主に図1ないし図3を参照して沈胴式のズームレンズ鏡筒10の全体構成を説明する。ズームレンズ鏡筒10の撮像光学系は、図2の撮影(繰出)状態において物体(被写体)側から順に、第1レンズ群LG1、第2レンズ群LG2、シャッタS、第3レンズ群(光学手段)LG3、第4レンズ群LG4、フィルタ25及び撮像素子62を備える。この撮像光学系は焦点距離可変のズーム光学系であり、第1レンズ群LG1、第2レンズ群LG2及び第3レンズ群LG3を光学系の撮影光軸Oに沿って所定の軌跡で進退させることによってズーミングを行う。また、撮影光軸Oに沿って第4レンズ群LG4を移動させることでフォーカシングを行う。以下の説明中で光軸方向とは、撮像光学系の撮影光軸Oと平行な方向を意味し、前方とは光軸方向の前方(被写体側)、後方とは光軸方向の後方(像面側)を意味する。
ズームレンズ鏡筒10は、固定部材として筒状のハウジング22を備える。ハウジング22の後部に撮像素子ホルダ21が固定され、撮像素子ホルダ21の前面のセンサ保持部21a内にフィルタ25と撮像素子62が支持される。
第4レンズ群LG4は4群枠51に保持されている。4群枠51は外径方向に突出する一対のガイド腕51a、51bを有し、一方のガイド腕51aの先端に設けたガイド孔が、ハウジング22内に固定された光軸方向に延びるガイド軸(図示略)に対して摺動自在に嵌り、他方のガイド腕51bの先端部がハウジング22の内周面に形成された光軸方向への長溝22aに対して摺動自在に嵌っている。これにより、4群枠51はハウジング22に対して光軸方向に直進移動可能に支持されている。4群枠51は、図示を省略するAFモータによって光軸方向に進退駆動される。
ハウジング22の内側には第3筒15が支持されている。第3筒15の外周面には、ハウジング22内に支持されたズームギヤ(図示略)と噛み合う周面ギヤ15aが形成されており、ズームギヤはズームモータ150によって回転駆動されて第3筒15に回転力を伝達する。第3筒15の外面には、周面ギヤ15aと同じ領域に外面ヘリコイド15bが形成されており、この外面ヘリコイド15bがハウジング22の内面ヘリコイド22bに螺合している。図1の収納(沈胴)状態からズームモータ150によりズームギヤを回転駆動させると、内面ヘリコイド22bの案内によって第3筒15が回転しながら光軸方向前方に移動する。
第3筒15の内側には直進案内環14が支持されている。ハウジング22の内周面に光軸方向への直線溝22cが形成されており、直進案内環14は、直線溝22cに対して直進案内突起14aを摺動自在に係合させることで光軸方向に直進案内されている。直進案内環14はまた、第3筒15の内周面に撮影光軸Oを中心として形成した周方向溝15cに対して回転案内突起14bを摺動自在に係合させることで、第3筒15の相対回転を許しつつ、光軸方向には第3筒15と共に移動する。
直進案内環14には、内周面と外周面を貫通する貫通ガイド溝14cが形成されている。貫通ガイド溝14cは、撮影光軸Oに対して斜行する溝であり、カム環11の外周面に設けた外径突起11aが摺動可能に嵌まっている。外径突起11aはさらに、第3筒15の内周面に形成した光軸方向への回転伝達溝15dに対して摺動自在に係合しており、この係合関係によってカム環11が第3筒15と共に回転される。カム環11は、貫通ガイド溝14cの案内を受けて、回転しながら第3筒15及び直進案内環14に対して光軸方向に進退される。
直進案内環14の内周面には光軸方向に延びる直線溝14d、14eが形成されている。直線溝14dに対して3群支持環(支持環)8の直進案内突起8aが摺動自在に係合しており、3群支持環8が直進案内環14を介して光軸方向に直進案内されている。直線溝14eに対して第2筒13の直進案内突起13aが摺動自在に係合しており、第2筒13も直進案内環14を介して光軸方向に直進案内されている。第2筒13の内周面に設けた回転案内突起13bが、カム環11の外周面に形成した周方向溝11bに対して摺動自在に係合しており、第2筒13は、カム環11の相対回転を許しつつ、光軸方向にはカム環11と共に移動する。
3群枠5に第3レンズ群LG3が支持され、3群枠5が防振枠(ベース部材、光軸シフト枠)301を介して3群支持環8内に支持されている。防振枠301は3群支持環8内で撮影光軸Oと略直交する平面に沿って移動可能に支持され、さらに3群枠5は防振枠301に対して撮影光軸Oと略直交する平面に沿って移動可能に支持されている。3群支持環8内にはまた、シャッタSを内蔵したシャッタユニット(ベース部材、傾動部材)100が支持されている。3群支持環8とその内部構造物は防振レンズブロック80を構成しており、その詳細については後述する。
3群支持環8は光軸方向へ延びる直進案内キー8bを備え、直進案内キー8bに対して2群支持環3の内周面に形成した光軸方向への直線溝が摺動自在に係合している。この係合によって2群支持環3が3群支持環8を介して光軸方向に直進案内されている。2群支持環3内には第2レンズ群LG2が固定的に支持されている。
第2筒13の内周面には光軸方向に延びる直線溝13cが形成され、該直線溝13cに対して第1筒12の直進案内突起12aが摺動自在に係合しており、第1筒12が第2筒13を介して光軸方向へ直進案内されている。第1筒12の内部には、1群支持環2を介して第1レンズ群LG1が支持されている。
カム環11の内周面に形成した2群制御カム溝M2に対し、2群支持環3の外周面に設けたカムフォロアN2が係合し、同じくカム環11の内周面に形成した3群制御カム溝M3に対し、3群支持環8の外周面に設けたカムフォロアN3が係合している。2群支持環3と3群支持環8はそれぞれ光軸方向に直進案内されているため、カム環11が回転すると、2群制御カム溝M2と3群制御カム溝M3の形状に従って2群支持環3と3群支持環8が光軸方向へ所定の軌跡で移動され、第2レンズ群LG2と第3レンズ群LG3の位置が制御される。
第1筒12は内径方向に突出するカムフォロアN1を有し、このカムフォロアN1が、カム環11の外周面に形成した1群制御カム溝M1に摺動可能に嵌合している。第1筒12は光軸方向に直進案内されているため、カム環11が回転すると、1群制御カム溝M1の形状に従って第1筒12が光軸方向へ所定の軌跡で移動され、第1レンズ群LG1の位置が制御される。
第1筒12の前端にはレンズバリヤ機構101が設けられる。レンズバリヤ機構101は、中央に開口102aを有するバリヤ支持環102を備え、該バリヤ支持環102と後方のバリヤ駆動環103の間に、光軸方向に軸線を向けた回動軸により軸支された各一対のバリヤ羽根104、105を備える。撮影光軸Oを中心とするバリヤ駆動環103の正逆回転に応じてバリヤ羽根104とバリヤ羽根105が連動して開閉動作を行い、図1の収納状態ではバリヤ羽根104とバリヤ羽根105が閉じられ、図2の撮影状態ではバリヤ羽根104とバリヤ羽根105が開かれる。
以上のズームレンズ鏡筒10で、部材間で直進案内や回転伝達などを行うための各種の係合部分は、安定した係合支持性能を得るために周方向に位置を異ならせて複数箇所設けられている。例えば、カム環11上の各カム溝M1、M2,M3は、周方向に略等間隔でそれぞれ3つずつ形成されており、これに係合するカムフォロアN1、N2,N3も同様に、周方向に略等間隔で3つずつ設けられている。個別の説明は省略するが、カム溝やカムフォロア以外の係合部分も、傾きを防いで安定した支持や摺動を行わせるために、最適な数と配置が選択されている。
以上の構造からなるズームレンズ鏡筒10は次のように動作する。図1に示す収納状態において、ズームレンズ鏡筒10が搭載される撮像装置に設けたメインスイッチがオンされると、ズームモータ150が鏡筒繰出方向に駆動されてズームギヤが回転し、第3筒15がハウジング22の内面ヘリコイド22bにガイドされて前方へ回転繰出される。直進案内環14は、第3筒15と共に前方に直進移動する。このとき、第3筒15から回転力が付与されるカム環11は、直進案内環14の前方への直進移動分と、該直進案内環14との間に設けたリード構造(貫通ガイド溝14cと外径突起11a)による繰出分との合成移動を行う。
カム環11が回転すると、その内側では、直進案内環14により直進案内された3群支持環8が、カムフォロアN3と3群制御カム溝M3の関係によって光軸方向に所定の軌跡で移動され、3群支持環8を介して直進案内された2群支持環3が、カムフォロアN2と2群制御カム溝M2の関係によって光軸方向に所定の軌跡で移動される。また、カム環11が回転すると、その外側では、直進案内環14と第2筒13を介して直進案内された第1筒12が、カムフォロアN1と1群制御カム溝M1の関係によって光軸方向に所定の軌跡で移動される。
すなわち、鏡筒収納状態からの第1レンズ群LG1、第2レンズ群LG2及び第3レンズ群LG3の繰出量はそれぞれ、ハウジング22に対するカム環11の前方移動量と、該カム環11に対する第1筒12(1群支持環2)、2群支持環3、3群支持環8(防振ユニット26)のカム繰出量との合算値として決まる。ズーミングは、これら第1レンズ群LG1、第2レンズ群LG2及び第3レンズ群LG3が互いの空気間隔を変化させながら撮影光軸O上を移動することにより行われる。図1の収納状態から鏡筒繰出を行うと、まずワイド端の繰出状態になり、さらにズームモータ150を鏡筒繰出方向に駆動させると、テレ端の繰出状態となる。メインスイッチをオフすると、ズームモータ150が鏡筒収納方向に駆動され、ズームレンズ鏡筒10は上記の繰出動作とは逆の収納動作を行い、図1の収納状態になる。
また、ワイド端からテレ端までの撮影状態にあるとき、測距手段によって得られた被写体距離情報に応じてAFモータを駆動することにより、第4レンズ群LG4を支持する4群枠51が撮影光軸Oに沿って移動してフォーカシングが実行される。
以上のズームレンズ鏡筒10の全体動作とは別に、防振レンズブロック80における第3レンズ群LG3は、撮影光軸Oと直交する平面に沿って移動可能である。続いて防振レンズブロック80の詳細構造を説明する。後述するように、防振レンズブロック80は第3レンズ群LG3の光軸の傾きを調整する機構を備えているが、以下の説明における撮影光軸Oを用いた方向などの定義は、撮像光学系全体の光軸と第3レンズ群LG3の光軸が平行である状態を基準としている。
図5ないし図14に示すように、防振レンズブロック80は、第3レンズ群LG3を支持するレンズユニット81と、シャッタSを支持するシャッタユニット100と、撮影光軸Oに対する第3レンズ群LG3の挿脱動作を行わせる離脱駆動レバー305を3群支持環8内に備えた構造になっている。レンズユニット81は、第3レンズ群LG3を直接的に支持する3群枠(挿脱枠)5、3群枠5を軸支する防振枠301、防振枠301を光軸直交平面に沿って可動に支持するセンサホルダ(ベース部材、傾動部材)304、センサホルダ304に取り付けられるセンサ押さえ板308を有する。3群支持環8は撮影光軸Oを囲む筒状部8cを有し、筒状部8cの内側にシャッタユニット100とセンサホルダ304が結合されて支持され、シャッタユニット100とセンサホルダ304の間の光軸方向位置に防振枠301が可動に保持されている。
図6に示すように、シャッタユニット100はシャッタSを内蔵するシャッタハウジング100aの中央に光軸方向へ貫通する撮影開口100bを有し、内蔵のシャッタアクチュエータでシャッタSを駆動して撮影開口100bを開閉させる。シャッタハウジング100aの外周面上には、周方向に位置を異ならせて3つ(図6では2つが示されている)の係合溝100cと、係合溝100c上に突出する係合突起100dが設けられている。シャッタユニット100からフレキシブル基板90が延設されている。フレキシブル基板90は図示を省略する制御基板に接続され、フレキシブル基板90を通じてシャッタアクチュエータへの駆動信号の伝達や給電が行われる。
図6に示すように、センサホルダ304は、撮影光軸Oを囲み周方向の一部が接続せずに開放されたC字状の開放枠状体からなるホルダ本体部304aを有しており、周方向位置を異ならせて、ホルダ本体部304aから光軸方向前方へ突出する3つの前方アーム部304bが形成されている。各前方アーム部304bには先端付近に係合凹部304cが形成されている。3つの前方アーム部304bをそれぞれ係合溝100cに係合させ、かつ係合凹部304cを係合突起100dに係合させることにより、センサホルダ304がシャッタユニット100に対して結合される。ホルダ本体部304aの前面側には、撮影光軸Oと直交する平滑な平面であるボール当接面304dが3つ形成され、両側の2つのボール当接面304dの近傍には2つの移動制限突起304eが前方に向けて突設されている。ホルダ本体部304aの外周面には、3つのボール当接面304dに概ね対応する周方向位置で3つのバネ掛け突起304fが突設されている。
シャッタユニット100とセンサホルダ304の間に保持される防振枠301は、枠本体301aが3群支持環8の筒状部8cの内周面に対して所定のクリアランスをもって対向する外周形状を有しており、筒状部8c内で撮影光軸Oと直交する方向への移動が許されている。枠本体301aの後面側には、センサホルダ304の3つのボール当接面304dに対向する位置に3つのボール支持孔301bが形成されている。図6と図7に示されているのはボール支持孔301bの裏側である。図12ないし図14に示すように、各ボール支持孔301bは後方に向けて開口された有底の凹部であり、ボール支持孔301bの底面であるボール当接面301cとボール当接面304dによって構成される光軸方向の前後の対向面の間に球状の転動体であるガイドボール302を挟持している。ボール当接面304dと同様に、ボール当接面301cも撮影光軸Oと直交する平滑な平面である。ガイドボール302は光軸直交方向にはボール支持孔301bに対して遊嵌しており、ガイドボール302がボール支持孔301bの中央付近に位置するときにはボール支持孔301bの内側壁に対して当接しない。
防振枠301の枠本体301aの外周部には周方向に位置を異ならせて3つのバネ掛け突起301dが設けられ、各バネ掛け突起301dとセンサホルダ304に設けた各バネ掛け突起304fとの間に計3本の引張バネ303が張設されている。防振枠301は、3つの引張バネ303の付勢力によってセンサホルダ304に接近する方向(後方)に付勢され、3つのボール当接面301cを3つのガイドボール302に当接させることで、後方への防振枠301の移動が規制される。この状態で各ボール当接面301cは対応するガイドボール302に対してそれぞれ点接触しており、当該点接触部分を摺接させることで(もしくは、ガイドボール302がボール支持孔301bの内側壁に当接していないときはガイドボール302を転動させながら)、防振枠301は撮影光軸Oと直交する方向へ自在に移動可能になっている。
防振枠301にはまた、センサホルダ304に設けた2つの移動制限突起304eを挿入させる2つの移動制限孔301eが光軸方向に貫通形成されている。各移動制限孔301eは、撮影光軸Oと直交する平面内において概ね正方形をなす矩形内面形状を有している。図中では、光軸直交平面内における各移動制限孔301eの内側壁の一方の対角線方向をX軸、他方の対角線方向をY軸で表している。また、図10及び図11において、撮影光軸Oを通りY軸に沿う面を仮想平面PY、撮影光軸Oを通りX軸に沿う面を仮想平面PXとして示している。防振枠301は、移動制限孔301eの内面に移動制限突起304eを当接させるまでの範囲で、撮影光軸Oと直交する平面内でシャッタユニット100とセンサホルダ304に対して自在に移動することができる。
防振枠301は、防振枠301に支持される2つの永久磁石(駆動手段)311、312と、シャッタユニット100に支持される2つのコイル(駆動手段)313、314からなるボイスコイルモータによって駆動される。図6及び図7に示すように、防振枠301には3つのボール支持孔301bの間に位置させて一対の磁石保持部301f、301gが形成されており、一方の磁石保持部301fに永久磁石311が保持され、他方の磁石保持部301gに永久磁石312が保持されている。永久磁石311と永久磁石312の形状及び大きさは略同一であり、それぞれ細長矩形の薄板状をなし、図10及び図11に示す仮想平面PYに関して対称の関係で配置される。より詳しくは、永久磁石311と永久磁石312はそれぞれ、短手方向の略中央を通り長手方向に向く磁力境界線Q1、Q2(図7、図10及び図11に一点鎖線で示す)で分割される半割領域の一方がN極で他方がS極となっており、永久磁石311の磁力境界線Q1と永久磁石312の磁力境界線Q2が、Y軸方向の上方(後述する3群枠5の挿入位置側)から下方(後述する3群枠5の離脱位置側)に向かうにつれて、互いに離間するように傾斜している。仮想平面PYに対する永久磁石311の磁力境界線Q1と永久磁石312の磁力境界線Q2の傾斜角は、正逆で約45度に設定されている。つまり、永久磁石311と永久磁石312は互いの長手方向(磁力境界線Q1、Q2)を略直交させる関係にある。
図6や図9に示すように、2つのコイル313、314はシャッタハウジング100aの後面側に固定されている。コイル313とコイル314はそれぞれ、略平行な一対の長辺部と該長辺部を接続する一対の湾曲部を有する空芯コイルであり、その形状及び大きさは略同一である。シャッタハウジング100aの後面側に支持された状態で、コイル313の長軸方向が永久磁石311の磁力境界線Q1と略平行になり、コイル314の長軸方向が永久磁石312の磁力境界線Q2と略平行になる。コイル313とコイル314は、フレキシブル基板90が接続する制御基板上の制御回路によって通電制御される。
以上の構成のボイスコイルモータでは、コイル313と永久磁石311が光軸方向に対向しており、コイル313に通電すると、撮影光軸Oと直交する平面内で永久磁石311の磁力境界線Q1(コイル313の長軸方向線)と略直交する方向への推力が作用する。この推力の作用方向を図10及び図11に矢印F1で示す。また、コイル314と永久磁石312が光軸方向に対向しており、コイル314に通電すると、撮影光軸Oと直交する平面内で永久磁石312の磁力境界線Q2(コイル314の長軸方向線)と略直交する方向への推力が作用する。この推力の作用方向を図10及び図11に矢印F2で示す。これら推力の作用方向F1、F2はいずれもX軸とY軸の両方に対して約45度の角度で交差する関係にあり、各コイル313、32への通電制御によって、撮影光軸Oと直交する平面内で防振枠301を任意の位置に移動させることができる。前述の通り、その移動範囲は移動制限孔301eの内面が移動制限突起304eに当接することによって規制される。
図6に示すように、フレキシブル基板90の一部は、一対の磁気センサ(ホールセンサ、駆動手段)315、316を支持するセンサ支持板90aを構成している。磁気センサ315、316からの出力はフレキシブル基板90を通じて制御回路に伝えられる。センサ支持板90aはセンサホルダ304の後部に取り回しされている。センサホルダ304には、3つのボール当接面304dと3つのバネ掛け突起304fの間に位置させて、2つのセンサ保持部304g、304hが形成されている。センサ保持部304g、304hは光軸方向後方に向けて開口する凹状部であり、センサ保持部304gに対して磁気センサ315が後方から嵌合して位置決めされ、センサ保持部304hに対して磁気センサ316が後方から嵌合して位置決めされる。
センサホルダ304には後方からセンサ押さえ板308が取り付けられる。センサ押さえ板308は金属製の板材からなり、センサホルダ304の後面に設けた一対の位置決め突起304i(図10、図11)に係合する一対の位置決め孔308aと、センサホルダ304に設けた一対の係止突起304j(図10、図11)に係合して後方への抜けが防止される一対の板状の支持片308bを有する。これらの係合関係によってセンサホルダ304に対して所定の位置で支持されたセンサ押さえ板308は、磁気センサ315、316に対応する位置に、一端を自由端とした片持ち形状の2つの当接片308cを有し、各当接片308cを弾性変形させながらセンサ支持板90aに対して後方から当接する。この2つの当接片308cの押圧力によってセンサホルダ304に対するセンサ支持板90aの浮き上がりが防がれ、磁気センサ315、316がそれぞれセンサ保持部304h、304i内に安定保持される。この保持状態で磁気センサ315が永久磁石311の後方に対向し、磁気センサ316が永久磁石312の後方に対向する。磁気センサ315、316はそれぞれ、対向関係にある永久磁石311、312の発生する磁界の変化を電気信号に変換し出力することによって、防振枠301の駆動位置を検出することができる。
防振枠301上には、撮影光軸Oと平行な回動軸35を中心として回動(揺動)可能に3群枠5が支持されている。図7に示すように、回動軸35の両端部は、防振枠301に設けた軸支持部301hと、固定ネジ37によって防振枠301に固定される抜止部材36とに支持される。3群枠5は、第3レンズ群LG3を保持するレンズ保持筒部5aと、回動軸35を挿通させる軸孔を有する軸孔部5bと、レンズ保持筒部5aと軸孔部5bを接続するアーム5cを備えている。3群枠5は、図2、図8、図9、図10、図11の実線、図12ないし図14に示す挿入位置と、図1、図11の二点鎖線に示す離脱位置の間で揺動が可能であり、防振枠301に設けたストッパ301i(図8ないし図11)に対して、レンズ保持筒部5aから突出するストッパ当接部5dを当接させることで挿入位置が決まる。一端部と他端部を防振枠301と3群枠5に係止させたトーションコイルばねからなる3群枠付勢バネ39が3群枠5を挿入位置方向へ付勢している。
3群枠5が挿入位置にあるとき、第3レンズ群LG3が撮影光軸O上に位置する。3群枠5が離脱位置に回動すると、第3レンズ群LG3が撮影光軸Oに対してY軸方向に大きく変位して、第3レンズ群LG3の一部が3群支持環8の筒状部8cの外側に突出する。防振枠301の枠本体301aには、このときのレンズ保持筒部5aの移動軌跡(回動軸35を中心とする円弧状軌跡)に対応する形状をなす逃げ孔301jが光軸方向に貫通形成されており、逃げ孔301jにレンズ保持筒部5aが進入している。逃げ孔301jは防振枠301の枠本体301aの外周部に貫通(開口)しており、この逃げ孔301jの開口部分を補強する橋絡部301kが設けられている。橋絡部301kは後方にオフセットして形成されており、3群枠5が離脱位置に回動したときにレンズ保持筒部5aと干渉しないようになっている。前述のように、センサホルダ304のホルダ本体部304aは、周方向の両端部の間が開放された開放枠状体であり、このホルダ本体部304aにおける開放部分によって、防振枠301の橋絡部301kとの干渉が防止される。
図5、図8、図9及び図10に示すように、3群支持環8の後端部付近には、撮影光軸Oと平行な回動軸50を中心として回動(揺動)可能に離脱駆動レバー305が支持されている。回動軸50は3群支持環8に突設され、離脱駆動レバー305の軸孔部305aに形成した軸孔に挿通されている。離脱駆動レバー305は、3群支持環8に形成した軸座部8d(図8、図9)と、該軸座部8dの後部に固定される抜止板307とで軸孔部305aの前後端部を挟まれることによって、3群支持環8に対する前後方向の移動が規制される。抜止板307は、軸孔部305aを貫通した回動軸50に嵌合し、かつ3群支持環8上の壁部に当接して位置が固定されている。離脱駆動レバー305は、軸孔部305aから外径方向に延出されるアーム305bの先端付近に離脱押圧部305cを有していて、この離脱押圧部305cが3群枠5のアーム5cに設けた被押圧部5eに当接可能である。離脱押圧部305cは離脱駆動レバー305の回動半径方向に向く平面を被押圧部5eに対向させている。被押圧部5eは、軸線を撮影光軸Oと平行とした円筒状突起の外周面として形成されており、離脱押圧部305cを構成する上記平面に対向している。そのため、離脱押圧部305cと被押圧部5eは、離脱駆動レバー305から3群枠5へ回動方向の力を伝達するが、撮影光軸Oと平行な方向への力を伝達しない関係にある。離脱駆動レバー305にはさらに、軸孔部305aから外径方向に突出する被押圧部305dが設けられている。
図10に示すように、離脱駆動レバー305を軸支する回動軸50は、3群枠5を軸支する回動軸35の近傍に設けられており、回動軸50が回動軸35よりも撮影光軸Oから遠い外径側に位置する。3群枠付勢バネ39の付勢力は離脱位置から挿入位置方向(図10及び図11の反時計方向)へ3群枠5を回動付勢しており、離脱駆動レバー305も、これと同方向へ向けてレバー付勢バネ(第1の付勢部材)306(図5)によって回動付勢されている。このレバー付勢バネ306の付勢方向への離脱駆動レバー305の回動端である挿入許容位置を決めるストッパ8eが3群支持環8に形成されている。離脱駆動レバー305の挿入許容位置を決める際には、このストッパ8eに対して被押圧部305dの一部が当接する。一方、3群枠付勢バネ39による付勢方向への3群枠5の回動は、ストッパ当接部5dとストッパ301iの当接によって規制される。3群枠5と離脱駆動レバー305がそれぞれのストッパに当接している状態が図8、図10、図11であり(図10と図11では離脱駆動レバー305の図示が省略されている)、このとき被押圧部5eと離脱押圧部305cが互いに離間している。この被押圧部5eと離脱押圧部305cの間のクリアランスは、3群支持環8内での防振枠301の可動範囲(移動制限孔301eの内面に移動制限突起304eが当接するまでの範囲)内では、被押圧部5eを離脱押圧部305cに接触させない大きさに設定されている。換言すれば、離脱駆動レバー305は、挿入許容位置にあるときに、防振枠301と3群枠5の防振用の駆動を規制しない。そして、3群枠5と離脱駆動レバー305に外力が加わらなければ、3群枠付勢バネ39の付勢力で3群枠5が挿入位置に保持される。
図4に示すように、防振レンズブロック80の後方に位置する撮像素子ホルダ21には、センサ保持部21aの側部に位置させて離脱押圧突起(離脱駆動手段)21bが設けられている。離脱押圧突起21bは前方へ向けて突出しており、先端部には端面カム21cが形成され、端面カム21cに続く側面には撮影光軸Oと略平行な離脱保持面21dが形成されている。なお、離脱押圧突起21bは、以下に述べる離脱駆動レバー305の動作を行わせることが可能な位置であれば、撮像素子ホルダ21以外にもレンズ鏡筒を構成する任意の部材に設けることができる。
離脱押圧突起21bは、レンズ鏡筒が撮影状態にあるときは離脱駆動レバー305の後方に位置しており、収納状態になるときの3群支持環8の後方移動に応じて離脱押圧突起21bに対して離脱駆動レバー305が接近する。すると離脱駆動レバー305の被押圧部305dが端面カム21cに当接し、光軸方向後方への3群支持環8の移動力から離脱駆動レバー305をレバー付勢バネ306の付勢力に抗する方向へ回動させる分力が生じ、前述のクリアランス分だけ離脱駆動レバー305が単独で回動してから離脱押圧部305cが3群枠5の被押圧部5eに当接する。この離脱押圧部305cと被押圧部5eの当接箇所を介して離脱位置方向への押圧力が3群枠5に伝達され、3群枠付勢バネ39とレバー付勢バネ306の両方の付勢力に抗して離脱駆動レバー305が3群枠5を離脱方向へ押圧回動させる。3群枠5が離脱位置に達した後、離脱押圧突起21bに設けた離脱保持面21dが被押圧部305dの側面に係合し、離脱駆動レバー305がレバー付勢バネ306の付勢力に抗して保持され、3群枠5が離脱位置に保持される(図1、図11の二点鎖線)。このときの離脱駆動レバー305の位置を離脱強制位置と呼ぶ。
以上の構造からなる防振レンズブロック80の動作を説明する。3群枠5が3群枠付勢バネ39の付勢力によって挿入位置に保持されている撮影状態では、レンズ鏡筒に加わる振れの方向と大きさに応じて、永久磁石311,312とコイル313,314からなるボイスコイルモータによって防振枠301を光軸直交平面内で駆動することで第3レンズ群LG3の中心を撮影光軸Oに対してシフトさせ、結像面上での被写体像のずれ(像振れ)を抑制することができる。詳細には、カメラに内蔵したジャイロセンサによってレンズ鏡筒の移動角速度を検出し、その振れの角速度を時間積分して移動角度を求め、該移動角度から結像面上での像の移動量を演算すると共に、この像振れをキャンセルするための第3レンズ群LG3(防振枠301)の駆動量及び駆動方向を演算する。そして、この演算値に基づいてコイル313とコイル314の通電制御を行う。すると、3つのガイドボール302に対して枠本体301a後面のボール当接面301cが支持案内を受けながら防振枠301が移動される。防振枠301に防振駆動を行わせるとき、3群枠5はストッパ当接部5dをストッパ301iに当接させる挿入位置に保持されており、防振枠301と3群枠5(第3レンズ群LG3)は一体に移動される。前述の通り、被押圧部5eと離脱押圧部305cの間にクリアランスが設けられているため、3群支持環8側に支持された離脱駆動レバー305は、防振枠301と3群枠5の防振用の駆動を規制しない。
撮影状態では、移動制限突起304eと移動制限孔301eの内面の当接による防振枠301の移動端位置を用いて磁気センサ315、316の校正を行うことができる。永久磁石311、312とコイル313、314の各ペアの推力の作用方向F1、F2はX軸及びY軸と略45度の関係で交差しており、移動制限突起304eに対して移動制限孔301eのX軸方向の両端部を当接させる移動端をボイスコイルモータのX軸の駆動基準位置とし、移動制限突起304eに対して移動制限孔301eのY軸方向の両端部を当接させる移動端をY軸の駆動基準位置とすることができる。撮影状態における防振枠301の実用上の防振駆動範囲は、移動制限突起304eが移動制限孔301eの内面に当接しない範囲で設定される。
撮影状態から収納状態になるとき、ズームモータ150の駆動力によって3群支持環8を含む防振レンズブロック80が光軸方向後方に移動され、やがて3群支持環8と共に後退している離脱駆動レバー305の被押圧部305dが、離脱押圧突起21bの端面カム21cに当て付く。すると、被押圧部305dが端面カム21cに押圧されて、3群支持環8の後退移動力から分力が生じてレバー付勢バネ306の付勢力に抗して離脱駆動レバー305が挿入許容位置から離脱強制位置へ向けて回動され、離脱押圧部305cが被押圧部5eに当接する。前述の通り、3群枠5には3群枠付勢バネ39によって挿入位置側への付勢力が作用しており、離脱押圧部305cを被押圧部5eに当接させた離脱駆動レバー305は、3群枠付勢バネ39の付勢力に抗して3群枠5を挿入位置から離脱位置へ向けて押圧しようとする。加えて、3群枠5を支持する防振枠301に対して、3つの引張バネ303によって枠本体301aのボール当接面301cをガイドボール302に押し付けさせる方向の付勢力が作用している。つまり、3群枠5と防振枠301にはそれぞれ3群枠付勢バネ39と引張バネ303の付勢力による移動抵抗が作用している。ここで、3群枠付勢バネ39によって与えられる3群枠5の回動抵抗が、引張バネ303によって与えられる防振枠301の移動抵抗よりも大きく設定されている。そのため、3群枠5に作用する押圧力が防振枠301に伝わり、3群枠5の離脱位置方向への回動が開始されるよりも前に、防振枠301が3群枠5と共に離脱位置方向へ移動される。そして、移動制限突起304eに対して移動制限孔301eのY軸方向端部(挿入位置側の端部)を当接させるまで防振枠301が移動される。防振枠301のそれ以上の移動が規制されると、3群枠5が挿入位置から離脱位置へ単独で回動される。つまり、第3レンズ群LG3の離脱移動は、初期段階での防振枠301のY軸方向の移動と、これに続く防振枠301に対する3群枠5の離脱位置への回動の合成移動として行われる。
第3レンズ群LG3が光路(撮影光軸O)上から離脱された後で、さらに3群支持環8が後方への移動を続けると、離脱押圧突起21bの離脱保持面21dが被押圧部305dに当接して離脱駆動レバー305を離脱強制位置に保持し、3群枠5は離脱駆動レバー305と共に離脱位置に保持されて挿入位置への回動が規制される。図1に示すように、ズームレンズ鏡筒10が収納状態まで達すると、第3レンズ群LG3(レンズ保持筒部5a)の離脱によって空いた3群支持環8内の空間に、第4レンズ群LG4などが進入する。これにより、複数の光学要素を光軸上に直列状に並べて収納するタイプのレンズ鏡筒に比べて、収納時の光軸方向サイズを小さくすることができる。
収納状態から撮影状態に移行するときには逆に、3群支持環8が前方に移動されて離脱押圧突起21bによる離脱駆動レバー305の押圧(離脱強制位置への保持)が解除され、離脱駆動レバー305がレバー付勢バネ306の付勢力によって挿入許容位置に戻る。すると、3群枠付勢バネ39の付勢力によって3群枠5が離脱位置から挿入位置へと回動される。これに伴って防振枠301はボイスコイルモータによって駆動可能な状態になる。そして、撮影状態になるときに前述した磁気センサ315、316の校正が行われる。
以上の防振レンズブロック80では、第3レンズ群LG3を支持する3群枠5や防振枠301とは別に、3群支持環8により離脱駆動レバー305を支持し、撮影状態から収納状態になるときに、この離脱駆動レバー305を離脱押圧突起21bで押圧することによって離脱強制位置へ動作させ、離脱駆動レバー305を介して3群枠5を離脱位置へ押圧移動させている。離脱駆動レバー305は、3群枠5の回動軸35と平行な回動軸50によって軸支されて撮影光軸Oと直交する平面に沿って回動されるため、離脱押圧突起21bの押圧力を受けて光軸方向の負荷が伝わる部位は離脱駆動レバー305までとなり、3群枠5や防振枠301に対して光軸方向への負荷が作用しない。前述したように、離脱押圧部305cと被押圧部5eは、撮影光軸Oと平行な方向への力を伝達しない形状の面として形成されているため、仮に離脱押圧突起21bによって押圧された離脱駆動レバー305が回動軸50の軸線に沿う方向に若干量移動しても、3群枠5が回動軸35の軸線に沿う方向に押圧されることがない。これにより、3群枠5や防振枠301の支持機構への負荷を軽減させ、第3レンズ群LG3の高精度な駆動が保証される。
離脱駆動レバー305を介在させることで、離脱押圧突起21bによる光軸方向の押圧力が3群枠5や防振枠301へ直接的に作用しない構成になっているため、防振枠301とセンサホルダ304の間にガイドボール302を挟持させるための引張バネ303の付勢力は、離脱押圧突起21bからの押圧力による負荷変動を考慮に入れずに設定することができる。具体的には、引張バネ303の付勢力が強すぎると、防振枠301を駆動するボイスコイルモータに対する負荷が大きくなってしまい、引張バネ303の付勢力が小さすぎるとガイドボール302が脱落するおそれがあるので、そのバランスに留意して引張バネ303の付勢力を設定すればよい。仮に、本実施形態と異なり離脱押圧突起21bによる光軸方向の押圧力が防振枠301へ作用するような構成であると、引張バネ303で設定した上記のような付勢力のバランスが崩れてしまうが、本実施形態の構成によれば、そのような不具合を避けることができる。
また、離脱押圧突起21bによって押圧される離脱駆動レバー305は、防振枠301の移動に応じて回動軸35の位置を変化させる3群枠5とは異なり、3群支持環8に対する位置が変化しない3群支持環8上の回動軸50に支持されているため、防振枠301の移動位置に影響されることなく離脱押圧突起21bとの位置関係を一定に保つことができる。これにより、離脱駆動レバー305の被押圧部305dと離脱押圧突起21bの端面カム21cの相対位置がずれることがなく、離脱駆動レバー305を高精度に駆動することができる。離脱駆動レバー305と3群枠5の間の当接箇所は、離脱駆動レバー305の回動半径方向に向く平面状の離脱押圧部305cと、円筒状外面の突起部である被押圧部5eによって構成されているため、防振枠301の防振用移動によって3群枠5の位置が変化しても、挿入許容位置から離脱強制位置への離脱駆動レバー305の回動に際して離脱押圧部305cを被押圧部5eに確実に当接させ、3群枠5を離脱位置まで回動させることができる。
防振レンズブロック80では、第3レンズ群LG3は3群支持環8に対して固定的に支持されているのではなく、第3レンズ群LG3を支持する3群枠5が防振枠301上に軸支され、さらに防振枠301が3群支持環8内において光軸直交平面内で移動可能に支持されるという多段階の支持構造になっている。そのため、各可動部の精度誤差が累積して第3レンズ群LG3の位置ずれ、特に撮像光学系全体の撮影光軸Oに対する第3レンズ群LG3の光軸の傾き(倒れ)が生じやすくなる。第3レンズ群LG3の光学的精度を確保するために、防振レンズブロック80は、撮影光軸Oに対する第3レンズ群LG3の傾き調整を行う傾き調整(チルト)機構を備えている。本実施形態の傾き調整機構はシャッタユニット100とレンズユニット81を一体的に傾動させるものであり、シャッタユニット100とレンズユニット81を合わせた一体的な傾動部分をチルトユニット82と呼ぶ。
傾き調整機構の構成要素として、3群支持環8内には、シャッタユニット100の前方に位置させて前方板7が取り付けられる。図5や図9に示すように、前方板7は光路を形成する開口7aを中央に有するフランジ状の部材であり、金属製の板材を加工して形成されている。前方板7には、光軸方向に貫通する複数の位置決め孔7bと、周方向位置の異なる3つの係合部7cが形成される。各係合部7cは、光軸方向後方に突出する矩形の薄板部上に径方向へ貫通する係合孔を形成した構成である。3群支持環8の前端側の外周面上には、前方板7の3つの係合部7cに対応する周方向の位置関係で3つの係合部8fが形成されている。各係合部8fは、各係合部7cの矩形の薄板部が係合する形状の凹部と、この凹部の底面に形成した係合突起によって構成されている。係合部8fの凹部に対して係合部7cの薄板部を係合させ、かつ係合部8fの係合突起を係合部7cの係合孔に係合させることで、3群支持環8の前端部付近に前方板7が取り付けられる。この係合部7cと係合部8fの係合によって、前方板7は3群支持環8に対する光軸方向の相対移動と、周方向への相対回動が規制される。前方板7の外周部は3群支持環8の内周面に対してガタなく当接しており、3群支持環8の径方向への前方板7の相対移動も規制される。つまり、前方板7は3群支持環8に対して固定的に支持される。
シャッタユニット100には、シャッタハウジング100aの外周面上に3つの支持突起(傾動支持部)100eが形成され(図10、図11)、シャッタハウジング100aの前面に、複数の位置決め突起100fと3つのバネ挿入孔100gが形成されている(図5、図6)。3つの支持突起100eは、3群支持環8の筒状部8cの内側に形成した3つの支持溝(傾動支持部)8g(図5、図9にそれぞれ1つ見えている)に支持される。各支持溝8gは光軸方向に向けて延びており、各支持突起100eとの係合関係によって、3群支持環8内でのシャッタユニット100の回転が規制される。図5に示すように、シャッタユニット100の各バネ挿入孔100gには圧縮バネ(第2の付勢部材)9が挿入されている。圧縮バネ9は、前端部を前方板7に当接させ、後端部をバネ挿入孔100gの底面に当接させた状態で圧縮変形されており、シャッタユニット100を前方板7から離れる方向、すなわち光軸方向後方に向けて付勢している。
シャッタユニット100に設けた複数の位置決め突起100fが、前方板7の複数の位置決め孔7bに係合して、前方板7に対するシャッタユニット100の概略位置が決まる。但し、位置決め突起100fと位置決め孔7bは遊嵌しており、前方板7に対するシャッタユニット100の傾動を妨げない。シャッタユニット100の前部には、フレキシブル基板90を固定させる半田付け部100hが設けられており、前方板7は半田付け部100hを露出させる切欠部7d(図4、図5)を有している。3群支持環8の前端にはさらに、前方板7の前部を覆う遮光板20(図3)が設けられる。
図5、図6、図9ないし図14に示すように、レンズユニット81を構成するセンサホルダ(傾動部材)304には、ホルダ本体部304aの外周部に支点突起(支点部)304kが設けられている。図12ないし図14に示すように、支点突起304kは、3群支持環8の内周面に形成した支点当接部8hに当接して光軸方向後方への移動が規制される。支点当接部8hは光軸方向に延びる溝の後端部として形成されている。センサホルダ304にはさらに、2つのネジ当接部304m、304nが形成されている。ネジ当接部304m、304nは、光軸方向後方に向く平面部として形成されている。図10及び図11に示すように、支点突起304kと2つのネジ当接部304m、304nは、シャッタユニット100における3つの支持突起100eや、3本の引張バネ303に近い周方向位置に設けられている。
図8や図9に示すように、3群支持環8の筒状部8cの後端部付近の内周面上に、内径方向に突出する後部フランジ(フランジ部)8iが形成されている。3群支持環8の内側にはさらに、センサホルダ304のネジ当接部304e、304fの後方に位置するネジ支持部8j、8kが形成されている。ネジ支持部8j、8kは後部フランジ8iの一部として形成され、光軸方向へ貫通するネジ孔を内部に有する円筒状の形状をなしている。ネジ支持部8j、8kの前端部は撮影光軸Oと略直交する平面になっており、該平面上にネジ孔に連通する前方開口8mが形成されている(図5)。図5ではネジ支持部8jの前方開口8mのみが示されているが、ネジ支持部8kの前端部にも同様に前方開口8mが形成されている。ネジ支持部8j、8kのネジ孔は後部フランジ8iを貫通して光軸方向後方に開口しており、該ネジ孔に対して後方から調整ネジ309が螺合する。調整ネジ309は、ネジ支持部8j、8kのネジ孔に螺合する軸部の一端部にネジ先端309aを有し、他端部にネジ頭部309bを有し、ネジ先端309aを前方に向けて各ネジ孔に挿入される。ネジ頭部309bは軸部よりも大径であり、回転操作用の工具が係合可能な十字溝を有する。以下では、ネジ支持部8jに螺合する側を調整ネジ309T1、ネジ支持部8kに螺合する側を調整ネジ309T2とする。各調整ネジ309T1、309T2は、対応するネジ支持部8j、8kのネジ孔に軸部を螺合させ、前方開口8mを通してネジ先端309aを前方に突出させる。調整ネジ309T1のネジ先端309aは、ネジ支持部8jの前方に位置するセンサホルダ304のネジ当接部304mに当接し、調整ネジ309T2のネジ先端309aは、ネジ支持部8kの前方に位置するセンサホルダ304のネジ当接部304nに当接する。ネジ先端309aは半球状の突出形状をなし、ネジ当接部304m、304nに対して点接触する。ネジ当接部304mとネジ当接部304nはそれぞれ、調整ネジ309T1と調整ネジ309T2に当接することで光軸方向後方への移動が規制される。
つまり、センサホルダ304は、支点突起304kを3群支持環8の支点当接部8hに当接させ、ネジ当接部304mとネジ当接部304nを調整ネジ309T1と調整ネジ309T2に当接させることで、光軸方向後方への移動が規制される。センサホルダ304を含むレンズユニット81には、前方板7とシャッタユニット100の間に配した3つの圧縮バネ9によって光軸方向後方への付勢力が作用しており、この付勢力によってセンサホルダ304の3箇所(支点突起304k、ネジ当接部304m、ネジ当接部304n)が3群支持環8側の3箇所(支点当接部8h、調整ネジ309T1、調整ネジ309T2)に当て付けられて、レンズユニット81の光軸方向位置が決まる。センサホルダ304はシャッタユニット100に結合されているため、レンズユニット81とシャッタユニット100を含むチルトユニット82全体の光軸方向位置が決まる。
以上の構成の防振レンズブロック80では、調整ネジ309T1と調整ネジ309T2の締め付け量を調整して各調整ネジ309T1、309T2のネジ先端309aの位置を光軸方向に変化させることによって、撮影光軸Oに対するチルトユニット82の傾きを任意に調整することができる。この調整は、3群支持環8の後端側に露出している各調整ネジ309T1、309T2のネジ頭部309bの十字溝にドライバなどの工具を係合させて行う。図13と図14は、図12の状態を基準として調整ネジ309T1を光軸方向に前後させた状態を示すである。図13は、図12の基準位置から調整ネジ309T1をねじ込んで光軸方向前方に進めた状態であり、調整ネジ309T1のネジ先端309aがネジ当接部304mを前方へ押し込み、センサホルダ304が、支点突起304kと支点当接部8hの当接箇所を支点として、ネジ当接部304mを前方に変位させて傾いている。図13のようにシャッタユニット100の前面が前方板7に当接すると、チルトユニット82のそれ以上の前方への傾き動作が規制される。
図14は、図12の基準位置から調整ネジ309T1を緩めて光軸方向後方に移動させた状態であり、圧縮バネ9の付勢力によってネジ当接部304mが調整ネジ309T1に追随して後方へ移動され、センサホルダ304が、支点突起304kと支点当接部8hの当接箇所を支点として、ネジ当接部304mを後方に変位させて傾いている。なお、3群支持環8内におけるレンズユニット81を含むチルトユニット82の後方への移動限界は、センサホルダ304がネジ支持部8j、8kの前端部に当接することで決まる。調整ネジ309T1、309T2を後方に所定量以上移動させた場合や、ネジ支持部8j、8kから調整ネジ309T1、309T2を取り外した場合は、センサホルダ304がネジ支持部8jやネジ支持部8kの前端部に当接して、チルトユニット82の後方への過度な移動や脱落が防止される。図12ないし図14に示すように、防振枠301の橋絡部301kの後方に後部フランジ8iが位置しているが、3群支持環8内でチルトユニット82を後方に移動させたときは、橋絡部301kが後部フランジ8iに当接するよりも前に、センサホルダ304がネジ支持部8jやネジ支持部8kの前端部に当接する。
図13や図14のようにセンサホルダ304が傾くと、引張バネ303を介してセンサホルダ304と結合された防振枠31や、前方アーム部304b及び係合凹部304cと係合溝100c及び係合突起100dを介してセンサホルダ304と結合されたシャッタユニット100も同様に傾き、撮影光軸Oに対するチルトユニット82全体の角度が変化する。その結果、3群枠5上の第3レンズ群LG3の光軸の角度が調整される。図13と図14は調整ネジ309T1の光軸方向位置を変化させた場合を示しているが、調整ネジ309T2の光軸方向位置を変化させた場合も同様に、該調整ネジ309T2のネジ先端309aが当接するネジ当接部304nの位置が前後に変化し、支点突起304kと支点当接部8hの当接箇所を支点として、撮影光軸Oに対するチルトユニット82の角度が変化する。図10及び図11に示すように、支点突起304kと支点当接部8hの当接箇所、調整ネジ309T1とネジ当接部304mの当接箇所、調整ネジ309T2とネジ当接部304nの当接箇所の3点を結ぶ三角形で囲まれる領域内に撮影光軸Oが位置しており、調整ネジ309T1と調整ネジ309T2を適宜組み合わせて回転操作することにより、3群枠5が挿入位置にある状態での第3レンズ群LG3の傾きの方向や傾きの大きさ(角度)を任意に設定することができる。
防振レンズブロック80では、第3レンズ群LG3とシャッタSが光軸方向に極めて接近した位置関係にあるが、レンズユニット81とシャッタユニット100を一体的にチルトユニット82として傾き調整することにより、第3レンズ群LG3とシャッタSの相対的な位置関係に変化が生じず、傾き調整を起因とした第3レンズ群LG3とシャッタSの相互干渉を防ぐことができる。換言すれば、傾き調整による影響を考慮することなく、第3レンズ群LG3とシャッタSの位置関係を設定することができる。
また、チルトユニット82の傾き調整は、3群支持環8の後端側にネジ頭部309bを露出させて光軸方向に進退する調整ネジ309T1、309T2によって行うため、防振レンズブロック80が完成した状態でも容易に調整作業を行うことが可能である。特に本実施形態のズームレンズ鏡筒10では、撮像素子ホルダ21を取り外すだけで調整ネジ309T1、309T2のネジ頭部309bにアクセス可能となるため、防振レンズブロック80を取り外すことなく傾き調整が可能である。また、調整ネジ309T1、309T2は光軸方向に軸線を向けているため、チルトユニット82を内蔵する3群支持環8の径サイズを増大させることもない。なお、図示実施形態の防振レンズブロック80では、3群支持環8内でシャッタユニット100が光軸方向前方に位置し、レンズユニット81が光軸方向後方に位置しているが、この前後関係を逆にした構成も可能である。この場合、調整ネジ309T1、309T2を光軸方向前方から3群支持環8内に挿入し、前方から調整ネジ309T1、309T2を回転操作する態様にすることもできる。
レンズユニット81では、防振枠301に対して3群枠5が回動軸35を中心として挿入位置と離脱位置に回動可能に支持されており、ストッパ301iに対してストッパ当接部5dが当接して挿入位置が決められる。この支持構造では、ストッパ当接部5dがストッパ301iに当接する箇所と回動軸35とを通る仮想平面PG(図10、図11)に対して交差する方向への3群枠5の傾きが発生しやすくなる。図10及び図11に示すように、チルトユニット82の傾き調整の支点(支点突起304kと支点当接部8hの当接箇所)が仮想平面PGに近い位置に設定され、傾き調整を行わせる前後への変位の入力が行われる2箇所(調整ネジ309T1とネジ当接部304mの当接箇所と、調整ネジ309T2とネジ当接部304nの当接箇所)が、仮想平面PGを挟んだ一方と他方の領域に分けて配置されている。この配置によって、仮想平面PGに交差する方向へ傾きやすい傾向にある第3レンズ群LG3の光軸調整を、効率良くかつ精度良く行うことができる。
レンズユニット81では、3群枠5を回動させて行う第3レンズ群LG3の挿脱動作に加えて、防振枠301を光軸直交面内で移動させる防振動作も行われ、防振枠301をセンサホルダ304に対して保持させる3つの引張バネ303がセンサホルダ304の外周部に沿って配置されている。図10及び図11に示すように、チルトユニット82の傾き調整用の3つの当接箇所(支点突起304kと支点当接部8hの当接箇所、調整ネジ309T1とネジ当接部304mの当接箇所、調整ネジ309T2とネジ当接部304nの当接箇所)は、撮影光軸Oを中心とする径方向位置がこの3つの引張バネ303と概ね同じであり、該3つの引張バネ303と干渉しない範囲で各引張バネ303に近い周方向位置に配置されている。さらに、3つの引張バネ303と傾き調整用の3つの当接箇所の間の周方向スペースには、仮想平面PXを挟んだ一方の領域(図10及び図11の上側の領域)に、防振駆動用のボイスコイルモータを構成する永久磁石311、312及びコイル313、314や磁気センサ315、316が配置され、仮想平面PXを挟んだ他方の領域(図10及び図11の下側の領域)に、3群枠5を軸支する回動軸35や、3群枠5を離脱駆動させる離脱駆動レバー305が配置されている。すなわち、チルトユニット82の傾き調整用の機構と、第3レンズ群LG3に対する防振駆動用の機構と、第3レンズ群LG3に対する挿脱駆動用の機構が、3群支持環8の内周面に沿ってスペース効率良く配置されている。
以上、図示実施形態に基づき説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図示実施形態の防振レンズブロック80は、第3レンズ群LG3を防振駆動させる防振機構と、撮影を行わない収納状態で撮影光軸Oに対する離脱位置へ移動させる挿脱機構を備えているが、防振機構が省略されて第3レンズ群LG3の挿脱機構のみを備える光学手段の支持構造にも本発明は適用が可能である。この場合は、図示実施形態における防振枠301を、センサホルダ304やシャッタユニット100を介さずに、直接的に3群支持環8内に傾動可能に支持させ、この防振枠301に対して圧縮バネ9の付勢力を付与すると共に調整ネジ309を当接させるような構成となる。
また、図示実施形態では、チルトユニット82の傾き調整に2つの調整ネジ309(309T1、309T2)を用いている。これは調整ネジの数を少なして構成の簡略化を図るという点で好ましい構成であるが、本発明は3つ以上の調整ネジを用いて傾き調整する態様を排除するものではない。その場合も、少なくとも2つの調整ネジが仮想平面PGを挟んだ両側に分けて配置されるという要件を満たしていればよい。