JP5601234B2 - 熱可塑性樹脂組成物の製造方法 - Google Patents
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Description
また、下記特許文献2において、植物繊維にホウ酸及びホウ酸化合物を含ませて難燃化処理する方法が開示されている(特許文献2[請求項1])。具体的には、ホウ酸又は無水ホウ酸の水溶液にケナフ繊維を浸漬した後、80℃に設定された熱風乾燥機で6時間乾燥させてケナフ繊維を難燃化するというものである。
その他、熱可塑性樹脂組成物及びその製造方法並びに成形体及びその製造方法(特許文献3参照)が知られている。
加えて、これらの水溶化して利用できる難燃剤は一般に分解温度が低く、難燃剤の分解温度よりも融点の高いマトリックス樹脂を混合(混練)した場合に、難燃剤の分解をまねくという問題がある。マトリックス樹脂との混合で難燃剤が分解された組成物では、難燃効果は得られるものの、難燃剤が分解されていない組成物に比べて機械的物性が低い傾向にあったり、変色により外観品質等に影響を及ぼしたりする場合がある。
原料植物性繊維と固体難燃剤とを共に押し固めて、前記原料植物性繊維及び前記固体難燃剤が含まれた繊維ペレットを形成する繊維ペレット形成工程と、
熱可塑性樹脂と前記繊維ペレットとを混合して混合物とする混合工程と、を備え、
前記繊維ペレット形成工程は、
一面と他面との間に貫通された貫通孔を有するダイと、
前記ダイの前記一面側に接して回転される押込ローラーと、を備えたローラー式ペレット成形機を用いるとともに、
前記押込ローラーにより、前記原料植物性繊維及び前記固体難燃剤を、前記ダイの前記一面側から圧入しつつ、前記他面側から押し出して、前記繊維ペレットを得る工程であることを要旨とする。
[1]熱可塑性樹脂組成物
本製造方法においていう熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と植物性繊維との合計を100質量%とした場合に、植物性繊維を25〜95質量%含有する組成物である。
上記「熱可塑性樹脂」は、混合工程で繊維ペレットと混合される樹脂である。この熱可塑性樹脂は特に限定されず、各種の熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール及びABS樹脂等が挙げられる。また、熱可塑性樹脂としては、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン及びポリブチレンサクシネート等を用いることもできる。これらのうちでは、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィンが好ましく、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、特にエチレン−プロピレンブロック共重合体がより好ましい。熱可塑性樹脂は2種以上を併用してもよいが、1種のみ用いられることが多い。
尚、酸価はJIS K0070により測定することができる。
尚、重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定することができる。
上記「原料植物性繊維」は、植物に由来する繊維であり、熱可塑性樹脂と混合されて熱可塑性樹脂組成物を構成する。この原料植物性繊維は、通常、得られる熱可塑性樹脂組成物内に含まれる植物性繊維と実質的に同じであるが、熱可塑性樹脂組成物の製造過程において、剪断力が加わる等、機械的な作用により当初の形態及び大きさが変化したり、或いは、加熱及び/加圧等により成分が変化したものであってもよい。本発明では、以下では、特に記載しない限り、原料植物性繊維と植物性繊維とをまとめて植物性繊維として説明する。
難燃剤の種類は特に限定されず、リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、窒素系難燃剤、無機系難燃剤(金属元素を含む無機系難燃剤)等が挙げられる。これらの難燃剤は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
更に、上記窒素含有リン酸塩化合物系難燃剤としては、ポリリン酸アンモニウム、カルバミルポリリン酸アンモニウム、リン酸メラミン、リン酸ジメラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸メレム、ポリリン酸メロン、リン酸エステルアミド、リン酸グアニジン等が挙げられる。
一方、上記リン酸エステル系難燃剤としては、脂肪族リン酸エステル、芳香族リン酸エステル、芳香族縮合リン酸エステル、ハロゲンリン酸エステル、含ハロゲン縮合リン酸エステルなどが挙げられる。
また、上記リン酸エステル系難燃剤のうち、芳香族リン酸エステルとしては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジル−2,6−キシレニルホスフェート、トリス(t−ブチル化フェニル)ホスフェート、トリス(イソプロピル化フェニル)ホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、リン酸トリアリールイソプロピル化物等が挙げられる。
また、上記リン酸エステル系難燃剤のうち、ハロゲンリン酸エステルとしては、トリスジクロロプロピルホスフェート、トリ(β−クロロエチル)ホスフェート、トリ(ジブロモプロピル)ホスフェート、2,3−ジブロモプロピル−2,3−クロロプロピルホスフエート等が挙げられる。
これらのリン系難燃剤のなかでも、分解温度が200℃以上であるリン系難燃剤が好ましい。このような分解温度が200℃以上であるリン系難燃剤としては、ポリリン酸アンモニウム及び芳香族縮合リン酸エステル等が挙げられる。これらは分解温度が高いために、室温(25℃)における粉末形態での取り扱いが容易であり、原料植物性繊維と固体難燃剤とを共に押し固めてペレット化し易いからである。
尚、上記分解温度の測定方法は、通常行われている熱分析−示差熱熱量同時測定方法に基づくものである。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、熱可塑性樹脂及び植物性繊維を含有し、熱可塑性樹脂と植物性繊維との合計を100質量%とした場合に、植物性繊維は25〜95質量%である熱可塑性樹脂組成物を、
原料植物性繊維と固体難燃剤とを共に押し固めて、原料植物性繊維及び固体難燃剤が含まれた繊維ペレットを形成する繊維ペレット形成工程と、
熱可塑性樹脂と繊維ペレットとを混合して混合物とする混合工程と、を備え、
繊維ペレット形成工程は、
一面と他面との間に貫通された貫通孔を有するダイと、
ダイの一面側に接して回転される押込ローラーと、を備えたローラー式ペレット成形機を用いるとともに、
押込ローラーにより、原料植物性繊維及び固体難燃剤を、ダイの前記一面側から圧入しつつ、他面側から押し出して、繊維ペレットを得る工程であることにより製造することができる。
上記「繊維ペレット形成工程」は、原料植物性繊維と固体難燃剤とを共に押し固めて、原料植物性繊維及び固体難燃剤が含まれた繊維ペレットを形成する工程である。この工程において、原料植物性繊維と固体難燃剤とをペレット化することにより、前述した液状の難燃剤等に原料植物性繊維を浸漬した後、乾燥させなどの煩雑なウェットプロセスを要することなく、しかも、固形状である固体難燃剤を熱可塑性樹脂組成物内に配合することができる。固体難燃剤を配合できることにより、難燃剤の分解が抑制されて、得られる熱可塑性樹脂組成物の機械的特性の低下を顕著に抑制できる。加えて、難燃剤の分解が抑制されて、得られる製品外観を損ねることも抑制され、製品外観を得るための着色剤等の添加を要しない。
また、原料植物性繊維の繊維長は、通常、0.5〜6mmであり、0.5〜4mmが好ましく、0.5〜2mmがより好ましい。また、繊維径は、通常、10〜150μmであり、50〜100μmが好ましい。上記範囲では、容易に固体難燃剤とともにペレット化することができるとともに、得られる繊維ペレットの取り扱い中においてもペレットの崩壊を十分に抑制でき、作業性の向上に寄与する。この効果は、上記好ましい範囲においてより顕著である。
尚、固体難燃剤のメジアン径については、粒度分布測定装置(例えば、シスメックス株式会社製、形式「マスターカイザー2000」)によって測定された粒度分布におけるD50(メジアン径)として測定できる。
このローラーディスクダイ式成形機90では、上記の構成に加え、押込ローラー92の表面に凹凸921が設けられていることがより好ましい。また、主回転軸93の回転に伴って回転される切断用ブレード95を備えていることがより好ましい。
更に、熱可塑性樹脂と、繊維ペレットと、原料植物性繊維と、を必要に応じて材料供給室13に材料として供給してもよい。即ち、熱可塑性樹脂と繊維ペレットだけでなく、原料植物性繊維のみを押し固めた原料植物性繊維のペレットを用いて、熱可塑性樹脂と、植物性繊維と、固体難燃剤と、の配合割合を調整することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、繊維ペレット形成工程及び混合工程以外に、他の工程を備えることができる。他の工程としては、混合工程において得られた熱可塑性樹脂組成物を圧延する圧延工程、混合工程において得られた熱可塑性樹脂組成物、又は、圧延工程で得られた圧延物等を粉砕して粉砕物とする粉砕工程、更には得られた粉砕物をペレット化するペレット化工程(粉砕物ペレット化工程)等が挙げられる。
本発明の方法により製造された熱可塑性樹脂組成物は、射出成形、押出成形、圧縮成形等の各種の成形方法により、成形体とすることができる。この熱可塑性樹脂組成物は、固体難燃剤を含有して、優れた難燃性を発揮できる。また、加えて、多量の植物性材料を含有しているにもかかわらず、優れた流動性を有することができ、高い流動性を要する射出成形に用いることができる。この射出成形時、熱可塑性樹脂組成物がペレット化されておれば、計量時間及び射出時間等を短縮することができ、その結果、成形サイクルが短縮されて成形効率を向上させることができる。また、射出成形等の各種の成形に用いる装置及び成形条件等は特に限定されず、熱可塑性樹脂の種類、及び成形体の形状、用途等により適宜選択し、設定すればよい。
[1]熱可塑性樹脂組成物の製造
実施例1
〈1〉繊維ペレット形成工程
(1)実施例1に用いる繊維ペレットの形成(図1参照)
ケナフ繊維(原糸)を裁断機(有限会社 吉工製、型式「RC250」)により裁断するとともに、2mmメッシュの篩を通して原料植物性繊維C1を得た。得られた原料植物性繊維C1は、繊維長が2mm以下であり、平均繊維長が1.5mmであり、平均繊維径が53.8μmである。
一方、固体難燃剤C2としてポリリン酸アンモニウム(丸菱油化工業株式会社製、品名「ノンネン R104−4」、メジアン径;30μm、融点;なし、減量開始温度;230℃、分解温度;300℃)を用意した。この固体難燃剤C2は、室温(25℃)において粉末状(固体)である。
上記(1)において固体難燃剤を配合しない以外は同様にして、原料植物性繊維のみからなる繊維ペレットを形成した。
ケナフ繊維(原糸)を、液状難燃剤(丸菱油化工業株式会社製、品名「ノンネン W2−50」)に60分間浸漬させた後、液状難燃剤から浸漬したケナフ繊維を取出し60℃で1.5時間乾燥させて、難燃処理を行ったケナフ繊維を得た(原料植物性繊維と難燃剤との合計を100質量部とした場合に、24質量部の難燃剤がケナフ繊維に付着された状態といえる)。
尚、上記液状難燃剤は、カルバミルポリリン酸アンモニウムを有効成分とし、固形分濃度(液媒は水)が50質量%、融点は約85℃であり、減量開始温度は約100℃であり、分解温度は約140℃である。
この原料植物性繊維を、ローラーディスクダイ式ペレット化装置90(菊川鉄工所製、形式「KP280」、貫通孔径6.2mm、厚さ28mmのダイを使用)に投入し、ローラーディスクダイ式ペレット化装置90において、直径約6mm、且つ長さ約10mmの円柱状の繊維ペレットに成形した。
上記〈1〉繊維ペレット形成工程で得られた(1)−(3)の各繊維ペレット(繊維ペレットC3)を各々300gと、ポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製、商品名「ノバティックNBC03HR」)を285gと、酸変性ポリプロピレン(三菱化学株式会社製、商品名「モディックP908」)を15gと、臭素系難燃剤{丸菱油化工業株式会社製、品名「DP50」、1,2−ビス(2,3,4,5,6−ペンタブロモフェニル)エタンを有効成分とする}を45gと、難燃助剤(丸菱油化工業株式会社製、三酸化アンチモン)を15gと、を図1及び図3の混合装置1(WO2004−076044号に記載された装置)の材料供給室13に投入し、その後、容量5リットルの混合室3に移送し、混合羽根(図4の10a〜10f)を、32kwモーターに対して指令周波数30Hzにて駆動させて混合した。
その後、混合羽根にかかる負荷(トルク)が上昇してトルクピークに達した時点から6秒経過後に混合を停止するとともに、混合物を混合装置1から排出した。
次いで、圧延物C6を、粉砕装置50(TRIA社製、型式「42−20JM」)に投入し、目開き5mmの篩に通過されたて粉砕物とされる。その後、粉砕物は、搬送用ダクトホース60内を搬送されて、ジェットローダー(松井製作所製、型式「JL4−VC」)によりサイクロン70内に吸引され、エア分離されて、ロータリーバルブ80にて、ローラーディスクダイ式ペレット化装置90’(菊川鉄工所製、形式「KP280」、貫通孔径3.2mm、厚さ30mmのダイを使用)に投入される。
上記〈2〉までに得られた、上記〈1〉(1)の繊維ペレットを含む熱可塑性樹脂組成物(ペレット)、上記〈1〉(2)の繊維ペレットを含む熱可塑性樹脂組成物(ペレット)、上記〈1〉(3)の繊維ペレットを含む熱可塑性樹脂組成物(ペレット)、の3種類を、各々射出成形機(住友重機械工業社製、形式「SE100DU」)により、シリンダー温度190℃、型温度40℃の条件で射出成形し、長さ110mm、幅10mm、厚さ4mmの3種類の試験片(実施例1、参考例1、及び参考例2)を作製した。
(1)曲げ弾性率の測定
上記〈3〉までに得られた3種類の試験片について、ISO178に準拠して曲げ試験を実施して、曲げ弾性率を算出し、表1に示した。尚、この曲げ試験においては、各試験片を支点間距離(L)64mmとした2つの支点(曲率半径3mm)で支持しつつ、支点間中心に配置した作用点(曲率半径3mm)から速度2mm/分にて荷重の負荷を行い測定した。
また、上記〈3〉までに得られた3種類の試験片について、ISO 179に準拠(ノッチ無し)してシャルピー衝撃強度を測定し、表1に併記した。尚、このシャルピー衝撃強度においては、衝撃エネルギーが4Jのハンマヘッドを用いて、ハンマの空振り時の角度と測定時の角度から吸収エネルギーを算出した。
更に、上記〈3〉までに得られた3種類の試験片について、UL94に準拠して自己消化率を測定し、表1に併記した。尚、この自己消化率の測定においては、垂直に保持した5個の試験片の下端に10秒間火炎を接炎させた後、30秒以内に自己消化(火元がなくなり自ら鎮火)する試験片数を観察し、この自己消化する試験片数の全数5個に対する割合として算出した。
また、上記〈3〉までに得られた3種類の試験片について、以下の基準に基づいて変色の程度を評価し、表1に併記した。
「○」;粉体添加による淡色化以外の色の変化が認められない。
「×」;炭化が原因と考えられる変色が認められる。
30;圧延装置、
40;搬送用コンベア、
50;粉砕装置、
60;搬送用ダクトホース、
70;サイクロン、
80;ロータリーバルブ、
90、90’;ローラーディスクダイ式成形機、91;ディスクダイ、91a;一面、91b;他面、911;貫通孔、912;主回転軸挿通孔、92;押込ローラー、921;凹凸部、93;主回転軸、94;押込ローラー固定軸、95;切断用ブレード、
C1;原料植物性繊維、C2;固体難燃剤、C3;繊維ペレット、C4;熱可塑性樹脂、C5;混合物(塊状物)、C6;圧縮物、C7;熱可塑性樹脂組成物。
Claims (4)
- 熱可塑性樹脂及び植物性繊維を含有し、前記熱可塑性樹脂と前記植物性繊維との合計を100質量%とした場合に、前記植物性繊維は25〜95質量%である熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、
原料植物性繊維と固体難燃剤とを共に押し固めて、前記原料植物性繊維及び前記固体難燃剤が含まれた繊維ペレットを形成する繊維ペレット形成工程と、
熱可塑性樹脂と前記繊維ペレットとを混合して混合物とする混合工程と、を備え、
前記繊維ペレット形成工程は、
一面と他面との間に貫通された貫通孔を有するダイと、
前記ダイの前記一面側に接して回転される押込ローラーと、を備えたローラー式ペレット成形機を用いるとともに、
前記押込ローラーにより、前記原料植物性繊維及び前記固体難燃剤を、前記ダイの前記一面側から圧入しつつ、前記他面側から押し出して、前記繊維ペレットを得る工程であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。 - 前記固体難燃剤は、リン系難燃剤である請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
- 前記熱可塑性樹脂は、酸変性ポリプロピレン系樹脂を含む請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
- 前記植物性繊維は、ケナフ繊維である請求項1乃至3のうちのいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
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