図1から図3に、本発明を適用した光学装置を構成する沈胴式ズームレンズ鏡筒10の断面を示す。このズームレンズ鏡筒10は、物体(被写体)側から順に第1レンズ群LG1、シャッタS、第2レンズ群(防振光学要素)LG2、第3レンズ群(第2の光学要素)LG3、ローパスフィルタ11及び撮像素子12が配された撮像光学系を有する。この撮像光学系は焦点距離可変のズーム光学系であり、第1レンズ群LG1と第2レンズ群LG2を光学系の撮影光軸Oに沿って所定の軌跡で進退させることによってズーミングを行う。また、撮影光軸Oに沿って第3レンズ群LG3を移動させることでフォーカシングを行う。以下の説明中で光軸方向とは、撮像光学系の撮影光軸Oと平行な方向を意味し、前方とは光軸方向の前方(被写体側)、後方とは光軸方向の後方(像面側)を意味する。
ズームレンズ鏡筒10は、固定部材として筒状のハウジング14を備える。ハウジング14の後部に撮像素子ホルダ15が固定され、撮像素子ホルダ15の前面にローパスフィルタ11と撮像素子12が支持される。
図15に示すように、第3レンズ群LG3は、3群レンズ枠13のレンズ保持筒部13aに保持されている。第3レンズ群LG3は横長の矩形状をなし、これに対応してレンズ保持筒部13aも角筒状に形成されている。3群レンズ枠13はレンズ保持筒部13aから外径方向に突出する一対のガイド腕13b、13c(図9、図15に一部を示す)を有し、各ガイド腕13b、13cの先端に設けたガイド孔(不図示)が光軸方向に延びるガイドシャフト(不図示)に対して摺動可能に嵌ることで、ハウジング14に対して光軸方向に移動可能に支持されている。3群レンズ枠13は、制御回路60(図20)に駆動制御されるAFモータ61(図20)によって光軸方向に進退駆動される。
ハウジング14の内側にはヘリコイド環16が支持されている。ヘリコイド環16の外周面には不図示のズームギヤと噛み合う周面ギヤ16aが形成されており、ズームギヤは制御回路60に駆動制御されるズームモータ62(図20)によって回転駆動されてヘリコイド環16に回転力を伝達する。図1の収納(沈胴)状態から図2のワイド端になる直前までの間、ハウジング14とヘリコイド環16はヘリコイド結合されており、ズームモータ62を駆動させると、ハウジング14の内面ヘリコイド14aの案内によってヘリコイド環16が回転しながら光軸方向に移動する。一方、ワイド端とテレ端の間の撮影状態にあるときには、ヘリコイド結合が解除され、代わりにハウジング14の内周面に形成した周方向溝14bに対してヘリコイド環16の外面に設けた回転案内突起16b(図2、図3)が係合し、ズームモータ62の駆動に応じてヘリコイド環16が光軸方向に移動せずに定位置で回転される。ヘリコイド環16の前部には、該ヘリコイド環16と共に回転及び光軸方向移動を行う第1繰出筒17が結合されている。
第1繰出筒17とヘリコイド環16の内側には、第1直進案内環20が支持されている。第1直進案内環20は、ハウジング14の内周面に形成した直線溝14c(図2)と直進案内突起20aとの係合関係により光軸方向に直進案内されており、第1繰出筒17とヘリコイド環16に対しては、相対回転は可能で光軸方向に共に移動するように係合している。
第1直進案内環20には、内周面と外周面を貫通する貫通ガイド溝20bが形成されている。貫通ガイド溝20bは、撮影光軸Oに対して斜行するリード溝部分と、撮影光軸Oを中心とする周方向溝部分とを有していて、カム環21の外周面に設けた外径突起21aが摺動可能に嵌まっている。外径突起21aはさらに、第1繰出筒17の内周面に形成した撮影光軸Oと平行な回転伝達溝17aに係合しており、カム環21は第1繰出筒17と共に回転される。カム環21は、貫通ガイド溝20bのリード溝部分に外径突起21aが係合するときには、このリード溝部分の案内を受けて回転しながら第1繰出筒17(ヘリコイド環16)及び第1直進案内環20に対して光軸方向に進退され、貫通ガイド溝20bの周方向溝部分に外径突起21aが係合するときには、第1繰出筒17(ヘリコイド環16)及び第1直進案内環20に対して光軸方向に相対移動せずに定位置で回転する。ヘリコイド環16や第1繰出筒17と同様に、収納状態と撮影状態の間ではカム環21が回転しながら光軸方向に進退移動され、ワイド端とテレ端の間の撮影状態ではカム環21が定位置回転される。
第1直進案内環20の内周面には撮影光軸Oと平行な直線溝20cが形成されている。直線溝20cに対して、第2直進案内環22の直進案内突起22aと、第2繰出筒23の直進案内突起23aが摺動自在に係合し、これらの係合関係によって、第2直進案内環22と第2繰出筒23はそれぞれ光軸方向に直進案内されている。なお、図中では直進案内突起22aと直進案内突起23aが共通の直線溝20cに係合するように描かれているが、直進案内突起22aと直進案内突起23aが係合する直線溝を第1直進案内環20の内周面上に別々に形成してもよい。カム環21は、第2直進案内環22と第2繰出筒23のそれぞれに対して相対回転可能かつ光軸方向に一体に移動するように支持されている。
第2直進案内環22は、周方向に位置を異ならせて設けた3つの直進案内キー22bを直線溝25a(図4、図7ないし図18)に摺動自在に係合させることによって、2群レンズ移動環(進退部材)25を光軸方向に直進案内する。2群レンズ移動環25の内部には、防振ユニット26を介して第2レンズ群LG2が支持されている。防振ユニット26は、第2レンズ群LG2を撮影光軸Oと略直交する平面に沿って移動可能に支持しており、その詳細については後述する。2群レンズ移動環25内にはまた、シャッタSを内蔵したシャッタユニット27が防振ユニット26の前部に固定されている。シャッタユニット27内には、シャッタSの開閉駆動を行わせるシャッタアクチュエータ63(図20)が設けられ、シャッタユニット27の中央部にはシャッタSによって開閉されるシャッタ開口27aが形成されている。
第2繰出筒23の内周面には撮影光軸Oと平行な直線溝23bが形成され、該直線溝23bに対して第3繰出筒28の直進案内突起28aが摺動自在に係合しており、第3繰出筒28も光軸方向へ直進案内されている。第3繰出筒28の内部には、1群レンズ枠29を介して第1レンズ群LG1が支持されている。
カム環21の内周面に形成した2群制御カム溝21bに対し、2群レンズ移動環25の外周面に設けた2群用カムフォロア25bが係合している。2群レンズ移動環25は第2直進案内環22を介して光軸方向に直進案内されているため、カム環21が回転すると、2群制御カム溝21bの形状に従って、2群レンズ移動環25すなわち第2レンズ群LG2が光軸方向へ所定の軌跡で移動する。
第3繰出筒28は内径方向に突出する1群用カムフォロア28bを有し、この1群用カムフォロア28bが、カム環21の外周面に形成した1群制御カム溝21cに摺動可能に嵌合している。第3繰出筒28は第2繰出筒23を介して光軸方向に直進案内されているため、カム環21が回転すると、1群制御カム溝21cの形状に従って、第3繰出筒28すなわち第1レンズ群LG1が光軸方向へ所定の軌跡で移動する。
ズームレンズ鏡筒10は、撮像素子12の受光面上での画像の振れを軽減させる像振れ補正装置を備えている。詳細は後述するが、この像振れ補正装置は、ズームレンズ鏡筒10に加わる振れをXジャイロセンサ64とYジャイロセンサ65(図20)で検出し、その検出情報に基づいて防振ユニット26で第2レンズ群LG2を撮像光軸Oと直交する方向に駆動する。
図6に示すように、防振ユニット26は、第1ステージ(第1移動部材)30と第2ステージ(第2移動部材)31を備える。第1ステージ30は、2群レンズ移動環25内に固定されたXガイドシャフト32に対して摺動可能に支持され、第2ステージ31は第1ステージ30上に固定されたYガイドシャフト33とYガイドシャフト34に対して摺動可能に支持されている。Xガイドシャフト32は撮影光軸Oと直交する平面内で左右方向に軸線を向けており、以下ではこのXガイドシャフト32の延設方向である第1ステージ30の移動方向をX方向(第1の方向)またはX軸と呼ぶ。Yガイドシャフト33、34は、撮影光軸Oと直交する平面内でXガイドシャフト32と直交する上下方向に軸線を向けており、以下ではこのYガイドシャフト33、34の延設方向である第2ステージ31の移動方向をY方向(第2の方向)またはY軸と呼ぶ。
第1ステージ30は、Y方向に離間しX方向に延設された上辺部30a及び下辺部30bと、X方向に離間しY方向に延設された側辺部30c及び側辺部30dとを有し、これら各辺に囲まれる中央部を開口30eとした四角枠形状をなす。開口30eは、3群レンズ枠13のレンズ保持筒部13aが進入可能な大きさ及び形状であり、図9や図10から分かるように、開口30e内の上辺部30aに隣接する位置にレンズ保持筒部13aを進入させたとき、レンズ保持筒部13aと下辺部30bの間に空きスペースが得られる。下辺部30bには、光軸方向後方に向けて曲折されてその前面側を凹状としたオフセット凹部30fが形成されている。上辺部30a上にはX方向に位置を異ならせてXガイド孔30gが2箇所形成され(図6)、各Xガイド孔30gに対してXガイドシャフト32が摺動可能に挿通される。Yガイドシャフト33は開口30e内の側辺部30cに沿う位置に固定され、Yガイドシャフト34は開口30e内の側辺部30dに沿う位置に固定されており、各Yガイドシャフト33、34の下端部が下辺部30bの下方に突出して、2群レンズ移動環25内に形成した一対の長孔25c(図4)に挿入されている。長孔25cは、X方向に長手方向を向けた長孔であり、該X方向へのYガイドシャフト33、34の移動を案内する。一方、光軸方向へのYガイドシャフト33、34の移動は、長孔25cの前後の壁面によって規制される。以上の構造によって第1ステージ30は、2群レンズ移動環25に対してX方向に移動可能に支持される。
第2ステージ31は、第2レンズ群LG2を保持する2群レンズ枠35が固定されるレンズ保持筒部31aと、該レンズ保持筒部31aから斜め上方へ「V」字状に延設されY軸に関して略対称な形状をなす一対の支持腕部31b、31cとを有する。各支持腕部31b、31cにY方向へ貫通形成したYガイド孔31d、31eに対して、Yガイドシャフト33、34がそれぞれ摺動可能に挿通される。これにより第2ステージ31は、第1ステージ30に対してY方向へ移動可能に支持される。このY方向への移動により、第2ステージ31が第1ステージ30の開口30e内で占める位置が変化する。
第1ステージ30と第2ステージ31は、第2ステージ31上に固定された2つの永久磁石41、42と、シャッタユニット27に固定された2つのコイル43、44を有する電磁アクチュエータ(防振駆動手段)40により駆動制御される。2つの永久磁石41、42の形状及び大きさは略同一であり、それぞれ細長矩形の薄板状をなし、短手方向の略中央を通り長手方向に向く磁極境界線M1、M2(図7ないし図10)で分割される半割領域の一方がN極で他方がS極となっている。第2ステージ31の支持腕部31bの前面には永久磁石41が嵌合支持される磁石保持部31fが形成され、支持腕部31cの前面には永久磁石42が嵌合支持される磁石保持部31gが形成されている。磁石保持部31fを有する支持腕部31bは、レンズ保持筒部31aからYガイド孔31dが形成される先端部まで、磁極境界線M1と略平行に延設された腕部であり、磁石保持部31gを有する支持腕部31cは、レンズ保持筒部31aからYガイド孔31eが形成される先端部まで、磁極境界線M2と略平行に延設された腕部である。この磁石保持部31f、31gへの取り付け状態で永久磁石41と永久磁石42は、第2レンズ群LG2の中心Cを通りY方向に延びる離脱方向中心線P(図7ないし図10)に関して略対称の関係で配置される。より詳しくは、磁極境界線M1と磁極境界線M2は、Y方向の下方(後述する離脱位置側)から上方(後述する防振駆動位置側)に向かうにつれて、互いに離脱方向中心線Pから離れるように(互いのX方向間隔を大きくするように)傾斜しており、離脱方向中心線Pに対する磁極境界線M1、M2のそれぞれの傾斜角が正逆で約45度に設定されている。つまり、永久磁石41と永久磁石42は互いの長手方向(磁極境界線M1と磁極境界線M2)を略直交させる関係にある。そして、磁極境界線M1と磁極境界線M2を延長した交点上に第2ステージ31のレンズ保持筒部31aが位置しており、このレンズ保持筒部31aに保持される第2レンズ群LG2は、永久磁石41と永久磁石42の長手方向の一端部(短辺部)に挟まれて位置している。また、図7や図9に示すように、ズームレンズ鏡筒10を正面視したとき、永久磁石41の一部がYガイドシャフト33と重なるX方向位置にあり、永久磁石42の一部がYガイドシャフト34と重なるX方向位置にある。図7ないし図10は、X方向において離脱方向中心線P(第2レンズ群LG2の中心C)と撮影光軸Oが同位置にある状態を示しているが、第1ステージ30がその可動範囲内でX方向に位置変化しても、永久磁石41、42の一部が、それぞれ対応するYガイドシャフト33、34と重なる位置関係は維持される。
図4に示すように、コイル43、44はシャッタユニット27の光軸方向後面側に支持されている。図7や図9に示すように、ズームレンズ鏡筒10を正面視したとき、コイル43は、その一部がYガイドシャフト33と重なるX方向位置にあり、コイル44は、その一部がYガイドシャフト34と重なるX方向位置にある。またY方向においては、コイル43、44は、撮影光軸Oを通るX方向の仮想線とXガイドシャフト32の間に位置している。2つのコイル43、44の形状及び大きさは略同一であり、略平行な一対の長辺部と該長辺部を接続する一対の湾曲部を有する空芯コイルである。コイル43はその長軸方向Q1(図9)が永久磁石41の磁極境界線M1と略平行になるように配置され、コイル44はその長軸方向Q2(図9)が永久磁石42の磁極境界線M2と略平行になるように配置されている。コイル43、44に通電すると、その長辺部で長軸方向Q1、Q2へ電流が流れる。
シャッタユニット27の後面にはさらに、コイル43とシャッタ開口27aの間に位置センサ45が設けられ、コイル44とシャッタ開口27aの間に位置センサ46が設けられている。位置センサ45、46は磁界の強さを検出するセンサであり、位置センサ45、46を用いることで、永久磁石41、42と共に移動する第2レンズ群LG2のX方向及びY方向の位置を検出することができる。
コイル43、44と位置センサ45、46は、シャッタユニット27の後面に固定されるシャッタFPC47上のモジュールとして設けられている。シャッタFPC47は制御回路60に接続し、制御回路60によってコイル43、44に対する通電制御が行われる。また、位置センサ45と位置センサ46により検出された位置情報が制御回路60に入力される。
以上の構成の電磁アクチュエータ40では、永久磁石41とコイル43が光軸方向に対向してコイル43が永久磁石41の磁界内に位置する状態で該コイル43に通電すると、撮影光軸Oと直交する平面内で磁極境界線M1及びコイル長軸方向線Q1と略直交する方向への駆動力が作用する。また、永久磁石42とコイル44が光軸方向に対向してコイル44が永久磁石42の磁界内に位置する状態で該コイル44に通電すると、撮影光軸Oと直交する平面内で磁極境界線M2及びコイル長軸方向線Q2と略直交する方向への駆動力が作用する。これら駆動力の作用方向はいずれもX方向とY方向の両方に対して約45度で交差する関係にあり、各コイル43、44への通電制御によって、第1ステージ30のX方向移動と第2ステージ31のY方向移動を任意に行わせることができる。このように電磁アクチュエータ40によって第2レンズ群LG2の位置を制御することが可能な範囲を、第2レンズ群LG2(第2ステージ31)における防振駆動位置(防振駆動範囲、撮影位置)と呼ぶ。防振駆動位置では、第2レンズ群LG2の中心Cは、撮影光軸Oを中心とする所定範囲内に位置する。
Yガイドシャフト33とYガイドシャフト34によって案内される第2ステージ31のY方向の可動量は、電磁アクチュエータ40により与えられるY方向の駆動量よりも大きい。図7、図8、図11、図12及び図16に示すように、第2レンズ群LG2(第2ステージ31)が上記防振駆動位置にあるとき、支持腕部31b、31cの上端部が第1ステージ30の上辺部30aに近接して位置される。詳細には、第2レンズ群LG2の中心Cが撮影光軸Oと一致する位置では、支持腕部31b、31cの上端部は上辺部30aとの間にスペースがあり、電磁アクチュエータ40によって第2ステージ31を当該位置からY方向の上方と下方のいずれにも移動させることが可能となっている。一方、図9、図10、図14、図15及び図18に示すように、第2ステージ31は、支持腕部31b、31cの下端部が下辺部30bに近接する位置まで下方に移動することが可能である。この第2ステージ31の下方移動端では、永久磁石41とコイル43、永久磁石42とコイル44はいずれも光軸方向に対向しなくなり、第2レンズ群LG2(第2ステージ31)は、電磁アクチュエータ40により位置制御可能な防振駆動位置を外れる。この位置を第2レンズ群LG2(第2ステージ31)の離脱位置と呼ぶ。離脱位置では第2レンズ群LG2が第1ステージ30の下辺部30bと重なる位置まで下降されるが、レンズ保持筒部31a及び2群レンズ枠35の後部が、オフセット凹部30f内に進入するため、下辺部30bとの干渉を生じることなく下降させることができる。2群レンズ移動環25には、離脱位置まで移動されたレンズ保持筒部31aの一部を進入させる収納凹部(位置決め凹部)25dが形成されている。収納凹部25dは、X方向の略中央に径方向の貫通部を有し、その両側に略対称な形状の一対の部分円形凹面部を有している。第1ステージ30がX方向においてその可動範囲の中央から所定量以上ずれている状態で第2ステージ31を離脱位置に移動させると、収納凹部25dの部分円形凹面部とレンズ保持筒部31aの外面の当接によって、第2ステージ31を支持する第1ステージ30がX方向の可動範囲の略中央に案内される。一方、第1ステージ30がX方向の可動範囲の中央付近に位置するときは、収納凹部25dの部分円形凹面部にレンズ保持筒部31aを当接させずに第2ステージ31を離脱位置に移動させることができる。離脱位置に達した第2ステージ31は、支持腕部31b、31cの下端部が第1ステージ30の下辺部30bに当接することによって、下方への移動が規制される。
図4に示すように、シャッタユニット27の後面には、シャッタ開口27aの周囲に中央円形凹部27bが形成されており、第2レンズ群LG2が防振駆動位置にあるとき、レンズ保持筒部31a(2群レンズ枠35)の前端部が中央円形凹部27bに進入する。中央円形凹部27bは、電磁アクチュエータ40による防振駆動位置での第2レンズ群LG2のX及びY方向の移動によってはレンズ保持筒部31aと干渉することがない大きさに形成されている。また、シャッタユニット27の後面には、中央円形凹部27bから下方に向けて、防振駆動位置から離脱位置までのY方向の移動範囲で第2ステージ31(2群レンズ枠35)の前端部を進入させる直線状凹部27cが形成されている。
電磁アクチュエータ40による第2レンズ群LG2の位置制御が可能な範囲は防振駆動位置に限定され、防振駆動位置を外れた離脱位置との間の第2レンズ群LG2(第2ステージ31)のY方向駆動は、電磁アクチュエータ40とは別に設けた挿脱駆動機構50によって行われる。挿脱駆動機構50は、支持軸52によって2群レンズ移動環25内に軸支された挿脱制御レバー(離脱駆動部材)51を備える。図4に示すように、支持軸52は、挿脱制御レバー51に形成した軸孔51aに挿通され、その前端部が2群レンズ移動環25内に形成した軸支持孔25eに支持され、その後端部が2群レンズ移動環25に固定されるレバー押さえ部材53に支持されている。この支持状態で支持軸52の軸線は撮影光軸Oと略平行であり、挿脱制御レバー51は該支持軸52を中心として揺動することができる。
図16ないし図19に示すように、挿脱制御レバー51には、挿脱ガイド溝部55と離脱防止溝部(離脱規制部)56が連続して形成されている。挿脱ガイド溝部55は、軸孔51aを中心とする回動半径方向に延びる溝であり、溝内部の対向面の一方が防振駆動位置から離脱位置への第2ステージ31の移動を案内する離脱ガイド面(第1の押圧部)55aであり、他方が離脱位置から防振駆動位置への第2ステージ31の移動を案内する挿入ガイド面(第2の押圧部)55bである。離脱防止溝部56は挿脱ガイド溝部55の外径側端部に連通しており、対向する下方離脱防止面56aと上方離脱防止面56bを有している。離脱防止溝部56の溝幅(下方離脱防止面56aと上方離脱防止面56bの間隔)は、挿脱ガイド溝部55の溝幅(離脱ガイド面55aと挿入ガイド面55bの間隔)よりも広い。
第2ステージ31には、支持腕部31bから後方に向けて突出する位置制御ピン(突部)31hが設けられ、位置制御ピン31hは挿脱制御レバー51の揺動位置に応じて挿脱ガイド溝部55内と離脱防止溝部56内のいずれかに位置される。第2ステージ31が離脱位置にあるとき、図10、図14、図15、図18及び図19に示すように、挿脱制御レバー51は軸孔51aを中心とするレバー延設方向が斜め下方に向く角度(以下、離脱保持位置と呼ぶ)に保持され、位置制御ピン31hが挿脱ガイド溝部55内に係合している。このとき第2ステージ31のY方向の位置制御は、位置制御ピン31hに対する挿脱ガイド溝部55の離脱ガイド面55a及び挿入ガイド面55bの当接によって行われる。ここで挿脱制御レバー51が図中の時計方向に回動されると、挿入ガイド面55bが位置制御ピン31hを上方に押圧し、第2ステージ31が離脱位置から防振駆動位置に向けて移動される。
第2ステージ31が防振駆動位置にあるとき、図8、図11、図12、図16及び図17に示すように、挿脱制御レバー51は軸孔51aを中心とするレバー延設方向が斜め上方に向く角度(以下、挿入位置と呼ぶ)に保持され、位置制御ピン31hが離脱防止溝部56内に位置される。このとき、離脱防止溝部56の延設方向(長手方向)がX方向と略平行になり、X方向での位置制御ピン31hの位置規制を行わないため、電磁アクチュエータ40によるX方向への第1ステージ30及び第2ステージ31の移動は妨げられない。また、離脱防止溝部56は挿脱ガイド溝部55よりも幅広に設定されており、下方離脱防止面56a及び上方離脱防止面56bと位置制御ピン31hとの間には、電磁アクチュエータ40によるY方向の第2ステージ31の移動を妨げない十分な隙間が確保されている。挿脱制御レバー51が挿入位置にあるときには、第2ステージ31は電磁アクチュエータ40によって位置制御されるが、下方離脱防止面56aに対して位置制御ピン31hを当接させることによって、第2ステージ31が電磁アクチュエータ40の制御範囲である防振駆動位置を超えて離脱位置方向へ脱落するのを防ぐことができる。また、上方離脱防止面56bに対して位置制御ピン31hを当接させることによって、第2ステージ31が電磁アクチュエータ40の制御範囲である防振駆動位置を超えて離脱位置と反対方向へ脱落するのを防ぐことができる。但し、離脱位置と反対方向への移動制限は、位置制御ピン31hと上方離脱防止面56bの当接に代えて、第2ステージ31の支持腕部31b、31cと第1ステージ30の上辺部30aの当接などによって行わせることもできる。
第2ステージ31が防振駆動位置にある状態で挿脱制御レバー51を挿入位置から離脱保持位置に向けて回動させると、離脱ガイド面55aが位置制御ピン31hを下方に押圧し、第2ステージ31が防振駆動位置から離脱位置に移動される。
挿脱制御レバー51は、レバー付勢ばね(挿脱制御手段、付勢部材)54によって挿入位置へ回動付勢されており、2群レンズ移動環25の内面には、この付勢力によって挿脱制御レバー51が当接するストッパ(挿脱制御手段)25fが設けられている。そのため、挿脱制御レバー51は、特別な外力が加わらない状態では挿入位置に保持され、これに応じて第2ステージ31は防振駆動位置に保持される。撮像素子ホルダ15には光軸方向前方へ突出する離脱制御突起(挿脱制御手段、分力付与部材)57(図10ないし図15、図18及び図19)が突設されており、2群レンズ移動環25が光軸方向後方へ移動して撮像素子ホルダ15に接近すると、離脱制御突起57が挿脱制御レバー51を押圧して、レバー付勢ばね54の付勢力に抗して挿脱制御レバー51が挿入位置から離脱保持位置へ回動される。詳細には、離脱制御突起57の先端部には端面カム57aが形成されており、2群レンズ移動環25が後退して離脱制御突起57に接近すると、挿脱制御レバー51に設けたカム当接部51bが端面カム57aに当接する(図13)。この当接によって、光軸方向後方への2群レンズ移動環25の移動力から挿脱制御レバー51を離脱保持位置へ回動させる分力が生じる。挿脱制御レバー51が離脱保持位置に達すると、図10、図14、図15、図18及び図19に示すように、離脱制御突起57の側面に設けた撮影光軸Oと略平行な離脱保持面57bが離脱保持面51cに係合し、挿脱制御レバー51が離脱保持位置に保持され続ける。
以上の構造からなるズームレンズ鏡筒10は次のように動作する。図1に示す鏡筒収納状態において、ズームレンズ鏡筒10が搭載される撮像装置に設けたメインスイッチがオンされると、ズームモータ62が鏡筒繰出方向に駆動されてズームギヤが回転し、ヘリコイド環16と第1繰出筒17がハウジング14の内面ヘリコイド14aにガイドされて前方へ回転繰出される。第1直進案内環20は、ヘリコイド環16及び第1繰出筒17と共に前方に直進移動する。このとき、第1繰出筒17から回転力が付与されるカム環21は、第1直進案内環20の前方への直進移動分と、該第1直進案内環20との間に設けたリード構造(貫通ガイド溝20bのリード溝部分と外径突起21a)による繰出分との合成移動を行う。ヘリコイド環16とカム環21が前方の所定位置まで繰り出されると、それぞれの回転繰出構造(ヘリコイド、リード)の機能が解除されて、光軸方向の定位置で回転のみ行うようになる。
カム環21が回転すると、その内側では、第2直進案内環22を介して直進案内された2群レンズ移動環25が、2群用カムフォロア25bと2群制御カム溝21bの関係によって光軸方向に所定の軌跡で移動される。また、カム環21が回転すると、該カム環21の外側では、第2繰出筒23を介して直進案内された第3繰出筒28が、1群用カムフォロア28bと1群制御カム溝21cの関係によって光軸方向に所定の軌跡で移動される。
すなわち、鏡筒収納状態からの第1レンズ群LG1と第2レンズ群LG2の繰出量はそれぞれ、前者が、ハウジング14に対するカム環21の前方移動量と、該カム環21に対する第3繰出筒28のカム繰出量との合算値として決まり、後者が、ハウジング14に対するカム環21の前方移動量と、該カム環21に対する2群レンズ移動環25のカム繰出量との合算値として決まる。ズーミングは、この第1レンズ群LG1と第2レンズ群LG2が互いの空気間隔を変化させながら撮影光軸O上を移動することにより行われる。図1の収納状態から鏡筒繰出を行うと、まず図2に示すワイド端の繰出状態になり、さらにズームモータ62を鏡筒繰出方向に駆動させると、図3に示すテレ端の繰出状態となる。テレ端とワイド端の間のズーム領域では、ヘリコイド環16、第1繰出筒17及びカム環21は、前述の定位置回転のみを行い、光軸方向へは進退しない。メインスイッチをオフすると、ズームモータ62が鏡筒収納方向に駆動され、ズームレンズ鏡筒10は上記の繰出動作とは逆の収納動作を行い、図1の収納状態になる。
また、ワイド端からテレ端までの撮影可能状態にあるとき、測距手段によって得られた被写体距離情報に応じてAFモータ61を駆動することにより、第3レンズ群LG3を支持する3群レンズ枠13が撮影光軸Oに沿って移動してフォーカシングが実行される。
以上はズームレンズ鏡筒10の全体的な動作であり、続いて、防振ユニット26に関連する収納構造と、撮影状態での防振ユニット26の動作を説明する。
図1の鏡筒収納状態では、3群レンズ枠13は、撮像素子ホルダ15の前面部に近接する後方移動端まで後退され、2群レンズ移動環25も後方移動端に位置している。挿脱制御レバー51はレバー付勢ばね54によって挿入位置へ回動付勢されているが、2群レンズ移動環25が後方移動端に位置する状態では、離脱制御突起57の離脱保持面57bと離脱保持面51cの係合により付勢方向への回動が規制され、挿脱制御レバー51は離脱保持位置に保持されている(図10、図14、図15、図18及び図19)。この挿脱制御レバー51の離脱保持位置では、挿脱ガイド溝部55内の離脱ガイド面55aが位置制御ピン31hの上方への移動を規制し、第2レンズ群LG2を保持する第2ステージ31は撮影光軸Oに対して下方に変位した離脱位置に保持される。
図9、図10及び図18から分かるように、第2ステージ31の離脱位置では、第2レンズ群LG2を保持するレンズ保持筒部31aが、Y方向において第1ステージ30の下辺部30bと重なる位置まで下降される。前述の通り、下辺部30bにオフセット凹部30fを形成したことで、当該離脱位置でのレンズ保持筒部31aと下辺部30bの干渉が生じない。また、図9に示すように、第2ステージ31が離脱位置にあるときには永久磁石41、42も撮影光軸Oの下方に位置される。永久磁石41、42とこれを保持する支持腕部31b、31cは、Y方向で上方(防振駆動位置側)に進むほど互いの間隔を広くするV字状の配置になっているため、図9のように正面視したとき、永久磁石41については、第1ステージ30の下辺部30bと側辺部30cの境界付近に重なって位置し、永久磁石42については、第1ステージ30の下辺部30bと側辺部30dの境界付近に重なって位置する。したがって、第2ステージ31を離脱位置に位置させることで、第1ステージ30の開口30eにおける開放領域が相対的に増大し、開口30e内の撮影光軸O付近の領域は、第2ステージが存在しない空きスペースとなっている。
そして、図1、図9及び図10に示すように、第2ステージ31が離脱位置に移動したことによって形成される開口30eの開放領域内(撮影状態では第2レンズ群LG2、第2ステージ31、永久磁石41、42などが位置する領域)に3群レンズ枠13のレンズ保持筒部13aが進入して、第2レンズ群LG2と第3レンズ群LG3がY方向に並列する位置関係となる。これにより、ズームレンズ鏡筒10の収納状態では撮像光学系の光軸方向の厚みが小さくなり、鏡筒収納長の薄型化が達成される。
第2ステージ31が離脱位置にあるとき、第1ステージ30はX方向の可動範囲の中央(離脱方向中心線Pが撮影光軸O上を通る位置)付近に保持される。前述のように、X方向の可動範囲の中央を所定以上外れた状態で第2ステージ31が離脱位置へ移動されると、レンズ保持筒部31aの外面と収納凹部25dの部分円形凹面部の当接により、第1ステージ30がX方向の可動範囲の略中央まで案内される。第2ステージ31上には第2レンズ群LG2を挟んでV字状に支持椀部31b、31cと永久磁石41、42が配置されているため、このようにX方向の可動範囲の略中央に位置を定めることで、第1ステージ30の開口30eに対して最もスペース効率の良いX方向の位置に支持椀部31b、31cと永久磁石41、42を位置させることができる。
また、3群レンズ枠13のレンズ保持筒部13aは四隅が面取りされた角筒形状であり、レンズ保持筒部13aを開口30eに進入させたときには、図9に示すように、該レンズ保持筒部13aの下辺部側の2つの面取り部と2群レンズ移動環25の内周面の間に形成されるV字状のスペースに沿ってレンズ保持筒部13aの面取り部が第2ステージ31の支持椀部31b、31cと永久磁石41、42が収納される。また、レンズ保持筒部13aにおける上記2つの面取り部に挟まれる下辺部と2群レンズ移動環25の内周面との間に、第2ステージ31のレンズ保持筒部31aが位置される。このレンズ保持筒部31aの径サイズは、支持椀部31b、31cの幅よりも大きいが、レンズ保持筒部13aの一部が収納凹部25dに進入することで、2群レンズ移動環25と干渉せずに当該位置に収納することができる。よって、第2ステージ31と3群レンズ枠13と2群レンズ移動環25の関係においてもスペース効率に優れた収納構造となっている。
ズームモータ62の駆動によってズームレンズ鏡筒10が図1の収納位置から繰り出され、2群レンズ移動環25が光軸方向前方へ所定量移動されると、挿脱制御レバー51が離脱制御突起57から離れて離脱保持面57bによる回動規制が解除され、レバー付勢ばね54の付勢力によって挿脱制御レバー51が離脱保持位置(図10、図14、図15、図18及び図19)から挿入位置(図8、図11、図12、図16及び図17)へ向けて回動していく。すると、挿脱ガイド溝部55内の挿入ガイド面55bが位置制御ピン31hを上方に押圧し、第2ステージ31がY方向における防振駆動位置に向けて移動される。この段階で防振ユニット26は3群レンズ枠13よりも前方に移動されており、第1ステージ30の開口30e内からレンズ保持筒部13aが既に離脱しているので、防振駆動位置へ向けて移動する第2ステージ31が3群レンズ枠13と干渉することはない。挿脱制御レバー51によって第2ステージ31がある程度上方に移動されると、永久磁石41と永久磁石42がそれぞれコイル43とコイル44に対向し、電磁アクチュエータ40によって第1ステージ30及び第2ステージ31の位置制御を行うことが可能な状態、すなわち防振駆動位置に達する。前述の通り、防振駆動位置では位置制御ピン31hは離脱防止溝部56に対して遊嵌し、X及びY方向の移動が許容された状態にあり、第1ステージ30及び第2ステージ31の位置制御は電磁アクチュエータ40によって行われる。
挿脱制御レバー51による第2ステージ31の防振駆動位置への移動は、図2のワイド端に達する前に完了する。防振駆動位置では挿脱制御レバー51が離脱制御突起57から前方に離れ、カム当接部51bと端面カム57aが光軸方向に離間して対向している。これ以降は再び鏡筒収納動作を行うまで、挿脱制御レバー51と離脱制御突起57が当接することはなく、第2ステージ31は防振駆動位置に保持され続ける。ワイド端からテレ端までのズーム域では、カム環21の回転に応じて2群レンズ移動環25の光軸方向位置が変化するが、2群レンズ移動環25は図2に示すワイド端位置付近がズーム域における後方移動端であり、挿脱制御レバー51が離脱制御突起57に接触することはない。つまり、ズーム域全体で、第2ステージ31が防振駆動位置に維持される。なお、外部からの衝撃が加わった場合や、コイル43、44への通電を解除して電磁アクチュエータ40による保持を停止した場合でも、挿脱制御レバー51の離脱防止溝部56の下方離脱防止面56a及び上方離脱防止面56bと位置制御ピン31hとの当接によって、2レンズ群LG2(第2ステージ31)は防振駆動位置からの離脱が規制されるため、電磁アクチュエータ40によって位置制御を行う状態にいつでも復帰することができる。
ズーム域では、ズームレンズ鏡筒10に加わる振れの方向と大きさに応じて、電磁アクチュエータ40によって第1ステージ30と第2ステージ31をX方向とY方向に駆動することで、撮像素子12の受光面上での被写体像のずれ(像振れ)を抑制することができる。詳細には、Xジャイロセンサ64とYジャイロセンサ65によってX軸とY軸周りにおける移動角速度を検出し、それぞれの振れの角速度を時間積分して移動角度を求め、該移動角度から焦点面(撮像素子12の受光面)上でのX軸方向及びY軸方向の像の移動量を演算すると共に、この像振れをキャンセルするための各軸方向に関する第2レンズ群LG2の駆動量及び駆動方向を演算する。そして、この演算値に基づいて、コイル43とコイル44の通電制御を行う。
前述の通り、ズームレンズ鏡筒10を正面視して、永久磁石41とコイル43の一部がYガイドシャフト33と重なって位置し、永久磁石42とコイル44の一部がYガイドシャフト34と重なって位置する。つまり、第2ステージ31のY方向の移動案内を行う部位(Yガイドシャフト33、34)と、その移動方向の駆動力を与える部位(永久磁石41、42とコイル43、44)が重なる関係にある。ガイドシャフトのような案内部材を用いた駆動機構では、当該案内部材と駆動力の付与部が接近しているほど、移動部材(第2ステージ31)の駆動時におけるモーメントの抑制効果が高いため、ズーム域における像振れ補正制御では、電磁アクチュエータ40によってY方向へ円滑に第2ステージ31を駆動させることができる。また、図7から分かる通り、第2ステージ31が防振駆動位置にあるときには、永久磁石41、42とコイル43、44は、第1ステージ30のX方向への主たる案内部材であるXガイドシャフト32に近接した位置(撮影光軸Oを通るX方向の仮想線とXガイドシャフト32の間のY方向位置)にある。よって、像振れ補正制御において電磁アクチュエータ40によってX方向へ第1ステージ30を駆動させるときにも、モーメント抑制効果が得られる。
ズーム域からの鏡筒収納では、繰出時とは逆の動作が行われる。まず、AFモータ61の駆動によって3群レンズ枠13を図1に示す後方移動端に位置させる。続いて、ズームモータ62の収納方向駆動により、2群レンズ移動環25が光軸方向後方に移動され、2群レンズ移動環25と共に後退している挿脱制御レバー51のカム当接部51bが、離脱制御突起57の端面カム57aに当て付く(図13参照)。すると、カム当接部51bが端面カム57aに押圧されて2群レンズ移動環25の後退移動力から分力が生じ、挿脱制御レバー51がレバー付勢ばね54の付勢力に抗して挿入位置から離脱保持位置へ向けて回動される。すると、位置制御ピン31hの位置が離脱防止溝部56内から挿脱ガイド溝部55内に変化し、挿入ガイド面55bが位置制御ピン31hを下方に押圧して、第2ステージ31が防振駆動位置から離脱位置へ向けて移動される。2群レンズ移動環25がさらに後方に移動すると、挿脱制御レバー51の離脱保持面51cが離脱制御突起57の離脱保持面57bに対向する位置関係となり、該離脱保持面51cと離脱保持面57bの当接によって、挿脱制御レバー51は離脱保持位置に保持されて挿入位置への回動が規制される。つまり第2ステージ31が離脱位置に保持される。
挿脱制御レバー51による第2ステージ31の防振駆動位置から離脱位置への移動は、2群レンズ移動環25が図1に示す後方移動端に達するよりも前に完了する。そして、第2ステージ31の離脱完了後に2群レンズ移動環25がさらに後退移動することにより、開放領域を大きくした開口30e内に3群レンズ枠13のレンズ保持筒部13aが進入し(図9、図10)、前述した収納状態(図1)となる。
なお、以上の鏡筒収納時の動作説明では、ズームモータ62の収納方向駆動に先立ってAFモータ61を駆動させて3群レンズ枠13の後退動作を行わせるものとしたが、3群レンズ枠13との干渉が生じる前に第2ステージ31の離脱位置への移動が完了するという条件を満たしていれば、AFモータ61による3群レンズ枠13の後退動作を省略することも可能である。この場合、光軸方向後方への移動は機械的に制限を受けないように3群レンズ枠13の駆動機構を構成しておき、該3群レンズ枠13に対してズームモータ61の駆動力で後退する部材(2群レンズ移動環25または他の部位)を当接させ、該部材と共に3群レンズ枠13を図1の後方移動端まで後退させるとよい。
以上のようにズームレンズ鏡筒10では、撮影状態で第2レンズ群LG2と第3レンズ群LG3が光軸方向に離間して位置し、収納状態では下方に離脱移動した第2レンズ群LG2と第3レンズ群LG3をY方向に重ねて位置させることで、撮像光学系の収納長短縮が達成されている。そして、撮影状態において電磁アクチュエータ40によって防振ユニット26の第1ステージ30と第2ステージ31を位置制御して像振れ補正を行い、収納するときには、第1ステージ30上に支持された第2ステージ31のみを挿脱駆動機構50によって離脱位置に移動させるように第2レンズ群LG2の位置制御装置を構成したので、離脱動作を行う部位が小型で軽量になっており、省スペース性と挿脱駆動機構50の負荷軽減の効果が得られる。省スペース性については、例えば、本実施形態と異なり第2レンズ群LG2の離脱動作を第1ステージ30の移動で行わせることも可能であるが、その場合、第1ステージ30の離脱スペースを確保するべく2群レンズ移動環25の径を拡大する必要が生じ、また第1ステージ30の案内機構も大型になってしまう。これに対し、第2ステージ31のみを離脱位置に移動させる本実施形態の構成では、第1ステージ30の枠内に第2ステージ31の案内機構と移動スペースが収まっているため、2群レンズ移動環25の大径化を回避できる。また、挿脱駆動機構50で挿脱制御レバー51を挿入位置から離脱保持位置へ回動させる駆動源となるのは、2群レンズ移動環25の光軸方向移動を行わせるズームモータ62であり、第2レンズ群LG2を含む離脱動作部分の軽量化によりズームモータ62の負荷が軽減される。ズームモータ62はハウジング14から先の全ての鏡筒構成部材の駆動を担当するため、その負荷を軽減できる本発明の構成が極めて有効である。
以上のズームレンズ鏡筒10では、第2レンズ群LG2を保持する第2ステージ31や、第2ステージ31を支持する第1ステージ30とは別に、挿脱制御レバー51を2群レンズ移動環25内に支持し、撮影状態から収納状態になるときに、この挿脱制御レバー51を離脱制御突起57で押圧することによって挿入位置から離脱保持位置へ動作させ、挿脱制御レバー51を介して第2ステージ31を離脱位置へ押圧移動させている。挿脱制御レバー51は、撮影光軸Oと平行な軸線の支持軸52によって軸支されて撮影光軸Oと直交する平面に沿って回動されるため、離脱制御突起57からの押圧力を受けて光軸方向の負荷が伝わる部位は挿脱制御レバー51までとなり、第2ステージ31や第1ステージ30に対して光軸方向への負荷が作用しない。挿脱制御レバー51の挿脱ガイド溝部55を構成する離脱ガイド面55aや挿入ガイド面55bと、挿脱ガイド溝部55に挿入される第2ステージ31の位置制御ピン31hは、撮影光軸Oと平行な方向への力を伝達しない形状であるため、仮に離脱制御突起57によって押圧された挿脱制御レバー51が支持軸52の軸線に沿う方向に若干量移動しても、第2ステージ31が支持軸52の軸線に沿う方向に押圧されることがない。これにより、第2ステージ31や第1ステージ30の支持機構への負荷を軽減させ、第2レンズ群LG2の高精度な駆動が保証される。
また、離脱制御突起57によって押圧される挿脱制御レバー51は、電磁アクチュエータ40によって駆動される第1ステージ30や第2ステージ31とは異なり、2群レンズ移動環25内での支持軸52の位置を変化させないため、第1ステージ30や第2ステージ31の位置に影響されることなく離脱制御突起57との位置関係を一定に保つことができる。これにより、挿脱制御レバー51のカム当接部51bと離脱制御突起57の端面カム57aの相対位置がずれることがなく、挿脱制御レバー51を高精度に駆動することができる。特に、挿脱制御レバー51と第2ステージ31の間の当接箇所は、挿脱制御レバー51の回動半径方向に向く挿脱ガイド溝部55と、円筒状外面の突起部である位置制御ピン31hによって構成されているため、挿脱制御レバー51を回動させたときに離脱ガイド面55aや挿入ガイド面55bを位置制御ピン31hに確実に当接させ、第2ステージ31を防振駆動位置と離脱位置へ移動させることができる。
図21及び図22は、第2ステージ31の位置制御を行う離脱駆動部材を、挿脱制御レバー51のような揺動部材に代えて、Y方向に直進移動する直進挿脱部材71で構成した挿脱駆動機構70を示している。挿脱駆動機構70は駆動源としてモータ(挿脱制御手段)72を備え、該モータ72のドライブシャフト73がY方向に沿って上方へ延出されている。ドライブシャフト73の外面には送りねじが形成されており、直進挿脱部材71はこの送りねじに螺合するねじ穴を有する。直進挿脱部材71は、ドライブシャフト73の軸回りの回転を行わないように回り止めされている。よって、モータ72によりドライブシャフト73を正逆に回転駆動すると、直進挿脱部材71がY方向に上下移動される。図21は、第2レンズ群LG2(第2ステージ31)の防振駆動位置に対応する直進挿脱部材71の挿入位置を示し、図22は、第2レンズ群LG2(第2ステージ31)の離脱位置に対応する直進挿脱部材71の離脱保持位置を示している。
直進挿脱部材71は、X方向の一端部が開口されたコ字状の凹部74を有し、該凹部74内にY方向に離間する離脱ガイド面(第1の押圧部)75と挿入ガイド面(第2の押圧部、離脱規制部)76が形成されている。離脱ガイド面75と挿入ガイド面76はそれぞれX方向に延びる面であって、互いの間に第2ステージ31の位置制御ピン31hが挿入されている。離脱ガイド面75と挿入ガイド面76のY方向の間隔や、凹部74のX方向の深さは、いずれも位置制御ピン31hの径サイズに対して所定以上に大きく、凹部74に対して位置制御ピン31hは遊嵌状態で挿入される。より詳しくは、離脱ガイド面75と挿入ガイド面76のY方向間隔と、凹部74のX方向の深さは、電磁アクチュエータ40(図21及び図22では省略されているが、先の実施形態と同様のものが搭載されている)による第2ステージ31(及び第1ステージ30)の像振れ補正用の移動を妨げないサイズに設定されている。よって、図21に示す直進挿脱部材71の挿入位置では、直進挿脱部材71に妨げられることなく、防振ユニット26の第1ステージ30と第2ステージ31を電磁アクチュエータ40で位置制御して像振れ補正を行うことができる。そして、電磁アクチュエータ40による防振駆動範囲を超える第2ステージ31のY方向の移動は、離脱ガイド面75と挿入ガイド面76に対する位置制御ピン31hの当接で規制される。つまり、直進挿脱部材71が挿入位置にあるとき、挿入ガイド面76は、第2ステージ31の離脱位置方向への過度移動を規制する離脱規制部として機能する。なお、挿脱制御レバー51を用いる先の実施形態と同様に、第2ステージ31の上方への移動規制については、離脱ガイド面75と位置制御ピン31hの当接に代えて、第2ステージ31の支持腕部31b、31cと第1ステージ30の上辺部30aの当接などによって行わせることもできる。
モータ72の駆動によって直進挿脱部材71を図21の挿入位置から図22の離脱保持位置へ向けて移動させると、離脱ガイド面75が位置制御ピン31hを下方に押圧し、第2ステージ31は電磁アクチュエータ40によって位置制御される防振駆動位置を外れて離脱位置に保持される。反対に、モータ72の駆動によって直進挿脱部材71を図22の離脱保持位置から図21の挿入位置へ向けて移動させると、挿入ガイド面76が位置制御ピン31hを上方に押圧し、第2ステージ31は電磁アクチュエータ40によって位置制御される防振駆動位置に戻る。
この実施形態の構成でも、第2ステージ31を防振駆動位置と離脱位置に移動させるに際して、2群レンズ移動環25に対して撮影光軸と直交する方向へ移動可能に支持された直進挿脱部材71を用いることで、第2ステージ31や第1ステージ30に対する光軸方向への負荷を防ぎ、第2レンズ群LG2を高精度に挿脱移動させることができる。
図23と図24は、防振駆動手段として、先に説明した電磁アクチュエータ40と異なる形態の電磁アクチュエータ80を示している。電磁アクチュエータ80は、第2ステージ31上に固定された永久磁石81と、第1ステージ30上に固定された永久磁石82と、シャッタユニット27(図23及び図24には表れていないが、先の実施形態と同様のものである)の後面に固定された2つのコイル83、84を備えている。永久磁石81、82はそれぞれ細長矩形の薄板状をなし、短手方向の略中央を通り長手方向に向く磁極境界線M11、M12で分割される半割領域の一方がN極で他方がS極となっている。永久磁石81は、磁極境界線M11をX方向に向けて、第2ステージ31の支持腕部31b上に設けられている。永久磁石82は、磁極境界線M12をY方向に向けて、第1ステージ30の側辺部30d上に設けられている。コイル83、84は略平行な一対の長辺部と該長辺部を接続する一対の湾曲部を有する空芯コイルである。コイル83は、その長軸方向Q11が永久磁石81の磁極境界線M11と略平行になるように配置され、コイル84は、その長軸方向Q12が永久磁石82の磁極境界線M12と略平行になるように配置されている。シャッタユニット27の後面にはさらに、コイル83に隣接する位置に位置センサ85が設けられ、コイル84に隣接する位置に位置センサ86が設けられている。位置センサ85、86を用いて、永久磁石81、82と共に移動する第2レンズ群LG2のX方向及びY方向の位置を検出することができる。
電磁アクチュエータ80では、永久磁石81とコイル83が光軸方向に対向してコイル83が永久磁石81の磁界内に位置する状態(図23)で該コイル83に通電すると、撮影光軸Oと直交する平面内で磁極境界線M11及びコイル長軸方向線Q11と略直交するY方向への駆動力が作用する。また、永久磁石82とコイル84が光軸方向に対向してコイル84が永久磁石82の磁界内に位置する状態(図23、図24)で該コイル84に通電すると、撮影光軸Oと直交する平面内で磁極境界線M12及びコイル長軸方向線Q12と略直交するX方向への駆動力が作用する。つまり、コイル83への通電制御により第2ステージ31をY方向に移動させ、コイル84への通電制御により第1ステージ30をX方向に移動させることができる。
第2ステージ31は、第1の実施形態における挿脱駆動機構50や第2の実施形態における挿脱駆動機構70に相当する挿脱駆動機構によって、図23に示す防振駆動位置と図24に示す離脱位置との間を移動させることができる。離脱位置では、電磁アクチュエータ80のうち永久磁石81とコイル83がY方向に離間して第2ステージ31の位置制御を行わなくなるのに対し、永久磁石82とコイル84は第1ステージ30の位置制御が可能な位置関係が維持されている点が先の実施形態と異なる。図24に示すように、第2ステージ31が離脱位置に移動すると、支持腕部31b上に支持された永久磁石81が第1ステージ30の開口30eの下方に位置されるので、該開口30e内に進入する3群レンズ枠13のレンズ保持筒部13aと干渉しない。また、永久磁石82は、第1ステージ30上で常に開口30eの外側に保持されているので、これも3群レンズ枠13のレンズ保持筒部13aとは干渉しない。
以上、図示実施形態に基づき説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図示実施形態では第1ステージ30と第2ステージ31がそれぞれX方向とY方向に直進移動するが、直進移動する部材以外にも適用が可能であり、例えば、第1ステージ30をX方向への移動成分を含む揺動部材としたり、第2ステージ31をY方向への移動成分を含む揺動部材としても、本発明は成立する。また、図示実施形態では第1ステージ30と第2ステージ31の移動方向は互いに直交しているが、直交以外の角度で第1ステージ30と第2ステージ31の移動方向が交差していてもよい。つまり、本発明では、像振れ補正用の光学要素(防振光学要素)を保持する第1と第2の移動部材は、光軸と直交する面内で互いに交差する方向へ移動する関係にあればよい。
また、図示実施形態の電磁アクチュエータ40、80では、移動部材である第1ステージ30や第2ステージ31側に永久磁石41、42、81及び82が設けられ、コイル43、44、83及び84が2群レンズ移動環25内に固定的に支持されているが、この配置関係を逆にすることも可能である。但し、コイルには通電用の配線を接続する必要があるため、図示実施形態のように固定側の部材にコイルを設け、移動部材側に磁石を設ける方が、配線の取り回しなどの点で有利である。
また、図示実施形態は、像振れ補正用の光学要素(防振光学要素)がレンズ群であるが、撮像素子などレンズ群以外の光学要素の位置制御装置としても本発明は適用が可能である。