JP2020143201A - インクジェット印刷用水系インク - Google Patents
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Abstract
Description
また、軟包装印刷やラベル・シール印刷にはエネルギー線硬化型インクを用いたインクジェット印刷方法が検討されている。しかしながら、エネルギー線硬化型インクには、臭気の懸念がある。特に、軟包装は、食品の包装に用いられることが多いため、この課題の影響が大きくなっている。
例えば、特許文献1には、泡立ちが少なく、インクジェット印刷による安定した印字が可能なインク組成物として、着色剤、水性溶剤、特定のアセチレングリコール系界面活性剤を含むインク組成物が開示されている。
特許文献2には、高速印刷においても連続吐出性が優れ、非吸水性記録媒体に対するローラー転写汚れや色間混色のない良好な記録物を得ることができる水性インクとして、顔料、水不溶性ポリマー、有機溶媒、シリコーン系界面活性剤を含有し、有機溶媒が、少なくとも特定の粘度と蒸気圧を有するグリコールエーテルを含み、インク中の沸点250℃以上の有機溶媒の含有量が5質量%以下である、インクジェット記録用水性インクが開示されている。
特許文献3には、インク吐出ノズル内での乾燥インクの再分散性を維持しつつ、保存安定性に優れるインクジェット記録用水系インクとして、顔料を含有する架橋ポリマー粒子と水溶性アミン化合物とを含有する顔料水分散体と、沸点が90〜250℃の水溶性有機溶媒とを含有する水系インクであって、該架橋ポリマーがカルボキシ基と架橋剤由来のエステル基を含む架橋構造を有し、特定の鹸化価を有する水系インクが開示されている。
ここで、タック性とはベタツキ(タック)等の粘着性のことであり、例えば、印刷部分が印刷媒体の裏面に転写されて付着し、印刷媒体が汚れることをいう。したがって、「タック性が大きい」とは、転写汚れ面積が大きいことを意味し、「タック性が小さい」とは、転写汚れ面積が小さいことを意味する。
本発明は、吐出安定性に優れ、かつ低吸液性印刷媒体に対してもタック性が改善された印刷物を得ることができるインクジェット記録用水系インク、及びそれを用いるインクジェット印刷方法を提供することを課題とする。
[1]低吸液性印刷媒体へのインクジェット印刷用水系インクであって、
顔料、水溶性有機溶媒、及びシリコーン系界面活性剤を含有し、
水溶性有機溶媒が、プロピレングリコール(S1)とグリコールエーテル(S2)とを含み、
プロピレングリコール(S1)のインク中の含有量が20質量%未満であり、
該プロピレングリコール(S1)と該グリコールエーテル(S2)のインク中の合計含有量が4質量%以上25質量%以下であり、
該プロピレングリコール(S1)に対する該グリコールエーテル(S2)の質量比〔(S2)/(S1)〕が0.1以上0.6以下であり、
32℃における粘度が2mPa・s以上5mPa・s未満である、
インクジェット印刷用水系インク。
[2]前記[1]に記載のインクを用いて、低吸液性印刷媒体に印刷する、インクジェット印刷方法。
本発明の水系インクは、低吸液性印刷媒体へのインクジェット印刷用水系インク(以下、「本発明インク」ともいう)であって、
顔料、水溶性有機溶媒、及びシリコーン系界面活性剤を含有し、水溶性有機溶媒が、プロピレングリコール(S1)とグリコールエーテル(S2)とを含み、
プロピレングリコール(S1)のインク中の含有量が20質量%未満であり、
該プロピレングリコール(S1)と該グリコールエーテル(S2)のインク中の合計含有量が4質量%以上25質量%以下であり、
該プロピレングリコール(S1)に対する該グリコールエーテル(S2)の質量比〔(S2)/(S1)〕が0.1以上0.6以下であり、
32℃における粘度が2mPa・s以上5mPa・s未満である。
なお、「水系」とは、媒体中で、水が最大割合を占めていることを意味する。
「低吸液性」とは、インクの低吸液性、非吸液性を含む概念である。低吸液性は、純水の吸水性で評価することができる。より具体的には、印刷媒体と純水との接触時間100m秒における該印刷媒体の表面積あたりの吸水量が0g/m2以上10g/m2以下であることを意味する。
「印刷」とは、文字や画像を記録する印刷、印字を含む概念である。
本発明においては、インク中の水溶性有機溶媒が、プロピレングリコール(S1)とグリコールエーテル(S2)とを特定の質量比で含有する。また、インク全体に対するプロピレングリコール(S1)の比率を20質量%未満とすることで、インクノズルからの水の蒸発を抑え、かつ印刷後は、加熱によって速やかに溶媒を揮散できることによって、最低限の乾燥工程により強固なインク皮膜を形成でき、印刷面と印刷媒体裏面が付着することを抑制できる。さらにシリコーン系界面活性剤が含有されていることにより、溶媒(S1)、(S2)と相まって、インクノズルのインク液面を適切な形態に保つことができ、吐出安定性に優れた印刷物を得ることができると考えられる。
また、インク全体に対する溶媒(S1)と(S2)の合計含有量を4質量%以上25質量%以下とすることで、インクノズルのインク液面を適切な形態に保つことができ、かつ印刷後の加熱で速やかに溶媒を揮散できるため、タック性悪化を抑制することができると考えられる。
本発明に用いられる顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれであってもよく、レーキ顔料、蛍光顔料を用いることもできる。また、必要に応じて、それらと体質顔料を併用することもできる。
無機顔料の具体例としては、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄、ベンガラ、酸化クロム等の金属酸化物、真珠光沢顔料等が挙げられる。特に黒色インクにおいては、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、サーマルランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。
有機顔料の具体例としては、アゾレーキ顔料、不溶性モノアゾ顔料、不溶性ジスアゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料類;フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ベンツイミダゾロン顔料、スレン顔料等の多環式顔料等が挙げられる。
色相は特に限定されず、ホワイト、ブラック、グレー等の無彩色顔料;イエロー、マゼンタ、シアン、ブルー、レッド、オレンジ、グリーン等の有彩色顔料をいずれも用いることができる。
体質顔料としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。
前記顔料は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
本明細書において「顔料を含有するポリマー粒子」は、ポリマー型分散剤が顔料を包含する形態、ポリマー型分散剤と顔料からなる粒子の表面に顔料の一部が露出している形態、ポリマー型分散剤が顔料の一部に吸着している形態等の粒子を含む。
本発明において顔料を含有するポリマー粒子は、本発明インクにおいて200nm以下の粒子径で分散状態を保つ。
ポリマー型分散剤は、水を主成分とする媒体への顔料の分散能を有するもので、顔料を含有するポリマー粒子を構成する一成分として用いられる。ポリマー型分散剤を構成するポリマーは、水溶性ポリマー及び水不溶性ポリマーのいずれでもよいが、水不溶性ポリマーがより好ましい。
本明細書において「水不溶性ポリマー」とは、105℃で2時間乾燥させ、恒量に達したポリマーを、25℃の水100gに飽和するまで溶解させたときに、その溶解量が10g未満であるものをいい、その溶解量は、好ましくは5g以下、より好ましくは1g以下である。ポリマー型分散剤がアニオン性ポリマーの場合、その溶解量は、ポリマーのアニオン性基を水酸化ナトリウムで100%中和した時の溶解量である。
ポリマー型分散剤はイオン性基を有することが好ましい。ポリマー型分散剤のイオン性基は、顔料を含有するポリマー粒子の分散安定性、保存安定性を向上させる観点から、イオン性モノマー(a−1)によりポリマー型分散剤を構成するポリマー骨格に導入されてなるものが好ましい。
また、ポリマー型分散剤は疎水性基を有することが好ましい。ポリマー型分散剤の疎水性基は、上記と同様の観点から、疎水性を有するモノマー(a−2)によりポリマー型分散剤を構成するポリマー骨格に導入されてなるものが好ましい。
すなわち本発明において、ポリマー型分散剤は、イオン性モノマー(a−1)と、疎水性モノマー(a−2)とを含む原料モノマー(a)を共重合させてなるビニル系ポリマーがより好ましい。
ポリマー型分散剤は、上記と同様の観点から、更にノニオン性基を有することができる。ポリマー型分散剤のノニオン性基は、ノニオン性モノマー(a−3)によりポリマー型分散剤を構成するポリマー骨格に導入することができる。
イオン性モノマー(a−1)としては、アニオン性モノマー、カチオン性モノマーが挙げられ、アニオン性モノマーが好ましく、酸基を有するモノマーがより好ましく、カルボキシ基を有するモノマーが更に好ましい。
イオン性モノマー(a−1)の具体例としては、特開2018−80255号公報の段落〔0017〕に記載のものが挙げられる。それらの中では、(メタ)アクリル酸が好ましい。
本発明において、イオン性モノマー(a−1)によってポリマー型分散剤に導入されたイオン性基は、顔料を含有するポリマー粒子を構成する際、その一部又は全部が中和されていることが好ましい。
本明細書において疎水性モノマー(a−2)の「疎水性」とは、モノマーを25℃のイオン交換水100gへ飽和するまで溶解させたときに、その溶解量が10g未満であることをいう。疎水性モノマー(a−2)の前記溶解量は、顔料への定着性の観点から、好ましくは5g以下、より好ましくは1g以下である。
疎水性モノマー(a−2)の具体例としては、特開2018−80255号公報の段落〔0018〕に記載のものが挙げられる。これらの中では、スチレン、α−メチルスチレン及びスチレンマクロマーから選ばれる1種以上が好ましい。
ノニオン性モノマー(a−3)としては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上が好ましい。
ノニオン性モノマー(a−3)の具体例としては、特開2018−80255号公報の段落〔0022〕に記載のものが挙げられる。それらの中では、ポリプロピレングリコール(n=2〜30)(メタ)アクリレート、フェノキシ(エチレングリコール・プロピレングリコール共重合)(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上が好ましい。
該ビニル系ポリマー製造時における、(a−1)、(a−2)及び(a−3)を含む原料モノマー(a)中の含有量(未中和量としての含有量。以下同じ)又はビニル系ポリマー中における(a−1)由来の構成単位、(a−2)由来の構成単位、及び(a−3)由来の構成単位の含有量は、顔料を含有するポリマー粒子の分散安定性を向上させる観点から、次のとおりである。
(a−1)の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
(a−2)の含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下である。
(a−3)を含有する場合、その含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。
なお、本発明において該ビニル系ポリマー中における(a−1)、(a−2)、及び(a−3)由来の構成単位の含有量は、測定において求めることができるし、ビニル系樹脂ポリマー製造時における(a−1)、(a−2)及び(a−3)を含む原料モノマー(a)の仕込み比率で代用することもできる。このうち(a−1)は電位差滴定で求めるのが好適であり、(a−2)と(a−3)は原料モノマー(a)の仕込み比率を用いるのが好適である。
ビニル系ポリマーは、原料モノマー(a)を塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合法により共重合させることにより製造される。これらの重合法の中では、溶液重合法が好ましい。
溶液重合法で用いる溶媒に特に制限はないが、極性有機溶媒が好ましい。極性有機溶媒としては、炭素数1以上3以下の脂肪族アルコール、炭素数3以上5以下のケトン類、エーテル類、酢酸エチル等のエステル類等が挙げられる。これらの中では、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、又はこれらの1種以上と水との混合溶媒が好ましく、メチルエチルケトン又はそれと水との混合溶媒が好ましい。
重合の際には、重合開始剤や重合連鎖移動剤を用いることができる。
重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物や、tert−ブチルペルオキシオクトエート、ベンゾイルパーオキシド等の有機過酸化物等の公知の重合開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤の量は、原料モノマー(a)1モルあたり、好ましくは0.001モル以上5モル以下、より好ましくは0.01モル以上2モル以下である。
重合連鎖移動剤としては、2−メルカプトプロピオン酸等のカルボキシ基含有メルカプタン類;オクタンチオール等のアルキルメルカプタン;2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール等のヒドロキシ基含有メルカプタン類等の公知の重合連鎖移動剤を用いることができる。
また、重合モノマーの連鎖の様式に制限はなく、ランダム、ブロック、グラフト等のいずれの重合様式でもよい。
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、溶媒留去等の公知の方法により、生成したポリマーを単離することができる。また、得られたポリマーは、再沈澱、膜分離、クロマトグラフ法、抽出法等により、未反応のモノマー等を除去して精製することができる。
顔料を含有するポリマー粒子が架橋剤で架橋されてなるものである場合、顔料を含有するポリマー粒子を構成するポリマー型分散剤の分子量を測定することは困難であるが、架橋構造を形成させる前の形態であるポリマー型分散剤の重量平均分子量は、顔料への吸着性及び分散安定性を向上させる観点から、好ましくは2,000以上、より好ましくは5,000以上であり、そして、好ましくは20,000以下、より好ましくは18,000以下である。
重量平均分子量は、実施例に記載の方法により測定される。
顔料を含有するポリマー粒子は、顔料水分散体として下記の工程1及び2を有する方法により、効率的に製造することができる。
また、顔料を含有するポリマー粒子を用いて得られるインクの吐出安定性を向上させる観点から、更に工程3(架橋工程)を行うことが好ましい。
工程1:顔料、ポリマーa、有機溶媒、及び水を含む顔料混合物を分散処理して分散処理物を得る工程
工程2:工程1で得られた分散処理物から有機溶媒を除去して顔料を含有するポリマー粒子の水分散体を得る工程
工程3:工程2で得られた顔料を含有するポリマー粒子の水分散体に架橋剤を添加し、顔料を含有するポリマー粒子の一部又は全部を架橋させる工程
工程1は有機溶媒を含有する水系媒体でポリマーaによって顔料を微粒化した分散処理物を得る工程である。ここで「ポリマーa」とは、中和反応や必要に応じて架橋反応を経て顔料を含有するポリマー粒子を構成するポリマー型分散剤となるもの、すなわち本発明におけるポリマー型分散剤の前駆体となるポリマーを意味する。ポリマーaとしては、イオン性モノマー(a−1)と、疎水性モノマー(a−2)とを含む原料モノマー(a)を共重合させてなるビニル系ポリマーが好ましく、更にノニオン性モノマー(a−3)を共重合させてなるビニル系ポリマーがより好ましい。工程1の具体的手順としてはポリマーを有機溶媒、顔料、水、及び中和剤、更に必要に応じて界面活性剤等を混合し、更に必要な応力を加えることが好ましい。
工程1で用いる有機溶媒に制限はないが、ケトン類、エーテル類、エステル類、炭素数1以上3以下の脂肪族アルコール等が好ましく、顔料への濡れ性、ポリマーaの溶解性及び顔料への吸着性を向上させる観点から、炭素数4以上8以下のケトンがより好ましく、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが更に好ましく、メチルエチルケトンがより更に好ましい。ポリマーaとしてビニル系ポリマーを溶液重合法で合成した場合には、重合で用いた溶媒をそのまま用いてもよい。
顔料混合物中のポリマーaに対する有機溶媒の質量比[有機溶媒/ポリマーa]は、顔料への濡れ性、吸着性及びポリマーaの溶解性の観点から、好ましくは0.4以上、より好ましくは0.6以上であり、そして、好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下である。
中和する場合は、本発明インクのpHが7以上11以下になるように中和することが好ましい。
中和剤としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、各種アミン等の塩基が挙げられ、好ましくは水酸化ナトリウム及びアンモニアである。
中和剤は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
中和剤の使用当量は、保存安定性を向上させる観点から、好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上、更に好ましくは30モル%以上であり、そして、好ましくは150モル%以下、より好ましくは120モル%以下、更に好ましくは100モル%以下である。ここで中和剤の使用当量は、次式によって求めることができる。
中和剤の使用当量(モル%)=〔{中和剤の添加質量(g)/中和剤の当量}/[{ポリマーaの酸価(mgKOH/g)×ポリマーaの質量(g)}/(56×1,000)]〕×100
予備分散に用いる分散機としては、アンカー翼、ディスパー翼等の一般に用いられている混合撹拌装置を用いることができる。
本分散に用いる剪断応力を与える手段としては、例えば、ロールミル、ニーダー等の混練機、マイクロフルイダイザー等の高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ビーズミル等のメディア式分散機が挙げられる。これらの中でも、顔料を小粒子径化する観点から、高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。
工程2は、工程1で得られた分散処理物から有機溶媒を除去して顔料を含有するポリマー粒子の水分散体を得る工程である。有機溶媒の除去は、公知の方法で行うことができる。得られた顔料を含有するポリマー粒子の水分散体中の有機溶媒は実質的に除去されていることが好ましいが、本発明の目的を損なわない限り、残留していてもよい。残留有機溶媒の量は、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下である。
工程3は、工程2で得られた顔料を含有するポリマー粒子の水分散体に架橋剤を添加し、架橋構造を形成させる工程である。
工程3で、顔料を含有するポリマー粒子を構成するポリマーaのイオン性基の一部又は全部を架橋剤と反応させて顔料を含有するポリマー粒子の一部又は全部に架橋構造を形成させる。これにより、ポリマー型分散剤が顔料表面に強固に吸着又は固定化され、顔料の凝集が抑制され、結果として、得られるインクの吐出安定性がより向上すると考えられる。
顔料を含有するポリマー粒子の水分散体に架橋構造を形成させる架橋剤としては、ポリマーaのイオン性基と効率よく架橋反応させ、本発明インクの吐出安定性を向上させる観点から、1分子中にエポキシ基を2以上6以下、好ましくは4以下を有する化合物が挙げられる。
架橋剤の分子量は、反応容易性、保存安定性を向上させる観点から、好ましくは120以上、より好ましくは180以上であり、そして、好ましくは2,000以下、より好ましくは1,000以下である。
架橋剤のエポキシ当量は、好ましくは90以上、より好ましくは100以上、更に好ましくは110以上であり、そして、好ましくは300以下、より好ましくは200以下、更に好ましくは150以下である。
架橋剤の水溶率は、水系媒体中で効率よくポリマーaを架橋させる観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。ここで水溶率とは、室温25℃にて水90質量部に架橋剤10質量部を溶解したときの溶解率(質量%)をいう。
架橋剤の具体例としては、特開2018−80255号公報の段落〔0041〕に記載のものが挙げられる。それらの中では、水不溶性の化合物が好ましく、炭素数3以上8以下の炭化水素基を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル化合物がより好ましく、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル及びトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルから選ばれる1種以上がより好ましい。
架橋処理の温度は、前記と同様の観点から、好ましくは40℃以上、より好ましは50℃以上、更に好ましくは60℃以上であり、そして、好ましくは95℃以下、より好ましくは85℃以下、更に好ましくは75℃以下である。
架橋処理の時間は、架橋反応の完結と経済性の観点から、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1時間以上であり、そして、好ましくは12時間以下、より好ましくは8時間以下、更に好ましくは5時間以下である。
顔料を含有するポリマー粒子の水分散体中の顔料の含有量は、顔料を含有するポリマー粒子の水分散体及び本発明インクの分散安定性の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは7質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
顔料を含有するポリマー粒子の水分散体中のポリマーaに対する顔料の質量比[顔料/ポリマーa]は、好ましくは50/50以上、より好ましくは55/45以上、更に好ましくは60/40以上であり、そして、好ましくは90/10以下、より好ましくは85/15以下、更に好ましくは80/20以下である。
顔料を含有するポリマー粒子の水分散体中のポリマー型分散剤に対する顔料の質量比[顔料/ポリマー型分散剤]は、好ましくは51/49以上、より好ましくは56/44以上、更に好ましくは61/39以上であり、そして、好ましくは91/9以下、より好ましくは86/14以下、更に好ましくは81/21以下である。
平均粒径は、実施例に記載の方法により測定される。
本発明インクは、得られる印刷物のタック性を改善する観点から、定着助剤ポリマーとして、顔料を含有しないポリマー粒子を更に含有することが好ましい。顔料を含有しないポリマー粒子は水系媒体において分散体の形態をとることができるものが好ましい。
顔料を含有しないポリマー粒子を構成するポリマー(以下、「ポリマーb」ともいう)は、水溶性ポリマーでも水不溶性ポリマーでもよいが、水不溶性ポリマーがより好ましい。
「水不溶性ポリマー」の定義は、前記のとおりである。
ポリマーbとポリマーaは、異なる組成であってもよく、また、組成も含めて同一のポリマーであって、顔料の有無だけが異なるものであってもよい。
インク中に顔料を含有するポリマー粒子と顔料を含有しないポリマー粒子を含む場合には、インク中のポリマーの含有量は、ポリマーa及びポリマーbの合計量となる。
顔料を含有しないポリマー粒子は、架橋剤で架橋されたものであってもよい。
(メタ)アクリル酸(Sb−1)は、得られる印刷物のタック性を改善する観点から、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる少なくとも1種が好ましく、メタクリル酸がより好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル(b−2)は、上記と同様の観点から、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、及び(メタ)アクリル酸シクロヘキシルから選ばれる少なくとも1種が好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、及び(メタ)アクリル酸シクロヘキシルから選ばれる少なくとも1種がより好ましく、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが更に好ましい。
ポリマーbは、(メタ)アクリル酸(b−1)及びアクリル酸エステル(b−2)以外の他のモノマー由来の構成単位を含んでもよい。他のモノマーとしては、(メタ)アクリル酸以外のイオン性モノマー、芳香族基を有する疎水性モノマー、又はノニオン性モノマーが挙げられ、中でも芳香族基を有する疎水性モノマー(b−3)が好ましい。かかる疎水性モノマー(b−3)としては、前述のスチレン系モノマー、芳香族基含有(メタ)アクリレート、芳香族基含有モノマー系マクロモノマー等が挙げられる。
ポリマーb中の(メタ)アクリル酸(b−1)由来の構成単位の含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上、更に好ましくは2質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
ポリマーb中の(メタ)アクリル酸エステル(b−2)由来の構成単位の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、そして、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98.5質量%以下、更に好ましくは98質量%以下である。
(メタ)アクリル酸(b−1)と(メタ)アクリル酸エステル(b−2)との質量比〔(メタ)アクリル酸(b−1)/(メタ)アクリル酸エステル(b−2)〕は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上であり、そして、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.2以下、更に好ましくは0.1以下である。
顔料を含有しないポリマー粒子の平均粒径は、上記と同様の観点から、好ましくは20nm以上、より好ましくは40nm以上、更に好ましくは60nm以上であり、そして、好ましくは150nm以下、より好ましくは130nm以下、更に好ましくは110nm以下である。平均粒径は、実施例に記載の方法により測定される。
顔料を含有しないポリマー粒子は、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよいが、水分散液の形態をとることができるものが好ましい。顔料を含有しないポリマー粒子の水分散液を得る際、顔料を含有しないポリマー粒子を構成するポリマーbは、中和剤で中和されてなることが好ましい。
顔料を含有しないポリマー粒子の水分散液は、顔料を含有しないポリマー粒子を構成するポリマーbの中和前のポリマーb’を公知の重合法により得た後、該ポリマーb’、水、及び必要に応じて中和剤を含有する混合物を加温しながら撹拌し、その後降温する方法等により製造することができる。
ポリマーb’の酸価は、好ましくは0mgKOH/g以上、より好ましくは5mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上、更に好ましくは15mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは200mgKOH/g以下、より好ましくは100mgKOH/g以下、更に好ましくは50mgKOH/g以下、より更に好ましくは20mgKOH/g以下である。
前記混合物を撹拌する際の温度は、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、更に好ましくは75℃以上であり、そして、好ましくは100℃以下、より好ましくは95℃以下である。撹拌時間は、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは0.8時間以上であり、そして、好ましくは10時間以下、より好ましくは5時間以下である。
中和剤の使用当量は、顔料を含有しないポリマー粒子の分散安定性の観点から、0モル%以上、好ましくは10モル%以上、より好ましくは30モル%以上であり、そして、好ましくは160モル%以下、より好ましくは130モル%以下、更に好ましくは110モル%以下である。中和剤の使用当量は、前記の方法により求めることができる。
本発明インクは、顔料を含有するポリマー粒子の水分散体と、後述する水溶性有機溶媒と、必要に応じて顔料を含有しないポリマー粒子の水分散液と、シリコーン系界面活性剤と、更にその他の有機溶媒、その他の界面活性剤とを混合することにより、効率的に製造することができる。それらの混合方法に特に制限はない。
本発明で用いられる水溶性有機溶媒は、25℃で液体であっても固体であってもよいが、該有機溶媒を25℃の水100mlに溶解させたときに、その溶解量は10ml以上である。
前記水溶性有機溶媒は、吐出安定性の向上とタック性の改善を両立させる観点から、プロピレングリコール(S1)とグリコールエーテル(S2)とを含む。
本発明において、プロピレングリコール(S1)は、主としてインクノズルからの水の蒸発を抑え、かつ印刷後は速やかに揮散することによって最低限の乾燥工程によって強固なインク皮膜を形成し、印刷面と印刷裏面が付着するのを抑制する機能を有すると考えられ、グリコールエーテル(S2)は、主としてインクのノズル中の液面形状を適切に保つ役割を果たす。それらを特定範囲で使用することにより、吐出安定性の向上とタック性の改善を両立させることができると考えられる。
これらの中では、インクの低吸液性印刷媒体への広がりを適切に保つ観点から、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル及びジエチレングリコールモノブチルエーテルから選ばれる1種以上が好ましい。
多価アルコールとしてはエチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、1,2−オクタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,2−デカンジオール、1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、ペトリオール等が挙げられる。
アミド化合物としては、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ブチル−2−ピロリドン、5−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。
本発明インクは、印刷媒体への濡れ性を向上させる観点から界面活性剤を含有する。
界面活性剤としては、少なくともシリコーン系界面活性剤を含有する。また、インクの表面張力を適正に保ち、印刷媒体への濡れ性を向上させる観点から、その他のノニオン性界面活性剤が好ましく、アセチレングリコール系界面活性剤を併用することがより好ましい。
シリコーン系界面活性剤としては、ジメチルポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン等が挙げられるが、上記と同様の観点から、ポリエーテル変性シリコーンが好ましい。
ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤は、シリコーンオイルの側鎖及び/又は末端の炭化水素基を、ポリエーテル基で置換された構造を有するものである。該ポリエーテル基としては、ポリエチレンオキシ基、ポリプロピレンオキシ基、エチレンオキシ基(EO)とプロピレンオキシ基(PO)がブロック状又はランダムに付加したポリアルキレンオキシ基が好適であり、シリコーン主鎖にポリエーテル基がグラフトした化合物、シリコーンとポリエーテル基がブロック状に結合した化合物等を用いることができる。
また、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤の25℃における動粘度は、好ましくは50mm2/s以上、より好ましくは80mm2/s以上であり、そして、好ましくは500mm2/s以下、より好ましくは300mm2/s以下である。なお、動粘度はウベローデ型粘度計で求めることができる。
ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤の具体例としては、信越化学工業株式会社製のKFシリーズ;KF−353(HLB10)、KF−355A(HLB12)、KF−642(HLB12)等、日信化学工業株式会社製のシルフェイスSAG005(HLB7)、株式会社NUC製のFZ−2191(HLB5)、ビックケミー・ジャパン株式会社製のBYK−333(HLB10)等が挙げられる。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、2,5,8,11−テトラメチル−6−ドデシン−5,8−ジオール等のアセチレン系ジオール、及びそれらのエチレンオキシド付加物が挙げられる。
前記エチレンオキシド付加物のエチレンオキシ基(EO)の平均付加モル数の和(n)は、好ましくは1以上、より好ましくは1.5以上であり、そして、好ましくは20以下、より好ましくは10以下である。
アセチレングリコール系界面活性剤の市販品例としては、日信化学工業株式会社製の「サーフィノール」シリーズ、「オルフィン」シリーズ、川研ファインケミカル株式会社製の「アセチレノール」シリーズ等が挙げられる。これらの中でも、サーフィノール420(n:1.3)、サーフィノール440(n:3.5)、サーフィノール465(n:10.0)、サーフィノール485(n:30.0)、オルフィンE1010、アセチレノールE100、アセチレノールE200、アセチレノールE40(n:4)、アセチレノールE60(n:6)、アセチレノールE81(n:8)、アセチレノールE100(n:10)等が好ましい。
本発明インクは、インクに通常用いられる粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤等の各種添加剤を更に含有することができる。
(顔料の含有量)
本発明インク中の顔料の含有量は、印字濃度を向上させる観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは4質量%以上であり、そして、インク粘度を低くする観点から、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましく7質量%以下である。
(顔料を含有するポリマー粒子の含有量)
本発明インク中の顔料を含有するポリマー粒子の含有量は、印字濃度を向上させる観点から、好ましくは3質量%以上、より好ましくは4質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、そして、保存安定性を向上させる観点から、好ましくは15質量%以下、より好ましくは13質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
本発明インク中の顔料を含有しないポリマー粒子の含有量は、得られる印刷物のタック性を改善する観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上であり、そして、好ましくは8質量%以下、より好ましくは7質量%以下、更に好ましくは6質量%以下である。
本発明インク中のポリマーa及びポリマーbの合計量は、得られる印刷物のタック性を改善する観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは9質量%以下、更に好ましくは8質量%以下である。
本発明インク中の水溶性有機溶媒の含有量は、得られる印刷物のタック性を改善する観点から、好ましくは4質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは8質量%以上であり、そして、30質量%以下であり、好ましくは28質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。
プロピレングリコール(S1)のインク中の含有量は、得られる印刷物のタック性を改善する観点から、20質量%未満であり、好ましくは19質量%以下、より好ましくは17質量%以下、更に好ましくは15質量%以下であり、そして、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは6質量%以上、より更に好ましくは8質量%以上である。
プロピレングリコール(S1)とグリコールエーテル(S2)のインク中の合計含有量は、吐出安定性を向上させる観点から、4質量%以上であり、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上であり、そして、25質量%以下であり、好ましくは24質量%以下、より好ましくは23質量%以下、更に好ましくは22質量%以下である。
プロピレングリコール(S1)に対するグリコールエーテル(S2)の質量比〔(S2)/(S1)〕は、吐出安定性を向上させる観点から、0.1以上であり、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上であり、そして、0.6以下であり、好ましくは0.5以下である。
本発明インク中の界面活性剤の含有量は、吐出安定性を向上させる観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、そして、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。
本発明インク中のシリコーン系界面活性剤の含有量は、上記と同様の観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上であり、そして、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。
本発明インク中のアセチレングリコール系界面活性剤の含有量は、上記と同様の観点から、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.4質量%以上、更に好ましくは0.6質量%以上であり、そして、好ましくは4質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。
(水の含有量)
本発明インク中の水の含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは85質量%以下である。
水溶性有機溶媒に対する顔料を含有するポリマー粒子の質量比(顔料を含有するポリマー粒子/水溶性有機溶媒)は、得られる印刷物のタック性を改善する観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.25以上であり、そして、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.2以下、更に好ましくは0.8以下である。
本発明インクの32℃の粘度は、吐出安定性とタック性を両立させる観点から、好ましくは2mPa・s以上、より好ましくは2.5mPa・s以上、更に好ましくは3mPa・s以上であり、そして、好ましくは5mPa・s未満、より好ましくは4.5mPa・s以下、更に好ましくは4mPa・s以下である。
インク粘度は実施例記載の方法で測定される。
本発明インクのpHは、保存安定性、部材耐性、皮膚刺激性の観点から、好ましくは7.0以上、より好ましくは7.2以上、更に好ましくは7.5以上であり、そして、好ましくは11以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは9.5以下である。
本発明インクは、軟包装印刷用や、ラベル・シール印刷用のインクジェット水系インクとして特に好適である。なお、軟包装印刷や、ラベル・シール印刷用とは、樹脂フィルム等のような薄い柔軟性のある材料を単体で又は貼り合せたものに印刷することを意味する。本発明インクを用いて軟包装印刷された印刷物は、食品、生活用品等を包装する用途に好適である。
本発明インクは色味の異なる複数のインクを組み合わせてセットで用いることが好ましく、フルカラー印刷に好適である。
本発明のインクジェット印刷方法は、本発明インクを用いて、低吸液性印刷媒体に印刷する方法であり、本発明インクを公知のインクジェット印刷装置に装填し、低吸液性印刷媒体にインク液滴として吐出させて画像等を印刷する。
低吸液性印刷媒体としては、金属、合成樹脂の他、低吸液性のコート紙、アート紙等からなる印刷媒体が挙げられる。
金属としては、鉄及び鉄合金、アルミニウム及びアルミニウム合金等が挙げられるが、アルミニウム及びアルミニウム合金がより好ましい。また、各種の表面処理をした金属箔や金属板、金属にポリエステルやポリオレフィン等の樹脂フィルムを被覆した積層体も好ましい。
合成樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリカーボネート、PCとABS(50/50)ポリマーアロイ、トリアセチルセルロース等が挙げられる。また、コロナ放電処理されたもの、二軸延伸処理されたものも好ましい。これらの中では、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリプロピレン等が好ましい。さらにはポリプロピレンが最も好ましい。
印刷媒体の表面温度は、樹脂フィルムの場合は、好ましくは35℃以上、より好ましくは40℃以上であり、そして、好ましくは80℃以下、より好ましくは75℃以下であり、金属箔の場合は、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上であり、そして、好ましくは95℃以下、より好ましくは90℃以下である。
印刷媒体を加熱する方法としては、赤外線を照射する方法、オーブン等で加熱した雰囲気に曝す方法、加熱した金属等の物体と接触させる方法等の公知の方法が挙げられる。
N,N−ジメチルホルムアミドに、リン酸及びリチウムブロマイドをそれぞれ60mmol/Lと50mmol/Lの濃度となるように溶解した液を溶離液として、ゲル浸透クロマトグラフィー法〔東ソー株式会社製GPC装置(HLC-8320GPC)、東ソー株式会社製カラム(TSKgel SuperAWM-H、TSKgel SuperAW3000、TSKgel guardcolum Super AW-H)、流速:0.5mL/min〕により、標準物質として分子量既知の単分散ポリスチレンキット〔PStQuick B(F-550、F-80、F-10、F-1、A-1000)、PStQuick C(F-288、F-40、F-4、A-5000、A-500)、東ソー株式会社製〕を用いて測定した。
測定サンプルは、ガラスバイアル中にポリマー0.1gを前記溶離液10mLと混合し、25℃で10時間、マグネチックスターラーで撹拌し、シリンジフィルター(アドバンテック株式会社製、DISMIC-13HP PTFE 0.2μm)で濾過したものを用いた。
レーザー粒子解析システム「ELS−8000」(大塚電子株式会社製)を用いてキュムラント解析を行い、平均粒径を測定した。測定する粒子の濃度が5×10-3重量%(固形分濃度換算)になるよう水で希釈した分散液を用いた。測定条件は、温度25℃、入射光と検出器との角度90°、積算回数100回であり、分散溶媒の屈折率として水の屈折率(1.333)を入力し、得られたキュムラント平均粒径を顔料を含有するポリマー粒子、顔料を含有しないポリマー粒子の平均粒径とした。
赤外線水分計「FD−230」(株式会社ケツト科学研究所製)を用いて、測定試料5gを乾燥温度150℃、測定モード96(監視時間2.5分/変動幅0.05%)の条件にて乾燥させた後、測定試料の水分(%)を測定し、下記式により固形分濃度を算出した。
固形分濃度(%)=100−測定試料の水分(%)
室温25℃にてイオン交換水90質量部及びエポキシ化合物10質量部(W1)をガラス管(25mmφ×250mmh)に添加し、該ガラス管を水温25℃に調整した恒温槽中で1時間静置した。次いで、該ガラス管を1分間激しく振とうした後、再び恒温槽中で12時間静置した。次いで、水から分離して沈殿又は浮遊する未溶解物を回収し、40℃、ゲージ圧−0.08MPaの環境下で6時間乾燥後、秤量(W2)した。以下の式により、水溶率(質量%)を算出した。
水溶率(質量%)={(W1−W2)/W1}×100
E型粘度計「TV−25」(東機産業株式会社製、標準コーンロータ1°34’×R24使用、回転数50rpm)を用いて、32℃にて粘度を測定した。
反応容器内に、メチルエチルケトン(MEK)10部、重合連鎖移動剤(2−メルカプトエタノール)0.02部、及び表1に示す各モノマーの各20%ずつを入れて混合し、窒素ガス置換を十分に行い、混合溶液を得た。
一方、滴下ロート中に、表1に示す各モノマーの残りの80%ずつを仕込み、次いで前記の重合連鎖移動剤0.08部、MEK80部及び重合開始剤〔2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)〕0.5部を入れて混合し、十分に窒素ガス置換を行い、混合溶液を得た。
窒素雰囲気下、反応容器内の混合溶液を攪拌しながら75℃まで昇温し、滴下ロート中の混合溶液を3時間かけて徐々に反応容器内に滴下した。滴下終了後、その混合溶液の液温を75℃で2時間維持した後、前記の重合開始剤0.6部をMEK10部に溶解した溶液を該混合溶液に加え、更に75℃で1時間を3回繰返した後、85℃で2時間熟成させ、ポリマー溶液を得た。
得られたポリマー溶液の一部を、減圧下、105℃で2時間乾燥させ、溶媒を除去することによって水不溶性ポリマーaを単離した。得られた水不溶性ポリマーaの重量平均分子量は60,000であった。
・(a−2)スチレンマクロマー:東亜合成株式会社製、商品名:AS−6S、数平均分子量:6000、重合性官能基:メタクロイルオキシ基
・(a−3)ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(プロピレンオキシド平均付加モル数:9):日本油脂株式会社製、商品名:ブレンマーPP−500
(1)製造例1で得られた水不溶性ポリマーaのMEK溶液を減圧乾燥させて得られたポリマーa 58.1部をMEK71.5部と混合し、更に5N水酸化ナトリウム水溶液(NaOH固形分16.9%、富士フイルム和光純薬株式会社製)9.9部を加え、ポリマーのカルボキシ基のモル数に対するNaOHのモル数の割合が40モル%になるように中和した(中和度:40モル%)。更にイオン交換水695.1部を加え、その中に顔料(C.I.ピグメント・ブラック7、キャボット社製「MONARCH 717」)200gを加え、ディスパー(浅田鉄工株式会社製、ウルトラディスパー:商品名)を用いて、20℃でディスパー翼を7000rpmで回転させる条件で60分間攪拌した。
得られた混合物をマイクロフルイダイザー(Microfluidics社製、商品名)で150MPaの圧力で9パス分散処理した。
(3)得られた濃縮物を500mlアングルローターに投入し、高速冷却遠心機「himac CR22G」(日立工機株式会社製、設定温度:20℃)を用いて7000rpmで20分間遠心分離した後、液層部分を5μmのメンブランフィルター「Minisart」(Sartorius社製)で濾過した。
ろ液400g(固形分内訳:C.I.ピグメント・ブラック7 77g、前記水不溶性ポリマーa 22g)にイオン交換水61.61gを添加し、更にプロキセルLVS(アーチケミカルズジャパン株式会社製:防黴剤、有効分20%)1gを添加し、更に架橋剤(ナガセケムテックス株式会社製、デナコールEX−321L:商品名、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、エポキシ当量129、水溶率:27%)2.1gを添加し(架橋率:40モル%)、70℃で3時間攪拌した。25℃に冷却後、前記5μmフィルターでろ過し、更に固形分濃度が18%になるようにイオン交換水を加えて、顔料を含有するポリマー粒子の水分散体(架橋)を得た。得られた水分散体中の顔料を含有するポリマー粒子の平均粒径は90nmであった。
調製例1(3)において、架橋剤を使用しなかった以外は調製例1と同様に行い、顔料を含有するポリマー粒子の水分散体(非架橋)を得た。得られた水分散体中の顔料を含有するポリマー粒子の平均粒径は90nmであった。
滴下ロートを備えた反応容器内に、表2の「初期仕込みモノマー溶液」に示すモノマー、ラテムルE−118B(ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、花王株式会社製、界面活性剤)、重合開始剤である過硫酸カリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)、イオン交換水を入れて混合し、窒素ガス置換を行い、初期仕込みモノマー溶液を得た。また、表2の「滴下モノマー溶液」に示すモノマー、界面活性剤、重合開始剤、イオン交換水を混合して、滴下モノマー溶液を得、滴下ロート内に入れて、窒素ガス置換を行った。
窒素雰囲気下、反応容器内の初期仕込みモノマー溶液を攪拌しながら室温から80℃まで30分かけて昇温し、80℃に維持したまま、滴下ロート中のモノマーを3時間かけて徐々に反応容器内に滴下した。滴下終了後、反応容器内の温度を維持したまま、1時間攪拌した。次いで200メッシュでろ過し、顔料を含有しないポリマー粒子の水分散体(固形分濃度:44.1%、平均粒径:94nm)を得た。
顔料を含有しないポリマー粒子を構成する水不溶性ポリマーbの重量平均分子量は750,000、酸価は16mgKOH/gであった。
調製例1で得られた顔料を含有するポリマー粒子の水分散体(架橋)(固形分濃度:18%、顔料:13.6%、ポリマー:4.4%)33.0g、製造例2で得られた顔料を含有しないポリマー粒子の水分散体(固形分濃度:44.1%)11.3g、プロピレングリコール(富士フイルム和光純薬株式会社製)11.5g、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル(富士フイルム和光純薬株式会社製)3.5g、シリコーン系界面活性剤(日信化学工業株式会社製、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤、シルフェイスSAG005、濡れ剤、HLB:7、動粘度:170mm2/s(25℃))0.2g、アセチレングリコール系界面活性剤(日信化学工業株式会社製、サーフィノール440;サーフィノール104のエチレンオキシド(40%)付加物、エチレンオキシド平均付加モル数:3.5)1.0g、合計量が100gとなるようイオン交換水を添加した。
実施例1において、表3及び表4に示す組成に変更した以外は、実施例1と同様にして、水系インクを得た。
なお、実施例7は、調製例2で得られた顔料を含有するポリマー粒子の水分散体(非架橋)の調製)を用いた以外は実施例1と同様に行い、実施例8は、調製例1で得られた顔料を含有するポリマー粒子の水分散体(架橋)の代りに自己分散型カーボンブラック顔料(キャボット社製「Cab-O-jet300」)を用いた以外は実施例1と同様に行った。
表3及び表4中の水分散体、有機溶媒、及び界面活性剤の量はインク中の含有量(%)を示し、顔料を含有するポリマー粒子の水分散体、顔料を含有しないポリマー粒子の水分散体及び自己分散型カーボンブラック顔料の量は固形分量である。
なお、シリコーン系界面活性剤KF−355Aは、信越化学工業株式会社製のポリエーテル変性シリコーンオイルで、HLBは12、動粘度は150mm2/s(25℃)である。
温度25±1℃、相対湿度30±5%の環境で、印刷評価装置(セイコーエプソン株式会社製、インクジェットプリンタ、PX105、ピエゾ式)のカートリッジにインクを充填し、印刷媒体排出部分にA4サイズのフィルムヒーター(株式会社河合電器製作所製)を固定して下記印刷媒体を加温できるようにし、コロナ放電処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(フタムラ化学株式会社製)をA4サイズにカットしたものを用紙置場にセットした。
前記印刷評価装置を用いて、インク100%dutyで20mm×20mmのベタ画像を10枚印刷し、その後30分間印刷を行わずに放置した。30分間経過後、20mm×20mmのベタ画像を1枚印刷して得られたベタ印刷物の状態から、下記式により吐出回復率(%)を算出し、吐出安定性を評価した。本評価では前記フィルムヒーターには通電しなかった。
吐出回復率(%)=[(1枚印刷する命令で得られたベタ印刷物の吐出面積)/(10枚印刷する命令で得られたベタ印刷物の10枚目の吐出面積)]×100
(評価基準)
5:吐出回復率が90%以上である。
4:吐出回復率が80%以上90%未満である。
3:吐出回復率が70%以上80%未満である。
2:吐出回復率が60%以上70%未満である。
1:吐出回復率が60%未満である。
評価が3以上であれば実用上問題がなく、4以上であれば実用性に優れている。
前記フィルムヒーターの加温温度を60℃に設定した。
前記印刷評価装置を用いて、インク100%dutyで20mm×20mmのベタ画像を1枚印刷した。その後、印刷媒体排出部分で1時間、該フィルムを保持して性能評価用の印刷物を得た。
得られた印刷物のベタ画像部に印刷に供したものと同一のポリエチレンテレフタレートフィルムを置き、さらに30mm×30mm×30mmの立方体の真鍮製おもりを載せた状態で、温度25℃相対湿度50%の恒温恒湿チャンバーで10分間放置した後、ベタ画像部に置いたポリエチレンテレフタレートフィルムに転写された状態を観察し、下記基準でタック性(ベタツキ)を評価した。
(評価基準)
5:ベタツキ(タック)がなく、画像の転写が全くない。
4:多少ベタツキを感じるが、画像の転写面積が2%未満である。
3:多少ベタツキを感じるが、画像の転写面積が2%以上5%未満である。
2:ベタツキがあり、画像の転写面積が5%以上10%未満である。
1:ベタツキがあり、画像の転写面積が10%以上である。
評価が3以上であれば実用上問題がなく、4以上であれば実用性に優れている。
Claims (8)
- 低吸液性印刷媒体へのインクジェット印刷用水系インクであって、
顔料、水溶性有機溶媒、及びシリコーン系界面活性剤を含有し、
水溶性有機溶媒が、プロピレングリコール(S1)とグリコールエーテル(S2)とを含み、
プロピレングリコール(S1)のインク中の含有量が20質量%未満であり、
該プロピレングリコール(S1)と該グリコールエーテル(S2)のインク中の合計含有量が4質量%以上25質量%以下であり、
該プロピレングリコール(S1)に対する該グリコールエーテル(S2)の質量比〔(S2)/(S1)〕が0.1以上0.6以下であり、
32℃における粘度が2mPa・s以上5mPa・s未満である、
インクジェット印刷用水系インク。 - グリコールエーテル(S2)が、ジエチレングリコールモノブチルエーテル及びジエチレングリコールモノイソブチルエーテルから選ばれる1種以上である、請求項1に記載のインクジェット印刷用水系インク。
- 低吸液性印刷媒体が合成樹脂である、請求項1又は2に記載のインクジェット印刷用水系インク。
- 合成樹脂が、ポリエチレンテレフタレート又はポリプロピレンである、請求項3に記載のインクジェット印刷用水系インク。
- 顔料が、顔料を含有するポリマー粒子の形態である、請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェット印刷用水系インク。
- 顔料を含有するポリマー粒子が架橋剤で架橋されてなる、請求項5に記載のインクジェット印刷用水系インク。
- 軟包装印刷用又はラベル・シール印刷用である、請求項1〜6のいずれかに記載のインクジェット印刷用水系インク。
- 請求項1〜7のいずれかに記載のインクを用いて、低吸液性印刷媒体に印刷する、インクジェット印刷方法。
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