JP5976478B2 - チクソトロピー性水硬結合材 - Google Patents

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Description

本発明は、土木・建築分野で用いられるグラウト材、軽量ブロック、断面修復材、吹付け材などを構成するセメント系材料におけるセメント(結合材)として好適なチクソトロピー性水硬結合材に関する。
従来から、土木・建築分野におけるグラウト施工、ブロック施工、断面修復施工、吹付け施工などの各施工にはセメント系材料が使用されており、該セメント系材料に増粘性やチクソトロピック性を付与する場合は、供給性、価格、安全性などの面から、ベントナイトやセルロース類の使用が検討されたり、実際に使用されてきている。
例えば、特許文献1には、裏込め材や充填材として利用する可塑性グラウト材における無機系増粘剤としてベントナイトが記載されている。
また、特許文献2には、プレストレストコンクリート造構造物においてプレストレスの導入後にシース内に充填されるチクソトロピー性を有するグラウト材の材料としてベントナイトが記載されている。
特許文献3には、コンクリート構造物を補修・補強するための吹付け材料における高分子増粘剤としてヒドロキシエチルメチルセルロースが記載されている。
また、特許文献4には、コンクリート組成物におけるチキソトロピー剤として、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースが記載されている。
一方、食品分野や医療分野で多く用いられてきているアルギン酸塩類の土木・建築分野への適用が若干検討されている。
例えば、特許文献5には、スリップフォーム工法に使用されるセメント組成物にチクソトロピック性を付与するために、減水剤を主成分としアルギン酸ソーダを若干含むスリップフォーム工法用セメント添加剤が記載されている。
また、特許文献6には、アンカー工法やロックボルト工法において定着材として用いられるセメントミルクの掘削孔内に存在する亀裂への流出を防止するためのセメントミルク逸失防止材として、アルギン酸ナトリウムを含むものが記載されている。
特開2009−000983号公報 特開2004−284930号公報 特開2008−050212号公報 特表2002−541055号公報 特開平08−109053号公報 特開2008−274726号公報
上述の通り、ベントナイトやセルロース類は増粘性付与剤、チクソトロピック性付与剤として広く検討されたり使用されたりしてきている。
しかし、ベントナイトを使用した場合、材料構成によっては硬化物が乾燥すると乾燥ひび割れが生じることがある。また、ベントナイトは粉体のため大量に使用しないと十分な効果は得られず、均一に混和されていないと性能に偏りが生じることがある。また、セメントと併用した場合、セメントからのカルシウムイオンの影響を受け、膨潤性や増粘性等の性能が低下することがある。
一方、セルロース類はベントナイトに比べ少量で高い増粘性が得られベントナイト使用時に見られる上記問題も生じないので汎用性が高いが、温度、添加量、他の構成材料の影響を受け易く、施工条件や環境条件によっては、例えば、左官材においてダレが生じたり、グラウト材においてポンプ圧送性が悪くなったり、吹付け材においてリバウンド率が高くなったりするなどの問題が生じる。
本発明者らは、セルロース類におけるこれらの問題を解決すべく鋭意検討した結果、ダレの問題、ポンプ圧送性の問題、リバウンドの問題のいずれにも付着性能が大きく影響しており、流動時には容器や配管等に付着し難い低付着性であり、静止時には壁や天井などに良好に付着する高付着性となる添加量の影響を受け難いチクソトロピック性付与剤を用いれば良いこと、該チクソトロピック性付与剤としてアルギン酸塩類が好適であることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、土木・建築分野で増粘性付与剤やチクソトロピック性付与剤として用いられるセルロース類における上述のような問題の解決を図ったものであり、チクソトロピー性を有し、流動時の接触内壁面への付着性は低いのに静止時の接触内壁面への付着性は良好なチクソトロピー性水硬結合材を提供することを目的とする。
本願の請求項1に係る発明は、チクソトロピー性を有し、流動時の接触内壁面への付着性は低いのに静止時の接触内壁面への付着性は良好なセメント系左官材、セメント系グラウト材、セメント系吹付け材、またはセメント系補修材としての水硬結合材であって、セメントと、該セメントに対し0.01〜3.0質量%のアルギン酸塩またはアルギン酸塩とともにアルギン酸エステルを用いたもののいずれかとからなり、L型フローでの流動性試験において、無振動条件では流動せず、振幅1.5mm、振動数2850vpmの振動条件での300mm到達時間が30秒以下であることを特徴とするチクソトロピー性水硬結合材である。
本発明のチクソトロピー性水硬結合材は、チクソトロピー機能を有する新たなセメントであり、チクソトロピー性が必要なセメント系左官材、セメント系グラウト材、セメント系吹付け材、セメント系補修材など土木・建築分野におけるセメント系材料のセメントとして広く用いることができる。
本発明のチクソトロピー性水硬結合材は、単にチクソトロピー性を有するだけでなく、流動時(例えば、グラウト材に用いた場合の該グラウト材のポンプ圧送時、シース管充填時など)の接触内壁面への付着性は低いのに静止時(例えば、左官材に用いた場合の該左官材の壁面塗布後、吹付け材に用いた場合の該吹付け材の壁面吹付け後など)の接触内壁面への付着性は良好といった特殊な付着性能も有する。このような付着性能を有することにより、従来のセルロース類を使用した場合に見られるダレの問題、ポンプ圧送性の問題、リバウンドの問題が生じ難くなる。
本発明のチクソトロピー性水硬結合材は、セメントと、該セメントに対し0.01〜3.0質量%のアルギン酸塩またはアルギン酸塩とアルギン酸エステルのいずれかとからなる。アルギン酸塩またはアルギン酸塩とアルギン酸エステルのいずれかをセメントと併用することによって、チクソトロピー性と上記付着性能を有する水硬結合材(セメント)が簡便に得られる。
アルギン酸塩またはアルギン酸塩とアルギン酸エステルの合量の含有量は、セメントに対し0.01〜3.0質量%である。0.01質量%未満ではチクソトロピー性や上記の特殊な付着性能についての十分な効果が得られない。3.0質量%を超えるとセメントの水和に悪影響を及ぼしたり増粘性が強くなりすぎて流動時における流動性の調整が難しくなったりする。
本願の請求項2に係る発明は、チクソトロピー性を有し、流動時の接触内壁面への付着性は低いのに静止時の接触内壁面への付着性は良好なセメント系左官材、セメント系グラウト材、セメント系吹付け材、またはセメント系補修材としての水硬結合材であって、セメントと、該セメントに対し0.01〜3.0質量%のアルギン酸塩またはアルギン酸塩とともにアルギン酸エステルを用いたもののいずれかと、該セメントに対し0.001〜0.05質量%の起泡剤とからなり、L型フローでの流動性試験において、無振動条件では流動せず、振幅1.5mm、振動数2850vpmの振動条件での300mm到達時間が30秒以下であることを特徴とするチクソトロピー性水硬結合材である。
本発明のチクソトロピー性水硬結合材は、上記請求項1に係る発明のチクソトロピー性水硬結合材に更に起泡剤を加えたものである。起泡剤を加えることによって、上記の特殊な付着性能が向上するとともに、グラウト材、吹付け材等の各材の軽量化が図れる。
起泡剤の含有量は、セメントに対し0.001〜0.05質量%である。0.001質量%未満では添加効果が不明確となる。0.05質量%を超えると強度に悪影響を及ぼすことがある。
本願の請求項3に係る発明は、前記起泡剤がラウリル硫酸塩であることを特徴とする請求項2に記載のチクソトロピー性水硬結合材である。
本発明では、起泡剤をラウリル硫酸塩に限定した。このように限定したのは、ラウリル硫酸塩を用いると多量の数十μから数百μ程度の微細な泡が安定して発生して上記の特殊な付着性能を向上し易くすることにより、グラウト材、吹付け材等の各材の軽量化が安定して図れるためである。ラウリル硫酸塩としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミンなどが挙げられる。
本発明に係るチクソトロピー性水硬結合材は、前述のように、L型フローでの流動性試験において、無振動条件では流動せず、振幅1.5mm、振動数2850vpmの振動条件での300mm到達時間が30秒以下であることを要件としている。
本発明では、上記チクソトロピー性水硬結合材のチクソトロピー性能(静止時には流動せず力が加わると流動性を示す性能)をL型フローでの流動性試験で評価し、無振動条件では流動せず、振幅1.5mm、振動数2850vpmの振動条件での300mm到達時間が30秒以下となる振動流動性の高いものをチクソトロピー性の高い好ましいチクソトロピー性水硬結合材とした。30秒以下であれば、ポンプ圧送性等の流動時の流動性に係る問題も解決可能となる。
L型フローでの流動性試験は、図1に示すL型フロー試験器を用いた流動性試験であり、従来から高流動コンクリートやセルフレベリング材といった流動性の高い材料の流動性を測定するのに用いられてきている。無振動条件は静止時(放置時)に対応し、振幅1.5mm、振動数2850vpmの振動条件は加力時(外力による流動時)に対応するものである。
チクソトロピー性は、静止時(放置時)には高粘度で流動性は悪いが、外力を加えた際(加力時)には低粘度化して流動性を示し、再度、静止すると高粘度が復元するといった高粘度化と低粘度化を繰り返す性質(揺変性)なので、静止時の流動状況と加力時の流動状況を評価することによってチクソトロピー性の評価ができる。本発明では、加力(外力)として、テーブルバイブレータによる振動を用いた。
本発明のチクソトロピー性水硬結合材は、チクソトロピー性を有し、流動時の接触内壁面への付着性は低いのに静止時の接触内壁面への付着性は良好といった性能も併せ持つ機能性結合材(機能性セメント)なので、これをセメント系左官材、セメント系グラウト材、セメント系吹付け材などにおける結合材(セメント)として用いれば、これら各材に発生するダレの問題、ポンプ圧送性や充填性の問題、リバウンドの問題が解決し易くなる。
L型フロー試験機を示す図である。(a)は測定試料が鉛直部に充填された状態での模式斜視図、(b)はL型フロー試験機の平面図、(c)はL型フロー試験機の断面図である。 J14ロート流下時間測定による添加量の影響結果を示す図である。
以下、本発明を実施例をまじえて詳細に説明する。
本発明のチクソトロピー性水硬結合材の一つは、チクソトロピー性を有し、流動時の接触内壁面への付着性は低いのに静止時の接触内壁面への付着性は良好な水硬結合材であって、セメントと、該セメントに対し0.01〜3.0質量%のアルギン酸塩またはアルギン酸塩とアルギン酸エステルのいずれかとからなるものである。
流動時の接触内壁面への付着性は低い」とは、上記本発明のチクソトロピー性水硬結合材の未硬化含水物に外力(重力、圧力など)を加えて流動させた場合、該未硬化含水物を入れている容器や配管の内壁面に付着し難いことを意味するものであり、本願では、前記未硬化含水物が入ったホバートミキサーの容器を90°傾け流動させた際の容器内壁面の付着状況を観察することにより評価している。
静止時の接触内壁面への付着性は良好」とは、前記未硬化含水物を側壁面、床面、天井面などに付着させた場合、該未硬化含水物がダレたりリバウンドしたりせず良好に付着することを意味するものであり、本願では、前記未硬化含水物を上方の天井面に向かって垂直に投げ上げ天井面で静止させた際の天井面の付着状況、下への落下状況を観察することにより評価している。
セメントは、従来から土木・建築分野で使用されているポルトランドセメント、混合セメントであれば特に限定されないが、汎用性及び流動性の観点からは、普通ポルトランドセメント、高炉セメントが好ましい。
アルギン酸塩は、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウムのいずれか一種以上である。また、アルギン酸エステルは静止時の付着性をより強めたい場合に増粘性向上剤として上記アルギン酸塩とともに補助的に用いる。
本発明のチクソトロピー性水硬結合材の他の一つは、チクソトロピー性を有し、流動時の接触内壁面への付着性は低いのに静止時の接触内壁面への付着性は良好な水硬結合材であって、セメントと、該セメントに対し0.01〜3.0質量%のアルギン酸塩またはアルギン酸塩とアルギン酸エステルのいずれかと、該セメントに対し0.001〜0.05質量%の起泡剤とからなることを特徴とするチクソトロピー性水硬結合材である。
これは、上記チクソトロピー性水硬結合材に更に起泡剤を加えたものである。起泡剤を加えることによって、流動時の接触内壁面への付着性がより低くなる、静止時の接触内壁面への付着性がより良好になる、軽量ブロックにおいては即時の型枠脱型後のブロックの角欠けを防ぐなどといった効果が得られる。
但し、強度や緻密性は加えないものに比べて低下するので強度や緻密性を必要とする用途には不向きである。断熱材、充填材、軽量ブロックなどの用途には好適である。強度を増進させたい場合は、水粉体比を低下させるとともに高強度型セメントや高強度混和材などの結合材料、結合補助材料を用いればよい。
起泡剤としては、ラウリル硫酸塩、アルミニウム粉末、アルキルエーテル系陰イオン界面活性剤、変性ロジン酸化合物系陰イオン界面活性剤、高アルキルカルボン酸系陰イオン界面活性剤、変性アルキルカルボン酸化合物系陰イオン界面活性剤、高級脂肪酸及び非イオン系界面活性剤、ポリオキシエチレン系非イオン及び特殊アニオン活性剤など、従来からセメントモルタルやセメントコンクリートに使用されているものであれば使用できるが、中でも、付着性の改善、軽量化に好適な多量の数十μから数百μ程度の微細な泡が安定して大量に発生する点からラウリル硫酸塩は好ましい。
ラウリル硫酸塩には、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミンなどがある。
上記2種類のチクソトロピー性水硬結合材は、従来のセメント系材料、セメント組成物におけるセメント代替として使用できる。
上記2種類のチクソトロピー性水硬結合材では、前述のチクソトロピー性能や付着性能を著しく低下させたり阻害したりしない範囲内で、減水剤、収縮低減剤、膨張材、石灰石微粉等のセメント混和材を併用することができる。
本発明のチクソトロピー性水硬結合材では、チクソトロピー性が強いものほど好ましい。本願では、チクソトロピー性の程度をL型フローでの流動性試験で評価する。
L型フローでの流動性試験は、図1に示すL型フロー試験器1を用いたフロー試験であり、高流動コンクリートやセルフレベリング材といった流動性の高い材料の流動性を測定するために従来から行われている。(特許第3699254号、特開2002−128612、特許第3963800号、特開2007−76960、特開2007−119257、特開2008−57202、特開2008−197013、特許第4710884号などを参照。)
図1に示すL型フロー試験器1は、鉛直部Aと水平部BがL型に連結した函体であり、測定開始時には縦長の鉛直部Aと横長の水平部Bとが仕切板2により遮断された状態となっている。そして、仕切板2は、上方に引きぬけるようになっている。また、水平部Bの上部は開口されており、測定試料4の流動状況を観察できるようになっている。本発明で用いたL型フロー試験器1の各寸法は、図1に示す通りである。材質はSUS等の金属製、アクリル樹脂等の樹脂製のいずれでもよいが、本発明ではアクリル樹脂製のものを用いた。
フロー試験は、鉛直部Aの上方の開口(測定試料投入口3)より所定量の測定試料を自然落下させて鉛直部Aに充填した後、仕切板2を手で上方に引上げ、鉛直部Aと水平部Bとの間を開放状態にする。すると、鉛直部Aに充填されていた測定試料は自重により水平部Bに流れ出し測定試料の流動性に応じて水平部Bを流動する。
本発明では、水平部Bへの流れ出し状況と、水平部Bにおける鉛直部Aと水平部Bとの間の開口部から300mm流動するまでに要した時間(L型フロー到達時間)とで流動性を評価した。
本発明では単なる流動性の評価だけではなく、無振動条件下(静止時を想定)での測定に加えて振動条件下(加力による流動時を想定)での測定の両方を行い、チクソトロピー性を評価した。振動条件下での測定は、テーブル型バイブレーター(西日本試験機社製、型式;C−271a、振幅1.5mm、振動数2850vpm)上に前記L型フロー試験器1を載置して行った。
本発明のチクソトロピー性水硬結合材では、静止時(放置時)には流動せず、外力を加えた際には良好に流動するといったチクソトロピー性の高いものが好ましい。具体的には、上記チクソトロピー性の評価方法において、無振動条件では流動せず(すなわち、鉛直部Aの測定試料が水平部Bには流れ出さず)、振幅1.5mm、振動数2850vpmの振動条件では300mm到達時間(L型フロー到達時間)が30秒以下となる良好な振動流動性を有するものが好ましい。このような、良好なチクソトロピー性を有するものであれば、本発明の目的が達成し易くなる。
以下に、本発明のチクソトロピー性水硬結合材の性能確認試験について示す。
〔性能確認試験〕
(1)増粘剤(チクソトロピー性付与剤)の添加量の影響
本発明で用いるアルギン酸系増粘剤(チクソトロピー性付与剤)における添加量の違いが流動性に及ぼす影響をみるために、W/C=40%で該増粘剤の添加量が異なる各水硬結合材スラリー(セメントスラリー)のJ14ロート流下時間測定を行った。また、測定後の試料500gをポリエチレン袋に入れて3時間静置し、目視によりブリーディグ発生の有無を確認した。なお、比較として、従来の増粘剤(チクソトロピー性付与剤)であるセルロース類についても同様に行った。
J14ロート流下時間測定は、PCグラウトの流動性試験方法(案)としてコンクリート標準示方書のJSCE−F 531−2010に定められる方法に準じて行った。なお、としてアルギン酸ナトリウム(キミカ社製)、セルロース類としてメチルセルロース(信越化学社製;hi−メトローズ)を用いた。これらは、セメントに添加して用いた。セメントは普通ポルトランドセメントである。また、添加量は、0.01%、0.02%、0.05%、0.10%、0.20%、0.50%の6水準である。
J14ロート流下時間測定の結果を図2に示す。図2からわかるように、同添加量ではアルギン酸ナトリウムよりメチルセルロースの方が流動性は悪く、しかも、メチルセルロースでは、添加量が0.2%を超えると急激に流動性が悪くなり、添加量の影響を大きく受ける。アルギン酸ナトリウムは添加量が増すにつれ若干流動性は悪くなるものの急激に変化することなく安定している。また、アルギン酸ナトリウムを用いたものでは、いずれもブリーディングの発生は見られなかった。
この結果から、アルギン酸系増粘剤の方が従来のセルロース類増粘剤に比べ添加量の影響を受け難く、流動性の低下も小さいので増粘剤(チクソトロピー性付与剤)として好ましいことがわかる。
(2)チクソトロピー性
図1に示す前述のL型フロー試験器1を用い、チクソトロピー性の程度を評価した。また、併せて、測定後の試料500gをポリエチレン袋に入れて3時間静置し、目視によりブリーディグ発生の有無を確認した。試験方法の詳細は前述の通りである。使用材料は次の通りである。
<使用材料>
・普通ポルトランドセメント(デイ・シイ社製)
・高炉セメントB種(デイ・シイ社製)
・アルギン酸ナトリウム(キミカ社製)
・アルギン酸エステル(キミカ社製)
・メチルセルロース(信越化学社製;hi−メトローズ)
・セラメントフロー(デイ・シイ社製;チクソトロピー性グラウト材用混和材)
・ラウリル硫酸ナトリウム(花王社製;エマール10PT)
・アルミ粉(関東化学社製;1級試薬)
・高性能減水剤(ポリカルボン酸系減水剤コアフロー;太平洋マテリアル社製)
・膨張材(エクスパン;太平洋マテリアル社製)
測定試料の配合を表1に、試験結果を表2に示す。
Figure 0005976478
配合No.1〜17は本発明の実施例。配合No.18〜21は比較例である。
Figure 0005976478
上表に示すように、本発明の実施例である配合No.1〜17のものは、無振動条件下では流動せず、振動条件下ではL型フローの300mm到達時間が30秒以内となる良好な流動性を示した。30秒以内であればポンプ圧送性の問題への対応も可能となる。
また、これらの結果から、本発明のものはブリーディングが発生し難く優れたチクソトロピー性を有していることがわかる。特に、配合No.4〜5のようにアルギン酸ナトリウムを水溶液で添加したものや、配合No.7〜11のようにアルギン酸類の添加量を1質量%程度にしたものは、振動条件下での流動性が特に良くなるので好ましい。また、減水剤や膨張材を併用してもチクソトロピー性を大きく損なうことはなかった。
一方、比較例であるアルギン酸ナトリウムの添加量が多い配合No.18は、無振動条件下での流動はみられないものの振動条件下での流動時の若干粘性が大きくなった。そして、L型フロー到達時間も51.3秒と良好な振動流動性とする30秒以内を大きく超えた。このように、アルギン酸ナトリウムの添加量が3.0質量%を超え多すぎると無振動条件下での流動状況は良いものの振動条件下での振動流動性が悪くなってしまい、高いチクソトロピー性能が低下してしまうことがわかる。
また、比較例である従来の増粘剤(チクソトロピー性付与剤)を添加した配合No.19〜21は、無振動条件下で流動してしまい、振動条件下でも同様に粘性が大きく極めてゆっくりとした流動を示した。このように、メチルセルロースやセラメントフローといった従来の増粘剤(チクソトロピー性付与剤)を用いたものは高い増粘性はあるものの高いチクソトロピー性を有するまでには至らないことがわかる。
(3)流動時(流動開始時から)の付着性
流動時の接触内壁面への付着性をみるため、表1の各配合につき、測定試料が2L入ったホバートミキサーの容器(容量約4Lの練鉢)を手でゆっくり90°傾けて該測定試料を容器内で流動させ、その際の流動状況と容器内壁への付着状況を目視観察し5段階で評価した。試験結果を表3に示す。
Figure 0005976478
本発明の実施例でありアルギン酸ナトリウムの添加量が少ない配合No.1〜3では、容器内壁に少量の測定試料の付着が見られるものの、ほぼ良好な流動性を示した。アルギン酸ナトリウムを水溶液で添加した配合No.4〜5や添加量が0.5質量%以上の配合No.6〜10、配合No.16〜17では、容器内壁への測定試料の付着は極僅であり流動状況も良好であった。
起泡剤を併用した配合No.11〜15では、容器内壁への測定試料の付着は全く見られず、流動状況も良好であった。起泡剤を加えることによって、流動時の接触内壁面への付着性がより低くなることがわかる。
一方、アルギン酸ナトリウムを多く使用した比較例の配合No.18でも、流動時の付着状況や流動状況はほぼ良好であった。また、従来の増粘剤(チクソトロピー性付与剤)を添加した比較例の配合No.19〜21では、流動時の容器内壁に多くの測定試料の付着が認められ、流動状況も良くなかった。
以上からわかるように、本発明のチクソトロピー性水硬結合材では、流動時の接触内壁面への付着性が低くなるので、ポンプ圧送性の問題が生じ難くなる。
(4)静止時(静止後)の付着性
静止時の接触内壁面への付着性をみるため、表1の各配合につき、測定試料の約100mlをJIS R 5201セメントの物理試験方法」で用いられる練り混ぜ用匙で採取し、天井(石こうボード製の天井板を敷き並べてなるもの)の垂直下方の約1.5mから天井面に向かって垂直に、手で測定試料の入った匙を水平から45°まですばやく手首で傾けることによって測定試料を投げ上げて測定試料を該天井面に衝突させ、測定試料を静止させた後の天井面への付着状況及び床への落下などによる天井からの跳ね返り(リバウンド)状況を目視観察し3段階で評価した。試験結果を表4に示す。
Figure 0005976478
上表に示すように、本発明の実施例であるアルギン酸類を用いた配合No.1〜10、配合No.16〜17では、測定試料が天井面に少し広がって付着するものの全量付着し、跳ね返り(リバウンド)による床への落下はみられなかった。また、起泡剤を併用した配合No.11〜15では、測定試料はほとんど広がらずに天井面に5cm程度の厚さで全量付着した。起泡剤を加えることによって、静止時の接触内壁面への付着性もより良好になることがわかる。
一方、アルギン酸ナトリウムを3.0質量%を超えて多量に添加した比較例の配合No.18でも、測定試料が天井面に少し広がって付着するものの全量付着し、跳ね返り(リバウンド)による床への落下はみられなかった。また、メチルセルロースやセラメントフローといった従来の増粘剤(チクソトロピー性付与剤)を添加した比較例の配合No.19〜21では、測定試料は天井面に一部が付着のみであり、跳ね返りによる床への落下が多くみられた。
以上からわかるように、本発明のチクソトロピー性水硬結合材では、静止時の接触内壁面への付着性が良好になるので、ダレの問題やリバウンドの問題が生じ難くなる。
以上、上記性能確認試験結果からわかるように、本発明のチクソトロピー性水硬結合材は、良好なチクソトロピー性を有し、かつ、流動時の接触内壁面への付着性は低いのに静止時の接触内壁面への付着性は良好といった性能も併せ持つ従来にない機能性結合材(機能性セメント)である。
したがって、これをセメント系左官材、セメント系グラウト材、セメント系吹付け材などにおける結合材(セメント)として用いれば、これら各材に発生するダレの問題、ポンプ圧送性や充填性の問題、リバウンドの問題が解決し易くなるといった効果を奏する。
なお、上記実施例ではアルギン酸塩としてアルギン酸ナトリウムを用いたが、アルギン酸カリウムやアルギン酸アンモニウムを用いても、同様の結果が得られる。
また、配合No.12〜14に一例を示すように、チクソトロピー性能や付着性能を著しく低下させたり阻害したりしない範囲内で、減水剤、収縮低減剤、膨張材、石灰石微粉等のセメント混和材を併用することができる。減水剤を用いれば水量を減らせるので強度の向上が図れる。膨張材を使用すれば、充填性の向上が図れる。また、起泡剤による微細気泡に代えて、微細発泡粒子、微細軽量骨材を用いることも可能である。
1…L型フロー試験器、2…仕切板、A…鉛直部、B…水平部、3…測定試料投入口、4…測定試料

Claims (3)

  1. チクソトロピー性を有し、流動時の接触内壁面への付着性は低いのに静止時の接触内壁面への付着性は良好なセメント系左官材、セメント系グラウト材、セメント系吹付け材、またはセメント系補修材としての水硬結合材であって、セメントと、該セメントに対し0.01〜3.0質量%のアルギン酸塩またはアルギン酸塩とともにアルギン酸エステルを用いたもののいずれかとからなり、L型フローでの流動性試験において、無振動条件では流動せず、振幅1.5mm、振動数2850vpmの振動条件での300mm到達時間が30秒以下であることを特徴とするチクソトロピー性水硬結合材。
  2. チクソトロピー性を有し、流動時の接触内壁面への付着性は低いのに静止時の接触内壁面への付着性は良好なセメント系左官材、セメント系グラウト材、セメント系吹付け材、またはセメント系補修材としての水硬結合材であって、セメントと、該セメントに対し0.01〜3.0質量%のアルギン酸塩またはアルギン酸塩とともにアルギン酸エステルを用いたもののいずれかと、該セメントに対し0.001〜0.05質量%の起泡剤とからなり、L型フローでの流動性試験において、無振動条件では流動せず、振幅1.5mm、振動数2850vpmの振動条件での300mm到達時間が30秒以下であることを特徴とするチクソトロピー性水硬結合材。
  3. 前記起泡剤がラウリル硫酸塩であることを特徴とする請求項2に記載のチクソトロピー性水硬結合材。
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