JP5966676B2 - 繊維複合体の製造方法 - Google Patents
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Description
そのため、本出願人は、補強繊維同士の間に熱膨張性カプセルが膨張(発泡)してなる熱可塑性樹脂が分散されており、軽量性及び剛性に優れた繊維基材である繊維複合体の製造方法を既に出願している(特許文献2)。
しかしながら、熱膨張性カプセルは、空気中の水分を取り込みやすく、その水分により供給手段の周辺に熱膨張性カプセルが付着し、供給手段における供給部において目詰まりを発生させるおそれがあり、メンテナンス回数の増加や生産性の低下に繋がるおそれがある。また、熱膨張性カプセルが供給手段に付着することで、繊維マット上に所定の量を供給することができず、製品品質が低下してしまうおそれがある。更には、供給手段に付着した熱膨張性カプセルが塊となって繊維マット上に不本意に落下し、製品品質が低下してしまうおそれがある。
前記補強繊維と熱可塑性樹脂繊維とが含まれた繊維マットの表裏いずれか一面に、熱膨脹性カプセルを含む粉体状添加物を供給する供給工程と、
前記繊維マットの一面を押圧手段により押圧することにより、前記繊維マットの一面に供給された前記粉体状添加物を前記繊維マットの他面側へ向かって分散させる分散工程と、
前記繊維マットを加熱圧縮して繊維複合体を成形する成形工程と、を備えており、
前記補強繊維は、植物性繊維及び無機繊維のうちの少なくとも一方であり、
前記供給工程は、粉体状添加物供給装置を用いて行われ、前記粉体状添加物供給装置における粉体貯留部の上方及び側方は、下面側が開放された箱状の包囲体で囲まれており、前記包囲体内には除湿された気体が前記包囲体の上部から流入されており、
前記粉体貯留部の下方には、前記粉体状添加物を前記繊維マットに供給するための粉体供給口が配されており、
前記粉体貯留部の側方は、前記粉体供給口の配された高さよりも低い位置まで、前記包囲体によって囲まれており、
前記粉体貯留部内は、温度5〜40℃、相対湿度30〜70%に調整されており、
前記除湿された気体は、前記包囲体内に0.02〜0.1MPaで流入されており、
前記除湿された気体によって、前記粉体貯留部の内部及びその外部を含めた空間全体を覆う包囲体内が除湿されており、
前記供給工程では、前記繊維マットに保持される前記熱膨張性カプセルが、前記繊維マット全体を100質量%とした場合に1〜15質量%となるように、前記粉体状添加物が供給されることを要旨とする。
また、粉体貯留部の側方が、粉体供給口の配された高さよりも低い位置まで、包囲体によって囲まれているため、粉体供給口付近においても適度な湿度を十分に保持することができる。
更に、除湿された気体を包囲体の上部から流入するため、包囲体内全体を適度な湿度を十分に保持することができる。
また、除湿された気体を包囲体の上部における複数箇所から流入する場合には、包囲体内全体を適度な湿度に効率良く保持することができる。
更に、除湿された気体を包囲体内に0.04〜0.1MPaで流入するため、粉体貯留部に貯留された粉体添加物を吹き上げたりすることなく、包囲体内を適度な湿度に保持することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の繊維複合体の製造方法は、補強繊維同士が熱可塑性樹脂により結着された構造を有する繊維複合体の製造方法である。
そして、この製造方法は、補強繊維と熱可塑性樹脂繊維とが含まれた繊維マットの表裏いずれか一面に、粉体状添加物を供給する供給工程と、
繊維マットの一面を押圧手段により押圧することにより、繊維マットの一面に供給された粉体状添加物を前記繊維マットの他面側へ向かって分散させる分散工程と、
繊維マットを加熱圧縮して繊維複合体を成形する成形工程と、を備えている。
本発明では繊維マットを湿式法(抄紙法等)で形成してもよく、乾式法で形成してもよいが、湿式法を用いた場合には高度な乾燥工程を要することになるため乾式法が好ましい。特に補強繊維として植物性繊維を用いる場合には、植物性繊維が吸水性を有するためにとりわけ乾式法が好ましい。
また、繊維マットの厚さは5mm以上(通常50mm以下、更には5〜30mm、特に5〜20mm)とすることができる。
この植物性繊維としては、ケナフ、ジュート麻、マニラ麻、サイザル麻、雁皮、三椏、楮、バナナ、パイナップル、ココヤシ、トウモロコシ、サトウキビ、バガス、ヤシ、パピルス、葦、エスパルト、サバイグラス、麦、稲、竹、各種針葉樹(スギ及びヒノキ等)、広葉樹及び綿花等の各種植物体から得られた植物性繊維が挙げられる。この植物性繊維は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらのなかではケナフ(即ち、植物性繊維としてはケナフ繊維)が好ましい。ケナフは成長が極めて早い一年草であり、優れた二酸化炭素吸収性を有するため、大気中の二酸化炭素量の削減、森林資源の有効利用等に貢献できるからである。
また、上記植物性繊維として用いる植物体の部位は、特に限定されず、木質部、非木質部、葉部、茎部及び根部等の植物体を構成するいずれの部位であってもよい。更に、特定部位のみを用いてもよく2ヶ所以上の異なる部位を併用してもよい。
また、上記ジュートは、ジュート麻から得られる繊維である。このジュート麻には、黄麻(コウマ、Corchorus capsularis L.)、及び、綱麻(ツナソ)、シマツナソ並びにモロヘイヤ、を含む麻及びシナノキ科の植物を含むものとする。
上記植物性繊維は単用してもよく併用してもよい。
更に、植物性繊維及び無機繊維は、いずれか一方のみを単用してもよく、植物性繊維と無機繊維とを併用してもよい。これらのうちでは補強効果に優れること及び取扱い性が良いことから植物性繊維が好ましく、無機繊維のなかではガラス繊維が好ましい。更に、これらのうちでも環境的観点から植物性繊維のうちのケナフ繊維が特に好ましい。
また、その繊維径は1mm以下が好ましく、0.01〜1mmがより好ましく、0.02〜0.7mmが更に好ましく、0.03〜0.5mmが特に好ましい。この繊維径が上記範囲にあると、特に高い強度を有する繊維複合体を得ることができる。補強繊維として、上記の繊維長及び繊維径を外れるものを含んでもよいが、その繊維の含有量は、補強繊維の全体に対して0.5〜10質量%(特に0.5〜3質量%)であることが好ましい。これにより得られる繊維複合体の強度を高く維持できる。
尚、上記繊維長は平均繊維長を意味し(以下同様)、JIS L1015に準拠して、直接法にて無作為に単繊維を1本ずつ取り出し、置尺上で繊維長を測定し、合計200本について測定した平均値である。更に、上記繊維径は平均繊維径を意味し(以下同様)、無作為に単繊維を1本ずつ取り出し、繊維の長さ方向の中央における繊維径を、光学顕微鏡を用いて実測し、合計200本について測定した平均値である。
熱可塑性樹脂繊維を構成する熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂及びABS樹脂等が挙げられる。このうち、ポリオレフィンとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン・プロピレンランダム共重合体等が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン及びポリブチレンサクシネート等の脂肪族ポリエステル樹脂、並びに、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル樹脂等が挙げられる。アクリル樹脂はメタクリレート及び/又はアクリレート等を用いて得られた樹脂である。これらの熱可塑性樹脂は、補強繊維(特に補強繊維の表面)に対する親和性を高めるために変性された樹脂であってもよい。また、上記熱可塑性樹脂は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記ポリエステル樹脂としては、生分解性を有するポリエステル樹脂(以下、単に「生分解性樹脂」ともいう)が好ましい。この生分解性樹脂は、以下に例示される。
(1)乳酸、リンゴ酸、グルコース酸、3−ヒドロキシ酪酸等のヒドロキシカルボン酸の単独重合体;これらのヒドロキシカルボン酸のうちの少なくとも1種を用いた共重合体等のヒドロキシカルボン酸系脂肪族ポリエステル。
(2)ポリカプロラクトン、上記ヒドロキシカルボン酸のうちの少なくとも1種と、カプロラクトンとの共重合体等のカプロラクトン系脂肪族ポリエステル。
(3)ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート等の二塩基酸ポリエステル。
これらのうち、ポリ乳酸、乳酸と、乳酸以外の他の上記ヒドロキシカルボン酸との共重合体、ポリカプロラクトン、及び、上記ヒドロキシカルボン酸のうちの少なくとも1種と、カプロラクトンとの共重合体が好ましく、ポリ乳酸が特に好ましい。これらの生分解性樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。尚、上記乳酸は、L−乳酸及びD−乳酸を含むものとし、これらの乳酸は単独で用いてもよく、併用してもよい。
また、その繊維径は0.001〜1.5mmが好ましく、0.005〜0.7mmがより好ましく、0.008〜0.5mmが更に好ましく、0.01〜0.3mmが特に好ましい。この繊維径が上記範囲にあると、熱可塑性樹脂繊維を切断させず、補強繊維と分散性よく交絡できる。なかでも補強繊維が植物性繊維である場合に特に適する。
特に補強繊維が植物性繊維である場合にあっては、植物性繊維と熱可塑性樹脂繊維との合計量を100質量%とした場合に、植物性繊維は10〜95質量%とすることが好ましく、20〜90質量%とすることがより好ましく、30〜80質量%とすることが特に好ましい。
尚、繊維マットには、補強繊維及び熱可塑性樹脂繊維以外にも、酸化防止剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤、抗菌剤、防かび剤、着色剤等の添加剤が含まれていてもよい。
尚、これらの粉体状添加物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
この熱膨張性カプセルの形状は特に限定されないが、通常、略球形である。尚、この熱膨張性カプセルは膨張した後、破泡して殻壁は不定形化してもよく、破泡することなく殻壁がカプセル形状を維持してもよい。更に、発泡剤を用いる場合、その発泡剤は、殻壁の外部に放出されてもよく、膨張後の殻壁内に一部又は全部が残存されてもよい。
尚、上記平均粒径は、粒度分布測定法により得られた粒度分布におけるD50の値である。
一方、上記(2)の場合、即ち、溶融工程と膨張工程と同時に行う場合には、殻壁の軟化温度(発泡開始温度、第2の熱可塑性樹脂の軟化温度)は、熱可塑性樹脂繊維の軟化温度(第1の熱可塑性樹脂の軟化温度)に対して−30〜+60℃(より好ましくは−10〜+40℃)の範囲とすることが好ましい。
分散工程において、繊維マットの補強繊維同士で形成された間隙に熱膨張性カプセルが良好に分散して配置され、加熱されて内包された発泡剤が膨張すると共に、殻壁が軟化されて上記間隙内で押し広げられる。そして、殻壁は間隙を構成している補強繊維に押し付けられ、加熱温度が上昇されて殻壁を構成する熱可塑性樹脂が溶融することで補強繊維同士を間隙の内側から広範囲に結着する。
即ち、熱可塑性樹脂繊維が溶融されると補強繊維との交絡点で結着されるのに対して、凝集することなく良好に分散した熱膨張性カプセルは複数の補強繊維同士を殻壁により面状に一気に結着できる。そのため、少量の熱可塑性樹脂を効率よく補強繊維の結着に利用でき、補強繊維の結着に寄与される熱可塑性樹脂量を減少させつつ、補強繊維同士の結着量が増加されて高強度化されるものと考えられる。
この粉体状添加物供給装置を用いた供給方法は、繊維マット表面に対して粉体状添加物を供給できればよく、どのような方法を用いてもよい。例えば、(1)静電塗布法を用いて、粉体状添加物と繊維マットの供給面とを各々異なる極性に帯電させることで、粉体状添加物を繊維マットの供給面に対して供給してもよく、(2)繊維マットの供給面を下方に配置し、粉体状添加物を上方から落下させて供給してもよく、(3)気流に粉体状添加物を乗せて繊維マットの供給面に付着させることで供給してもよく、(4)更にその他の方法で供給してもよい。また、これらの(1)〜(4)の方法は併用してもよい。
これらのなかでも、上記(1)又は(2)の方法が好ましく、上記(2)の方法が特に好ましい。
上記粉体散布機としては、例えば、図2、図4及び図5に示すように、粉体状添加物15を貯留可能な粉体貯留部18と、粉体貯留部18の下方に配された粉体供給口19と、を備える粉体散布機(粉体状添加物供給装置16)を用いることができる。尚、この粉体散布機においては、粉体供給口19の下方に配設された網体20上に粉体状添加物15が供給される。そして、粉体状添加物15が粉体供給口19に配されたローラ体21の回転により、網体20の網目から落下することにより、繊維マット上に粉体状添加物15が供給される。
上記包囲体の形態は、下面側が開放された箱状であり、粉体状添加物供給装置における粉体貯留部の上方及び側方を囲むことができ、除湿された気体を流入することにより、包囲体内を適度な湿度に保持可能である。通常、この包囲体は、非通気性の材質(例えば、金属等)により構成される。
また、図5に示すように、包囲体22は、粉体状添加物供給装置16における粉体貯留部18の側方において、粉体供給口19の配された高さ(図5における高さh1参照)よりも低い位置(図5における高さh2参照)まで囲むことが可能なものである。この場合、粉体供給口付近においても適度な湿度を十分に保持することができ、粉体状添加物の粉体供給口への付着や、塊状となっての繊維マットへの不本意な落下を十分に抑制することができる。
また、除湿された気体は、包囲体の上部から流入される。この場合、包囲体内全体を適度な湿度を十分に保持することができる。尚、流入箇所は1箇所のみであってもよいし、複数箇所であってもよい。特に、包囲体内全体を適度な湿度に効率良く保持するという観点から、除湿された気体は、包囲体の上部における複数箇所から流入することが好ましい。
更に、粉体供給部(図5における粉体供給口19参照)周辺は、温度5〜40℃、相対湿度30〜70%(特に、温度15〜25℃、相対湿度40〜60%)に調整されていることが好ましい。このような条件である場合、粉体状添加物を効率良く且つより均質に繊維マットへ供給することができるため好ましい。
尚、ここでいう供給量とは実際に繊維マットに保持された量であり、供給後に飛散したり、繊維マットを透過して下方に落下したり、回収された熱膨張性カプセルは含まれていない。
この押圧を行う方法(押圧方法)は特に限定されず、上記効果を得ることができればよい。例えば、押圧手段としてローラを用いて押圧してもよく、平板状の錘を一面に載置して押圧してもよく、その他の方法で押圧してもよいが、これらのなかではローラを用いることが好ましい。ローラは、製造ラインの流れのなかで用いることができ、製造工程上、特に好ましい。
ローラによる押圧の条件は特に限定されないが、ローラ直下におけるマット厚が、マット全体の厚さの5〜80%(より好ましくは10〜70%、更に好ましくは20〜50%)となるように押圧を行うことが好ましい。上記範囲では、粉体状添加物をマット内に押し込む効果がとりわけ高い。
この成形工程は、繊維マットを構成する上記熱可塑性樹脂繊維を溶融する工程(溶融工程)を備えていてもよい。更に、粉体状添加物として熱膨張性カプセルが用いられる場合には、繊維マット内に分散された熱膨張性カプセルを加熱して膨張させる工程(膨張工程)を備えていてもよい。
溶融工程及び膨張工程は、順不同で行うことができる。即ち、(1)溶融工程を先に行い、次いで、膨張工程を後に行ってもよく、(2)溶融工程と膨張工程とを同時に行ってもよく、(3)膨張工程を先に行い、次いで、溶融工程を後に行ってもよい。これらのなかでは、上記(1)又は(2)が好ましい。
尚、これらの工程の少なくとも1つと、成形工程とを同時に行うこともできる。
また、膨張工程では、得られる繊維複合体の成形を同時に行うことができる。即ち、厚さ及び形状を制御することができる。例えば、膨張前成形体を膨張工程において十分に膨張させた上で、膨張後成形体を加熱圧縮して所望の厚さの繊維複合体を得ることもできる。この膨張工程においては、熱膨張性カプセルを膨張させる際に所望厚さのクリアランスを維持できる金型を用いて膨らみを適度に拘束しつつ、熱可塑性樹脂の温度を低下させることで、所望の厚さの繊維複合体を得ることもできる。更に、金型に所望の凹凸形状を付与することで、凹凸形状を有する繊維複合体を得ることもできる。
[1]繊維複合体の製造(実施例1)
繊維複合体を以下のようにして製造した(図1〜図5参照)。
(1)繊維マットの製造
補強繊維として植物性繊維(ケナフ繊維)を用いた繊維マットを、図1に示すマット製造装置を用いて製造した。このマット製造装置では、植物性繊維及び熱可塑性樹脂繊維の混合繊維1、4を2機のエアレイ装置(第1エアレイ装置3及び第2エアレイ装置6)を用いて2つのウェブ(第1ウェブ7及び第2ウェブ8)を調製している。これらのウェブを積層した後、ニードルパンチ(第1交絡手段11及び第2交絡手段12)を行って2層のウェブ同士を交絡させて1層化した後、裁断装置13において裁断して繊維マット14を製造することができる。
また、このマット製造装置には、その下流側に、更に図2に示すように、粉体状添加物15を供給する粉体状添加物供給装置16が接続されている。
更に、この粉体状添加物供給装置16には、その下流側に、図3に示すように、供給された粉体状添加物15を繊維マット14内に分散させる押圧ローラ装置26が連結されて、粉体状添加物15が内部に分散された繊維マットを得ることができる。
次いで、第1交絡手段(ニードルパンチ加工装置)11を用いて、搬送される積層ウェブ9の上方から、即ち、第2ウェブ8の側(上面側)から、針密度70本/cm2、針深度10mmの条件でニードリングした。そして、同条件にて、第2交絡手段(ニードルパンチ加工装置)12を用いて、積層ウェブ9の下方から、即ち、第1ウェブ7の側(底面側)から同条件でニードリングし、厚さ約8mm、目付1000g/m2のマットを作製した。その後、カッター13によりマットを裁断し、繊維マット14(1300×800×8mm)を得た。
上記(1)で得られた繊維マット14は、マット製造装置に連結された粉体状添加物供給装置16へ引き続いて搬送される。この粉体状添加物供給装置16では、コンベア17上の繊維マット14の上面に対して粉体状添加物15が供給される。
本実施例では、粉体状添加物供給装置16として、図2、図4及び図5に示すように、粉体状添加物15を貯留可能な粉体貯留部18と、粉体貯留部18の下方に配された粉体供給口19と、を備える粉体散布機(粉体状添加物供給装置16)が用いられている。そして、この粉体供給口19から粉体状添加物15を落下させることにより、繊維マット14の一面に供給・付着させることができる。
具体的には、粉体貯留部18内において、粉体供給口19の下方に配設されたパンチングメタル等の網体20(図5参照)上に粉体状添加物15を供給する。そして、供給された粉体状添加物15が、粉体供給口19に配設されたチャンネルブラシ等のローラ体21(図5参照)の回転により、網体20の網目から落下することにより、繊維マット14上に粉体状添加物15を供給することができる。尚、粉体状添加物15としては、平均粒径50μm、発泡開始温度200〜210℃の熱膨張性カプセルが用いられている。
更に、この供給工程は、包囲体22内に除湿された気体(温度;25℃、露点;−10℃、風量;0.5m3/min、送風圧力;0.05MPa)が流入された状態で行われる。この際の粉体貯留部18内は、温度26℃、相対湿度40%であり、網体20周辺は、温度29℃、相対湿度48%である。尚、包囲体22の外部は、温度32℃、相対湿度80%である。
また、除湿された気体は、除湿機24(SMC社製、型番「IDH4−10」)から配管25を介して包囲体22内に複数箇所から流入される。
尚、この供給工程における、この粉体状添加物15(熱膨張性カプセル)の塗布量は、繊維マット14に対して6質量%である。
上記(2)で粉体状添加物15が供給された繊維マット14は、固定台27に固定され、押圧手段28を用いた分散工程に供される。
具体的には、この分散工程では、繊維マット14を固定台27に固定した後、クロムメッキを施したφ50の可動式のローラ(押圧手段28)を用いて、マット厚みが50%圧縮される圧力(0.4MPa)にて、速度6m/minで20回往復させることにより、繊維マット14中に粉体状添加物を分散させた。
尚、この分散工程により、マット表面に白く付着されていた粉体状添加物15が内部に分散されてマット表面から白さがなくなったことが確認された。更に、質量測定により、繊維マット14内に、マット全体を100質量%とした場合に6質量%の粉体状添加物15(熱膨張性カプセル)が含有されていることが確認された。
上記(3)で得られた粉体状添加物15が分散された繊維マット14をテフロンシート(厚さ;0.3mm)に挟み、加熱プレス装置の平板金型内で溶融工程に供した。この加熱プレスは、型温度200℃、プレス圧力1MPa、加熱時間60秒の条件にて行った。尚、この際、被加熱プレス物の内部温度は210℃まで上昇させた。
その後、冷却プレスにより、2MPaの圧力で25℃になるまで60秒間冷却して、板厚2.5mm、目付1.0kg/m2の膨張前繊維複合体を得た。即ち、この膨張前繊維複合体内部では、熱可塑性樹脂繊維は溶融されて補強繊維同士を結着した状態にあるものの、加圧により熱膨張性カプセル(粉体状添加物15)は膨張されていない状態にある。
上記(4)で得られた膨張前繊維複合体を、235℃に設定されたオーブンで加熱して(加熱時間;120秒)、熱膨張性カプセル(粉体状添加物15)を膨張させた。その後、冷却プレスにより、2MPaの圧力で25℃になるまで60秒間冷却して、板厚4mm、目付1.0kg/m2の繊維複合体を得た。
(1)実施例2
上述の実施例1におけるマット製造装置により製造された繊維マット14を、100mm角に裁断して試験用マットを作成した。
その後、粉体状添加物15が貯留された粉体貯留部18の上方及び側方が包囲体22により囲まれた粉体状添加物供給装置16(図2、図4及び図5参照)の包囲体22内に、除湿機24を用いて除湿された気体(温度;25℃、露点;−10℃、風量;0.5m3/min、圧力;0.05MPa)を1時間流入して、粉体貯留部18内を温度26℃、相対湿度40%とし、網体20周辺を、温度29℃、相対湿度48%とした。尚、包囲体22の外部は、温度32℃、相対湿度80%である。
次いで、包囲体22内に除湿された気体を流入し続けた状態のまま、4時間連続で、複数の試験用マットに粉体状添加物15を供給した。尚、粉体状添加物15の塗布量は、0.6〜0.7g/100cm2となるように設定した。
そして、開始直後、0.5時間後、1時間後、2時間後、3時間後、及び4時間後における試験用マットに供給された粉体状添加物15の塗布量を、供給前後の重量差から算出し、表1に示した。
包囲体22内に除湿された気体を流入することなく、粉体貯留部18内及び網体20周辺の環境が、包囲体22の外部(温度32℃、相対湿度80%)と同様の環境下において、粉体状添加物15の供給を行ったこと以外は、実施例2と同様にして、複数の試験用マットに粉体状添加物15を供給した。そして、実施例2と同様にして、所定時間が経過した後の塗布量を算出し、その結果を表1に併記した。
表1によれば、包囲体内に除湿された気体を流入した状態で供給工程を行った実施例2においては、粉体状添加物の供給開始直後から4時間経過後までの塗布量が0.61〜0.67g/100cm2と均質であり、4時間を通して、所定量の粉体状添加物を試験用マットに供給できることが確認できた。
これに対して、包囲体内に除湿された気体を流入せずに供給工程を行った比較例1においては、粉体状添加物の塗布量は時間の経過に伴って減少し、4時間経過後には粉体供給口における網体の網目等に粉体状添加物が塊状になって付着してしまい、全く塗布することができなくなってしまった。
以上のことから、本実施例の繊維複合体の製造方法によれば、包囲体内の湿度を制御することができ、粉体状添加物の吸湿による供給装置への付着を抑制し、粉体状添加物供給装置の粉体供給口の目詰まりによる生産性の低下を抑制することができる。更には、粉体状添加物の供給量を安定化できるとともに、吸湿による粉体状添加物同士の塊状となっての落下を抑制できるため、製品品質の低下を十分に抑制することができる。
Claims (2)
- 補強繊維同士が熱可塑性樹脂により結着された構造を有する繊維複合体の製造方法であって、
前記補強繊維と熱可塑性樹脂繊維とが含まれた繊維マットの表裏いずれか一面に、熱膨脹性カプセルを含む粉体状添加物を供給する供給工程と、
前記繊維マットの一面を押圧手段により押圧することにより、前記繊維マットの一面に供給された前記粉体状添加物を前記繊維マットの他面側へ向かって分散させる分散工程と、
前記繊維マットを加熱圧縮して繊維複合体を成形する成形工程と、を備えており、
前記補強繊維は、植物性繊維及び無機繊維のうちの少なくとも一方であり、
前記供給工程は、粉体状添加物供給装置を用いて行われ、前記粉体状添加物供給装置における粉体貯留部の上方及び側方は、下面側が開放された箱状の包囲体で囲まれており、前記包囲体内には除湿された気体が前記包囲体の上部から流入されており、
前記粉体貯留部の下方には、前記粉体状添加物を前記繊維マットに供給するための粉体供給口が配されており、
前記粉体貯留部の側方は、前記粉体供給口の配された高さよりも低い位置まで、前記包囲体によって囲まれており、
前記粉体貯留部内は、温度5〜40℃、相対湿度30〜70%に調整されており、
前記除湿された気体は、前記包囲体内に0.02〜0.1MPaで流入されており、
前記除湿された気体によって、前記粉体貯留部の内部及びその外部を含めた空間全体を覆う包囲体内が除湿されており、
前記供給工程では、前記繊維マットに保持される前記熱膨張性カプセルが、前記繊維マット全体を100質量%とした場合に1〜15質量%となるように、前記粉体状添加物が供給されることを特徴とする繊維複合体の製造方法。 - 前記除湿された気体を前記包囲体内に前記包囲体の上部における複数箇所から流入する請求項1に記載の繊維複合体の製造方法。
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