図1から図3に断面を示す沈胴式ズームレンズ鏡筒10の撮像光学系は、撮影状態(図2、図3)において物体(被写体)側から順に、第1レンズ群LG1、第2レンズ群LG2、シャッタS、第3レンズ群(防振用光学要素)LG3、第4レンズ群LG4、ローパスフィルタ11及び撮像素子12で構成される。この撮像光学系は焦点距離可変のズーム光学系であり、第1レンズ群LG1、第2レンズ群LG2及び第3レンズ群LG3を光学系の撮影光軸Oに沿って所定の軌跡で進退させることによってズーミングを行う。また、撮影光軸Oに沿って第4レンズ群LG4を移動させることでフォーカシングを行う。以下の説明中で光軸方向とは、撮像光学系の撮影光軸Oと平行な方向を意味し、前方とは光軸方向の前方(被写体側)、後方とは光軸方向の後方(像面側)を意味する。
ズームレンズ鏡筒10は、固定部材として筒状のハウジング14を備える。ハウジング14の後部に撮像素子ホルダ15が固定され、撮像素子ホルダ15の前面にローパスフィルタ11と撮像素子12が支持される。
図10に示すように、第4レンズ群LG4は、4群枠13のレンズ保持枠部13aに保持されている。第4レンズ群LG4は横長の矩形状をなし、これに対応してレンズ保持枠部13aも角筒状に形成されている。4群枠13はレンズ保持枠部13aから外径方向に突出する一対のガイド腕13b、13cを有し、ガイド腕13bの先端に設けたガイド孔が、光軸方向に延びるガイド軸(不図示)に対して摺動可能に嵌り、ガイド腕13cの先端部がハウジング14の内周面に形成された光軸方向への長溝(不図示)に対して摺動可能に嵌っている。これにより、4群枠13はハウジング14に対して光軸方向に移動可能に支持されている。4群枠13は、制御回路60(図23)に駆動制御されるAFモータ61(図23)によって光軸方向に進退駆動される。
ハウジング14の内側には第1筒16が支持されている。第1筒16の外周面には不図示のズームギヤと噛み合う周面ギヤ16aが形成されており、ズームギヤは制御回路60に駆動制御されるズームモータ62(図23)によって回転駆動されて第1筒16に回転力を伝達する。第1筒16の外面には、周面ギヤ16aと同じ領域に外面ヘリコイドが形成されており、この外面ヘリコイドがハウジング14の内面ヘリコイド14aに螺合している。図1の収納(沈胴)状態からズームモータ62によりズームギヤを回転駆動させると、ヘリコイドの案内によって第1筒16が回転しながら光軸方向に移動する。
第1筒16の内側には、直進案内環20が支持されている。直進案内環20は、ハウジング14の内周面に形成した直線溝14b(図1ないし図3に部分的に示す)と直進案内突起20aとの係合関係により光軸方向に直進案内されており、第1筒16に対しては、相対回転は可能で光軸方向に共に移動するように係合している。
直進案内環20には、内周面と外周面を貫通する貫通ガイド溝20bが形成されている。貫通ガイド溝20bは、撮影光軸Oに対して斜行する溝であり、カム環21の外周面に設けた外径突起21aが摺動可能に嵌まっている。外径突起21aはさらに、第1筒16の内周面に形成した撮影光軸Oと平行な回転伝達溝16bに係合しており、カム環21は第1筒16と共に回転される。カム環21は、貫通ガイド溝20bの案内を受けて、回転しながら第1筒16及び直進案内環20に対して光軸方向に進退される。
直進案内環20の内周面には撮影光軸Oと平行な直線溝20c(図1ないし図3に部分的に示す)が形成されている。直線溝20cに対して、3群支持環(支持部材)22の直進案内突起22aと、第2筒23の直進案内突起23aが摺動自在に係合し、これらの係合関係によって、3群支持環22と第2筒23はそれぞれ光軸方向に直進案内されている。なお、図中では直進案内突起22aと直進案内突起23aが共通の直線溝20cに係合するように描かれているが、直進案内突起22aと直進案内突起23aが係合する直線溝を直進案内環20の内周面上に別々に形成してもよい。カム環21は、第2筒23に対して相対回転可能かつ光軸方向に一体に移動するように支持されている。
3群支持環22の内部には、防振ユニット26を介して第3レンズ群LG3が支持されている。防振ユニット26は、第3レンズ群LG3を撮影光軸Oと略直交する平面に沿って移動可能に支持しており、その詳細については後述する。3群支持環22内にはまた、シャッタSを内蔵したシャッタユニット27が防振ユニット26の前部に固定されている。
3群支持環22は、周方向に位置を異ならせて設けた複数の直線溝22bを直進案内キー25aに摺動自在に係合させることによって、第2レンズ群LG2を支持する2群枠25を光軸方向に直進案内する。
第2筒23の内周面には撮影光軸Oと平行な直線溝23b(図2及び図3に部分的に示す)が形成され、該直線溝23bに対して第3筒28の直進案内突起28aが摺動自在に係合しており、第3筒28も光軸方向へ直進案内されている。第3筒28の内部には、1群枠29を介して第1レンズ群LG1が支持されている。
カム環21の内周面に形成した2群制御カム溝21bに対し、2群枠25の外周面に設けた2群用カムフォロア25bが係合し、同じくカム環21の内周面に形成した3群制御カム溝21cに対し、3群支持環22の外周面に設けた3群用カムフォロア22cが係合している。2群枠25と3群支持環22はそれぞれ光軸方向に直進案内されているため、カム環21が回転すると、2群制御カム溝21bと3群制御カム溝21cの形状に従って光軸方向へ所定の軌跡で移動され、第2レンズ群LG2と第3レンズ群LG3の位置が制御される。
図2及び図3に示すように、第3筒28は内径方向に突出する1群用カムフォロア28bを有し、この1群用カムフォロア28bが、カム環21の外周面に形成した1群制御カム溝21dに摺動可能に嵌合している。第3筒28は光軸方向に直進案内されているため、カム環21が回転すると、1群制御カム溝21dの形状に従って光軸方向へ所定の軌跡で移動され、第1レンズ群LG1の位置が制御される。
ズームレンズ鏡筒10は、撮像素子12の受光面上での画像の振れを軽減させる防振装置を備えている。この防振装置は、ズームレンズ鏡筒10に加わる振れをXジャイロセンサ64とYジャイロセンサ65(図23)で検出し、その検出情報に基づいて防振ユニット26で第3レンズ群LG3を撮像光軸Oと直交する方向に駆動する。
図4や図5に示すように、防振ユニット26は、第1ステージ(移動部材、第1移動部材)30と第2ステージ(移動部材、第2移動部材)31を備える。第1ステージ30は、3群支持環22内に支持されたXガイド軸32に対して摺動可能に支持され、第2ステージ31は第1ステージ30上に固定されたYガイド軸33に対して摺動可能に支持されている。Xガイド軸32の軸線とYガイド軸33の軸線は、撮影光軸Oと直交する平面内で互いに直交する関係にある。以下では、Xガイド軸32の延設方向である第1ステージ30の移動方向をX方向(第1の方向)またはX軸と呼ぶ。また、Yガイド軸33の延設方向である第2ステージ31の移動方向をY方向(第2の方向)またはY軸と呼ぶ。
第1ステージ30は、Y方向に離間しX方向に延設された上辺部30a及び下辺部30bと、X方向に離間しY方向に延設された側辺部30c及び側辺部30dとを有し、これら各辺に囲まれる中央部を開口30eとした四角枠形状をなす。開口30eは、4群枠13のレンズ保持枠部13aが進入可能な大きさ及び形状であり、開口30e内の上辺部30aに隣接する位置にレンズ保持枠部13aを進入させたとき、レンズ保持枠部13aと下辺部30bの間に空きスペースが得られる。下辺部30bには、光軸方向後方に向けて曲折されてその前面側を凹状としたオフセット遮光壁部30fが形成されている。上辺部30a上にはX方向に位置を異ならせて2つのガイド軸挿通部30gが形成され、それぞれのガイド軸挿通部30gにX方向に貫通させて形成したXガイド孔30hに対して、Xガイド軸32が摺動可能に挿通される。Yガイド軸33は、開口30e内の側辺部30cに沿う位置に固定され、その下端部が、3群支持環22内に形成した長孔22dに挿入されている。長孔22dは、X方向に長手方向を向けた長孔であり、該X方向へのYガイド軸33の移動を案内する。一方、光軸方向へのYガイド軸33の移動は、長孔22dの前後の壁面によって規制される。以上の構造によって第1ステージ30は、3群支持環22に対してX方向に移動可能に支持される。
第2ステージ31は、第3レンズ群LG3を保持するレンズ保持筒部31aと、該レンズ保持筒部31aから斜め上方へV字状に延設された一対の支持腕部31b、31cとを有する。一方の支持腕部31bの先端には、Yガイド軸33に対して摺動可能に嵌るガイド孔が形成されたYガイド部31dが設けられる。他方の支持腕部31cの先端には、第1ステージ30の側辺部30dに形成したガイドリブ30iに対して摺動可能に嵌るガイド片31eが形成される。Yガイド軸33に案内されて、第2ステージ31は、第1ステージ30に対してY方向へ移動可能に支持され、このY方向への移動により、第2ステージ31が第1ステージ30の開口30e内で占める位置が変化する。ガイドリブ30iとガイド片31eは、Yガイド軸33の軸線を中心とする第2ステージ31の角度を制御(回り止め)する。
第1ステージ30と第2ステージ31は、第2ステージ31の支持腕部31b、31c上に固定された2つの永久磁石(防振駆動手段)41、42と、シャッタユニット27に固定された2つのコイル(防振駆動手段)43、44を有する電磁アクチュエータにより駆動制御される。2つの永久磁石41、42の形状及び大きさは略同一であり、それぞれ細長矩形の薄板状をなし、第3レンズ群LG3の中心Cを通りかつY方向を向く仮想平面Pに関して対称の関係で配置される(図12ないし図22参照)。より詳しくは、永久磁石41と永久磁石42はそれぞれ、短手方向の略中央を通り長手方向に向く磁極境界線M1、M2(図6、図11、図12ないし図22)で分割される半割領域の一方がN極で他方がS極となっており、永久磁石41の磁極境界線M1と永久磁石42の磁極境界線M2が、Y方向の下方(後述する離脱位置側)から上方(後述する防振駆動位置側)に向かうにつれて、互いに離間するように傾斜している。上記仮想平面Pに対する永久磁石41の磁極境界線M1と永久磁石42の磁極境界線M2の傾斜角は、正逆で約45度に設定されている。つまり、永久磁石41と永久磁石42は互いの長手方向(磁極境界線M1、M2)を略直交させる関係にある。そして、第3レンズ群LG3は、この永久磁石41と永久磁石42の長手方向の一端部(短辺部)に挟まれる位置に位置している。
コイル43、44は、シャッタユニット27の光軸方向後面側に支持されている。コイル43、44は、略平行な一対の長辺部と該長辺部を接続する一対の湾曲部を有する空芯コイルであり、2つのコイル43、44の形状及び大きさは略同一である。コイル43はその長軸方向が永久磁石41の磁極境界線M1と略平行になるように配置され、コイル44はその長軸方向が永久磁石42の磁極境界線M2と略平行になるように配置されている。制御回路60によってコイル43、44に対する通電制御が行われる。なお、図5ないし図11では、コイル43、44が取り付けられるシャッタユニット27は図示が省略されている。
シャッタユニット27の後面にはさらに、コイル43の内側に位置センサ45が設けられ、コイル44の内側に位置センサ46が設けられている。位置センサ45、46により、電磁アクチュエータによる第3レンズ群LG3のX方向及びY方向の駆動位置を検出することができ、その位置情報が制御回路60に入力される。
以上の構成の電磁アクチュエータでは、永久磁石41とコイル43が光軸方向に対向してコイル43が永久磁石41の磁界内に位置する状態で該コイル43に通電すると、撮影光軸Oと直交する平面内で永久磁石41の磁極境界線M1(コイル43の長軸方向線)と略直交する方向への駆動力が作用する。また、永久磁石42とコイル44が光軸方向に対向してコイル44が永久磁石42の磁界内に位置する状態で該コイル44に通電すると、撮影光軸Oと直交する平面内で永久磁石42の磁極境界線M2(コイル44の長軸方向線)と略直交する方向への駆動力が作用する。これら駆動力の作用方向はいずれもX方向とY方向の両方に対して約45度の角度で交差する関係にあり、各コイル43、44への通電制御によって、第1ステージ30のX方向移動と第2ステージ31のY方向移動を任意に行わせることができる。このように電磁アクチュエータによって第3レンズ群LG3の位置を制御することが可能な範囲を、第3レンズ群LG3(第2ステージ31)における防振駆動位置(防振駆動範囲)と呼ぶ。防振駆動位置では、第3レンズ群LG3の中心Cは撮影光軸Oを中心とする所定範囲内に位置する。
Yガイド軸33によって案内される第2ステージ31のY方向の可動量は、電磁アクチュエータにより与えられるY方向の駆動量よりも大きい。図5、図7、図9、図12及び図22に示すように、第3レンズ群LG3(第2ステージ31)が上記防振駆動位置にあるとき、支持腕部31b、31cの上端部が第1ステージ30の上辺部30aに近接して位置される。詳細には、このとき支持腕部31b、31cの上端部と、上辺部30aやガイド軸挿通部30gとの間にスペースがあり、電磁アクチュエータによって第2ステージ31を当該位置からY方向の上方と下方のいずれにも移動させることが可能となっている。一方、図6、図8、図11及び図18に示すように、第2ステージ31は、支持腕部31b、31cの下端部が下辺部30bに近接する位置まで下方に移動することが可能である。この第2ステージ31の下方移動端では、永久磁石41とコイル43、永久磁石42とコイル44はいずれも光軸方向に対向しなくなり、第3レンズ群LG3(第2ステージ31)は、電磁アクチュエータにより位置制御可能な防振駆動位置を外れる。この位置を第3レンズ群LG3(第2ステージ31)の離脱位置と呼ぶ。離脱位置では第3レンズ群LG3が第1ステージ30の下辺部30bと重なる位置まで下降されるが、レンズ保持筒部31aの後部が、オフセット遮光壁部30fが形成する凹部内に進入するため、第1ステージ30との干渉を生じることなく第2ステージ31を下降させることができる。3群支持環22には、離脱位置まで移動されたレンズ保持筒部31aの一部を進入させる貫通孔22eが形成されている。離脱位置に達した第2ステージ31は、支持腕部31b、31cの下端部が第1ステージ30の下辺部30bに当接することによって、下方への移動が規制される。
電磁アクチュエータによる第3レンズ群LG3の位置制御が可能な範囲は防振駆動位置に限定され、防振駆動位置を外れた離脱位置との間の第3レンズ群LG3(第2ステージ31)のY方向駆動は、電磁アクチュエータとは別に設けた挿脱駆動機構50によって行われる。挿脱駆動機構50は、支持軸52(図4)によって3群支持環22内に軸支された挿脱制御レバー(揺動部材)51を備える。図4に示すように、支持軸52は、挿脱制御レバー51の一端部に形成した円筒状の軸受部51aの軸孔に挿通され、その前端部が3群支持環22内に形成した軸支持孔22fに支持され、その後端部がレバー押さえ部材53に支持されている。レバー押さえ部材53は、固定ビス58によって3群支持環22に固定される。この支持状態で支持軸52の軸線は撮影光軸Oと略平行であり、挿脱制御レバー51は該支持軸52を中心として揺動することができる。
挿脱制御レバー51には、挿脱ガイド溝部(長溝)55と離脱防止溝部56が連続して形成されている。図8、図9、図12ないし図22に示すように、挿脱ガイド溝部55は、軸受部51aを中心とする回動半径方向に延びる溝であり、溝内部の対向面の一方が防振駆動位置から離脱位置への第2ステージ31の移動を案内する離脱ガイド面(離脱用押圧部)55aであり、他方が離脱位置から防振駆動位置への第2ステージ31の移動を案内する挿入ガイド面(挿入用押圧部)55bである。離脱ガイド面55aと挿入ガイド面55bは、略平行な関係にある。さらに、挿脱ガイド溝部55のうち軸受部51aに最も近い内径側位置には、離脱ガイド面55aと挿入ガイド面55bを接続する移動規制端部(移動規制部)55cが形成されている。離脱防止溝部56は挿脱ガイド溝部55の外径側端部に連通しており、対向する下方離脱防止面56aと上方離脱防止面56bを有している。離脱防止溝部56の溝幅(下方離脱防止面56aと上方離脱防止面56bの間隔)は、挿脱ガイド溝部55の溝幅(離脱ガイド面55aと挿入ガイド面55bの間隔)よりも広い。
第2ステージ31には、Yガイド部31dから後方に向けて突出する位置制御ピン(突部)31fが設けられ、位置制御ピン31fは挿脱制御レバー51の揺動位置に応じて挿脱ガイド溝部55内と離脱防止溝部56内のいずれかに位置される。
第2ステージ31が防振駆動位置にあるとき、図9、図12及び図22に示すように、挿脱制御レバー51は軸受部51aを中心とするレバー延設方向が斜め上方に向く角度(以下、挿入位置と呼ぶ)に保持され、位置制御ピン31fが離脱防止溝部56内に位置される。このとき、離脱防止溝部56の延設方向(長手方向)がX方向と略平行になり、X方向での位置制御ピン31fの位置規制を行わないため、電磁アクチュエータによるX方向への第1ステージ30及び第2ステージ31の移動は妨げられない。また、離脱防止溝部56は挿脱ガイド溝部55よりも幅広に設定されており、下方離脱防止面56a及び上方離脱防止面56bと位置制御ピン31fとの間には、電磁アクチュエータによるY方向の第2ステージ31の移動を妨げない十分な隙間が確保されている。挿脱制御レバー51が挿入位置にあるときには、第2ステージ31は電磁アクチュエータによって位置制御されるが、離脱防止溝部56の下方離脱防止面56aに対して位置制御ピン31fを当接させることによって、第2ステージ31が電磁アクチュエータの制御範囲である防振駆動位置を超えて離脱位置方向へ脱落するのを防ぐことができる。また、離脱防止溝部56の上方離脱防止面56bの面に対して位置制御ピン31fを当接させることによって、第2ステージ31が電磁アクチュエータの制御範囲である防振駆動位置を超えて離脱位置と反対方向へ脱落するのを防ぐことができる。但し、離脱位置と反対方向への移動制限は、位置制御ピン31fと上方離脱防止面56bの当接に代えて、第2ステージ31の支持腕部31b、31cと第1ステージ30の上辺部30aの当接などによって行わせることもできる。
一方、第2ステージ31が離脱位置にあるとき、図8や図18に示すように、挿脱制御レバー51は軸受部51aを中心とするレバー延設方向が斜め下方に向く角度(以下、離脱保持位置と呼ぶ)に保持され、位置制御ピン31fが挿脱ガイド溝部55内に係合している。このとき第2ステージ31のY方向の位置制御は、位置制御ピン31fに対する挿脱ガイド溝部55の離脱ガイド面55a及び挿入ガイド面55bの当接によって行われる。
挿脱制御レバー51は、レバー付勢ばね(付勢部材)54によって挿入位置へ回動付勢されており、3群支持環22の内面には、この付勢力によって挿脱制御レバー51が当接するストッパ22g(図4)が設けられている。そのため、挿脱制御レバー51は、特別な外力が加わらない状態では挿入位置に保持され、これに応じて第2ステージ31は防振駆動位置に保持される。撮像素子ホルダ15には光軸方向前方へ突出する離脱制御突起(離脱案内部材)57(図6ないし図9)が突設されており、3群支持環22が光軸方向後方へ移動して撮像素子ホルダ15に接近すると、離脱制御突起57が挿脱制御レバー51を押圧して、レバー付勢ばね54の付勢力に抗して挿脱制御レバー51が挿入位置から離脱保持位置へ回動される。詳細には、離脱制御突起57の先端部には端面カム57aが形成されており、3群支持環22が後退して離脱制御突起57に接近すると、挿脱制御レバー51に設けたカム当接部51bが端面カム57aに当接する。この当接によって、光軸方向後方への3群支持環22の移動力から挿脱制御レバー51を離脱保持位置へ回動させる分力が生じる。挿脱制御レバー51が離脱保持位置に達すると、図8に示すように、離脱制御突起57の側面に設けた撮影光軸Oと略平行な離脱保持面57bがカム当接部51bの側面に係合し、挿脱制御レバー51が離脱保持位置に保持され続ける。
以上の構造からなるズームレンズ鏡筒10は次のように動作する。図1に示す鏡筒収納状態において、ズームレンズ鏡筒10が搭載される撮像装置に設けたメインスイッチがオンされると、ズームモータ62が鏡筒繰出方向に駆動されてズームギヤが回転し、第1筒16がハウジング14の内面ヘリコイド14aにガイドされて前方へ回転繰出される。直進案内環20は、第1筒16と共に前方に直進移動する。このとき、第1筒16から回転力が付与されるカム環21は、直進案内環20の前方への直進移動分と、該直進案内環20との間に設けたリード構造(貫通ガイド溝20bと外径突起21a)による繰出分との合成移動を行う。
カム環21が回転すると、その内側では、3群用カムフォロア22cと3群制御カム溝21cの関係によって、直進案内環20により直進案内された3群支持環22が光軸方向に所定の軌跡で移動される。また、3群支持環22を介して直進案内された2群枠25が、2群用カムフォロア25bと2群制御カム溝21bの関係によって光軸方向に所定の軌跡で移動される。さらに、カム環21が回転すると、該カム環21の外側では、直進案内環20と第2筒23を介して直進案内された第3筒28が、1群用カムフォロア28bと1群制御カム溝21dの関係によって光軸方向に所定の軌跡で移動される。
すなわち、鏡筒収納状態からの第1レンズ群LG1、第2レンズ群LG2及び第3レンズ群LG3の繰出量はそれぞれ、ハウジング14に対するカム環21の前方移動量と、該カム環21に対する第3筒28(1群枠29)、2群枠25、3群支持環22(防振ユニット26)のカム繰出量との合算値として決まる。ズーミングは、これら第1レンズ群LG1、第2レンズ群LG2及び第3レンズ群LG3が互いの空気間隔を変化させながら撮影光軸O上を移動することにより行われる。図1の収納状態から鏡筒繰出を行うと、まず図2に示すワイド端の繰出状態になり、さらにズームモータ62を鏡筒繰出方向に駆動させると、図3に示すテレ端の繰出状態となる。メインスイッチをオフすると、ズームモータ62が鏡筒収納方向に駆動され、ズームレンズ鏡筒10は上記の繰出動作とは逆の収納動作を行い、図1の収納状態になる。
また、ワイド端からテレ端までの撮影可能状態にあるとき、測距手段によって得られた被写体距離情報に応じてAFモータ61を駆動することにより、第4レンズ群LG4を支持する4群枠13が撮影光軸Oに沿って移動してフォーカシングが実行される。
以上はズームレンズ鏡筒10の全体的な動作であり、続いて、防振ユニット26に関連する収納構造と、撮影状態での防振ユニット26の動作を説明する。
図2及び図3の撮影可能状態(ズーム域)では、図7及び図9に示すように、挿脱制御レバー51は離脱制御突起57から前方に離れ、レバー付勢ばね54の付勢力によって挿入位置に保持される。上述の通り、この挿入位置では、挿脱制御レバー51の離脱防止溝部56は、防振駆動用の位置制御ピン31fのX及びY方向の移動を許容するため、ズームレンズ鏡筒10に加わる振れの方向と大きさに応じて、電磁アクチュエータによって第1ステージ30と第2ステージ31をX方向とY方向に駆動することで、撮像素子12の受光面上での被写体像のずれ(像振れ)を抑制することができる。詳細には、Xジャイロセンサ64とYジャイロセンサ65によってX軸とY軸周りにおける移動角速度を検出し、それぞれの振れの角速度を時間積分して移動角度を求め、該移動角度から焦点面(撮像素子12の受光面)上でのX軸方向及びY軸方向の像の移動量を演算すると共に、この像振れをキャンセルするための各軸方向に関する第3レンズ群LG3の駆動量及び駆動方向を演算する。そして、この演算値に基づいて、コイル43とコイル44の通電制御を行う。なお、外部からの衝撃が加わった場合や、コイル43、44への通電を解除して電磁アクチュエータによる保持を停止した場合でも、挿脱制御レバー51の離脱防止溝部56の下方離脱防止面56a及び上方離脱防止面56bと位置制御ピン31fとの当接によって、第3レンズ群LG3(第2ステージ31)は防振駆動位置からの離脱が規制されるため、電磁アクチュエータによって位置制御を行う状態にいつでも復帰することができる。
ズーム域からの鏡筒収納動作では、まず、AFモータ61の駆動によって4群枠13を図1に示す後方移動端に位置させる。続いて、ズームモータ62の収納方向駆動により、3群支持環22が光軸方向後方に移動され、3群支持環22と共に後退している挿脱制御レバー51のカム当接部51bが、離脱制御突起57の端面カム57aに当て付く。すると、カム当接部51bが端面カム57aに押圧されて3群支持環22の後退移動力から分力が生じ、挿脱制御レバー51がレバー付勢ばね54の付勢力に抗して挿入位置から離脱保持位置へ向けて回動される。図12は、防振駆動位置において第3レンズ群LG3の中心Cが撮影光軸Oと一致する状態、すなわち電磁アクチュエータによるX及びY方向への駆動範囲の中央に第3レンズ群LG3が保持されている状態を示している。この状態から挿脱制御レバー51が離脱保持位置に向けて回動されると、離脱ガイド面55aが位置制御ピン31fを下方に押圧し、第2ステージ31が離脱位置に向けて移動される。この挿脱制御レバー51による第2ステージ31の離脱位置への駆動の詳細を図13から図18に順に示す。なお、挿脱制御レバー51による第2ステージ31の離脱駆動が開始されるときの第3レンズ群LG3の位置は、図12のような電磁アクチュエータの駆動範囲の中央に限られるものではなく、電磁アクチュエータによる駆動範囲内の任意の位置から離脱駆動を行わせることができる。
図13は、位置制御ピン31fが離脱防止溝部56から出て挿脱ガイド溝部55内に進入し、第2ステージ31の離脱位置方向への移動が開始された直後の状態であり、図14は、挿脱制御レバー51がさらに離脱保持位置方向に向けて回動し、図13よりも第2ステージ31を下方に押し込んでいる状態を示す。第2ステージ31の離脱駆動の開始から途中までは、図13や図14に示すように、離脱ガイド面55aは、挿脱制御レバー51の回動中心である軸受部51a(支持軸52)から斜め上方(第1ステージ30の上辺部30aに接近する方向)に向けて傾斜した状態にある。この離脱ガイド面55aの傾斜形状により、挿脱制御レバー51の離脱保持位置方向への回動に応じて、位置制御ピン31fに対し、下方への押圧力に加えて、挿脱制御レバー51の軸受部51aから遠ざける方向(図中右方)への移動分力が与えられる。従って、第2ステージ31の離脱駆動の前半では、該第2ステージ31が第1ステージ30と共に、挿脱制御レバー51の軸受部51aから離れる方向に押し込まれる(仮想平面Pの位置が撮影光軸Oよりも右側にシフトされている)。
挿脱ガイド溝部55の延設方向がX方向と平行になる図15の中間位置に挿脱制御レバー51が達すると、位置制御ピン31fに対する離脱ガイド面55aによるX方向への押圧分力が作用しなくなる。図15は、第1ステージ30と第2ステージ31が、電磁アクチュエータによるX方向の駆動範囲の中央(仮想平面Pが撮影光軸Oと重なる位置)よりも、挿脱制御レバー51の回動中心から離れる方向に位置した状態、具体的にはX方向の駆動範囲のうち図中右側の移動端に位置した状態を示している。挿脱制御レバー51が図15の角度位置にあるとき、重力などの作用によって第1ステージ30と第2ステージ31が図中左方向に移動する場合があるが、当該方向への移動は、位置制御ピン31fが移動規制端部55cに当接することによって規制される。この規制位置は、3群支持環22内での第1ステージ30と第2ステージ31の図中左側への移動端よりも手前(撮影光軸Oに近い位置)である。
第2ステージ31上の構成要素のうち、X方向で最も挿脱制御レバー51の回動中心側に突出する部位は永久磁石41の角部Eであり、第2ステージ31が図15の位置から図17の位置に移動する間に、該角部Eが軸受部51aの至近を通過する。上述のように、図15の位置では、第1ステージ30と第2ステージ31がX方向の可動領域のうち図中左側への移動端には達しないように、軸受部51へ接近する方向の位置制御ピン31fの移動が、挿脱ガイド溝部55内の移動規制端部55cによって規制される。これにより、永久磁石41が軸受部51に接触することを防いでいる。永久磁石41の角部Eが軸受部51に最も接近するのは、第2ステージ31が図16のY方向位置にあるときである。このときも、第1ステージ30と第2ステージ31の軸受部51への接近方向への移動が、位置制御ピン31fと移動規制端部55cの当接によって規制される。そのため、永久磁石41の角部Eと軸受部51の間には、X方向に所定の間隔が必ず確保され、軸受部51aと干渉することなく第2ステージ31を移動させることが可能になっている。換言すれば、第2ステージ31の離脱駆動に際して、該第2ステージ31上の永久磁石41が挿脱制御レバー51の軸受部51aの近傍を通過するときに、一時的に第2ステージ31及び第1ステージ30のX方向の可動域を制限する手段(移動規制端部55c)を備えている。
特に、挿脱制御レバー51が図15の中間位置を超えて離脱保持位置方向への回動を継続すると、図16や図17に示すように、仮想平面Pに対する離脱ガイド面55aの傾斜方向が離脱駆動の前半(図13、図14)とは逆になる。すなわち、離脱ガイド面55aは位置制御ピン31fに対し、下方に押圧しながら、軸受部51aに接近させる方向(図中左方)への移動分力を与えるような傾きになる。しかし、図16の状態では、移動規制端部55cによる位置制御ピン31fへの位置規制によって、離脱駆動の前半(図13〜図15)に引き続いて、第2ステージ31は、軸受部51から離れる方向の位置(撮影光軸Oに対して仮想平面Pが図中右側にシフトされる対置)に保持されており、部品の精度誤差などを考慮しても、永久磁石41と軸受部51の間に確実にクリアランスが確保されるようになっている。
位置制御ピン31fに対する移動規制端部55cによる位置規制は、第2ステージ31が図17に示す位置付近に達するまで機能する。図17は、永久磁石41の角部Eが軸受部51の近傍領域を通過し、これ以降は第2ステージ31に対するX方向の位置規制を解除しても軸受部51との干渉が生じるおそれがなくなる状態を示している。
図18は、挿脱制御レバー51が離脱保持位置まで回動し、第2ステージ31が離脱位置に達した状態を示している。このとき、第1ステージ30と第2ステージ31は、仮想平面Pを撮影光軸Oに一致させるX方向の中央位置付近に保持されている。図8や図18から分かるように、第2ステージ31の離脱位置では、第3レンズ群LG3を保持するレンズ保持筒部31aが、Y方向において第1ステージ30の下辺部30bと重なる位置まで下降されるが、下辺部30bにオフセット遮光壁部30fを形成したことで、当該離脱位置でのレンズ保持筒部31aと第1ステージ30の干渉が生じない。さらに、第2ステージ31のレンズ保持筒部31aが3群支持環22の貫通孔22eに進入し(図1)、3群支持環22に制約されずに第2ステージ31の離脱移動量を大きくすることが可能になっている。また、図6や図18に示すように、第2ステージ31が離脱位置にあるときには、永久磁石41、42も第1ステージ30に対する位置を下方に変化させる。永久磁石41、42とこれを保持する支持腕部31b、31cは、Y方向で上方(防振駆動位置側)に進むほど互いの間隔を広くするV字状の配置になっているため、図18のように撮影光軸Oに沿う方向で正面視したとき、永久磁石41については、第1ステージ30の下辺部30bと側辺部30cの境界付近に重なって位置し、永久磁石42については、第1ステージ30の下辺部30bと側辺部30dの境界付近に重なって位置する。したがって、第2ステージ31を離脱位置に位置させることで、第1ステージ30の開口30eにおける開放領域が相対的に増大し、開口30e内の撮影光軸O付近の領域は、第2ステージ31が存在しない空きスペースとなる。
挿脱制御レバー51による第2ステージ31の防振駆動位置から離脱位置への移動は、3群支持環22が図1に示す後方移動端に達するよりも前に完了する。3群支持環22がさらに後方に移動すると、挿脱制御レバー51のカム当接部51bの側面が離脱制御突起57の離脱保持面57bに当接する位置関係となり(図6、図8)、挿脱制御レバー51は、レバー付勢ばね54の付勢力に抗して、離脱制御突起57によって離脱保持位置に保持されて挿入位置への回動が規制される。この挿脱制御レバー51の離脱保持位置では、挿脱ガイド溝部55の離脱ガイド面55aが位置制御ピン31fの上方への移動を規制し、第2ステージ31が離脱位置に保持される。そして、第2ステージ31の離脱完了後に3群支持環22がさらに後退移動することにより、第1ステージ30の開口30eの開放領域内(撮影状態では第3レンズ群LG3、第2ステージ31、永久磁石41、42などが位置する領域)に4群枠13のレンズ保持枠部13aが進入して、第3レンズ群LG3と第4レンズ群LG4がY方向に並列する位置関係となる(図1、図11)。これにより、ズームレンズ鏡筒10の収納状態では撮像光学系の光軸方向の厚みが小さくなり、鏡筒収納長の薄型化が達成される。
上述のように、第2ステージ31が離脱位置にあるとき、第1ステージ30はX方向の可動範囲の中央付近に保持される。第2ステージ31上には第3レンズ群LG3を挟んでV字状に支持腕部31b、31cと永久磁石41、42が配置されているため、このようにX方向の可動範囲の略中央に位置を定めることで、第1ステージ30の開口30eに対して最もスペース効率の良いX方向の位置に支持腕部31b、31cと永久磁石41、42を位置させることができる。また、図11に示すように、4群枠13のレンズ保持枠部13aは四隅が面取りされた角筒形状であり、レンズ保持枠部13aを開口30eに進入させたときには、レンズ保持枠部13aの面取り部が第2ステージ31の支持腕部31b、31cや永久磁石41、42に沿う配置となるため、第2ステージ31と4群枠13の関係においてもスペース効率に優れた収納構造となっている。
なお、以上の鏡筒収納時の動作説明では、ズームモータ62の収納方向駆動に先立ってAFモータ61を駆動させて4群枠13の後退動作を行わせるものとしたが、4群枠13との干渉が生じる前に第2ステージ31の離脱位置への移動が完了するという条件を満たしていれば、AFモータ61による4群枠13の後退動作を省略することも可能である。この場合、光軸方向後方への移動については機械的に制限を受けないように4群枠13の駆動機構を構成しておき、該4群枠13に対してズームモータ61の駆動力で後退する部材(3群支持環22または他の部位)を当接させ、該部材と共に4群枠13を図1の後方移動端まで後退させるとよい。
ズームモータ62の駆動によってズームレンズ鏡筒10が図1の収納位置から繰り出され、3群支持環22が光軸方向前方へ所定量移動されると、挿脱制御レバー51が離脱制御突起57から離れて離脱保持面57bによる回動規制が解除され、レバー付勢ばね54の付勢力によって挿脱制御レバー51が離脱保持位置(図6、図8及び図18)から挿入位置(図7、図9及び図22)へ向けて回動していく。すると、挿脱ガイド溝部55の挿入ガイド面55bが位置制御ピン31fを上方に押圧し、第2ステージ31がY方向における防振駆動位置に向けて移動される。この挿脱制御レバー51による第2ステージ31の防振駆動位置への挿入駆動の詳細を説明する。
挿脱制御レバー51による第2ステージ31の挿入駆動の開始から途中までは、図19に示すように、挿入ガイド面55bは、挿脱制御レバー51の回動中心である軸受部51a(支持軸52)から斜め下方(第1ステージ30の下辺部30bに接近する方向)に向けて傾斜しており、挿脱制御レバー51の挿入位置方向への回動に応じて、位置制御ピン31fに対し、上方への押圧力に加えて、挿脱制御レバー51の軸受部51aから遠ざける方向(図中右方)への移動分力が与えられる。よって、この挿入駆動の前半では、第1ステージ30と第2ステージ31が軸受部51aから離れる方向に押し込まれる。なお、第2ステージ31が離脱位置から防振駆動位置への移動を開始する段階で、防振ユニット26は4群枠13よりも前方に移動されており、第1ステージ30の開口30e内からレンズ保持枠部13aが既に離脱しているので、防振駆動位置へ向けて移動する第2ステージ31が4群枠13と干渉することはない。
第3レンズ群LG3の離脱駆動時と同じく、挿脱制御レバー51が図16に示す角度位置に達したとき、永久磁石41の角部Eが軸受部51aに最も接近する。離脱駆動時とは異なり、このとき挿入ガイド面55bは軸受部51aから離れる方向に位置制御ピン31fを押圧しているが、仮に第2ステージ31に対して外力などによって軸受部51aへの接近方向の力が加わった場合でも、当該接近方向への位置制御ピン31fの移動が挿脱ガイド溝部55の移動規制端部55cによって規制されるため、軸受部51aに干渉することなく永久磁石41の角部Eを通過させることができる。
挿脱制御レバー51の挿入位置への回動が、挿脱ガイド溝部55の延設方向をX方向と平行にする図15の中間位置を超えると、仮想平面Pに対する挿入ガイド面55bの傾斜方向が挿入駆動の前半(図19)とは逆になり、位置制御ピン31fに対して、上方への押圧力と共に、軸受部51aに接近させる方向(図中左方)への移動分力が与えられるようになる。ここで、図20に示すように、永久磁石41の角部Eが軸受部51aの近傍位置を通過するまでは、この軸受部51aへの接近方向の位置制御ピン31fの移動は、挿脱ガイド溝部55内の移動規制端部55cによって規制されるため、第2ステージ31の挿入方向移動に際して挿脱制御レバー51の軸受部51aと干渉するおそれがない。
図21は、第2ステージ31の挿入駆動の途中において、挿脱制御レバー51の挿入ガイド面55bが位置制御ピン31fに付与する押圧力により、X方向の一方の(軸受部51aに接近する方向の)移動端まで第1ステージ30及び第2ステージ31が移動された状態を示す。仮にこのX方向移動端のまま第2ステージ31を離脱位置方向に直進移動させた場合、永久磁石41の角部Eが軸受部51aに当て付く関係にあるため、上述した移動規制端部55cと位置制御ピン31fによる第2ステージ31のX方向の移動規制が有効であることが分かる。
挿脱制御レバー51が図22に示す挿入位置まで回動されると、位置制御ピン31fの当接位置が、挿入ガイド面55bから下方離脱防止面56aに変化する。この段階で、永久磁石41と永久磁石42がそれぞれコイル43とコイル44に対向し、電磁アクチュエータによって第1ステージ30及び第2ステージ31の位置制御を行うことが可能な状態、すなわち防振駆動位置に達している。図22から分かる通り、挿脱制御レバー51によって位置制御されるのは、この防振駆動位置のうち、X方向では軸受部51aに接近する図中左方の移動端、Y方向では離脱位置側の図中下方の移動端までであり、ここから先の防振駆動位置内の任意の位置への第3レンズ群LG3の移動や保持は、電磁アクチュエータによって行われる。
挿脱制御レバー51による第2ステージ31の防振駆動位置への移動は、図2のワイド端に達する前に完了する。図7及び図9から分かるように、防振駆動位置では挿脱制御レバー51が離脱制御突起57から前方に離れ、カム当接部51bと端面カム57aが光軸方向に離間して対向している。これ以降は再び鏡筒収納動作を行うまで、挿脱制御レバー51と離脱制御突起57が当接することはなく、第2ステージ31は防振駆動位置に保持され続ける。ワイド端からテレ端までのズーム域では、カム環21の回転に応じて3群支持環22の光軸方向位置が変化するが、3群支持環22は図2に示すワイド端位置付近がズーム域における後方移動端であり、挿脱制御レバー51が離脱制御突起57に接触することはない。つまり、ズーム域全体で、第2ステージ31が防振駆動位置に維持される。
以上のようにズームレンズ鏡筒10では、撮影状態で第3レンズ群LG3と第4レンズ群LG4が光軸方向に離間して位置し、収納状態では、下方に離脱移動した第3レンズ群LG3と、撮影光軸O上に残る第4レンズ群LG4をY方向に重ねて位置させることで、撮像光学系の収納長短縮が達成されている。そして、撮影状態において電磁アクチュエータによって防振ユニット26の第1ステージ30と第2ステージ31を位置制御して像振れ補正を行い、収納するときには、第1ステージ30上に支持された第2ステージ31のみを挿脱駆動機構50によって離脱位置に移動させるように第3レンズ群LG3の位置制御装置を構成したので、離脱動作を行う部位が小型で軽量になっており、省スペース性と挿脱駆動機構50の負荷軽減の効果が得られる。
また、挿脱駆動機構50による第2ステージ31のY方向の挿脱動作を行わせる際には、当該挿脱を行わせるための押圧部である離脱ガイド面55aや挿入ガイド面55bとは別に挿脱制御レバー51に形成した移動規制端部55cによって、第2ステージ31の位置制御ピン31fに対するX方向の移動規制を行う構成としている。これにより、第2ステージ31の挿脱移動時の移動軌跡を厳密に定めることができ、特に、挿脱制御レバー51の特定の角度位置で近接した関係となる永久磁石41の角部Eと軸受部51aが干渉することを確実に防ぐことが可能となった。干渉を防ぐという観点からは、挿脱制御レバー51の軸受部51aの位置を、3群支持環22内でより外径側に移すという選択も可能であるが、挿脱制御レバー51の回動半径が大きくなり、機構が大型してしまう。別言すれば、挿脱制御レバー51の回動中心(軸受部51a)の位置を防振ユニット26に対して限界まで接近させて設定した上で、Y方向の挿脱動作に際してX方向の移動も許容されている移動部材である第2ステージ31に対し、そのX方向移動を一部制限する機能を挿脱制御レバー51に備えたことで、機構の小型化を達成しつつ、確実な挿脱動作を保証している。
以上、図示実施形態に基づき説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図示実施形態では、3群支持環22の後退移動によって離脱制御突起57を当接させることで挿脱制御レバー51の離脱保持位置への回動を行わせているが、挿脱制御レバー51は別種の駆動手段によって揺動させることも可能である。例えば、3群支持環22内に挿脱制御レバー51を回動させる独自のモータを備える、ズームレンズ鏡筒10内の回転環(第1筒16やカム環21)の回転を利用して挿脱制御レバー51を回動させるといった構造をとることも可能である。
また、図示実施形態では、第2ステージ31の挿脱駆動時に挿脱制御レバー51の軸受部51aに最も接近する部位が永久磁石41の角部Eであるが、この最接近部位は、第2ステージ31自体の一部(例えば支持腕部31bの一部)とすることもできる。また、図示実施形態では、第2ステージ31側に永久磁石41、42が設けられ、3群支持環22(シャッタユニット27)側にコイル43、44が設けられているが、この配置関係を逆にした電磁アクチュエータとすることも可能である。この場合、第2ステージ31上で軸受部51aに最も接近する部位として、コイルを選択することもできる。
また、図示実施形態の防振ユニット26では、撮影光軸Oと直交する平面内で互いに直交する2軸方向に直進移動可能に支持された第1ステージ30及び第2ステージ31によって第3レンズ群LG3を保持しているが、このような直進案内による支持構造をとらず、防振用光学要素を保持する一つの部材を、電磁力などを用いて光軸直交面内で任意の方向に可動に支持するタイプの防振駆動手段を用いた場合も、本発明は適用可能である。