JP5979070B2 - ハイブリッド車両のエンジン制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、所謂シリーズ式のハイブリッド車両のエンジン制御装置に関する技術分野に属する。
従来より、ハイブリッド車両において、エンジンと、該エンジンにより駆動されて発電するジェネレータと、該ジェネレータによる発電電力を蓄電するバッテリと、該バッテリの蓄電電力及び上記ジェネレータによる発電電力のうちの少なくとも一方の電力で駆動される走行用モータとを備えたものが知られている。このようなハイブリッド車両では、エンジンの始動要求があった場合に、エンジンが運転されて、該エンジンによりモータジェネレータが駆動されることで、モータジェネレータによる発電が行われる。
ここで、ハイブリッド車両のエンジンとしては、特許文献1のようなロータリピストンエンジンが使用される場合がある。そして、特許文献1では、燃焼室内における燃焼安定性が悪化するようなエンジン運転状態のとき、ロ−タハウジングの短軸よりもロ−タ回転方向トレ−リング側に配設された点火プラグの点火時期を、燃焼安定性が良好なエンジン運転状態のときよりも早く設定することが記載されている。
特開平5−1560号公報
ところで、上記ハイブリッド車両のエンジンでは、エンジンの始動及び停止が頻繁に繰り返される場合が多く、この場合、エンジンが温間状態で長時間運転されないために、エンジンの燃焼室内を密閉するシール部が偏摩耗し易いという問題がある。上記シール部を構成する部材としては、往復動型エンジンでは、バルブシート等であり、ロータリピストンエンジンでは、アペックスシール等である。特にロータリピストンエンジンでは、アペックスシールの偏摩耗が生じ易くなる。
上記のようなシール部の偏摩耗が生じると、既燃ガスが、該既燃ガスが生じた燃焼サイクルの次の燃焼サイクルへ漏れる可能性が高くなる。特にロータリピストンエンジンでは、膨張(燃焼)行程と圧縮行程とを区画するアペックスシールにおいて、膨張行程で生じた既燃ガスが、該膨張行程を含む燃焼サイクルの次の燃焼サイクルの圧縮行程に漏れ易くなる。このような既燃ガス漏れは、プリイグニッションを引き起こす要因となる。
上記エンジンでプリイグニッションが発生したときには、そのプリイグニッションを抑制するべく、上記特許文献1のように、エンジンの点火時期を進角させることが考えられる。しかし、点火時期を進角させるだけでは、シール部の偏摩耗が改善されずに既燃ガス漏れが解消されない可能性があり、しかも、点火時期を進角させると、エンジンの熱効率が低くなるので、プリイグニッションの発生以降は、熱効率が低い運転を継続して行う必要がある。
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、既燃ガス漏れによるプリイグニッションが発生しても、その既燃ガス漏れを解消して、エンジンを出来る限り高い熱効率で運転できるようにすることにある。
上記の目的を達成するために、本発明では、エンジンと、該エンジンにより駆動されて発電するジェネレータと、該ジェネレータによる発電電力を蓄電するバッテリと、該バッテリの蓄電電力及び上記ジェネレータによる発電電力のうちの少なくとも一方の電力で駆動される走行用モータとを備えたハイブリッド車両のエンジン制御装置を対象として、上記エンジンの点火を所定時期に行わせる点火制御手段と、上記エンジンの出力トルクを検出するエンジン出力トルク検出手段と、上記エンジンが所定回転数で運転される定常運転時において、上記エンジン出力トルク検出手段により検出されるエンジン出力トルクから、該エンジンでプリイグニッションが発生したか否かを判定するプリイグニッション判定手段と、上記プリイグニッション判定手段によりプリイグニッションが発生したと判定されたときに、既燃ガスが、該既燃ガスが生じた燃焼サイクルの次の燃焼サイクルへ漏れたことにより、上記プリイグニッションが発生したものであるか否かを判定する既燃ガス漏れ判定手段と、上記既燃ガス漏れ判定手段により、上記プリイグニッションが上記既燃ガス漏れにより発生したものであると判定されたときに、上記点火制御手段による上記エンジンの点火時期を、上記所定時期から進角補正するとともに、上記エンジンを、上記点火時期を該進角補正した時期にした状態で上記所定回転数でもって所定時間運転することで上記既燃ガス漏れを抑制する既燃ガス漏れ抑制運転を実行する既燃ガス漏れ抑制運転実行手段と、上記既燃ガス漏れ抑制運転実行手段による上記既燃ガス漏れ抑制運転の実行後に、上記点火時期を上記所定時期に戻す点火時期戻し手段とを備え、上記所定時間は、上記既燃ガス漏れ判定手段により、上記プリイグニッションが上記既燃ガス漏れにより発生したものであると判定された時点から、上記既燃ガス漏れ判定手段により上記既燃ガス漏れによるものであると判定されるプリイグニッションの発生頻度が0になるまでの時間に設定されている、という構成とした。
上記の構成により、既燃ガス漏れによるプリイグニッションが発生すると、既燃ガス漏れ抑制運転実行手段により既燃ガス漏れ抑制運転が実行される。この既燃ガス漏れ抑制運転では、エンジンの点火時期が所定時期から進角補正されるので、既燃ガスが次の燃焼サイクルに漏れた直後のガス温度が比較的低くなり、この結果、既燃ガス漏れによるプリイグニッションは発生し難くなる。そして、この進角補正した状態で所定回転数でもって所定時間運転される。すなわち、プリイグニッションが発生したときのエンジン回転数と同じ回転数でエンジンが所定時間運転される。この所定時間は、エンジンが温間状態となり、かつ、エンジンの燃焼室内を密閉するシール部であって既燃ガスが漏れているシール部を構成する部材(アペックスシールやバルブシート)の相手部材との馴染み性が向上して、該シール部の偏摩耗による既燃ガス漏れを抑制できるような時間、詳しくは、上記既燃ガス漏れ判定手段により、上記プリイグニッションが上記既燃ガス漏れにより発生したものであると判定された時点から、上記既燃ガス漏れ判定手段により上記既燃ガス漏れによるものであると判定されるプリイグニッションの発生頻度が0になるまでの時間(例えば30分乃至60分)に設定されている。このような既燃ガス漏れ抑制運転の実行によって、シール部の機能が正常になり、既燃ガス漏れが解消する。この結果、既燃ガス漏れ抑制運転の実行後に、点火時期を所定時期に戻しても、既燃ガス漏れによるプリイグニッションが発生しなくなる。しかも、点火時期を所定時期に戻すことで、エンジンを高い熱効率で運転することができるようになる。
上記ハイブリッド車両のエンジン制御装置において、上記プリイグニッション判定手段は、予め設定された設定時間よりも短い時間で、上記エンジン出力トルクが所定値以上低下しかつ該低下後に該低下前の値に戻ったときに、プリイグニッションが発生したと判定するように構成されている、ことが好ましい。
すなわち、プリイグニッションが発生すると、エンジン出力トルクの波形に、エンジン出力トルクが所定値以上低下した後に再び低下前の値に戻るような瞬間的なパルス波形が出現する。したがって、設定時間を、このようなパルス波形の時間よりも僅かに長い時間に設定することで、プリイグニッションが発生したことを正確に判定することができるようになる。
上記ハイブリッド車両のエンジン制御装置において、上記既燃ガス漏れ判定手段により上記既燃ガス漏れによるものであると判定されたプリイグニッションの発生頻度を検出する発生頻度検出手段と、上記既燃ガス漏れ抑制運転実行手段は、上記点火時期を、上記発生頻度検出手段により検出された上記プリイグニッションの発生頻度に応じた量だけ進角補正するように構成されている、ことが好ましい。
このことで、点火時期の進角補正量を、既燃ガス漏れによるプリイグニッションの発生頻度に応じて適切な進角補正量にすることができ、熱効率が過度に低下するのを防止することができる。
上記プリイグニッションの発生頻度に応じた量だけ進角補正する場合、上記進角補正後に上記発生頻度検出手段により検出された上記プリイグニッションの発生頻度に応じた量だけ更に進角補正し、上記発生頻度検出手段による上記プリイグニッションの発生頻度が、予め設定された設定値以下になるまで、上記進角補正を繰り返すように構成されている、ことが好ましい。
このことにより、点火時期を進角補正しても、既燃ガス漏れによるプリイグニッションが発生した場合には、更に進角補正がなされ、プリイグニッションが発生しなくなるまで、進角補正が繰り返されるので、既燃ガス漏れによるプリイグニッションが発生しない最小の進角補正量でもって、点火時期を進角補正することができる。
上記ハイブリッド車両のエンジン制御装置において、上記点火時期戻し手段は、上記点火時期を上記所定時期になるまで所定量ずつ間欠的に戻す間欠戻し動作を実行するように構成されている、ことが好ましい。
このことにより、既燃ガス漏れによるプリイグニッションの発生の有無を確認しながら、点火時期を戻すことができる。
上記間欠戻し動作を実行する場合、上記点火時期戻し手段は、上記間欠戻し動作時における非戻し時に、上記プリイグニッション判定手段により上記プリイグニッションが発生したと判定されかつ上記既燃ガス漏れ判定手段により上記プリイグニッションが上記既燃ガス漏れにより発生したものであると判定されたときには、上記間欠戻し動作を中止するように構成され、上記既燃ガス漏れ抑制運転実行手段は、上記点火時期戻し手段による上記間欠戻し動作が中止されたときには、上記点火時期を、上記間欠戻し動作を中止した時点の時期から再び進角補正するとともに、上記既燃ガス漏れ抑制運転を再実行するように構成されている、ことが好ましい。
こうすることで、点火時期を戻す途中で、既燃ガス漏れによるプリイグニッションが発生することになれば、既燃ガス漏れ抑制運転を再実行することによって、シール部の偏摩耗による既燃ガス漏れをより一層確実に抑制することができるようになる。
以上説明したように、本発明のハイブリッド車両のエンジン制御装置によると、既燃ガス漏れによるプリイグニッションの発生時に、既燃ガス漏れ抑制運転の実行によって、シール部の機能を正常にして既燃ガス漏れを解消することができ、この結果、既燃ガス漏れ抑制運転の実行後に、点火時期を所定時期に戻すことで、既燃ガス漏れによるプリイグニッションが発生しなくなるとともに、エンジンを高い熱効率で運転することができるようになる。
本発明の実施形態に係るエンジン制御装置が搭載されたハイブリッド車両を示す概略構成図である。 図1に示すハイブリッド車両のエンジン及び制御システムを示す図である。 アペックスシール(シール部)の構成を簡略化して示す図である。 プリイグニッションが発生した場合のエンジン出力トルクの変化を示すグラフである。 既燃ガス漏れ抑制運転の運転時間と、既燃ガス漏れによるプリイグニッションの発生頻度との関係を示すグラフである。 トレーリング側の点火プラグの点火時期(TDC対する手前の角度(エキセン角))とエンジンの熱効率ηとの関係を示すグラフである。 コントロールユニットによる、プリイグニッションが発生したか否かの判定から間欠戻し動作までの一連の処理動作を示すフローチャートである。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るエンジン制御装置が搭載されたハイブリッド車両1(以下、単に車両1という)を示す。この車両1は、所謂シリーズ式のハイブリッド車両であって、エンジン10と、回転軸が該エンジン10の出力軸(後述のエキセントリックシャフト13)に連結されていて、エンジン10を駆動して始動させかつ該始動後のエンジン10により駆動されて発電するモータジェネレータ20と、このモータジェネレータ20によって発電された電力が蓄電(充電)される高電圧・大容量のバッテリ30と、エンジン10に駆動されることによるモータジェネレータ20の発電電力及びバッテリ30の蓄電電力(放電電力)の少なくとも一方の電力で駆動される走行用モータ40とを備えている。
モータジェネレータ20、バッテリ30及び走行用モータ40の間には、インバータ50が設けられている。このインバータ50を介して、モータジェネレータ20の発電電力が、バッテリ30及び/又は走行用モータ40に供給されるとともに、バッテリ30からの放電電力が、モータジェネレータ20及び/又は走行用モータ40に供給される。
走行用モータ40は、モータジェネレータ20の発電電力及びバッテリ30からの放電電力の少なくとも一方が供給されることにより駆動される。この走行用モータ40の駆動力が、デファレンシャル装置60を介して、駆動輪としての左右の前輪61に伝達され、これにより、車両1が走行する。尚、走行用モータ40は、車両1の減速時には、ジェネレータとして作動して、その発電した電力がバッテリ30に充電される。また、バッテリ30は、車両1の外部の電源による外部充電が可能である。
エンジン10は、モータジェネレータ20による発電用にのみ使用される。エンジン10は、本実施形態では、水素タンク70に貯留されている水素ガスが、燃料として供給される水素エンジンである。
図2に示すように、エンジン10は、ツインロータ式(2気筒)のロータリピストンエンジンであって、2つの繭状のロータハウジング11内(気筒内)に形成されるロータ収容室11aに、概略三角形状のロータ12がそれぞれ収容されて構成されている。2つのロータハウジング11は、3つのサイドハウジング(図示せず)の間に挟み込むようにして該サイドハウジングと一体化されてなり、各ロータハウジング11とその両側のサイドハウジングとで各ロータ収容室11aが形成される。尚、図2では、2つのロータハウジング11(2つの気筒)を展開した状態で図示しており、2つのロータハウジング11内の中央部にそれぞれ描いているエキセントリックシャフト13は、同じものである。
図3に簡略化して示すように、上記各ロータ12の三角形の各頂部には、ロータ半径方向に延びる溝部12aが形成されており、この溝部12aに対して摺動可能にアペックスシール12bが嵌められている。このアペックスシール12bは、バネ12cによってアペックスシール12bの先端がロータハウジング11のトロコイド内周面に摺接するように、ロータ12の径方向外側に押圧されている。このことで、各ロータ12により各ロータ収容室11a(各気筒内)に3つの作動室(燃焼室に相当)が画成される。そして、アペックスシール12bは、エンジン10の燃焼室内を密閉するシール部を構成する。
各ロータ12は、該ロータ12の3つのアペックスシール12bが各々ロータハウジング11のトロコイド内周面に当接した状態でエキセントリックシャフト13の周りを自転しながら、該エキセントリックシャフト13の軸心の周りに公転するようになっている。ロータ12が1回転する間に、該ロータ12の各頂部間にそれぞれ形成された作動室が周方向に移動しながら、吸気、圧縮、膨張(燃焼)及び排気の各行程を行い、これにより発生する回転力がロータ12を介して出力軸としてのエキセントリックシャフト13から出力される。
上記各ロータ収容室11aには、吸気行程にある作動室に連通するように吸気通路14が連通しているとともに、排気行程にある作動室に連通するように排気通路15が連通している。吸気通路14は、上流側では1つであるが、下流側では、2つの分岐路に分岐してそれぞれ上記各ロータ収容室11aに連通している。吸気通路14の上記分岐部よりも上流側には、ステッピングモータ等のスロットル弁アクチュエータ90により駆動されて吸気通路14の断面積(弁開度)を調節するスロットル弁16が配設されている。吸気通路14の上記分岐部よりも下流側の各分岐路には、上記水素タンク70から供給された水素(燃料)を吸気通路14内に噴射する予混合用インジェクタ17が配設されている。この予混合用インジェクタ17により噴射された水素は空気と混合された状態(予混合状態)で、吸気行程にある作動室に供給される。
上記排気通路15は、上流側では、各ロータ収容室11にそれぞれ連通するように2つ設けられているが、下流側では、1つに合流されている。この排気通路15の該合流部よりも下流側には、排気ガスを浄化するための排気ガス浄化触媒80が配設されている。この排気ガス浄化触媒80は、本実施形態では、NOx吸蔵還元触媒とされている。尚、図2において吸気通路14及び排気通路15に図示した矢印は、吸気及び排気の流れを示している。
上記各ロータハウジング11(各気筒)には、上記水素タンク70から供給された水素をロータ収容室11内(気筒内)に直接噴射する直噴用インジェクタ18と、上記予混合用インジェクタ17又は直噴用インジェクタ18より噴射された水素の点火を行う2つの点火プラグ19とが設けられている。
予混合用インジェクタ17は、後述のエンジン水温センサ106により検出されたエンジン冷却水の温度(エンジン水温)が所定温度よりも低いときに作動する。一方、直噴用インジェクタ18は、上記エンジン水温が上記所定温度以上であるときに作動する。これは、上記エンジン水温が上記所定温度よりも低いときには、燃料(水素)が燃焼した際に生じる水蒸気が直噴用インジェクタ18の噴口において氷結して該噴口が塞がれる場合があるからである。また、ロータハウジング11のトロコイド内周面に付着した氷が、ロータ12のアペックスシール12bによって直噴用インジェクタ18の噴口内に掻き込まれ、このことによっても直噴用インジェクタ18の噴口が塞がれる場合がある。このように直噴用インジェクタ18の噴口が塞がれると、ロータ収容室11内に供給される燃料量が不足する。そこで、上記氷結によるロータ収容室11内への供給燃料量の不足を防止するべく、上記エンジン水温が、直噴用インジェクタ18の噴口で氷結が生じるような温度にあるときには、予混合用インジェクタ17により燃料の噴射を行う。上記エンジン水温が上記所定温度以上になれば、直噴用インジェクタ18の噴口内の氷が溶けるとともに、燃料(水素)が燃焼した際に生じる水蒸気が氷結することもないので、空気の充填率を高めて高トルクが得られるように直噴用インジェクタ18から水素を噴射する。
ここで、エンジン10の始動時においては、その前のエンジン停止直前のエンジン水温が、通常は、上記所定温度以上であり、そのエンジン停止直前に発生した水蒸気は蒸発しているので、始動時における上記エンジン水温が上記所定温度よりも低くても、直噴用インジェクタ18の噴口内に氷が存在する可能性は低い。そこで、エンジン10の始動性を高めるべく、直噴用インジェクタ18から燃料を噴射する。そして、エンジン10の始動後においても、上記エンジン水温が上記所定温度よりも低い場合には、直噴用インジェクタ18から予混合用インジェクタ17に切り換えることになる。
尚、本実施形態では、予混合用インジェクタ17は各分岐路において1つしか設けられていないが、直噴用インジェクタ18は、各ロータハウジング11において、エキセントリックシャフト13の軸方向(図2の紙面に垂直な方向)に2つ並んで配設されている(図2では、1つしか見えていない)。
車両1には、バッテリ30に出入りする電流及びバッテリ30の電圧を検出するバッテリ電流・電圧センサ101と、車両1のドライバーによるアクセルペダルの踏み込み量(ドライバーの操作によるアクセル開度)を検出するアクセル開度センサ102(アクセル開度検出手段)と、車両1の車速を検出する車速センサ103(車速検出手段)と、エキセントリックシャフト13に設けられ、エキセントリックシャフト13の回転角度位置を検出する回転角センサ104(エンジン10の回転数を検出するエンジン回転数センサを兼ねる)と、エンジン10の排気ガス中の酸素濃度に基づいて空燃比を検出する空燃比センサ105と、ロータハウジング11の内部に形成されたウォータジャケット(図示せず)に臨んで該ウォータジャケット内を流れる冷却水の温度(エンジン水温)を検出するエンジン水温センサ106と、水素タンク70内の圧力(つまり水素タンク70内の水素残量)を検出するタンク圧力センサ107と、吸気通路14内に吸入される吸気流量を検出するエアフローセンサ108と、エンジン10の作動制御や、インバータ50の作動制御(つまりモータジェネレータ20及び走行用モータ40の作動制御)等を行うコントロールユニット100とが設けられている。
コントロールユニット100は、周知のマイクロコンピュータをベースとするコントローラであって、プログラムを実行する中央演算処理装置(CPU)と、例えばRAMやROMにより構成されてプログラム及びデータを格納するメモリと、電気信号の入出力をする入出力(I/O)バスと、を備えている。コントロールユニット100には、バッテリ電流・電圧センサ101、アクセル開度センサ102、車速センサ103、回転角センサ104、空燃比センサ105、エンジン水温センサ106、タンク圧力センサ107、エアフローセンサ108等からの各種信号が入力されるようになっている。
そして、コントロールユニット100は、上記入力信号に基づいて、スロットル弁アクチュエータ90、ポート噴射用インジェクタ17、直噴用インジェクタ18、点火プラグ19に対して制御信号を出力してエンジン10を制御するとともに、インバータ50に対して制御信号を出力してモータジェネレータ20及び走行用モータ40を制御する。
コントロールユニット100は、インバータ50を制御することにより、モータジェネレータ20の作動状態を、バッテリ30からの電力供給によりエンジン10を駆動する駆動状態と、エンジン10による駆動により発電して該発電電力をバッテリ30や走行用モータ40に供給する発電状態とに切り換えることが可能になっている。そして、コントロールユニット100は、エンジン10の始動時には、モータジェネレータ20の作動状態を上記駆動状態としてエンジン10を始動し、エンジン10の始動後には、上記発電状態に切り換える。
インバータ50は、上記モータジェネレータに流れる電流(駆動電流又は発電電流)及び該モータジェネレータにかかる電圧の情報をコントロールユニット100に送信する。コントロールユニット100は、これら電流及び電圧に基づいて、上記モータジェネレータの回転軸(つまりエキセントリックシャフト6)に作用するトルクを検出する。上記モータジェネレータ20の作動状態が上記発電状態にあるとき、上記検出されたトルクは、エンジン1の出力トルクである。このことで、インバータ50及びコントロールユニット100は、エンジン1の出力トルクを検出するエンジン出力トルク検出手段を構成することになる。
また、コントロールユニット100は、インバータ50を制御することにより、走行用モータ40の駆動を、バッテリ30からの放電電力のみでもって行う態様と、モータジェネレータ20からの発電電力のみでもって行う態様と、バッテリ30及びモータジェネレータ20の両方からの電力でもって行う態様とに切換え可能に構成されている。そして、コントロールユニット100は、バッテリ電流・電圧センサ101により検出された、バッテリ30に出入りする電流及びバッテリ30の電圧に基づいて、バッテリ30の残存容量(SOC)を検出し、この検出されたバッテリ30の残存容量と、タンク圧力センサ107による水素タンク70内の水素残量とに基づいて、走行用モータ40の駆動を、バッテリ30からの放電電力のみでもって行う態様か、又は、モータジェネレータ20からの発電電力のみでもって行う態様にする。上記バッテリ30の残存容量及び水素残量によっては、走行用モータ40の駆動を、バッテリ30からの放電電力のみでもって行う態様、及び、モータジェネレータ20からの発電電力のみでもって行う態様のいずれの態様にしてもよい場合があり、この場合に、車両1の乗員が操作するスイッチによる選択により、いずれの態様にするかを決定してもよい。
上記いずれの態様でもよい場合でかつ走行用モータ40の駆動が、バッテリ30からの放電電力のみでもって行う態様にあるとき(エンジン10が停止しているとき)において、コントロールユニット100は、アクセル開度センサ102や車速センサ103等からの入力情報に基づき、乗員の加速要求レベルが所定閾値よりも高くなったか否かを判定し、乗員の加速要求レベルが該所定閾値よりも高くなったと判定したときには、走行用モータ40の駆動を、バッテリ30及びモータジェネレータ20の両方からの電力でもって行う態様に切り換える。その後、乗員の加速要求レベルが上記所定閾値よりも高い状態から該所定閾値以下になったときには、バッテリ30からの放電電力のみでもって行う態様に戻す。
走行用モータ40の駆動を、バッテリ30からの放電電力のみでもって行う態様から、モータジェネレータ20からの発電電力のみでもって行う態様、又は、バッテリ30及びモータジェネレータ20の両方からの電力でもって行う態様に切り換える際には、エンジン10の始動要求(モータジェネレータ20による発電要求)があることになる。また、その逆の切り換え時には、エンジン10の停止要求があることになり、エンジン10が停止することになる。
コントロールユニット100は、エンジン10の停止中に、エンジン10の始動要求があったときには、モータジェネレータ20を駆動することによってエンジン10を回転させながら(クランキングしながら)、該エンジン10において燃料(水素)の噴射及び該噴射された燃料の点火を行うことで、該エンジン10を始動させる。こうしてエンジン10が始動すると、モータジェネレータ20の作動状態が上記発電状態となって、モータジェネレータ20により発電が行われる。
エンジン10の各気筒の2つの点火プラグ19は、コントロールユニット100によって、圧縮ないし膨張行程にある作動室内の混合気(圧縮行程で圧縮された混合気)を燃焼させるべく、所定時期に点火するようになされている。本実施形態では、リーディング側(進み側)の点火プラグ19から点火し、その後にトレーリング側(遅れ側)の点火プラグ19が点火する。両点火プラグ19は共に、圧縮トップ(TDC)の前に点火される。例えば、リーディング側の点火プラグ19は、TDCに対してエキセン角で15°前とされ、トレーリング側の点火プラグ19は、TDCに対してエキセン角で5°前とされる。コントロールユニット100は、エンジン10の点火(つまり点火プラグ19の点火)を所定時期に行わせる点火制御手段を構成することになる。
エンジン10が運転されているとき、上記乗員の加速要求レベルが上記所定閾値以下であれば、エンジン10は、車速センサ103による車速に応じたエンジン回転数でもって運転される。このエンジン回転数は、車速が速いほど、高くなる。車速が一定であれば、エンジン回転数も一定となる。
コントロールユニット100には、プリイグニッション判定部100a(プリイグニッション判定手段)と、既燃ガス漏れ判定部100b(既燃ガス漏れ判定手段)と、既燃ガス漏れ抑制運転実行部100c(既燃ガス漏れ抑制運転実行手段)と、点火時期戻し部100d(点火時期戻し手段)と、発生頻度検出部100e(発生頻度検出手段)とが設けられている。
上記プリイグニッション判定部100aは、エンジン10が所定回転数(例えば1800rpm〜2200rpmの範囲の一定回転数)で運転される定常運転時に、インバータ50からの上記電流及び上記電圧に基づいて検出されるエンジン出力トルクから、エンジン10でプリイグニッションが発生したか否かを判定する。具体的に、プリイグニッション判定部100aは、予め設定された設定時間よりも短い時間で、上記エンジン出力トルクが所定値以上低下しかつ該低下後に該低下前の値に戻ったときに、プリイグニッションが発生したと判定するように構成されている。すなわち、プリイグニッションが発生すると、図4に示すように、上記エンジン出力トルクの波形に、エンジン出力トルクが急低下しかつ該低下後に急上昇するパルス波形が出現する。このときのパルス幅t1が上記設定時間よりも短く、エンジン出力トルクの低下量T1が上記所定値以上となる。プリイグニッション判定部100aは、エンジン出力トルクの、このようなパルス状の変化があったときに、プリイグニッションが発生したと判定する。
上記既燃ガス漏れ判定部100bは、上記プリイグニッション判定部100aによりプリイグニッションが発生したと判定されたときに、既燃ガスが、該既燃ガスが生じた燃焼サイクルの次の燃焼サイクルへ漏れたことにより、上記プリイグニッションが発生したものであるか否かを判定する。具体的に、既燃ガス漏れ判定部100bは、上記空燃比センサ54により検出された空燃比が、目標の空燃比と略同じであり、かつ、プリイグニッションの発生前後(上記パルスの発生前後)における上記エンジン出力トルクが、目標のトルクと略同じであるという条件が成立したときに、上記既燃ガス漏れにより上記プリイグニッションが発生したものであると判定する。一方、既燃ガス漏れ判定部100bは、上記条件が成立していないときには、点火系又は燃料噴射系の異常により、上記プリイグニッションが発生したものであると判定する。このときには、車両1のインストルメントパネルにおいて車両1の乗員(ドライバ)が視認可能に設けられた表示パネル等に、エンジン10が故障している旨の警報表示が行われる。
車両1は、ハイブリッド車両であるので、エンジン10の始動及び停止が頻繁に繰り返される場合が多く、この場合、エンジン10が温間状態で長時間運転されないために、アペックスシール12bが傾いて突出した状態となり易くて偏摩耗し易くなる。このようなアペックスシール12bの偏摩耗が生じると、膨張(燃焼)行程と圧縮行程とを区画するアペックスシール12bにおいて、膨張行程で生じた既燃ガスが、該膨張行程を含む燃焼サイクルの次の燃焼サイクルの圧縮行程に漏れ易くなる。このような既燃ガスの漏れにより、上記プリイグニッションが生じる。本実施形態のように燃料が水素である場合に、特に上記プリイグニッションが生じ易くなる。このような既燃ガス漏れによるプリイグニッションの発生時には、上記条件が成立する。したがって、上記条件が成立するか否かによって、上記既燃ガス漏れによりプリイグニッションが発生したか否かを判定することができる。尚、上記条件に加えて、上記パルス状の変化が断続的に発生したという条件が成立したときに、上記既燃ガス漏れにより上記プリイグニッションが発生したものであると判定するようにしてもよい。
上記既燃ガス漏れ抑制運転実行部100cは、既燃ガス漏れ判定部100bにより、上記プリイグニッションが上記既燃ガス漏れにより発生したものであると判定されたときに、エンジン10の点火時期(つまり点火プラグ19の点火時期)を、上記所定時期から進角補正するとともに、エンジン10を、上記点火時期を該進角補正した時期にした状態で上記所定回転数でもって所定時間運転することで上記既燃ガス漏れを抑制する既燃ガス漏れ抑制運転を実行する。すなわち、プリイグニッションが発生したときのエンジン回転数と同じ回転数でエンジン10が所定時間運転される。この所定時間は、エンジン10が温間状態となり、かつ、アペックスシール12bの上記トロコイド内周面との馴染み性が向上して、アペックスシール12bの偏摩耗による既燃ガス漏れを抑制できるような時間である。例えば図5に示すように、上記既燃ガス漏れ抑制運転の運転時間が長くなるほど、既燃ガス漏れによるプリイグニッションの発生頻度(図5では、1分間当たりのプリイグニッションの発生回数)が少なくなり、やがて0になる。この発生頻度が0になるような時間を、上記所定時間として設定すればよい(例えば30分乃至60分)。上記既燃ガス漏れ抑制運転の実行によって、アペックスシール12bの機能が正常になり、これにより、既燃ガス漏れが解消して、プリイグニッションが発生しなくなる。
尚、既燃ガス漏れ抑制運転の実行中に、例えば乗員の加速要求レベルが上記所定閾値よりも高い状態になったときには、既燃ガス漏れ抑制運転の実行を一時的に中止して、エンジン10の回転数をその加速要求レベルに対応した回転数にしかつエンジン10の点火時期を上記所定時期にし、乗員の加速要求レベルが上記所定閾値以下になったときに、再び既燃ガス漏れ抑制運転を再開することが好ましい。このように既燃ガス漏れ抑制運転の実行を中止した場合、その中止した時間は既燃ガス漏れ抑制運転の運転時間に含めず、実際の既燃ガス漏れ抑制運転のトータル時間が上記所定時間になるまで、既燃ガス漏れ抑制運転を実行する。
また、上記既燃ガス漏れ抑制運転の実行中は、エンジン10の点火時期が上記所定時期から進角補正されるので、既燃ガスが圧縮行程に漏れた直後のガス温度が比較的低くなり、この結果、既燃ガス漏れによるプリイグニッションは発生し難くなる。具体的な進角補正量は、以下のように決定する。
先ず、上記発生頻度検出部100eが、上記既燃ガス漏れ判定部100bにより上記既燃ガス漏れによるものであると判定されたプリイグニッションの発生頻度を検出する。この発生頻度は、予め決められた基準時間の間における、上記既燃ガス漏れによるものであると判定されたプリイグニッションの発生回数である。
そして、既燃ガス漏れ抑制運転実行部100cは、エンジン10の点火時期を、上記発生頻度検出部100eにより検出された上記プリイグニッションの発生頻度に応じた量だけ進角補正する。この進角補正量は、上記発生頻度に対応して予め決められていて、上記プリイグニッションの発生が抑制されるように、上記発生頻度が多いほど多くしている。
本実施形態では、上記進角補正後(かつ既燃ガス漏れ抑制運転の実行前)に発生頻度検出部100eにより検出された上記プリイグニッションの発生頻度が、予め設定された設定値(基本的には0であるが、0に近い値であってもよい)以下でない場合には、該進角補正後における該プリイグニッションの発生頻度に応じた量だけ更に進角補正し、上記発生頻度検出部100eによる上記プリイグニッションの発生頻度が、上記設定値以下になるまで、上記進角補正を繰り返す。こうしてエンジン10は、既燃ガス漏れ抑制運転において、上記点火時期を上記最後に進角補正した時期にした状態で上記所定回転数でもって所定時間運転されることになる。
尚、2つの点火プラグ19の点火時期を進角補正してもよく、トレーリング側の点火プラグ19の点火時期のみを進角補正するようにしてもよい。また、2つの点火プラグ19の点火時期を進角補正する場合、2つの点火プラグ19の点火時期の進角補正量が、同じである必要はなく、互いに異なっていてもよい。例えば、トレーリング側の点火プラグ19の点火時期の進角補正量を、リーディング側の点火プラグ19の点火時期の進角補正量よりも大きくする。要するに、既燃ガス漏れによるプリイグニッションが発生しないようにすればよい。
上記点火時期を上記進角補正した時期にした状態で運転する既燃ガス漏れ抑制運転では、エンジン10の熱効率が低下する。図6は、トレーリング側の点火プラグ19の点火時期(TDC対する手前の角度(エキセン角))とエンジン10の熱効率ηとの関係を示す。ここでは、リーディング側の点火プラグ19の点火時期は、TDCに対してエキセン角で15°前と一定である。また、エンジン10の回転数を2000rpmとし、スロットル弁を全開とし、空気過剰率λを2.2としている。図6に示すように、進角補正量が多くなるほど、エンジン10の熱効率ηが低下することが分かる。
そこで、点火時期戻し部100dが、上記既燃ガス漏れ抑制運転実行部100cによる上記既燃ガス漏れ抑制運転の実行後に、上記点火時期を、上記進角補正後の時期から上記所定時期に戻す(遅角する)。本実施形態では、点火時期戻し部100dは、上記点火時期を上記所定時期になるまで所定量(例えばエキセン角で3°〜5°)ずつ間欠的に戻す間欠戻し動作を実行するように構成されている。
そして、点火時期戻し部100dは、上記間欠戻し動作時における非戻し時に、上記プリイグニッション判定部100aにより上記プリイグニッションが発生したと判定されかつ上記既燃ガス漏れ判定部100bにより上記プリイグニッションが上記既燃ガス漏れにより発生したものであると判定されたときには、上記間欠戻し動作を中止する。一方、上記間欠戻し動作時における非戻し時に、上記既燃ガス漏れによるプリイグニッションが発生しなければ、上記点火時期戻し部100dによる上記間欠戻し動作が継続され、上記点火時期が更に所定量だけ遅角されることになり、最終的に上記点火時期が上記所定時期に戻ることになる。
既燃ガス漏れ抑制運転実行部100cは、上記点火時期戻し部100dによる上記間欠戻し動作が中止されたときには、上記点火時期を、上記間欠戻し動作を中止した時点の時期から再び進角補正するとともに、上記既燃ガス漏れ抑制運転を再実行する。本実施形態では、上記点火時期が上記間欠戻し動作を中止した時点の時期にあるときに上記発生頻度検出部100eにより検出された上記プリイグニッションの発生頻度に応じた進角補正量でもって、上記点火時期を、上記間欠戻し動作を中止した時点の時期から進角補正した上で、上記既燃ガス漏れ抑制運転を再実行する。また、最初の進角補正時と同様に、上記プリイグニッションの発生頻度が上記設定値以下にならない場合には、上記設定値以下になるまで進角補正を繰り返す。こうして、既燃ガス漏れによるプリイグニッションの発生の有無を確認しながら、点火時期を徐々に戻し、点火時期を戻す段階で、既燃ガス漏れによるプリイグニッションが発生していれば、既燃ガス漏れ抑制運転を再実行することによって、アペックスシール12bの偏摩耗による既燃ガス漏れをより一層確実に抑制することができるようになる。
尚、点火時期戻し部100dが、上記既燃ガス漏れ抑制運転実行部100cによる上記既燃ガス漏れ抑制運転の実行後に、上記点火時期を上記所定時期に一気に戻すようにすることも可能である。
ここで、コントロールユニット100による、上記プリイグニッションが発生したか否かの判定から上記間欠戻し動作までの一連の処理動作について、図7のフローチャートに基づいて説明する。
最初のステップS1で、各種センサ及びインバータ50からの情報を読み込み、次のステップS2で、エンジン10が上記所定回転数で運転される定常運転状態にあるか否かを判定する。このステップS2の判定がNOであるときには、上記ステップS1に戻る一方、ステップS2の判定がYESであるときには、ステップS3に進む。
上記ステップS3では、プリイグニッション判定部100aが、インバータ50からの上記電流及び上記電圧に基づいて検出されるエンジン出力トルクから、エンジン10でプリイグニッションが発生したか否かを判定する。このステップS3の判定がNOであるときには、上記ステップS1に戻る一方、ステップS3の判定がYESであるときには、ステップS4に進む。
上記ステップS4では、既燃ガス漏れ判定部100bが、既燃ガスが、該既燃ガスが生じた燃焼サイクルの次の燃焼サイクルへ漏れたことにより、上記プリイグニッションが発生したものであるか否かを判定する。このステップS4の判定がYESであるときには、ステップS5に進む一方、ステップS4の判定がNOであるときには、ステップS16に進む。
上記ステップS5では、発生頻度検出部100eが、上記既燃ガス漏れ判定部100bにより上記既燃ガス漏れによるものであると判定されたプリイグニッションの発生頻度を検出する。
次のステップS6では、既燃ガス漏れ抑制運転実行部100cが、エンジン10の点火時期(点火プラグ19の点火時期)を、上記プリイグニッションの発生頻度に応じた量だけ進角補正する。
次のステップS7では、発生頻度検出部100eが、上記既燃ガス漏れ判定部100bにより上記既燃ガス漏れによるものであると判定されたプリイグニッションの発生頻度を検出する。
次のステップS8では、既燃ガス漏れ抑制運転実行部100cが、発生頻度検出部100eによる上記プリイグニッションの発生頻度が上記設定値以下となって、上記プリイグニッションが解消したといえるか否かを判定する。このステップS8の判定がNOであるときには、上記ステップS6に戻る一方、ステップS8の判定がYESであるときには、ステップS9に進んで、既燃ガス漏れ抑制運転実行部100cが、既燃ガス漏れ抑制運転を実行する。すなわち、エンジン10を、上記点火時期を上記最後に進角補正した時期にした状態で上記所定回転数でもって運転する。
次のステップS10では、既燃ガス漏れ抑制運転実行部100cが、既燃ガス漏れ抑制運転の開始から上記所定時間が経過したか否かを判定する。このステップS10の判定がNOであるときには、上記ステップS9に戻る一方、ステップS10の判定がYESであるときには、ステップS11に進む。
上記ステップS11では、既燃ガス漏れ抑制運転実行部100cが、既燃ガス漏れ抑制運転を中止し、次のステップS12で、点火時期戻し部100dが、点火時期を所定量ずつ間欠的に戻す間欠戻し動作を実行する。
次のステップS13で、上記間欠戻し動作時における非戻し時に、プリイグニッション判定部100aがプリイグニッションが発生したと判定しかつ既燃ガス漏れ判定部100bが、そのプリイグニッションが上記既燃ガス漏れにより発生したものであると判定したか否かを判定する。
上記ステップS13の判定がYESであるときには、ステップS14に進んで、点火時期戻し部100dが上記間欠戻し動作を中止し、しかる後に上記ステップS5に戻る。一方、ステップS13の判定がNOであるときには、ステップS15に進む。
上記ステップS15では、点火時期戻し部100dが、点火時期が上記所定時期に戻ったか否かを判定し、このステップS15の判定がNOであるときには、上記ステップS12に戻る一方、ステップS15の判定がYESであるときには、本処理動作を終了する。
上記ステップS4の判定がNOであるときに進むステップS16では、既燃ガス漏れ判定部100bは、点火系又は燃料噴射系の異常により、上記プリイグニッションが発生したものであると判定し、次のステップS17では、表示パネル等に、エンジン10が故障している旨の警報表示を行い、しかる後に本処理動作を終了する。
したがって、本実施形態では、既燃ガス漏れによるプリイグニッションの発生時に、既燃ガス漏れ抑制運転の実行によって、アペックスシール12bの機能を正常にして既燃ガス漏れを解消することができ、この結果、既燃ガス漏れ抑制運転の実行後に、点火時期を所定時期に戻すことで、既燃ガス漏れによるプリイグニッションが発生しなくなるとともに、エンジン10を高い熱効率で運転することができるようになる。
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
例えば、上記実施形態では、エンジン10を、水素を燃料とするロータリピストンエンジンとしたが、往復動型エンジンであってもよく、水素以外の燃料(例えばガソリン)を用いるエンジンであってもよい。往復動型エンジンの場合、バルブシート(特に排気弁のバルブシート)で構成されたシール部において、既燃ガスが、該既燃ガスが生じた燃焼サイクルの次の燃焼サイクルへ漏れて、プリイグニッションが発生する可能性があるが、この場合も、本発明を適用することで、既燃ガス漏れを解消することができるとともに、エンジン10を高い熱効率で運転することができるようになる。
上述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
本発明は、エンジンと、該エンジンにより駆動されて発電するジェネレータと、該ジェネレータによる発電電力を蓄電するバッテリと、該バッテリの蓄電電力及び上記ジェネレータによる発電電力のうちの少なくとも一方の電力で駆動される走行用モータとを備えたハイブリッド車両のエンジン制御装置に有用である。
1 ハイブリッド車両
10 エンジン
20 モータジェネレータ
30 バッテリ
40 走行用モータ
50 インバータ(エンジン出力トルク検出手段)
100 コントロールユニット(エンジン出力トルク検出手段)(点火制御手段)
100a プリイグニッション判定部(プリイグニッション判定手段)
100b 既燃ガス漏れ判定部(既燃ガス漏れ判定手段)
100c 既燃ガス漏れ抑制運転実行部(既燃ガス漏れ抑制運転実行手段)
100d 点火時期戻し部(点火時期戻し手段)
100e 発生頻度検出部(発生頻度検出手段)

Claims (6)

  1. エンジンと、該エンジンにより駆動されて発電するジェネレータと、該ジェネレータによる発電電力を蓄電するバッテリと、該バッテリの蓄電電力及び上記ジェネレータによる発電電力のうちの少なくとも一方の電力で駆動される走行用モータとを備えたハイブリッド車両のエンジン制御装置であって、
    上記エンジンの点火を所定時期に行わせる点火制御手段と、
    上記エンジンの出力トルクを検出するエンジン出力トルク検出手段と、
    上記エンジンが所定回転数で運転される定常運転時において、上記エンジン出力トルク検出手段により検出されるエンジン出力トルクから、該エンジンでプリイグニッションが発生したか否かを判定するプリイグニッション判定手段と、
    上記プリイグニッション判定手段によりプリイグニッションが発生したと判定されたときに、既燃ガスが、該既燃ガスが生じた燃焼サイクルの次の燃焼サイクルへ漏れたことにより、上記プリイグニッションが発生したものであるか否かを判定する既燃ガス漏れ判定手段と、
    上記既燃ガス漏れ判定手段により、上記プリイグニッションが上記既燃ガス漏れにより発生したものであると判定されたときに、上記点火制御手段による上記エンジンの点火時期を、上記所定時期から進角補正するとともに、上記エンジンを、上記点火時期を該進角補正した時期にした状態で上記所定回転数でもって所定時間運転することで上記既燃ガス漏れを抑制する既燃ガス漏れ抑制運転を実行する既燃ガス漏れ抑制運転実行手段と、
    上記既燃ガス漏れ抑制運転実行手段による上記既燃ガス漏れ抑制運転の実行後に、上記点火時期を上記所定時期に戻す点火時期戻し手段とを備え
    上記所定時間は、上記既燃ガス漏れ判定手段により、上記プリイグニッションが上記既燃ガス漏れにより発生したものであると判定された時点から、上記既燃ガス漏れ判定手段により上記既燃ガス漏れによるものであると判定されるプリイグニッションの発生頻度が0になるまでの時間に設定されていることを特徴とするハイブリッド車両のエンジン制御装置。
  2. 請求項1記載のハイブリッド車両のエンジン制御装置において、
    上記プリイグニッション判定手段は、予め設定された設定時間よりも短い時間で、上記エンジン出力トルクが所定値以上低下しかつ該低下後に該低下前の値に戻ったときに、プリイグニッションが発生したと判定するように構成されていることを特徴とするハイブリッド車両のエンジン制御装置。
  3. 請求項1又は2記載のハイブリッド車両のエンジン制御装置において、
    上記既燃ガス漏れ判定手段により上記既燃ガス漏れによるものであると判定されたプリイグニッションの発生頻度を検出する発生頻度検出手段と、
    上記既燃ガス漏れ抑制運転実行手段は、上記点火時期を、上記発生頻度検出手段により検出された上記プリイグニッションの発生頻度に応じた量だけ進角補正するように構成されていることを特徴とするハイブリッド車両のエンジン制御装置。
  4. 請求項3記載のハイブリッド車両のエンジン制御装置において、
    上記既燃ガス漏れ抑制運転実行手段は、上記進角補正後に上記発生頻度検出手段により検出された上記プリイグニッションの発生頻度に応じた量だけ更に進角補正し、上記発生頻度検出手段による上記プリイグニッションの発生頻度が、予め設定された設定値以下になるまで、上記進角補正を繰り返すように構成されていることを特徴とするハイブリッド車両のエンジン制御装置。
  5. 請求項1〜4のいずれか1つに記載のハイブリッド車両のエンジン制御装置において、
    上記点火時期戻し手段は、上記点火時期を上記所定時期になるまで所定量ずつ間欠的に戻す間欠戻し動作を実行するように構成されていることを特徴とするハイブリッド車両のエンジン制御装置。
  6. 請求項5記載のハイブリッド車両のエンジン制御装置において、
    上記点火時期戻し手段は、上記間欠戻し動作時における非戻し時に、上記プリイグニッション判定手段により上記プリイグニッションが発生したと判定されかつ上記既燃ガス漏れ判定手段により上記プリイグニッションが上記既燃ガス漏れにより発生したものであると判定されたときには、上記間欠戻し動作を中止するように構成され、
    上記既燃ガス漏れ抑制運転実行手段は、上記点火時期戻し手段による上記間欠戻し動作が中止されたときには、上記点火時期を、上記間欠戻し動作を中止した時点の時期から再び進角補正するとともに、上記既燃ガス漏れ抑制運転を再実行するように構成されていることを特徴とするハイブリッド車両のエンジン制御装置。
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