以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る基礎構造を詳細に説明する。
(第1実施形態の基礎構造)
図1は本発明の第1実施形態に係る基礎構造を示す側面図(第1実施形態の基礎構造を構成する基礎壁体ブロック14の長手方向から見た側面図)である。図2は図1のII−II線断面図である。
本第1実施形態の基礎構造10は、対向するL字型の基礎ブロック構造11の間に中詰め土18が充填されてなり、支持地盤1上に設けられている。
基礎ブロック構造11は、基礎フーチングブロック12と、基礎壁体ブロック14と、基礎連結用鋼管16と、を備えており、プレキャスト部材である基礎ブロック(基礎フーチングブロック12と基礎壁体ブロック14)が基礎ブロック構造11の主要な構成部材となっている。基礎ブロック構造11においては、基礎フーチングブロック12の上に基礎壁体ブロック14が3段積み重ねられており、図1に示すように、基礎構造10を側方(基礎壁体ブロック14の長手方向)から見ると2つのL字型の基礎ブロック構造11が対向するように(基礎フーチングブロック12の水平方向に張り出した部位12C同士がお互いに近接して対向するように)配置された形状になっている。
基礎ブロック構造11において基礎フーチングブロック12の上に基礎壁体ブロック14が3段積み重ねられているが、基礎フーチングブロック12の貫通孔および基礎壁体ブロック14の貫通孔を基礎連結用鋼管16が上下方向に貫くように配置されており、基礎フーチングブロック12および基礎壁体ブロック14は基礎連結用鋼管16によって一体化されている。
次に、本第1実施形態の基礎構造10を構成する各部材について説明する。
図3は、基礎フーチングブロック12の断面図(基礎フーチングさや管12Aの中心を通り、かつ、さや管連結鋼材12Bと直交する鉛直面で切断した断面図)であり、図4は基礎フーチングブロック12を上方から見た平面図である。
基礎フーチングブロック12は、プレキャスト化されたコンクリート製のフーチング部材で、水平方向に張り出した部位12C(以下、単に部位12Cと記すことがある。)を有する受圧面積の広い土台であり、本第1実施形態の基礎構造10において最下部に位置し、支持地盤1に構造物からの荷重を伝達して、基礎構造10および基礎構造10の上方に配置される構造物を安定性よく支持する役割を有する。
基礎フーチングブロック12は、図3、図4に示すように、厚さが最も厚い部位の両端部に貫通孔12Xを有しており、該貫通孔12Xの内面には基礎フーチングさや管12Aを備えている。また、2つの基礎フーチングさや管12Aの間にはさや管連結鋼材12Bが配置されていて、このさや管連結鋼材12Bの両端部は2つの基礎フーチングさや管12Aの外面に溶接により取り付けられており、2つの基礎フーチングさや管12Aはさや管連結鋼材12Bを介して一体化されている。
なお、図3では、基礎フーチングさや管12Aの下端位置は、基礎フーチングブロック12の下面と同じ高さ位置となるようにし、基礎フーチングさや管12Aの上端位置は、基礎フーチングブロック12の上面と同じ高さ位置となるようにしているが、図5、図6に示すように、基礎フーチングさや管12Aの下端位置は、基礎フーチングブロック12の下面よりも上方に位置してもよく、また、基礎フーチングさや管12Aの上端位置は基礎フーチングブロック12の上面よりも下方に位置してもよい。即ち、基礎フーチングさや管12Aは基礎フーチングブロック12の貫通孔12Xの内面を全面覆っていなくてもよい。基礎フーチングさや管12Aの腐食を防止する観点からは、基礎フーチングさや管12Aの下端位置は、基礎フーチングブロック12の下面よりも上方に位置した方が好ましく、基礎フーチングさや管12Aの上端位置は、基礎フーチングブロック12の上面よりも下方に位置した方が好ましい。即ち、基礎フーチングさや管12Aが外界に暴露しないようにある程度のかぶりを設けておくことが好ましい。
また、図5は、基礎フーチングブロック12の貫通孔12Xの内面に基礎フーチングさや管12Aの厚さの分だけ凹部を生じさせ、貫通孔12Xの内面に基礎フーチングさや管12Aを取り付けた状態で、貫通孔12Xの内面に見かけ上段差がなくなるようにした場合であり、図6は、貫通孔12Xの内面に凹部を設けず、貫通孔12Xの内面に基礎フーチングさや管12Aを取り付けた状態で、貫通孔12Xの内面に基礎フーチングさや管12Aの厚さの分だけ見かけ上段差が生じている場合である。本明細書では、図3、図5、図6の全ての場合、即ち、貫通孔12Xの内面全面を基礎フーチングさや管12Aが覆っている場合(図3の場合)、貫通孔12Xの内面全面が基礎フーチングさや管12Aで覆われていない場合(図5、図6の場合)、貫通孔12Xの内面に見かけ上段差がない場合(図3、図5の場合)、見かけ上段差がある場合(図6の場合)のいずれの場合も、貫通孔12Xの内面に基礎フーチングさや管12Aを備えているものとする。
また、基礎フーチングさや管12Aは、基礎フーチングブロック12のコンクリート打設時には貫通孔12X形成のための型枠の役割を果たし、基礎フーチングさや管12Aの外面はコンクリート打設と同時に基礎フーチングブロック12に埋め込まれ、(さや管連結鋼材12Bの寄与を考えなければ)コンクリートとの付着力により、基礎フーチングブロック12と一体化している。換言すれば、さや管連結鋼材12Bの寄与を考えなければ、基礎フーチングさや管12Aはコンクリートとの付着力により貫通孔12Xの内面へ取り付けられている。コンクリートとの付着力を向上させる点で、基礎フーチングさや管12Aの外面にはずれ止め(シアキー)を設けることが好ましい。ずれ止め(シアキー)としては、例えば丸鋼、溶接ビード、角鋼等を用いることができる。
また、基礎フーチングさや管12Aの材質は特に限定されず、所定以上の強度、弾性率、およびグラウト材との所定以上の接着力等を有する材料であればよく、例えば鉄鋼材料を好適に用いることができる。
なお、2つの基礎フーチングさや管12A同士をさや管連結鋼材12Bによって連結しなくても安全性が確保できるのであれば、さや管連結鋼材12Bは設けなくてもよい。ただし、2つの基礎フーチングさや管12A同士をさや管連結鋼材12Bによって連結した方が、基礎フーチングブロック12の断面のコンパクト化を図ることができ、基礎フーチングブロック12の重量を軽減することができる。
図7は基礎壁体ブロック14の断面図(基礎壁体さや管14Aの中心を通り、かつ、さや管連結鋼材14Bと平行な鉛直面で切断した断面図)であり、図8は基礎壁体ブロック14を上方から見た平面図である。
基礎壁体ブロック14は、プレキャスト化されたコンクリート製の細長い直方体状の部材であり、本第1実施形態に係る基礎構造10において基礎フーチングブロック12の上方に配置されて、基礎構造10の壁体(基礎ブロック構造11の壁体)を形成し、基礎構造10の上方に配置される構造物から伝達される荷重を直接的に支持して、その荷重を基礎フーチングブロック12を介して支持地盤1に伝達する役割を有する。
基礎壁体ブロック14は、図7、図8に示すように、両端部に貫通孔14Xを有しており、該貫通孔14Xの内面には基礎壁体さや管14Aを備えている。また、2つの基礎壁体さや管14Aの間にはさや管連結鋼材14Bが配置されていて、このさや管連結鋼材14Bの両端部は2つの基礎壁体さや管14Aの外面に溶接により取り付けられており、2つの基礎壁体さや管14Aはさや管連結鋼材14Bを介して一体化されている。
基礎壁体ブロック14は、その基礎壁体さや管14Aの中心が基礎フーチングブロック12の基礎フーチングさや管12Aの中心と一致するように基礎フーチングブロック12の上に重ねられ、さらに、その基礎壁体ブロック14の上には、基礎壁体さや管14Aの中心同士が一致するように基礎壁体ブロック14が必要な段数だけ重ねられている。
そのように重ねられて上下方向に連なった基礎フーチングさや管12Aおよび基礎壁体さや管14Aの内側には、基礎連結用鋼管16が上下方向に貫くように配置されており、さらに、基礎フーチングさや管12Aおよび基礎壁体さや管14Aと基礎連結用鋼管16との間隙にはグラウト材が充填されており、基礎フーチングブロック12および基礎壁体ブロック14は基礎連結用鋼管16およびグラウト材を介して一体化されている。
なお、図7では、基礎壁体さや管14Aの下端位置は、基礎壁体ブロック14の下面と同じ高さ位置となるようにし、基礎壁体さや管14Aの上端位置は、基礎壁体ブロック14の上面と同じ高さ位置となるようにしているが、図5、図6に示した基礎フーチングさや管12Aの場合と同様に、基礎壁体さや管14Aにおいても、基礎壁体さや管14Aの下端位置は、基礎壁体ブロック14の下面よりも上方に位置してもよく、また、基礎壁体さや管14Aの上端位置は基礎壁体ブロック14の上面よりも下方に位置してもよい。即ち、基礎壁体さや管14Aは基礎壁体ブロック14の貫通孔14Xの内面を全面覆っていなくてもよい。基礎壁体さや管14Aの腐食を防止する観点からは、基礎壁体さや管14Aの下端位置は、基礎壁体ブロック14の下面よりも上方に位置した方が好ましく、基礎壁体さや管14Aの上端位置は、基礎壁体ブロック14の上面よりも下方に位置した方が好ましい。即ち、基礎壁体さや管14Aが外界に暴露しないようにある程度のかぶりを設けておくことが好ましい。
また、図3、図5、図6に示した基礎フーチングさや管12Aの場合と同様に、基礎壁体さや管14Aにおいても、貫通孔14Xの内面全面を基礎壁体さや管14Aが覆っている場合、貫通孔14Xの内面全面が基礎壁体さや管14Aで覆われていない場合、貫通孔14Xの内面に見かけ上段差がない場合、見かけ上段差がある場合のいずれの場合も、貫通孔14Xの内面に基礎壁体さや管14Aを備えているものとする。
また、基礎壁体さや管14Aは、基礎壁体ブロック14のコンクリート打設時には貫通孔14X形成のための型枠の役割を果たし、基礎壁体さや管14Aの外面はコンクリート打設と同時に基礎壁体ブロック14に埋め込まれ、(さや管連結鋼材14Bの寄与を考えなければ)コンクリートとの付着力により、基礎壁体ブロック14と一体化している。換言すれば、さや管連結鋼材14Bの寄与を考えなければ、基礎壁体さや管14Aはコンクリートとの付着力により貫通孔14Xの内面へ取り付けられている。コンクリートとの付着力を向上させる点で、基礎壁体さや管14Aの外面にはずれ止め(シアキー)を設けることが好ましい。ずれ止め(シアキー)としては、例えば丸鋼、溶接ビード、角鋼等を用いることができる。
また、基礎壁体さや管14Aの材質は特に限定されず、所定以上の強度、弾性率、およびグラウト材との所定以上の接着力等を有する材料であればよく、例えば鉄鋼材料を好適に用いることができる。
なお、2つの基礎壁体さや管14A同士をさや管連結鋼材14Bによって連結しなくても安全性が確保できるのであれば、さや管連結鋼材14Bは設けなくてもよい。ただし、2つの基礎壁体さや管14A同士をさや管連結鋼材14Bによって連結した方が、基礎壁体ブロック14の断面のコンパクト化を図ることができ、基礎壁体ブロック14の重量を軽減することができる。
基礎連結用鋼管16は、円筒状の鋼管であり、上下方向に重ねられた基礎フーチングさや管12Aおよび基礎壁体さや管14Aの内側に上下方向に貫くように配置されて、基礎フーチングブロック12および基礎壁体ブロック14を一体化する役割を有する。前述したように、基礎フーチングさや管12Aおよび基礎壁体さや管14Aと基礎連結用鋼管16との間隙にはグラウト材が充填されており、これにより基礎フーチングブロック12および基礎壁体ブロック14は基礎連結用鋼管16およびグラウト材を介して一体化されている。
また、基礎連結用鋼管16の上端部は、図1に示すように、最上段の基礎壁体ブロック14の上面よりもさらに上方にまで伸びている。最上段の基礎壁体ブロック14の上面よりもさらに上方にまで伸びた基礎連結用鋼管16の部位は、基礎構造10の上方に配置される構造物との連結に活用することができる。
なお、基礎連結用鋼管16は一体的に成形されたものでなくてもよく、現場で溶接等により連結して必要な長さを確保するようにしてもよい。また、必要な耐力および剛性が確保できるのであれば、高さ位置に応じて基礎連結用鋼管16の管径や中心の位置を変動させてもよい。
また、本第1実施形態の基礎構造10では、基礎フーチングブロック12および基礎壁体ブロック14を連結して一体化するために基礎連結用鋼管16を用いたが、基礎フーチングブロック12および基礎壁体ブロック14を必要な耐力および剛性を確保して一体化できる素材であれば、鋼管に限定されず、基礎連結用鋼管16に替えて例えばH形鋼等の形鋼を用いることもできる。また、鋼板からビルドアップして製作されている鋼材を用いることも可能である。
中詰め土18は、図1に示すように、対向する基礎ブロック構造11の間の空間(基礎フーチングブロック12および基礎壁体ブロック14によって下方と側方を囲まれた空間であり、お互いに近接して対向する水平方向に張り出した部位12C同士の上方。)に充填されており、基礎構造10と一体となって動く。このため、中詰め土18の重量も、基礎構造10および基礎構造10の上方に配置される構造物の滑動や転倒を防ぐことに寄与する。
また、中詰め土18は、現地にて床掘りした土を用いることができるので、本第1実施形態の基礎構造10は、低コスト化、省資源、および廃棄物の削減に有効な構造である。
なお、本第1実施形態の基礎構造10では、対向して配置されている基礎ブロック構造11の下面(最下段の基礎フーチングブロック12の下面)の位置が同一の高さ位置になっているが、地形等の条件によっては、基礎ブロック構造11の下面(最下段の基礎フーチングブロック12の下面)の位置は必ずしも同一の高さ位置になっていなくてもよい。この場合、基礎壁体ブロック14の段数を変えたり、あるいは基礎壁体ブロック14自体の高さを変えること等によって対応をすることができる。
また、本第1実施形態の基礎構造10においては、2つのL字型の基礎ブロック構造11が対向するように配置されているが、例えば上部構造として壁体を海側の基礎ブロック構造11の真上に設ける場合で、安全性が確保できる場合には、陸側の基礎ブロック構造11を省略し、海側の基礎ブロック構造11が1列に並んだ構造(海側の基礎ブロック構造11が壁面11Aと平行な水平方向に1列に並んだ構造)としてもよい。
(第2実施形態の基礎構造)
図9は本発明の第2実施形態に係る基礎構造を示す側面図(第2実施形態の基礎構造を構成する基礎壁体ブロック14の長手方向から見た側面図)である。
本第2実施形態の基礎構造20は、対向する逆T字型の基礎ブロック構造21の間に中詰め土18が充填されてなり、支持地盤1上に設けられている。基礎ブロック構造21は、基礎フーチングブロック22と、基礎壁体ブロック14と、基礎連結用鋼管16と、を備えている。
また、本第2実施形態の基礎構造20は、基礎壁体ブロック14の長手方向(基礎構造20の基礎ブロック構造21の壁面21Aと平行な水平方向であり、図9において紙面と直交する方向)に延びている。
先に説明した第1実施形態の基礎構造10で用いた基礎フーチングブロック12においては、フーチングは片側のみ水平方向に張り出していたが(部位12C)、本第2実施形態の基礎構造20で用いる基礎フーチングブロック22は水平方向に張り出した部位22C、22Dを有しており、フーチングが両側の水平方向に張り出している。この点以外は、第1実施形態の基礎構造10と同様であり、第1実施形態の基礎構造10と同様の部材には同一の番号を付し、説明は原則として省略する。
図10は本第2実施形態の基礎構造20で用いる基礎フーチングブロック22の断面図(基礎フーチングさや管22Aの中心を通り、かつ、さや管連結鋼材22Bと直交する鉛直面で切断した断面図)であり、図11は基礎フーチングブロック22を上方から見た平面図である。
基礎フーチングブロック22は、第1実施形態の基礎フーチングブロック12と同様、プレキャスト化されたコンクリート製のフーチング部材で、水平方向に張り出した部位22C、22Dを有する受圧面積の広い土台であり、本第2実施形態の基礎構造20において最下部に位置し、支持地盤1に構造物からの荷重を伝達して、基礎構造20および基礎構造20の上方に配置される構造物を安定性よく支持する役割を有する。
基礎フーチングブロック22における貫通孔、さや管およびさや管連結鋼材の配置位置は、第1実施形態の基礎フーチングブロック12における貫通孔、さや管およびさや管連結鋼材と同様の位置であり、図10、図11に示すように、厚さが最も厚い部位の両端部に貫通孔22Xを有しており、該貫通孔22Xの内面には基礎フーチングさや管22Aを備えている。また、2つの基礎フーチングさや管22Aの間にはさや管連結鋼材22Bが配置されていて、このさや管連結鋼材22Bの両端部は2つの基礎フーチングさや管22Aの外面に溶接により取り付けられており、2つの基礎フーチングさや管22Aはさや管連結鋼材22Bを介して一体化されている。
なお、図10では、基礎フーチングさや管22Aの下端位置は、基礎フーチングブロック22の下面と同じ高さ位置となるようにし、基礎フーチングさや管22Aの上端位置は、基礎フーチングブロック22の上面と同じ高さ位置となるようにしているが、図5、図6に示した基礎フーチングさや管12Aの場合と同様に、基礎フーチングさや管22Aにおいても、基礎フーチングさや管22Aの下端位置は、基礎フーチングブロック22の下面よりも上方に位置してもよく、また、基礎フーチングさや管22Aの上端位置は基礎フーチングブロック22の上面よりも下方に位置してもよい。即ち、基礎フーチングさや管22Aは基礎フーチングブロック22の貫通孔22Xの内面を全面覆っていなくてもよい。基礎フーチングさや管22Aの腐食を防止する観点からは、基礎フーチングさや管22Aの下端位置は、基礎フーチングブロック22の下面よりも上方に位置した方が好ましく、基礎フーチングさや管22Aの上端位置は、基礎フーチングブロック22の上面よりも下方に位置した方が好ましい。即ち、基礎フーチングさや管22Aが外界に暴露しないようにある程度のかぶりを設けておくことが好ましい。
また、図3、図5、図6に示した基礎フーチングさや管12Aの場合と同様に、基礎フーチングさや管22Aにおいても、貫通孔22Xの内面全面を基礎フーチングさや管22Aが覆っている場合、貫通孔22Xの内面全面が基礎フーチングさや管22Aで覆われていない場合、貫通孔22Xの内面に見かけ上段差がない場合、見かけ上段差がある場合のいずれの場合も、貫通孔22Xの内面に基礎フーチングさや管22Aを備えているものとする。
また、基礎フーチングさや管22Aは、基礎フーチングブロック22のコンクリート打設時には貫通孔22X形成のための型枠の役割を果たし、基礎フーチングさや管22Aの外面はコンクリート打設と同時に基礎フーチングブロック22に埋め込まれ、(さや管連結鋼材22Bの寄与を考えなければ)コンクリートとの付着力により、基礎フーチングブロック22と一体化している。換言すれば、さや管連結鋼材22Bの寄与を考えなければ、基礎フーチングさや管22Aはコンクリートとの付着力により貫通孔22Xの内面へ取り付けられている。コンクリートとの付着力を向上させる点で、基礎フーチングさや管22Aの外面にはずれ止め(シアキー)を設けることが好ましい。ずれ止め(シアキー)としては、例えば丸鋼、溶接ビード、角鋼等を用いることができる。
また、基礎フーチングさや管22Aの材質は特に限定されず、所定以上の強度、弾性率、およびグラウト材との所定以上の接着力等を有する材料であればよく、例えば鉄鋼材料を好適に用いることができる。
基礎フーチングブロック22は水平方向に張り出した部位22C、22Dを有しており、フーチングが両側の水平方向に張り出しているので、受圧面積が広くなっている。このため、基礎構造20の上方に配置される構造物に作用する外力が大きい場合において好適な部材となる。
なお、本第2実施形態の基礎構造20では、対向して配置されている基礎ブロック構造21の下面(最下段の基礎フーチングブロック22の下面)の位置が同一の高さ位置になっているが、地形等の条件によっては、基礎ブロック構造21の下面(最下段の基礎フーチングブロック22の下面)の位置は必ずしも同一の高さ位置になっていなくてもよい。この場合、基礎壁体ブロック14の段数を変えたり、あるいは基礎壁体ブロック14自体の高さを変えること等によって対応をすることができる。
また、本第2実施形態の基礎構造20においては、2つの逆T字型の基礎ブロック構造21が対向するように配置されているが、上部構造の壁体を海側の基礎ブロック構造21の真上に設ける場合で、安全性が確保できる場合には、陸側の基礎ブロック構造21を省略し、海側の基礎ブロック構造21が1列に並んだ構造(海側の基礎ブロック構造21が壁面21Aと平行な水平方向に1列に並んだ構造)としてもよい。
(第3実施形態の基礎構造)
図12は本発明の第3実施形態に係る基礎構造を示す側面図(第3実施形態の基礎構造を構成する基礎壁体ブロック14の長手方向から見た側面図)である。図13は図12のXIII−XIII線断面図である。
本第3実施形態の基礎構造30は、対向する逆T字型の基礎ブロック構造31の間に中詰め土18が充填されてなり、支持地盤1上に設けられている。基礎ブロック構造31は、基礎フーチングブロック32と、基礎壁体ブロック14と、基礎連結用鋼管16と、備えている。
先に説明した第1実施形態の基礎構造10で用いた基礎フーチングブロック12においては、フーチングは片側のみに張り出していたが(部位12C)、本第3実施形態の基礎構造30で用いる基礎フーチングブロック32は水平方向に張り出した部位32C、32D(以下、単に部位32C、32Dと記すことがある。)を有しており、一方の側(部位32C)だけでなく他方の側(部位32D)もわずかであるがフーチングが張り出している。
また、本第3実施形態の基礎構造30においては、基礎フーチングブロック32の上方に基礎壁体ブロック14が3段積まれてなるL字状の構造物である基礎ブロック構造物31が、図12に示すように背中合わせに配置されており、このような背中合わせに配置された基礎ブロック構造物31が、本第3実施形態の基礎構造30の基礎壁体ブロック14の長手方向と直交する方向(基礎構造30の基礎ブロック構造31の壁面31Aと直交する方向であり、図12、図13において紙面と平行な左右方向。)に多数配置されている。
第1、第2実施形態の基礎構造10、20の上方に堤体を設置する場合、設置する堤体の法線方向(設置する堤体の延びる方向)は、それぞれ基礎構造10、20の延びる方向(基礎構造10、20の基礎壁体ブロック14の長手方向(基礎構造10、20の基礎ブロック構造11、21の壁面11A、21Aと平行な水平方向)であり、図1、図9において紙面と直交する方向。)であったが、本第3実施形態の基礎構造30の上方に堤体を設置する場合、設置する堤体の法線方向(設置する堤体の延びる方向)は、基礎構造30の基礎壁体ブロック14の長手方向と直交する水平方向(基礎構造30の基礎ブロック構造31の壁面31Aと直交する方向)であり、図12、図13において紙面と平行な左右方向である。
なお、本第3実施形態の基礎構造30においては、図12に示すように、背中合わせに配置された基礎壁体ブロック14同士の間にもわずかに隙間があるが、この隙間にも中詰め土18が充填されている。この中詰め土18の重量も、基礎構造30および基礎構造30の上方に配置される構造物の滑動や転倒を防ぐことに寄与する。
以上の点以外は、基礎構造30を構成する各部材は、第1実施形態の基礎構造10と同様であり、第1実施形態の基礎構造10と同様の部材には同一の番号を付し、説明は原則として省略する。
図14は本第3実施形態の基礎構造30で用いる基礎フーチングブロック32の断面図(基礎フーチングさや管32Aの中心を通り、かつ、さや管連結鋼材32Bと直交する鉛直面で切断した断面図)であり、図15は基礎フーチングブロック32を上方から見た平面図である。
基礎フーチングブロック32は、第1実施形態の基礎フーチングブロック12と同様、プレキャスト化されたコンクリート製のフーチング部材で、水平方向に張り出した部位32C、32Dを有する受圧面積の広い土台であり、本第3実施形態の基礎構造30において最下部に位置し、支持地盤1に構造物からの荷重を伝達して、基礎構造30および基礎構造30の上方に配置される構造物を安定性よく支持する役割を有する。
基礎フーチングブロック32における貫通孔、さや管およびさや管連結鋼材の形状、配置位置は、第1実施形態の基礎フーチングブロック12における貫通孔、さや管およびさや管連結鋼材と同様であり、図14、図15に示すように、厚さが最も厚い部位の両端部に貫通孔32Xを有しており、該貫通孔32Xの内面には基礎フーチングさや管32Aを備えている。また、2つの基礎フーチングさや管32Aの間にはさや管連結鋼材32Bが配置されていて、このさや管連結鋼材32Bの両端部は2つの基礎フーチングさや管32Aの外面に溶接により取り付けられており、2つの基礎フーチングさや管32Aはさや管連結鋼材32Bを介して一体化されている。
基礎フーチングブロック32は、一方の側(部位32C)だけでなく、他方の側(部位32D)にもフーチングがわずかに張り出しているので、図12に示すように、背中合わせになる基礎壁体ブロック14同士の間に隙間が生じる。このため、基礎壁体ブロック14の取り付け位置が施工時にわずかにずれてしまったとしても(基礎壁体ブロック14の基礎壁体さや管14Aの中心の位置が、それよりも下方に位置する基礎フーチングブロック32の基礎フーチングさや管32Aまたは基礎壁体ブロック14の基礎壁体さや管14Aの中心の位置からわずかにずれてしまったとしても)、基礎壁体ブロック14同士は干渉せず、施工を良好に行いやすくなる。また、背中合わせになる基礎壁体ブロック14同士の間に隙間が生じることを許容することにより、基礎壁体ブロック14を適宜必要な大きさにまで小型化しやすくなり、軽量化しやすくなる。
ただし、本第3実施形態の基礎構造30において、背中合わせになる基礎壁体ブロック14同士の間に隙間を設けることは必須ではない。背中合わせになる基礎壁体ブロック14同士の間に隙間を設けない場合には、基礎フーチングブロック32に替えて、第1実施形態で用いた基礎フーチングブロック12を用いて本第3実施形態のように配置すればよい。
なお、本第3実施形態の基礎構造30では、基礎ブロック構造31の壁面31Aと直交する方向に多数配置されている基礎ブロック構造31の下面(最下段の基礎フーチングブロック32の下面)の位置が同一の高さ位置になっているが、地形等の条件によっては、基礎ブロック構造31の下面(最下段の基礎フーチングブロック32の下面)の位置は必ずしも同一の高さ位置になっていなくてもよい。この場合、基礎壁体ブロック14の段数を変えたり、あるいは基礎壁体ブロック14自体の高さを変えること等によって対応をすることができる。
また、本第3実施形態の基礎構造30の上方に堤体を設置する場合、設置する堤体の法線方向(設置する堤体の延びる方向)は、本第3実施形態の基礎構造30の基礎壁体ブロック14の長手方向と直交する水平方向(基礎構造30の基礎ブロック構造31の壁面31Aと直交する方向であり、図12、図13において紙面と平行な左右方向。)となる。
なお、以上説明した第1〜第3実施形態の基礎構造10、20、30では、基礎連結用鋼管16、基礎フーチングさや管12A、22A、32Aおよび基礎壁体さや管14Aに対しては、それぞれ円筒状の鋼管を用いたが、必ずしも円筒状の鋼管でなくてもよく、例えば断面が矩形状の鋼管であってもよい。
なお、第1〜第3実施形態に係る基礎構造10、20、30においては、基礎フーチングブロック12、22、32および基礎壁体ブロック14を連結するための部材として基礎連結用鋼管16を用いたが、基礎フーチングブロック12、22、32および基礎壁体ブロック14を必要な耐力および剛性を確保して一体化できる素材であれば、鋼管に限定されず、基礎連結用鋼管16に替えて例えばH形鋼等の形鋼を用いることもできる。また、鋼板からビルドアップして製作されている鋼材を用いることも可能である。
基礎フーチングブロック12、22、32および基礎壁体ブロック14の連結にH形鋼を用いる場合には、基礎フーチングさや管12A、22A、32Aおよび基礎壁体さや管14Aとして、円筒状の鋼管よりも断面が矩形状の鋼管を用いる方が好ましい。円筒状の鋼管にH形の鋼材を差し込む場合、H形の鋼材の桁高を大きくするとH形の鋼材のフランジ幅を小さくする必要があり、H形の鋼材のフランジ幅を大きくするとH形の鋼材の桁高を小さくする必要があるので、H形の鋼材を連結用に用いる場合には、基礎フーチングさや管12A、22A、32Aおよび基礎壁体さや管14Aとして、断面が矩形状の鋼管を用いた方が経済的な設計が行いやすい。
以上、本発明の実施形態に係る基礎構造10、20、30を説明してきたが、基礎フーチングブロック12、22、32において、貫通孔12X、22X、32Xを設けることに替えて、下端が閉塞されている非貫通孔(上方のみ開口している非貫通孔)にしてもよい。
また、第1〜第3実施形態の基礎構造10、20、30では、中詰め材として中詰め土18を用いたが、中詰め材として用いることができる材料は土に限定されるわけではなく、砂であってもよく、また、土と砂の混合物であってもよい。さらに、土や砂以外の材料であってもよく、例えば鉄鋼スラグ、非鉄金属スラグ(銅スラグ等)やコンクリートがら等を用いることもできる。
また、基礎構造10、20、30で用いるプレキャスト部材(基礎フーチングブロック12、22、32、基礎壁体ブロック14)の製作は、運搬の手間を少なくするため、現地近傍で行うのがよい。また、本実施形態で用いるプレキャスト部材の重量は例えば20t程度を目安とすることができる。
(第1〜第3実施形態の基礎構造を用いた堤体)
第1実施形態の基礎構造10を基礎構造として用いた堤体の例として、基礎構造10を備えた堤体40および堤体50をそれぞれ図16、図17に示しておく。第1実施形態の基礎構造10を基礎構造として用いた堤体40、50の上部構造42、52が延びる方向は、基礎構造10の基礎ブロック構造11の壁面11Aと平行な水平方向(基礎壁体ブロック14の長手方向であり、図16、図17において紙面と直交する方向)である。なお、図16、図17は、それぞれ堤体40および堤体50の側面図(基礎構造10の基礎ブロック構造11の壁面11Aと平行な水平方向から見た側面図)である。ただし、図16、図17では図示をわかりやすくする都合上、本来は見えない内部の構造を記載した箇所もあり、当該箇所では、本来隠れ線として破線で記載すべき線も実線で記載している箇所もある。
なお、堤体40および堤体50において、基礎構造10に替えて基礎構造20を用いることもでき、設計条件に応じて適宜選択することができる。
次に、本第3実施形態の基礎構造30を基礎構造として用いた堤体の例として、基礎構造30を備えた堤体60および堤体70をそれぞれ図18、図19に示しておく。本第3実施形態の基礎構造30を基礎構造として用いた堤体60、70の上部構造62、72が延びる方向は、基礎構造30の基礎ブロック構造31の壁面31Aと直交する方向(基礎壁体ブロック14の長手方向と直交する水平方向であり、図18、図19において紙面と直交する方向)である。
上部構造42は、プレキャスト化されたフーチング44と、プレキャスト化された壁体46と、を有してなり、上部構造42のフーチング44および壁体46が、基礎連結用鋼管16を介して基礎構造10と連結されて一体化している。
また、上部構造62は、プレキャスト化されたフーチング64と、プレキャスト化された壁体66と、を有してなり、上部構造62のフーチング64および壁体66が、基礎連結用鋼管16を介して基礎構造30と連結されて一体化している。
堤体40、60においては、海側の基礎連結用鋼管16は陸側の基礎連結用鋼管16よりも長さが長く、海側の基礎連結用鋼管16は上部構造42、62の最上段の壁体46、66の天端付近に達しており、海側の基礎連結用鋼管16は、フーチング44、64を基礎構造10、30に連結するだけでなく、壁体46、66をフーチング44、64に連結する役割も担っている。
一方、堤体50においては、海側の基礎連結用鋼管16と陸側の基礎連結用鋼管16の長さは同等であり、海側の基礎連結用鋼管16の上端部は上部構造52のフーチング54の上面よりも上方に突出していない。このため、基礎連結用鋼管16は、上部構造52のフーチング54を基礎構造10に連結する連結する役割は担っているが、フーチング54と壁体56とを連結する役割は担っていない。上部構造52において、フーチング54と壁体56との連結は壁体連結用鋼管58によってなされている。
また、堤体70においても堤体50と同様に、海側の基礎連結用鋼管16と陸側の基礎連結用鋼管16の長さは同等であり、海側の基礎連結用鋼管16の上端部は上部構造72のフーチング74の上面よりも上方に突出していない。このため、基礎連結用鋼管16は、上部構造72のフーチング74を基礎構造30に連結する連結する役割は担っているが、フーチング74と壁体76とを連結する役割は担っていない。上部構造72において、フーチング74と壁体76との連結は壁体連結用鋼管78によってなされている。
なお、第2実施形態の基礎構造20を基礎構造として用いた堤体の上部構造が延びる方向は、第1実施形態の基礎構造10を基礎構造として用いた堤体40、50と同様であり、基礎構造20の基礎ブロック構造21の壁面21Aと平行な水平方向(基礎壁体ブロック14の長手方向)である。
(第4、第5、第6実施形態の基礎構造)
第1、第2、第3実施形態の基礎構造10、20、30では、基礎連結用鋼管16の上端部は、それぞれ図1、図9、図12に示すように、最上段の基礎壁体ブロック14の上面よりもさらに上方にまで伸びている。
これに対し、第4、第5、第6実施形態の基礎構造34、36、38においては、それぞれ図20、図21、図22に示すように、基礎連結用鋼管17の上端の高さ位置は、最上段の基礎壁体ブロック14の上面と同一の高さ位置であるか、あるいは最上段の前記基礎壁体ブロック14の上面よりも下方の高さ位置である。即ち、第4、第5、第6実施形態の基礎構造34、36、38は、それぞれ図20、図21、図22に示すように、基礎構造10、20、30において、基礎連結用鋼管16を、基礎連結用鋼管16よりも上端部の高さ位置が低い基礎連結用鋼管17に変更した基礎構造であり、基礎連結用鋼管の上端部が最上段の基礎壁体ブロック14の上面よりも上方に達していない構成に変更した基礎構造である。この点以外は、第4、第5、第6実施形態の基礎構造34、36、38の構成は、第1、第2、第3実施形態の基礎構造10、20、30と同様であるので、同様の構成には同一の符号を付し、説明は省略する。
第4、第5、第6実施形態の基礎構造34、36、38では、基礎連結用鋼管17の上端部が最上段の基礎壁体ブロック14の上面よりも上方に突出していないため、基礎連結用鋼管17を基礎構造34、36、38の上方に位置する構造物との連結に利用することは困難である。
しかし、基礎構造から伸びてきている鋼材を基礎構造との連結に利用しない従来のプレキャスト部材を用いて構造物を構築する工法や、現地で生コンクリートを打設して構造物を構築する従来の工法に対しては、第4、第5、第6実施形態の基礎構造34、36、38を好適に用いることができる。
(第1〜第6実施形態に係る基礎構造の効果)
以上説明してきたように、本発明の第1〜第6実施形態に係る基礎構造は、プレキャスト部材が鋼材で連結されて構成されている。
このため、本発明の実施形態に係る基礎構造を設置するにあたり、基礎コンクリートを現場で打設することおよび地盤改良を行うことは、原則として必要ではない。このため、本発明の実施形態に係る基礎構造を用いることにより、原則として地盤改良を行わなくても、現場での生コンクリートの使用量を大幅に削減することができる。また、施工期間の短縮化も図ることができる。