JP2022122620A - 油中水型エマルションインク - Google Patents

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Abstract

【課題】貯蔵安定性に優れ、かつ、高吸水性の印刷媒体に印刷した際においても耐マーカー性に優れる印刷物を得ることができる油中水型エマルションインク、及び該油中水型エマルションインクの製造方法を提供する。【解決手段】油相中に水相を有する油中水型エマルションインクであって、該水相が、顔料、ポリマー分散剤A、及びポリエステル系樹脂粒子Bを含有し、該ポリマー分散剤Aが架橋構造を有する、油中水型エマルションインク、及び該油中水型エマルションインクの製造方法である。【選択図】なし

Description

本発明は、油中水型エマルションインク、及び該油中水型エマルションインクの製造方法に関する。
インクジェット記録方式は、微細なノズルからインク液滴を直接吐出し、印刷媒体に付着させて、文字や画像が記録された印刷物を得る記録方式である。この方式は、フルカラー化が容易でかつ安価であり、被印刷物に非接触という利点があるため、一般消費者向けの民生用印刷に留まらず、近年は、商業印刷や産業印刷分野に応用され始めている。
従来、インクジェット記録用インクとしては、着色剤として顔料や染料を用いた水系インクが用いられてきた。しかしながら、水系インクを用いて普通紙に印刷する場合には、普通紙の吸水性が高いため印字濃度は高くなる反面、水系インクに含まれる水による普通紙繊維の膨張により印刷物にカールが発生して変形するという問題がある。
また、商業印刷や産業印刷分野では高速印刷が求められており、この高速印刷に対応すべく、ラインヘッド型インクジェット記録方式を採用した印刷機が開発され、油性顔料インクが用いられている。油性顔料インクを用いて普通紙に印刷する場合には、印刷物の変形は低減できるが、印刷物の内部までインクが浸透し、印刷物の印字濃度が低くなるという問題がある。
そこで、油中水型(W/O)エマルションインクを用いる検討がされている。
例えば、特許文献1には、高速定着性及び耐擦過性等に優れるインクジェット用エマルジョンインクの提供を目的として、油相及び水相からなる油中水滴型エマルジョンインクであって、該水相は、水及び着色剤を含有し、該着色剤がポリマーを含む変性顔料であるインクジェット用エマルジョンインクが開示されている。
特開2015-189859号公報
油中水型エマルションインクは、連続相を油相とし、該油相に水相が乳化されてなる。水相中に着色剤として顔料が含まれる場合、水相が凝集し易くなるため、貯蔵安定性の向上が求められる。
また、油中水型エマルションインクを用いて普通紙のような高吸水性の印刷媒体に印刷を行った場合、顔料が印刷媒体の表層に残存するため、耐マーカー性が十分でないことが判明した。
本発明は、貯蔵安定性に優れ、かつ、高吸水性の印刷媒体に印刷した際においても耐マーカー性に優れる印刷物を得ることができる油中水型エマルションインク、及び該油中水型エマルションインクの製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は、油相中に水相を有する油中水型エマルションインクであって、水相が、顔料、ポリマー分散剤、及びポリエステル系樹脂粒子を含有し、該ポリマー分散剤が架橋構造を有することにより、優れた貯蔵安定性を維持しつつ、耐マーカー性を向上させることができることに着目し、上記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明は、次の[1]及び[2]を提供する。
[1]油相中に水相を有する油中水型エマルションインクであって、
該水相が、顔料、ポリマー分散剤A、及びポリエステル系樹脂粒子Bを含有し、
該ポリマー分散剤Aが架橋構造を有する、油中水型エマルションインク。
[2]下記の工程Iを含む、前記[1]に記載の油中水型エマルションインクの製造方法。
工程I:顔料がポリマー分散剤Aで水系媒体に分散されてなる水系顔料分散体、及びポリエステル系樹脂粒子Bの水系分散体を含む水相成分と、油相成分とを混合及び乳化し、油中水型エマルションインクを得る工程
本発明は、貯蔵安定性に優れ、かつ、高吸水性の印刷媒体に印刷した際においても耐マーカー性に優れる印刷物を得ることができる油中水型エマルションインク、及び該油中水型エマルションインクの製造方法を提供することができる。
[油中水型エマルションインク]
本発明の油中水型エマルションインク(以下、「エマルションインク」ともいう)は、油相中に水相を有する油中水型エマルションインクであって、該水相が、顔料、ポリマー分散剤A、及びポリエステル系樹脂粒子Bを含有し、該ポリマー分散剤Aが架橋構造を有する。
本発明においては、油相に分散されてなる水相中に、ポリマー分散剤Aで分散されてなる顔料と、ポリエステル系樹脂粒子Bとが含まれる。
本発明において、水相中で、ポリマー分散剤Aで分散されてなる顔料と、ポリエステル系樹脂粒子Bとは別々に存在し、これらの存在形態は、例えば、エマルションインクから水相成分を回収して、電子顕微鏡により確認することができる。
本発明の油中水型エマルションインクは、貯蔵安定性に優れ、かつ、高吸水性の印刷媒体に印刷した際においても耐マーカー性に優れるという格別の効果を奏する。その理由は定かではないが、以下のように考えられる。
本発明において、顔料は、分散相である水相中において架橋構造を有するポリマー分散剤で分散されてなり、水相に更に含まれるポリエステル系樹脂粒子が該水相中で膨潤し難いために、印刷媒体上に形成されたインク皮膜の耐水性が発現すると考えられる。そのため、高吸水性の印刷媒体に印刷した後、該印刷媒体上の乾燥したインク皮膜が再度水系液体に触れる操作、例えば水性マーカーペンによる擦過があったとしても、インク皮膜が耐水性を有するため、耐マーカー性に優れると考えられる。
また、顔料を含む水相が、膨潤し難いポリエステル系樹脂粒子と、更に架橋構造を有するポリマー分散剤とを含むことで、分散相液滴粒子間の相互作用が抑制されており、分散相液滴粒子の合一が抑制されてエマルションインクの系全体が安定化され、エマルションインクを高温下で長期間保存した際の貯蔵安定性に優れると考えられる。
<水相>
水相は、貯蔵安定性及び耐マーカー性を向上する観点から、顔料、ポリマー分散剤A、及びポリエステル系樹脂粒子Bを含有する。
(顔料)
本発明に係る顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれであってもよく、レーキ顔料、蛍光顔料を用いることもできる。また、必要に応じて、それらと体質顔料を併用することもできる。
無機顔料の具体例としては、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄、ベンガラ、酸化クロム等の金属酸化物、真珠光沢顔料等が挙げられる。特にブラックインクにおいては、カーボンブラックが好ましい。
カーボンブラックの種類には特に制限はなく、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。
有機顔料の具体例としては、アゾレーキ顔料、不溶性モノアゾ顔料、不溶性ジスアゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料類;フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ベンツイミダゾロン顔料、スレン顔料等の多環式顔料類等が挙げられる。
色相は特に限定されず、イエロー、マゼンタ、シアン、ブルー、レッド、オレンジ、グリーン等の有彩色顔料をいずれも用いることができる。
好ましい有機顔料の具体例としては、C.I.ピグメント・イエロー、C.I.ピグメント・レッド、C.I.ピグメント・オレンジ、C.I.ピグメント・バイオレット、C.I.ピグメント・ブルー、及びC.I.ピグメント・グリーンから選ばれる1種以上の各品番製品が挙げられる。
体質顔料としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。
顔料は1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
(ポリマー分散剤A)
本発明のエマルションインク中の顔料は、水相中での顔料の分散安定性を向上させて、貯蔵安定性を向上させる観点、及び耐マーカー性を向上させる観点から、水相中でポリマー分散剤Aにより分散されてなり、該ポリマー分散剤Aは、架橋構造を有する。
本発明において、架橋構造を有するポリマー分散剤Aが顔料表面に強固に吸着又は固定化され、水相中での顔料の凝集、とりわけ枯渇凝集が抑制され、水相中での顔料の分散安定性を向上し、更にポリマーの膨潤も抑制され、エマルションインクの系全体を安定化することができるため、貯蔵安定性を向上させることができると考えられる。
ポリマー分散剤Aは、顔料の分散安定性を向上させて、貯蔵安定性を向上させる観点、及び耐マーカー性を向上させる観点から、好ましくは非架橋のポリマーを架橋剤で架橋したポリマー又は架橋性基を導入した自己架橋構造を有するポリマーであり、より好ましくは非架橋のポリマー(以下、「ポリマー(a)」ともいう)を架橋剤で架橋したポリマーである。ポリマー分散剤Aがポリマー(a)を架橋剤で架橋したポリマーである場合、ポリマー分散剤Aは、非架橋のポリマー(a)と架橋剤とを反応させてなるものであり、ポリマー(a)を構成するモノマー由来の構成単位に加えて、更に架橋剤由来の構造を有するものである。
ポリマー分散剤Aとしては、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等が挙げられる。ポリマー分散剤Aは、中でも、前記と同様の観点から、好ましくはビニル系樹脂である。
ポリマー分散剤Aは、少なくとも顔料分散能を有するものであれば特に制限はないが、水相中での顔料の分散安定性を向上させて、貯蔵安定性を向上させる観点、及び耐マーカー性を向上させる観点から、好ましくは酸基を含む。
ポリマー分散剤Aの酸基としては、カルボキシ基(-COOM)、スルホン酸基(-SO3M)、リン酸基(-OPO32)等の解離して水素イオンが放出されることにより酸性を呈する基、又はそれらの解離したイオン形(-COO-、-SO3 -、-OPO3 2-、-OPO3 -M)等が挙げられる。上記化学式中、Mは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを示す。これらの中でも、前記と同様の観点から、カルボキシ基(-COOM)が好ましい。
ポリマー分散剤Aの酸価は、水相中での顔料の分散安定性を向上させて、貯蔵安定性を向上させる観点、及び耐マーカー性を向上させる観点から、好ましくは45mgKOH/g以上、より好ましくは60mgKOH/g以上、更に好ましくは70mgKOH/g以上、より更に好ましくは90mgKOH/g以上、より更に好ましくは110mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは200mgKOH/g以下、より好ましくは180mgKOH/g以下、更に好ましくは160mgKOH/g以下、より更に好ましくは140mgKOH/g以下、より更に好ましくは130mgKOH/g以下である。酸価が前記の範囲であれば、顔料の分散安定性を確保するのに十分な酸基の量とすることができる。また、ポリマー分散剤Aと水との親和性と、ポリマー分散剤Aと顔料との相互作用とのバランスの点からも好ましい。
ポリマー分散剤Aの酸価は、実施例に記載の方法により測定することができる。
また、ポリマー分散剤Aが、前述のポリマー(a)を架橋剤で架橋したポリマーである場合には、ポリマー分散剤Aの酸価は、次式によって求めることもできる。
ポリマー分散剤(A)の酸価(mgKOH/g)=〔ポリマー(a)の酸価(mgKOH/g)〕×〔100-架橋度(モル%)〕/100
ここで、ポリマー(a)の酸価は、構成するモノマーの質量比から算出することができる。また、架橋度は、ポリマー(a)の酸基の当量と架橋剤の架橋性官能基の当量とから計算される架橋度であり、「架橋剤の架橋性官能基のモル当量数/ポリマー(a)が有する酸基のモル当量数」で表される。
ポリマー分散剤Aの酸基の少なくとも一部は、水相中での顔料の分散安定性を向上させ、貯蔵安定性を向上させる観点、及び耐マーカー性を向上させる観点から、中和されてなることが好ましい。ポリマー分散剤Aの中和された酸基の対イオンは、顔料の分散安定性を向上させ、貯蔵安定性を高める観点、及び耐マーカー性を向上させる観点から、好ましくはアルカリ金属カチオンであり、より好ましくはナトリウムイオン(Na)及びカリウムイオン(K)から選ばれる1種以上である。
中和度は、前記と同様の観点から、好ましくは20モル%以上、より好ましくは30モル%以上、更に好ましくは40モル%以上、より更に好ましくは45モル%以上であり、そして、好ましくは80モル%以下、より好ましくは70モル%以下、更に好ましくは60モル%以下である。
中和度(モル%)は、具体的には、次式によって求めることができる。
中和度(モル%)=〔{中和剤の添加質量(g)/中和剤の当量}/[{ポリマー分散剤Aの酸価(mgKOH/g)×ポリマー分散剤Aの質量(g)}/(56.1×1,000)]〕×100
〔ポリマー(a)〕
ポリマー(a)は、水相中での顔料の分散安定性を向上させ、貯蔵安定性を向上させる観点、及び耐マーカー性を向上させる観点から、好ましくは酸基を含む。かかる酸基としては、前述のポリマー分散剤Aで例示したものと同様のものが挙げられる。それらの中でも、前記と同様の観点から、カルボキシ基(-COOM)が好ましい。
ポリマー(a)の酸価は、水相中での顔料の分散安定性を向上させて、貯蔵安定性を向上させる観点、及び耐マーカー性を向上させる観点から、好ましくは70mgKOH/g以上、より好ましくは100mgKOH/g以上、更に好ましくは150mgKOH/g以上、より更に好ましくは200mgKOH/g以上、より更に好ましくは220mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは320mgKOH/g以下、より好ましくは300mgKOH/g以下、更に好ましくは280mgKOH/g以下、より更に好ましくは260mgKOH/g以下である。酸価が前記の範囲であれば、顔料の分散安定性を確保するのに十分な酸基の量とすることができる。また、ポリマー(a)と水との親和性と、ポリマー(a)と顔料との相互作用とのバランスの点からも好ましい。
ポリマー(a)の酸価は、実施例に記載の方法により測定することができる。
また、ポリマー(a)の酸価は、構成するモノマーの質量比から算出することができる。
ポリマー(a)としては、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等が挙げられる。中でも、好ましくはビニル系樹脂であり、より好ましくはカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位と疎水性モノマー由来の構成単位とを含むビニル系樹脂である。該ビニル系樹脂は、更にノニオン性モノマー由来の構成単位を含有してもよい。
〔カルボキシ基含有モノマー〕
カルボキシ基含有モノマーは、水相中での顔料の分散安定性を向上させ、貯蔵安定性を向上させる観点、及び耐マーカー性を向上させる観点から、ビニル系樹脂のモノマー成分として用いられることが好ましい。
カルボキシ基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2-メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられるが、好ましくは(メタ)アクリル酸であり、より好ましくはアクリル酸である。
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる少なくとも1種を意味する。
カルボキシ基含有モノマーは、1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
〔疎水性モノマー〕
疎水性モノマーは、ポリマーの顔料への吸着性を向上させ、水相中での顔料の分散安定性を向上させ、貯蔵安定性を向上させる観点、及び耐マーカー性を向上させる観点から、ビニル系樹脂のモノマー成分として用いられることが好ましい。
本明細書において「疎水性」とは、モノマーを25℃のイオン交換水100gへ飽和するまで溶解させたときに、その溶解量が10g未満であることをいう。疎水性モノマーの前記溶解量は、ポリマーの顔料への吸着性の観点から、好ましくは5g以下、より好ましくは1g以下である。
疎水性モノマーは、芳香族基含有モノマー、脂肪族アルコール由来の炭化水素基を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」とはアクリレート及びメタクリレートから選ばれる少なくとも1種である。
疎水性モノマーは、1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
芳香族基含有モノマーは、好ましくは炭素数6以上22以下の芳香族基を有するビニルモノマーであり、より好ましくはスチレン系モノマー及び芳香族基含有(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種である。芳香族基含有モノマーの分子量は、500未満が好ましい。また、芳香族基含有モノマーは、ヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい。
スチレン系モノマーは、好ましくは、スチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、ビニルトルエン、及びジビニルベンゼンから選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくはスチレン及びα-メチルスチレンから選ばれる少なくとも1種である。
芳香族基含有(メタ)アクリレートは、好ましくはフェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくはベンジル(メタ)アクリレートである。
脂肪族アルコール由来の炭化水素基を有する(メタ)アクリレートは、好ましくは炭素数1以上22以下の脂肪族アルコール由来の炭化水素基を有するものである。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレート;イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソドデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の分岐鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の脂環式アルキル基を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。
本発明においては、ビニル系樹脂を構成する疎水性モノマーとして疎水性のマクロモノマーを用いてもよい。
マクロモノマーは、片末端に重合性官能基を有する数平均分子量500以上100,000以下の化合物であり、水相中での顔料の分散安定性を向上させる観点から、ビニル系樹脂のモノマー成分として用いることができる。片末端に存在する重合性官能基としては、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基が好ましく、メタクリロイルオキシ基がより好ましい。
マクロモノマーの数平均分子量は1,000以上10,000以下が好ましい。なお、数平均分子量は、溶媒として1mmol/Lのドデシルジメチルアミンを含有するクロロホルムを用いたゲル浸透クロマトグラフィー法により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定される。
マクロモノマーとしては、水相中での顔料の分散安定性の観点から、芳香族基含有モノマー系マクロモノマー及びシリコーン系マクロモノマーが好ましく、芳香族基含有モノマー系マクロモノマーがより好ましい。
芳香族基含有モノマー系マクロモノマーを構成する芳香族基含有モノマーとしては、前述の疎水性モノマーで記載した芳香族基含有モノマーが挙げられ、スチレン及びベンジル(メタ)アクリレートが好ましく、スチレンがより好ましい。
マクロモノマーは、1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
商業的に入手しうるスチレン系マクロモノマーの具体例としては、AS-6(S)、AN-6(S)、HS-6(S)(東亞合成株式会社の商品名)等が挙げられる。
シリコーン系マクロモノマーとしては、片末端に重合性官能基を有するオルガノポリシロキサン等が挙げられる。
疎水性モノマーは、ポリマーの顔料への吸着性を向上させ、水相中での顔料の分散安定性を向上させ、貯蔵安定性を向上させる観点、及び耐マーカー性を向上させる観点から、好ましくは芳香族基含有モノマー、脂肪族アルコール由来の炭化水素基を有する(メタ)アクリレート、及び芳香族基含有モノマー系マクロモノマーから選ばれる1種以上であり、より好ましくは芳香族基含有モノマー及び脂肪族アルコール由来の炭化水素基を有する(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上であり、更に好ましくは芳香族基含有モノマーであり、より更に好ましくはスチレン系モノマー及び芳香族基含有(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上である。
〔ノニオン性モノマー〕
ノニオン性モノマーは、水相中での顔料の分散安定性の観点から、ビニル系樹脂のモノマー成分として用いることができる。
ノニオン性モノマーとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ポリプロピレングリコール(n=2~30、nはオキシプロピレン基の平均付加モル数を示す。以下のnは当該オキシアルキレン基の平均付加モル数を示す。)(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(n=2~30)(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;メトキシポリエチレングリコール(n=1~30)(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;フェノキシ(エチレングリコール・プロピレングリコール共重合)(n=1~30、その中のエチレングリコール:n=1~29)(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、ポリプロピレングリコール(n=2~30)(メタ)アクリレート、アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシ(エチレングリコール/プロピレングリコール共重合)(メタ)アクリレートが好ましい。
ノニオン性モノマーは、1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
商業的に入手しうるノニオン性モノマーの具体例としては、新中村化学工業株式会社のNKエステルM-20G、同40G、同90G、同230G等、日油株式会社のブレンマーPE-90、同200、同350等、ブレンマーPME-100、同200、同400等、ブレンマーPP-500、同800、同1000等、ブレンマーAP-150、同400、同550等、ブレンマー50PEP-300、50POEP-800B、43PAPE-600B等が挙げられる。
以上のとおり、本発明に係るポリマー(a)は、好ましくは、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる1種以上のカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位と、芳香族基含有モノマー、脂肪族アルコール由来の炭化水素基を有する(メタ)アクリレート、及び芳香族基含有モノマー系マクロモノマーから選ばれる1種以上の疎水性モノマー由来の構成単位とを含むビニル系樹脂であり、更にノニオン性モノマー由来の構成単位を含むビニル系樹脂であってもよいが、水相中での顔料の分散安定性を向上させ、貯蔵安定性を向上させる観点、及び耐マーカー性を向上させる観点から、より好ましくは、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる1種以上のカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位と、芳香族基含有モノマー及び脂肪族アルコール由来の炭化水素基を有する(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上の疎水性モノマー由来の構成単位とを含むビニル系樹脂であり、更に好ましくは、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる1種以上のカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位と、スチレン系モノマー及び芳香族基含有(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上の疎水性モノマー由来の構成単位とを含むビニル系樹脂である。
(ビニル系樹脂中における各モノマー由来の構成単位の含有量)
ビニル系樹脂中の各モノマー由来の構成単位の含有量は、水相中での顔料の分散安定性を向上させ、貯蔵安定性を向上させる観点、及び耐マーカー性を向上させる観点から、次のとおりである。
ビニル系樹脂中のカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、より更に好ましくは20質量%以上であり、そして、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、より更に好ましくは40質量%以下である。
ビニル系樹脂中の疎水性モノマー由来の構成単位の含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、より更に好ましくは60質量%以上であり、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは85質量%以下である。
ビニル系樹脂がマクロモノマー由来の構成単位を含有する場合、該ビニル系樹脂中の該マクロモノマー由来の構成単位の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。
ビニル系樹脂がノニオン性モノマー由来の構成単位を含有する場合、該ビニル系樹脂中の該ノニオン性モノマー由来の構成単位の含有量は、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは7質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。
なお、上記のビニル系樹脂中の各モノマー由来の構成単位の含有量はNMR等の分析により測定することができる。また、ビニル系樹脂製造時における原料モノマー中の各モノマーの含有量(未中和量としての含有量)の好ましい範囲は、上記のビニル系樹脂中の各モノマー由来の構成単位の含有量の好ましい範囲と同じとみなすことができる。
ビニル系樹脂中のカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位と疎水性モノマー由来の構成単位の合計含有量は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上であり、そして、好ましくは100質量%以下、より更に好ましくは実質的に100質量%、より更に好ましくは100質量%である。
ビニル系樹脂中のカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位の含有量と疎水性モノマー由来の構成単位の含有量との質量比[カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位の含有量/疎水性モノマー由来の構成単位の含有量]は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.3以上、より更に好ましくは0.4以上であり、そして、好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下、更に好ましくは1.0以下、より更に好ましくは0.9以下、より更に好ましくは0.8以下、より更に好ましくは0.7以下、より更に好ましくは0.5以下である。
ビニル系樹脂は、原料モノマーを塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合法により共重合させることによって製造される。これらの重合法の中では、溶液重合法が好ましい。また、重合モノマーの連鎖の様式に制限はなく、ランダム、ブロック、グラフト等のいずれの重合様式でもよい。
ビニル系樹脂の重量平均分子量は、好ましくは2,000以上、より好ましくは5,000以上、更に好ましくは7,000以上であり、そして、好ましくは100,000以下、より好ましくは50,000以下、更に好ましくは30,000以下、より更に好ましくは20,000以下である。ビニル系樹脂の重量平均分子量が前記の範囲であれば、顔料への吸着力が十分であり分散安定性を発現することができる。
ビニル系樹脂の重量平均分子量は、実施例に記載の方法により測定される。
〔架橋剤〕
架橋剤は、ポリマー(a)との反応性の観点から、該架橋剤の水溶率(質量比)は、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下、更に好ましくは35%以下であり、そして、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上である。水溶率%(質量比)とは、室温25℃にて水90質量部に架橋剤10質量部を溶解したときの溶解率(%)をいう。
架橋剤は好ましくは多官能化合物であり、ポリマー(a)が酸基を含む場合、該多官能化合物の架橋性官能基が、ポリマー(a)の酸基と反応して共有結合を形成できるものが好ましい。該共有結合は、好ましくは、エステル結合、チオエステル結合、アミド結合、アミノ結合、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合及びスルホニル結合から選ばれる1種以上であり、より好ましくはエステル結合、チオエステル結合及びアミド結合から選ばれる1種以上である。多官能化合物の架橋性官能基は、上記した共有結合を形成できるものであれば特に限定されない。
架橋剤の分子量は、反応容易性、水相中での顔料の分散安定性を向上させ、貯蔵安定性を向上させる観点、及び耐マーカー性を向上させる観点から、好ましくは120以上、より好ましくは150以上、更に好ましくは200以上であり、そして、好ましくは2,000以下、より好ましくは1,500以下、更に好ましくは1,000以下である。
架橋性官能基は、好ましくはエポキシ基、イソシアネート基、アジリジノ基、アミノ基及びオキサゾリン基から選ばれる1種以上であり、より好ましくはエポキシ基である。なお、エポキシ基の概念にはグリシジル基を含む。すなわち、架橋剤は、好ましくは多官能エポキシ化合物であり、架橋効率の観点から、より好ましくは分子中にエポキシ基を2以上有する化合物、更に好ましくはグリシジルエーテル基を2以上有する化合物、より更に好ましくは炭素数3以上8以下の炭化水素基を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル化合物である。
架橋剤が多官能エポキシ化合物である場合、該架橋剤のエポキシ当量は、好ましくは90以上、より好ましくは100以上、更に好ましくは110以上であり、そして、好ましくは300以下、より好ましくは200以下、更に好ましくは150以下である。
架橋剤が多官能エポキシ化合物である場合、該架橋剤のエポキシ基の数は、効率よく架橋反応させて、水相中での顔料の分散安定性を向上させ、貯蔵安定性を向上させる観点、及び耐マーカー性を向上させる観点から、1分子あたり2以上であり、そして、1分子あたり好ましくは6以下、市場入手性の観点から、より好ましくは4以下、更に好ましくは3以下である。
架橋剤の具体例としては、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、及びジエチレングリコールジグリシジルエーテルから選ばれる1種以上であり、より好ましくはトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルである。
ポリマー分散剤Aの架橋度は、水相中での顔料の分散安定性を向上させて、貯蔵安定性を向上させる観点、及び耐マーカー性を向上させる観点から、好ましくは20モル%以上、より好ましくは30モル%以上、更に好ましくは40モル%以上、より更に好ましくは45モル%以上であり、そして、好ましくは80モル%以下、より好ましくは70モル%以下、更に好ましくは60モル%以下、より更に好ましくは55モル%以下である。
ポリマー分散剤Aの架橋度は、前述のとおり、ポリマー(a)を架橋剤で架橋してなる場合であって、ポリマー(a)が酸基を含む場合、ポリマー(a)の酸基の当量と架橋剤の架橋性官能基の当量とから計算される架橋度であり、「架橋剤の架橋性官能基のモル当量数/ポリマー(a)が有する酸基のモル当量数」で表される。
なお、前述のとおり、ポリマー(a)の酸基の一部が中和されてなる場合には、中和された酸基も架橋点となり得るため、中和度と架橋度の合計が100モル%を超える場合、架橋度は、上記のとおり「架橋剤の架橋性官能基のモル当量数/ポリマー(a)が有する酸基のモル当量数」で表され、ポリマー分散剤Aの中和度は、100モル%から架橋度を差し引いた値となる。
本発明のエマルションインクの水相中における、ポリマー分散剤Aの存在形態としては、顔料に吸着している状態、顔料を含有している状態(顔料を内包(カプセル化)している粒子形態、顔料を均一に分散した粒子形態を含む)、及び顔料を吸着していない形態がある。顔料の分散安定性を向上させて、貯蔵安定性を向上させる観点から、本発明においては顔料をポリマー分散剤Aが含有する粒子(以下、「顔料含有ポリマー粒子」ともいう)の形態が好ましく、顔料をポリマー分散剤Aが内包している粒子の形態がより好ましい。
(ポリエステル系樹脂粒子B)
本発明のエマルションインクの水相は、貯蔵安定性及び耐マーカー性を向上する観点から、ポリエステル系樹脂粒子Bを含有する。
〔ポリエステル系樹脂(b)〕
ポリエステル系樹脂粒子Bを構成するポリエステル系樹脂(以下、「ポリエステル系樹脂(b)」ともいう)は、貯蔵安定性及び耐マーカー性を向上させる観点から、例えば、ポリエステル樹脂、変性されたポリエステル系樹脂が挙げられる。変性されたポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂のウレタン変性物、ポリエステル樹脂のエポキシ変性物が挙げられる。
ポリエステル系樹脂(b)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリエステル系樹脂(b)は、これらの中でも、貯蔵安定性及び耐マーカー性を向上させる観点から、好ましくはポリエステル樹脂である。
ポリエステル系樹脂(b)は、本発明の効果が損なわれない範囲において、ポリエステル樹脂以外の他の樹脂を含有する複合樹脂であってもよい。複合樹脂に含まれるポリエステル樹脂以外の樹脂としては、例えば、ポリスチレン、スチレン-プロピレン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-塩化ビニル共重合体、スチレン-酢酸ビニル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-メタクリル酸エステル共重合体等のスチレンもしくはスチレン置換体を含む単独重合体又は共重合体であるスチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、フェノール系樹脂、脂肪族又は脂環式炭化水素樹脂が挙げられる。これらの中でも、スチレン系樹脂が好ましい。
複合樹脂がポリエステル樹脂以外にスチレン系樹脂を含む場合、該複合樹脂は、アルコール成分とカルボン酸成分との縮重合物であるポリエステル樹脂セグメントと、スチレン系化合物を含む原料モノマーの付加重合物であるビニル系樹脂セグメントと、ポリエステル樹脂セグメント及びビニル系樹脂セグメントと共有結合を介して結合した両反応性モノマー由来の構成単位と、を含むものであってもよい。
ポリエステル系樹脂(b)中のポリエステル樹脂の含有量は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、より更に好ましくは95質量%以上、より更に好ましくは97質量%以上であり、そして、好ましくは100質量%以下、より更に好ましくは100質量%である。
ポリエステル樹脂は、貯蔵安定性及び耐マーカー性を向上させる観点から、好ましくはアルコール成分由来の構成単位とカルボン酸成分由来の構成単位とを含む。
ポリエステル樹脂中、アルコール成分由来の構成単位及びカルボン酸成分由来の構成単位の合計含有量は、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上であり、そして、好ましくは100モル%以下、より更に好ましくは100モル%である。
〔アルコール成分〕
ポリエステル樹脂の原料モノマーであるアルコール成分としては、例えば、ジオール、3価以上の多価アルコールが挙げられる。
アルコール成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ジオールとしては、例えば、芳香族環含有ジオール、主鎖炭素数2以上12以下の脂肪族ジオール、脂環式ジオールが挙げられる。
芳香族環含有ジオールとしては、ビスフェノールA(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン)、ビスフェノールF(4,4’-ジヒドロキシジフェニルメタン)、及びビスフェノールS(4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン)等のアルキレンオキシド付加物が挙げられる。中でも、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物が好ましい。なお、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物とは、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンにオキシアルキレン基を付加した構造全体を意味する。
ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物は、具体的には下記一般式(I)で表される化合物が好ましい。
Figure 2022122620000001
一般式(I)において、OR、ROはいずれもオキシアルキレン基であり、好ましくは、それぞれ独立に炭素数1以上4以下のオキシアルキレン基であり、より好ましくはオキシエチレン基又はオキシプロピレン基である。
x及びyは、アルキレンオキシドの付加モル数に相当する。さらに、カルボン酸成分との反応性の観点から、xとyの和の平均値は、好ましくは2以上であり、そして、好ましくは7以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは3以下である。
また、x個のORとy個のROは、各々同一であっても異なっていてもよいが、定着性を向上させる観点から、同一であることが好ましい。ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。このビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物は、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物及びビスフェノールAのエチレンオキシド付加物が好ましい。
ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物の含有量は、貯蔵安定性及び耐マーカー性を向上させる観点から、ポリエステル樹脂を構成するアルコール成分中、好ましくは40モル%以上、より好ましくは50モル%以上、更に好ましくは60モル%以上、より更に好ましくは70モル%以上、より更に好ましくは80モル%以上、より更に好ましくは90モル%以上であり、そして、好ましくは100モル%以下である。
主鎖炭素数2以上12以下の脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール等のα,ω-脂肪族ジオール;1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、3,3-ジメチル-1,2-ブタンジオール等の第二級炭素原子に結合したヒドロキシ基を有する脂肪族ジオールなどが挙げられる。
主鎖炭素数2以上12以下の脂肪族ジオールは、好ましくはα,ω-脂肪族ジオールであり、より好ましくはエチレングリコールである。
主鎖炭素数2以上12以下の脂肪族ジオールの含有量は、ポリエステル樹脂を構成するアルコール成分中、好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上、更に好ましくは30モル%以上であり、そして、好ましくは60モル%以下、より好ましくは50モル%以下、更に好ましくは40モル%以下である。
脂環式ジオールとしては、例えば、水素添加ビスフェノールA(2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン)、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールが挙げられる。
脂環式ジオールの含有量は、ポリエステル樹脂を構成するアルコール成分中、好ましくは20モル%以上、より好ましくは30モル%以上、更に好ましくは40モル%以上であり、そして、好ましくは80モル%以下、より好ましくは70モル%以下、更に好ましくは60モル%以下である。
〔カルボン酸成分〕
ポリエステル樹脂を構成する原料モノマーであるカルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸化合物、脂肪族ジカルボン酸化合物、脂環式ジカルボン酸化合物、3価以上の多価カルボン酸化合物が好ましく、アルコール成分との反応性を向上させ、貯蔵安定性及び耐アルコール性を向上させる観点から、芳香族ジカルボン酸化合物、脂肪族ジカルボン酸化合物がより好ましい。前述のカルボン酸化合物は、例えば、カルボン酸、それらの無水物及びそれらのアルキルエステル(炭素数1以上3以下)が挙げられる。
前記カルボン酸成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合せて用いることができる。
芳香族ジカルボン酸化合物としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸が好ましく、テレフタル酸、イソフタル酸がより好ましく、テレフタル酸が更に好ましい。
芳香族ジカルボン酸化合物の含有量は、アルコール成分との反応性を向上させ、貯蔵安定性及び耐アルコール性を向上させる観点から、ポリエステル樹脂を構成するカルボン酸成分中、好ましくは30モル%以上、より好ましくは40モル%以上、更に好ましくは50モル%以上であり、そして、100モル%以下、好ましくは97モル%以下、より好ましくは95モル%以下である。
脂肪族ジカルボン酸化合物としては、例えば、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、アゼライン酸、コハク酸、炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸が挙げられる。炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸としては、例えば、ドデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸が挙げられる。これらの中でも、フマル酸、アジピン酸、ドデセニルコハク酸が好ましい。
脂肪族ジカルボン酸化合物の含有量は、ポリエステル樹脂を構成するカルボン酸成分中、好ましくは3モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは10モル%以上であり、そして、好ましくは70モル%以下、より好ましくは60モル%以下、更に好ましくは50モル%以下である。
脂環式ジカルボン酸化合物としては、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸を用いてもよい。
脂環式ジカルボン酸化合物の含有量は、ポリエステル樹脂を構成するカルボン酸成分中、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下、更に好ましくは10モル%以下であり、そして、好ましくは0モル%である。
ポリエステル樹脂は、貯蔵安定性及び耐マーカー性を向上させる観点から、好ましくは架橋構造を有してもよい。
ここで、ポリエステル樹脂の架橋構造とは、ポリエステル鎖中に複数の分岐単位が導入されている構造を意味する。架橋構造は、ポリエステル樹脂を構成する原料モノマーが、3価以上のアルコール及び3価以上のカルボン酸化合物から選ばれる少なくとも1種の3価以上の原料モノマー(以下、「3価以上の原料モノマー」ともいう)を含むことで導入することができる。
3価以上のアルコールとしては、例えば、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタンが挙げられる。中でも、好ましくはトリメチロールプロパンである。
3価以上のカルボン酸化合物としては、例えば、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸が挙げられる。中でも、好ましくはトリメリット酸又はその無水物である。
3価以上の原料モノマーの含有量は、貯蔵安定性及び耐マーカー性を向上させる観点から、ポリエステル樹脂を構成するカルボン酸成分中、好ましくは1モル%以上、より好ましくは2モル%以上、更に好ましくは3モル%以上であり、そして、好ましくは30モル%以下、より好ましくは25モル%以下、更に好ましくは20モル%以下である。
3価以上の原料モノマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ポリエステル樹脂中のアルコール成分のヒドロキシ基(OH基)に対するカルボン酸成分のカルボキシ基(COOH基)の当量比[COOH基/OH基]は、貯蔵安定性及び耐マーカー性をより向上させる観点から、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上であり、そして、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下である。
ポリエステル樹脂は、少なくとも、アルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して得られる。該アルコール成分及び該カルボン酸成分の好適な態様及び好適な含有量は、それぞれ、前述のとおりである。
ポリエステル樹脂は、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分とを不活性ガス雰囲気中、必要に応じてエステル化触媒を用いて、120℃以上250℃以下の温度で縮重合することにより製造することができる。
エステル化触媒としては、例えば、酸化ジブチル錫、ジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)等の錫化合物;チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物が挙げられる。また、必要に応じて4-tert-ブチルカテコール等のラジカル重合禁止剤を使用することができる。
ポリエステル系樹脂(b)は、ポリエステル系樹脂粒子の分散安定性を向上させ、貯蔵安定性を向上させる観点、及び耐マーカー性を向上させる観点から、好ましくは酸基を含む。かかる酸基としては、前述のポリマー分散剤Aで例示したものと同様のものが挙げられる。それらの中でも、前記と同様の観点から、カルボキシ基(-COOM)が好ましい。
ポリエステル系樹脂(b)の酸基の少なくとも一部は、ポリエステル系樹脂粒子の分散安定性を向上させ、貯蔵安定性を向上させる観点、及び耐マーカー性を向上させる観点から、中和されてなることが好ましい。
ポリエステル系樹脂(b)の中和された酸基の対イオンは、ポリエステル系樹脂粒子の分散安定性を向上させ、貯蔵安定性させる観点、及び耐マーカー性を向上させる観点から、好ましくはアルカリ金属カチオンであり、より好ましくはナトリウムイオン(Na)及びカリウムイオン(K)から選ばれる1種以上である。
中和度は、前記と同様の観点から、好ましくは20モル%以上、より好ましくは30モル%以上、更に好ましくは40モル%以上、より更に好ましくは45モル%以上であり、そして、好ましくは80モル%以下、より好ましくは75モル%以下、更に好ましくは70モル%以下、より更に好ましくは65モル%以下である。
中和度(モル%)は、具体的には、次式によって求めることができる。
中和度(モル%)=〔{中和剤の添加質量(g)/中和剤の当量}/[{ポリエステル系樹脂(b)の酸価(mgKOH/g)×ポリエステル系樹脂(b)の質量(g)}/(56.1×1,000)]〕×100
ポリエステル系樹脂(b)の酸価は、ポリエステル系樹脂粒子の分散安定性を向上させ、貯蔵安定性及び耐マーカー性を向上させる観点から、好ましくは3mgKOH/g以上、より好ましくは5mgKOH/g以上、更に好ましくは7mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは45mgKOH/g以下、より好ましくは40mgKOH/g以下、更に好ましくは35mgKOH/g以下である。
ポリエステル系樹脂(b)の軟化点は、貯蔵安定性及び耐マーカー性を向上させる観点から、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、更に好ましくは100℃以上であり、そして、好ましくは180℃以下、より好ましくは170℃以下、更に好ましくは165℃以下である。
ポリエステル系樹脂(b)のガラス転移温度は、貯蔵安定性及び耐マーカー性を向上させる観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは45℃以上、更に好ましくは50℃以上であり、そして、好ましくは110℃以下、より好ましくは105℃以下、更に好ましくは100℃以下、より更に好ましくは95℃以下である。
ポリエステル系樹脂(b)の重量平均分子量は、貯蔵安定性及び耐マーカー性を向上させる観点から、好ましくは3,000以上、より好ましくは5,000以上、更に好ましくは7,000以上であり、そして、好ましくは500,000以下、より好ましくは400,000以下、更に好ましくは300,000以下、より更に好ましくは200,000以下である。
ポリエステル系樹脂(b)の酸価、軟化点、及びガラス転移温度は、いずれも実施例に記載の方法で測定することができ、用いるモノマーの種類、配合比率、縮重合の温度、反応時間を適宜調節することにより所望のものを得ることができる。
(界面活性剤)
本発明のエマルションインクにおいては、水相中に界面活性剤を含有させてもよい。界面活性剤は、水相中での顔料の分散安定性を向上させ、水相と油相の界面のエネルギーを低下させ、安定な分散相の形成に寄与し、貯蔵安定性を向上させることができると考えられる。当該観点から、界面活性剤は、好ましくは非イオン性界面活性剤であり、より好ましくはアセチレングリコール系界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル型界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤から選ばれる1種以上であり、更に好ましくはアセチレングリコール系界面活性剤及びポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤から選ばれる1種であり、より更に好ましくはアセチレングリコール系界面活性剤である。
非イオン性界面活性剤のHLB(親水親油バランス)値は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは10以上、より更に好ましくは12以上であり、そして、好ましくは20以下、より好ましくは18以下である。
HLB値は、界面活性剤の水及び油への親和性を示す値であり、グリフィン法により次式から求めることができる。なお、次式において「界面活性剤中に含まれる親水基」としては、例えば、水酸基及びエチレンオキシ基が挙げられる。
HLB=20×[(界面活性剤中に含まれる親水基の式量の総和)/(界面活性剤の分子量)]
アセチレングリコール系界面活性剤は、好ましくは2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのエチレンオキシド(以下、「EO」ともいう)付加物、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオールのEO付加物、2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオールのEO付加物、2,5,8,11-テトラメチル-6-ドデシン-5,8-ジオールのEO付加物、及び3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オールのEO付加物から選ばれる1種以上であり、より好ましくは2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのEO付加物、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオールのEO付加物、及び2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオールのEO付加物から選ばれる1種以上であり、更に好ましくは2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのEO付加物である。
アセチレングリコール系界面活性剤として用いられる前述のEO付加物のEO平均付加モル数が、好ましくは5以上、より好ましくは6以上、更に好ましくは7以上、より更に好ましくは8以上であり、そして、好ましくは40以下、より好ましくは36以下、更に好ましくは32以下であるものが好ましい。
アセチレングリコール系界面活性剤の市販品としては、日信化学工業株式会社製のサーフィノールシリーズ;川研ファインケミカル株式会社製のアセチレノールシリーズ等が挙げられる。
ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、シリコーンオイルの側鎖及び/又は末端の炭化水素基を、ポリエーテル基で置換された構造を有するものが好ましい。該ポリエーテル基としては、ポリエチレンオキシ基、ポリプロピレンオキシ基、エチレンオキシ基(EO)とプロピレンオキシ基(トリメチレンオキシ基又はプロパン-1,2-ジイルオキシ基;PO)がブロック状又はランダムに付加したポリアルキレンオキシ基が好適であり、シリコーン主鎖にポリエーテル基がグラフトした化合物、シリコーンとポリエーテル基がブロック状に結合した化合物等を用いることができる。
ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤の市販品としては、信越化学工業株式会社製のKF-353、KF-355A、KF-642等;日信化学工業株式会社製のシルフェイスSAG005等;株式会社NUC製のFZ-2191等;ビックケミー・ジャパン株式会社製のBYK-348等が挙げられる。
(水溶性有機溶剤)
本発明のエマルションインクにおいては、水相中での顔料の分散安定性を向上させて、貯蔵安定性を向上させる観点、及び耐マーカー性を向上させる観点から、水相は水溶性有機溶剤を更に含有してもよい。
水溶性有機溶剤は、有機溶剤を25℃の水100mLに溶解させたときに、その溶解量が10mL以上である有機溶剤をいう。
水溶性有機溶剤としては、油中水型エマルションインクの水相に通常用いられ、水と任意の割合で混和できるものが好ましく、炭素数1以上4以下のアルカノール、多価アルコール、多価アルコールアルキルエーテル、ケトン、環状エーテル、含窒素複素環化合物、アミド、アミン、含硫黄化合物等が挙げられる。これらの中では、多価アルコール及び多価アルコールアルキルエーテルから選ばれる1種以上がより好ましい。
水溶性有機溶剤の沸点は、好ましくは60℃以上、より好ましくは90℃以上、更に好ましくは150℃以上であり、そして、好ましくは350℃以下、より好ましくは330℃以下、更に好ましくは310℃以下である。
水溶性有機溶剤は、水と任意の割合で混和できるものであれば1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
本発明において水相は、本発明の効果を阻害しない範囲で、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤等を含有することができる。
<油相>
本発明のエマルションインクの油相は、貯蔵安定性及び耐マーカー性を向上させる観点から、好ましくは非水溶性有機溶剤及び乳化剤を含有する。
(非水溶性有機溶剤)
非水溶性有機溶剤は、有機溶剤を25℃の水100mLに溶解させたときに、その溶解量が10mL未満である有機溶剤をいう。
非水溶性有機溶剤としては、非極性有機溶剤、極性有機溶剤のいずれも用いることができる。これらは、1種を単独で用いてもよく、単一の連続する相を形成する限り2種以上を組み合わせて用いることもできる。
非極性有機溶剤としては、パラフィン系、イソパラフィン系、ナフテン系等の脂肪族炭化水素溶剤、脂環式炭化水素溶剤又は芳香族炭化水素溶剤等の炭化水素溶剤が挙げられる。
非極性有機溶剤の初留点は、好ましくは90℃以上、より好ましくは150℃以上であり、そして、好ましくは300℃以下、より好ましくは250℃以下である。
非極性有機溶剤の市販品としては、アイソパー(商品名)シリーズ、エクソール(商品名)シリーズ(いずれも、エクソンモービル社製);AFソルベント(商品名)シリーズ(JXTGエネルギー株式会社製)等が挙げられる。
極性有機溶剤としては、エステル系溶剤、高級アルコール系溶剤等が挙げられる。
エステル系溶剤としては、脂肪酸エステル系溶剤が好ましい。脂肪酸エステル系溶剤としては、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、ラウリン酸2-エチルヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソステアリル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸イソプロピル、オレイン酸イソブチル、リノール酸メチル、リノール酸エチル、リノール酸イソブチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸2-エチルヘキシル、イソステアリン酸イソプロピル、大豆油メチル、大豆油イソブチル、トール油メチル、トール油イソブチル、モノカプリン酸プロピレングリコール、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、トリ2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル等の炭素数13以上30以下の脂肪酸エステルが挙げられる。
高級アルコール系溶剤としては、イソミリスチルアルコール、イソパルミチルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール等の炭素数12以上20以下の高級アルコールが挙げられる。
非水溶性有機溶剤は、貯蔵安定性及び耐マーカー性を向上させる観点から、好ましくは炭化水素系溶剤及びエステル系溶剤から選ばれる1種以上を含み、より好ましくは炭化水素系溶剤及びエステル系溶剤を含む。
非水溶性有機溶剤が炭化水素系溶剤及びエステル系溶剤を含む場合、非水溶性有機溶剤中の炭化水素系溶剤の含有量は、貯蔵安定性及び耐マーカー性を向上させる観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上であり、そして、好ましくは90質量%以下、より更に好ましくは80質量%以下である。
(乳化剤)
乳化剤は、油相中に含まれ、水相を乳化して油中水型エマルション形成できるものであれば特に制限はないが、界面活性剤、ポリマー分散剤等の親油性の乳化剤が好ましい。
親油性の界面活性剤としては、HLB値が6以下の非イオン性界面活性剤が好ましい。該非イオン性界面活性剤としては、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタンモノステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレエート等のグリセリン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン植物油脂肪酸エステル等のポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル;ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル、ショ糖エルカ酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステル等のショ糖脂肪酸エステル;ポリエチレングリコール脂肪酸エステル;ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル;ポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレンアルキルアミン/脂肪酸アミド;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルなどが挙げられる。
親油性の界面活性剤は、1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
親油性のポリマー分散剤としては、ポリエステルポリイミン、ポリエステルポリアミン、ポリアルキロールアミノアマイドとその塩、ポリエーテルポリアミン、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、変性ポリウレタン、変性ポリ(メタ)アクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ステアリルアミンアセテート等が挙げられる。これらの中でも、ポリエステルポリイミン、ポリエステルポリアミン、ポリアルキロールアミノアマイドとその塩、及びポリエーテルポリアミンから選ばれる1種以上が好ましく、ポリエステルポリイミンがより好ましい。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリエステルポリイミンは、好ましくはポリエチレンイミン等のポリアルキレンイミンと、ヒドロキシステアリン酸の重合体又は環状エステルの重合体のようなカルボキシ基を有するポリエステルとを反応させることにより形成されたアミド又は塩からなり、幹としてポリアルキレンイミン鎖に枝として2つ以上のポリエステル鎖が結合されたグラフト構造を有する分散剤が挙げられる。非水溶性有機溶剤がエステル系溶媒を含む場合には、ポリエステルポリイミンのポリエステル鎖の油相中における立体反発力により、分散相液滴粒子間の相互作用が抑制され、分散相液滴粒子の合一が抑制されることにより、エマルションインクの系全体が安定化し、貯蔵安定性を向上させることができると考えられる。
親油性のポリマー分散剤の市販品としては、例えば、日本ルーブリゾール株式会社製のソルスパース(商品名)シリーズ;Efka CHEMICALS社製のエフカ(商品名)シリーズ;楠本化成株式会社製のディスパロン(商品名)シリーズ;味の素株式会社製のアジスパー(商品名)シリーズ等が挙げられる。
本発明において油相は、貯蔵安定性及び耐マーカー性を向上させる観点から、顔料等の着色剤を含まないことが好ましい。
[油中水型エマルションインクの製造方法]
本発明の油中水型エマルションインクは、水相中での顔料の分散安定性を向上させて、貯蔵安定性を向上させる観点、及び耐マーカー性を向上させる観点から、下記の工程Iを含む方法により得ることが好ましい。
工程I:顔料がポリマー分散剤Aで水系媒体に分散されてなる水系顔料分散体、及びポリエステル系樹脂粒子Bの水系分散体を含む水相成分と、油相成分とを混合及び乳化し、油中水型エマルションインクを得る工程
ここで、水系顔料分散体における「水系」とは、顔料を分散させる媒体中で、水が最大割合を占めていることを意味する。また、ポリエステル系樹脂粒子Bの水系分散体における「水系」とは、ポリエステル系樹脂粒子Bを分散させる媒体中で、水が最大割合を占めていることを意味する。
水相が、前述の界面活性剤、水溶性有機溶剤、又は任意成分を含む場合には、水系顔料分散体と、ポリエステル系樹脂粒子Bの水系分散体と、必要に応じて界面活性剤、水溶性有機溶剤、又は任意成分とを混合し、又は水の含有量を調整して水相成分を調製した後、該水相成分と油相成分とを混合及び乳化することにより、水相が油相中に分散された油中水型エマルションインクを得ることができる。
水相成分の配合量は、油相成分の配合量100質量部に対して、生産性の観点及び安定な乳化液を得る観点から、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上、更に好ましくは20質量部以上であり、そして、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、より好ましくは30質量部以下である。
工程Iにおいて混合及び乳化に用いられる撹拌手段としては、剪断力を与えることができるものであれば特に制限はないが、ホモジナイザー(例えば、IKAジャパン株式会社の「ウルトラタラックス」)、ホモミキサー、ディスパー(例えば、淺田鉄工株式会社、の「ウルトラディスパー」)等の高速撹拌混合装置が好ましい。
例えば、ホモジナイザーを用いる場合、油相成分に水相成分を滴下する際には、ホモジナイザーの回転数を、好ましくは500rpm以上、より好ましくは1,000rpm以上、更に好ましくは1,500rpm以上であり、そして、好ましくは8,000rpm以下、より好ましくは7,000rpm以下、更に好ましくは6,000rpm以下に調整することが好ましい。そして、水相成分を滴下終了後には、ホモジナイザーの回転数を、好ましくは5,000rpm以上、より好ましくは7,000rpm以上、更に好ましくは10,000rpm以上であり、そして、好ましくは20,000rpm以下、より好ましくは17,000rpm以下、更に好ましくは15,000rpm以下に調整することが好ましい。
〔水系顔料分散体の製造〕
本発明において、水系顔料分散体は、下記の工程A1及びA2を含む方法により効率的に製造することが好ましい。
工程A1:顔料、ポリマー(a)及び水を含む顔料混合物を分散処理して、顔料がポリマー(a)で水系媒体に分散されてなる水系顔料分散体(i)を得る工程
工程A2:工程A1で得られた水系顔料分散体(i)に架橋剤を添加し、ポリマー(a)を該架橋剤で架橋して、顔料がポリマー分散剤Aで分散されてなる水系顔料分散体を得る工程
(工程A1)
工程A1は、具体的には、(1)予め調製したポリマー(a)粒子の水系分散体と顔料とを混合してなる顔料混合物を分散処理する方法;(2)顔料、ポリマー(a)、有機溶媒、水、及び必要に応じて中和剤、界面活性剤等を含有する顔料混合物を分散処理して分散液を得た後、該分散液から有機溶媒を除去する方法等により行うことが好ましい。中でも、貯蔵安定性及び耐マーカー性を向上させる観点から、(1)の方法が好ましい。
(1)の方法の場合、工程A1の前に下記工程A1-1を有することが好ましい。
工程A1-1:ポリマー(a)の酸基の一部を中和剤で中和して、ポリマー(a)粒子の水系分散体を得る工程
工程A1-1において中和に用いる中和剤としては、アルカリ金属水酸化物、アンモニア等が挙げられる。中でも、水相中での顔料の分散安定性を向上させ、貯蔵安定性を向上させる観点、及び耐マーカー性を向上させる観点から、好ましくはアルカリ金属水酸化物であり、より好ましくは水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムから選ばれる1種以上である。中和剤は、十分かつ均一に中和を促進させる観点から、水溶液として用いることが好ましい。
ポリマー(a)の中和度は、前記と同様の観点から、好ましくは20モル%以上、より好ましくは30モル%以上、更に好ましくは40モル%以上、より更に好ましくは45モル%以上であり、そして、好ましくは80モル%以下、より好ましくは70モル%以下、更に好ましくは60モル%以下である。
ポリマー(a)の中和度(モル%)は、具体的には、次式によって求めることができる。
中和度(モル%)=〔{中和剤の添加質量(g)/中和剤の当量}/[{ポリマー(a)の酸価(mgKOH/g)×ポリマー(a)の質量(g)}/(56.1×1,000)]〕×100
工程A1における分散処理は、剪断応力による本分散だけで顔料を所望の粒径となるまで微粒化することもできるが、均一な水系顔料分散体を得る観点から、顔料混合物を予備分散した後、更に本分散することが好ましい。
予備分散に用いる分散機としては、アンカー翼、ディスパー翼等の一般に用いられている混合撹拌装置を用いることができる。
本分散に用いる剪断応力を与える手段としては、例えば、ロールミル、ニーダー等の混練機、マイクロフルイダイザー等の高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ビーズミル等のメディア式分散機が挙げられる。これらの中でも、顔料を小粒径化する観点から、高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。
高圧ホモジナイザーを用いて分散処理を行う場合、処理圧力やパス回数の制御により、顔料を所望の粒径になるように制御することができ、後述する水系顔料分散体のキュムラント平均粒径も調整することができる。
処理圧力は、生産性及び経済性の観点から、好ましくは60MPa以上300MPa以下である。
パス回数は、顔料を小粒径化する観点から、好ましくは3以上、より好ましくは7以上であり、そして、顔料の分散安定性の観点から、好ましくは30以下、より好ましくは20以下である。
顔料混合物に有機溶媒が含まれている場合は、公知の方法で有機溶媒を除去することで、水系顔料分散体を得ることができる。得られた水系顔料分散体中の有機溶媒は実質的に除去されていることが好ましいが、本発明の目的を損なわない限り、残存していてもよい。残留有機溶媒の量は、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下である。
(工程A2)
工程A2は、工程A1で得られた水系顔料分散体(i)に架橋剤を添加し、ポリマー(a)を該架橋剤で架橋して、顔料がポリマー分散剤Aで分散されてなる水系顔料分散体を得る工程である。
工程A2において、好ましい架橋剤及び架橋度は前述のとおりである。
架橋処理の温度は、好ましくは40℃以上、より好ましは50℃以上、更に好ましくは60℃以上であり、そして、好ましくは95℃以下、より好ましくは85℃以下、更に好ましくは75℃以下である。
架橋処理の時間は、架橋反応の完結と経済性の観点から、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1時間以上、更に好ましくは3時間以上であり、そして、好ましくは12時間以下、より好ましくは10時間以下、更に好ましくは8時間以下である。
水系顔料分散体の不揮発成分濃度(固形分濃度)は、分散安定性を向上させて、貯蔵安定性を向上させる観点、及びインクの製造を容易にする観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。水系顔料分散体の固形分濃度は、実施例に記載の方法により測定される。
水系顔料分散体のキュムラント平均粒径は、貯蔵安定性及び耐マーカー性を向上させる観点から、好ましくは50nm以上、より好ましくは60nm以上、更に好ましくは70nm以上、より更に好ましくは80nm以上、より更に好ましくは90nm以上であり、そして、好ましくは200nm以下、より好ましくは150nm以下、更に好ましくは130nm以下、より更に好ましくは100nm以下、より更に好ましくは100nm未満である。
水系顔料分散体のキュムラント平均粒径は、実施例に記載の方法により測定される。
水系顔料分散体は、好ましくは顔料含有ポリマー粒子が水系媒体中に分散しているものである。顔料含有ポリマー粒子の形態は特に制限はなく、少なくとも顔料と架橋構造を有するポリマー分散剤Aにより粒子が形成されていればよいが、前述のように、ポリマー分散剤に顔料が内包された粒子形態であることが好ましい。
水系顔料分散体には、乾燥防止のために保湿剤としてグリセリンやポリエチレングリコール等を1質量%以上10質量%以下配合してもよいし、防黴剤等の添加剤を配合することもできる。
上記の添加剤はポリマー(a)で顔料を分散するときに配合してもよいし、顔料の分散後や架橋後に配合してもよい。
〔ポリエステル系樹脂粒子Bの水系分散体の製造〕
ポリエステル系樹脂粒子B(樹脂粒子B)は、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよいが、水系分散体として用いることが好ましい。
ポリエステル系樹脂粒子Bの水系分散体は、ポリエステル系樹脂(b)の溶液に水系媒体を添加して転相乳化させる方法、ポリエステル系樹脂(b)を水系媒体に添加して分散機等によって分散処理を行う方法、等により得ることができる。中でも、好ましくは転相乳化法であり、より好ましくは下記の工程B1を含む方法である。
工程B1:ポリエステル系樹脂(b)、有機溶媒、及び中和剤を混合し、該中和剤で中和されたポリエステル系樹脂(b)の溶液を得た後、更に水系媒体を添加して転相し、次いで、系中の有機溶媒を除去して、ポリエステル系樹脂粒子Bの水系分散体を得る工程
(工程B1)
工程B1において、ポリエステル系樹脂(b)、有機溶媒、及び中和剤の混合順序に特に制限はないが、ポリエステル系樹脂(b)を有機溶媒に溶解させて、ポリエステル系樹脂(b)を含む溶液を得た後、該溶液に中和剤を添加することが好ましい。
工程B1で用いる有機溶媒は、ポリエステル系樹脂(b)を転相乳化する観点から、好ましくは水溶性有機溶媒である。該有機溶媒の常温常圧における沸点は、ポリエステル系樹脂(b)を溶解し、後述する工程B2における転相後の有機溶媒の除去が容易である観点から、好ましくは95℃以下、より好ましくは85℃以下であり、そして、工程B1での作業性の観点から、好ましくは45℃以上、より好ましくは55℃以上である。
前記有機溶媒は、好ましくは炭素数1以上3以下の脂肪族アルコール、ケトン類、エーテル類、エステル類等であり、ポリエステル系樹脂(b)の溶解性の観点から、より好ましくは炭素数3以上6以下のケトンであり、更に好ましくは、アセトン(沸点56℃)、メチルエチルケトン(沸点80℃)等の炭素数1以上3以下のアルキル基を有するジアルキルケトンであり、より更に好ましくはメチルエチルケトンである。
工程B1で用いる中和剤としては、アルカリ金属水酸化物、アンモニア等が挙げられる。中でも、ポリエステル系樹脂粒子の分散安定性を向上させ、貯蔵安定性を向上させる観点、及び耐マーカー性を向上させる観点から、好ましくはアルカリ金属水酸化物であり、より好ましくは水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムから選ばれる1種以上である。中和剤は、十分かつ均一に中和を促進させる観点から、水溶液として用いることが好ましい。
工程B1で得られる溶液におけるポリエステル系樹脂(b)に対する有機溶媒の含有量の質量比〔有機溶媒/ポリエステル系樹脂(b)〕は、ポリエステル系樹脂(b)を溶解し水系媒体への転相を容易にする観点、及び樹脂粒子(B)の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは0.7以上であり、そして、好ましくは5以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは2以下、より更に好ましくは1.5以下である。
工程B1で添加する水系媒体は、水が最大割合を占めていることが好ましい。工程B1で添加する水系媒体は、水以外に前述の水に溶解する有機溶媒を含んでもよい。該水系媒体中の水の含有量は、ポリエステル系樹脂粒子の分散安定性を向上させる観点及び環境安全性の観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、そして、好ましくは100質量%以下である。
工程B1における水系媒体の添加量は、ポリエステル系樹脂粒子の水系分散体の生産性を向上させる観点から、ポリエステル系樹脂(b)100質量部に対して、好ましくは50質量部以上、より好ましくは100質量部以上、更に好ましくは200質量部以上であり、そして、好ましくは1,000質量部以下、より好ましくは800質量部以下、更に好ましくは600質量部以下、より更に好ましくは400質量部以下である。
水系媒体を添加する際の温度は、ポリエステル系樹脂粒子の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上、更に好ましくは25℃以上であり、そして、好ましくは80℃以下、より好ましくは60℃以下、更に好ましくは40℃以下である。
工程B1において、転相乳化の後に、得られたポリエステル系樹脂粒子Bの分散液から系中の有機溶媒を除去してポリエステル系樹脂粒子の水系分散体を得る。有機溶媒の除去方法は特に限定されず、任意の方法を用いることができるが、水と溶解しているため蒸留することが好ましい。得られたポリエステル系樹脂粒子の水系分散体中の有機溶媒は実質的に除去されていることが好ましいが、本発明の目的を損なわない限り、残留していてもよい。残留有機溶媒の量は、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下である。
得られたポリエステル系樹脂粒子Bの水系分散体は、金網等で濾過し、粗大粒子等を除去することが好ましい。また、有機溶媒の除去後には、有機溶媒とともに水も共沸して減じているため、水を添加して固形分濃度を調整することが好ましい。
また、ポリエステル系樹脂粒子Bの水系分散体の水系媒体が水以外の成分を含む場合には、水系分散体の水系媒体の組成を調整する観点から、工程B1において、転相後に系中の有機溶媒を除去し、必要に応じて粗大粒子等を除去した後、前述の水に溶解する有機溶媒を添加してもよい。
ポリエステル系樹脂粒子Bの水系分散体の不揮発成分濃度(固形分濃度)は、ポリエステル系樹脂粒子の分散安定性を向上させて、貯蔵安定性を向上させる観点、耐マーカー性を向上させる観点、及びインクの製造を容易にする観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは35質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは45質量%以下である。ポリエステル系樹脂粒子Bの水系分散体の固形分濃度は、実施例に記載の方法により測定される。
ポリエステル系樹脂粒子Bの水系分散体のキュムラント平均粒径は、貯蔵安定性及び耐マーカー性を向上させる観点から、好ましくは30nm以上、より好ましくは50nm以上、更に好ましくは70nm以上であり、そして、好ましくは200nm以下、より好ましくは150nm以下、更に好ましくは130nm以下である。前記平均粒径は、実施例に記載の方法により測定される。
本発明のエマルションインクは、更に必要に応じて、油中水型エマルションインクに通常用いられる保湿剤、湿潤剤、浸透剤、分散剤、界面活性剤、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤等の各種添加剤を添加し、更にフィルター等によるろ過処理を行うことができる。
本発明のエマルションインク中の各成分の含有量及び物性は以下のとおりである。
エマルションインク中の顔料の含有量は、印字濃度を向上させる観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上、より更に好ましくは4質量%以上であり、そして、溶媒揮発時のインク粘度を低くし、貯蔵安定性を向上させる観点から、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましく7質量%以下である。
エマルションインク中の顔料とポリマー分散剤Aとの合計含有量は、好ましくは3質量%以上、より好ましくは4質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、そして、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは8質量%以下である。
本発明のエマルションインク中のポリマー分散剤Aの含有量に対する顔料の含有量の質量比[顔料/ポリマー分散剤A]は、印字濃度を向上させる観点から、好ましくは1以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは5以上、より更に好ましくは6以上であり、そして、顔料の分散安定性を向上させて、貯蔵安定性を向上させる観点から、好ましくは10以下、より好ましくは9以下、更に好ましくは8以下である。
本発明のエマルションインク中のポリマー分散剤A及びポリエステル系樹脂粒子Bの合計含有量に対する顔料の含有量の質量比[顔料/(ポリマー分散剤A+ポリエステル系樹脂粒子B)]は、印字濃度を向上させる観点から、好ましくは0.5以上、より好ましくは1以上、更に好ましくは1.5以上、より更に好ましくは2以上であり、そして、安定な乳化液を得て、貯蔵安定性を向上させる観点から、好ましくは5以下、より好ましくは4.5以下、更に好ましくは4以下である。
本発明のエマルションインク中の水の含有量は、貯蔵安定性及び耐マーカー性を向上させる観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは7質量%以上、更に好ましくは9質量%以上、より更に好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下、より更に好ましくは20質量%以下、より更に好ましくは15質量%以下、より更に好ましくは13質量%以下である。
エマルションインク中の非水溶性有機溶剤の含有量は、貯蔵安定性及び耐マーカー性を向上させる観点、エマルションインクの粘度を調整する観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは65質量%以上、より更に好ましくは70質量%以上であり、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である。
エマルションインク中の乳化剤の含有量は、エマルションを安定化させて、貯蔵安定性を向上させる観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、そして、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは7質量%以下である。
本発明において、水相中の顔料含有ポリマー粒子は、顔料の分散安定性を向上させて、貯蔵安定性を向上させる観点から、膨潤や収縮、該粒子間の凝集が生じないことが好ましく、本発明のエマルションインクが、前述の水系顔料分散体を用いて製造される場合には、顔料含有ポリマー粒子の平均粒径は、前記水系顔料分散体のキュムラント平均粒径と同じであることが好ましい。すなわち、水相中の顔料含有ポリマー粒子のキュムラント平均粒径は、顔料の分散安定性を向上させて、貯蔵安定性を向上させる観点から、好ましくは50nm以上、より好ましくは60nm以上、更に好ましくは70nm以上、より更に好ましくは80nm以上、より更に好ましくは90nm以上であり、そして、好ましくは200nm以下、より好ましくは150nm以下、更に好ましくは130nm以下、より更に好ましくは100nm以下、より更に好ましくは100nm未満である。
なお、エマルションインクから水相中の顔料含有ポリマー粒子の平均粒径を測定する場合には、例えば、エマルションインクから水相成分を回収して、顔料含有ポリマー粒子の平均粒径を電子顕微鏡で観察することにより測定することができる。
本発明において、水相中のポリエステル系樹脂粒子Bは、貯蔵安定性及び耐マーカー性を向上させる観点から、膨潤や収縮、該粒子間の凝集が生じないことが好ましく、本発明のエマルションインクが、前述のポリエステル系樹脂粒子Bの水系分散体を用いて製造される場合には、ポリエステル系樹脂粒子Bの平均粒径は、ポリエステル系樹脂粒子Bの水系分散体のキュムラント平均粒径と同じであることが好ましい。すなわち、ポリエステル系樹脂粒子Bのキュムラント平均粒径は、貯蔵安定性及び耐マーカー性を向上させる観点から、好ましくは50nm以上、より好ましくは60nm以上、更に好ましくは70nm以上であり、そして、好ましくは200nm以下、より好ましくは170nm以下、更に好ましくは130nm以下である。
なお、エマルションインクから水相中のポリエステル系樹脂粒子Bの平均粒径を測定する場合には、例えば、エマルションインクから水相成分を回収して、ポリエステル系樹脂粒子Bの平均粒径を電子顕微鏡で観察することにより測定することができる。
本発明において、エマルションの平均粒子径は、生産容易性の観点、並びに貯蔵安定性及び耐マーカー性を向上させる観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.3μm以上、更に好ましくは0.5μm以上であり、そして、好ましくは2.0μm以下、より好ましくは1.8μm以下、更に好ましくは1.6μm以下である。
エマルションの平均粒子径は、実施例に記載の方法により測定される。
本発明のエマルションインクの25℃における粘度は、好ましくは2mPa・s以上、より好ましくは5mPa・s以上、更に好ましくは7mPa・s以上、より更に好ましくは9mPa・s以上であり、そして、該エマルションインクをインクジェット記録用として用いる観点から、好ましくは20mPa・s以下、より好ましくは17mPa・s以下、更に好ましくは15mPa・s以下、より更に好ましくは13mPa・s以下である。
エマルションインクの粘度は、E型粘度計(形式:TV-25、東機産業株式会社製、標準コーンロータ1°34’×R24使用、回転数50rpm)を用いて測定することができる。
本発明のエマルションインクは、吐出性の観点から、インクジェット記録用として用いることが好ましい。該エマルションインクを公知のインクジェット記録装置に装填し、印刷媒体にインク液滴として吐出させて画像等を記録することができる。
用いる印刷媒体としては、高吸水性の普通紙、低吸水性のコート紙、非吸水性の樹脂フィルムが挙げられる。コート紙としては、汎用光沢紙、多色フォームグロス紙等が挙げられる。樹脂フィルムとしては、好ましくはポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリプロピレンフィルム、及びポリエチレンフィルムから選ばれる少なくとも1種である。当該樹脂フィルムは、コロナ処理された基材を用いてもよい。
これらの中でも、耐マーカー性の観点から、普通紙が好ましい。
以下の調製例、製造例、実施例及び比較例において、「部」及び「%」は特記しない限り「質量部」及び「質量%」である。
なお、各種物性は下記方法により測定した。
(1)酸価
JIS K0070において、測定溶媒をエタノールとエーテルとの混合溶媒から、ポリマー(a)及びポリマー分散剤Aについてはエタノールとトルエンとの混合溶媒〔エタノール:トルエン=1:1(容量比)〕に変更し、ポリエステル系樹脂(b)についてはアセトンとトルエンとの混合溶媒〔アセトン:トルエン=1:1(容量比)〕に変更したこと以外は、JIS K0070に従って測定した。
(2)ビニル系樹脂の重量平均分子量
N,N-ジメチルホルムアミドに、リン酸及びリチウムブロマイドをそれぞれ60mmol/Lと50mmol/Lの濃度となるように溶解した液を溶離液として、ゲル浸透クロマトグラフィー法〔GPC装置(型式:HLC-8320GPC、東ソー株式会社製)、カラム(TSKgel SuperAWM-H、TSKgel SuperAW3000、TSKgel guardcolumn Super AW-H、以上、東ソー株式会社製の商品名)、流速:0.5mL/min〕により、標準物質として分子量既知の単分散ポリスチレンキット〔PStQuick B(F-550、F-80、F-10、F-1、A-1000)、PStQuick C(F-288、F-40、F-4、A-5000、A-500)、以上、東ソー株式会社製の商品名〕を用いて測定した。
測定サンプルは、ガラスバイアル中にビニル系樹脂0.1gを前記溶離液10mLと混合し、25℃で10時間、マグネチックスターラーで撹拌し、シリンジフィルター(商品名:DISMIC-13HP、メンブレンフィルター材質:親水性PTFE、孔径0.2μm、アドバンテック株式会社製)で濾過したものを用いた。
(3)ポリエステル系樹脂(b)の軟化点
フローテスター「CFT-500D」(株式会社島津製作所製)を用い、試料1gを昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出した。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とした。
(4)ポリエステル系樹脂(b)のガラス転移温度
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温した後、200℃から降温速度10℃/minで0℃まで冷却して測定サンプルを調製した。その後、昇温速度10℃/minで昇温し、吸熱の最大ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とした。
(5)ポリエステル系樹脂(b)の重量平均分子量
〔試料溶液の調製〕
濃度が0.5g/100mLになるように、樹脂をクロロホルムに溶解させた。次いで、この溶液をポアサイズ2μmのフッ素樹脂フィルター「FP-200」(住友電気工業株式会社製)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とした。
〔分子量測定〕
溶解液としてテトラヒドロフランを1mL/minの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させた。そこに試料溶液100μLを注入して測定を行った。試料の重量平均分子量は、あらかじめ作製した検量線に基づき算出した。検量線は、数種類の単分散ポリスチレン〔東ソー株式会社製の単分散ポリスチレン;2.63×103、2.06×104、1.02×105(重量平均分子量(Mw))、ジーエルサイエンス株式会社製の単分散ポリスチレン;2.10×103、7.00×103、5.04×104(重量平均分子量(Mw))〕を標準試料として用いて作成した。
測定装置:「CO-8010」(東ソー株式会社製)
分析カラム:「GMHXL」+「G3000HXL」(東ソー株式会社製)
(6)固形分濃度
30mLのポリプロピレン製容器(φ=40mm、高さ=30mm)にデシケーター中で恒量化した硫酸ナトリウム10.0gを量り取り、そこへサンプル約1.0gを添加して、混合させた後、正確に秤量し、105℃で2時間維持して、揮発分を除去し、更に室温(25℃)のデシケーター内で15分間放置したのちに、質量を測定した。揮発分除去後のサンプルの質量を固形分として、添加したサンプルの質量で除して固形分濃度とした。
(7)キュムラント平均粒径
レーザー粒子解析システム(型式:ELS-8000、大塚電子株式会社製)を用いてキュムラント解析を行い、キュムラント平均粒径を測定した。測定条件は、温度25℃、入射光と検出器との角度90°、積算回数100回であり、分散媒の屈折率として水の屈折率(1.333)を入力した。測定サンプルの濃度は、5×10-3%(固形分濃度換算)で行った。
(8)エマルションの平均粒子径
レーザー回折/散乱式粒径測定装置「マスターサイザー3000」(マルバーン・パナリティカル社製)を用いて測定される体積中位粒径(D50)を、エマルションの平均粒子径とした。測定サンプルは、エマルションインクにラウリン酸ヘキシル(商品名:エキセパールHL、花王株式会社製、20℃における粘度6.8mPa・s)を加え、散乱強度が5~15%になる濃度に調整したものを用いた。粒子屈折率1.59(吸収率0.1、密度1g/cm3)、分散媒屈折率1.44の条件にて測定した。
<ポリマー(a)の調製>
調製例1-1
アクリル酸19.2部、スチレン70.8部、α-メチルスチレン10.0部を混合し、原料モノマーを調製した。反応容器内に、メチルエチルケトン(以下、「MEK」という)10部、2-メルカプトエタノール(重合連鎖移動剤)0.3部、及び前記原料モノマーの10%を入れて混合し、窒素ガス置換を十分に行った。
一方、滴下ロートに、前記原料モノマーの残り(90%)、前記重合連鎖移動剤0.27部、MEK40部及びアゾ系ラジカル重合開始剤(商品名:V-65、富士フイルム和光純薬株式会社製、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル))(以下、「V-65」という)1.1部の混合液を入れ、窒素雰囲気下、反応容器内の前記原料モノマーを撹拌しながら65℃まで昇温し、滴下ロート中の混合液を3時間かけて滴下した。反応容器内の内容物を65℃に維持したまま滴下終了から2時間撹拌した後、前記重合開始剤0.15部をMEK2.5部に溶解した溶液を加え、更に65℃で2時間及び70℃で2時間熟成させ、カルボキシ基を有するポリマー(a1)の溶液を得た。重量平均分子量及び酸価を表1に示す。
調製例1-2及び調製例1-4
調製例1-1において、表1に示すように原料モノマーの組成又は仕込み量を変更した以外は同様にして、カルボキシ基を有するポリマー(a2)及び(a4)の溶液を得た。重量平均分子量及び酸価を表1に示す。
調製例1-3
メタクリル酸37.0部、ベンジルアクリレート33.0部、スチレンマクロマー(東亞合成株式会社製、商品名:AS-6S、数平均分子量:6,000、固形分濃度50%)(以下、「スチレンマクロマー」と表記する)40.0部(固形分として20.0部)、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(日油株式会社製、商品名:ブレンマーPP-800、プロピレンオキシド平均付加モル数13、末端:水酸基)(以下、「PP-800」と表記する)10.0部を混合し、原料モノマーを調製した。反応容器内に、MEK10部及び2-メルカプトエタノール(重合連鎖移動剤)0.3部、前記原料モノマーの10%を入れて混合し、窒素ガス置換を十分に行った。
一方、滴下ロートに、前記原料モノマーの残り(90%)、前記重合連鎖移動剤0.27部、MEK40部、及びアゾ系ラジカル重合開始剤(V-65)1.1部の混合液を入れ、以降は調製例1-1と同様にして、カルボキシ基を有するポリマー(a3)の溶液を得た。重量平均分子量及び酸価を表1に示す。
Figure 2022122620000002
<ポリマー(a)粒子の水系分散体の製造(工程A1-1)>
製造例1-1
調製例1-1で得られたポリマー溶液を減圧乾燥した後、粉砕して得られたポリマー(a1)80.0部にイオン交換水316.0部、5N水酸化ナトリウム水溶液25.3部を加え、ポリマー(a1)のカルボキシ基のモル数に対する水酸化ナトリウムのモル数の割合が50モル%(中和度:50モル%)になるようにし、150rpmで撹拌しながら90℃で5時間加熱することで中和及び分散し、ポリマー(a1)粒子の水系分散体(D1)(固形分濃度:20%)を得た。
製造例1-2~1-4
製造例1-1において、表2に示すようにポリマー(a)の種類、水酸化ナトリウム水溶液の量、及びイオン交換水の量を変更した以外は同様にして、水系分散体(D2)~(D4)(いずれも固形分濃度:20%、及び中和度:50モル%)を得た。
Figure 2022122620000003
<水系顔料分散体の製造(工程A1)>
製造例2-1
表3に示すように、製造例1-1で得られた水系分散体(D1)55.5部に、イオン交換水400.0部、シアン顔料(C.I.ピグメント・ブルー15:3、ディーアイシー株式会社製、商品名:TGR-SD)(以下、「TGR-SD」と表記する)100.0部を加え、ディスパー(淺田鉄工株式会社製、商品名:ウルトラディスパー)を用いて、20℃でディスパー翼を7,000rpmで回転させる条件で60分間撹拌した。得られた混合物をマイクロフルイダイザー(Microfluidics社製、商品名)で200MPaの圧力で10パス分散処理し、分散処理物を得た。
得られた分散処理物を5μmのフィルター(アセチルセルロース膜、外径:2.5cm、富士フイルム和光純薬株式会社製)を取り付けた容量25mLの針なしシリンジ(テルモ株式会社製)で濾過し、粗大粒子を除去した後、固形分濃度が20%(顔料の含有量:18.1%、ポリマー(a)の含有量:1.9%)の水系顔料分散体(i-1)を得た。
製造例2-2~2-4
製造例2-1において、表3に示すように水系分散体の種類及び量を変更した以外は製造例2-1と同様にして、水系顔料分散体(i-2)~(i-4)を得た。
Figure 2022122620000004
<水系顔料分散体の製造(工程A2)>
製造例3-1
表4に示すように、製造例2-1で得られた水系顔料分散体(i-1)の100.0部(固形分濃度20%)をねじ口付きガラス瓶に取り、ポリマー(a1)が有する全カルボキシ基の50モル%が架橋されるように(架橋度50モル%)、架橋剤としてトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(商品名:デナコールEX-321、ナガセケムテックス株式会社製、エポキシ当量:139、水溶率:27%)(以下、「EX-321」と表記する)0.35部を加えて密栓し、スターラーで撹拌しながら70℃で5時間加熱した。5時間経過後、室温まで降温し、5μmのフィルター(アセチルセルロース膜、外径:2.5cm、富士フイルム和光純薬株式会社製)を取り付けた容量25mLの針なしシリンジ(テルモ株式会社製)で濾過し、更に得られる水系顔料分散体中の顔料の含有量が40.0%となるように減圧下で濃縮して、水系シアン顔料分散体(以下、「シアン顔料分散体」ともいう)Cy-I(質量比[顔料/ポリマー分散剤A]=8.0、固形分濃度:45.0%、キュムラント平均粒径:95nm)を得た。
製造例3-2~3-5
製造例3-1において、表4に示すように水系顔料分散体(i)の種類及び量、架橋剤の量を変更した以外は同様にして、シアン顔料分散体Cy-II~Cy-Vを得た。
比較製造例3-1
製造例2-2で得られた水系顔料分散体(i-2)を、得られる顔料分散体中の顔料の含有量が40.0%となるように減圧下で濃縮して、シアン顔料分散体Cy-CIを得た。
Figure 2022122620000005
<ポリエステル系樹脂の調製>
調製例2-1
温度計、撹拌装置、脱水管を有する流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した内容積10Lの四つ口フラスコに、表5に示すフマル酸及びトリメリット酸無水物以外の原料モノマー、及びエステル化触媒を入れ、窒素雰囲気下、マントルヒーター中、235℃で5時間維持した後、更にフラスコ内の圧力を下げ、-8.3kPa(G)にて1時間維持した。その後、200℃まで冷却し、大気圧に戻した後、フマル酸及びトリメリット酸無水物を加え、210℃の温度下で4時間維持した後に、更にフラスコ内の圧力を下げ、-8.3kPa(G)にて軟化点が表5に示す温度に到達するまで反応させて、ポリエステル樹脂(b1)を得た。得られた樹脂(b1)の物性を表5に示す。
調製例2-2,2-6
温度計、撹拌装置、脱水管を有する流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した内容積10Lの四つ口フラスコに表5に示すフマル酸以外の原料モノマー、及びエステル化触媒を入れ、窒素雰囲気下、マントルヒーター中、235℃で8時間維持した後、更にフラスコ内の圧力を下げ、-8.3kPa(G)にて1時間維持した。その後、200℃まで冷却し、大気圧に戻した後、フマル酸を加え、210℃の温度下で4時間維持した後に、更にフラスコ内の圧力を下げ、-8.3kPa(G)にて軟化点が表5に示す温度に到達するまで反応させて、ポリエステル樹脂(b2)及び(b6)を得た。得られた樹脂(b2)及び樹脂(b6)の物性を表5に示す。
調製例2-3~2-5,2-7~2-8
温度計、撹拌装置、脱水管を有する流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した内容積10Lの四つ口フラスコに、表5に示す3価の原料モノマー以外の原料モノマー、及びエステル化触媒を入れ、窒素雰囲気下、マントルヒーター中、235℃で5時間維持した後、更にフラスコ内の圧力を下げ、-8.3kPa(G)にて1時間維持した。その後、200℃まで冷却し、大気圧に戻した後、表5に示す3価の原料モノマーを入れ、220℃に昇温し、1時間維持した後に、更にフラスコ内の圧力を下げ、-8.3kPa(G)にて軟化点が表5に示す温度に到達するまで反応させて、ポリエステル樹脂(b3)~(B5),(b7)~(b8)を得た。得られた樹脂(b3)~(b5),(b7)~(b8)の物性を表5に示す。
Figure 2022122620000006
<ポリエステル系樹脂粒子Bの水系分散体の製造(工程B1)>
製造例4-1~4-8
窒素導入管、還流冷却管、撹拌器及び熱電対を装備した四つ口フラスコに、表6に示す種類及び配合でポリエステルb1~b8及びMEKを入れ、25℃で撹拌してMEKに溶解させた。次いで、中和剤として5N水酸化ナトリウム水溶液を添加した後、撹拌下でイオン交換水を加え、さらに、撹拌しながら60℃に保ちつつ減圧し、MEKを留去した。
室温まで冷却後、イオン交換水を混合し、200メッシュの金網で濾過し、ポリエステル樹脂b1~b8をそれぞれ含む各ポリエステル樹脂粒子Bの水分散体PE-I~PE-VIII(いずれも固形分濃度40%)を得た。ポリエステル樹脂の中和度、及び得られた各ポリエステル樹脂粒子の水分散体のキュムラント平均粒径を表6に示す。
Figure 2022122620000007
<油中水型エマルションインクの製造>
実施例1
得られる油中水型エマルションインク中の顔料の含有量が5.0%となるように以下の手順により油中水型エマルションインクCy-1を得た。
製造例3-1で得られたシアン顔料分散体Cy-Iを12.50部、及びイオン交換水を2.25部、及び製造例4-1で得られたポリエステル樹脂粒子の水分散体PE-Iを3.75部混合し、水相成分を調製した。
別途、非水溶性有機溶剤として炭化水素系溶剤(商品名:AFソルベント4号(石油系炭化水素)、JXTGエネルギー株式会社製)を56.00部、エステル系溶剤(商品名:エキセパール M-OL(オレイン酸メチル)、花王株式会社製)を20.50部、及び乳化剤としてショ糖エルカ酸エステル(商品名:リョートーシュガーエステル ER-290、三菱ケミカルフーズ株式会社製)を5.00部、を混合し、油相成分を調製した。
ホモジナイザー(商品名:ウルトラタラックス(ULTLRA-TURRAX)、型式:T25 digital、シャフトジェネレーター(型式:S25N-25F)、いずれもIKAジャパン株式会社製)を用いて、前記油相成分を5,000rpmで撹拌しながら前記水相成分を滴下した。その後、12,000rpmで3分間撹拌して油中水型エマルションインクCy-1を得た(エマルションの平均粒子径:1.4μm)。
実施例2~17及び比較例1~2
実施例1において、表7に示すとおり水相成分及び油相成分を構成する各成分の種類又は量を変更した以外は同様にして、表7に示す各油中水型エマルションインクを得た。
<油中水型エマルションインクの評価試験>
実施例及び比較例で得られたエマルションインクを用いて、貯蔵安定性及び耐マーカー性の評価を行った。結果を表7に示す。
〔貯蔵安定性の評価〕
得られたエマルションインクを100mLのスクリュ-バイアル瓶に入れて、60℃で保管し、放置後のエマルションインクの油相と水相の分離の状態、及び凝集沈降物の有無を目視で観察し、下記の評価基準に従い評価した。
(評価基準)
A:1週間保管時点においてエマルションインクの油相と水相の分離及び凝集沈降物はなかった。
B:1日保管時点においてはエマルションインクの油相と水相の分離及び凝集沈降物はなかったが、1週間保管時点においてエマルションインクの油相と水相の分離又は凝集沈降物があった。
C:エマルションインクの調製直後においては油相と水相の分離又は凝集沈降物はなかったが、1日保管時点においてエマルションインクの油相と水相の分離又は凝集沈降物があった。
D:エマルションインクの調製直後において油相と水相の分離又は凝集沈降物があった。
上記の評価基準がA又はBであれば実使用上好適である。上記の評価基準がCの場合には実使用に耐え得る。上記の評価基準がDの場合は、実使用が困難な場合がある。
〔耐マーカー性の評価〕
得られたエマルションインクをインクジェットプリンタ-(商品名:ビジネスプリンターPX-105、セイコーエプソン株式会社製)に充填し、室温23℃、相対湿度50%RHの環境下、普通紙(商品名:Xeroxビジネス 4200 コピー用紙、富士ゼロックス株式会社製)にテキスト印字し、1時間経過後、市販の水性の蛍光ペン(商品名:蛍光オプテックスケア WKCR1-Y、ゼブラ株式会社製)でテキスト印字面をなぞった際の印字サンプルの汚れ度合いを目視により観察し、以下の評価基準に従い耐マーカー性を評価した。
(評価基準)
A:蛍光ペンでなぞっても、印字サンプルの汚れがない。
B:蛍光ペンでなぞると、印字サンプルに若干にじみが発生する。
C:蛍光ペンでなぞると、印字サンプルに尾引きが発生するが、文字は判別できる。
D:蛍光ペンでなぞると、印字サンプルの汚れがひどい。
上記の評価基準がA又はBであれば実使用上好適である。上記の評価基準がCの場合には実使用に耐え得る。上記の評価基準がDの場合は、実使用が困難な場合がある。
Figure 2022122620000008
表7から、実施例1~17は、比較例1~2と比べて、貯蔵安定性に優れ、かつ、耐マーカー性に優れることが分かる。
本発明のエマルションインク及び該エマルションインクの製造方法によれば、貯蔵安定性に優れ、かつ、耐マーカー性に優れる印刷物を得ることができる。また、本発明のエマルションインクは、インクジェット記録用として有用である。

Claims (9)

  1. 油相中に水相を有する油中水型エマルションインクであって、
    該水相が、顔料、ポリマー分散剤A、及びポリエステル系樹脂粒子Bを含有し、
    該ポリマー分散剤Aが架橋構造を有する、油中水型エマルションインク。
  2. ポリマー分散剤Aの架橋構造が、非架橋のポリマー(a)と多官能エポキシ化合物とを反応させてなるものである、請求項1に記載の油中水型エマルションインク。
  3. ポリマー(a)が、カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位と疎水性モノマー由来の構成単位とを含むビニル系樹脂である、請求項2に記載の油中水型エマルションインク。
  4. ポリマー分散剤Aの酸価が70mgKOH/g以上200mgKOH/g以下である、請求項1~3のいずれかに記載の油中水型エマルションインク。
  5. ポリマー分散剤Aの酸基の少なくとも一部が中和されてなる、請求項4に記載の油中水型エマルションインク。
  6. 油中水型エマルションインク中の水の含有量が5質量%以上30質量%以下である、請求項1~5のいずれかに記載の油中水型エマルションインク。
  7. インクジェット記録用である、請求項1~6のいずれかに記載の油中水型エマルションインク。
  8. 下記の工程Iを含む、請求項1~7のいずれかに記載の油中水型エマルションインクの製造方法。
    工程I:顔料がポリマー分散剤Aで水系媒体に分散されてなる水系顔料分散体、及びポリエステル系樹脂粒子Bの水系分散体を含む水相成分と、油相成分とを混合及び乳化し、油中水型エマルションインクを得る工程
  9. 工程Iで用いる水系顔料分散体が、下記の工程A1-1、工程A1、及び工程A2を含む方法により得られる、請求項8に記載の油中水型エマルションインクの製造方法。
    工程A1-1:ポリマー(a)の酸基の一部を中和剤で中和して、ポリマー(a)粒子の水系分散体を得る工程
    工程A1:工程A1-1で得られたポリマー(a)粒子の水系分散体と顔料とを含む顔料混合物を分散処理して、顔料がポリマー(a)で水系媒体に分散されてなる水系顔料分散体(i)を得る工程
    工程A2:工程A1で得られた水系顔料分散体(i)に架橋剤を添加し、ポリマー(a)を該架橋剤で架橋して、顔料がポリマー分散剤Aで分散されてなる水系顔料分散体を得る工程
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