本願発明者は、両手が塞がっていても簡単にドアロックの解除を行うことができる車両用ドアロック開閉システムを検討している中、携帯電話による解錠、無線発信可能な電子キー(リモコン式の電子キー)のさらなる応用展開を考えたものの、そのような方法では限界があることを認識した。すなわち、両手が塞がっている状態においては、ユーザの服のポケットに入った携帯電話(スマートフォン含む)や、電子キー(300)を取り出して、解錠のボタンを押すことが実質的にできない。
また、携帯電話や電子キーのドア解錠のためのキーとして使うと、それを身につけたまま、プールや海に入ることができないという問題がある。なお、防水型の携帯電話や電子キーを使用すればよいという提案に対しては、そのようなものは、防水構造にする分、コストが高くなってしまうという問題がある。
さらには、携帯電話や電子キーの場合、内部に電池が入っているので、そのような電池切れが生じると、ドア解錠が行うことができないという問題がある。メカニカルキー付き電子キーの場合には、電池切れの場合、当該メカニカルキーを使用すればよいが、携帯電話や、メカニカルキーなしの電子キーでドア解錠しようとしても、電池切れであればドア解錠を行うことができなくなるので大きな問題となる。
本願発明者は、電池が不要という点で、非接触式ICカード(例えば、Felica(登録商標)などのICカード)を利用することを考えた。しかしながら、設計段階の乗用車においては、非接触式ICカードのための読み取りリーダを搭載した車両を作ることができるが、完成した乗用車(中古車、新車)には、そのようなICカード用読み取りリーダを埋め込むことができない。また、乗用車のドアは鉄板で作られているので、ICカード用読み取りリーダの配置は、その鉄板の影響を考慮しながら搭載する必要もある。
そのような状況の中、本願発明者は、乗用車のドアの外面側にフィルムアンテナ(シート状のアンテナ)を貼り付ける構成を思いついた。具体的には、フィルムアンテナの裏面に磁気反射シートを配置した構成で、非接触式ICカードを近接させると、非接触式ICカードとフィルムアンテナとの間で信号が伝達して動作することを確認し、本発明を想到するに至った。また、磁気反射シートの厚さを変化させることで、非接触式ICカードとフィルムアンテナとの間の近接距離(感度距離)を調節できることも見いだした。
なお、フロントガラスの内面またはリアガラスの内面にフィルムアンテナを貼り付け、非接触式ICカードとの通信を行う手法も検討したが、その場合、非接触式ICカードを手に取って、ガラス(フロントガラス、または、リアガラス)にかざす必要があるため、両手が塞がっている場合にドアロックの解除を行うことはできない。さらに、フロントガラスには、ドライバの視界確保の法令上の制約があるため、フィルムアンテナを簡単に貼り付けることができないという別の問題もある。
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態を説明する。以下の図面においては、説明の簡潔化のために、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は、必ずしも実際の寸法関係を正確に反映していない場合がある。さらに、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事項は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書及び図面によって開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。加えて、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
図1(a)は、本発明の実施形態に係る車両用ドアロック開閉システム100が搭載された車両50の構成を模式的に示している。また、図1(b)は、図1(a)に示した車両50のドア60に車両用ドアロック開閉システム100が搭載された構造を示している。
図1(a)に示した車両50は、四輪乗用車であり、図示した例では、運転席61Aのドア60と、助手席のドア(不図示)、後部座席61Bのドアを備えた自動車である。なお、本実施形態の車両50は、4ドアの車両に限らず、2ドアでもよいし、あるいは、4ドア以上の車両であってもよい。本実施形態のドア60には、ドアハンドル62が設けられており、そして、ドアハンドル62の上方にはドアガラス64が配置され、ドアハンドル62の前方側にはドアミラー69が設置されている。
本実施形態の車両50では、運転席61Aのドア60に、車両用ドアロック開閉システム100がセットされている。本実施形態の車両用ドアロック開閉システム100は、ドア60(61A)のドアロックを開閉するシステムであり、シートアンテナ10と、シートアンテナ10から延びた配線30と、シートアンテナ10に近接させ非接触式ICカード110とから構成されている。シートアンテナ10は、シート状の(薄型の)アンテナ部材であり、ドア60の表面(外側面)に配置した時に比較的違和感のない板状部材である。シートアンテナ10の厚さは、例えば、10mm以下(好ましくは、6mmまたはそれ以下、場合によっては3mmまたはそれ以下)であるが、その厚さに限定されるものではない。
また、ドア60には、ドアハンドル62が取り付けられており、ドアハンドル62の一部またはその周辺にキーシリンダ63が設けられている。ドアロックがされている場合には、ドアハンドル62のレバーを引いてもドア60(61A)は開かない。一方、ドアロックが解除されている場合(アンロック状態の場合)、ドアハンドル62のレバーを引くと、ドア60(61A)は開く。ドアロック状態は、キーシリンダ63にメカニカルキーを差し込んで回すことで、アンロック状態に変えることができる。そして、本実施形態の構成では、非接触式ICカード110をシートアンテナ10に近接させることで、ドアロック状態をアンロック状態にすることができる。加えて、本実施形態の構成では、非接触式ICカード110をシートアンテナ10に近接させることで、アンロック状態をドアロック状態にすることができる。
図2は、本実施形態のシートアンテナ10の構成を模式的に示している。本実施形態のシートアンテナ10は、可撓性を有するシート状のアンテナ(フィルムアンテナ)であり、車両50のドア60の外面側(外表面)60aに貼り付けられている。そして、フィルムアンテナ(シートアンテナ)10は、非接触式ICカード110に対応するリーダー(読み取り用アンテナ)である。
本実施形態のフィルムアンテナ10は、コイル(アンテナコイル)12を保護フィルム(例えば、樹脂フィルム)11で覆うようにした構成となっている。コイル12は、複数の環状の配線またはらせん状の配線から構成されている。本実施形態のコイル12の材質は、銅であるが、銅以外の金属(アルミニウム、金、銀など)でもよいし、導電性ポリマーなどの導電性材料であってもよい。本実施形態のコイル12の厚さは、例えば、0.1mm〜0.5mm程度であるが、この厚さに限定されるものではない。
本実施形態の保護フィルム(保護層またはカバー層)11は、絶縁性材料からなり、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)などの樹脂フィルム材料から構成されている。保護フィルム11は、PETに限らず、ポリカーボネート、ポリビニルブチラールなどを使用してもよいし、有機材料のものに限らず、無機材料のものまたは複合材料のものを使用してもよい。車両(自動車)50に雨がかかることや洗車することを考慮して、保護フィルム11は、耐水性/耐候性の特性を有することが好ましい。保護フィルム11の厚さは、例えば、0.5mm〜1.0mm程度であるが、この厚さに限定されるものではない。コイル12をユーザ(特にドライバ)に見せたい場合には、フィルムの材料として透明または半透明なものを使用する。コイル12をユーザ(特にドライバ)に見せなくてもよい場合には、透明な材料に限らず、不透明な材料を使用することができる。
また、本実施形態のフィルムアンテナ10のコイル12は、配線30に接続されている。図示した配線30は、フレキシブル配線であり、その配線30は、ドア60の外側60aから内側にわたるように延びている。本実施形態のフレキシブル配線30は、可撓性があり比較的大きく変形可能なフレキシブル基板から構成されている。フレキシブル配線30の厚さは、例えば0.1mm〜0.5mm程度であり、本実施形態のフレキシブル配線30は、フィルム状の絶縁体(ベースフィルム)の上に接着層を形成し、その上に導体箔(例えば、銅箔)を形成し、それを覆うようにフィルムをラミネートした構造を有している。
本実施形態のフレキシブル配線30は、ドア60の内側に配置されたドアロックコントロールユニット(図4中の「40」)に電気的に接続されている。なお、ドアロックコントロールユニットは、ドアロックの開閉を制御する制御装置であり、例えば半導体集積回路(IC)素子を含む電子回路から構成されている。フレキシブル配線30は、直接、ドアロックコントロールユニットに接続してもよいし、あるいは、フレキシブル配線30に信号配線を接続し、その信号配線を介してドアロックコントロールユニットに電気的に接続してもよい。
本実施形態のフィルムアンテナ10は、図2および図3に示すように、磁気反射シート20の上に配置されている。磁気反射シート20が、フィルムアンテナ10と金属製のドア60の表面60aとの間に存在することにより、金属製のドア60がフィルムアンテナ10に近接していても、フィルムアンテナ10の応答領域が、フィルムアンテナ10の上方領域に拡げることができる。
本実施形態の磁気反射シート20は、フェライトシートからなる。磁気反射シート20を構成するフェライトシートは、磁性材料であるフェライトを含むシート状の部材であり、電磁波の金属による磁界の損失を少なくする機能を有する。さらに説明すると、非接触式ICカード110とフィルムアンテナ10とはアンテナコイル間の磁界結合を利用して通信することができるが(電磁誘導)、通信の際にフィルムアンテナ10の周囲に金属があると、磁界の影響で金属に渦電流が流れることで反磁界が発生し、それが通信用の磁界を弱めてしまうおそれがある。透磁率の高い磁性材料からなる磁気反射シート(フェライトシート)を設けることによって、電磁波の金属による磁界の損失を少なくすることができ、確実な通信を保証することができる。本実施形態の磁気反射シート20は、例えば、フェライトおよび樹脂材料から構成されており、あるいは、柔軟性を有する焼結体フェライトシートから構成されている。なお、焼結体フェライトシートは、焼結体フェライトを樹脂フィルムでラミネートした構造を有している。
本実施形態の構成では、磁気反射シート20の厚さTは、例えば、0.1mmから0.5mmである。磁気反射シート20の厚さTが厚いほど、非接触式ICカード110がフィルムアンテナ10に対して反応する領域を広くすることができる。例えば、磁気反射シート20の厚さTが0.1mmから0.5mmの場合(典型的には、0.15mm、または、0.20mmの場合)、フィルムアンテナ10の上面を基準にして約2cmの高さのところまで、非接触式ICカード110が反応するようにすることができる。一方、磁気反射シート20の厚さTが0.05mmの場合、電磁波の金属による磁界の損失を少なくするという磁気反射シート20の機能を十分に発揮することができずに、非接触式ICカード110がフィルムアンテナ10に反応しない事例が生じることが観察された。
なお、磁気反射シート20の厚さTは、使用条件にあわせて具体的に設定すればよく、0.1mm以下でも0.5mm以上のものでも適宜選択して構わないが、非接触式ICカード110がフィルムアンテナ10に対して反応しなくならないようにするとともに、非接触式ICカード110がフィルムアンテナ10に対して反応する領域をあまりにも広くすることで誤作動が生じないようにすることが好ましい。非接触式ICカード110がフィルムアンテナ10に対して反応する領域は、典型的には、フィルムアンテナ10の上面を基準にして約1cmから約10cmの高さの範囲内にすることができる。
磁気反射シート20は、接着剤(または、粘着剤)によって、ドア60の外表面60aに固定(例えば、接着)することができる。具体的には、磁気反射シート20の裏面に、両面テープを貼り付けることによって、磁気反射シート20をドア60の外表面60aに固定することができる。なお、磁気反射シート20の表面に接着性を付与して、その上に離型シートを貼り付けて、その離型シートをはがすと、磁気反射シート20の接着を実行できるような構造にしてもよい。
図3に示した構成においては、前記磁気反射シート20の裏面には、マグネットシート25を接合している。そして、そのマグネットシート25を介して、磁気反射シート20をドア60に貼り付けている。図示した構成では、マグネットシート25によって磁気反射シート20をドア60に固定しているので、フィルムアンテナ10を含む積層体(10、20、25)の取り付け、取り外しが容易であるとともに、フレキシブル配線30の長さの制約を許容しながら、ドア60の外表面60aの任意の位置にフィルムアンテナ10を移動(磁石の吸着力を利用した取り付け・取り外し)させることができる利点がある。
本実施形態のマグネットシート25は、樹脂(または、ゴム材料)に磁石粉体を混練させたシート部材であり、柔軟性に優れており、またカット加工も容易である。本実施形態の構成では、磁気反射シート20の裏面に両面テープを付け、その両面テープの粘着力(または接着力)でマグネットシート25に固定している。マグネットシート25の厚さは、例えば、0.5mm〜1.0mm程度である。なお、マグネットシート25を磁気反射シート20の裏面に貼り付けることによって、非接触式ICカード110がフィルムアンテナ10に対して反応する領域が変化する場合があるので、マグネットシート25を設ける場合には、それを考慮して磁気反射シート20の厚さTや材質(特性)を選択することが好ましい。マグネットシート25を貼り付けた磁気反射シート20の場合、磁気反射シート20の厚さが0.1mm以下のものであっても、非接触式ICカード110がフィルムアンテナ10に反応する例が観察される。
なお、シートアンテナ10を含む積層構造は、図3に示したものに限られず、各層(11、12、20、25)の上または間に所望の層(例えば、絶縁層など)を配置することも可能である。例えば、保護フィルム(保護層)11の上に、さらに新たな層(広告用のシール、防水層、着色層、光反射層)など設けることができる。あるいは、各層の間に所望の粘着層/接着層を設けることができる。
本実施形態の非接触式ICカード110は、例えば、フェリカ(Felica:登録商標)などの規格のICカードである。非接触式ICカード110は、樹脂製のカード本体部111と、カード本体部111に配置されたICチップ112とから構成されている。ICチップ112は、カード本体部111の一部に搭載可能な小型の半導体素子である。ICチップ112には、車両用ドアロック開閉システム100を動作させるための車体情報、個人情報などの特定情報が入ったカード情報が格納(記憶)されている。
また、本実施形態の非接触式ICカード110は、運転免許証、パスポートなどのカードが非接触式ICカードである場合には、そのような個人情報を公的に特定できるものを適用することも可能である。例えば、本実施形態の構成において、運転免許証からなる非接触式ICカード110の場合、運転免許証のない無免許ドライバの車両内進入を防止することができ、または、車両(自動車50)のオーナーとは異なるドライバの車両内進入を防止することができる。加えて、非接触式ICカード110は、ETC(電子料金収受システム)の機能を兼ねるようにしても構わない。
また、カード本体部111の内部には、ICチップ112に接続された内部アンテナ(不図示)が形成されている。本実施形態の構成の場合、シートアンテナ10と非接触式ICカード110とは、13.56MHz帯の電波で共振するように構成されているが、他の周波数を用いて動作するように構成しても構わない。なお、本実施形態の車両用ドアロック開閉システム100では、主として、フェリカ(登録商標)の規格で動作するシステムを構築したが、それ以外の規格のものを採用しても構わないし、独自の仕様のものを搭載することも可能である。ただし、汎用性およびシステムコスト、カード製造コストなどを考慮すると、普及している規格のものを採用することが好ましい。また、日本においてはフェリカなどの日本で普及している仕様の規格を採用し、他の国(例えば、中国)においては、その国で普及している非接触式ICカードの規格を採用して、車両用ドアロック開閉システム100を構築することが望ましい。
また、非接触式ICカード110に限らず、カード形式以外の非接触式IC媒体(110)を利用することも可能である。例えば、そのような非接触式IC媒体110は、コイン型、時計型、指輪型、腕輪など種々の形状を採用することができるが、ポケット、財布などに収納できるような形状・大きさのものか、ユーザが身につけることができるものが好ましい。また、非接触式ICカード110と同様に、製造コストが低いもの、普及している規格のもの、電池を含まないものであることが好ましい。
図1に示した間隔G、すなわち、シートアンテナ10と非接触式ICカード110とが信号をやり取りする間隔Gは、例えば1cm〜20cmであるが、この間隔Gは、要求される仕様に合わせて適宜好適なものになるように、シートアンテナ10を含む積層体の構成を決定することができる。非接触式ICカード110は、本実施形態の車両用ドアロック開閉システム100のフィルムアンテナ10から非接触電力伝送を受けることができる。したがって、非接触式ICカード110は電池を持つ必要がなく、本実施形態の非接触式ICカード110は、電池のない非接触式ICチップ内蔵媒体である。したがって、非接触式ICカード110をいくら使用しても、電池切れが生じることはない。加えて、非接触式ICカード110に電池がないことから、水に濡れても、プールなどに入っても問題も生じない利点がある。
次に、図4なども参照しながら、本実施形態の車両用ドアロック開閉システム100を詳述する。図4は、本実施形態の車両用ドアロック開閉システム100の構成を説明するための構成図である。
図4に示した車両用ドアロック開閉システム100は、シートアンテナ10と、シートアンテナ10から延びたフレキシブル配線30と、フレキシブル配線30に電気的に接続されたドアロックコントロールユニット40とを備えている。
シートアンテナ10は、非接触式ICカード110が近接すると、非接触式ICカード110と共振して信号および電力をやり取りする。図示したシートアンテナ10の形状は、矩形形状であり、シートアンテナ10の幅Wは例えば10mm〜50mmであり、長手方向長さLは例えば10mm〜70mmである。なお、シートアンテナ10の寸法および形状は、特に限定されるものではなく、例えば、矩形以外の形状のものを採用することができるし、シートアンテナ10の寸法も適宜好適なものを採用することができる。
また、シートアンテナ10のコイル(アンテナコイル)12に電気的に接続されるフレキシブル配線30は、車両50のドア60の外側と内側をわたって延びる長さを有している。フレキシブル配線30の長さは、例えば50mm以上である。また、フレキシブル配線30は、ドア60を閉めた時に、ドア60と車両50の本体との間の隙間に収まるように配置されている。すなわち、ドア60を閉めた場合でも、本実施形態のフレキシブル配線30は、ドア60と車両本体との挟まりによる断線が生じないような位置に配置されており、かつ、断線が生じないような厚さ(例えば1.0mm以下)になるように構成されている。
図4に示した構成では、シートアンテナ10の連結部(コネクタ)31aに、フレキシブル配線30が接続されている。そして、フレキシブル配線30の連結部(コネクタ)31bには、信号配線(または、アンテナ配線)35が連結されている。信号配線35は、ケーブル状の配線でもよいし、フレキシブル配線であってもよい。さらに、信号配線35は、ドアロックの開閉を制御するドアロックコントロールユニット40に接続されている。図示した例では、ドアロックコントロールユニット40の入力端子31cに接続されている。
ドアロックコントロールユニット40には、非接触式ICカード110を所定間隔(G)でシートアンテナ10に近接させた時にドアロック用信号が入力する。そのドアロック用信号によって、ドアロックコントロールユニット40は、ドアロックの解錠/施錠を制御する。本実施形態のドアロックコントロールユニット40は、例えば半導体チップ及び受動素子(コンデンサなど)、リレー部品がプリント基板に実装された構造を有しており、それらの素子によって制御回路が形成された制御装置である。
本実施形態のドアロックコントロールユニット40は、最初にドアロックが施錠されている状態において、非接触式ICカード110をシートアンテナ10にかざすと、ドアロックの解錠を指示する信号を発する。そして再び、非接触式ICカード110をシートアンテナ10にかざすと、ドアロックの解錠を指示する信号を発する。すなわち、本実施形態のドアロックコントロールユニット40は、非接触式ICカード110が近接するごとに、ドアロックの解錠/施錠の指令信号を交互に出力する。
図4に示したドアロックコントロールユニット40には、複数の端子(42a〜42c)が設けられている。例えば、ロック信号用端子42a、アンロック信号用端子42b、ステータス線用端子42cが設けられている。また、ドアロックコントロールユニット40には、電源用端子(例えば12V)42d、グランド用端子(GND)42eも設けられている。
本実施形態の構成では、ドアロックコントロールユニット40は、運転席のドア内側に配置されているパワーウインドウユニットに電気的に接続されている。パワーウインドウユニットは、ドアロック/アンロックの指令を発する回路が搭載されているので、ドアロックコントロールユニット40からのドアロック/アンロックの指令をパワーウインドウユニットに送ることで、パワーウインドウユニットを介してドアロック/アンロックの動作を実行させることができる。なお、ドアロックコントロールユニット40からの直接の指令で、ドアロック/アンロックを実行するように配線しても構わない。
なお、本実施形態の車両用ドアロック開閉システム100は、図4に示したものに限定されず、種々の形状または構造に改変することができる。例えば、図5に示すように、シートアンテナ10の形状は、矩形に限らず、任意の形状にすることができる。例えば、シートアンテナ10の形状は、星形、菱形、円形、楕円形、長円形、多面形(六角形、五角形、八角形など)、人の形、顔の形、動物の形、車の形、会社のロゴマークの形などにすることが可能である。また、アニメのキャラクタの形状にすることもできるし、ユーザー指定のオリジナルな形状(幾何学形状、似顔絵形状)にすることもできる。
また、図5に示した構成では、シートアンテナ10の接続部31aにフレキシブル配線30を接続し、そのフレキシブル配線30をドアロックコントロールユニット40の接続部31cに接続させている。なお、図5に示したフレキシブル配線30を、図4に示した信号配線35に連結するような構成にしてもよい。ここで、シートアンテナ10に接続するフレキシブル配線30をケーブル状の配線に変えても動作させることができる。ただし、ドア60の外表面60aの見栄え(外観の美観)を踏まえると、フレキシブル配線30を使用することが好ましい。逆に、外観の問題をクリアーできる場合、あるいは、外観の問題を無視できる場合には、ケーブル状の配線30を用いて構わない。
また、本実施形態の構成では、シートアンテナ10を含む積層体を、接着剤またはマグネットシート25によってドア60の外表面60aに固定したが、それ以外の固定方法を採用しても構わない。例えば、ドア60の外表面60aにシートアンテナ10が収納できる凹部を形成しておき、その凹部にシートアンテナ10を収納して固定するようにしても構わない。その場合、シートアンテナ10の表面をドア60の外表面60aと同じ塗装状態にすると、ドア60の外表面60aの外観の美観を優れたものにできる。
さらに、本実施形態の車両用ドアロック開閉システム100では、図6に示すように、シートアンテナ10とドアロックコントロールユニット40とのアンテナユニット44を配置することができる。アンテナユニット44は、アンテナ用の電源45aおよびグランド45bの端子を備えた基板ユニットである。
図7は、本実施形態の車両用ドアロック開閉システム100の一例を斜視図で模式的に示している。図7に示した構成例では、ドアロックコントロールユニット40は、アンテナユニット44の回路基板と、ドアロックコントロールユニット40の回路基板40Aとが積層した形で組み立てられている。それらの回路基板には、半導体チップ48、リレー部材47C、受動素子(コンデンサなど)49などが実装されている。また、ドアロックコントロールユニット40(40A)には、ドアロック/アンロックを実行するリレー部材47(47A、47B)が接続されている。なお、図示した例では、シートアンテナ10に非接触式ICカード110が近接して反応すると、LEDランプ43が点灯する構成にしている。また、ドアロック/アンロックを実行するリレー部材47(47A、47B)は、ドアロックコントロールユニット40に直接接続した形でなく、車両50に搭載されている既存のものを使用することができる。
図8は、ドアロックコントロールユニット40と他のユニットとの配線関係を示す構成図である。図8に示した構成例では、車両50のECU(エンジンコントロールユニット)70と、運転席のパワーウインドスイッチユニット72が示されている。ECU70と、パワーウインドスイッチユニット72とは互いに電気的に接続されている。
また、キーシリンダ63は、パワーウインドスイッチユニット72に電気的に接続されており、キーシリンダ63の施錠/解錠の信号がパワーウインドスイッチユニット72に出力される。また、パワーウインドスイッチユニット72は、ドアロックモータ74に電気的に接続されている。パワーウインドスイッチユニット72からの施錠/解錠の信号が出力されることで、ドアロックモータ74が動作して、ドア60をドアロック状態またはアンロック状態にすることができる。
図示した例では、パワーウインドスイッチユニット72は、複数のボタン71が配置されており、この例では、パワーウインドボタン71cが設けられているとともに、ドアロックボタン71a、アンロックボタン72bが設けられている。ドアロックボタン71aを押すと、パワーウインドスイッチユニット72は、ドアロックモータ74にドアロック信号を出力して、ドアロック状態にする。一方、アンロックボタン71bを押すと、パワーウインドスイッチユニット72は、ドアロックモータ74にアンロック信号を出力して、アンロック状態にする。
また、本実施形態のECU70は、所定条件を満たすと、パワーウインドスイッチユニット72を介して、施錠および解錠の少なくとも一方の信号をドアロックモータ74に出力するように構成されている。例えば車両50の速度が一定以上(例えば15km/h以上)になると、ドアロックの信号を発するように構成されている。また、所定の条件を満たすと(例えば車体に激しいゆれを感じた時)、アンロックの信号を発するように構成することもできる。
図8に示した構成例において、本実施形態のドアロックコントロールユニット40は、パワーウインドスイッチユニット72の周囲の配線に接続することができる。そして、その接続を介して、ドアロックコントロールユニット40は、パワーウインドスイッチユニット72に施錠/解錠の信号を出力し、それによって、ドアロック状態またはアンロック状態にすることができる。例えば、ドアロックコントロールユニット40は、ECU70とパワーウインドスイッチユニット72との間の配線に接続したり、あるいは、キーシリンダ63とパワーウインドスイッチユニット72との間の配線に接続したりすることができる。
図示した構成において、ドアロックコントロールユニット40から延びた配線を、パワーウインドスイッチユニット72の内部の基板に直接接続させることも可能である。また、ドアロックコントロールユニット40を介さずに、ドアロックコントロールユニット40をドアロックモータ74に接続するように構成することも可能である。ただし、本実施形態の車両用ドアロック開閉システム100は、基本的に、後付けで取り付けることを想定しているので、できるだけ配線の接続は、既存システムに大幅な変更なしに簡便にできることが好ましい。したがって、図8に示した構成では、パワーウインドスイッチユニット72へ施錠/解錠の信号が入力される経路を利用して、ドアロックコントロールユニット40の接続を実行している。
図9は、ドアロックコントロールユニット40とパワーウインドスイッチユニット72とが電気的に接続している構成図を示している。図9に示した構造では、ドアロックコントロールユニット40の指令に基づいて、パワーウインドスイッチユニット72を介して、ドアロックモータ74が正転または逆転することで、ドアロックノブ75が移動して、ドアロックまたはアンロックの制御が行われる。ドアロックノブ75は、図9に示したようなピン型の場合もあれば、フック型の場合もある。なお、ドアロックノブ75を機械的に(典型的には手動で)スイッチさせることにより、ドアロックまたはアンロックを行うことができる。
ドアロックまたはアンロックを実行する場合、図9に示したドアロックモータ74を正回転に動作させるか、逆回転に動作させることで行う。そのような動作は、例えば図10に示すようなリレー回路(車載用リレー)を用いて実行することができ、すなわち、モータ74の回転の方向を制御することで、ドアロックアクチュエータ74aの移動方向を動作させることができる。図10に示した例の回路では、コイルを備えた2つのリレー素子47A、47Bを用いて、車体電源(直流+12V)および車体グランド(GND)を利用してモータ74の正・逆の動作をスイッチングすることができる。なお、「C/M」は、コミュニケーションモジュールの略であり、また、車電源は+12Vに限らず、車体50に採用されているものを使用すればよい。
また、ドアロック/アンロックの機構は、車両50によって異なる場合があるので、図10に示した回路はあくまで例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。また、本実施形態の車両用ドアロック開閉システム100は、各種の車両50の方式にあわせて配線するようにされるものであり、上述の図示した例に限定されるものではない。
ドアロックモータ74によって移動するドアロックアクチュエータ74aは、図11に示すように、ドア60に配置されたキャッチロック部材47を動作させるように接続されている。キャッチロック部材47は、図12に示すような、車体フレーム80の一部(ドア60のエッジに対応する部分)に配置されたU字部材(ストライカー)82を収納し、固定することができる。すなわち、ドア60を閉めると、その状態においてU字部材(ストライカー)82はドア60のキャッチロック部材67に収まり、ドアロックアクチュエータ74aの動作によってキャッチロック部材67は、ロック状態またはアンロック状態で係合される。
キャッチロック部材67がロック状態でU字部材(ストライカー)82を固定すれば、ドアハンドル62を動かしても、ドア60は開かない。一方、アンロック状態でキャッチロック部材67がU字部材(ストライカー)82を固定している場合、ドアハンドル62を動かすとドア60は開く。そして、本実施形態の車両用ドアロック開閉システム100が搭載された車両50の場合、非接触式ICカード110をシートアンテナ10にかざすだけで、ロック状態/アンロック状態を交互に変えることができる。
上述したように、本実施形態の車両用ドアロック開閉システム100によれば、車両50のドア60の外面側60aに配置されるシートアンテナ(フィルムアンテナ)10に、非接触式ICカード(非接触式ICチップ内蔵媒体)110を近接させることで、ドアロックの開閉(キャッチロック部材67の動作制御)を行うことができる。本実施形態の具体例の一つでは、非接触式ICカード110は、フィルムアンテナ10に10cm以内に近づけると(距離Gが10cm以下、典型的には5cm以下)、ドアロックの開閉を実行することができる。
したがって、本実施形態の車両用ドアロック開閉システム100が搭載された車両50の場合、車両のユーザ(例えば、運転手)の両手が塞がっており、電子キーを取り出してその電子キーのボタンを押すことができない場合であっても、非接触式ICカード110をユーザのポケットに入れたまま、車両50のドア60に貼り付けられたフィルムアンテナ10に近づけるだけで、ドアロックの開閉を実行できる。
つまりは、図19に示したような電子キー300の場合は、ボタン(320、330)を指で押さないと、ロック状態/アンロック状態を変更することはできないが、本実施形態の構成の場合、ボタンなど押さずに、非接触式ICカード110をフィルムアンテナ10に近接させるだけで、ロック状態/アンロック状態を変更することができる。したがって、非接触式ICカード110をユーザのポケットに入れたまま、非接触式ICカード110をフィルムアンテナ10に近づけるだけで、ドアロックを解除できる。したがって、非接触式ICカード110(または、メカニカルキー、あるいは、電子キー)をポケット(または、バックなど)から取り出すことなく、ドア60を開けることができる。
また、本実施形態の車両用ドアロック開閉システム100では、非接触式ICカード110をかざすことによってドアロックを解錠することができるので両手が塞がっていてもドア60を開けることができるが、それに加えて、ドアロックの施錠もできる方が好ましい。非接触式ICカード110をかざすことでドアロックの施錠もできる場合には、次のようなことができる。通常は、ドア60を閉めた後にメカニカルキーをキーシリンダ63に差し込んで施錠したり、あるいは、ドア60をあけた状態で、ドアロックノブ75を押してロック状態にセットし、そして、ドアハンドル62を引いた状態でドア60を閉めることで、ドア60のロックを行うことができる。一方、本実施形態の構成の場合には、そのようなことをしなくても、非接触式ICカード110をフィルムアンテナ10にかざすだけでドアロックをセット(施錠)することができる。
加えて、非接触式ICカード110でドアロックを施錠できる場合は、ユーザが持っているメカニカルキー(または、電子キー)を車内においた状態で(インキー)、ユーザは、非接触式ICカード110でドアロックすることができる。通常は、キーを車内にロックして閉じ込めてしまうインキーは大問題となるが、本実施形態の構成では、非接触式ICカード110をユーザが持っているだけで、エンジンのスターターキー(例えば、メカニカルキー)を車内にロック状態で置いておくことができる。このことは、非接触式ICカード110は薄くて財布などに入れることができて、すなわち嵩張らないので、メカニカルキー(または電子キー)を車外に持ち歩くことを考えると、ユーザのメリットが大きい。さらには、エンジンのスターターキー(例えば、メカニカルキー)を持ち出さないので、そのスターターキーを落としたり盗まれたりした場合に車両50が盗まれてしまうということを防止することができる。
さらに、非接触式ICカード110は、電池を有していないので、電池切れがないという利点がある。電子キーの場合、ボタンを押して遠隔からドアロック/アンロックを実行することができるが、電池切れが起こると、無線信号を飛ばすことができず、ドアロック/アンロックの動作を行うことができなくなるという欠点がある。本実施形態の構成では、そのような欠点を回避することができる。また、海やプールなどに行く場合に、電子キーは電池を有しているので、メカニカルキーと異なり、そのまま水に入れることはできない。一方、本実施形態の場合は、非接触式ICカード110を水に入れても問題ない。特に、スターターキー(メカニカルキー、電子キー)を車内にロック状態で入れておき(インキー状態)、ICカード110でロックしておけば、ユーザはICカード110を身につけたまま水に入ることができ、したがって、防犯上のメリットが大きい。
なお、携帯電話(スマートフォンを含む)を利用して、ドアロック/アンロックをするようなアイデアも提案されているが、この場合も、電池切れの問題、水の問題は解消されず、それゆえに、本実施形態の車両用ドアロック開閉システム100のようなメリットを得ることができない。また、携帯電話を用いてドアロックを解除するシステムの場合、第三者にパスワードが盗聴される危険性があるが、本実施形態の車両用ドアロック開閉システム100の場合は、携帯電話と異なり、そのような問題は発生しない。
また、ユーザ(ドライバー)が車両ドアに近づいただけで(例えば、数メートルから10メートル程度)、ドアロックを自動的に解錠できるような常時発信型の電子キーも提案されているが、この場合は、電子キーの電池の減りが早いという顕著な欠点がある。さらには、自宅の駐車場と自宅の玄関が近い場合、当該電子キーを玄関に置いておくと、その電子キーが、駐車場にある車両との間で通信を行い続け、車両のバッテリーをあげてしまう問題点もある。一方、本実施形態の車両用ドアロック開閉システム100の場合、非接触式ICカード110は電池を有していないので、電池切れの問題は生じないとともに、非接触式ICカード110は、フィルムアンテナ10に近接(数センチメートル)しないと動作しないので、車両のバッテリーがあがってしまう問題も発生しない。
さらに、本実施形態の車両用ドアロック開閉システム100では、シートアンテナ(フィルムアンテナ)10とドア60の外表面60aとの間には、磁気反射シート(磁性シート、または、磁気遮蔽シート)20が配置されている。したがって、ドア60を構成する金属板による影響を磁気反射シート(磁性シート)で遮断して、非接触式ICカード110とフィルムアンテナ10との間の信号の通信を確実に行うことができる。
また、フィルムアンテナ10には、車両50のドア60の外側と内側をわたるように延びたフレキシブル配線30が接続されている。フレキシブル配線30の厚さは薄いので、ドア60を閉めた時に、当該ドア60によってフレキシブル配線30が断線することがない。加えて、フレキシブル配線30は、円柱状のコード配線と比べて薄くて目立たないので、フィルムアンテナ10から延びる配線(フレキシブル配線)30は、ドア外観を損ねないという利点がある。
加えて、本実施形態の構成の場合は、後付けで、車両用ドアロック開閉システム100を搭載することができる。したがって、電子キーシステムが搭載されていない中古車および新車であっても、カーショップ、自動車整備工場、カーディーラー、中古車センターなどに車を持ち込むことによって(あるいは、オーナーの手作業によって)、車両用ドアロック開閉システム100を取り付けることができる。言い換えると、車両の製造時に当該車両用ドアロック開閉システムを搭載していなくても、後から、車両用ドアロック開閉システム100を搭載することができるので、上述したような効果を、ほとんどの車両に応用・適用することができるという利点がある。特に、先進国だけでなく、発展途上国・新興国の車両(例えば、電子キーシステムでない車両)に適用できる利点が大きい。加えて、電子キーが搭載されている車両に対しても、本実施形態の車両用ドアロック開閉システム100を取り付ける技術的利点(例えば、電池切れ防止、インキー可能、水濡れ不問)が大きい。それゆえに、電子キー搭載車両にも、本実施形態の車両用ドアロック開閉システム100を取り付けることができる。
本実施形態の車両用ドアロック開閉システム100を取り付けるには、図13および図14に示すように行うことができる。図13は、ドア60の内側60bを示した図である。そして、図14は、図13に示した状態から内張り65を取り除いた図である。なお、ドア60の内側60bには、ドア60を開けるためのドアフック66が設けられており、ドアロック状態においてはドアフック66を引っ張ってもドア60は開かない構成になっている。
図13は、すでに、車両用ドアロック開閉システム100が取り付けられた状態を示しており、フィルムアンテナ10から延びたフレキシブル配線30がドア内張り65の中に収納されている。車両用ドアロック開閉システム100が取り付けられる前においては、図13に示した構成において、フレキシブル配線30は存在していない。
まず、車両用ドアロック開閉システム100を取り付ける前の状態から、ドア内張り65を外し、ドア60の内側60bを露出させる。次に、ドア60の外表面60aに、シートアンテナ10を貼り付ける。シートアンテナ10にマグネットシート25が設けられている場合には、マグネットシート25の磁力を使ってドア60の外表面60aに貼り付ける。あるいは、シートアンテナ10は、両面テープまたは接着剤で固定することもできる。
次いで、図14に示すように、シートアンテナ10から延びたフレキシブル配線30を、ドア60の外側60aから内側60bにまわして延ばす。それとともに、ドアロックコントロールユニット40を、ドア60の内側60bのうちの開いているスペースに配置する。なお、ドアロックコントロールユニット40は、同じく、ドア60の内側60bに配置されているパワーウインドスイッチユニット(不図示)に近い位置に配置すると、その後の配線の接続処理が便利となる。
図14に示した構成において、ドアロックコントロールユニット40と、フレキシブル配線30とを信号配線35で接続すると、シートアンテナ10とドアロックコントロールユニット40とが電気的に接続される。また、ドアロックコントロールユニット40の所定の端子42(42a〜42e)を対応する車両50の配線・端子に接続すると、本実施形態の車両用ドアロック開閉システム100の取り付けが完了する。その後、外していたドア内張り65を元に戻すと、図13に示す構成になる。
また、本実施形態の車両用ドアロック開閉システム100は、図15に示すように、車体本体部90に配置されたECU70に電気的に接続させることができる。本実施形態の構成では、ドアロックコントロールユニット40は、配線92を介してECU70に電気的に接続する。あるいは、パワーウインドスイッチユニット(不図示)とECU70とを接続している配線92を利用して、その配線92にドアロックコントロールユニット40を電気的に接続する。
本実施形態において、ドアロックコントロールユニット40をECU72に電気的に接続した構成の場合には、非接触式ICカード110およびドアロックコントロールユニット40の設定(及び/又は、ECU72の設定)によって、エンジンスターターの機能を含めることができる。すなわち、非接触式ICカード110にエンジン始動情報を追加しておけば、電子キーシステムと類似の仕組みを利用して、非接触式ICカード110をエンジン始動の条件に含めることができる。例えば、ドアロックコントロールユニット40に電気的に接続された、非接触式ICカードのための読み取りリーダ(フィルムアンテナ10を使用可能)を運転席周りに配置しておき、そのリーダに非接触式ICカード110を接触させないと、エンジン始動ができないような制御を行うことができる。つまり、このような機能を付加すれば、車両盗難防止の機能を強化することができるとともに、運転免許などのID情報をリンクさせると、車両50のオーナー以外はエンジン始動できないような仕様にすることもできる。また、ドア60の外表面に配置したシートアンテナ10に非接触式ICカード110を近接させることにより、エンジンがストップするような設定にすることも可能である。その設定は、ドアロックコントロールユニット40をECU72に電気的に接続した構成の場合には、非接触式ICカード110、および、ドアロックコントロールユニット40の設定(及び/又は、ECU72の設定)によって可能である。
図16は、ドア内張り65を外した状態で、ドア60を開けた構造を示した斜視図である。ドア60の外側端部のほぼ中央部には、キャッチロック部材67が設けられている。なお、キャッチロック部材67は、車体本体部90側の対応する部位に設けられたU字部材(ストライカー)82と嵌合する。また、車両本体部90の前方側には、フロントガラス94、インストルメント・パネル(インパネ)96が配置されている。
本実施形態のドアロックコントロールユニット40の配置位置は、ドア60の前方側、すなわち、車両本体部90のインパネ96の下方領域あたりに近い方が好ましい。これは、車両本体部90のインパネ96の下方領域あたりに車両電源の端子があるために、ドアロックコントロールユニット40の接続作業が容易になるという理由による。
なお、本実施形態においては、運転席61Aのドア60の外表面60aにシートアンテナ10を貼り付けた構成を説明したが、それに限らない。例えば、助手席のドア60の外表面60aにシートアンテナ10を貼り付けることも可能である。その場合、ドアロックコントロールユニット40は、運転席61Aのシートアンテナ10からの配線35の接続だけでなく、他の席のシートアンテナ10からの配線35の接続ができるように、複数(例えば、2つ)のポートを備えていることが好ましい。また、運転席61Aと助手席のドア60の他に、後席ドア60にシートアンテナ10を付けることができるし、最後尾のバックドアのドア60にシートアンテナ10を付けることもできる。サーフィンをする人などはワゴンタイプの車のバックドアにサーフボードを入れるので、バックドアをICカード110で解錠/施錠できることは便利である。
図17および図18は、非接触式ICカード110を用いて、本実施形態の車両用ドアロック開閉システム100が搭載された車両50で、ドアロック解除をする様子を示している。
図17に示したユーザ(ドライバ)200は、傘210を持っているとともに、両手が荷物220a、220bで塞がっている。この状態では、たとえ電子キーを持っていても、電子キーを取り出すことができないので、傘210か、荷物220a、220bを地面に置く必要がある。雨が降っている場合には、そのようなことをすると、ユーザ200か荷物220が濡れてしまうので、望ましくない。本実施形態の場合には、ユーザ200のポケット201に入れている非接触式ICカード110を、シートアンテナ10に近接させるだけでドアロックを解除できる。この後は、ドア60(61A)をあけて、車両50の中(運転席)に入ればよいだけである。
図18に示したユーザ(ドライバ)200は、傘210をさしているとともに、赤ちゃん250を抱いている。この場合、チャイルドシート(不図示)が装着されている後席に赤ちゃん250を先に入れたいので、後席ドア61Bのシートアンテナ10に非接触式ICカード110を近接させて、ドアロックを解除する。この後は、ドア60(61B)を開けて車両50の中に赤ちゃんと荷物220をおいて、次いで、ユーザ(ドライバ)200は、ゆっくりと運転席に入ることができる。
なお、シートアンテナ10は、運転席61A(または後席ドア61B)に限らず、助手席61D、バックドア(またはトランク)61cに付けることも可能である。ユーザ(ドライバ)200が非接触式ICカード110を身につけたまま海で泳いで、非接触式ICカード110でバックドア(またはトランク)61cを開けて、海での使用した荷物を入れることも便利である。
また、上記実施形態では、シートアンテナ10として、可撓性を有するフレキシブルアンテナ(フレキシブル基板に形成されたアンテナ)を主に用いたが、それに限らず、他の構造のシートアンテナを用いることも可能である。
図20は、本実施形態のシートアンテナ10の構成を示す一例である。図20に示した構成では、シートアンテナ10は、運転席61Aのドア60の外表面に配置されており、シートアンテナ10は、樹脂製のカバー部(保護層)17を有しており、そのカバー部17の内部にアンテナ部(アンテナコイル)が位置している。図示したシートアンテナ10のアンテナ部は、基板(特に、リジッド基板)にアンテナが形成された構造を有している。リジッド基板を用いたアンテナ部材は、フレキシブルアンテナ(例えば、フレキシブル基板に形成されたアンテナ)よりも安価であるという利点がある。また、リジッド基板(所謂プリント基板:ガラスエポキシ基板など)は、フレキシブルアンテナの材質と比較して、ドア60の金属材料の影響を抑制できるものがあるので、磁気反射シートを設けなくても、非接触式ICカード(110)の信号を確実に受信することができる。
さらに、本実施形態のシートアンテナ10のカバー部17は、車両のドア60の端(縁部)を保護するドアプロテクタとして機能する。カバー部17の一部は、ドア60の隙間65を覆うように配置されている。その隙間65を覆う部位を含めてカバー部17は、ドア60(61A)が開いた時に、ドアの端(縁部)が他の物(例えば、駐車場での他の車、車庫の柱・壁など)に接触したとしても、当該ドアプロプロテクタ(カバー部)17が、ドア60の端を保護してくれるので、安心である。本実施形態のカバー部17は、樹脂(特に、硬化した樹脂)から構成している。カバー部17は、例えば、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合合成樹脂)、FRP(繊維強化プラスチック)、PP(ポリプロピレン)、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂などなどから構成することができるが、それに限られない。
また、カバー部(保護層)17は、硬化した樹脂以外の材料から構成してもよい。例えば、カバー部17の一部または全部をゴム材料から構成し、ドアプロテクタの機能を向上させてもよい。また、非接触式ICカード(110)と、カバー部17で覆われているアンテナコイル(アンテナ部)との間の信号の通信を確保できるのであれば、カバー部17の一部に金属を用いても構わない。さらには、カバー部17の一部または全部において、
他の材料、例えば、セラミック材料、複合材料などを用いることも可能である。加えて、カバー部17が位置する部位のドア60を凹まして、その凹部にカバー部17を収納すると、カバー部17の表面とドア60の表面とが面一(または実質的に同一面)になるような構成にしてもよい。
本実施形態のカバー部17では、アンテナ部(基板アンテナ)の存在が分かるように、カバー部を構成する部材(樹脂)の一部の色を変化させて、ウインドウ部15a(アンテナ窓部)の領域にしている。カバー部17のその他部分の表面には、ドア60と同じ色の塗装を施している。なお、カバー部17は、ドア60と同じ色の着色にしてもよいし、それ以外の色にして目立つようにしても構わない。ウインドウ部15aにてアンテナの位置がわかるようにしてもよいし、カバー部17全体でアンテナの位置を示すようにしても構わない。
本実施形態のカバー部17は、カバー部17の内に配置されるアンテナ部を雨や風、洗車時の水から保護することができる。図21(a)、(b)及び(c)は、それぞれ、カバー部17の表面、断面、裏面の構造を表している。図21(a)に示すように、カバー部17の表面には穴のようなものはないが、図21(b)及び(c)に示すように、カバー部17の内部には、アンテナ部(例えば、基板アンテナ、または、リジッド基板に形成されたアンテナコイル)を収納する空間(収納部)15が形成されている。さらに、収納部15の一部(ドア60の隙間65に対応する部位)には、配線(30)の取り出し用の開口部15bが形成されている。また、カバー部17は、ドア60の隙間65の領域に延びた延長部16を有している。つまり、シートアンテナ10を構成するカバー部17の一部(延長部16)は、ドア60の隙間65の領域に位置づけられている。
図21に示したカバー部17の寸法を例示的に示すと、次の通りである。ただし、この寸法は例示にすぎず、他の寸法のものを採用しても構わない。図21(a)に示したカバー部17は、略台形の形状を有しており、底辺は114mmで、上辺は60mmである。略台形の高さは55mmで、そのうちの延長部16が占めているのは5mmである。図21(b)に示したカバー部17の厚さ(高さ)は6mmであり、空間(収納部)15の高さは5mm(樹脂部の厚さは1mm)である。図21(c)に示した空間部(収納部)15の長手方向長さは40mmであり、空間部(収納部)15の幅は18mmである。配線取り出し用開口部15bの幅は6mmである。
なお、図示したカバー部17は、略台形形状にしたが、これに限らず他の形状にしても構わない。例えば、正方形、長方形、円形、楕円形、長円形、多角形(例えば、六角形、八角形)、星形、アニメキャラクターの顔・ポーズ、ドライバ(ユーザー)の顔・姿など、どのようなものでもよい。また、カバー部17の空間15に収納するアンテナ部は、リジッド基板に形成されたアンテナ(アンテナコイル)だけでなく、アンテナコイル12を有するフレキシブルアンテナであっても構わない。なお、カバー部17は、ドア60に両面テープで貼り付けて固定することができるが、他の手法で固定しても構わない(接着剤で接着、他の部品を用いて固定)。
図22は、本実施形態のカバー部17をドア60に配置した構成でのドア60の内側60bの様子を示している。また、図23は、カバー部17の収納部(空間)15に配置されたアンテナ部(不図示)から延びた配線30の部分の拡大図である。
図23に示すように、カバー部17には、ドア60の隙間65まで延びた延長部16が存在するので、その延長部16の裏側から配線30をドア内側(60b)に延ばせば、ドア60の外側(60a)からは配線30は見えない。図23に示した例では、配線30をテープ31で固定している。ここでは、ドア60の外側60aから内側60bにわたる配線30が、ドア外側60aから見えないことから、フレキシブル配線ではなく、通常の配線(薄型のフレキシブル配線でなく、断面が略円形の配線)を用いている。それにより、フレキシブル配線を用いた場合よりも、コスト低減を図ることが可能である。
そして、この配線30は、ドア60の内側60bの外縁部に配設されたゴムパッキン68まで延びるようにテープ31で固定されている。図22に示すように、配線30から延びた配線35(円柱状の配線)は、そのゴムパッキン68に沿って(または、ゴムパッキン68で覆われるように)延ばされている。これにより、配線35の配設がすっきりとして、見苦しくない。それとともに、ゴムパッキン68をガイドにして、配線35をセットできるので、配設も比較的容易であるという利点もある。配線35は、ドアロックコントロールユニット(40)に電気的に接続される。なお、図22及び図23に示した例では、配線35は、通常の配線を使用したが、フレキシブル配線を用いることを排除するものではない。また、コストはかかるが、配線35の部分を無線配線にすることも可能である。
次に、本実施形態の車両用ドアロック開閉システム100を用いたドアロック開閉方法は、さらなる応用的な用途に展開することができる。上述した例では、シートアンテナ(信号受信アンテナ)10が配置されたドア60のロックを解錠(または施錠)していたが、シートアンテナ10が配置されたドア60とは異なるドア60を開けるようにすることも可能である。
この応用例では、車両の後部シート側のドアがパワースライドドアである場合に、非接触式ICカード110(非接触式ICチップ内蔵媒体)をシートアンテナ10に近接させることによって、当該後部シート側のパワースライドドアを開けることができる。図24および図25を参照しながら説明していく。パワースライドドアとは、電動により、スライドドアを開くことができる機構のドアである。
まず、図24に示すように、非接触式ICカード110をシートアンテナ10にかざして、非接触式ICカード100とシートアンテナ10との間の通信を非接触で行う。図24に示した例では、使用者230の手で非接触式ICカード110をシートアンテナ10に近接させているが、使用者230にポケットにICカード110を入れて、その状態でシートアンテナ10に近接させてもよい。
その後、図25に示すように、後部シート側のパワースライドドア60(61B)がオープンになり、後部シートの車内に荷物などを入れることができる。この例では、非接触式ICカード100を、運転席ドア60(61A)のシートアンテナ10に近接させると、パワースライドドア61Bのオープンとともに、運転席ドア60のロック解除も同時に実行しているが、設定によっては、パワースライドドア61Bのオープンを実行して、運転席ドア60のロック解除は任意の設定にすることも可能である。加えて、非接触式ICカード110を運転席ドア60(61A)のシートアンテナ10に近接させた時に、助手席サイドの後部パワースライドドアも同時にオープンさせるような設定にすることも可能である。
雨の日で荷物を持っている時に、後部シート側がパワースライドドアである場合に、非接触式ICカード110を近づけるだけで、後部シート(または後部側の領域)99の方に荷物を置くことができるのは非常に便利である。図18に示したように、赤ちゃん250を抱えている時は特段メリットがある。
そのようなパワースライドドア61Bのオープン動作を可能にする回路を図26に示す。図26に示した回路は、上述した動作を実行する一例であり、同種の動作を実行するには、他の回路を構築することも可能であるし、半導体集積回路にて1チップの構成にすることも可能である。加えて、このパワースライドドア61Bのオープン機構は、車両50によって異なる場合があるので、図26に示した回路はあくまで例示であり、各種の車両50の方式にあわせて好適な回路を構築すればよく、図示した例に限定されるものではない。
図26に示した回路では、本実施形態の車両用ドアロック開閉システム100(シートアンテナ10)とドアロックコントロールユニット40とは互いに、ロック信号線36aおよびアンロック信号線36bによって接続されている。また、図示した例の回路では、リレー回路(車載用リレー)47A、47B、47Cを備えている。各リレー回路は、コイルよびスイッチ・接点を有している。
アンロック信号線36bに接続されたネガティブ信号線37は、第1リレー回路47Aに接続されている。第1リレー回路47Aには、電源(例えば、+12V)45が接続されている。具体的には、第1リレー回路47Aのコイルの一端は、電源45に接続されており、そして、ネガティブ信号線37は、第1リレー回路47Aのコイルの他端に接続されている。第1リレー回路47Aの接点から延びた配線は、第2リレー回路47Bのコイルに接続されている。第2リレー回路47Bのコイルの一端は、コンデンサ46bを介してGND(接地)に接続されており、第2リレー回路47Bのコイルの他端は、GND(接地)に接続されている。また、第2リレー回路47Bのコイルの一端および他端から延びた配線は、第3リレー回路47Cのコイルの一端および他端にそれぞれ接続されている。さらに、第2リレー回路47Bの接点から延びた配線は、第3リレー回路47Cの接点に接続されている。そして、第3リレー回路47Cのコイルの一端は、コンデンサ46cを介してGND(接地)に接続されており、第3リレー回路47Cのコイルの他端は、GND(接地)に接続されている。
第3リレー回路47Cの接点から延びた配線は、ダイオード41aに接続されている。ダイオード41aからの配線は、二股に分かれおり、一方は、スイッチ49Rおよびダイオード41bを介して、右パワースライドドア端子61Rに接続されている。もう一方は、スイッチ49Lおよびダイオード41cを介して、左パワースライドドア端子61Lに接続されている。
次に、この回路(パワースライドドアオープン回路ユニット)の動作について説明する。図示した回路によって、車両パワースライドドア(場合によっては、パワーOPENバックドア)を開くことができる。まず、シートアンテナ10にICカード(110)を近接させることで、ドアロックコントロールユニット40からドアロック解除信号(アンロック信号)が発生される。そして、そのドアロック解除信号が第1リレー47Aに入力する。すると、第1リレー47Aが電源電圧(+12V)を第2リレー47Bへ送る。第2リレー47Bの起動と共にコンデンサ46bによって所定時間(例えば、約5秒間)第2リレー47Bを保持する。またこのときに第3リレー47Cも同時に起動しているが、コンデンサ46cによって第3リレー47Cも保持状態になる。第3リレー47Cが保持状態にあるときはスライドドア(又はバックドア)への信号は出力しない。
また、コンデンサ46b、46cの容量の差によって保持する時間を変えている。この例では、コンデンサ46bで約5秒間の保持時間を実現しているが、コンデンサ46cは約2秒間の保持時間を実現しているので、約2秒後に信号を出力する。これは、本実施形態のドアキーシステム(ICカード110)又は純正キーによってドアキーを解除すると同時に信号を出力すると、パワースライドドア(又はパワーバックドア)が開かないため、ライブラグを持たせるようにした構成にしているからである。すなわち、ICカード110を近接させた後、所定時間経過後(例えば、2〜5秒後)にパワースライドドア(又はパワーバックドア)はオープンする。信号の出力先の端子(61R、61L)は、スイッチ(49R、49L)を介して動かしたいドア(ここでは、リアパワースライドドア。または、パワーバックドア)の車両スイッチに接続する。なお、ダイオード41a、41b、41cは逆流防止のために設けている。
本実施形態の車両用ドアロック開閉システム100は、次のような用途に使用することも可能である。
まず、車両が荷物運搬用車両(例えば、宅配便用の車両など)である場合、荷物運搬用車両のドライバは、荷物を配達する際に、配達先の近くでその車両を止めた後、エンジンを停止して、車両のドアをあけて荷物を出し、届け先に荷物を持っていく。客先に引き取りの荷物があれば、それを車両に持ち帰って、車両のドアをあけて荷物を入れる。この動作において、現在では、エンジンを停止したら、エンジンキーにひもをつけておき、そのひもをドライバの服に取り付けて、エンジンキーが紛失しないように、かつ、エンジンキーを車内に残らないようにして、荷物の運搬を行っている。そして、運搬効率を上げる上で、荷物を運び出す時には、車両のドアはアンロックにしたまま、車両を離れることが多い。しかしながら、車両のドアをアンロックにしたまま車両を離れることは、荷物の盗難の可能性があり、好ましくない。一方で、荷物の盗難のことを考慮して、毎回、荷物を運び出すごとに、車両のドアを毎回ロックするのは荷物の運搬効率が著しく低下してしまう。
一方で、本実施形態の車両用ドアロック開閉システム100を用いれば、次のようにすることができる。まず、ドライバが車両50を離れる時に、非接触式ICカード110をシートアンテナ10に近接させるだけで、ドアロックを解除することができる。そして、車両50の中から荷物を取り出して両手に持った状態でも、非接触式ICカード110をシートアンテナ10に近接させたら、ドアロックをON状態(施錠)することができる。この時、非接触式ICカード110は服のポケットに入れておいたり、あるいは、非接触式ICカード110入りのカードケースを首からぶら下げておけばよい。この両手がふさがっていても、ドアロックをONにできるのは、運搬効率的に見て非常に良い。
また、荷物を両手に持った状態で車両50に戻ってきた時でも、非接触式ICカード110をシートアンテナ10に近接させれば、ドアロックをOFF状態(解錠)にすることができるので、すぐに、荷物を車両50の中に入れることができる。車両50がパワースライドドアの場合には、例えば図25に示したように、スライドドア60(61B)のオープンまで実行できるので、さらに便利がよい。加えて、本実施形態の車両用ドアロック開閉システム100がエンジン停止も実行できるように構成されている場合には、非接触式ICカード110をシートアンテナ10に接触させるだけで、エンジン停止も実行でき、その点でも好ましい。
なお、この場合、非接触式ICカード110には、荷物運搬用車両50の車両情報および荷物運搬用車両のドライバを特定する個人情報の両方を記憶させておくことが好ましい。そのようにすれば、そのドライバが有するICカード110で、そのドライバが使う専用の車両50のドアロック開閉(または、エンジン停止)を実行できるようにすることができる。また、非接触式ICカード110の管理をしっかりするのであれば、非接触式ICカード110に、荷物運搬用車両50の車両情報だけを入れておいてもよい。
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。例えば、上述した実施形態では、車両50の外表面にアンテナ(リーダ)10を貼り付けて動作させる例を示したが、動作させる観点からは、車両ドア60の隙間にアンテナ(リーダ)10を置いた状態で動作させることも可能である。加えて、車両ドア60に貼り付けるアンテナ(シートアンテナ)10がマグネットシート25を備えている場合、洗車を行う時などには、車両50の内部にシートアンテナ10を移動させることも可能である。さらには、車両50の内部にシートアンテナ10を別途配置した状態でも動作を行うことは可能である。なお、本実施形態の形態では、シートアンテナ10を用いて説明したが、ドア60の外側面の外観を全く考慮しなくてよいのであれば、薄型形状(シート形状)以外のアンテナを用いることも可能である。ただし、実際の車両の外観、走行時の接触の問題などを考慮すれば、シートアンテナ10を用いることが好ましい。