以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
先ず、図1及び図2には、本発明に従う構造を有する車両用アンダーカバーの一実施形態としての自動車用フロアアンダーカバーが、その上面形態と断面形態とにおいて、それぞれ示されている。それら図1及び図2から明らかなように、本実施形態の自動車用フロアアンダーカバー10(以下、単に、フロアアンダーカバー10と言う)は、略長手矩形状の平板からなる本体部12と、この本体部12の一方の面に一体的に突設された複数(ここでは、10個)の取付部14とにて構成されている。なお、以下からは、本体部12の取付部14の形成面を上面、その反対側の面を下面と言うこととする。
より詳細には、フロアアンダーカバー10は、所定の樹脂材料を用いてなる射出成形品からなり、一定の厚さを有する平板状の本体部12を備えている。そして、ここでは、かかる本体部12と複数の取付部14を含むフロアアンダーカバー10全体を形成する樹脂材料として、ポリプロピレンが用いられている。なお、本体部12の厚さは、本体部12に必要とされる強度等に応じて適宜に設定されるところであるが、一般には、2.0〜3.0mm程度とされる。
一方、本体部12に一体形成される複数の取付部14は、何れも、全体として、上方に向かって次第に小径となる円錐台状の同一形状を呈し、テーパ状の筒部16と、この筒部16の上側開口部を閉塞する底部18とを有している。また、それら各取付部14の底部18と筒部16は、本体部12の半分程度の厚さを有している。更に、取付部14の底部18の中心部には、それを貫通するボルト挿通孔20が形成されている。このような取付部14の複数のものが、本体部12の上面の外周部において、互いに所定の間隔をあけた位置に、それぞれ配置されている。
そして、かくの如き構造とされたフロアアンダーカバー10は、本体部12が、図示しない自動車の車体の床下に、車体の下面を覆うように配置されて、各取付部14のボルト挿通孔20に挿通された取付ボルト(図示せず)にて車体にボルト止めされることにより、車体に取り付けられるようになっているのである。
また、図3から明らかなように、フロアアンダーカバー10の本体部12と取付部14は、内部構造が互いに異なる構造とされている。即ち、本体部12は、その表層部分が、未発泡乃至は非発泡の薄肉のスキン層22とされ、また、かかるスキン層22の内側に位置する、本体部12の内層部分が、多数の発泡セル24を有する発泡層26とされている。一方、取付部14は、筒部16と底部18のそれぞれの表層部分が、未発泡乃至は非発泡の薄肉のスキン層22,22とされ、また、それらのスキン層22の内側に位置する、筒部16と底部18の内層部分が、何れも、発泡セル24を僅かに有するか或いは有しない、つまり、実質的に発泡していないソリッド層28とされている。
このように、フロアアンダーカバー10にあっては、その大部分を占める本体部12の内層部分が発泡層26とされていることにより、全体の軽量化が有利に図られている。また、そのような本体部12の表層部分が非発泡のスキン層22とされていることにより、本体部12内への水や微細な固形物等の異物の侵入が有効に阻止されると共に、本体部12に対して十分な強度が付与されている。更に、取付ボルトが挿通されるボルト挿通孔20を有する取付部14の表層部分と内側部分の両方が、非発泡若しくは実質的に非発泡のスキン層26とソリッド層28とされていることにより、取付部14の強度が、本体部12よりも十分に高められて、フロアアンダーカバー10の自動車への取付強度が効果的に高められている。
なお、本体部12のスキン層22及び発泡層26と、取付部14のスキン層22及びソリッド層28のそれぞれの厚さは、特に限定されるものではないものの、フロアアンダーカバー10の軽量性と強度との両方を確保する上から、一般には、以下の如き範囲内の値とされる。即ち、本体部12と取付部14の各スキン層22の厚さは、好ましくは0.3〜0.5mm程度とされる。また、本体部12の発泡層26の厚さは、望ましくは2.0〜5.0mm程度とされる。更に、取付部14のソリッド層28の厚さは、一般に2.0〜3.5mm程度とされる。
そして、本実施形態のフロアアンダーカバー10においては、特に、本体部12の発泡層26が有する多数の発泡セル24の平均径、つまり平均発泡セル径が0.36mm以下とされている。このような平均発泡セル径は、従来の樹脂発泡体からなるフロアアンダーカバーでは全く見られない、十分に小さな値である。本実施形態のフロアアンダーカバー10は、かくの如き小さな平均発泡セル径を有していることによって、本体部12の強度、具体的には曲げ強度や引き裂き強度等が、従来の樹脂発泡体からなるフロアアンダーカバーよりも効果的に高められて、非発泡性の樹脂材料を用いて形成されたフロアアンダーカバーと同程度のレベルとされているのである。
また、本体部12の発泡層26の発泡セル径の下限値は、特に限定されるものではないものの、かかる発泡セル径は0.1mm以上とされていることが望ましい。なお、平均発泡セル径は、走査型電子顕微鏡等を用いて、発泡層26の断面を所定の倍率で観察し、或いはその写真を撮影し、画像中の発泡セル24を無作為に適数個選択して、それらの発泡セル24の直径(径方向寸法の最大値を直径とする)をそれぞれ測定した後、得られた測定値の平均を算出することによって求められるものである。
さらに、フロアアンダーカバー10は、本体部12の厚さが、非発泡性の樹脂材料を用いて形成された従来のフロアアンダーカバーの厚さよりも十分に大きくされており、ここでは、2倍程度の厚さとされている。これによって、曲げ強度の向上が、有利に図られている。
このように、本実施形態のフロアアンダーカバー10にあっては、本体部12の発泡層26の平均発泡セル径が、発泡樹脂からなる従来品よりも十分に小さくされており、また、それに加えて、本体部12の厚さが、非発泡樹脂からなる従来品よりも厚くされていることで、軽量化を実現しつつ、十分な強度が効果的に確保されている。
それ故、かかるフロアアンダーカバー10にあっては、非発泡性の樹脂材料を用いて形成された従来のフロアアンダーカバーにおいて、十分な強度を確保するために本体部12の上面や下面に設けられていたリブが、有利に省略され得るのである。これによって、形成材料たる樹脂材料が効果的に節約されて、製造コストの低減化が、有効に図られ得るのである。
また、本実施形態のフロアアンダーカバー10においては、本体部12の厚肉化が発泡層26の形成によって実現されているため、形成材料たる樹脂材料の使用量を増やすことなく、本体部12を十分に厚肉化することができる。これによっても、製造コストを可及的に低く抑えつつ、強度の向上が有利に図られ得るのである。
ところで、かくの如き構造を有するフロアアンダーカバー10を製造する際には、例えば、図4に示される如き構造を有する射出成形用金型30を備えた射出成形機が、好適に用いられる。
図4から明らかなように、射出成形用金型30は、固定型32と、かかる固定型32に対して対向配置された可動型34とを有している。また、固定型32は、その背面において、固定盤36に取り付けられている一方、可動型34は、その背面において、可動盤38に取り付けられている。更に、固定盤36は、位置固定とされている一方、可動盤38は、例えば、油圧シリンダ等を含む、図示しない型締め装置によって、固定盤36に対して接近乃至離隔移動可能とされている。これにより、可動盤38の固定盤36に対する接近乃至離隔移動に伴って、可動型34が、固定型32に対して、互いの対向方向において接近乃至離隔移動して、固定型32と可動型34との型閉めと型開きが行われるようになっている。なお、以下からは、射出成形用金型30の固定型32側を上側乃至は上方と言い、可動型34側を下側乃至は下方と言う。
そして、かかる射出成形用金型30では、固定型32と可動型34とを型閉めした状態から、可動盤38が、図示しない型締め装置により、固定盤36から、予め定められた僅かな寸法だけ下方に離隔させられた第一段階と、下方に十分に離隔させられた第二段階の二段階に亘って離隔移動するようになっている。かくして、可動盤38の固定盤36からの一段階目の離隔移動により、固定型32と可動型34とが僅かな寸法だけ型開きするコアバックが行われる(図9参照)一方、可動盤38の固定盤36からの二段階目の離隔移動により、固定型32と可動型34とが、後述するように、それらの間で成形されたフロアアンダーカバー10を離型させるのに十分な距離だけ離間させられて、完全に型開きされるようになっている。
また、固定型32においては、可動型34との対向面のうち、フロアアンダーカバー10と同一の幅を有する幅方向(図4の左右方向)中央部分が、固定型側キャビティ形成面40とされている。そして、かかる固定型側キャビティ形成面40の幅方向両端部には、複数の取付部形成突起44が、固定型側キャビティ形成面40の長さ方向(図4の紙面に垂直な方向)に間隔をあけて位置するように、一体的に突設されている。この取付部形成突起44は、フロアアンダーカバー10の取付部14の筒部16及び底部18の各内面形状に対応した外面形状を有している。なお、図4中、42は、固定型32の幅方向中央部を上下方向に貫通して延びるランナーである。
固定型32が取り付けられる固定盤36には、その中央部に設けられた貫通孔内に、スプルーブッシュ46が嵌め込まれている。このスプルーブッシュ46には、それを貫通するように、スプルー48が設けられている。また、スプルーブッシュ46の上面には、図示しない射出装置の加熱筒の先端に設けられたノズル49が当接配置されるノズルタッチ部50が形成されている。更に、ノズルタッチ部50におけるスプルー48の開口部には、かかるスプルー48の開口部を開閉する、図示しないバルブが設けられている。このバルブは、ノズル49からスプルー48内に溶融樹脂が射出されるときだけ開作動するようになっている。また、スプルー48は、固定型32のランナー42と連通している。
一方、可動型34の固定型32との対向面の幅方向(図4の左右方向)中央部には、キャビティ形成凹所52が設けられている。このキャビティ形成凹所52は、フロアアンダーカバー10と同一の幅と、フロアアンダーカバー10の厚さよりも所定寸法だけ小さな深さ(ここでは、フロアアンダーカバー10の本体部12の厚さの略半分に相当する深さ)とを有しており、その内面が、可動型側キャビティ形成面54とされている。そして、かかる可動型キャビティ形成面54は、固定型32に形成された固定型側キャビティ形成面40に対して、上下方向(固定型32と可動型34の対向方向)において互いに対応位置している。
また、可動型側キャビティ形成面54の幅方向両端部には、複数の取付部形成凹部56が、可動型側キャビティ形成面54の長さ方向(図4の紙面に垂直な方向)に間隔をあけて位置するように、一体的に突設されている。それら複数の取付部形成凹部56は、その個数が、固定型側キャビティ形成面40に設けられた複数の取付部形成突起44と同じ数とされて、互いに同一の形状を有している。また、それら各取付部形成凹部56の可動型側キャビティ形成面54に対する形成位置が、各取付部形成突起44の固定型側キャビティ形成面40に対する形成位置に対して、上下方向において対応する位置とされている。
そして、図5に示されるように、取付部形成凹部56は、その開口側の上側部分が、テーパ筒部58とされている一方、かかるテーパ筒部58を除く底部側の下側部分が段付穴部60とされている。この取付部形成凹部56のテーパ筒部58は、上方に向かって次第に大径化するテーパ筒状の内周面形状を有している。また、かかるテーパ筒部58の内周面形状は、フロアアンダーカバー10の取付部14のテーパ状の筒部16の外周面形状に対応した形状とされている。一方、段付穴部60は、その内周面の上下方向中間部に、円環状の段差面61が設けられて、この段差面61よりも上側の部分が、テーパ筒部58の最小内径と同一の内径を有する円筒状の内周面形状を有する小径穴部62とされている。また、段差面61よりも下側の部分が、小径穴部62よりも大径の円筒状の内周面形状を有する大径穴部64とされている。
そして、そのような取付部形成凹部56内には、スライド型66が、それぞれ収容配置されている。このスライド型66は、全体として、略段付円柱状のブロック形態を呈し、取付部形成凹部56の段付穴部60の深さと略同一高さを有している。また、かかるスライド型66は、その高さ方向中間部に円環状のショルダ面67が設けられて、かかるショルダ面67よりも上側の部分が、段付穴部60の小径穴部62の内径よりも僅かに小さな外径を有する小径部68とされている一方、ショルダ面67よりも下側の部分が、段付穴部60の大径穴部64よりも僅かに小径で、且つ小径部68よりも大径の大径部70とされている。
さらに、スライド型66においては、小径部68の上面が、平面状のスライド型側キャビティ形成面72とされており、このスライド型側キャビティ形成面72の中心部には、挿通孔形成凸部74が一体的に突設されている。この挿通孔形成凸部74は、フロアアンダーカバー10の取付部14の底部18に設けられたボルト挿通孔20の内周面形状に対応した外周面形状を有している。
そして、そのような構造を有するスライド型66が、大径部70を、取付部形成凹部56の段付穴部60の大径穴部64内に位置させると共に、小径部68を段付穴部60の小径穴部62内に位置させ、更に、挿通孔形成凸部74を取付部形成凹部56のテーパ筒部58内に突入位置させた状態で、取付部形成凹部56内を、上下方向に摺動しつつスライド変位可能に配置されている。また、そのような配置状態下で、スライド型66の下面と取付部形成凹部56の底面との間に、付勢手段の一種たる圧縮コイルばね76が圧縮状態で介装されている。これにより、スライド型66が、圧縮コイルばね76により上方に付勢されつつ、取付部形成凹部56の段差面61に対するショルダ面67の当接、係合により、上方への移動が規制されている。
かくして、かくの如き構造とされた射出成形用金型30にあっては、図6に示されるように、固定型32と可動型34とが型閉めされることにより、それら固定型32と可動型34との間に、成形キャビティ78が形成されるようになっている。そして、このような射出成形用金型30を備えた射出成形機では、射出装置(図示せず)のノズル49から射出した溶融樹脂材料を、スプルー48とランナー42とを通じて、成形キャビティ78内に射出・充填するようになっている。
また、射出成形用金型30においては、固定型32と可動型34との型閉め状態下で、固定型側キャビティ形成面40に設けられた複数の取付部形成突起44が、可動型側キャビティ形成面54(キャビティ形成凹所52の底面)に設けられた複数の取付部形成凹部56のテーパ筒部58内に突入するようになっている。そして、その際、各取付部形成凹部56内に収容されたスライド型66の挿通孔形成凸部74の先端面が、取付部形成突起44の先端面に当接し、スライド型66が、取付部形成突起44により下方に押圧され、圧縮コイルばね76の付勢力に抗して、取付部形成凹部56の小径穴部62の内周面に摺動しつつ、下方にスライド変位させられるようになっている。
これによって、固定型側キャビティ形成面40のうちの複数の取付部形成突起44のそれぞれの外周面及び先端面を除く部分と可動型側キャビティ形成面54との間に形成される成形キャビティ78部分が、本体部成形キャビティ部分80とされている。また、固定型側キャビティ形成面40のうちの複数の取付部形成突起44のそれぞれの外周面及び先端面と、スライド型側キャビティ形成面72と、各取付部形成凹部56のテーパ筒部58との間に形成される部分が、それぞれ、取付部成形キャビティ部分82とされている。
そして、前記したように、射出成形用金型30にあっては、可動型34が固定型32から予め定められた僅かな量だけ離間するコアバックが行われるようになっており、このコアバックによって、図7に二点鎖線で示されるように、固定型側キャビティ形成面40と可動型側キャビティ形成面54とが離間して、本体部成形キャビティ部分80の厚さ及び容積が、コアバック前よりも、コアバック量に応じた分だけ増大するようになっている。
また、射出成形用金型30では、コアバックが行われたときに、取付部形成凹部56内に収容されたスライド型66の挿通孔形成凸部74の先端面が、圧縮コイルばね76の付勢力によって、取付部形成突起44の先端面に押圧接触した状態が維持されたままで、スライド型66が、取付部形成凹部56の小径穴部62の内周面に摺動しつつ、可動型34と相対的に上方にスライド変位するようになっている。かくして、固定型側キャビティ形成面40に設けられた取付部形成突起44の先端面とスライド型側キャビティ形成面72との間の距離が、コアバックによって変化しないようになっている。そして、それにより、取付部成形キャビティ部分82のうち、取付部形成突起44の先端面とスライド型側キャビティ形成面72との間の部分、つまり、取付部14の底部18を形成する部分の厚さ及び容積が、コアバックが行われた後も、コアバック前と同じ大きさに維持されるようになっている。なお、取付部形成キャビティ部分82のうち、取付部形成突起44の外周面とテーパ筒部58との間の部分、つまり、取付部14の筒部16を形成する部分の厚さ及び容積は、コアバックによって多少大きくなるものの、その増大量が可及的に小さくなるように、例えば、取付部形成突起44の外周面やテーパ筒部58のテーパ角度が設定されている。このことから明らかなように、本実施形態では、可動型34にてベース型が構成されて、かかる可動型34とスライド型66とにて、第一の型が構成されている一方、固定型32にて、第二の型が構成されている。
そして、かくの如き構造を有する射出成形用金型30を備えた射出成形機を用いて、本実施形態のフロアアンダーカバー10を製造する際には、例えば、以下の手順に従って作業が進められる。
すなわち、先ず、図6に示されるように、射出成形用金型30を型閉めして、固定型32と可動型34との間に成形キャビティ78を形成する。前記したように、ここで形成される成形キャビティ78は、本体部成形キャビティ部分80と取付部成形キャビティ部分82とにて構成される。
次に、図8に示されるように、射出装置(図示せず)のノズル49から溶融樹脂材料84を射出し、成形キャビティ78内に充填する。このとき、成形キャビティ78内に射出・充填される溶融樹脂材料84として、発泡性のものが用いられる。
なお、ここで用いられる発泡性の溶融樹脂材料84は、特に限定されるものではなく、樹脂発泡体からなる従来のフロアアンダーカバーの形成材料として利用されるものが、適宜に用いられる。例えば、先に例示したポリプロピレンを始めとした各種の熱可塑性樹脂材料や熱硬化性樹脂材料、或いはそれらの樹脂材料中に、ガラス繊維やカーボン繊維、タルク、ゴム等の様々な配合材を混入してなる複合材料等の様々な材料に対して、各種の発泡剤が混入乃至は溶解されてなるものが使用される。このような各種の樹脂材料乃至は複合材料に対する発泡剤の配合量は、発泡剤の種類等に応じて、適宜に決定される。
また、溶融樹脂材料84に混入乃至は溶解される発泡剤の種類も、何等限定されるものではなく、後述するように、コアバックによる成形キャビティ78の容積の増大、換言すれば、溶融樹脂材料84に対する圧力の減少によって発泡を開始する発泡剤が、従来より公知のものの中から適宜に選択されて、使用される。即ち、発泡剤としては、炭酸アンモニウム、重炭酸ソーダ等の無機化合物や、アゾ化合物、スルホヒドラジド化合物等の有機化合物からなる化学発泡剤、或いは液体状態、気体状態、超臨界状態の二酸化炭素、窒素、アルゴン等からなる物理発泡剤等が、用いられるのである。そして、それらの発泡剤のうち、化学発泡剤は、例えば、射出装置の加熱筒内に、溶融樹脂材料84の溶融前の樹脂材料等と共に投入されて、加熱筒内で、溶融樹脂材料84に混入される。また、物理発泡剤は、例えば、加熱筒の途中に設けられた供給口を通じて、加熱筒内に供給されることにより、加熱筒内で加熱溶融された溶融樹脂材料84に溶解されることとなる。
そして、成形キャビティ78内への発泡性の溶融樹脂材料84の射出・充填が完了したら、成形キャビティ78内の溶融樹脂材料84に対して保圧を掛ける操作を何等行うことなく、所定の時間放置して、固定型側キャビティ形成面40と可動型側キャビティ形成面54とスライド型側キャビティ形成面72とそれぞれ接触する溶融樹脂材料84の表層部分に、非発泡のスキン層22を薄い厚さで形成する(図9参照)。
次いで、図9に示されるように、スキン層22の形成後に、可動型34を固定型32から予め定められた僅かな距離だけ離間させて、コアバックを行う。これによって、前記したように、成形キャビティ78における本体部成形キャビティ部分80の厚さ及び容積を十分に増大させる。また、成形キャビティ78における取付部成形キャビティ82部分のうち、テーパ筒部58と取付部形成突起44の外周面との間に位置する部分(取付部14の筒部16形成部分)の厚さ及び容積を少しだけ増大させる一方、スライド型側キャビティ形成面72と取付部形成突起44の先端面との間に位置する部分(取付部14の底部18形成部分)の厚さ及び容積をコアバック前のままとする。
なお、ここでは、コアバックにより、本体部成形キャビティ部分80の厚さ、換言すれば、固定側キャビティ形成面40と可動側キャビティ形成面54との間の距離が、コアバック前に比して、例えば、1.5〜2倍程度となるように、可動型34の固定型32からの離間距離が設定されている。これによって、最終的に得られるフロアアンダーカバー10の本体部12の厚さが、非発泡樹脂からなる従来のフロアアンダーカバーの本体部よりも厚肉とされるようになっている。
そして、そのようなコアバックを行うことで、成形キャビティ78の本体部成形キャビティ部分80内の溶融樹脂材料84に加えられる圧力を減少させる。そうして、本体部成形キャビティ部分80内の溶融樹脂材料84中に含まれる発泡剤を発泡させる。これにより、本体部成形キャビティ部分80内に位置するスキン層22の内側に、発泡層26を形成し、以て、本体部成形キャビティ部分80内で、本体部12を成形する。
そして、このような本体部12が有する発泡層26の形成時には、発泡層26が有する発泡セル24の平均セル径が0.36mm以下となり、また、望ましくは、平均セル径が0.1mm以上となる微細発泡が行われるように、本体部成形キャビティ部分80内での溶融樹脂材料84中の発泡剤の発泡条件が適宜に調節される。
一方、コアバックを行ったときに、成形キャビティ78における取付部成形キャビティ部分82のうち、スライド型側キャビティ形成面72と取付部形成突起44の先端面との間に位置する部分の厚さ及び容積を変化させないことで、かかる部分内の溶融樹脂材料84に加えられる圧力も変動させない。また、取付部成形キャビティ部分82のうち、テーパ筒部58と取付部形成突起44の外周面との間に位置する部分の厚さ及び容積を変化量を可及的に小さな量とすることで、かかる部分内の溶融樹脂材料84に加えられる圧力の変動量も可及的に抑制する。そうして、取付部成形キャビティ部分82内の溶融樹脂材料84中に含まれる発泡剤が可及的に発泡しないように為す。これにより、取付部成形キャビティ部分82内に位置するスキン層22の内側に、実質的に非発泡のソリッド層28を形成し、以て、取付部成形キャビティ部分82内で、底部18と筒部16とを有する取付部14を成形する。また、かかる取付部14に対して、挿通孔形成凸部74に対応した形状のボルト挿通孔20を形成する。
かくして、図1乃至図3に示されるように、本体部12と、本体部12の外周部に複数の取付部14が一体的に突設されると共に、本体部12が、非発泡(発泡セル24を全く有しない)のスキン層22と、その内側に位置する発泡層26とにて構成され、また、各取付部14が、非発泡のスキン層22と、その内側に位置する実質的に非発泡(発泡セル24を極僅かに有する)のソリッド層28とにて構成されてなる、目的とするフロアアンダーカバー10を得るのである。
以上の説明から明らかなように、本実施形態手法によれば、射出成形用金型30を含む、単に1種類の射出成形機を用いて、コアバック方式による射出発泡成形を行うだけで、フロアアンダーカバー10を、可及的に短い時間で且つ簡単な作業で一挙に製造することができる。従って、フロアアンダーカバー10の製造効率の向上と製造コストの低減化とが、極めて効果的に実現され得るのである。
また、本実施形態手法では、フロアアンダーカバー10の本体部12の厚さが、非発泡樹脂からなる従来のフロアアンダーカバーの本体部よりも厚肉となるようにコアバック量が調整されている。それ故、最終的に得られるフロアアンダーカバー10の本体部12の曲げ強度の向上が有利に図られ得る。そして、それにより、フロアアンダーカバー10全体の剛性が高められ、以て、操縦安定性と空力性能の向上が効果的に実現され得るのである。
さらに、本実施形態手法にあっては、成形キャビティ78内への溶融樹脂材料84の射出・充填後に、成形キャビティ78内の溶融樹脂材料84に対して保圧を掛ける操作が省略されているものの、かかる溶融樹脂材料84中の発泡剤の発泡によって生ずる発泡圧により、保圧を掛けたときと同様に、ヒケ等の成形不良の発生が効果的に防止される。そして、そのような保圧操作の省略により、例えば、保圧操作が必要とされる、非発泡樹脂からなる従来のフロアアンダーカバーを製造する場合よりも、型締め圧が低減化されて、型締め装置が小型化され得る。その結果、射出成形機の小型化と低コスト化とが有利に実現され得る。しかも、例えば、非発泡樹脂からなる従来のフロアアンダーカバーを製造する際に用いられる射出成形機と同程度の規模の射出成形機を用いれば、より大型のフロアアンダーカバー10の製造が可能となるといった利点も得られる。
また、本実施形態手法では、可動型34に設けられる取付部形成凹部56内に収容されたスライド型66を、コアバック時において、圧縮コイルばね76の付勢力に基づいて、可動型34と相対的にスライド変位させることで、取付部成形キャビティ部分82内での発泡剤の発泡が阻止乃至は抑制されるようになっている。これにより、一連の射出発泡成形操作以外の特別な操作や余分な操作を何等行うことなく、スキン層22の内側が実質的に非発泡のソリッド層28とされた取付部14を、スキン層22の内側が発泡層26とされた本体部12と共に、一挙に形成することができる。
従って、このような本実施形態手法によれば、本体部12よりも強度の高い取付部14を有するフロアアンダーカバー10が、極めて効率的且つ低コストに得られるのである。
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないのであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約をも受けるものではない。
例えば、前記実施形態では、ベース型としての可動型34にスライド型66が設けられていたが、固定型32にてベース型を構成して、この固定型32にスライド型66を相対的にスライド変位可能に設けても良い。この場合には、例えば、コアバックが行われたときに、スライド型66が、可動型34に追従して、固定型32に対して相対的にスライド移動するように構成される。
また、スライド型66をベース型(可動型34又は固定型32)に対して相対的にスライド変位させるための構造として、圧縮コイルばね76に代えて、例えば油圧シリンダや空気圧シリンダ、駆動モータ等の公知の各種のアクチュエータを採用することも可能である。
さらに、前記実施形態では、フロアアンダーカバー10を車体に取り付けるための取付部14が、スキン層22と、その内側に設けられたソリッド層28とにて構成されていたが、本体部12の一部に、かかる取付部14と同様な内部構造を有する部分を形成しても、何等差し支えない。このような本体部12部分は、取付部14と同様にして形成されることとなる。
加えて、本発明は、例示された自動車用フロアアンダーカバーの他、例えば、自動車用或いは自動車以外の車両用のエンジンアンダーカバーやリヤアンダーカバー等、車体の下部を覆って配置される樹脂発泡体からなる車両用アンダーカバーとその製造方法に対しても有利に適用され得ることは、勿論である。
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。