図1はカメラに内蔵される沈胴式のズームレンズ鏡筒1の内部構造を示したものであり、具体的にはズームレンズ鏡筒1の収納(沈胴)状態を表している。以下の説明では、ズームレンズ鏡筒1における撮影光学系の撮影光軸Oに沿う方向を光軸方向と呼び、光軸被写体側を前方、像側を後方と定義する。また、撮影光軸Oを軸とした円周方向を周方向と定義する。
ズームレンズ鏡筒1の撮影光学系は、被写体側から順に第1レンズ群L1、第2レンズ群L2、第3レンズ群(防振用光学要素)L3及び第4レンズ群L4を有し、第1レンズ群L1から第3レンズ群L3までの3つの群は不図示のズームモータの駆動により位置制御され、第4レンズ群L4は不図示のフォーカシングモータの駆動により位置制御される。第4レンズ群L4の後方には撮像素子17が配置されている。
ズームレンズ鏡筒1は、図示を省略する筒状のハウジングを有し、ハウジング内にカム環11が支持されている。カム環11とハウジングの間には、ズームレンズ鏡筒1の繰り出し状態で外観を構成する外観筒(図示略)が設けられている。カム環11はズームモータの駆動に応じて周方向に回転駆動される。カム環11の外面にはガイド突起11aが設けられ、ガイド突起11aがハウジングの内周面に形成したガイド溝に対して摺動可能に嵌っている。ガイド溝はリード溝やカム溝からなり、ガイド突起11aがガイド溝に案内されることによりカム環11の光軸方向の位置が制御される。ズームレンズ鏡筒1が図1の収納状態から撮影状態に変化するとき、カム環11は光軸方向前方に回転繰出される。
カム環11の内側には周方向へ延びる結合溝11bが形成され、結合溝11bに対して直進案内環10の結合突起10aが摺動可能に嵌っている。結合溝11bと結合突起10aの嵌合により、カム環11と直進案内環10は光軸方向での相対移動が規制され(光軸方向へ共に移動し)、相対回転は可能な関係にある。直進案内環10はハウジングの内周面に形成された光軸方向への長溝(不図示)に対して摺動可能に嵌っており、直進案内環10はハウジングに対する回転が規制され、光軸方向にのみ移動可能に直進案内される。
図2、図19及び図20に示すように、直進案内環10には周方向位置を異ならせて3つの直進案内溝10bが形成されている。各直進案内溝10bは光軸方向に延びる長溝であり、径方向に貫通している。各直進案内溝10bに対して3群移動環8の直進案内キー8aが光軸方向へ摺動可能に嵌っており、直進案内溝10bと直進案内キー8aの関係によって3群移動環8が光軸方向へ可動に直進案内される。各直進案内キー8aの内側には支持溝8b(図2)が形成されており、各直進案内キー8aの外面上にカムフォロアCF3が突設されている。各カムフォロアCF3は、カム環11の内周面に形成したカム溝CG3に対して摺動可能に嵌っており、カム環11が回転すると、カムフォロアCF3がカム溝CG3の案内を受けて3群移動環8の光軸方向位置が制御される。
図2、図15ないし図20に示すように、3群移動環8内には防振レンズユニット14とシャッタユニット16が支持される。防振レンズユニット14の詳細は後述するが、防振レンズユニット14内には防振枠(防振移動部材)18と挿脱枠20を介して第3レンズ群L3が保持されている。
図1に示すように、第1レンズ群L1は1群筒12の内部に保持され、第2レンズ群L2は2群筒13の内部に保持されている。2群筒13は直進案内環10を介して光軸方向に直進移動可能に案内されており、1群筒12も同様に光軸方向に直進移動可能に案内されている。1群筒12はカム環11の外側に位置する外観筒であり、カム環11の外周面に形成したカム溝CG1に対して1群筒12に設けたカムフォロアCF1が摺動可能に嵌っている。また、2群筒13はカム環11の内側に位置しており、カム環11の内周面に形成したカム溝CG2に対して2群筒13に設けたカムフォロアCF2が摺動可能に嵌っている。カム環11が回転すると、カムフォロアCF1がカム溝CG1の案内を受けて1群筒12の光軸方向位置が制御され、カムフォロアCF2がカム溝CG2の案内を受けて2群筒13の光軸方向位置が制御される。
3群移動環8内に支持される第3レンズ群L3は、撮影光軸O上の光路に対する挿脱動作と、光路上で撮影光軸Oと直交する平面に沿って所定の範囲で移動する防振動作が可能な光学要素である。第3レンズ群L3の支持駆動機構の詳細を以下に説明する。
3群移動環8は撮影光軸Oを囲む筒状部8cを有し、筒状部8cの内側には内径方向に突出する内側フランジ8dが周方向に部分的に(間欠的に)形成されており、内側フランジ8dの前側に防振レンズユニット14が支持され、内側フランジ8dの後側にシャッタユニット16が支持される。図2、図15及び図19に示すように、内側フランジ8dには、光軸方向前方に向けて開口するそれぞれ3つのネジ螺合孔8e及びバネ収納凹部8fと、光軸方向前方に突出する軸突起8gが形成されている。
図3に示すように、防振レンズユニット14は、光軸方向前方に位置するセンサホルダ(ベース部材)22と光軸方向後方に位置するコイル台座24の間に防振枠18と挿脱枠20を保持した構造である。図3、図7、図9及び図10に示すように、センサホルダ22は概ね撮影光軸Oと直交する板状の本体部を有しており、撮影光軸Oが通る中央部に内側開口22aを有する。センサホルダ22の周方向の一部は、内側開口22aがセンサホルダ22の外周部分まで連通した開放部22a-1になっており、開放部22a-1に近いセンサホルダ22の内周部に、内側開口22aをさらに外径方向に向けて切り欠いた形状の内周逃げ部22bが形成されている。センサホルダ22の前面側には有底の凹部である第1センサ保持部22cと第2センサ保持部22dが形成されている。
図10に示すように、センサホルダ22のうち防振枠18に対向する後面側には、周方向に位置を異ならせて3つのボール支持凹部(移動規制凹部、第1の凹部)22eが形成されている。各ボール支持凹部22eの周囲には、ボール支持凹部22eよりも開口面積の大きい逃げ凹部22fが形成されている。3つのボール支持凹部22eと逃げ凹部22fは、撮影光軸Oから概ね等距離に位置し、撮影光軸Oを中心とする周方向に概ね等間隔(約120度の間隔)で配置されている。ボール支持凹部22eと逃げ凹部22fはそれぞれ、撮影光軸Oと直交する底面を有する有底の凹部であり、光軸方向後方に向けて開口している。3つのボール支持凹部22eはいずれも底面を囲む内周壁が円筒状をなしている。3つの逃げ凹部22fのうち1つはボール支持凹部22eと略同心の円筒状の内周壁を有し、残る2つの逃げ凹部22fの内周壁は、撮影光軸Oと直交する平面内において概ね正方形をなす角筒状をなしている。後者の角筒状の逃げ凹部22fを、移動規制凹部(第2の凹部)22f-1と呼ぶ。
センサホルダ22の外周部近傍には、光軸方向に貫通する2つのネジ挿通孔22gが形成されている。2つのネジ挿通孔22gは光軸方向において略同じ位置にある。センサホルダ22の外周部には、撮影光軸Oを挟んで略対称の位置関係にある2つのバネ掛け突起22hと、光軸方向後方に突出する複数(4つ)の係合片22iと、各係合片22iよりも小さい突出量で光軸方向後方に突出する複数の当付部22jが設けられている。各係合片22iの端部には、撮影光軸Oに接近する内径方向への爪が形成されている。センサホルダ22はさらに、光軸方向へ貫通する2つの位置決め孔22kを有する。
図3ないし図6、図11ないし図14に示すように、コイル台座24は撮影光軸Oを囲む枠状体であり、センサホルダ22の内側開口22aに対応する形状の内側開口24aが形成され、センサホルダ22の内周逃げ部22bに対応する位置に内周逃げ部24bが形成されている。センサホルダ22と同様に、コイル台座24の周方向の一部は内側開口24aに続く開放部24a-1によって開放されているが、開放部24a-1の後部が橋絡部24cによって接続されている。橋絡部24cは撮影光軸Oと略直交する板状の遮光板部24dを有する。図6、図12及び図14に示すように、遮光板部24dは光軸方向の肉厚が異なる厚肉部分と薄肉部分を有し、厚肉部分に光軸方向へ貫通するネジ挿通孔24eが形成されている。図11、図13及び図17に示すように、撮影光軸Oに沿って見ると、コイル台座24におけるネジ挿通孔24e(の中心)と、センサホルダ22における2つのネジ挿通孔22g(の中心)は、概ね撮影光軸Oを囲む正三角形の頂点に位置している。換言すれば、計3つのネジ挿通孔22g、24eが撮影光軸Oを中心とする周方向に略等間隔で配置されている。但し、2つのネジ挿通孔22gが同じ光軸方向位置にあるのに対し、ネジ挿通孔24eはネジ挿通孔22gに対して光軸方向後方にオフセットした位置にある(図18参照)。
図3に示すように、コイル台座24の前面側には有底の凹部である第1コイル支持部24fと第2コイル支持部24gが形成されている。第1コイル支持部24fと第2コイル支持部24gはそれぞれ撮影光軸Oと略直交する底面を有する凹部であり、第1コイル支持部24fの底面から光軸方向前方に向けて一対の支持突起24hが突出形成され、第2コイル支持部24gの底面から光軸方向前方に向けて一対の支持突起24iが突出形成されている。
図3ないし図6に示すように、コイル台座24の外周部の複数箇所に光軸方向前方に突出する当付部24jが設けられている。当付部24jの一つには、光軸方向前方に突出する位置決め突起24kが形成されている。第1コイル支持部24fと第2コイル支持部24gの間には、光軸方向前方に突出する位置決め突起24mが設けられている。また、コイル台座24の外周部から外径方向に向けて、周方向に略等間隔で3つの支持突起24nが突設されている。
防振枠18は撮影光軸Oを囲む枠状体であり、センサホルダ22の内側開口22aとコイル台座24の内側開口24aに連通する内側開口18aを有し、内周逃げ部22bと内周逃げ部24bに対応する位置に軸支部18bが設けられている。軸支部18bには軸支持孔18cが光軸方向に貫通形成されている。コイル台座24と同様に、防振枠18の周方向の一部は内側開口18aが外周部分まで連通した開放部18a-1となっているが、図3ないし図7、図9、図10、図15などに示すように、開放部18a-1の前部が光軸方向前方に向けてオフセットした形状の橋絡部18dによって接続されている。防振枠18にはさらに、コイル台座24の位置決め突起24mを挿入可能な逃げ孔18eが形成されている。
図3ないし図5、図9、図10に示すように、防振枠18には、第1センサ保持部22cと第1コイル支持部24fに対向する位置に第1磁石保持部18fが形成され、第2センサ保持部22dと第2コイル支持部24gに対向する位置に第2磁石保持部18gが形成されている。
図3、図4、図5、図8及び図9に示すように、防振枠18のうちセンサホルダ22に対向する前面側には、位置を異ならせて3つのボール支持筒部(転動体収納部)18hが形成されている。3つのボール支持筒部18hは、撮影光軸Oから概ね等距離に位置し、かつ撮影光軸Oを中心とする周方向に概ね等間隔(約120度の間隔)で配置されており、それぞれのボール支持筒部18hはセンサホルダ22のボール支持凹部22eに対向する位置関係にある。各ボール支持筒部18hは光軸方向前方に突出する円筒形状をなし、光軸方向の前端部が開口し、光軸方向の後端部に底面を有する。各ボール支持筒部18hの内部には球状の転動体であるガイドボール28が転動可能に支持される。図8に示すように、各ガイドボール28は、ボール支持筒部18hの底面に当接した状態で該ボール支持筒部18hの先端(前端)よりも前方に突出する直径に設定されており、センサホルダ22におけるボール支持凹部22eの底面に当接して挟持される。以下では、ガイドボール28を挟持するボール支持筒部18hの底面とボール支持凹部22eの底面をそれぞれボール当接面と呼ぶ。これらのボール当接面はいずれも撮影光軸Oと略直交する平滑な平面である。ガイドボール28は光軸直交方向にはボール支持筒部18h内に遊嵌しており、ガイドボール28はボール支持筒部18h内の中央付近に位置するときにはボール支持筒部18hの内周壁に当接しない(図8参照)。
防振枠18の外周部には2つのバネ掛け突起18iが設けられている。各バネ掛け突起18iはセンサホルダ22に設けたバネ掛け突起22hと光軸方向に対向する位置にあり、各バネ掛け突起18iと各バネ掛け突起22hの間に引張バネ30が張設されている。防振枠18は、2つの引張バネ30の付勢力によってセンサホルダ22に接近する方向(前方)に付勢され、3つのボール支持筒部18hのボール当接面を3つのガイドボール28に当接させることで、センサホルダ22に対する防振枠18の前方への移動が規制される。この状態で各ボール支持筒部18hのボール当接面は対応するガイドボール28に対してそれぞれ点接触しており、この点接触部分を摺接させることで(もしくは、ガイドボール28がボール支持筒部18hの内周壁に当接していないときはガイドボール28を転動させながら)、防振枠18は撮影光軸Oと直交する方向へ自在に移動可能になっている。
図8に示すように、ガイドボール28を挟んで防振枠18とセンサホルダ22を結合させた状態で、各移動規制凹部22f-1の内壁面と各ボール支持筒部18hの外周面との間にクリアランスD1があり、各ボール支持筒部18hの外周面を各移動規制凹部22f-1の内壁面(内側規制面)に当接させるまでの範囲で、防振枠18がセンサホルダ22に対して撮影光軸Oと直交する平面内で自在に移動することができる。移動規制凹部22f-1ではない円筒状の内周壁を有する一つの逃げ凹部22fとボール支持筒部18hの間には、クリアランスD1よりも大きなクリアランスが確保されており、防振枠18の可動範囲内では互いに当接することがない。
防振枠18を可動に支持したセンサホルダ22の後部にコイル台座24が固定される。このとき、2つの位置決め孔22kに対して位置決め突起24kと位置決め突起24mを嵌合することによって位置決めしつつ、センサホルダ22の後面を当付部24jに対して当接させ、コイル台座24の前面を当付部22jに当接させることで、センサホルダ22とコイル台座24の光軸方向の間隔が定まる。さらにセンサホルダ22の係合片22iの先端の爪をコイル台座24の後面に係合させることで、センサホルダ22とコイル台座24の光軸方向の離間が規制される(図12、図14参照)。
組み合わせた状態のセンサホルダ22とコイル台座24は、防振枠18の移動を妨げない形状になっている。例えば、防振枠18において軸支部18bは前後方向に突出し、橋絡部18dは前方に突出しているが、軸支部18bは内周逃げ部22bと内周逃げ部24bの内側に所定のクリアランスをもって位置し(図4、図7、図11及び図13参照)、橋絡部18dは開放部22a-1の間に所定のクリアランスをもって位置している(図7参照)。また、防振枠18の逃げ孔18eとコイル台座24の位置決め突起24mの間にもクリアランスが確保されている。これらの各部のクリアランスは、先に述べたボール支持筒部18hと移動規制凹部22f-1の間のクリアランスD1よりも大きく設定されており、センサホルダ22やコイル台座24に対する撮影光軸Oと直交する平面内での防振枠18の移動は、ボール支持筒部18hと移動規制凹部22f-1以外の箇所で制限されることがない。
防振枠18を挟んでセンサホルダ22とコイル台座24を組み合わせた状態で、それぞれの内側開口18a、22a及び24aが光軸方向に連通して、後述する挿脱枠20の可動空間を形成する。また、光軸方向前方にオフセットした形状の防振枠18の橋絡部18dと、光軸方向後方にオフセットした形状のコイル台座24の橋絡部24cの間に、後述する離脱位置に回動した挿脱枠20を収納させる収納空間が形成される。
防振枠18は電磁アクチュエータによって駆動される。電磁アクチュエータは、防振枠18に支持される2つの永久磁石31、32と、コイル台座24に支持される2つのコイル33、34を有するボイスコイルモータである。図3、図10、図11及び図13に示すように、永久磁石31と永久磁石32の形状及び大きさは略同一であり、それぞれ細長矩形の薄板状をなしている。永久磁石31は第1磁石保持部18fの凹部内に嵌合保持され、永久磁石32は第2磁石保持部18gの凹部内に嵌合保持されている。永久磁石31と永久磁石32はそれぞれ、短手方向の略中央を通り長手方向に向く磁力境界線Q1、Q2(図11、図13)で分割される半割領域の一方がN極で他方がS極となっている。第1磁石保持部18fと第2磁石保持部18gによる保持状態で、永久磁石31とコイル33は、撮影光軸Oを含む基準平面P1(図11、図13)に関して対称の関係で配置される。永久磁石31と永久磁石32は、基準平面P1に対して、防振レンズユニット14の外縁側(撮影光軸Oから遠い側)から内径側(撮影光軸Oに近い側)に向かうにつれて互いの磁力境界線Q1、Q2の間隔を大きくする傾きを持たせて配置されており、基準平面P1に対する磁力境界線Q1と磁力境界線Q2の傾き角は正逆で約45度に設定されている。つまり、永久磁石31と永久磁石32は互いの磁力境界線Q1、Q2を略直交させる関係にある。
図3、図11及び図13に示すように、コイル33、34は、略平行な一対の長辺部と該長辺部を接続する一対の湾曲部を有する空芯コイルであり、その形状及び大きさは略同一である。コイル33は空芯部33aに一対の支持突起24hを挿入させて第1コイル支持部24f上に保持され、コイル34は空芯部34aに一対の支持突起24iを挿入させて第2コイル支持部24g上に保持される。第1コイル支持部24fと第2コイル支持部24gによる保持状態で、コイル33の長辺(長軸)方向が永久磁石31の磁力境界線Q1と略平行になり、コイル34の長辺(長軸)方向が永久磁石32の磁力境界線Q2と略平行になる。防振枠18が防振機構による駆動範囲の中央に位置する状態(振れ補正動作を行なっていない光学設計上の初期位置にある状態)で、図11や図13のように撮影光軸Oに沿って見て、コイル33において長辺部と平行で空芯部33aを通る長軸が永久磁石31の磁力境界線Q1と略一致しており、コイル34において長辺部と平行で空芯部34aを通る長軸が永久磁石32の磁力境界線Q2と略一致している。すなわちコイル33、34は、基準平面P1に対して、防振レンズユニット14の外縁側(撮影光軸Oから遠い側)から内径側(撮影光軸Oに近い側)に向かうにつれて互いの長軸(長辺部)の間隔を大きくする傾きを持たせて配置されており、基準平面P1に対するコイル33とコイル34の長軸の傾斜角は、正逆で約45度に設定されている。つまり、コイル33とコイル34は互いの長軸を略直交させる関係にある。コイル33、34はフレキシブル基板を介してカメラの制御基板に接続されていて、制御基板上の制御回路によってコイル33とコイル34の通電制御が行われる。
以上の構成の電磁アクチュエータでは、永久磁石31とコイル33が光軸方向に対向しており、コイル33に通電すると、撮影光軸Oと直交する平面内で磁力境界線Q1(コイル33の長軸)と略直交する方向への推力が作用する。この推力の作用方向をY軸とする(図11、図13)。また、永久磁石32とコイル34が光軸方向に対向しており、コイル34に通電すると、撮影光軸Oと直交する平面内で磁力境界線Q2(コイル34の長軸)と略直交する方向への推力が作用する。この推力の作用方向をX軸とする(図11、図13)。X軸とY軸はいずれも基準平面P1に対して約45度の角度で交差する関係(互いに略直交する関係)にあり、各コイル33、34への通電制御によって、撮影光軸Oと直交する平面内で防振枠18を移動させることができる。図11や図13に示すように、防振枠18が可動範囲の中央に位置する状態で、永久磁石31とコイル33の中心(長手方向と短手方向の両方の中央)を通りY軸に沿う線と、永久磁石32とコイル34の中心(長手方向と短手方向の両方の中央)を通りX軸に沿う線の交点は、撮影光軸O上に位置する。
センサホルダ22の第1センサ保持部22cと第2センサ保持部22dにはそれぞれ、防振枠18上の永久磁石31の前方に位置する磁気センサ35と、永久磁石32の前方に位置する磁気センサ36が組み付けられる(図7、図11及び図13参照)。磁気センサ35と磁気センサ36はカメラの制御基板に接続するフレキシブル基板50(図2、図3、図15、図17)上に支持されており、センサホルダ22の前面側に取り付けられたフレキシブル基板50は押さえ板51によって保持される。磁気センサ35と磁気センサ36はホールセンサであり、電磁アクチュエータによる防振枠18の移動に応じて永久磁石31の位置が変化すると磁気センサ35の出力が変化し、永久磁石32の位置が変化すると磁気センサ36の出力が変化し、この2つの磁気センサ35、36の出力変化によって、防振枠18の位置を検出することができる。図11や図13に示すように、防振枠18が可動範囲の中央に位置する状態で、磁気センサ35は永久磁石31の中心に対向して位置しており、磁気センサ36は永久磁石32の中心に対向して位置している。そして、磁気センサ35によって防振枠18の位置検出が行われるY軸方向の線と、磁気センサ36によって防振枠18の位置検出が行われるX軸方向の線の交点が撮影光軸O上に位置する。カメラの起動時などに、ボール支持筒部18hと移動規制凹部22f-1によって制限される移動端まで防振枠18を駆動させることにより、各磁気センサ35、36の校正が行われる。移動規制凹部22f-1は撮影光軸Oと直交する方向での断面形状が概ね矩形であり、移動規制凹部22f-1の内壁面(内側規制面)の4つの角部分にボール支持筒部18hが当接する状態で防振枠18の位置が安定する。この4つの位置を基準とすることにより、磁気センサ35、36の校正を高い精度で行うことができる。
防振枠18上には、撮影光軸Oと平行な回動軸37を中心として回動(揺動)可能に挿脱枠20が支持されている。回動軸37の両端部は防振枠18に形成した軸支持孔18cに挿入支持されている。挿脱枠20は、第3レンズ群L3を保持するレンズ保持筒部20aと、回動軸37によって軸支される軸孔部20bと、レンズ保持筒部20aと軸孔部20bを接続する腕部20cを備えている。挿脱枠20は、挿入位置(図2、図4ないし図7、図9ないし図12、図15、図16、図19、図20)と離脱位置(図1、図13、図14、図17、図18)の間で動作可能であり、防振枠18に設けたストッパ18j(図10)に対してレンズ保持筒部20aから突出するストッパ当接部20dを当接させることで挿入位置が決まる。一端部を防振枠18に係合させ、他端部を挿脱枠20の腕部20cに係合させたトーションコイルバネからなる挿入付勢バネ38が、挿脱枠20を挿入位置方向へ付勢している。
挿脱枠20が挿入位置にあるとき、第3レンズ群L3が撮影光軸O上に位置する。挿脱枠20は離脱駆動レバー40によって挿入位置から離脱位置へ回動される。離脱駆動レバー40については後述する。挿脱枠20が離脱位置に回動すると、第3レンズ群L3の中心が撮影光軸Oから離れて防振レンズユニット14の外縁部方向に変位する。防振レンズユニット14における内側開口18a、22a及び24aは、このときのレンズ保持筒部20aの移動軌跡(回動軸37を中心とする円弧状軌跡)に対応する逃げ形状を有しており、防振枠18とセンサホルダ22とコイル台座24は挿脱枠20の回動を妨げない。挿脱枠20が離脱位置まで回動すると、防振枠18の橋絡部18dとコイル台座24の橋絡部24cの間のスペースにレンズ保持筒部20aが進入する。
図2、図15、図17及び図18に示すように、防振レンズユニット14は3つの取付ネジ42を用いて3群移動環8に取り付けられる。取り付けに際しては、3群移動環8における3つのバネ収納凹部8fにそれぞれ圧縮バネ44を挿入してから、コイル台座24を光軸方向後方に向けた状態の防振レンズユニット14を内側フランジ8dに対して前方から接近させる。すると、バネ収納凹部8fから突出する各圧縮バネ44の前端部がコイル台座24の後面に当接する。ここで、センサホルダ22の2つのネジ挿通孔22gとコイル台座24のネジ挿通孔24eのそれぞれに対して取付ネジ42を前方から挿入し、各取付ネジ42をネジ螺合孔8eに螺合させる。ネジ螺合孔8eに対する取付ネジ42の螺合量を大きくすると各圧縮バネ44が圧縮され、圧縮に対する復元力によって防振レンズユニット14が3群移動環8内で光軸方向前方に付勢される。防振レンズユニット14の前方への移動は各取付ネジ42の頭部によって制限され、3群移動環8内での防振レンズユニット14の光軸方向位置が決まる。また、図17に示すように、コイル台座24から突出する3つの支持突起24nが3群移動環8の3つの支持溝8bに係合して、撮影光軸Oと直交する平面内での防振レンズユニット14の位置が決まる。この取付状態で各取付ネジ42の螺合量を変化させるとネジの頭部の光軸方向位置が変化し、これに追従して防振レンズユニット14の位置が変化する。3つの取付ネジ42の螺合量を均等に変化させた場合は、撮影光軸Oに対する傾きを変化させずに3群移動環8内での防振レンズユニット14の光軸方向位置が変化し、取付ネジ42の螺合量を個別に変化させた場合は、撮影光軸Oに対する防振レンズユニット14(第3レンズ群L3の光軸)の傾きが変化する。
挿脱枠20を挿入位置から離脱位置へ回動させる離脱駆動レバー40は、支持座41を用いて3群移動環8に支持される。図2、図15、図18及び図19に示すように、3群移動環8における軸突起8gの周囲に2つの固定突起8hが形成されている(図18には一方の固定突起8hのみ表されている)。支持座41は、撮影光軸Oと略直交する円板状をなす前方支持部41aと、前方支持部41aから突出する一対の抜止脚部41bを有する。前方支持部41aの中央には円形孔が形成されている。一対の抜止脚部41bはそれぞれ前方支持部41aに対して光軸方向後方に突出してから外径方向に曲げられた形状をなしている。前方支持部41aの円形孔に軸突起8gの先端部を嵌合させ(図16参照)、各抜止脚部41bの端部を固定突起8hの光軸方向後面側に係合させることで(図18参照)、支持座41が3群移動環8に固定的に支持される。図6に示すように、防振レンズユニット14を構成するコイル台座24には離脱駆動レバー40を収納するレバー収納部24pが形成されている。レバー収納部24pはコイル台座24の後面の一部を切り欠いた形状の凹部24p-1と、凹部24p-1の側方に位置する切欠部24p-2を有している。また、防振枠18の側部には、コイル台座24の切欠部24p-2と重なる位置に切欠部18kが形成されている。図2、図11、図13、図15ないし図20に示すように、防振レンズユニット14は概ね3群移動環8の筒状部8cの内径サイズに対応した円形状の外形形状を有しており、シャッタユニット16も同様の円形状の外形形状を有している。防振枠18の切欠部18kとコイル台座24の切欠部24p-2は、この円形状の防振レンズユニット14の周縁領域の一部を除去した形状であり、撮影光軸Oに沿って見たとき、シャッタユニット16と重なる位置に切欠部18kと切欠部24p-2が位置する。防振レンズユニット14を3群移動環8に組み付けると、軸突起8gと支持座41が切欠部24p-2と切欠部18kの側方空間に挿入される(図16参照)。
離脱駆動レバー40は、軸突起8gによって軸支される軸孔を有する軸孔部40aと、軸孔部40aから外径方向に延出される押圧アーム40b及び被押圧突起40cを有する。図16に示すように、軸孔部40aの軸孔に軸突起8gを挿入させた状態で支持座41を3群移動環8に組み付けると、支持座41の前方支持部41aと3群移動環8の内側フランジ8d(軸突起8gの基部)に挟まれて、3群移動環8に対する離脱駆動レバー40の光軸方向への移動が規制される。この状態で軸突起8gを中心とした離脱駆動レバー40の回動が可能である。図16に示すように、軸孔部40aの外側に、トーションバネからなるレバー付勢バネ46のコイル部が挿入されている。レバー付勢バネ46のコイル部から延出される一対のバネ端部は、支持座41の抜止脚部41bと離脱駆動レバー40に対して係合している。この離脱駆動レバー40の支持状態では、凹部24p-1に押圧アーム40bが重なり、切欠部24p-2と切欠部18kに軸孔部40aが進入する(図12、図14及び図16参照)。また、押圧アーム40bの先端部付近の側面が挿脱枠20に設けた被押圧部20eに対向する(図11、図13参照)。被押圧部20eは軸孔部20bの近傍に設けられており、光軸方向に一様な断面形状を有する突起として形成されている。図11や図13に示すように、被押圧部20eにおける押圧アーム40bとの対向部分は軸線を撮影光軸Oと平行とした円筒状の外周面として形成されており、押圧アーム40bと被押圧部20eは、離脱駆動レバー40から挿脱枠20へ回動方向の力を伝達するが、撮影光軸Oと平行な方向への力を伝達しない関係にある。
離脱駆動レバー40は、軸突起8gを中心として図11、図12及び図20に示す挿入許容位置と図13及び図14に示す離脱強制位置の間で回動(揺動)する。挿入付勢バネ38の付勢力は離脱位置から挿入位置方向(図11及び図13の反時計方向)へ挿脱枠20を回動付勢している。離脱駆動レバー40は、離脱強制位置から挿入許容位置方向(図11及び図13の時計方向)へレバー付勢バネ46によって回動付勢されている。このレバー付勢バネ46による付勢方向への離脱駆動レバー40の回動端、すなわち離脱駆動レバー40の挿入許容位置は、3群移動環8の筒状部8cの内周面に形成したストッパ部に当接することによって定められる。一方、挿入付勢バネ38による付勢方向への挿脱枠20の回動は、挿脱枠20dとストッパ18jの当接によって規制される(図10)。挿脱枠20と離脱駆動レバー40がそれぞれのストッパに当接している状態が図11及び図12であり、このとき被押圧部20eと押圧アーム40bが互いに離間している(図11にクリアランスD2として示す)。この被押圧部20eと押圧アーム40bの間のクリアランスD2は、防振レンズユニット14内での防振枠18の可動範囲(移動規制凹部22f-1の内面にボール支持筒部18hの外周面が当接するまでの範囲)内では、被押圧部20eを押圧アーム40bに接触させない大きさに設定されている。換言すれば、離脱駆動レバー40は、挿入許容位置にあるときに、電磁アクチュエータによる防振枠18と挿脱枠20の防振用の駆動を規制しない。そして、挿脱枠20と離脱駆動レバー40に外力が加わらなければ、挿入付勢バネ38の付勢力で挿脱枠20を挿入位置に保持する図11及び図12の状態に維持される。
図2、図19及び図20に示すように、直進案内環10の内側には離脱押圧突起10cが突出形成されている。離脱押圧突起10cには光軸方向後方を向くカム面10dが形成されている。カム面10dによって被押圧突起40cを押圧することで、離脱駆動レバー40を挿入許容位置方向から離脱強制位置へ回動させることができる。被押圧突起40cにはカム面10dに対応した傾斜のカム面が形成されている。
3群移動環8の筒状部8cの内側には、押さえ部材19(図2)を用いて、内側フランジ8dの後方にシャッタユニット16が支持されている。シャッタユニット16は絞り兼用のシャッタ羽根16s(図1、図16、図18)を内蔵するシャッタハウジング16aの中央に光軸方向へ貫通する撮影開口16bを有し、内蔵のシャッタアクチュエータでシャッタ羽根16sを駆動して開口サイズを変化させて、撮影開口16bを通る光量を調整する。
以上の構造からなるズームレンズ鏡筒1の動作を説明する。撮影状態では、挿脱枠20は挿入付勢バネ38の付勢力によって挿入位置に保持されており、第3レンズ群L3は第2レンズ群L2と第3レンズ群L4の間の光軸方向位置にある。また、離脱駆動レバー40は、レバー付勢バネ46の付勢力によって挿入許容位置に保持されている。コイル台座24の内側開口24aの一部領域(開放部24a-1付近)を塞ぐ位置にある遮光板部24dは、第3レンズ群L3を通らずに内側開口24aを通過しようとする有害光を遮断する。第1レンズ群L1から第3レンズ群L3の3つのレンズ群はカム環11の回転駆動によって光軸方向に所定の軌跡で移動して変倍動作を行い、第4レンズ群L4はフォーカシングモータによって独立して光軸方向に移動して合焦動作を行う。
撮影状態では、ズームレンズ鏡筒1に加わる振れの方向と大きさに応じて、電磁アクチュエータによって防振枠18を光軸直交平面内で駆動することで第3レンズ群L3を撮影光軸Oに対してシフトさせ、結像面上での被写体像のずれ(像振れ)を抑制することができる。詳細には、カメラに内蔵したジャイロセンサによってレンズ鏡筒の移動角速度を検出し、その振れの角速度を時間積分して移動角度を求め、該移動角度から結像面上での像の移動量を演算すると共に、この像振れをキャンセルするための第3レンズ群L3(防振枠18)の駆動量及び駆動方向を演算する。そして、この演算値に基づいてコイル33とコイル34の通電制御を行う。すると、3つのガイドボール28に対して防振枠18の後面側のボール当接面(ボール支持筒部18hの底面)が支持案内を受けながら防振枠18が移動される。挿入位置にある挿脱枠20は防振枠18と共に移動する。前述の通り、被押圧部20eと押圧アーム40bの間にクリアランスD2(図11)が設けられているため、離脱駆動レバー40は、防振枠18と挿脱枠20の防振用の駆動を規制しない。撮影状態における防振枠18の実用上の防振駆動範囲は、ボール支持筒部18hが移動規制凹部22f-1の内壁面に当接しない範囲で設定される。
撮影状態から図1の収納状態になるとき、ズームモータによって3群移動環8、直進案内環10、カム環11、1群筒12及び2群筒13がそれぞれ光軸方向後方に移動される。撮影状態から収納状態への移行では3群移動環8よりも直進案内環10の方が光軸方向後方への移動量が大きく、直進案内環10内に形成した離脱押圧突起10cが3群移動環8内に支持された離脱駆動レバー40の被押圧突起40cに接近し、カム面10dが被押圧突起40cに当接する。すると、離脱押圧突起10cのカム面10dが被押圧突起40cを押圧して、直進案内環10の後退移動力から分力が生じてレバー付勢バネ46の付勢力に抗して離脱駆動レバー40が挿入許容位置から離脱強制位置へ向けて回動され、押圧アーム40bが被押圧部20eに当接する。押圧アーム40bを被押圧部20eに当接させた離脱駆動レバー40は、挿入付勢バネ38の付勢力に抗して挿脱枠20を挿入位置から離脱位置へ押圧回動させる。
ここで、挿脱枠20を支持する防振枠18に対して、2つの引張バネ30によってボール当接面(ボール支持筒部18hの底面)をガイドボール28に押し付けさせる方向の付勢力が作用している。挿入付勢バネ38によって与えられる挿脱枠20の回動抵抗と、引張バネ30によって与えられる防振枠18の移動抵抗の大きさは任意に設定可能である。例えば、挿脱枠20の回動抵抗を防振枠18の移動抵抗よりも大きく設定した場合、挿脱枠20に作用する離脱駆動レバー40の押圧力が防振枠18に伝わり、挿脱枠20の離脱位置方向への回動が開始されるよりも前に、防振枠18が挿脱枠20と共に離脱位置方向へ移動される。そして、ボール支持筒部18hの外周面が移動規制凹部22f-1の内壁面に当接する位置まで防振枠18が移動される。防振枠18のそれ以上の移動が規制されると、挿脱枠20が挿入位置から離脱位置へ回動される。つまり、第3レンズ群L3の離脱移動の一部を防振枠18にも担わせる構成となる。
挿脱枠20の離脱位置への回動によって、第3レンズ群L3が撮影光軸O上から離脱される。図1に示すように、ズームレンズ鏡筒1が収納状態まで達すると、第3レンズ群L3(レンズ保持筒部20a)の離脱によって空いた3群移動環8内の空間に第2レンズ群L2が進入し、撮影光軸Oと直交する方向に第2レンズ群L2と第3レンズ群L3が並んで位置する。また、撮影状態では3群移動環8の後方に位置していた第3レンズ群L4がシャッタユニット16の内側まで進入する。これにより、複数の光学要素を光軸上に直列状に並べて収納するタイプのレンズ鏡筒に比べて、収納時の光軸方向サイズを小さくすることができる。
収納状態から撮影状態に移行するときには逆に、3群移動環8よりも直進案内環10が光軸方向前方へ大きく移動し、離脱押圧突起10cによる離脱駆動レバー40の押圧(離脱強制位置への保持)が解除され、離脱駆動レバー40がレバー付勢バネ46の付勢力によって挿入許容位置に戻る。すると、挿入付勢バネ38の付勢力によって挿脱枠20が離脱位置から挿入位置へと回動される。撮影状態になるときには、必要に応じて防振枠18を電磁アクチュエータで駆動させて磁気センサ35、36の校正を行う。
以上に説明したように、防振レンズユニット14では、センサホルダ22に対してガイドボール28を介して防振枠18を可動に支持させ、ガイドボール28を内部に収納するボール支持筒部18hと、ガイドボール28が当接するボール支持凹部22eを囲む形状の移動規制凹部22f-1との当接関係によってセンサホルダ22に対する防振枠18の移動範囲を決めている。このようにガイドボール28の支持部分を用いて防振枠18の機械的な移動範囲を決めている(ガイドボール28の支持部分が防振枠18の移動範囲制限手段を兼ねる)ため、防振枠18の支持機構の構成が簡単かつコンパクトになっている。
なお、本発明は図示実施形態に限定されるものではない。前述のように、移動規制凹部22f-1の内面形状を矩形状としたことにより、磁気センサ35、36の校正を行う際の基準位置を設定しやすくなるという効果が得られる。しかし、図示実施形態と異なり、移動規制凹部22f-1の内面形状を矩形以外に設定したり、ボール支持筒部18hの外面形状を円筒状以外に設定しても、防振枠18の機械的な移動範囲を決めることが可能である。
また、図示実施形態では、センサホルダ22側でガイドボール28を受ける箇所を、移動規制凹部22f-1(逃げ凹部22f)の奥側にボール支持凹部22eを形成した2段底構成とし、ボール支持凹部22eの底面によってガイドボール28を当接支持し、移動規制凹部22f-1の内壁面によって、撮影光軸Oと直交する面内でのボール支持筒部18hの移動範囲を制限している(図8参照)。言い換えれば、開口サイズの異なる第1の凹部(移動規制凹部22f-1)と第2の凹部(ボール支持凹部22e)を有し、開口サイズの大きい第1の凹部によってボール支持筒部18hの移動範囲を制限し、開口サイズの小さい第2の凹部(ボール支持凹部22e)によってガイドボール28を当接支持している。この構成は、ガイドボール28の安定した支持とガイドボール28周りの省スペース性を両立させるものであるが、これと異なる構成にすることも可能である。例えば、図8に表れているボール支持凹部22eと移動規制凹部22f-1の間の段差をなくして、ボール支持凹部22eの内壁面と移動規制凹部22f-1の内壁面が連続した形状(移動規制凹部22f-1の断面形状がボール支持凹部22eの底面まで続く形状)にすることも可能である。この場合、ボール支持筒部18の突出量を図示実施形態よりも大きくさせることができる。あるいは、ボール支持凹部22eに相当する箇所を埋めて、移動規制凹部22f-1の底面にガイドボール28を当接させる構成にすることも可能である。この場合はセンサホルダ22側のボール当接面が底上げされた形になるため、防振枠18の位置が光軸方向後方(図8中の左方)にシフトされる。
また、図示実施形態では、防振駆動される防振枠18にボール支持筒部18hを設け、防振枠18を支持するセンサホルダ22に移動規制凹部22f-1やボール支持凹部22eを設けているが、この関係を逆にすることも可能である。つまり、ボール支持筒部18hに相当する部位をセンサホルダ22に設け、移動規制凹部22f-1やボール支持凹部22eに相当する部位を防振枠18に設けても同様の効果が得られる。
図示実施形態では、防振枠18とセンサホルダ22の間に3つのガイドボール28を設け、このうち2つのガイドボール28を内部に収納する2つのボール支持筒部18hと、2つの移動規制凹部22f-1を用いて防振枠18の移動範囲を制限している。これと異なり、3つのボール支持筒部18hを防振枠18の移動範囲の制限に用いることも可能である。つまり、3つの逃げ凹部22fの全てを移動規制凹部22f-1として形状設定しても、防振枠18の移動範囲を制限することができる。また、ガイドボール28の数を3つよりも多くさせることも可能である。この場合、ガイドボール28の数に対応させて、ボール支持筒部18hと移動規制凹部22f-1に相当する防振枠18の移動範囲制限手段を、3箇所よりも多く設けることが可能である。
図示実施形態の防振レンズユニット14では、第3レンズ群L3が防振用の動作のみならず撮影光軸Oに対する挿脱動作も行うため、防振枠18上に挿脱枠20を支持しており、部品点数が多く複雑な構造になっている。そのため、簡単かつ省スペースな構成で防振枠18の移動範囲を制限できる本発明が好適である。しかし、挿脱枠20のような光学要素の挿脱手段を備えていない防振機構にも本発明は適用可能である。