以下、本発明の各実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施形態における通信装置の構成例を示すブロック図である。
通信装置100は、車両部200に設置され、路車間通信または車車間通信を行う車載機である。通信装置100は、位置情報取得部110と、受信部120と、通信制御部130と、情報処理部140と、送信部150と、を備える。
位置情報取得部110は、一般的に取得手段と呼ぶことができる。
位置情報取得部110は、アンテナ101を介して、通信装置100の現在位置(以下、「自車位置」と称する。)を示す位置情報と、車両部200の進行方向を示す進行方向情報と、を取得する。位置情報取得部110は、例えば、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)などを用いて、位置情報を取得する。本実施形態では、位置情報に示される自車位置は、緯度、経度および高度により表現される。
また、位置情報取得部110は、その取得した位置情報に基づいて、進行方向情報を取得する。本実施形態では、位置情報取得部110は、取得した位置情報と、この位置情報の取得時よりも前、例えば、直前に取得された位置情報と、に基づいて、車両部200の進行方向を判定する。そして、位置情報取得部110は、その判定結果を示す進行方向情報を生成する。
また、位置情報取得部110は、例えば、ジャイロセンサなどの加速度センサを用いて、進行方向情報を取得するようにしてもよい。また、位置情報取得部110は、取得した位置情報と進行方向情報とを、通信制御部130および情報処理部140に供給する。
受信部120は、一般的に受信手段と呼ぶことができる。
受信部120は、他の通信装置から電波により発信されたパケットを、アンテナ102を介して受信する。受信部120は、パケットが送信元から送信先に転送される領域(以下、「転送領域」と称する。)を特定するための転送情報を含むパケットを送信元から受信する。
本実施形態では、受信部120は、パケットの送信元の位置(以下、「送信元位置」と称する。)と、送信先座標としてパケットの送信先を特定するための送信先の位置(以下、「送信先位置」と称する)と、を示す転送情報が含まれるパケットを受信する。この転送情報に示される送信元位置および送信先位置は、緯度、経度および高度によりそれぞれ表現される。受信部120は、受信したパケットを通信制御部130に供給する。
通信制御部130は、一般的に判定手段と呼ぶことができる。
通信制御部130は、位置情報取得部110からの位置情報および進行方向情報と、受信部120からのパケットに含まれる転送情報と、に基づいて、自車位置が、送信元位置から送信先位置までの転送領域内に含まれるか否かを判定する。
通信制御部130は、自車位置が転送領域内に含まれないと判定した場合には、パケットの転送を抑制する。また、通信制御部130は、自車位置が転送領域内に含まれると判定した場合には、パケットに含まれる転送情報を情報処理部140に供給する。
本実施形態では、通信制御部130は、パケットの転送情報の示す送信元位置と送信先位置とに基づいて送信元位置から送信先位置へのパケットの送信方向を求め、そのパケットの送信方向と、進行方向情報の示す進行方向と、のなす角度(以下、「転送角度」と称する。)を算出する。そして、通信制御部130は、その転送角度が、予め定められた閾値(以下、「角度閾値」と称する。)を超えるか否かを判断する。角度閾値は、例えば、通信制御部130に記憶されている。
通信制御部130は、転送角度が、角度閾値を超える場合には、自車位置が転送領域内に含まれないと判定し、パケットの転送を抑制する。
一方、通信制御部130は、転送角度が、角度閾値を超えない場合には、自車位置が、送信元からの送信方向側に存在するか否かを判断する。
本実施形態では、通信制御部130は、転送情報の示す送信先位置と位置情報の示す自車位置との間の距離(以下、「残距離」と称する。)と、転送情報の示す送信元位置と送信先位置との間の距離(以下、「転送距離」と称する。)と、を算出する。そして、通信制御部130は、その残距離が転送距離未満であるか否かを判断する。
通信制御部130は、残距離が転送距離以上である場合には、自車位置が、送信元からの送信方向側に存在しないと判断して、自車位置が転送領域内に含まれないと判定する。
一方、通信制御部130は、残距離が転送距離未満である場合には、自車位置が、送信先位置に到達しているか否かを判断する。
本実施形態では、通信制御部130は、転送情報の示す送信元位置と位置情報の示す自車位置との間の距離(以下、「到達距離」と称する。)が転送距離未満であるか否かを判断する。
通信制御部130は、到達距離が転送距離以上である場合には、自車位置が送信先位置に到達していると判断して、自車位置が転送領域内に含まれないと判定する。
一方、通信制御部130は、到達距離が転送距離未満である場合には、通信装置100の車両部200が送信元の車両と同じ路線上に存在するか否かを判断する。
本実施形態では、通信制御部130は、転送情報の示す送信元位置の高度と位置情報の示す自車位置の高度との差分(以下、「転送高度差」と称する。)が、予め定められた閾値(以下、「高度閾値」と称する。)未満であるか否かを判断する。高度閾値は、例えば、通信制御部130に記憶されている。
通信制御部130は、転送高度差が、高度閾値を超える場合には、車両部200が送信元の車両と同じ路線上に存在しないと判断して、自車位置が転送領域内に含まれないと判定する。
一方、通信制御部130は、転送高度差が高度閾値を超えない場合には、自車位置が転送領域内に含まれると判定する。そして、通信制御部130は、自車位置が転送領域内含まれると判定されたパケットの転送情報と、判定のときに算出した残距離および送信方向を示す算出情報と、を情報処理部140に供給する。
また、通信制御部130は、自車位置が転送領域内に含まれると判定した場合には、その判定がなされたパケットを、送信部150に供給する。また、通信制御部130は、例えば、パケットに含まれる転送情報以外の情報、例えば、救急車両が接近中である旨を示す緊急情報を、情報処理部140に供給する。
情報処理部140は、一般的に補正手段と呼ぶことができる。
情報処理部140は、通信制御部130により自車位置が転送領域内に含まれると判定された場合には、自車位置から、送信先位置と自車位置との間の残距離だけ離れた円周上の位置のうち、進行方向に基づいて特定される位置を、補正位置として抽出する。
本実施形態では、情報処理部140は、進行方向と反対の方向または進行方向のうち、送信元位置から送信先位置に対する送信方向に近い方向に対して、自車位置から残距離だけ離れた位置を、補正位置として抽出する。
また、情報処理部140は、その抽出した補正位置と、位置情報に示された自車位置と、を示す補正情報を、通信制御部130を介して、送信部150に供給する。
送信部150は、一般的に送信手段と呼ぶことができる。
送信部150は、通信制御部130により自車位置が転送領域に含まれると判定されたパケットを、アンテナ102を介して無線信号により送信する。送信部150は、通信制御部130から供給されたパケットの転送情報を、情報処理部140からの補正情報に基づいて変更する。
送信部150は、通信制御部130からのパケットの転送情報が示す送信先位置を補正位置に変更し、かつ、転送情報が示す送信元の位置を自車位置に変更する。そして、送信部150は、その変更後の転送情報が含まれるパケットを送信する。
車両部200は、道路上を走行中に、通信装置100から供給された情報を、運転者に通知する移動体である。車両部200は、車両本体部210と、車両情報取得部220と、HMI部230と、を備える。
車両本体部210は、運転者の運転により道路上を走行する自動車である。
車両情報取得部220は、車両本体部210の状態に関する車両情報を取得する。車両情報取得部220は、その車両情報を情報処理部140に供給する。
HMI(Human Machine Interface)部230は、情報処理部140からの情報を、車両本体部210の運転者に通知する。HMI部230は、例えば、受信部120により受信されたパケットに含まれる緊急情報を、車両本体部210の運転者に通知する。
次に、複数の通信装置100により構成される通信システムにおけるパケット転送について説明する。
図2は、通信装置100が設置された車両AおよびBにより構成される通信システムのパケット転送に関する図である。図2には、パケットを送信する送信元の送信車両Aと、車両Aからパケットを受信する受信車両Bと、が示されている。
この例では、道路のカーブ手前に存在する車両Aの位置座標をP1、道路のカーブに差し掛かった位置に存在する車両Bの位置座標をP2、パケットの送信先座標をPとする。また、車両Aの位置座標P1と送信先座標Pとの間の転送距離をL、車両Bと送信先座標P1との間の残距離をL1、車両Aと車両Bとの間の到達距離をL2とする。また、車両Aから送信先位置座標Pまでの送信方向のベクトルと、車両Bの進行方向のベクトルとの角度差をθ1とする。
本実施形態では、車両Aの通信装置100から、送信元位置P1と送信先位置Pとが示された転送情報を含むパケットが送信される。このため、車両Aの通信装置100から送信される転送情報には、送信元位置P1と送信先位置Pとに基づいて定まるパケットの送信方向が含まれる。また、本実施形態ではパケットの送信方向が送信元の車両Aの進行方向と同一である。よって、車両Aの通信装置100から送信される転送情報には、パケットの送信方向と車両Aの進行方向とが含まれていることになる。
車両Bの通信装置100は、車両Aからのパケットを受信する。また、車両Bの通信装置100は、位置情報取得部110から、車両Bの自車位置P2を示す位置情報と、車両Bの進行方向を示す進行方向情報と、を取得する。
車両Bの通信装置100は、受信パケットに含まれる転送情報が示す送信元位置P1と送信先位置Pとに基づいて定まるパケットの送信方向を判定し、その判定された送信方向と車両Bの進行方向とのなす転送角度θ1を算出する。
そして、車両Bの通信装置100は、その転送角度θ1が、角度閾値θを超えないか否かを判断する。本実施形態では、車両Bの通信装置100は、次式の条件を満足するか否かを判断する。
θ1<θ、または、(180−θ1)<θ ・・・式1
車両Bの通信装置100は、式1の条件を満足しない、すなわち、転送角度θ1が角度閾値θを超える場合には、パケットの転送を行わない。
一方、車両Bの通信装置100は、式1の条件を満足する、すなわち、転送角度θ1が角度閾値θを超えない場合には、車両Bが、車両Aの送信方向側に存在するか否かを判断する。
車両Bの通信装置100は、位置情報の示す自車位置P2と転送情報の示す送信先位置Pとの間の残距離L1と、転送情報の示す送信元位置P1と送信先位置Pとの間の転送距離Lと、を算出する。
そして、車両Bの通信装置100は、残距離L1が転送距離L未満(L1<L)であるか否かを判断する。このとき、車両Bの通信装置100は、残距離L1が転送距離L以上である場合には、パケットの転送を行わない。
一方、車両Bの通信装置100は、残距離L1が転送距離L未満である場合には、車両Bが、車両Aの送信方向側に存在すると判断する。次に、車両Bの通信装置100は、自車位置P2が、送信先位置Pに到達したか否かを判断する。
車両Bの通信装置100は、転送情報の示す送信元位置P1と位置情報の示す自車位置P2との間の到達距離L2を算出し、到達距離L2が転送距離L未満(L2<L)であるか否かを判断する。そして、車両Bの通信装置100は、転送距離L2が転送距離L以上である場合には、パケットの転送を行わない。
一方、車両Bの通信装置100は、転送距離L2が転送距離L未満である場合には、車両Bが、送信先位置Pに到達していないと判断する。次に、車両Bの通信装置100は、車両Bが車両Aと同じ道路上に存在するかを判断する。ここでは、車両Aの高度をP1h、車両Bの高度をP2h、高度閾値をHとする。
車両Bの通信装置100は、転送情報の示す送信元位置の高度P1hと、位置情報の示す自車位置の高度P2hと、の転送高度差(|P1h−P2h|)を算出し、高度閾値Hが転送高度差未満(|P1h−P2h|<H)であるか否かを判断する。そして、車両Bの通信装置100は、転送高度差が高度閾値H以上である場合には、パケットの転送を行わない。
一方、車両Bの通信装置100は、転送高度差が高度閾値H未満である場合には、車両Bが、車両Aと同じ道路上に存在すると判断し、自車位置が転送領域内に含まれると判定する。
このとき、車両Bの通信装置100は、自車位置P2から残距離L’(=L−L2)だけ離れた円周上の位置のうち、車両Bの進行方向に基づいて特定される位置を、補正位置P’として抽出する。すなわち、車両Bの通信装置100は、車両Bの進行方向に対して、自車位置P2から残距離L’(=L−L2)だけ離れた補正位置P’を算出する。
ここで、補正位置P’は、車両Bの進行方向が、車両Aの進行方向と順方向であるため、車両Bの前方となるが、車両Bの進行方向が、車両Aの進行方向と逆方向である場合には、車両Bの後方となる。したがって、車両Bの通信装置100は、車両Bの進行方向、または、進行方向と反対の方向のうち、パケットの送信方向に近い方向に対して、自車位置P2から残距離L’(=L−L2)だけ離れた位置を、補正位置P’として抽出する。
そして、車両Bの通信装置100は、パケットの転送情報に示された送信先位置Pを、補正位置P’に変更するとともに、転送情報に示された送信元位置P1を、位置情報の示す自車位置P2に変更する。この後、車両Bの通信装置100は、その変更した転送情報を含むパケットを送信する。
なお、本実施形態において、車両Bの進行方向が、車両Aの進行方向と反対方向であると判断されたとき、パケットの転送を行わないよう制御してもよい。次に、車両Aおよび車両Bから送信されたパケットの形式例について図面を参照して簡単に説明する。
図3は、車両Aから送信された車両Aパケット510と、車両Bから送信された車両Bパケット520と、を例示する図である。
車両Aパケット510および車両Bパケット520のヘッダ情報のそれぞれには、転送情報として、送信先座標および送信元位置座標を格納するためのフィールドが設けられている。
車両Aパケット510の送信先座標には、パケットの送信先を特定するための送信先位置である位置座標Pが格納され、送信元位置座標には、送信元の位置である車両Aの位置座標P1が格納されている。
車両Bパケット520の送信先座標には、情報処理部140により抽出された補正位置である位置座標P’が格納され、送信元位置座標には、車両Bの位置座標P2が格納されている。
次に、通信装置100の動作について説明する。
図4は、通信装置100における通信方法の処理手順例を示すフローチャートである。
まず、受信部120は、送信元位置と送信先位置とが示される転送情報を含むパケットを、送信元から受信する(ステップS901)。そして、通信制御部130は、その受信されたパケットの転送情報が示す送信元位置と送信先位置とに基づいて、パケットの送信方向を判定する(ステップS902)。
この後、通信制御部130は、その判定されたパケットの送信方向と、位置情報取得部110からの進行方向情報の示す車両部200の進行方向と、の成す転送角度が、式1の条件を満足するか否かを判断する(ステップS903)。
そして、通信制御部130は、式1の条件を満足しない、すなわち、角度閾値を超える場合には、自車位置が転送領域内に含まれないと判定し、パケットの送信を抑制する(ステップS909)。
一方、通信制御部130は、式1の条件を満足する場合には、自車位置が送信元からの送信方向側に存在するか否かを判断する。本実施形態では、通信制御部130は、送信先位置と自車位置との間の残距離が、送信先位置と送信元位置との間の転送距離未満であるか否かを判断する(ステップS904)。
そして、通信制御部130は、残距離が転送距離以上である場合には、自車位置が送信元からの送信方向側に存在しないと判断し、ステップS909に進む。
一方、通信制御部130は、残距離が転送距離未満である場合には、自車位置が送信元からの送信方向側に存在すると判断する。次に、通信制御部130は、自車位置が、送信先位置に到達しているか否かを判断する。本実施形態では、通信制御部130は、送信元位置と自車位置との間の到達距離が、転送距離未満であるか否かを判断する(ステップS905)。
そして、通信制御部130は、パケットの到達距離が転送距離以上である場合には、自車位置が送信先に到達していると判断して、ステップS909に進む。
一方、通信制御部130は、パケットの到達距離が転送距離未満である場合には、自車位置が送信先に到達していないと判断する。次に、通信制御部130は、自車が、送信元の車両と同じ道路上に存在するか否かを判断する。本実施形態では、通信制御部130は、送信元位置の高度と自車位置の高度との間の転送高度差が、高度閾値未満であるか否かを判断する(ステップS906)。
そして、通信制御部130は、パケットの転送高度差が高度閾値以上である場合には、自車が送信元の車両と同じ道路上に存在しないと判断し、ステップS909に進む。
一方、通信制御部130は、パケットの転送高度差が高度閾値未満である場合には、自車が送信元の車両と同じ道路上に存在すると判断する。そして、通信制御部130は、自車位置が転送領域内に含まれると判定する。
次に、情報処理部140は、自車位置から残距離だけ離れた円周上の位置のうち、車両部200の進行方向に基づいて特定される位置を、補正位置として抽出する。そして、送信部150は、転送情報の示す転送先位置を、補正位置に変更するとともに、当該転送情報の示す送信元位置を、自車位置に変更する(ステップS907)。
この後、送信部150は、その変更された転送情報を含むパケットを送信して(ステップS908)、通信装置100における通信方法の一連の処理を終了する。
次に、複数の通信装置100がパケットの転送情報を補正することによって、そのパケットが道路線形に応じて順次転送される例について図5から図7を参照して説明する。
図5は、送信車両Aの通信エリアに存在する中継車両Eにより転送情報の送信先位置が変更される例を示す概念図である。この例では、車両AからHの各々に通信装置100が設置されているものとする。
送信車両Aは、転送情報の送信先位置に位置座標Paが示されたパケットを送信する。このとき、中継車両BからEが、送信車両Aからのパケットを受信するが、それぞれの通信制御部130による判定の結果、中継車両Eのみが、その受信パケットの転送を行う。
この場合、中継車両Eは、受信パケットの転送情報の送信先位置に示された位置座標Paを、情報処理部140によって特定された補正位置座標Peに変更して、その受信パケットを送信する。
図6は、中継車両Eの通信エリアに存在する中継車両Fにより転送情報の送信先位置が変更される例を示す概念図である。
中継車両Eは、転送情報の送信先位置に位置座標Peが示されたパケットを送信する。このとき、中継車両A、C、DおよびFが、中継車両Eからのパケットを受信するが、それぞれの通信制御部130による判定の結果、中継車両Fのみが、その受信パケットの転送を行う。
この場合、中継車両Fは、受信パケットの転送情報の送信先位置に示された位置座標Peを、情報処理部140によって特定された補正位置座標Pfに変更して、その受信パケットを送信する。
図7は、中継車両Fの通信エリアに存在する中継車両Gにより転送情報の送信先位置が変更される例を示す概念図である。
中継車両Fは、転送情報の送信先位置に位置座標Pfが示されたパケットを送信する。このとき、中継車両C、EおよびGが、中継車両Fからのパケットを受信するが、それぞれの通信制御部130による判定の結果、中継車両Gのみが、その受信パケットの転送を行う。
この場合、中継車両Gは、受信パケットの転送情報の送信先位置に示された位置座標Pfを、情報処理部140によって特定された補正位置座標Pgに変更して、その受信パケットを送信する。
このため、送信車両Aが、道路線形とは異なる送信先位置を設定した場合であっても、パケットの不要な転送を抑制しつつ、中継車両EからGの各々の通信装置100によって、道路線形に応じたパケット転送を行うことができる。
本実施形態によれば、位置情報取得部110が、通信装置200の現在位置である自車位置を示す位置情報と、車両部200の進行方向を示す進行方向情報と、を取得する。また、受信部120が、パケットの送信元の位置と、パケットの送信先を特定するための送信先の位置と、が示された転送情報を含むパケットを送信元から受信する。
さらに、通信制御部130が、位置情報取得部110からの位置情報と、受信部120により受信されたパケットの転送情報と、に基づいて、自車位置が、送信元の位置から送信先の位置までの転送領域内に含まれるか否かを判定する。
そして、通信制御部130が、自車位置がその転送領域内に含まれないと判定した場合には、受信部120により受信されたパケットの転送を禁止する。これにより、通信装置100は、受信したパケットの不要な転送を抑制することができる。
また、本実施形態では、情報処理部140が、パケットの転送が許可された場合に、自車位置から、パケットの送信先の位置と自車位置との間の残距離だけ離れた円周上の位置のうち、車両部200の進行方向に基づいて特定される位置を、補正位置として抽出する。さらに送信部150が、転送が許可されたパケットの転送情報に示された送信先位置を、その補正位置に変更し、かつ、当該転送情報が示す送信元の位置を自車位置に変更し、その変更後の転送情報が含まれたパケットを送信する。
これにより、通信装置100は、パケットの転送が許可された場合に限り、パケットの転送情報に示された送信先の位置を、車両部200の進行方向に基づいて特定された補正位置に変更して、その変更された転送情報のパケットを送信することができる。このため、通信装置100は、送信元の通信装置によって道路線形に合わない送信先が設定されたパケットを受信した場合であっても、道路線形に応じたパケット転送を行うことができる。
よって、通信装置100は、パケットの不要な転送を抑制しつつ、地図情報などの道路線形情報を用いることなく、道路線形に応じてパケットの送信方向を補正することができる。このため、通信装置100は、道路線形情報を用いて、指定された転送領域と道路線形との複雑なマッチング処理を行う必要がないため、転送処理に要する負荷を抑制することができる。
また、送信車両の通信装置100が、指定エリアとして、自車から一定の方向で、一定の距離の転送領域を指定しても、中継車両が、その車両部200の進行方向に応じてパケットの送信先の位置を補正する。このため、送信車両の通信装置100は、パケットを送信する際に、道路線形を考慮した指定エリアを設定する必要がないため、簡易な設定により、本来伝達したいエリアにまで情報を伝達することができる。
また、本実施形態では、通信制御部130が、転送情報の示す送信元の位置と送信先の位置とに基づいてパケットの送信方向を判定し、その送信方向と、車両部200の進行方向と、の成す角度が、角度閾値を超える場合には、受信されたパケットの転送を抑制する。
これにより、通信装置100は、例えば、垂直に交差する交差点付近において、パケットの送信方向に対し、その車両部200の進行方向が垂直である場合には、車両部200が指定エリアの対象外の道路を走行していると判断することができる。この場合には、パケットの転送を抑制することができる。
また、本実施形態では、通信制御部130が、自車位置から送信先の位置までの残距離が、送信元の位置と送信先の位置との間の転送距離以上である場合、および、送信元の位置と自車位置との間の到達距離が、転送距離以上である場合には、自車位置が、送信元の位置から送信先位置までの領域内に含まれなと判定する。したがって、通信装置100は、自車位置が、送信元の位置と送信先の位置との間に存在しない場合には、パケットの転送を抑制することができる。
また、本実施形態では、通信制御部130が、車両部200の高度と送信元の車両の高度との差分が、高度閾値を超える場合には、パケットを転送しないと判定する。これにより、通信装置100は、その車両部200が、送信元の車両と同じ道路上に存在しない場合には、パケットの転送を抑制することができる。
また、本実施形態では、情報処理部140は、車両部200の進行方向、および、進行方向と反対方向のうち、パケットの送信方向に近い方向に対して、自車位置から残距離だけ離れた位置を、補正位置として特定する。これにより、通信装置100は、例えば、パケットの送信方向に対して反対の方向に進行している車両であっても、送信方向と反対の方向に対して、自車位置から残距離だけ離れた位置を、補正位置として特定することができる。
また、本実施形態では、送信車両が、自車の進行方向に存在する前方車両に対してパケットを送信する例について説明したが、自車の後方車両にパケットを送信するようにしてもよい。
例えば、車車間通信における安全運転支援システムでは、各車両が自車の状態を示す安全運転支援情報を周辺車両に伝え、受信車両が、その安全支援情報に基づいて、出会い頭の衝突などの事故の危険性があると判断した場合には、その旨をドライバへ通知する。この場合、送信車両は、通常は、自車の存在を知らせるため、自車の前方車両に安全運転支援情報を送信することとなる。一方、急ブレーキなどに起因する追突事故を防止するためには、送信車両から後方車両への情報伝達が望まれる。
したがって、送信車両は、通常は、パケットの送信先を自車の前方方向に設定しておき、ドライバによりブレーキペダルが踏まれたとき、または、一定の閾値以上の速度の減少を検知したときに限り、パケットの送信方向を後方に切り替えてもよい。これにより、各送信車両が、自車の状態を示す安全運転支援情報を常に前方および後方の車両に送信する場合に比べて、通信システムにおけるパケットの輻輳を低減することができる。
なお、第1実施形態では、送信先の位置と送信元の位置とを示す転送情報が含まれるパケットを用いた例について説明したが、パケットの送信方向を含む転送情報が用いられてもよい。
本発明の第2実施形態では、基準方向を基準に設定されたパケットの送信方向と、パケットの送信元の位置と、を含む転送情報が含まれるパケットが用いられる。なお、第2実施形態における通信装置100の基本的な構成は、第1実施形態と同じ構成である。
第2実施形態における送信元の通信装置100では、情報処理部140が、緊急情報とその緊急情報を転送するために予め設定さられたパケットの送信方向を示す送信方向情報とを出力すると、位置情報取得部110は所定時間間隔で送信元の現在位置を示す位置情報を取得する。位置情報取得部110が位置情報を取得するたびに、通信制御部130は位置情報の示す送信元の位置と、送信方向情報の示すパケットの送信方向と、を含む転送情報を生成し、送信部150がその転送情報と緊急情報とを含むパケットを所定時間間隔で送信する。なお、パケットの送信方向として、例えば、車両の前進方向が基準方向として規定される場合には、基準方向と同一の方向(車両の前方向)、または、基準方向と反対の方向(車両の後方向)が用いられる。
送信元から所定時間間隔でパケットを受信する通信装置100では、受信部120が、パケットの送信方向とパケットの送信元の位置とを含む転送情報および緊急情報が含まれるパケットを受信すると、位置情報取得部110は自車両の進行方向を示す進行方向情報を取得する。
そして、通信制御部130は、受信部120が受信したパケット内の転送情報が含む送信元の現在の位置と、そのパケットが受信される前に受信部120が受信したパケット内の転送情報が含む送信元の過去の位置とに基づいて、送信元が過去の位置から現在の位置に移動した方向、すなわち送信元の進行方向を計算する。この送信元の進行方向は基準方向として用いられる。なお、通信制御部130は、一般的に計算手段と呼ぶことができる。
通信制御部130は、基準方向にて特定されるパケットの送信方向と、進行方向情報の示す自車両の進行方向と、のなす角度θ1が式1の条件を満足しない、すなわち、θ1>θ、または、(180−θ1)>θの場合にはパケットの転送を抑制する。なお、通信制御部130は、進行方向情報の示す進行方向がパケットの送信方向と反対方向であると判断したときは、HMI部230に緊急情報を運転者に通知させることなく、パケットに含まれる緊急情報を破棄してもよい。
角度θ1が式1を満足する場合には、位置情報取得部110が自車両の現在位置を示す位置情報を取得し、送信部150は、転送情報が含む送信元の位置を位置情報の示す自車両の位置に変更する。送信部150は、変更後の転送情報が含まれたパケットを、送信元の進行方向にて特定されるパケットの送信方向に送信する。なお、送信部150は、パケットに含まれる転送情報を変更することなく、そのパケットをパケットの送信方向に送信してもよい。
このため、第2実施形態における通信装置100は、パケットの送信方向を含む転送情報を用いることにより、パケットの送信方向を基準にパケットの転送を行うことができる。さらに通信装置100は、転送情報に含まれる送信元の位置を自車両の現在位置に変更することにより、転送情報に基づいて算出される送信元の進行方向に道路の形状を反映することが可能となる。よって、通信装置100は道路線形に応じたパケット転送を行うことが可能となる。また、通信装置100は、送信元の進行方向にて特定されるパケットの送信方向と自車両の進行方向とのなす角度θ1と角度閾値θとを用いてパケットの不要な転送を抑制することが可能となる。
第2実施形態では、パケットの送信方向とパケットの送信元の位置とを含む転送情報に、さらに、パケットの送信先の位置が含まれてもよい。この場合、送信元の通信装置100では、情報処理部140が、パケットの送信方向とパケットの転送距離(指定距離)とを含む送信エリア情報を出力し、位置情報取得部110が、送信元の進行方向を示す進行方向情報と送信元の位置を示す位置情報とを取得する。そして、通信制御部130は、位置情報の示す送信元の位置から、進行方向情報の示す送信元の進行方向にて特定されるパケットの送信方向に対して、送信エリア情報に含まれるパケットの転送距離だけ離れた送信先の位置を求め、その送信先の位置をさらに含む転送情報を生成し、送信部150がその転送情報および緊急情報を含むパケットを送信する。
送信元からパケットを受信する通信装置100では、受信部120が、パケットの送信先の位置をさらに含む転送情報が含まれるパケットを受信すると、位置情報取得部110が、自車両の現在位置を示す位置情報を取得する。そして、通信制御部130は、図1で述べたように、位置情報と転送情報とに基づいて、現在位置が送信元の位置から送信先の位置までの転送領域内に含まれるか否かを判定し、現在位置が転送領域内に含まれないと判定した場合には、パケットの転送を抑制する。このため、通信装置100は、転送情報にて特定される転送領域外にパケットを転送することを抑制することができる。
また、パケットの送信方向とパケットの送信元の位置とを含む転送情報には、パケットの送信元から送信先までの転送距離が含まれてもよい。転送距離は送信先までの最長距離のことである。この場合、送信元の通信装置100では、情報処理部140が、予め定められた、パケットの送信方向およびパケットの転送距離を含む送信エリア情報を出力し、通信制御部130は、送信エリア情報に含まれるパケットの転送距離をさらに含む転送情報を生成し、送信部150がその転送情報および緊急情報を含むパケットを送信する。
送信元からパケットを受信する通信装置100では、受信部120が、パケットの転送距離をさらに含む転送情報が含まれるパケットを受信すると、位置情報取得部110が、自車両の現在位置を示す位置情報を取得する。そして、通信制御部130は、図1で述べたように、位置情報と転送情報とに基づいて、現在位置が、送信元の位置から送信先までの転送距離により特定される転送領域内に含まれるか否かを判定する。例えば、通信制御部130は、位置情報に示す現在位置と転送情報が含む送信元の位置との間の到達距離が、転送情報に含まれる転送距離を超える場合には、現在位置が転送領域内に含まれないと判定する。通信制御部130は、現在位置が転送領域内に含まれないと判定した場合には、パケットの転送を抑制する。
次に、パケットの送信方向を含む転送情報の他の例について説明する。
本発明の第3実施形態では、基準方向として示された送信元の進行方向と、基準方向を基準に設定されたパケットの送信方向と、を含む転送情報が含まれるパケットが用いられる。なお、第3実施形態における通信装置100の基本的な構成は、第1実施形態と同じ構成である。
第3実施形態における送信元の通信装置100では、情報処理部140が、第2実施形態と同様に緊急情報と送信方向情報とを出力し、位置情報取得部110が送信元の進行方向を示す進行方向情報を取得する。そして、通信制御部130は、進行方向情報の示す送信元の進行方向と、送信方向情報の示すパケットの送信方向と、を含む転送情報を生成し、送信部150がその転送情報および緊急情報を含むパケットを送信する。
送信元からパケットを受信する通信装置100では、受信部120が、基準方向として示された送信元の進行方向と、パケットの送信方向と、を含む転送情報が含まれるパケットを受信し、位置情報取得部110は自車両の進行方向を示す進行方向情報を取得する。
そして、通信制御部130は、転送情報が含む送信元の進行方向にて特定されるパケットの送信方向と、進行方向情報の示す自車両の進行方向と、のなす角度θ1が式1の条件を満足しない、すなわち、θ1>θ、または、(180−θ1)>θの場合にはパケットの転送を抑制する。なお、通信制御部130は、進行方向情報の示す進行方向がパケットの送信方向と反対方向であると判断されたとき、パケットに含まれる緊急情報を破棄してもよい。
角度θ1が式1を満足する場合には、送信部150は、転送情報が含む基準方向を送信元の進行方向から進行方向情報の示す自車両の進行方向に変更し、変更後の転送情報が含まれたパケットを、変更後の転送情報に含まれるパケットの送信方向に送信する。
このため、第3実施形態における通信装置100は、転送情報が含む基準方向を自車両の進行方向に変更してパケットの送信方向を変更することにより、道路線形に応じたパケット転送を行うことが可能となる。
第3実施形態では、パケットの送信方向とパケットの送信元の進行方向とを含む転送情報に、さらに、パケットの送信元の位置とパケットの送信先の位置とが含まれてもよい。この場合、送信元の通信装置100では、情報処理部140が、パケットの送信方向とパケットの転送距離とを含む送信エリア情報を出力し、位置情報取得部110が、送信元の進行方向を示す進行方向情報と、送信元の位置を示す位置情報と、を取得する。そして、通信制御部130は、位置情報の示す送信元の位置から、送信元の進行方向にて特定されるパケットの送信方向に対して、パケットの転送距離だけ離れた送信先の位置を求め、その送信先の位置と送信元の位置とを含む転送情報を生成し、送信部150がその転送情報を含むパケットを送信する。
送信元からパケットを受信する通信装置100では、受信部120が、パケットの送信元の位置とパケットの送信先の位置とをさらに含む転送情報が含まれるパケットを受信すると、位置情報取得部110が、進行方向情報に加えて自車両の現在位置を示す位置情報を取得する。そして、通信制御部130は、図1で述べたように、位置情報と転送情報とに基づいて、現在位置が送信元の位置から送信先の位置までの転送領域内に含まれるか否かを判定し、現在位置が転送領域内に含まれないと判定した場合には、パケットの転送を抑制する。このため、通信装置100は、転送情報にて特定される転送領域外にパケットを転送することを抑制することができる。
また、パケットの送信方向とパケットの送信元の進行方向とを含む転送情報には、パケットの送信元の位置と、パケットの送信元から送信先までの転送距離と、が含まれてもよい。この場合、送信元の通信装置100では、情報処理部140が、パケットの送信方向とパケットの転送距離とを含む送信エリア情報を出力し、位置情報取得部110が、送信元の進行方向を示す進行方向情報と、送信元の位置を示す位置情報と、を取得する。そして、通信制御部130は、位置情報の示す送信元の位置と、送信エリア情報が含むパケットの転送距離と、をさらに含む転送情報を生成し、送信部150がその転送情報を含むパケットを送信する。
送信元からパケットを受信する通信装置100では、受信部120が、送信元の位置とパケットの転送距離とをさらに含む転送情報が含まれるパケットを受信すると、位置情報取得部110が、進行方向情報に加えて自車両の現在位置を示す位置情報を取得する。そして、通信制御部130は、図1で述べたように、位置情報と転送情報とに基づいて、現在位置が、送信元の位置から送信先までの転送距離により特定される転送領域内に含まれるか否かを判定する。例えば、通信制御部130は、位置情報の示す現在位置と転送情報が含む送信元の位置との間の到達距離が、転送情報に含まれる転送距離を超える場合には、現在位置が転送領域内に含まれないと判定する。通信制御部130は、現在位置が転送領域内に含まれないと判定した場合には、パケットの転送を抑制する。
なお、本実施形態では、通信装置100に設置される移動体として、自動車の車両部200を例にして説明したが、車両部200以外の移動体として、例えば、電車、船舶、飛行機などが用いられてもよい。
以上説明した実施形態において、図示した構成は単なる一例であって、本発明はその構成に限定されるものではない。