。詳細については前述のとおりである。
工程3は、工程2で得られたウレタン変性ポリエステル樹脂を水性媒体へ分散し、樹脂粒子の水性分散液を得る工程である。工程3においては、ウレタン変性ポリエステル樹脂溶液に対して水性媒体を徐々に添加し、樹脂を有機相から水相に転相して乳化する方法(転相乳化法)が好ましい。転相乳化法の好ましい具体例や好ましい使用量についての詳細は前述のとおりである。
PET及びPVCフィルムへの密着性、並びに形成した画像の光沢性及び耐熱性に優れた水系インクを得る観点から、工程3で得られたウレタン変性ポリエステル樹脂粒子の水性分散液に、付加重合性モノマーを添加し、重合して、複合樹脂粒子の水性分散液を得る工程(工程3a)を更に有することが好ましい。
工程3aでは、例えば、ウレタン変性ポリエステル樹脂粒子の水性分散液に、付加重合性モノマーを添加し、必要に応じてラジカル重合開始剤、架橋剤等を添加し、重合させることにより製造することができる。詳細は前述のとおりである。
工程4は、工程3で得られた樹脂粒子(ウレタン変性ポリエステル樹脂粒子又は複合樹脂粒子)の水性分散液と、着色剤とを混合し、水系インクを得る工程である。
工程4では、工程3で得られた樹脂粒子の水性分散液と、前述の着色剤とを混合する。その他、前述の有機溶媒、浸透剤、分散剤、界面活性剤、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤、pH調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の各種添加剤を添加してもよい。
以上の工程1〜4を経ることで、本発明の水系インクが得られる。
本発明の水系インクは、インクジェット記録用のインクとして用いることができる。本発明の水系インクをインクジェット記録方法に用いる際の好適な態様としては、本発明の水系インクをインクジェット記録方式で樹脂製記録媒体に付着させた後、該水系インクが付着した樹脂製記録媒体を40℃以上100℃以下に加熱する。水系インク中の樹脂粒子を構成する樹脂が、該樹脂製記録媒体の印字面に拡散し、塗膜を形成する際に着色剤の定着助剤として作用することができ、PET及びPVCフィルムへの密着性、並びに形成した画像の光沢性及び耐熱性を更に向上させることができる。
樹脂製記録媒体の加熱温度は、樹脂製記録媒体への優れた密着性を得る観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上であり、そして、好ましくは90℃以下、より好ましくは85℃以下である。
なお、本発明において、「非吸水性又は低吸水性」とは、記録媒体と水との接触時間100m秒における記録媒体の吸水量が0g/m2以上10g/m2以下であることを意味する。
JIS K0070に準拠して測定した。ただし、JIS K0070に規定されている溶媒を、エタノールとエーテルとの混合溶媒から、アセトンとトルエンとの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更した。
フローテスター「CFT−500D」(株式会社島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出した。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とした。
示差走査熱量計「Q−100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温した後、200℃から降温速度10℃/minで0℃まで冷却して測定用サンプルを調製した。その後、昇温速度10℃/minで昇温し、熱量を測定した。観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピーク温度を吸熱の最大ピーク温度とし、吸熱の最大ピーク温度以下のベースラインの延長線と、該ピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とした。なお、複合樹脂粒子の測定にあたっては、溶液の一部を採取し、乾燥させて固体の複合樹脂粒子を回収し、測定に供した。
以下に示すゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を測定した。
(1)試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mLになるように、試料をテトラヒドロフランに、25℃で溶解させ、次いで、この溶液をポアサイズ0.2μmのフッ素樹脂フィルター「DISMIC」(ADVANTEC社製、型式「25JP」)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とした。
(2)測定
以下の測定装置と分析カラムを用い、溶離液としてテトラヒドロフランを、1mL/minの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させ、そこに前記試料溶液100μLを注入して分子量を測定した。試料の分子量(Mw、Mn)は、数種類の単分散ポリスチレン「TSKgel標準ポリスチレン」(タイプ名(Mw):「A−500(5.0×102)」、「A−1000(1.01×103)」、「A−2500(2.63×103)」、「A−5000(5.97×103)」、「F−1(1.02×104)」、「F−2(1.81×104)」、「F−4(3.97×104)」、「F−10(9.64×104)」、「F−20(1.90×105)」、「F−40(4.27×105)」、「F−80(7.06×105)」、「F−128(1.09×106)」;いずれも東ソー株式会社製)を標準試料として、あらかじめ作成した検量線に基づき算出した。
<測定条件>
測定装置:「HLC−8220GPC」(東ソー株式会社製)
分析カラム:「GMHXL」+「G3000HXL」(いずれも東ソー株式会社製)
カラム温度:40℃
流速:1mL/min
(1)測定装置:ゼータ電位及び粒径測定システム「ELSZ−2」(大塚電子株式会社製)
(2)測定条件:キュムラント解析法。測定する粒子の濃度が約5×10-3質量%になるように水で希釈した分散液を測定用セルに入れ、温度25℃、入射光と検出器との角度90°、積算回数100回、分散溶媒の屈折率として水の屈折率(1.333)を入力して測定した。
赤外線水分計「FD−230」(株式会社ケツト科学研究所製)を用いて、測定試料5gを乾燥温度150℃、測定モード96(監視時間2.5分/変動幅0.05%)の条件にて乾燥させ、水性分散液の水分(質量%)を測定した。固形分濃度は次の式に従って算出した。
固形分濃度(質量%)=100−水分(質量%)
pHメーター「HM−20P」(東亜ディーケーケー株式会社製)を用いて、25℃で測定した。
インクジェットプリンター「IPSiO GX 2500」(株式会社リコー製、ピエゾ方式)に水系インクを充填し、二軸延伸PETフィルム「ルミラー75T60」(東レ株式会社製)、及びPVCフィルム「透明塩ビRE−137」(株式会社ミマキエンジニアリング製)にA4ベタ画像を印刷した。80℃の乾燥機にて10分乾燥し、室温25℃、相対湿度50%の環境室にて1日静置して試料を調製した。その後、試料の印刷面に長さ5cm、幅15mmのテープ「セロテープ(登録商標)CT15」(ニチバン株式会社製)を、1cmの余白を残し4cm貼りつけ、角度90°で10cm/secの速度で該テープを剥がし、試料の塗工面の残存面積を目視により次の5段階で評価した。点数が高いほど密着性に優れる。
<評価基準>
5点: 剥離なし、又は、剥離があるが剥離面積5%未満
4点: 剥離面積5%以上10%未満
3点: 剥離面積10%以上30%未満
2点: 剥離面積30%以上50%未満
1点: 剥離面積50%以上
インクジェットプリンター「IPSiO GX 2500」(株式会社リコー製、ピエゾ方式)に水系インクを充填し、二軸延伸PETフィルム「ルミラー75T60」(東レ株式会社製)にA4ベタ画像を印刷した。80℃の乾燥機にて10分乾燥し、室温25℃、相対湿度50%の環境室にて1日静置した後、印刷面を上にしてKPカット紙(国際紙パルプ商事株式会社製)上に乗せ、光沢度計「IG−300」(株式会社堀場製作所製)で測定面積3mm×6mm楕円を入射角60°にて光沢度を測定した。光沢度の数値が大きいほど光沢性に優れる。
インクジェットプリンター「IPSiO GX 2500」(株式会社リコー製、ピエゾ方式)に水系インクを充填し、二軸延伸PETフィルム「ルミラー75T60」(東レ株式会社製)にA4ベタ画像を印刷した。80℃の乾燥機にて10分乾燥し、室温25℃、相対湿度50%の環境室にて1日静置した後、2cm×5cmの大きさ2枚を切り取った。この2枚を、印刷面同士を合わせた状態でガラスプレートに挟み、20gの荷重をかけ、100℃の恒温槽内に12時間静置した。その後、室温(25℃)で1時間静置した後、貼り合せた面を剥がし、印刷面の剥離面積を目視により次の4段階で評価した。剥離面積が小さいほど耐熱性に優れる。
(評価基準)
A: 剥離面積0%
B: 剥離面積0%より大きく10%以下
C: 剥離面積10%より大きく30%未満
D: 剥離面積30%以上
(ポリエステル樹脂PES1の製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン3922g、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン1561g、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン1281g、イソフタル酸2940g、及び酸化ジブチルスズ20gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、180℃まで昇温した後、230℃まで5時間かけて昇温し、230℃で5時間保持した。その後、180℃まで冷却し、大気圧に戻した後、フマル酸297gを加え、200℃まで3時間かけて昇温した後、フラスコ内の圧力を下げ、8.3kPaにて3時間反応させ、ポリエステル樹脂PES1を得た。PES1の特性を表1に示す。
(ポリエステル樹脂PES2及びPES3の製造)
製造例1において、原料モノマーの添加量を表1に示すとおりに変更した以外は製造例1と同様にして、ポリエステル樹脂PES2及びPES3を得た。得られたポリエステル樹脂の特性を表1に示す。
(ウレタン変性ポリエステル樹脂溶液PU1の製造)
窒素導入管、還流冷却管、撹拌器「スリーワンモーターBL300」(新東科学株式会社製)及び熱電対を装備した四つ口フラスコに、ポリエステル樹脂PES1 200g、メチルエチルケトン(以下、「MEK」ともいう)160g、触媒としてジ(2−エチルヘキサン酸)スズ1.0gを入れ、窒素雰囲気下、室温(25℃)で撹拌して混合溶解した。次いで、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアナート(以下、「DCMDI」ともいう)10.8gを入れ、撹拌しながら、80℃へ昇温し、80℃で5時間保持した。25℃まで冷却後、メチルエチルケトンにて固形分濃度を50質量%に調整し、ウレタン変性ポリエステル樹脂溶液PU1を得た。得られた溶液中のウレタン変性ポリエステル樹脂の特性を表2に示す。
(ウレタン変性ポリエステル樹脂溶液PU2及びPU3の製造)
製造例4において、ポリエステル樹脂の種類及びDCMDIの添加量を表2に示すとおりに変更した以外は製造例4と同様にして、ウレタン変性ポリエステル樹脂溶液PU2及びPU3を得た。得られた溶液中のウレタン変性ポリエステル樹脂の特性を表2に示す。
(ウレタン変性ポリエステル樹脂粒子の水性分散液Em1の製造)
窒素導入管、還流冷却管、撹拌器「スリーワンモーターBL300」(新東科学株式会社製)及び熱電対を装備した1リットルの四つ口フラスコに、ウレタン変性ポリエステル樹脂溶液PU1 400gを入れ、30℃で撹拌しながら、48質量%水酸化ナトリウム水溶液2.3gを添加して30分撹拌し、有機溶媒系スラリーを得た。30℃、撹拌下、20mL/minの速度で脱イオン水600gを滴下した。その後、60℃に昇温した後、80kPaから30kPaに段階的に減圧していきながらメチルエチルケトンを留去し、更に一部の水を留去した。25℃まで冷却後、150メッシュの金網で濾過し、脱イオン水にて固形分濃度を30質量%に調整し、ウレタン変性ポリエステル樹脂粒子の水性分散液Em1を得た。得られた水性分散液の特性を表3に示す。
(ウレタン変性ポリエステル樹脂粒子の水性分散液Em2及びEm3の製造)
製造例7において、ウレタン変性ポリエステル樹脂溶液の種類及び48質量%水酸化ナトリウム水溶液の添加量を表3に示すとおりに変更した以外は製造例7と同様にして、ウレタン変性ポリエステル樹脂粒子の水性分散液Em2及びEm3を得た。得られた水性分散液の特性を表3に示す。
(ポリエステル樹脂粒子の水性分散液Em4の製造)
窒素導入管、還流冷却管、撹拌器「スリーワンモーターBL300」(新東科学株式会社製)及び熱電対を装備した1リットルの四つ口フラスコに、ポリエステル樹脂PES1 200gを入れ、30℃でメチルエチルケトン200gと混合し樹脂を溶解させた。次いで、48質量%水酸化ナトリウム水溶液2.5gを添加して30分撹拌し、有機溶媒系スラリーを得た。30℃、撹拌下、20mL/minの速度で脱イオン水600gを滴下した。その後、60℃に昇温した後、80kPaから30kPaに段階的に減圧していきながらメチルエチルケトンを留去し、更に一部の水を留去した。25℃まで冷却後、150メッシュの金網で濾過し、脱イオン水にて固形分濃度を30質量%に調整し、ポリエステル樹脂粒子の水性分散液Em4を得た。得られた水性分散液の特性を表4に示す。
(複合樹脂粒子の水性分散液Em5の製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した1リットル容の四つ口フラスコに、ウレタン変性ポリエステル樹脂粒子の水性分散液Em1 333g、脱イオン水25.9g及びスチレン11.1gを入れ、室温(25℃)で30分間撹拌した。次いで、窒素気流下で10質量%過硫酸ナトリウム水溶液0.43gを加え、80℃まで昇温した後、80℃で6時間反応させた。その後、減圧して残存モノマーを留去し、更に一部の水を留去した。25℃まで冷却後、150メッシュの金網で濾過し、脱イオン水にて固形分濃度を30質量%に調整し、複合樹脂粒子の水性分散液Em5を得た。得られた水性分散液の特性を表5に示す。
(複合樹脂粒子の水性分散液Em6、Em10及びEm11の製造)
製造例11において、ウレタン変性ポリエステル樹脂粒子の水性分散液Em1をポリエステル樹脂粒子の水性分散液Em2、Em3又はEm4にそれぞれ変更した以外は製造例11と同様にして、複合樹脂粒子の水性分散液Em6、Em10及びEm11を得た。得られた水性分散液の特性を表5に示す。
(複合樹脂粒子の水性分散液Em7の製造)
製造例11において、脱イオン水の添加量、スチレンの添加量、及び10質量%過硫酸ナトリウム水溶液の添加量を表5に示すとおりに変更した以外は製造例11と同様にして、複合樹脂粒子の水性分散液Em7を得た。得られた水性分散液の特性を表5に示す。
(複合樹脂粒子の水性分散液Em8及びEm9の製造)
製造例11において、付加重合性モノマーの種類及び添加量を表5に示すとおりに変更した以外は製造例11と同様にして、複合樹脂粒子の水性分散液Em8及びEm9を得た。得られた水性分散液の特性を表5に示す。
(水系インクの製造)
100mLスクリュー管に、プロピレングリコール(和光純薬工業株式会社製)10.0質量部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(和光純薬工業株式会社製)5.0質量部、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(東京化成工業株式会社製)5.0質量部、濡れ剤「オルフィンE1010」(日信化学工業株式会社製、有効成分:アセチレングリコール系界面活性剤)1.0質量部、及び脱イオン水35.8質量部を混合し、マグネチックスターラーを用い、室温で15分間撹拌して、混合溶液を得た。
次に、自己分散顔料「CAB−O−JET300」(キャボット社製)26.6質量部(顔料分換算4.0部(水系インク100部中))を、マグネチックスターラーで撹拌しながら、前記混合溶液全量を混合し、更に表6に示す樹脂粒子の水性分散液16.6質量部(固形分換算5.0質量部(水系インク100質量部中))をスポイトで滴下しながら撹拌混合した。最後に、孔径1.2μmのフィルター「ミニザルト(登録商標)」(Sartorius Stedim Biotech社製)で濾過し、水系インクを得た。得られた水系インクの評価結果を表6に示す。
これに対し、本発明の水系インクは、PET及びPVCフィルムへの密着性、並びに形成した画像の光沢性及び耐熱性のすべてに優れるものであった。
Claims (8)
- 着色剤及び樹脂粒子を含有する水系インクであって、
前記樹脂粒子が、ポリエステル樹脂とイソシアネート化合物との反応物を含有し、
該ポリエステル樹脂の酸価が5mgKOH/g以上18mgKOH/g以下であり、
前記樹脂粒子のガラス転移温度が75℃以上である、水系インク。 - 前記のポリエステル樹脂とイソシアネート化合物との反応物が、ウレタン変性ポリエステル樹脂からなる主鎖セグメントと付加重合系樹脂からなる側鎖セグメントとを有する複合樹脂である、請求項1に記載の水系インク。
- 複合樹脂の主鎖セグメントと側鎖セグメントとの質量比[主鎖セグメント/側鎖セグメント]が55/45以上95/5以下である、請求項2に記載の水系インク。
- 前記樹脂粒子の体積平均粒径が50nm以上100nm以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の水系インク。
- 工程1:アルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合させてポリエステル樹脂を得る工程、
工程2:工程1で得られたポリエステル樹脂とイソシアネート化合物とを反応させて、ウレタン変性ポリエステル樹脂を得る工程、
工程3:工程2で得られたウレタン変性ポリエステル樹脂を水性媒体へ分散し、樹脂粒子の水性分散液を得る工程、及び
工程4:工程3で得られた樹脂粒子の水性分散液と、着色剤とを混合し、水系インクを得る工程
を有する水系インクの製造方法であって、工程1で得られたポリエステル樹脂の酸価が5mgKOH/g以上18mgKOH/g以下であり、樹脂粒子のガラス転移温度が75℃以上である、水系インクの製造方法。 - 前記工程3において、ウレタン変性ポリエステル樹脂粒子の水性分散液に、付加重合性モノマーを添加し、重合して、複合樹脂粒子の水性分散液を得る、請求項5に記載の水系インクの製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の水系インクをインクジェット記録方式で樹脂製記録媒体に付着させた後、該水系インクが付着した樹脂製記録媒体を40℃以上100℃以下に加熱する、インクジェット記録方法。
- 樹脂製記録媒体が、ポリエチレンテレフタレート製記録媒体又はポリ塩化ビニル製記録媒体である、請求項7に記載のインクジェット記録方法。
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