JP5694003B2 - 繊維複合体の製造方法 - Google Patents
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Description
前記補強繊維と熱可塑性樹脂繊維とが含まれたマットの表裏いずれか一面に、熱可塑性樹脂からなる殻壁を有する熱膨張性カプセルを供給する供給工程と、
前記マットの一面を押圧することにより、該マットの一面に供給された前記熱膨張性カプセルを該マットの他面側へ向かって分散させる分散工程と、
前記マットを構成する前記熱可塑性樹脂繊維を溶融する溶融工程と、
前記マット内に分散された前記熱膨張性カプセルを加熱して膨張させる膨張工程と、を備えており、
前記補強繊維は、植物性繊維及び無機繊維のうちの少なくとも一方であり、
前記熱膨張性カプセルとしては、一粒当たりの平均質量が異なる熱膨張性カプセルを複数種用いており、一粒当たりの平均質量が最も大きい熱膨張性カプセルと、一粒当たりの平均質量が最も小さい熱膨張性カプセルとの一粒当たりの平均質量の差が、絶対値で、1.0×10 −8 〜1.0×10 −6 gであり、
一粒当たりの平均質量が異なる熱膨張性カプセルの複数種間では、一粒当たりの平均粒径が異なっており、複数種の熱膨張性カプセルの配合比は、一粒当たりの平均粒径が小さい熱膨張性カプセルの種類ほど大きいことを要旨とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1記載において、前記供給工程における前記熱膨張性カプセルの供給では、複数種類の熱膨張性カプセルを混合して熱膨張性カプセル混合体としたものを供給することを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2記載において、前記熱膨脹性カプセルの一粒当たりの平均密度は、0.5〜1.5g/cm 3 であることを要旨とする。
また、一粒当たりの平均質量が最も大きい熱膨張性カプセルと、一粒当たりの平均質量が最も小さい熱膨張性カプセルとの一粒当たりの平均質量の差が、特定の範囲であるため、熱膨張性カプセルをより均一に分散させることができ、得られる繊維複合体の機械的物性をより向上させることができる。
更に、一粒当たりの平均質量が異なる熱膨張性カプセルの複数種間において、一粒当たりの平均粒径も異なるため、熱膨張性カプセルをより均一に分散させることができ、得られる繊維複合体の機械的物性をより向上させることができる。
また、複数種の熱膨張性カプセルの配合比が、一粒当たりの平均粒径が小さい熱膨張性カプセルの種類ほど大きいため、熱膨張性カプセルをより均一に分散させることができ、得られる繊維複合体の機械的物性をより向上させることができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の繊維複合体の製造方法は、補強繊維同士が熱可塑性樹脂により結着された構造を有する繊維複合体の製造方法であって、
補強繊維と熱可塑性樹脂繊維とが含まれたマットの表裏いずれか一面に、熱可塑性樹脂からなる殻壁を有する熱膨張性カプセルを供給する供給工程と、
マットの一面を押圧することにより、マットの一面に供給された熱膨張性カプセルをマットの他面側へ向かって分散させる分散工程と、
マットを構成する熱可塑性樹脂繊維を溶融する溶融工程と、
マット内に分散された熱膨張性カプセルを加熱して膨張させる膨張工程と、を備える。
本方法ではマットを湿式法(抄紙法等)で形成してもよく、乾式法で形成してもよいが、湿式法を用いた場合には高度な乾燥工程を要することになるため乾式法が好ましい。特に補強繊維として植物性繊維を用いる場合には、植物性繊維が吸水性を有するためにとりわけ乾式法が好ましい。
また、マットの厚さは10mm以上(通常50mm以下、更には10〜30mm、特に15〜25mm)とすることができる。
この植物性繊維としては、ケナフ、ジュート麻、マニラ麻、サイザル麻、雁皮、三椏、楮、バナナ、パイナップル、ココヤシ、トウモロコシ、サトウキビ、バガス、ヤシ、パピルス、葦、エスパルト、サバイグラス、麦、稲、竹、各種針葉樹(スギ及びヒノキ等)、広葉樹及び綿花等の各種植物体から得られた植物性繊維が挙げられる。この植物性繊維は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらのなかではケナフ(即ち、植物性繊維としてはケナフ繊維)が好ましい。ケナフは成長が極めて早い一年草であり、優れた二酸化炭素吸収性を有するため、大気中の二酸化炭素量の削減、森林資源の有効利用等に貢献できるからである。
また、上記植物性繊維として用いる植物体の部位は、特に限定されず、木質部、非木質部、葉部、茎部及び根部等の植物体を構成するいずれの部位であってもよい。更に、特定部位のみを用いてもよく2ヶ所以上の異なる部位を併用してもよい。
また、上記ジュートは、ジュート麻から得られる繊維である。このジュート麻には、黄麻(コウマ、Corchorus capsularis L.)、及び、綱麻(ツナソ)、シマツナソ並びにモロヘイヤ、を含む麻及びシナノキ科の植物を含むものとする。
上記植物性繊維は単用してもよく併用してもよい。
更に、植物性繊維及び無機繊維は、いずれか一方のみを単用してもよく、植物性繊維と無機繊維とを併用してもよい。これらのうちでは補強効果に優れること及び取扱い性が良いことから植物性繊維が好ましく、無機繊維のなかではガラス繊維が好ましい。更に、これらのうちでも環境的観点から植物性繊維のうちのケナフ繊維が特に好ましい。
また、その繊維径は1mm以下が好ましく、0.01〜1mmがより好ましく、0.02〜0.7mmが更に好ましく、0.03〜0.5mmが特に好ましい。この繊維径が上記範囲にあると、特に高い強度を有する繊維複合体を得ることができる。補強繊維として、上記の繊維長及び繊維径を外れるものを含んでもよいが、その繊維の含有量は、補強繊維の全体に対して0.5〜10質量%(特に0.5〜3質量%)であることが好ましい。これにより得られる繊維複合体の強度を高く維持できる。
尚、上記繊維長は平均繊維長を意味し(以下同様)、JIS L1015に準拠して、直接法にて無作為に単繊維を1本ずつ取り出し、置尺上で繊維長を測定し、合計200本について測定した平均値である。更に、上記繊維径は平均繊維径を意味し(以下同様)、無作為に単繊維を1本ずつ取り出し、繊維の長さ方向の中央における繊維径を、光学顕微鏡を用いて実測し、合計200本について測定した平均値である。
熱可塑性樹脂繊維を構成する熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂及びABS樹脂等が挙げられる。このうち、ポリオレフィンとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン・プロピレンランダム共重合体等が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン及びポリブチレンサクシネート等の脂肪族ポリエステル樹脂、並びに、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル樹脂等が挙げられる。アクリル樹脂はメタクリレート及び/又はアクリレート等を用いて得られた樹脂である。これらの熱可塑性樹脂は、補強繊維(特に補強繊維の表面)に対する親和性を高めるために変性された樹脂であってもよい。また、上記熱可塑性樹脂は単用してもよく併用してもよい。
上記ポリエステル樹脂としては、生分解性を有するポリエステル樹脂(以下、単に「生分解性樹脂」ともいう)が好ましい。この生分解性樹脂は、以下に例示される。
(1)乳酸、リンゴ酸、グルコース酸、3−ヒドロキシ酪酸等のヒドロキシカルボン酸の単独重合体;これらのヒドロキシカルボン酸のうちの少なくとも1種を用いた共重合体等のヒドロキシカルボン酸系脂肪族ポリエステル。
(2)ポリカプロラクトン、上記ヒドロキシカルボン酸のうちの少なくとも1種と、カプロラクトンとの共重合体等のカプロラクトン系脂肪族ポリエステル。
(3)ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート等の二塩基酸ポリエステル。
これらのうち、ポリ乳酸、乳酸と、乳酸以外の他の上記ヒドロキシカルボン酸との共重合体、ポリカプロラクトン、及び、上記ヒドロキシカルボン酸のうちの少なくとも1種と、カプロラクトンとの共重合体が好ましく、ポリ乳酸が特に好ましい。これらの生分解性樹脂は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。尚、上記乳酸は、L−乳酸及びD−乳酸を含むものとし、これらの乳酸は単独で用いてもよく、併用してもよい。
また、その繊維径は0.001〜1.5mmが好ましく、0.005〜0.7mmがより好ましく、0.008〜0.5mmが更に好ましく、0.01〜0.3mmが特に好ましい。この繊維径が上記範囲にあると、熱可塑性樹脂繊維を切断させず、補強繊維と分散性よく交絡できる。なかでも補強繊維が植物性繊維である場合に特に適する。
特に補強繊維が植物性繊維である場合にあっては、植物性繊維と熱可塑性樹脂繊維との合計量を100質量%とした場合に、植物性繊維は10〜95質量%とすることが好ましく、20〜90質量%とすることがより好ましく、30〜80質量%とすることが特に好ましい。
尚、マットには、補強繊維及び熱可塑性樹脂繊維以外にも、又は、熱可塑性樹脂繊維内に添加剤(酸化防止剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤、抗菌剤、防かび剤、着色剤等)が含まれてもよい。
この熱膨張性カプセルの形状は特に限定されないが、通常、略球形である。尚、この熱膨張性カプセルは膨張した後、破泡して殻壁は不定形化してもよく、破泡することなく殻壁がカプセル形状を維持してもよい。更に、発泡剤を用いる場合、その発泡剤は、殻壁の外部に放出されてもよく、膨張後の殻壁内に一部又は全部が残存されてもよい。
尚、この工程に用いられる平均質量の異なる熱膨張性カプセルの種類は、2種以上である限り特に限定されず、マットの厚みに応じて適宜調整することができる。具体的には、2〜7種類であることが好ましく、2〜4種であることが好ましい。
更に、一粒当たりの平均質量が最も大きい熱膨張性カプセルと、一粒当たりの平均質量が最も小さい熱膨張性カプセルとの一粒当たりの平均質量の差が、絶対値で、1.0×10−8〜1.0×10−6gであり、より好ましくは2.3×10−8〜3.9×10−7g、更に好ましくは5.0×10−8〜1.7×10−7g、特に好ましくは8.4×10−8〜1.5×10−7gである。この差が1.0×10−8〜1.0×10−6gである場合には、熱膨張性カプセルをマットに良好に分散させることができる。
上記平均粒径は、粒度分布測定法(原理;レーザー回折・散乱法)により得られた粒度分布におけるD50の値である。尚、この平均粒径は、SYMPATEC社製、型式「HEROS&RODOS」を用いて測定することができる。
尚、上記密度は、同体積の2室の一方に熱膨張性カプセルを入れ、それぞれを同時に一定圧まで加圧し、そのときの差から体積を求める圧力比較法により測定することができる。
特に、各カプセルの平均密度が同程度[例えば、平均密度の比(各種カプセルのうち平均密度が最小のもの:各種カプセルのうち平均密度が最大のもの)が1:(1〜1.3)以内、特に1:(1〜1.2)]である場合には、一粒当たりの平均粒径により平均質量を容易に制御できるようになり、熱膨張性カプセルの分散の程度を容易に制御することができる。
一方、上記(2)の場合、即ち、溶融工程と膨張工程と同時に行う場合には、熱膨張性カプセルの膨張開始温度は、熱可塑性樹脂繊維の軟化温度に対して−30〜+60℃(より好ましくは−10〜+40℃)の範囲とすることが好ましい。
この押圧を行う方法(押圧方法)は特に限定されず、上記効果を得ることができればよい。例えば、押圧手段としてローラを用いて押圧してもよく、平板状の錘を一面に載置して押圧してもよく、その他の方法で押圧してもよいが、これらのなかではローラを用いることが好ましい。ローラは、製造ラインの流れのなかで用いることができ、製造工程上、特に好ましい。
ローラによる押圧の条件は特に限定されないが、ローラ直下におけるマット厚が、マット全体の厚さの5〜80%(より好ましくは10〜70%、更に好ましくは20〜50%)となるように押圧を行うことが好ましい。上記範囲では、熱膨張性カプセルをマット内に押し込む効果がとりわけ高い。
これら2つの工程は、順不同で行うことができる。即ち、(1)溶融工程を先に行い、次いで、膨張行程を後に行ってもよく、(2)溶融工程と膨張工程とを同時に行ってもよく、(3)膨張工程を先に行い、次いで、溶融工程を後に行ってもよい。これらのなかでは、上記(1)又は(2)が好ましい。
また、膨張工程では、得られる繊維複合体の成形を同時に行うことができる。即ち、厚さ及び形状を制御することができる。例えば、膨張前成形体を膨張工程において十分に膨張させた上で、膨張後成形体を加圧圧縮して所望の厚さの繊維複合体を得ることもできる(即ち、成形工程を備える)が、膨張工程において、熱膨張性カプセルを膨張させる際に所望厚さのクリアランスを維持できる金型を用いて膨らみを適度に拘束しつつ、熱可塑性樹脂の温度を低下させることで、所望の厚さの繊維複合体を得ることができる。更に、金型に所望の凹凸形状を付与することで、凹凸形状を有する繊維複合体を得ることもできる。
図3は、溶融工程、膨張工程及び成形工程を、全て別装置を用いて別工程として行った場合を模式的に示している。即ち、溶融工程では、溶融手段61として熱間プレス機を用いて、熱膨張性カプセルが分散含有されたマット15を加圧しながら、熱膨張性カプセルを膨張させることなく、熱可塑性樹脂繊維を溶融する。従って、この溶融工程の後には、膨張されていない熱膨張性カプセルが分散含有されながら、補強繊維は、熱可塑性樹脂繊維に由来する熱可塑性樹脂により結着されてなる繊維複合体(膨張前繊維複合体16)が得られる。その後、膨張手段62としてオーブン等の各種炉を用いて、熱膨張性カプセルを膨張させることで、補強繊維が、熱可塑性樹脂繊維に由来する熱可塑性樹脂と、熱膨張性カプセルを構成していた殻壁に由来する熱可塑性樹脂と、の両方により結着された膨張後繊維複合体17が得られる。次いで、膨張後繊維複合体17を構成する熱可塑性樹脂の可塑性が失われない温度で、成形手段63として冷間プレス機を用いて成形を行うことで、繊維複合体(膨張後繊維複合体17)からなる成形体が得られることとなる。尚、膨張工程の後に除熱されて可塑性が失われた場合には、再度加熱を行って賦形を行うこともできる。
尚、図3〜5では、いずれも溶融工程では、熱膨張性カプセルを膨張させないように加圧して熱可塑性樹脂繊維の溶融を行ったものとしているが、この加圧を行わないことにより、熱可塑性樹脂繊維の溶融と同時に、熱膨張性カプセルの膨張を行うこともできる。
[1]繊維複合体の製造(実施例1)
実施例1の繊維複合体を以下のようにして製造した(図1、2参照)。
(1)マットの製造
補強繊維として植物性繊維(ケナフ繊維)を用いたマットを、図1に示すマット製造装置を用いて製造した。このマット製造装置では、植物性繊維及び熱可塑性樹脂繊維の混合繊維を2機のエアレイ装置(第1エアレイ装置及び第2エアレイ装置)を用いて2つのウェブ(第1ウェブ及び第2ウェブ)を調製し、これらのウェブを積層した後、ニードルパンチを行って2層のウェブ同士を交絡させて1層のマットを製造する装置である。更に、図1に示すように、このマット製造装置の後端には、得られたマットを切断する装置、及び熱膨張性カプセルを供給し、これをマット内に分散させる熱膨張性カプセル供給分散装置が連結されている(図2参照)。
次いで、第1交絡手段(ニードルパンチ加工装置)11を用いて、搬送される積層ウェブ9の上方から、即ち、第2ウェブ8の側(上面側)から、針密度70本/cm2、針深度10mmの条件でニードリングした。そして、同条件にて、第2交絡手段(ニードルパンチ加工装置)12を用いて、積層ウェブ9の下方から、即ち、第1ウェブ7の側(底面側)から同条件でニードリングし、厚さ約8mm、目付1000g/m2の繊維マットを作製した。その後、カッター13により繊維マットを裁断し、交絡物14(1300×800×8mm)を得た。
上記(1)で得られた交絡物14は、マット製造装置に連結された熱膨張性カプセル供給装置22へ引き続いて搬送される(図2参照)。
この熱膨張性カプセル供給装置22では、交絡物14の一面に対して熱膨張性カプセルが供給される。
本実施例では、熱膨張性カプセル供給装置22として静電塗布装置が用いられており、直流高電圧により帯電された熱膨張性カプセルをスプレー(吐出)して、静電引力により交絡物14の一面に供給・付着させることができる。
塗布条件は、ガンヘッド先端部から交絡物14までの距離を約30cmとし、塗布ガン印可電圧を−100kV、電流値を22μA、エア流量を4.0m3/時間、吐出量を40%、リンスエアーを0.1m3/時間、搬送コンベア21の搬送速度3m/分とした。
(a)松本油脂製薬株式会社製、品名「熱膨張性カプセルA」、平均質量3.5×10−8g、平均粒径40μm、膨張開始温度215℃、最大膨張温度220℃
(b)松本油脂製薬株式会社製、品名「熱膨張性カプセルB」、平均質量6.9×10−8g、平均粒径50μm、膨張開始温度215℃、最大膨張温度220℃
(c)松本油脂製薬株式会社製、品名「熱膨張性カプセルC」、平均質量1.2×10−7g、平均粒径60μm、膨張開始温度215℃、最大膨張温度225℃
尚、熱膨張性カプセル混合体23における各カプセルの混合割合(質量比)[(a):(b):(c)]は4:2:1であり、この熱膨張性カプセル混合体23の塗布量は、交絡物14に対して7質量%である。
上記(2)で熱膨張性カプセル混合体23が供給された交絡物(熱膨張性カプセル分散マット15)は、固定台24に固定され、押圧手段25を用いた分散工程に供される。
具体的には、この分散工程では、交絡物14を固定台24に固定した後、クロムメッキを施したφ50の可動式のローラ(押圧手段)25を用いて、マット厚みが50%圧縮される圧力(0.4MPa)にて、速度6m/minで25回往復させることにより、交絡物中にカプセル混合体が分散された熱膨張性カプセル分散マット15を得た。
尚、この分散工程により、マット表面に白く付着されていた熱膨張性カプセルが内部に分散されてマット表面から白さがなくなったことが確認された。また、質量測定により、マット内に、マット全体質量100質量部に対して7質量部の熱膨張性カプセルが含有されたことが確認された。
上記(3)で得られた熱膨張性カプセル分散マット15をテフロンシート(厚さ;0.3mm)に挟み、加熱プレス装置の平板金型内で溶融工程に供した。この加熱プレスは、型温度210℃、プレス圧力1MPa、加熱時間60秒の条件にて行った。尚、この際、被加熱プレス物の内部温度は210℃まで上昇させた。
その後、冷却プレスにより、2MPaの圧力で25℃になるまで60秒間冷却して、板厚2.3mm、目付1000g/m2の膨張前繊維複合体16を得た。即ち、この膨張前繊維複合体内部では、熱可塑性樹脂繊維は溶融されて補強繊維同士を結着した状態にあるものの、加圧により熱膨張性カプセル混合体23は膨張されていない状態にある。
上記(4)で得られた膨張前繊維複合体16を、235℃に設定されたオーブンで加熱し(加熱時間;120秒)、オーブン内で熱膨張性カプセルを膨張させた。その後、冷却プレスにより、2MPaの圧力で25℃になるまで60秒間冷却して、板厚4mm、目付1000g/m2の繊維複合体17を得た。
(2−1)比較例1
熱膨張性カプセル混合体の代わりに、上記(a)の熱膨張性カプセルを1種のみ用いたこと以外は、上記[1]と同様の条件にて、板厚4mm、目付1000g/m2である比較例1の繊維複合体を得た。
尚、熱膨張性カプセル(a)の塗布量は、交絡物14に対して7質量%である。
熱膨張性カプセル混合体の代わりに、上記(b)の熱膨張性カプセルを1種のみ用いたこと以外は、上記[1]と同様の条件にて、板厚4mm、目付1000g/m2である比較例2の繊維複合体を得た。
尚、熱膨張性カプセル(b)の塗布量は、交絡物14に対して7質量%である。
熱膨張性カプセル混合体の代わりに、上記(c)の熱膨張性カプセルを1種のみ用いたこと以外は、上記[1]と同様の条件にて、板厚4mm、目付1000g/m2である比較例3の繊維複合体を得た。
尚、熱膨張性カプセル(c)の塗布量は、交絡物14に対して7質量%である。
繊維複合体を板厚方向に切断し、電子顕微鏡で得られた断面を観察することにより、熱膨張性カプセルの分散具合を評価した。その結果を下記に示す。
実施例1;熱膨張性カプセルが各層に平均して分散していた。
比較例1;熱膨張性カプセルが上層に偏在していた。
比較例2;熱膨張性カプセルが中間層に偏在していた。
比較例3;熱膨張性カプセルが下層に偏在していた。
JIS K7171に準じて、最大曲げ荷重を測定した。この測定に際しては、含水率約10%の状態における試験片(長さ150mm、幅50mm及び厚さ4mm)を用いた。そして、試験片を支点間距離(L)100mmとした2つの支点(曲率半径5.0mm)で支持しながら、支点間中心に配置した作用点(曲率半径3.2mm)から速度50mm/分にて荷重の負荷を行って特性の測定を行った。その結果を下記に示す。
実施例1;52N
比較例1;33N
比較例2;47N
比較例3;38N
これに対して、3種の熱膨張性カプセルからなる熱膨張性カプセル混合体を用いた実施例1の繊維複合体では、各層に熱膨張性カプセルが均一に分散しており、最大曲げ荷重が52Nであり、機械的特性に優れていることが確認できた。
Claims (3)
- 補強繊維同士が熱可塑性樹脂により結着された構造を有する繊維複合体の製造方法であって、
前記補強繊維と熱可塑性樹脂繊維とが含まれたマットの表裏いずれか一面に、熱可塑性樹脂からなる殻壁を有する熱膨張性カプセルを供給する供給工程と、
前記マットの一面を押圧することにより、該マットの一面に供給された前記熱膨張性カプセルを該マットの他面側へ向かって分散させる分散工程と、
前記マットを構成する前記熱可塑性樹脂繊維を溶融する溶融工程と、
前記マット内に分散された前記熱膨張性カプセルを加熱して膨張させる膨張工程と、を備えており、
前記補強繊維は、植物性繊維及び無機繊維のうちの少なくとも一方であり、
前記熱膨張性カプセルとしては、一粒当たりの平均質量が異なる熱膨張性カプセルを複数種用いており、一粒当たりの平均質量が最も大きい熱膨張性カプセルと、一粒当たりの平均質量が最も小さい熱膨張性カプセルとの一粒当たりの平均質量の差が、絶対値で、1.0×10 −8 〜1.0×10 −6 gであり、
一粒当たりの平均質量が異なる熱膨張性カプセルの複数種間では、一粒当たりの平均粒径が異なっており、複数種の熱膨張性カプセルの配合比は、一粒当たりの平均粒径が小さい熱膨張性カプセルの種類ほど大きいことを特徴とする繊維複合体の製造方法。 - 前記供給工程における前記熱膨張性カプセルの供給では、複数種類の熱膨張性カプセルを混合して熱膨張性カプセル混合体としたものを供給する請求項1に記載の繊維複合体の製造方法。
- 前記熱膨脹性カプセルの一粒当たりの平均密度は、0.5〜1.5g/cm 3 である請求項1又は2に記載の繊維複合体の製造方法。
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