以下に本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は原則的に繰返さないものとする。
[実施の形態1]
(システム構成)
図1は、本発明の実施の形態に従う交流電動機の制御システムの全体構成図である。
図1を参照して、交流電動機M1を制御対象とする制御システム100は、直流電圧発生部10と、平滑コンデンサC0と、インバータ14と、制御装置30とを備える。
交流電動機M1は、電動車両(ハイブリッド自動車、電気自動車や燃料電池車等の電気エネルギによって車両駆動力を発生可能な自動車を包括的に表現するものとする)の駆動輪にトルクを発生させるように構成された走行用電動機である。あるいは、この交流電動機M1は、エンジンによって駆動される発電機の機能を持つように構成されてもよく、電動機および発電機の機能を併せ持つように構成されてもよい。さらに、交流電動機M1は、エンジンに対して電動機として動作し、たとえば、エンジン始動を行ない得るようなものとしてハイブリッド自動車に組み込まれるようにしてもよい。すなわち、本実施の形態において、「交流電動機」は、交流駆動の電動機、発電機および電動発電機(モータジェネレータ)を含むものである。
交流電動機M1の出力トルクは、減速機や動力分割機構によって構成される駆動機械系40によって駆動輪50に伝達されて電動車両を走行させる。交流電動機M1は、電動車両の回生制動時には、駆動機械系40を経由して伝達された駆動輪50の回転力によって発電することができる。そしてその発電電力は、PCU20によって蓄電装置Bの充電電力に変換される。
なお、交流電動機M1の他にエンジン(図示せず)が搭載されたハイブリッド自動車では、このエンジンおよび交流電動機M1を協調的に動作させることによって、必要な電動車両の車両駆動力が発生される。この際には、エンジンの回転による発電電力を用いて、蓄電装置Bを充電することも可能である。
すなわち、電動車両は、車両駆動力発生用の電動機を搭載する車両を示すものであり、エンジンおよび電動機により車両駆動力を発生するハイブリッド自動車、エンジンを搭載しない電気自動車、燃料電池車等を含む。
直流電圧発生部10は、蓄電装置Bと、システムリレーSR1,SR2と、平滑コンデンサC1と、昇圧コンバータ12とを含む。
直流電源として設けられる蓄電装置Bは、代表的には、ニッケル水素電池またはリチウムイオン電池等の二次電池や電気二重層キャパシタ等の再充電可能な装置により構成される。蓄電装置Bには、監視用センサ11が設けられる。これにより、蓄電装置Bの出力電圧Vb、出力電流Ibおよび温度Tbが検出される。監視用センサ11による検出値は、制御装置30へ入力される。
システムリレーSR1は、蓄電装置Bの正極端子および電力線6の間に接続され、システムリレーSR1は、蓄電装置Bの負極端子および電力線5の間に接続される。システムリレーSR1,SR2は、制御装置30からの信号SEによりオン/オフされる。
昇圧コンバータ12は、リアクトルL1と、電力用半導体スイッチング素子Q1,Q2とを含む。電力用半導体スイッチング素子Q1およびQ2は、電力線7および電力線5の間に直列に接続される。電力用半導体スイッチング素子Q1およびQ2のオンオフは、制御装置30からのスイッチング制御信号S1およびS2によって制御される。
この発明の実施の形態において、電力用半導体スイッチング素子(以下、単に「スイッチング素子」と称する)としては、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、電力用MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタあるいは、電力用バイポーラトランジスタ等を用いることができる。スイッチング素子Q1,Q2に対しては、逆並列ダイオードD1,D2が配置されている。リアクトルL1は、スイッチング素子Q1およびQ2の接続ノードと電力線6の間に接続される。また、平滑コンデンサC0は、電力線7および電力線5の間に接続される。
平滑コンデンサC0は、電力線7の直流電圧を平滑化する。電圧センサ13は、平滑コンデンサC0の両端の電圧、すなわち、電力線7上の直流電圧VHを検出する。以下では、インバータ14の直流リンク電圧に相当する直流電圧VHを「システム電圧VH」とも称する。一方、電力線6の直流電圧VLは、電圧センサ19によって検出される。システムリレーSR1,SR2のオン時には、直流電圧VLは、蓄電装置Bの出力電圧に相当する。電圧センサ13,19によって検出された直流電圧VH,VLは、制御装置30へ入力される。
インバータ14は、電力線7および電力線5の間に並列に設けられる、U相上下アーム15と、V相上下アーム16と、W相上下アーム17とから成る。各相上下アームは、電力線7および電力線5の間に直列接続されたスイッチング素子から構成される。たとえば、U相上下アーム15は、スイッチング素子Q3,Q4から成り、V相上下アーム16は、スイッチング素子Q5,Q6から成り、W相上下アーム17は、スイッチング素子Q7,Q8から成る。また、スイッチング素子Q3〜Q8に対して、逆並列ダイオードD3〜D8がそれぞれ接続されている。スイッチング素子Q3〜Q8のオンオフは、制御装置30からのスイッチング制御信号S3〜S8によって制御される。
代表的には、交流電動機M1は、3相の永久磁石型同期電動機であり、U,V,W相の3つのコイルの一端が中性点に共通接続されて構成される。さらに、各相コイルの他端は、各相上下アーム15〜17のスイッチング素子の中間点と接続されている。
昇圧コンバータ12は、非昇圧モードおよび昇圧モードのいずれかで動作する。非昇圧モードでは、昇圧コンバータ12は、PWM制御に従って、スイッチング素子Q1およびQ2が相補的かつ交互にオンオフするように制御される。昇圧コンバータ12は、スイッチング素子Q1,Q2のオン期間比(デューティ比)を制御することによって、昇圧比(VH/VL)を制御することができる。したがって、直流電圧VL,VHの検出値とシステム電圧指令値VH*とに従って演算されたデューティ比に従って、スイッチング素子Q1,Q2のオンオフが制御される。このように、昇圧モードでは、VH*>VLに設定されて、昇圧コンバータ12がスイッチング素子Q1,Q2のオンオフ制御によって、システム電圧VHを制御する。
なお、スイッチング素子Q1をスイッチング素子Q2と相補的にオンオフすることにより、リアクトルL1の電流方向に応じて制御を切換えることなく蓄電装置Bの充電および放電の両方に対応することができる。すなわち、システム電圧指令値VH*に従うシステム電圧VHの制御を通じて、昇圧コンバータ12は、回生および力行の両方に対応することができる。
交流電動機M1の低出力時には、昇圧コンバータ12による昇圧を行なうことなく、VH=VL(昇圧比が1)の状態で交流電動機M1を制御することができる。この場合には、非昇圧モードが選択されて、スイッチング素子Q1およびQ2が、オンおよびオフにそれぞれ固定されるので、昇圧コンバータ12での電力損失が低下する。
インバータ14は、交流電動機M1のトルク指令値が正(Tqcom>0)の場合には、平滑コンデンサC0から直流電圧が供給されると制御装置30からのスイッチング制御信号S3〜S8に応答した、スイッチング素子Q3〜Q8のスイッチング動作により直流電圧を交流電圧に変換して正のトルクを出力するように交流電動機M1を駆動する。また、インバータ14は、交流電動機M1のトルク指令値が零の場合(Tqcom=0)には、スイッチング制御信号S3〜S8に応答したスイッチング動作により、直流電圧を交流電圧に変換してトルクが零になるように交流電動機M1を駆動する。これにより、交流電動機M1は、トルク指令値Tqcomによって指定された零または正のトルクを発生するように駆動される。
さらに、制御システム100が搭載された電動車両の回生制動時には、交流電動機M1のトルク指令値Tqcomは負に設定される(Tqcom<0)。この場合には、インバータ14は、スイッチング制御信号S3〜S8に応答したスイッチング動作により、交流電動機M1が発電した交流電圧を直流電圧に変換し、その変換した直流電圧(システム電圧VH)を平滑コンデンサC0を介して昇圧コンバータ12へ供給する。
なお、ここで言う回生制動とは、電動車両を運転するドライバによるフットブレーキ操作があった場合の回生発電を伴う制動や、フットブレーキを操作しないものの、走行中にアクセルペダルをオフすることで回生発電をさせながら車両を減速(または加速の中止)させることを含む。
電流センサ24は、交流電動機M1に流れる電流(相電流)を検出し、その検出値を制御装置30へ出力する。なお、三相電流iu,iv,iwの瞬時値の和は零であるので、図1に示すように2相分のモータ電流(たとえば、V相電流ivおよびW相電流iw)を検出するように配置してもよい。
回転角センサ(レゾルバ)25は、交流電動機M1のロータ回転角θを検出し、その検出した回転角θを制御装置30へ送出する。制御装置30では、回転角θに基づき交流電動機M1の回転速度Nmtおよび回転角速度ωを算出できる。なお、回転角センサ25については、回転角θを制御装置30にてモータ電圧や電流から直接演算することによって、配置を省略してもよい。
制御装置30は、電子制御ユニット(ECU)により構成され、予め記憶されたプログラムを図示しないCPU(Central Processing Unit)で実行することによるソフトウ
ェア処理および/または専用の電子回路によるハードウェア処理により、制御システム100の動作を制御する。
代表的な機能として、制御装置30は、入力されたトルク指令値Tqcom、電圧センサ19によって検出された直流電圧VL、電圧センサ13によって検出されたシステム電圧VH、および電流センサ24によって検出されるモータ電流iu(iu=−(iv+iw)),iv,iw、回転角センサ25からの回転角θ等に基づいて、後述する制御方式により交流電動機M1がトルク指令値Tqcomに従ったトルクを出力するように、昇圧コンバータ12およびインバータ14の動作を制御する。
すなわち、制御装置30は、直流電圧VHをシステム電圧指令値VH*に従って上記のように制御するために昇圧コンバータ12のスイッチング制御信号S1,S2を生成する。また、制御装置30は、交流電動機M1の出力トルクをトルク指令値Tqcomに従って制御するためのスイッチング制御信号S3〜S8を生成する。スイッチング制御信号S1〜S8は、昇圧コンバータ12およびインバータ14へ入力される。
(電動機制御における制御モード)
次に、インバータ14による交流電動機M1を対象とした交流電動機制御について詳細に説明する。
図2は、交流電動機制御のための制御モードを説明する図である。
図2に示すように、本発明の実施の形態に従う交流電動機の制御システムでは、インバータによる交流電動機制御について3つの制御モードを切換えて使用する。
正弦波PWM制御は、一般的なPWM制御として用いられるものであり、各相アームにおけるスイッチング素子のオンオフを、正弦波状の電圧指令と搬送波(代表的には、三角波)との電圧比較に従って制御する。電圧指令は、交流電動機M1の出力トルクをトルク指令値に従って制御するための制御演算によって算出された、インバータから交流電動機M1へ出力されるべき交流電圧(相電圧)を示す。
PWM制御によって、上アーム素子のオン期間に対応するハイレベル期間と、下アーム素子のオン期間に対応するローレベル期間との集合について、一定期間内でその基本波成分が正弦波となるようにデューティ比が制御される。
以下、本明細書では、インバータによる直流/交流電圧変換における、直流リンク電圧(システム電圧VH)に対する交流電動機M1へ出力される交流電圧(線間電圧の実効値)の比を「変調度」と定義する。正弦波PWM制御の適用は、基本的には、各相の交流電圧振幅(相電圧)がシステム電圧VHと等しくなる状態が限界である。すなわち、正弦波PWM制御では、変調度を0.61倍程度までしか高めることができない。なお、正弦波状の電圧指令に3n次高調波を重畳することにより、正弦波PWM制御での変調度最大値は、0.70まで高めることができる。
過変調PWM制御は、搬送波の振幅よりも大きい振幅の交流電圧(正弦波状)について、その振幅を拡大した上で、上記正弦波PWM制御と同様のPWM制御を行なうものである。この結果、基本波成分を歪ませることによって、変調度を0.61(0.7)〜0.78の範囲まで高めることができる。これにより、正弦波PWM制御が適用できない領域の一部についても、PWM制御の適用が可能となる。
正弦波PWM制御および過変調PWM制御では、交流電動機M1を流れるモータ電流のフィードバック制御によって、上記電圧指令が算出される。なお、以下では、正弦波PWM制御および過変調PWM制御の両者を包括する場合に、単にPWM制御とも称することとする。
一方、矩形波電圧制御では、電動機の電気角360度に相当する期間内で、ハイレベル期間およびローレベル期間の比が1:1の矩形波1パルス分をインバータが出力する。これにより、変調度は0.78まで高められる。矩形波電圧制御では、変調度は0.78に固定される。
(各制御モードの制御構成の説明)
図3は、本発明の実施の形態1に従う交流電動機の制御システムにおけるPWM制御での制御構成を説明する機能ブロック図である。図3を含めて、以下で説明される機能ブロック図に記載されたモータ制御のための各機能ブロックは、制御装置30によるハードウェア的あるいはソフトウェア的な処理によって実現される。
図3を参照して、PWM制御部200は、電流指令生成部210と、座標変換部220,250と、電圧指令生成部240と、PWM変調部260とを含む。
電流指令生成部210は、予め作成されたマップ等に従って、交流電動機M1のトルク指令値Tqcomに応じた、d軸電流指令値Idcomおよびq軸電流指令値Iqcomを生成する。後述するように、d軸電流指令値Idcomおよびq軸電流指令値Iqcomの組み合わせによって、交流電動機M1の電流位相が適正に制御できる。
座標変換部220は、回転角センサ25によって検出される交流電動機M1の回転角θを用いた座標変換(3相→2相)により、電流センサ24によって検出されたv相電流ivおよびW相電流iwを基に、d軸電流Idおよびq軸電流Iqを算出する。
電圧指令生成部240には、d軸電流の指令値に対する偏差ΔId(ΔId=Idcom−Id)およびq軸電流の指令値に対する偏差ΔIq(ΔIq=Iqcom−Iq)が入力される。電圧指令生成部240は、d軸電流偏差ΔIdおよびq軸電流偏差ΔIqのそれぞれについて、所定ゲインによるPI(比例積分)演算を行なって制御偏差を求め、この制御偏差に応じたd軸電圧指令値Vd♯およびq軸電圧指令値Vq♯を生成する。
座標変換部250は、交流電動機M1の回転角θを用いた座標変換(2相→3相)によって、d軸電圧指令値Vd♯およびq軸電圧指令値Vq♯をU相、V相、W相の各相電圧指令Vu,Vv,Vwに変換する。
この際に、上述の変調度Kmdは、d軸およびq軸の電圧指令値Vd♯,Vq♯およびシステム電圧VHを用いると、下記(1)式によって示される。
Kmd=(Vd♯2+Vq♯2)1/2/VH ・・・(1)
PWM変調部260は、図示しない搬送波と、交流電圧指令(Vu,Vv,Vwを包括的に示すもの)との比較に基づき、インバータ14の各相の上下アーム素子のオンオフを制御することによって、交流電動機M1の各相に疑似正弦波電圧を生成する。搬送波は、所定周波数の三角波やのこぎり波によって構成される。なお、上述のように、正弦波の交流電圧指令に対して3n次高調波を重畳させることも可能である。
なお、インバータ14でのパルス幅変調において、搬送波の振幅は、インバータ14の直流リンク電圧(システム電圧VH)に相当する。なお、PWM変調する交流電圧指令の振幅について、本来の各相電圧指令Vu,Vv,Vwの振幅をシステム電圧VHで除算したものに変換すれば、PWM変調部260で用いる搬送波の振幅を固定できる。
なお、正弦波PWMの選択時に、変調度Kmdが0.61(3n次高調波の重畳時は0.7)〜0.78の範囲に上昇すると、過変調PWMが適用される。過変調PWM制御では、電圧指令値Vd♯,Vq♯を2相−3相変換した各相電圧指令の振幅が、インバータ14の直流リンク電圧(システム電圧VH)よりも大きい状態となる。一方で、インバータ14から交流電動機M1に対してはシステム電圧VHを超えた電圧が印加できないため、各相電圧指令信号に従ったPWM制御によっては、電圧指令値Vd♯,Vq♯に対応する本来の変調度が確保できなくなる。
このため、過変調PWM制御では、電圧指令値Vd♯,Vq♯による交流電圧指令に対して、電圧印加区間が増大するように電圧振幅を拡大(×k倍,k>1)する補正処理を行うことによって、電圧指令値Vd♯,Vq♯による本来の変調度が確保できるようになる。このような振幅補正処理は、過変調PWM制御時における電圧指令生成部240または座標変換部250での機能追加によって実行することができる。
正弦波PWM制御または過変調PWM制御の適用時には、インバータ14が、PWM制御部200によって生成されたスイッチング制御信号S3〜S8に従ってスイッチング制御される。これにより、交流電動機M1に対して、トルク指令値Tqcomに従ったトルクを出力するための交流電圧が印加される。すなわち、電流位相を規定する電流指令値Idcom,Iqcomを基準値とするモータ電流のフィードバック制御により、交流電動機M1のトルク制御を行なうことができる。
図4は、本発明の実施の形態に従う交流電動機の制御システムにおける矩形波電圧制御での制御構成を説明する機能ブロック図である。
図4を参照して、矩形波電圧制御部400は、電力演算部410と、トルク演算部420と、PI演算部430と、矩形波発生器440と、信号発生部450とを含む。
電力演算部410は、電流センサ24によるV相電流ivおよびW相電流iwから求められる各相電流と、各相電圧Vu,Vv,Vwとにより、下記(2)式に従ってモータへの供給電力(モータ電力)の推定値Pmtを算出する。
Pmt=iu・Vu+iv・Vv+iw・Vw …(2)
トルク演算部420は、電力演算部410によって求められたモータ電力(推定値)Pmtおよび回転角センサ25によって検出される交流電動機M1の回転角θから算出される回転角速度ωを用いて、下記(3)式に従ってトルク推定値Tqtを算出する。
Tqt=Pmt/ω …(3)
なお、電力演算部410およびトルク演算部420に代えてトルクセンサを配置することによって、当該トルクセンサの検出値に基づいて、トルク偏差ΔTqを求めてもよい。
PI演算部430へは、トルク指令値Tqcomに対するトルク偏差ΔTq(ΔTq=Tqcom−Tq)が入力される。PI演算部430は、トルク偏差ΔTqについて所定ゲインによるPI演算を行なって制御偏差を求め、求められた制御偏差に応じて矩形波電圧の位相φvを設定する。
矩形波発生器440は、PI演算部430によって設定された電圧位相φvに従って、各相電圧指令(矩形波パルス)Vu,Vv,Vwを発生する。信号発生部450は、各相電圧指令Vu,Vv,Vwに従ってスイッチング制御信号S3〜S8を発生する。インバータ14がスイッチング制御信号S3〜S8に従ったスイッチング動作を行なうことにより、電圧位相φvに従った矩形波電圧パルスが、モータの各相電圧として印加される。
図5は、矩形波電圧制御における電圧位相−トルク特性を説明するための概念図である。図5には、一定回転速度(ω一定)の下でシステム電圧VHを変化させた場合の各々における電圧位相−トルク特性が示される。
図5から理解される通り、同一の電圧位相φvに対して、システム電圧VHが高くなるほど、出力トルクが大きくなる。したがって、高トルクの要求時には、昇圧コンバータ12によってシステム電圧VHを上昇することにより、出力トルクを確保することができる。
図5には、力行動作(正トルク出力)時における特性を例示したが、q軸を基準とする電圧位相φvの極性を反転すれば、回生動作(負トルク出力)時についても同様に交流電動機M1の出力トルクを制御することができる。
図6には、交流電動機M1の動作点と適用される制御モードとの関係を説明するための概念図が示される。図6の横軸は、交流電動機M1の回転速度を示し、図6の縦軸は、交流電動機M1の出力トルクを示している。
交流電動機の制御システム100では、交流電動機M1の状態に応じて、図2に示した、正弦波PWM制御、過変調PWM制御および矩形波電圧制御が選択的に適用される。すなわち、交流電動機M1の同一の出力に対しても、システム電圧VHが変化すると変調度が変わるため、適用される制御モードも変わってくる。
図6を参照して、制御システム100では、昇圧コンバータ12を非昇圧モードで動作させると、蓄電装置Bの出力電圧(すなわち、直流電圧VL)がそのままシステム電圧VHとなる(VH=VL)。交流電動機M1の低出力時には、非昇圧モードにおいて上記3つの制御方式のいずれかを適用することにより交流電動機M1を駆動することができる。
図6に示された非昇圧時最大トルクラインLN1は、昇圧コンバータ12の非昇圧モード時に、各回転速度において交流電動機M1が出力可能な最大出力トルクの集合である。非昇圧時最大トルクラインLN1の内側の略台形状の領域は、上述した変調度に応じて、正弦波PWM制御領域A1、過変調PWM制御領域A2および矩形波電圧制御領域A3に区別されることになる。
正弦波PWM制御領域A1および過変調PWM制御領域A2との境界ラインLN2は、各回転速度において、変調度が、一般的な正弦波PWM制御での変調度最大値である0.61(または0.7)となる際の出力トルクの集合を示す。
また、過変調PWM制御領域A2と矩形波電圧制御領域A3との境界ラインLN3は、各回転速度において、変調度が、矩形波電圧制御での変調度である0.78となる際の出力トルクの集合を示す。
図6中に破線で示す昇圧時最大トルクラインLN4は、昇圧コンバータ12が、蓄電装置Bの出力電圧を上限電圧まで昇圧してシステム電圧VHを最大値VHmax(たとえば650V)としたときに、各回転速度において交流電動機M1が出力可能な最大出力トルクの集合である。
上述のように、非昇圧モードでは昇圧コンバータ12でのスイッチング損失が低減されるため、システム全体の効率が向上する。このため、非昇圧モードの適用を拡大することが効率面からは有利である。一方で、交流電動機M1の動作点(回転速度およびトルク)が、非昇圧時最大トルクラインLN1の外側に位置する場合には、昇圧コンバータ12が昇圧モードで動作しないと、トルク指令値に従ったトルクを発生することができなくなる。
次に、上述のように制御モードの切換えを伴って交流電動機M1の出力が変化した場合における交流電動機の電流位相の変化を、図7を用いて説明する。
図7は、制御モードの切換えを伴う交流電動機M1の電流位相の変化を示す図である。図7には、同一の直流電圧VHに対して、出力トルクを徐々に高めていったときの電流位相の変化の軌跡が例示されている。図7の横軸はd軸電流Idを示しており、図7の縦軸はq軸電流Iqを示している。電流位相φiは、下記(4)式で定義される。
正弦波PWM制御および過変調PWM制御では、電流位相φiは、最適電流位相ライン42上となるように決定される。最適電流位相ライン42は、Id−Iq平面上で、モータ電流の同一振幅に対して出力トルクが最大となる電流位相の集合として描かれる。すなわち、最適電流位相ライン42は、Id−Iq平面上の等トルク線上における交流電動機M1での損失が参照となる電流位相点の集合に相当する。最適電流位相ライン42は、予め実験ないしシミュレーションによって求めることができる。
PWM制御での電流フィードバック制御におけるd軸およびq軸の電流指令値(Idcom,Iqcom)は、トルク指令値Tqcomに対応する等トルク線と最適電流位相ライン42との交点に対応するd軸およびq軸の電流値に設定される。たとえば、各トルク指令値に対応させて最適電流位相ライン42上の電流指令値Idcom,Iqcomの組み合わせを決定するPWM制御用のマップを予め作成して、制御装置30内に記憶させておくことができる。
図7では、零点位置を起点とするId,Iqの組み合わせによる電流ベクトルの先端位置(電流位相)が、出力トルクの増加に応じて変化する軌跡を矢印で示している。出力トルクが増加するのに応じて、電流の大きさ(Id−Iq平面上での電流ベクトルの大きさに相当)が増加する。正弦波PWM制御および過変調PWM制御では、電流指令値Idcom,Iqcomの設定により、電流位相が最適電流位相ライン42上に制御される。トルク指令値がさらに増加し、変調度が0.78に達すると矩形波電圧制御が適用される。
矩形波電圧制御では、弱め界磁制御を行なうために、電圧位相φvを大きくすることにより出力トルクを増加させるのに従って、界磁電流であるd軸電流Idの絶対値が増加する。この結果、電流ベクトルの先端位置(電流位相)が、最適電流位相ライン42から図中左側(進角側)に離れることによって、交流電動機M1の損失が増加する。このように、矩形波電圧制御では、インバータ14によって交流電動機M1の電流位相を直接制御することができなくなる。
反対に、同一のシステム電圧VHの下で、電圧位相φvを小さくすることにより出力トルクを減少していくと、電流位相φiは図中右側(遅角側)へ変化する。そして、矩形波電圧制御時に電流位相φiが、モード切換ライン43よりも遅角側になると、矩形波電圧制御からPWM制御への遷移が指示される。たとえば、モード切換ライン43は、φi=φth(基準値)となる電流位相点の集合として描かれる。言い換えると、電流位相φiがφth(基準値)よりも小さくなると、矩形波電圧制御からPWM制御への遷移が指示される。
図8には、PWM制御および矩形波電圧制御の間のモード切換を説明するための遷移図が示される。
図8を参照して、PWM制御(正弦波PWMまたは過変調PWM制御)の適用時には、図3に示した電流フィードバック制御によって求められた交流電圧の振幅に従って、変調度が演算される。たとえば、上述の(1)式に従って変調度Kmdを演算できる。
PWM制御の適用時に、変調度Kmdが0.78よりも大きくなると、矩形波電圧制御モードへの遷移が指示される。
矩形波電圧制御では、出力トルクの低下に応じて電流位相φiが図7での右側(遅角側)へ変化する。そして、電流位相φiが基準値φthよりも小さくなると、すなわち、図7に示したモード切換ライン43よりも遅角側の位相領域に入ると、PWM制御モードへの遷移が指示される。
交流電動機M1の同一出力に対してシステム電圧VHを変えると、PWM制御における変調度が変化する。また、矩形波電圧制御では、当該出力を得るための電圧位相φvが変化するのに付随して電流位相φiが変化する。したがって、システム電圧VHに応じて、制御システムでの損失が変化する。
図9は、3つの制御モードを通じたシステム電圧VHの変化に応じた制御システムの挙動を説明するための概念図である。図9には、システム電圧VHを変化させた上で、交流電動機M1の出力(回転速度×トルク)を同一としたときの挙動が示される。
図9を参照して、同一出力に対してシステム電圧VHを低下させるのに従って、変調度は上昇する。変調度の上昇に応じて、順に、正弦波PWM制御、過変調PWM制御および矩形波電圧制御が順に適用される。矩形波電圧制御では、変調度は0.78で一定である。
電流位相は、PWM制御(正弦波PWM制御および過変調PWM制御)の適用時には、電流フィードバック制御に伴い、最適電流位相ライン42(図7)に沿って制御される。システム電圧VHを低下させると、同一出力を得るために必要なモータ電流が増加するので、最適電流位相ライン42に沿って電流位相は徐々に進角側に変化する。矩形波電圧制御では、システム電圧VHを低下させると、同一トルクを出力するための電圧位相が大きくなる。これに従い、図7に示したのと同様に、電流位相は進角側へ変化する。
モータ損失は、PWM制御の適用時には、電流位相が最適電流位相ライン42に沿って制御されるため抑性される。一方で、矩形波電圧制御が適用されると、弱め界磁電流の影響でモータ損失が増加する。矩形波電圧制御の適用時には、同一出力に対してシステム電圧VHが低下すると、弱め界磁電流の増加によりモータ損失が増大する。
一方で、インバータ損失は、インバータ14でのスイッチング回数に依存するので、矩形波電圧制御の適用時には抑性される一方で、PWM制御の適用時には増加する。システム電圧VHが上昇すると、1回のスイッチング当たりの損失電力が増加するため、インバータ損失が増大する。
このようなモータ損失およびインバータ損失の特性から、制御システムでのモータ損失およびインバータ損失の合計は、矩形波電圧制御が適用される動作点44において最小となることが理解される。図7に示されるように、動作点44の電流位相は、最適電流位相ライン42の近傍(遅角側)に位置する。
(非昇圧モードから昇圧モードへの遷移)
ここで、昇圧コンバータ12での非昇圧モードから昇圧モードへの遷移について考える。上述のように、昇圧コンバータ12での損失は、非昇圧モードの適用により大幅に低下する。
しかしながら、非昇圧モードにおける矩形波電圧制御の適用時には、交流電動機M1の出力増加に応じて電圧位相が大きくなると、これに伴う電流位相φiの変化により、交流電動機M1での損失が増加する。このため、図7で示した非昇圧時最大トルクラインLN1よりも内側の領域であっても、電流位相φiが進むことによって交流電動機M1の損失が増加するため、システム全体の効率が低下することがある。このような領域では、昇圧コンバータ12を昇圧モードで動作させてシステム電圧VHを上昇させた方が、昇圧コンバータ12での損失が小さい非昇圧モードを維持するよりも、システム全体での損失を抑制することができる。したがって、非昇圧モードでは、電流位相φiが、最適電流位相ライン42よりも進角側に予め設定された昇圧要求ライン41(図7)を進角側に超えると、昇圧モードへの移行が要求される。
このように、制御システムの効率、すなわち、電動車両のエネルギ効率(燃費)の面からは、図7および図9の動作点44での動作を指向するように、非昇圧モードおよび矩形波電圧制御を積極的に適用することが好ましい。このため、非昇圧モードでは、交流電動機M1の出力増加に応じて、正弦波PWM制御から、過変調PWM制御および矩形波電圧制御を順に適用し、矩形波電圧制御において電流位相が昇圧要求ライン41(図7)を超えることに応じて、非昇圧モードから昇圧モードへの移行を判断する必要がある。
これに対して、交流電動機M1のトルク制御性を高める面からは、正弦波PWM制御の適用が好ましい。このため、代表的には、交流電動機M1のトルク上昇時(たとえば、電動車両でのアクセル開度増加に応答した加速時)のように、高いトルク制御性が要求される場面では、正弦波PWM制御が継続的に適用される必要がある。この場合には、変調度が0.61(または0.7)を超えないように、交流電動機M1の出力増加に応じて、システム電圧VHを上昇させる必要がある。したがって、PWM制御が要求される場面では、非昇圧モードでの変調度に応じて、非昇圧モードから昇圧モードへの移行を判断する必要がある。
このように、本実施の形態に従う交流電動機の制御システム100では、昇圧コンバータ12での昇圧/非昇圧の選択を含めて、システム電圧VHの設定がシステム全体の効率および交流電動機M1のトルク制御性に影響を及ぼす。実施の形態1では、このうち、非昇圧モードから昇圧モードへの移行に着目する。特に、昇圧コンバータ12の昇圧動作開始時に蓄電装置Bの出力に生じる問題に焦点を当てる。
図10は、非昇圧モードから昇圧モードへの移行時に生じる問題点を説明するための動作波形図である。
図10には、電動車両でのアクセル開度Accrの増大に応じて、交流電動機M1への出力要求(出力トルク)が増大する場面での動作が示される。この場面では、インバータ14から交流電動機M1に出力される交流電圧(線間電圧実効値)を示すモータ電圧Vrは、トルク指令値Tqcomに従ったトルクを出力するために上昇する。モータ電圧Vrは、d軸電圧Vdおよびq軸電圧Vqを用いると、Vr=(Vd2+Vq2)1/2と表すことができる。
時刻t1以前では、非昇圧モードであるため、昇圧フラグFvupはオフされている。このため、システム電圧VHは、蓄電装置Bの出力電圧に相当する直流電圧VLと同等である(VH=VL)。
モータ電圧Vrの上昇に伴って蓄電装置Bの出力電流が増加する。これにより、蓄電装置Bでは内部抵抗による電圧降下が増大する。非昇圧モードでは、VH=VLであるので、直流電圧VLおよびVHはモータ電圧Vrの上昇に伴って低下する。モータ電圧Vrの上昇に応じて、変調度Kmd(Kmd=Vr/VH)も上昇する。なお、図10では、VHおよびVLは同一スケールで表記されているが、Vrのスケールは、VHおよびVLとは異なる。すなわち、図10でのVrの電圧変化量は、VH,VLの電圧変化量よりもかなり大きいものである。
通常、加速時には、交流電動機M1のトルク制御性を高めることがドライバビリティの面から必要とされるため、正弦波PWM制御によるトルク制御が好ましい。したがって、図10では、正弦波PWM制御を継続的に適用するために、変調度Kmdに応じて、非昇圧モードから昇圧モードへ遷移する例が示される。
時刻t1において変調度Kmdが昇圧閾値tKmdよりも高くなると、昇圧フラグFvupがオンされる。これに伴って昇圧コンバータ12が昇圧動作を開始するため、システム電圧VHは上昇する。このとき、蓄電装置Bは、これまでの出力電力に加えて、平滑コンデンサC0が接続された電力線7の電圧を上昇させるための昇圧パワーPcをさらに供給することになる。昇圧パワーPcは、単位時間あたりの電圧上昇量ΔVH(ΔVH>0)および平滑コンデンサC0の容量値Cの積に比例する。
このため、昇圧時には、蓄電装置Bの放電電流が増加することにより、蓄電装置Bでの内部抵抗による電圧低下がさらに大きくなる。この結果、蓄電装置Bの出力電圧(直流電圧VL)が大幅に低下する。
図10のように、直流電圧VLが、蓄電装置Bの下限電圧VLminの近傍まで低下した、出力余裕のないタイミングで昇圧動作が開始されると、瞬間的にVL<VLminとなるまで、直流電圧VL、すなわち蓄電装置Bの出力電圧が低下する虞がある。このような現象が生じると、蓄電装置Bが過放電となり劣化が進行することが懸念される。なお、下限電圧VLminは、蓄電装置Bのスペックとして予め定められた、放電時の管理下限電圧に相当するものとする。
時刻t1以降では、アクセル開度Accrはさらに増大するものの、蓄電装置Bの出力電力上限に達したため、交流電動機M1の出力もこれ以上は増大しない。このため、変調度Kmd≒tKmdに維持されるように、システム電圧VHも一定に維持される。すなわち、図10の例では、蓄電装置Bの出力電力制限のみでは、昇圧開始時における蓄電装置Bの出力過剰による電圧低下に対応しきれない虞があることを示している。実施の形態1では、このような蓄電装置Bの電圧低下を抑制するための、昇圧コンバータ12の昇圧モード/非昇圧モードの制御について説明する。
図11は、本発明の実施の形態1に従う交流電動機の制御システムにおける昇圧モード/非昇圧モードの選択のための制御校正を説明する機能ブロック図である。
図11を参照して、昇圧モード制御部500は、第1昇圧判定部510と、第2昇圧判定部520と、調停処理部530と、最低電圧設定部540と、PWM制御要求部560とを有する。
PWM制御要求部560は、電動車両の車両状態に応じて、トルク制御性の高い正弦波PWM制御の適用を要求するためのPWM要求フラグRpwmをオンオフする。たとえば、アクセル開度Accrに基づいて、ドライバによる加速要求が一定レベルを超えている間、PWM要求フラグRpwmはオンされる。あるいは、ドライバによって運転モードを指定できる場合には、加速応答性を重視するスポーツモードの選択時に、PWM要求フラグRpwmをオンするための上記一定レベルを低下させることが好ましい。
第1昇圧判定部510は、インバータ14での変調度または交流電動機M1の電流位相に基づいて、昇圧要求フラグRvup1をオンオフする。昇圧要求フラグRvup1は、第1昇圧判定部510が昇圧コンバータ12に昇圧を要求するときには論理ハイレベル(以下、「Hレベル」と表記する)に設定され、そうでないときには論理ローレベル(以下、「Lレベル」と表記する)に設定される。
第2昇圧判定部520は、蓄電装置Bの出力電圧に相当する直流電圧VLに基づいて、昇圧要求フラグRvup2をオンオフする。昇圧要求フラグRvup2は、第2昇圧判定部520が昇圧コンバータ12に昇圧を要求するときにHレベルに設定され、そうでないときにはLレベルに設定される。
調停処理部530は、昇圧要求フラグRvup1およびRvup2に基づいて、昇圧コンバータ12の非昇圧モード/昇圧モードを規定するための昇圧フラグFvupを設定する。昇圧フラグFvupがローレベルのとき、昇圧コンバータ12は、スイッチング素子Q1がオンに固定される一方で、スイッチング素子Q2がオフに固定される非昇圧モードで動作する。これに対して、昇圧フラグFvupがオンされると、昇圧コンバータ12は、昇圧モードで動作して、システム電圧指令値VH*に従ってシステム電圧VHを制御するように、スイッチング素子Q1およびQ2をオンオフ制御する。
最低電圧設定部540は、第2昇圧判定部520からの昇圧要求フラグRvup2に応じて、昇圧モードにおけるシステム電圧指令値VH*の最低電圧VHmin*を設定する。
図12は、第1昇圧判定部による制御処理動作、より詳細には、昇圧要求フラグRvup1のオンオフ設定を説明するためのフローチャートである。制御装置30が、図12に示したフローチャート処理に従う制御処理を実行することによって、第1昇圧判定部510の機能が実現される。
図12を参照して、第1昇圧判定部510(制御装置30)は、ステップS100により、昇圧フラグFvupが現在オフされているかどうかを判定する。第1昇圧判定部510は、昇圧フラグFvupのオフ時、すなわち非昇圧モードの選択時(S100のYES判定時)には、ステップS110に処理を進めて、PWM要求フラグRpwmがオンされているかどうかを判定する。
第1昇圧判定部510は、非昇圧モードにおいて正弦波PWM制御が要求されているとき(S110のYES判定時)には、ステップS120に処理を進めて、現在の変調度Kmdと昇圧閾値tKmdとの比較に基づいて、昇圧要求フラグRvup1を設定する。具体的には、第1昇圧判定部510は、変調度Kmdが、昇圧閾値tKmdを超えると(S120のYES判定時)、ステップS170に処理を進めて、昇圧要求フラグRvup1をオンする。なお、変調度Kmdに基づいて非昇圧モードから昇圧モードへ移行を判定する場合には、PWM要求フラグRpwmがオンされているため、正弦波PWM制御を継続的に適用することが求められる。したがって、昇圧閾値tKmdは、正弦波PWM制御における変調度最大値0.61(または0.70)以下の値に設定される。たとえば、昇圧閾値tKmdは、0.5〜0.6程度に設定される。
一方で、第1昇圧判定部510は、変調度Kmdが昇圧閾値tKmdに達していないとき(S120のNO判定時)には、ステップS180に処理を進めて、昇圧要求フラグRvup1を現在の値に維持する。このため非昇圧モードでは、昇圧要求フラグRvup1のオフが維持されることになる。
第1昇圧判定部510は、PWM要求フラグRpwmがオフされている場合(S110のNO判定時)には、図7および図9で説明したように、非昇圧モードおよび矩形波電圧制御を積極的に適用するために、ステップS130により、電流位相φiに基づいて昇圧要求フラグRvup1を設定する。ステップS130では、交流電動機M1の現在の電流位相φiが、図7に示した昇圧要求ライン41に対応する電流位相を示す昇圧閾値tφvupと比較される。
図7で説明したように、正弦波PWM制御および過変調PWM制御の適用時には、電流位相φiは、最適電流位相ライン42上を変化するので、φi≦tφvupが維持される。そして、変調度の上昇に伴ってPWM制御から矩形波電圧制御に移行した後、さらに交流電動機M1の出力が増大することによって電流位相φiが遅角側に変化すると、φi>tφvupとなってステップS130がYES判定とされる。
このとき、第1昇圧判定部510は、ステップS170に処理を進めて、昇圧要求フラグRvup1をオンする。一方で、φi≦tφvupのとき、すなわち、電流位相φiが昇圧要求ライン41を超えないときには(S130のNO判定時)には、第1昇圧判定部510は、ステップS180に処理を進めて、昇圧要求フラグRvup1を現在の値に維持する。このため非昇圧モードでは、昇圧要求フラグRvup1のオフが維持されることになる。
第1昇圧判定部510は、昇圧モード時(S100のNO判定時)には、ステップS150により、PWM要求フラグRpwmのオン/オフに応じて、変調度に関する非昇圧閾値tKmd♯を設定する。
具体的には、第1昇圧判定部510は、PWM要求フラグRpwmのオン時には、非昇圧閾値tKmd♯=K1に設定する一方で、PWM要求フラグRpwmのオフ時には、非昇圧閾値tKmd♯=K2に設定される(K2>K1)。なお、PWM要求フラグRpwmのオン時には、非昇圧閾値K1は、ステップS120での昇圧閾値tKmdよりも低く設定される。このように、正弦波PWM制御要求時の昇圧閾値tKmdおよび非昇圧閾値tKmd♯の間にヒステリシスを設けることにより、昇圧モードおよび非昇圧モードの間の切換えが短時間で頻繁に生じることを防止できる。
さらに、第1昇圧判定部510は、ステップS160により、昇圧モードにおける現在の変調度Kmdを、ステップS150で設定された非昇圧閾値tKmd♯と比較する。昇圧モードにおいて変調度Kmdが非昇圧閾値tKmd♯よりも低下すると(S160のYES判定時)、第1昇圧判定部510は、ステップS190に処理を進めて、昇圧要求フラグRvup1をオフする。
これに対して、第1昇圧判定部510は、昇圧モードにおいて変調度Kmdが非昇圧閾値tKmd♯以上であるとき(S160のNO判定時)には、ステップS180に処理を進めて、昇圧要求フラグRvup1を現在の値に維持する。このため昇圧モードでは、昇圧要求フラグRvup1のオンが維持されることになる。
このように、第1昇圧判定部510は、交流電動機M1のトルク制御におけるインバータ14での変調度および/または交流電動機M1の電流位相に基づいて、非昇圧モード/昇圧モードを選択する。第2昇圧判定部520は、第1昇圧判定部510による、交流電動機M1およびインバータ14の状態に基づいた基本的な昇圧モード/非昇圧モードの選択に対して、蓄電装置Bの出力に応じた修正を加えるための機能を有する。すなわち、実施の形態1において、第1昇圧判定部510は本発明における「第1の制御手段」の一実施例に対応し、第2昇圧判定部520は、本発明における「第2の制御手段」の一実施例に対応する。
図13は、第2昇圧判定部520による制御処理動作を説明するためのフローチャートである。制御装置30が、図13に示したフローチャート処理に従う制御処理を実行することによって、第2昇圧判定部520の機能が実現される。
図13を参照して、第2昇圧判定部520(制御装置30)は、ステップS200により、昇圧要求フラグRvup2が現在オンされているかどうかを判定する。第2昇圧判定部520は、昇圧要求フラグRvup2のオフ時(S200のNO判定時)には、ステップS210に処理を進めて、蓄電装置Bの出力電圧に相当する直流電圧VLを閾値電圧tVL1と比較する。一方で、第2昇圧判定部520は、昇圧フラグFvupのオン時、すなわち昇圧モードの選択時(S200のYES判定時)には、ステップS220に処理を進めて、蓄電装置Bの出力電圧に相当する直流電圧VLを閾値電圧tVL2と比較する。
第2昇圧判定部520は、昇圧要求フラグRvup2がオフの場合、VL<tVL1のとき(S210のYES判定時)には、ステップS250に処理を進めて、昇圧要求フラグRvup2をオンする。一方で、非昇圧モードでVL≧tVL1のとき(S210のNO判定時)には、第2昇圧判定部520は、ステップS240に処理を進めて、昇圧要求フラグRvup2を現在の値に維持する。
一方で、第2昇圧判定部520は、昇圧要求フラグRvup2がオンの場合、VL>tVL2のとき(S220のYES判定時)には、ステップS230に処理を進めて、昇圧要求フラグRvup2をオフする。一方で、非昇圧モードでVL≦tVL2のとき(S220のNO判定時)には、第2昇圧判定部520は、ステップS240に処理を進めて、昇圧要求フラグRvup2を現在の値に維持する。
このように、第2昇圧判定部520は、直流電圧VL、すなわち、蓄電装置Bの出力電圧が閾値電圧tVL1よりも低下すると、昇圧要求フラグRvup2をオンする。一旦昇圧オンされた昇圧要求フラグRvup2は、直流電圧VL(蓄電装置Bの出力電圧)が閾値電圧tVL2よりも高くなるとオフされる。なお、閾値電圧tVL1は、図10に示された下限電圧VLminよりも高く設定される。昇圧要求フラグRvup2をオフするための閾値電圧tVL2は、閾値電圧tVL1よりも高く設定される。
図14は、調停処理部530による制御処理動作を説明するためのフローチャートである。制御装置30が、図14に示したフローチャート処理に従う制御処理を実行することによって、調停処理部530の機能が実現される。
図14を参照して、調停処理部530(制御装置30)は、ステップS300により、昇圧要求フラグRvup1がオンされているかどうかを判定する。昇圧要求フラグRvup1がオンされていないとき(S300のNO判定時)には、調停処理部530は、ステップS310により、昇圧要求フラグRvup2がオンされているかどうかを判定する。
昇圧要求フラグRvup1およびRvup2の少なくともいずれかがオンされているときには、ステップS300,S310のいずれかがYES判定とされる。このとき、調停処理部530は、ステップS340に処理を進めて、昇圧フラグFvupをオンする。これにより、昇圧コンバータ12は昇圧モードで動作するように制御される。
調停処理部530は、昇圧要求フラグRvup1およびRvup2の両方がオフされているときには、ステップS320に処理を進めて、システム電圧VHを判定値(VL+Vβ)と比較する。
調停処理部530は、VH>(VL+Vβ)であり、直流電圧VHおよびVLの間の電圧差がVβよりも小さいときには(S320のYES判定時)には、ステップS330により、昇圧フラグFvupをオフする。これにより、昇圧コンバータ12は非昇圧モードで動作するように制御される。
一方、調停処理部530は、VHおよびVLの電圧差がVβ以上であるとき(S320のNO判定時)には、昇圧要求フラグRvup1のRvup2の両方がオフされていても、ステップS340により、昇圧フラグFvupをオンする。非昇圧モードでは、昇圧コンバータ12では、VH=VLの状態となるので、VHおよびVLの電圧差が大きいときに昇圧モードを開始すると、システム電圧VHが急激に変化する虞がある。このため、昇圧要求フラグRvup1のRvup2の両方がオフされた場合でも、昇圧モードでの電圧制御によって、直流電圧VHおよびVLの電圧差が小さくなってから非昇圧モードへ移行することにより、システム電圧VHの急激な変化を防止することができる。
図15は、最低電圧設定部540による制御処理動作を説明するためのフローチャートである。制御装置30が、図15に示したフローチャート処理に従う制御処理を実行することによって、最低電圧設定部540の機能が実現される。
図15を参照して、最低電圧設定部540(制御装置30)は、ステップS350により、昇圧要求フラグRvup2がオンされているかどうかを判定する。最低電圧設定部540は、昇圧要求フラグRvup2がオフのとき、すなわち、蓄電装置Bの出力電圧の低下に応じて昇圧要求が発せられていないとき(S350のNO判定時)には、ステップS370により、昇圧モードにおけるシステム電圧指令値の最低電圧VHmin*=VLに設定する。
これにより、昇圧コンバータ12のシステム電圧指令値VH*は、VL≦VH*≦VHmaxの範囲内で制御される。VHmaxは、システム電圧VHの制御上限値であり、たとえば、上述のように650V程度である。
これに対して、最低電圧設定部540は、昇圧要求フラグRvup2がオンのとき、すなわち、蓄電装置Bの出力電圧の低下に応じて昇圧要求が発せられているとき(S350のYES判定時)には、ステップS360により、昇圧モードにおけるシステム電圧指令値の最低電圧VHmin*=VL+Vαに設定する。これにより、昇圧モードにおいて、システム電圧VHを、非昇圧モードでの電圧値(直流電圧VL相当)から強制的に上昇させるように、システム電圧指令値VH*が設定されることになる。
図16は、実施の形態1に従う昇圧モード/昇圧モードの選択を適用した場合における、制御動作を説明する動作波形図である。図16でも図10と同様のアクセル開度Accrの変化に伴って、交流電動機M1の出力すなわちモータ電圧Vrが上昇したときの挙動が示される。
図16を参照して、時刻ta以前では、図10における時刻t1以前と同様に、昇圧フラグFvupがオフされて昇圧コンバータ12は非昇圧モードで動作する。このため、直流電圧VHおよびVL(VH=VL)は、交流電動機M1の出力増加、すなわちモータ電圧Vrの上昇に応じて徐々に低下する。
実施の形態1による制御では、図10における時刻t1よりも早い時刻taにおいて、直流電圧VLが所定の閾値電圧tVL1まで低下することに応じて、図13のステップS210がYES判定されることにより、昇圧要求フラグRvup2がオンされる。このとき、Kmd<tKmdであるので第1昇圧判定部510による昇圧要求フラグRvup1はオフされている。
調停処理部530は、交流電動機M1およびインバータ14の状態に基づく昇圧要求フラグRvup1はオフされているものの、蓄電装置Bの出力状態に応じた昇圧要求フラグRvup2のオンに応じて、昇圧フラグFvupをオンする。これにより、昇圧コンバータ12が昇圧モードでの動作を開始する。さらに、最低電圧設定部540によって設定された最低電圧VHmin*がVL+Vβに設定されることにより、時刻ta以降では、直流電圧VHは、時刻taまでの電圧よりも昇圧される。
この結果、時刻ta直後では、交流電動機M1への供給電力に加えて、システム電圧VHを昇圧するための電力が蓄電装置Bから出力されるため、蓄電装置Bの出力電圧に相当する直流電圧VLが低下する。しかしながら、図10のように、閾値電圧tVL1を、下限電圧VLminに対して適切な余裕を有するように設定することにより、昇圧コンバータ12の昇圧開始時に生じる電圧低下によって、蓄電装置Bの出力電圧が下限電圧VLminまで低下することを防止できる。少なくとも、下限電圧VLminに対する閾値電圧tVL1の電圧差(tVL1−VLmin)は、システム電圧VHをVHmaxまで上昇するための昇圧パワーを確保できるように設定する必要がある。さらに、交流電動機M1の最大トルク時に蓄電装置Bで生じる電圧降下量に基づいて、交流電動機M1の最大トルク出力に対応できるように、電圧差(tVL1−VLmin)を設定することが好ましい。
言い換えると、実施の形態1では、蓄電装置Bの出力電圧の下限電圧VLminまでの電圧差を、蓄電装置Bの出力余裕と捉えて、当該出力余裕が所定値(tVL1−VLmin)よりも低下すると、昇圧モードへの強制的な移行が指示される。
時刻ta以降でもモータ電圧Vrが上昇することにより、変調度Kmdがさらに上昇する。そして、時刻tbにおいて、変調度Kmdが昇圧閾値tKmdに達することにより、昇圧要求フラグRvup1もオンされる。これにより、時刻tb以降においても昇圧フラグFvupはオンされる。なお、図10の例と同様に、時刻tb以降では、アクセル開度Accrはさらに増大するものの、蓄電装置Bの出力電力上限に達したため、交流電動機M1の出力もこれ以上は増大しない。このため、変調度Kmd≒tKmdに維持されるように、システム電圧VHも一定に維持される。
このように、実施の形態1に従う交流電動機の制御システムは、基本的には交流電動機M1およびインバータ14の状態(変調度,電流位相)に基づいて非昇圧モード/昇圧モードを選択するようにシステム電圧を設定する下で、蓄電装置Bの出力余裕、特に、蓄電装置Bの出力電圧についての下限電圧VLminに対する余裕度に応じて、昇圧コンバータ12を昇圧モードに移行させることで、システム電圧を強制的に上昇させることができる。具体的には、蓄電装置Bの出力電圧が下限電圧VLminに対して余裕があるうちに昇圧モードへ移行することによって、図10に示したような、非昇圧モードから昇圧モードへの移行時に蓄電装置Bの出力電圧が下限電圧VLminまで低下することを防止できる。
この結果、非昇圧モードから昇圧モードへの移行の場面において、蓄電装置Bの負荷が過剰となって出力電圧が下限電圧よりも低下することがないように、インバータ14の直流リンク電圧(システム電圧VH)を適切に設定することができる。
[実施の形態2]
実施の形態1では、非昇圧モードから昇圧モードへの移行時における、蓄電装置Bの負荷が過剰とならないためのシステム電圧VHの制御について説明した。実施の形態2では、昇圧モード中における、蓄電装置Bの負荷が過剰とならないためのシステム電圧VHの制御について説明する。実施の形態2では、実施の形態1に従う制御システムにおける昇圧モードでのシステム電圧指令値VH*の設定が示される。すなわち、システム構成(図1)や制御モード(図2)の選択的な適用等の実施の形態1との共通部分については、詳細な説明は繰り返さない。
図17は、昇圧モードにおけるシステム電圧指令値VH*を設定するためのシステム電圧指令値設定部の基本的な構成を説明するための機能ブロック図である。図17に示されるシステム電圧指令値設定部600♯は、本発明の実施の形態2に従う交流電動機の制御システムに用いられるシステム電圧指令値設定部600(図20)の比較例として示される。
図17を参照して、システム電圧指令値設定部600♯は、変調度演算部610と、目標変調度設定部620と、ベース指令値設定部630と、変調度フィードバック制御部650と、演算部660と、調停処理部670とを有する。
変調度演算部610は、現在のシステム電圧VH(またはシステム電圧指令値VH*)と、モータ電圧Vr(または、PWM制御におけるd軸電圧およびq軸電圧)とに基づいて、現在の変調度Kmdを演算する。
目標変調度設定部620は、電動車両の車両状態に基づいて、変調度目標値Kmd*を設定する。たとえば、車両状態は、PWM要求フラグRpwmを含む。ドライバによるアクセル操作等に応じてPWM要求フラグRpwmがオンされている場合には、変調度目標値Kmd*は、正弦波PWM制御よって対応できる範囲の値、たとえば、0.5〜0.6程度に設定される。一方で、PWM要求フラグRpwmがオフされている場合には、エネルギ効率を向上させるために、変調度目標値Kmd*は0.78程度に設定される。
また、ドライバによって運転モードMDを指定できる場合には、車両状態は、運転モードMDを含むことができる。たとえば、加速応答性を重視するスポーツモードの選択時には、トルク制御性を高めるために正弦波PWM制御の適用が好ましいため、変調度目標値Kmd*は、PWM要求フラグRpwmのオン時と同様に設定することができる。あるいは、燃費(エネルギ効率)を重視するエコノミーモードの選択時には、制御システム100全体の損失を抑性するための動作点44(図9)での運転を指向するために、変調度目標値Kmd*は、0.78程度に設定される。さらに、変調度目標値Kmd*は、交流電動機M1のトルク指令値Tqcomおよび/または回転速度Nmtに応じて、を変化させてもよい。すなわち、車両状態は、トルク指令値Tqcomおよび/または回転速度Nmtを含んでもよい。
ベース指令値設定部630は、Vr*マップ632および演算部635を有する。Vr*マップ632は、交流電動機M1のトルク指令値Tqcomおよび回転速度Nmtに基づいて、図18に示すマップに従って、モータ電圧Vrのベース値Vr*を設定する。
図18は、図17に示されたVr*マップの構成例を示す概念図である。
図18を参照して、Vr*マップは、横軸にモータ回転速度Nmt、縦軸にトルク指令値Tqcomが取られている。図18の例では、マップ内の動作点は、システム電圧VH=V1〜V4に対応する4本のライン45〜48によって区画されている。そして、図中で一番外側に位置するライン49は、システム電圧VHの最大電圧VHmax(たとえば、650V)に対応する動作点の集合である。
VH=V1におけるライン45によって区画される略扇状の領域RBが、蓄電装置Bの出力電圧を昇圧することなく、昇圧コンバータ12を非昇圧モードとして交流電動機M1を駆動することができる動作領域に略対応する。
より詳細には、各ライン45〜49間に、所定の電圧幅(たとえば20V)毎にラインがさらに設けられている。tVHマップでは、トルク指令値Tqcomおよび回転速度Nmtによって特定される動作点に近接したラインに対応した電圧値に従って、モータ電圧Vrのベース値Vr*を設定することができる。
再び図17を参照して、演算部635は、Vr*マップ632によって求められたベース値Vr*を、目標変調度設定部620による変調度目標値Kmd*によって除算することによって、システム電圧指令値のベース値VHrを設定する(VHr=Vr*/KMd*)。このように、ベース指令値設定部630は、交流電動機M1の動作状態(トルクおよび回転速度)と変調度目標値Kmd*に基づいて、システム電圧指令値のベース値VHrを設定する。
変調度フィードバック制御部650は、偏差演算部652およびフィードバック演算部355を有する。
偏差演算部652は、変調度演算部610によって算出された現在の変調度Kmdと、変調度目標値Kmd*との偏差ΔKmdを算出する。フィードバック演算部655は、偏差演算部652によって求められた偏差ΔKmdに応じて、システム電圧指令値の修正値ΔVH*を算出する。たとえば、偏差ΔKmdに対するPI(比例積分)演算によって、修正値ΔVH*が求められる。偏差ΔKmd>0(Kmd>Kmd*)の場合には、変調度Kmdを下げるために、システム電圧VHを上昇するように修正値ΔVH*が設定される。一方、偏差ΔKmd<0(Kmd<Kmd*)の場合には、変調度Kmdを上げるために、システム電圧VHを低下するように修正値ΔVH*が設定される。
演算部660は、ベース指令値設定部630によるベース値VHrと、変調度フィードバック制御部650による修正値ΔVH*とに従って、電圧指令値VHr*を算出する。調停処理部670は、演算部660によって算出された電圧指令値VHr*と、最低電圧VHmin*とのうちの最大値を最終的なシステム電圧指令値VH*として設定する。
比較例に従うシステム電圧指令値設定部600♯は、インバータ14における変調度Kmdを変調度目標値Kmd*に制御するように、交流電動機M1の動作状態(トルクおよび回転速度)に基づいて、システム電圧指令値VH*が決定される。すなわち、システム電圧指令値設定部600♯は、インバータ14および交流電動機M1の状態に基づいて、システム電圧指令値VH*を設定するように構成されている。なお、システム電圧指令値設定部600♯は、変調度を可変に制御するための構成であるから、PWM制御(正弦波PWM制御および過変調PWM制御)の適用時に用いられる。
図19は、昇圧モード中の交流電動機M1の出力増加時における比較例に従う動作例を示す波形図である。図19には、図17に示すシステム電圧指令値設定部600♯(比較例)に従ってシステム電圧指令値VH*が制御される場合の動作が示される。
図19を参照して、時刻txから、アクセル開度Accrの上昇に応じて、交流電動機M1のトルク指令値Tqcomが上昇する。
一方で、システム電圧指令値設定部600♯は、一定値に維持された変調度目標値Kmd*に対応して変調度Kmdを制御するために、トルク指令値Tqcomの上昇に応じたモータ電圧Vrの上昇に対応させて、システム電圧VHを徐々に上昇させる。
したがって、時刻tx以降では、蓄電装置Bは、交流電動機M1への供給電力に加えて、平滑コンデンサC0が接続された電力線7の電圧を上昇させるための昇圧パワーPcをさらに供給する。
交流電動機M1の出力パワー最大値Pmmaxは、時刻tx以前では、蓄電装置Bの出力電力上限値Woutに従った値であるのに対して、時刻tx以降では、昇圧パワーPcの分だけ低下する。なお、出力電力上限値Woutは、蓄電装置Bの過放電を防止するために、蓄電装置Bの充電状態(State of Charge)および温度Tb等によって定められる。これにより、交流電動機M1の出力パワーの最大値Pmmaxに対する余裕電力ΔPmが減少する。余裕電力ΔPmは、交流電動機M1の出力パワー増加のために、蓄電装置Bから追加して出力可能な電力の余裕量を示していることが理解される。すなわち、余裕電力ΔPmは、蓄電装置Bの出力余裕の一態様である。
トルク指令値Tqcomに従ったトルクを出力する際の交流電動機M1の出力パワーPm*が、出力パワー最大値Pmmaxよりも低い間は、交流電動機M1の出力トルクTqをトルク指令値Tqcomに従って制御することができる。
しかしながら、時刻tyでは、アクセル開度Accrのさらなる上昇に応じたトルク指令値Tqcomを出力するための出力パワーPm*が、最大値Pmmaxに達する。このため、出力トルクTqも頭打ちとなり、交流電動機M1の出力が制限される。すなわち、時刻ty以降では、Pm=Pmmaxに制限されることになるため、ドライバのアクセル操作に従ったトルクを出力できなくなる。これにより、電動車両のドライバビリティが損なわれるおそれがある。
図19に示されるように、交流電動機M1の出力増加中にシステム電圧VHを上昇させる場合には、昇圧パワーPcの影響によって、交流電動機M1の出力パワーが制限される虞がある。
図20は、本発明の実施の形態2に従うシステム電圧指令値設定部600の構成を説明するための機能ブロック図である。
図20を図17と比較して、実施の形態2に従うシステム電圧指令値設定部600は、図17に示したシステム電圧指令値設定部600♯(比較例)と比較して、システム電圧上昇部700をさらに含む点で異なる。システム電圧指令値設定部600のその他の部分の構成は、システム電圧指令値設定部600♯(図17)と同様であるので詳細な説明は繰返さない。
システム電圧上昇部700は、目標変調度修正部710および演算部715を含む。目標変調度修正部710は、蓄電装置Bの出力余裕を示す余裕電力ΔPmと、アクセル開度Accrおよび/またはトルク指令値Tqcomとに基づいて、変調度修正値Kmdcを設定する。通常は、変調度修正値Kmdcは零である。目標変調度修正部710は、余裕電力ΔPmがシステム電圧VHの上昇による昇圧パワーPcを供給する余力がある場面での交流電動機M1の出力増加の検知時に、変調度修正値Kmdcを正値に設定する。
演算部715は、目標変調度設定部620による変調度目標値Kmd*から、目標変調度修正部710による変調度修正値Kmdcを減算することによって、変調度目標値Kmd*を修正する。したがって、Kmdc=0の場合には、目標変調度設定部620による設定値が、そのまま変調度目標値Kmd*とされる。一方で、目標変調度修正部710によってKmdc>0に設定されると、変調度目標値Kmd*は、目標変調度設定部620による本来の目標値よりも低下される。
このように設定された変調度目標値Kmd*に基づくシステム電圧指令値VH*の設定は、図17に示したシステム電圧指令値設定部600♯と同等である。したがって、システム電圧上昇部700によって変調度目標値Kmd*が低下されると、目標変調度設定部620による変調度目標値Kmd*が修正されない場合と比較して、システム電圧指令値VH*が上昇することが理解される。すなわち、システム電圧上昇部700は、余裕電力ΔPmが所定以上確保されているときに、交流電動機M1の出力増が検知されると、強制的にシステム電圧VHを上昇するように作用する。
図21は、昇圧モード中の交流電動機M1の出力増加時における実施の形態2に従う動作例を示す波形図である。図21には、図20に示すシステム電圧指令値設定部600に従ってシステム電圧指令値VH*が制御される場合の動作が示される。
図21を参照して、時刻tx以降では、アクセル開度Accrおよびトルク指令値Tqcomが、図19と同様の態様で上昇する。これに伴い、変調度目標値Kmd*を維持するためにシステム電圧VHが上昇される。この結果、蓄電装置Bからは、交流電動機M1の出力パワーに加えて、昇圧パワーPcが供給される。この結果、出力パワー最大値Pmmaxが低下する。
時刻tz1において、アクセル開度Accrが閾値tAccrを超えたこと、または、トルク指令値Tqcomが閾値tTqを超えたことに応じて、交流電動機M1の出力増が検知される。このときに、余裕電力ΔPmが所定値よりも大きいことを条件に、図20に示した目標変調度修正部710が変調度修正値Kmdcを正値(Kmdc>0)に設定する。これにより、変調度目標値Kmd*が低下する。図21に示すように、目標変調度修正部710は、変調度目標値Kmd*が徐々に低下するように変調度修正値Kmdcを設定することが好ましい。システム電圧VHの急激な変化を防止するためである。
システム電圧VHは、時刻tz1から上昇して、時刻tz2において上限電圧VHmaxに達する。このため、時刻tz2以降では、VH=VHmaxが維持される。
時刻tz1〜tz2の間では、システム電圧VHのVHmaxまでの昇圧に必要な電力に応じた昇圧パワーΔPcがさらに必要となる。したがって、時刻tz1では、余裕電力ΔPmがΔPcよりも大きいか否かを判定する必要がある。そして、蓄電装置Bの出力余裕(ΔPm)に応じて、交流電動機M1の出力増に対応するために、システム電圧VHが予備的に上昇される。
昇圧が完了した時刻tz2以降では、システム電圧VHが一定のため昇圧パワーPc=0になる。この結果、図19に示した動作例と比較して、出力パワー最大値Pmmaxを確保することが可能となるため、アクセル開度Accrのさらなる上昇に応じたトルク指令値Tqcomに対応するための出力パワーPm*が継続的に確保されている。したがって、ドライバのアクセル操作に従ったトルクを出力可能であるため、図19の動作例に示したように、電動車両のドライバビリティが損なわれることがない。
また、システム電圧VHが上限電圧VHmaxに達した後は、実変調度を変調度目標値Kmd*に制御することはできなくなるので、変調度Kmdは、トルクTqの上昇に伴って増加する。この場面では、変調度目標値Kmd*の低下を停止してもよい。
このように、実施の形態2に従う交流電動機の制御システムによれば、基本的にはインバータ14および交流電動機M1の状態(変調度)に基づいてシステム電圧VHを設定する下で、蓄電装置Bの出力余裕、特に、蓄電装置Bから交流電動機M1に対してさらに供給可能な余裕電力ΔPmに応じて、システム電圧を強制的に上昇させることができる。
この結果、蓄電装置Bの出力電力に余裕があるうちにシステム電圧VHの昇圧を完了させることによって、交流電動機M1の高トルク出力に対応することができる。したがって、交流電動機M1の出力増が検知された場面において、蓄電装置Bの負荷が過剰となって交流電動機M1の出力パワーが不足することがないように、インバータ14の直流リンク電圧(システム電圧VH)を適切に設定することができる。
実施の形態2に従う交流電動機の制御に従うシステム電圧指令値設定部600によるシステム電圧指令値の設定においては、図17に示した比較例によるシステム電圧指令値設定部600♯との重複部分が、本発明における「第1の制御手段」の一実施例に対応し、図20で追加されたシステム電圧上昇部700が、本発明における「第2の制御手段」の一実施例に対応する。
(矩形波電圧制御の適用時)
図20に示したシステム電圧指令値設定部600は、インバータ14における変調度のフィードバック制御を前提とするので、PWM制御の適用時に用いられる。一方で、矩形波電圧制御の適用時には変調度は0.78で固定されるため、変調度目標値Kmd*に対するフィードバック制御によってシステム電圧指令値VH*を設定することはできない。
図22は、本発明の実施の形態2に従う矩形波電圧制御の適用時におけるシステム電圧指令値設定部800の構成を説明するための機能ブロック図である。
図22を参照して、システム電圧指令値設定部800は、目標変調度設定部620と、ベース指令値設定部630と、システム電圧上昇部700と、電流位相フィードバック制御部805と、演算部860と、調停処理部870とを有する。
矩形波電圧制御の適用時においても、図17および図20と同様の目標変調度設定部620によって変調度目標値が設定される。システム電圧上昇部700は、図20と同様に、余裕電力ΔPmが所定以上確保されているときに、交流電動機M1の出力増が検知されると、強制的にシステム電圧VHを上昇するために、変調度目標値Kmd*を低下させる。したがって、矩形波電圧制御の適用時においても、変調度目標値Kmd*は、PWM制御の適用時と同様に設定される。
ベース指令値設定部630は、図20と同様に、交流電動機M1の動作状態(トルクおよび回転速度)と変調度目標値Kmd*に基づいて、システム電圧指令値のベース値VHrを設定する。
矩形波電圧制御の適用中には変調度は0.78に固定されるが、システム電圧VHを上昇させることによって変調度を低下させることができる。したがって、矩形波電圧制御の適用時にも、変調度目標値Kmd*を設定することによって、矩形波電圧制御からPWM制御への移行を促進することができる。
一方で、矩形波電圧制御の適用中には、図20に示したような変調度のフィードバック制御はできないため、電流位相フィードバック制御部805は、交流電動機M1の電流位相φiのフィードバックによって、システム電圧指令値の修正値ΔVH*を設定する。
電流位相フィードバック制御部805は、座標変換部810と、電圧偏差算出マップ820と、フィードバック演算部830とを有する。
座標変換部810は、図3の座標変換部220と同様に、電流センサ24によって検出されたv相電流ivおよびw相電流iw、ならびに、u相電流iu(iu=−(iv+iw))を、d軸電流Idおよびq軸電流Iqに変換する。
電圧偏差算出マップ820は、d軸電流Idおよびq軸電流Iqによってd−q平面上(図7)で規定される電流位相φiに応じて、電圧偏差ΔVHを生成する。
図23は、電圧偏差算出マップ820の構成例を説明するための概念図である。
目標電流位相ライン51は、d−q平面上の各等トルク線上における、動作点44(図7および図9)に対応する電流位相の集合として描かれる。動作点44は、最適電流位相ライン42よりも少し進角側に設定される。目標電流位相ライン51は、最適電流位相ライン42(図7)と同様に、実機試験やシミュレーション結果に基づいて、予め設定することができる。
現在のトルク指令値Tqcomに対応する等トルク線と、目標電流位相ライン51との交点61によって、現在の目標電流位相が示される。したがって、電流位相ベクトルの先端位置が符号61によって示される場合には、現在の電流位相が目標電流位相ライン51上であるので、現在のシステム電圧VHを維持するように、電圧偏差ΔVH=0に設定される。
これに対して、現在の電流位相が目標電流位相ライン51よりも進角側に位置する場合には、現在のシステム電圧VHを上昇させるように、電圧偏差ΔVH>0に設定される。進角側の領域では、目標電流位相ライン51との位相差が大きくなるにつれて電圧偏差ΔVHも大きく設定される。図23には、ΔVH=+20Vとなる電流位相の集合である位相ライン52と、ΔVH=+40Vとなる電流位相の集合である位相ライン53とが例示される。
図23に示すように、電流位相ベクトルの先端位置が符号62によって示される場合には、現在の電流位相が位相ライン53上であるので、電圧偏差算出マップ820から、電圧偏差ΔVH=+40Vと算出される。
現在の電流位相が目標電流位相ライン51よりも遅角側に位置する場合には、現在のシステム電圧VHを低下させるように、電圧偏差ΔVH<0に設定される。遅角側の領域でも、目標電流位相ライン51との位相差が大きくなるにつれて電圧偏差の絶対値(|ΔVH|)が大きく設定される。図11には、ΔVH=−20Vとなる電流位相の集合である位相ライン54と、ΔVH=−40Vとなる電流位相の集合である位相ライン55とが例示される。
これらの位相ラインの細分化により、あるいは、線形補間を併用して、d軸電流Idおよびq軸電流Iqによって規定される電流位相に応じて、電圧偏差算出マップ820は、d軸電流Idおよびq軸電流Iqに基づいて、電圧偏差ΔVHを算出することができる。
再び図22を参照して、フィードバック演算部830は、電圧偏差算出マップ820によって算出された電圧偏差ΔVHに基づく制御演算によって、システム電圧指令値の修正値ΔVH*を算出する。たとえば、電圧偏差ΔVHに対するPI(比例積分)演算によって、修正値ΔVH*が求められる。電圧偏差ΔVH>0の場合には、システム電圧VHを上昇するように修正値ΔVH*が設定される。一方、電圧偏差ΔVH<0の場合にはシステム電圧VHを低下するように修正値ΔVH*が設定される。
演算部860は、ベース指令値設定部630によるベース値VHrと、電流位相フィードバック制御部805による修正値ΔVH*とに従って、電圧指令値VHr*を算出する。調停処理部870は、演算部860によって算出された電圧指令値VHr*と、最低電圧VHmin*とのうちの最大値を最終的なシステム電圧指令値VH*として設定する。
このように矩形波電圧制御の適用時においても、変調度フィードバックに代えて電流位相フィードバックを用いることにより、実施の形態2に従うシステム電圧指令値VH*の設定を行なうことができる。すなわち、基本的には(Kmdc=0のとき)、インバータ14および交流電動機M1の状態(変調度)に基づいてシステム電圧VHを設定することができる。さsらに、蓄電装置Bの出力余裕、特に、蓄電装置Bから交流電動機M1に対してさらに供給可能な余裕電力ΔPmに応じて、システム電圧上昇部700がKmdc>0とすることによって、システム電圧を強制的に上昇させることができる。
したがって、昇圧モード中の矩形波電圧制御の適用時においても、図20に示したシステム電圧指令値設定部600と同等の効果を得ることができる。この結果、交流電動機M1の出力増が検知された場面において、蓄電装置Bの負荷が過剰となって交流電動機M1の出力パワーが不足することがないように、インバータ14の直流リンク電圧(システム電圧VH)を適切に設定することができる。
実施の形態2に従う交流電動機の制御に従うシステム電圧指令値設定部800によるシステム電圧指令値の設定においては、システム電圧上昇部700が本発明の「第2の制御手段」の一実施例に対応し、システム電圧指令値設定部800のうちのシステム電圧上昇部700を除く構成が、本発明における「第1の制御手段」の一実施例に対応する。
なお、図20および図22では、システム電圧上昇部700が変調度目標値Kmd*を低下させることによってシステム電圧VHを上昇される構成を例示したが、システム電圧上昇部700は、これ以外の手法、たとえば、電圧指令値VH*を直接修正することによってシステム電圧VHを上昇させることが可能である点についても確認的に記載する。
なお、本実施の形態に従う交流電動機の制御システムの適用は、例示した電動車両の走行用電動機の制御に限定されるものではない。本実施の形態に従う交流電動機の制御システムは、コンバータによって直流リンク電圧(システム電圧VH)が可変制御されるインバータによって、矩形波電圧制御の適用を伴って交流電動機を制御する構成であれば、交流電動機の個数およびパワートレーンの構成を限定することなく任意の電動車両に対して適用可能である。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。