JP5967031B2 - H形鋼のフランジ直角度矯正方法及び装置 - Google Patents
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しかし、熱間圧延成形されたH形鋼は、熱間圧延時に上下の水平ロールがガタツキや弾性変形などによってロール軸方向に動くことにより、フランジの上下左右で厚みが異なることがある。また、フランジの内面と外面との温度差や冷却過程における冷却条件の違い、及び、ウェブとフランジのつけ根とフランジの厚みの差等により温度差が生じる。これらの結果、冷却後のH形鋼は、図1に示すようなフランジ12とウェブ11とが直角をなした断面形状とならず、図2に示すようなフランジ直角度不良(フランジ12がウェブ11と直角をなさず斜交した状態になる断面形状不良)を生じやすい。
そこで、本発明は、上記のような従来技術が有する問題点を解決し、ウェブ反りが生じている場合でも、フランジ直角度不良を高精度で矯正することが可能なH形鋼のフランジ直角度矯正方法及び装置を提供することを課題とする。
このH形鋼のフランジ直角度矯正方法においては、測定した前記フランジ直角度を、前記ウェブ反り量の測定結果を用いて補正し、補正された前記フランジ直角度に基づいて、前記フランジ外面を押圧する前記フランジ用ロールの傾動量を制御してもよい。
また、本発明に係るH形鋼のフランジ直角度矯正装置は、ウェブ用ロール及びフランジ用ロールに導入されるH形鋼のフランジ直角度及びウェブ反り量をそれぞれ測定する測定部と、測定部が測定したフランジ直角度及びウェブ反り量に基づいて、フランジ外面を押圧するフランジ用ロールの傾動量を制御する制御部と、を備えているので、ウェブ反りが生じている場合でも、フランジ直角度不良を高精度で矯正することが可能である。
図4は、優れたフランジ直角度を有するH形鋼10を製造するH形鋼製造設備の模式図である。また、図5は、図4のH形鋼製造設備に設けられたフランジ直角度矯正装置6の矯正ローラ装置6Bを説明する図である。さらに、図6は、図4のH形鋼製造設備に設けられたフランジ直角度矯正装置6の測定部6Aを説明する図である。
これらは、H形鋼製造設備の上流側から下流側に向けて加熱炉1、熱間圧延装置2、切断機3、冷却床4、反り矯正機5、フランジ直角度矯正装置6の順で配置されており、それぞれ搬送ライン9によって接続されている。
まず、加熱炉1で加熱された鋼素材を搬送ライン9によって搬送し、熱間圧延装置2に導入して熱間圧延することにより、長尺なH形鋼を得る。熱間圧延装置2の構成は特に限定されるものではなく、一般的な構成を採用することができる。例えば、図4のH形鋼製造設備では、熱間圧延装置2は粗圧延機2Aと中間圧延機2Bと仕上圧延機2Cとで構成されている。仕上圧延機2Cとしては、例えばユニバーサル圧延機を好適に用いることができる。
そして、切断機3で所定の長さに切断された短尺なH形鋼10を、搬送ライン9によって冷却床4に搬送し冷却する。冷却床4においては、H形鋼10を200℃以下に冷却することが好ましい。これは、熱間圧延されたH形鋼10が十分に冷却され、曲りや反りに対する温度の影響がほとんどなくなってから矯正することが好ましいからである。200℃を超える温度のH形鋼10に対して反り矯正やフランジ直角度不良の矯正を実施すると、温度分布が残った状態で矯正が終了してしまうので、その後に室温まで冷却され温度分布がなくなるにしたがって、H形鋼10の断面形状不良が発生する場合がある。
矯正ローラ装置6Bは、図5に示すように、H姿勢のH形鋼10のウェブ11を上下両面側から挟み拘束する二対のウェブ用ロール31,31,31,31と、H形鋼10のフランジ12,12のウェブ11とは反対側の面(以下「外面」と記す)を外側から押圧する傾動可能なフランジ用ロール32,32と、を備えている。
一方、測定部6Aは、矯正ローラ装置6B(ウェブ用ロール31及びフランジ用ロール32)の形鋼搬送方向上流側に配されており、矯正ローラ装置6Bに導入されるH形鋼10のフランジ直角度及びウェブ反り量をそれぞれ測定するようになっている。
そして、距離計21がレーザー距離計である場合は、各距離計21は下方のH形鋼10のウェブ11の上面に向けてレーザーを照射し、ウェブ11の上面と距離計21との間の距離を測定するようになっている。これにより、ウェブ高さ方向に異なる複数点における前記距離が得られる。
また、H形鋼10のフランジ直角度は、非接触式の距離計22(例えばレーザー距離計や超音波距離計等)によって測定されるようになっている。すなわち、複数個(図6の例では、一方のフランジ12に対して3個)の距離計22が、H形鋼10の搬送ライン9の両側方にフランジ12の外面に対向するように配置されており、フランジ12の幅方向に沿って並べられている。
これらの距離の測定結果は前記制御部に送られ、これらの距離の差から、両フランジ12について、フランジ12の外面のフランジ幅方向両端間のウェブ高さ方向距離T2 が算出される。そして、これらウェブ高さ方向距離T2 から、各フランジ12とウェブ11とがなす角度θ’(フランジ直角度)がそれぞれ算出される。
そこで、制御部は、ウェブ高さ方向距離T2 に基づいて算出したフランジ直角度に対して、ウェブ反りによって生じるフランジ直角度の測定誤差分を、ウェブ反り量δの測定結果を用いて補正し、補正されたフランジ直角度に基づいて、フランジ用ロール32の傾動量(ロール軸32aの傾動角度Θ)及びフランジ用ロール32の押圧圧力を算出するようになっている。
図7は、ウェブ反りが生じているH形鋼10についてウェブ11の上面に対向させてウェブ高さ方向に等間隔で配列した3つの距離計21,21,21によりウェブ11上面までの距離LW1,LW2,LW3をそれぞれ測定し、図中の右側のフランジ12の外面に対向させてフランジ幅方向に等間隔で配列した3つの距離計22,22,22によりフランジ12外面までの距離LF1,LF2,LF3をそれぞれ測定する状態を示している。H形鋼10のウェブ11にはウェブ反りが生じており、フランジ12との接続部において角度αだけ水平方向から傾斜した状態となっている。
δ=[LW2−(LW1+LW3)/2]×W’/X ・・・(1)
ここで、W’はウェブの内法寸法であり、Xは右側の距離計21と左側の距離計21との距離である。
T2 =(LF1−LF3)×F/Y ・・・(2)
ここで、Fはフランジ幅であり、Yは上側の距離計22と下側の距離計22との距離である。
T1 =T2 −(δ×F)/(W/2) ・・・(3)
ここで、Fはフランジ幅であり、Wはウェブ高さである。
なお、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
また、本実施形態においては、フランジ直角度矯正装置6をH形鋼製造設備中に設置した例を説明したが、H形鋼製造設備外においてフランジ直角度矯正装置6を使用することも可能である。
以下に実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。ウェブ反りによって生じるフランジ直角度の測定誤差を補正してフランジ直角度の矯正を行った場合と、該補正を行わずにフランジ直角度の矯正を行った場合とで、矯正結果を比較する試験を行った。結果を図8のグラフに示す。
図8の(b)のグラフから分かるように、フランジ用ロールによって傾動させた傾動量と、矯正によって生じたフランジ外面のフランジ幅方向両端間のウェブ高さ方向距離T1 の変化量との間には、明確な相関性が見られ、ウェブ反り量がどのような大きさであっても、フランジ直角度不良を高精度で矯正することが可能であった。
6A 測定部
6B 矯正ローラ装置
10 H形鋼
11 ウェブ
12 フランジ
21 距離計
22 距離計
31 ウェブ用ロール
32 フランジ用ロール
Claims (4)
- 少なくとも一対のウェブ用ロールでH形鋼のウェブを両面側から挟み拘束しつつ、傾動可能なフランジ用ロールでフランジ外面を押圧して前記H形鋼のフランジ直角度を矯正するH形鋼のフランジ直角度矯正方法であって、
前記フランジ外面のフランジ幅方向両端間のウェブ高さ方向距離T 2 を測定するとともにウェブ反り量δを測定し、これらの測定結果に基づいて、下記式(3)によリウェブ反りがない時のフランジ外面のフランジ幅方向両端間のウェブ高さ方向距離T 1 を求め、求めたT 1 を0とできるように、前記フランジ外面を押圧する前記フランジ用ロール傾動量を制御することを特徴とするH形鋼のフランジ直角度矯正方法。
T 1 =T 2 −(δ×F)/(W/2) ・・・(3)
ただし、Fはフランジ幅であり、Wはウェブ高さである。 - ウェブ面に対向させてウェブ高さ方向に等間隔で配列した3つの距離計により、それぞれの距離計から前記ウェブ面までの距離L W1 ,L W2 ,L W3 をそれぞれ測定し、測定した距離L W1 ,L W2 ,L W3 から下記式(1)により前記ウェブ反り量δを求め、
前記フランジ外面に対向させてフランジ幅方向に配列した2つの距離計により、それぞれの距離計から前記フランジ外面までの距離L F1 ,L F3 をそれぞれ測定し、測定した距離L F1 ,L F3 から下記式(2)により前記フランジ外面のフランジ幅方向両端間のウェブ高さ方向距離T 2 を求めることを特徴とする請求項1に記載のH形鋼のフランジ直角度矯正方法。
δ=[L W2 −(L W1 +L W3 )/2]×W’/X ・・・(1)
ただし、W’はウェブの内法寸法であり、Xは、配列した3つの距離計のうち両外側の距離計間の距離である。また、L W1 、L W3 は、配列した3つの距離計のうち両外側の距離計で測定した距離計から前記ウェブ面までの距離であり、L W2 は、配列した3つの距離計のうち中央の距離計で測定した距離計から前記ウェブ面までの距離である。
T 2 =(L F1 −L F3 )×F/Y ・・・(2)
ただし、Fはフランジ幅であり、Yは2つの距離計間の距離である。 - H形鋼のウェブを両面側から挟み拘束する少なくとも一対のウェブ用ロールと、前記H形鋼のフランジ外面を押圧する傾動可能なフランジ用ロールと、を備え、前記H形鋼のフランジ直角度を矯正するH形鋼のフランジ直角度矯正装置であって、
前記ウェブ用ロール及び前記フランジ用ロールに導入される前記H形鋼の前記フランジ外面のフランジ幅方向両端間のウェブ高さ方向距離T 2 及びウェブ反り量δをそれぞれ測定する測定部と、前記測定部が測定したウェブ高さ方向距離T 2 及びウェブ反り量δに基づいて、下記式(3)によリウェブ反りがない時のフランジ外面のフランジ幅方向両端間のウェブ高さ方向距離T 1 を求め、求めたT 1 を0とできるように、前記フランジ外面を押圧する前記フランジ用ロール傾動量を制御する制御部と、を備えることを特徴とするH形鋼のフランジ直角度矯正装置。
T 1 =T 2 −(δ×F)/(W/2) ・・・(3)
ただし、Fはフランジ幅であり、Wはウェブ高さである。 - 前記測定部は、ウェブ面に対向させてウェブ高さ方向に等間隔で配列した3つの距離計により、それぞれの距離計から前記ウェブ面までの距離L W1 ,L W2 ,L W3 をそれぞれ測定し、測定した距離L W1 ,L W2 ,L W3 から下記式(1)により前記ウェブ反り量δを求め、 前記フランジ外面に対向させてフランジ幅方向に配列した2つの距離計により、それぞれの距離計から前記フランジ外面までの距離L F1 ,L F3 をそれぞれ測定し、測定した距離L F1 ,L F3 から下記式(2)により前記フランジ外面のフランジ幅方向両端間のウェブ高さ方向距離T 2 を求めることを特徴とする請求項3に記載のH形鋼のフランジ直角度矯正装置。
δ=[L W2 −(L W1 +L W3 )/2]×W’/X ・・・(1)
ただし、W’はウェブの内法寸法であり、Xは、配列した3つの距離計のうち両外側の距離計間の距離である。また、L W1 、L W3 は、配列した3つの距離計のうち両外側の距離計で測定した距離計から前記ウェブ面までの距離であり、L W2 は、配列した3つの距離計のうち中央の距離計で測定した距離計から前記ウェブ面までの距離である。
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ただし、Fはフランジ幅であり、Yは2つの距離計間の距離である。
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