JP5961998B2 - 原子発振器の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、原子発振器の製造方法に関する。
アルカリ金属の超微細準位間の遷移を利用し正確に時間を測る原子時計(原子発振器)の分野で、近年、小型化・低コスト化を目指し、セシウム(Cs)、ルビジウム(Rb)等のアルカリ金属を、Ne、Ar、N等のバファガスと共に、微小なセルに閉じ込め、光学的な現象を利用するチップスケール原子時計(CSAC:Chip Scale Atomic Clock)の開発が進められている。この形式の代表的なものは、CPT(Coherent Population Trapping)方式を用いたもので、図1に基本的な構成図を示す。
CPT方式の原子時計では、図1に示すように、レーザ素子910と、アルカリ金属を封入したガスセル940と、ガスセル940を透過したレーザ光を受光する受光素子950とを有しており、レーザ光は変調され、特定波長である搬送波の両側に出現するサイドバンド波長により、アルカリ金属原子における電子の2つの遷移を同時に行ない、励起する。この2つの遷移における遷移エネルギー差は不変であり、レーザ光のサイドバンド波長と遷移エネルギー差に対応する波長とが一致したときに、アルカリ金属における光の吸収率が低下する透明化現象が生じる。このように、アルカリ金属による光の吸収率が低下するように、搬送波の波長を調整するとともに、受光素子950において検出された信号を変調器960にフィードバックし、変調器960によりレーザ素子910からのレーザ光の変調周波数を調整することを特徴とした原子時計である。尚、この原子時計では、レーザ素子910から出射されたレーザ光は、コリメートレンズ920、λ/4波長板930を介し、アルカリ金属を封入したガスセル940に照射される。
CPT共鳴における原子の超微細構造エネルギー準位は、図2に示されるように、Λ型3準位系であり、Cs原子のD1ライン遷移(6S1/2→6P1/2)の場合は、|1>準位は6S1/2F4であり、|2>準位は6S1/2F3であり、|3>準位は6P1/2 である。Cs原子をセルに封入しD1ライン遷移を利用する場合について説明する。レーザ素子910となる光源としては、多くの場合は単一波長が得やすく高速変調が容易なVCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting LASER)が選択される。このVCSELの発振波長をCsにおけるD1ライン遷移の波長894.35nmとほぼ同一にする。このVCSELの駆動電流に|1>準位と|2>準位の差の周波数(νclock)かその半分の周波数(νclock/2)の周辺の信号を重畳させ周波数を掃引する。CsにおけるD1ライン遷移の場合は、νclockは9.192GHzであり、νclock/2は4.596GHzである。重畳信号の周波数がνclockかνclock/2に一致すると、|1>→|3>と|2>→|3>の遷移がなくなり暗共鳴(Dark resonance)状態になる。このとき図1に示す受光素子950における透過光強度はピークを示す。この共鳴のピークに一致するように重畳信号の周波数を安定化することにより、周波数標準が実現される。
CSACをより小型、低コストで量産が可能な構造にするため、その物理パッケージ、特に中心部品であるガスセル940を製造する際にはMEMS(Micro Electro Mechanical System)技術を用いた様々な方法の開発が進められてきている。尚、封入されるアルカリ金属は、酸素、及び、水分との反応性が非常に高く、このガスセル940の作製において最も重要な課題は、量産性が高く、ガスセル940中の内包物が経時変化しない、セル構造と封入方法を確立することである。
非特許文献3に開示されている方法は、Siウェハ中にエッチング法により貫通穴をあけ、これの1面にガラスウェハを陽極接合し、凹状の穴をもつ半積層体を作製する。その後、嫌気性グローブボックス(Anaerobic Glove box)中でこの半積層体の凹状の穴にアンプルからマイクロピペットを用い取り出した液体Csを滴下し、そのまま真空室に搬送し、高真空引きし、バファガスを導入した後に、もう1面のSi面と第2のガラスウェハとを陽極接合し、ガスセルを作製する方法である。
非特許文献4に開示されている方法では、非特許文献3に開示されている方法と同様に作製した半積層体に、嫌気性グローブボックス中で、BaN+RbCl入の微小なガラスアンプルを加熱し反応させRbを凹状の穴に蒸着させた後、非特許文献3に開示されている方法と同様な工程で第2のガラスウェハを陽極接合しガスセルを作製する方法である。
非特許文献5に開示されている方法では、非特許文献3に開示されている方法と同様に作製した半積層体を蒸着装置中にセットし、CsN膜を蒸着する。次に、これを陽極接合装置にセットし、高真空引きし、第2のガラスウェハと陽極接合し、取り出した後、UV光を照射しCsNをCs金属とNガスに分解し、Cs原子とNバッファガスを内包したガスセルを作製する方法である。
非特許文献6に開示されている方法では、Siウェハ中にエッチング法により溝で連通した2種の貫通穴をあけ、これの1面にガラスウェハを陽極接合し、2種の凹状の穴をもつ半積層体を作製する。大気中でアルカリ金属発生剤を1種目の凹状の穴に配置し、高真空引きし、バファガスを導入した後に、もう1面のSi面と第2のガラスウェハとを陽極接合した積層体を作製する。この積層体中のアルカリ金属供給剤に外部からレーザ光を照射し加熱しアルカリ金属蒸気を発生させ、ガスセルを作製する方法である。
ところで、アルカリ金属発生剤は、室温では大気中での取り扱いが可能で、所定の温度に加熱されることによりアルカリ金属蒸気を発生する。
これらのアルカリ金属発生剤の形式の1つは、従来から光電子増倍管や光電管などで使用されており、酸化剤と還元剤との組み合わせを構成成分として含むペレット状あるいは粉末状の薬剤である。この還元剤はZr、Si、Ti、Al等を含み、酸化剤はアルカリ金属イオンをカウンターカチオンとするクロム酸塩やバナジウム酸塩やタングステン酸塩やモリブデン酸塩を含む。Zr、Alを還元剤としてCsクロム酸塩からCs蒸気を発生させる反応式を化1に示す。尚、このようなアルカリ金属発生剤については、特許文献3〜6に開示されている。
Figure 0005961998
他の方法としては、特許文献7に開示されているように、金属、半導体、セラミックス
などの支持体上にアルカリ金属単体を蒸着し、このアルカリ金属堆積物をチタン、ジルコ
ニウムなどのゲッター材堆積物により被覆し形成するものである。
ところで、Siウェハとホウケイ酸ガラスウェハの陽極接合時に、O、OH基グループ、HOが脱ガスすることが知られている。このため、非特許文献3、4に開示されている2回目の接合時に、半積層体の凹状の穴に単体のアルカリ原子が投入されている方法では、通常の接合条件より穏やかな条件で行われる。即ち、通常は350℃〜450℃の温度で1kV程度の電圧が印加されるが、非特許文献3、4に開示されている方法では、200℃〜250℃の温度で、1kVである。しかしながら、このような温和な条件での接合は、接合後にも界面から上記のガス種を出し続ける。このガス種が、アルカリ金属と反応し固体の酸化物を生成させ、これがセルの窓に付着し、ガスセルの信頼性を低下させてしまう。
また、非特許文献5に開示されている方法では、CsN膜をUV光で分解してCsとNガスを発生させるものであるため、バッファガス種がNガスに限定される。また、UV光の分解反応時間が数時間から十時間以上の時間を要するため量産性が低い。更に、非特許文献5に開示されている方法では、2回目の接合時に、半積層体の凹状の穴にCsN膜が蒸着されているが、この物質は300℃以上では制御しにくい分解反応がおこるので、200℃程度で接合されている。このため、上述した非特許文献3、4に開示されている方法と同様の問題が生じる。
また、非特許文献6に開示されている方法では、2回目の陽極接合の前に、半積層体の凹状の穴投入されているアルカリ金属発生剤は、大気中でも安定であり500℃程度でも反応が開始しない。よって、2回目の陽極接合は400℃〜450℃での十分な条件で行われる。しかしながら、アルカリ金属発生後の残渣がバッファガスを吸着することがあり、特に、Nガスがバファガスの場合は吸着による影響は無視できない。また、残渣から発生する微粉末がセルの信頼性を低下させることが懸念される。また、多くの場合アルカリ金属発生剤は、磁性体になりやすいCrの化合物を含むが、超微細構造の準位の様態は磁界に敏感に影響されるので、ガスセルを磁気センサに搭載する場合はもちろん、原子時計に搭載する場合でも、セルの近傍にアルカリ金属発生剤残渣が存在することは高い計測精度を得る為には大きな問題となる。
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、低コストで信頼性の高い原子発振器を提供することを目的とするものである。
本発明は、光源よりアルカリ金属を封入したアルカリ金属セルに光を照射し、前記アルカリ金属セルを透過した光を光検出器により検出することにより、2種類の共鳴光による量子干渉効果による光吸収特性により発振周波数を制御する原子発振器の製造方法において、第2の基板に前記第2の基板を貫通する第1の穴と第2の穴を形成し、透明な第1の基板または前記第2の基板に前記第1の穴と前記第2の穴とを連結する連結溝を形成する工程と、前記第2の基板の前記第2の穴の形成されている領域にアルカリ金属発生剤を入れ、前記第2の基板の一方の面に前記第1の基板を接合し、前記第2の基板の他方の面に透明な第3の基板を接合する基板接合工程と、前記アルカリ金属発生剤を加熱しアルカリ金属ガスを発生させ、前記連結溝を介し発生した前記アルカリ金属ガスを前記第1の穴の形成されている領域内に供給する工程と、前記連結溝の形成されている領域において、前記第1の基板を変形させて、前記第1の基板を前記第2の基板に接合し、前記第1の穴と前記第2の穴との間を遮断する工程と、を有し、前記第1の穴が形成されている領域を含む部分により、前記アルカリ金属セルが形成されることを特徴とする。
また、本発明は、光源よりアルカリ金属を封入したアルカリ金属セルに光を照射し、前記アルカリ金属セルを透過した光を光検出器により検出することにより、2種類の共鳴光による量子干渉効果による光吸収特性により発振周波数を制御する原子発振器の製造方法において、第2の基板に前記第2の基板を貫通する貫通穴と溝を形成し、透明な第1の基板または前記第2の基板に前記貫通穴と前記溝とを連結する連結溝を形成する工程と、前記第2の基板の一方の面に前記第1の基板を接合し、前記第2の基板の他方の面に透明な第3の基板を接合する基板接合工程と、前記貫通穴の形成されている領域内に前記溝及び前記連結溝を介しアルカリ金属ガスを供給する工程と、前記連結溝の形成されている領域において、前記第1の基板を変形させて、前記第1の基板を前記第2の基板に接合し、前記貫通穴と前記溝との間を遮断する工程と、を有し、前記貫通穴の形成されている領域を含む部分により、前記アルカリ金属セルが形成されることを特徴とする。
本発明によれば、低コストで信頼性の高い原子発振器等に用いられるガスセルを提供することができるため、低コストで信頼性の高い原子発振器を提供することができる。
CPT方式の原子発振器の構造図 原子発振器における原子のエネルギー準位の説明図 第1の実施の形態における原子発振器の製造方法の工程図(1) 第1の実施の形態における原子発振器の製造方法の工程図(2) 第1の実施の形態における原子発振器の製造方法の工程図(3) 第1の実施の形態における原子発振器の製造方法の工程図(4) 第1の実施の形態における原子発振器の製造方法の工程図(5) 第1の実施の形態における他の原子発振器の製造方法の工程図(1) 第1の実施の形態における他の原子発振器の製造方法の工程図(2) 第1の実施の形態における他の原子発振器の製造方法の工程図(3) 第1の実施の形態における他の原子発振器の製造方法の工程図(4) 第2の実施の形態における原子発振器の製造方法の工程図(1) 第2の実施の形態における原子発振器の製造方法の工程図(2) 第2の実施の形態における原子発振器の製造方法の工程図(3) 第2の実施の形態における原子発振器の製造方法の工程図(4) 第2の実施の形態における原子発振器の製造方法の工程図(5) 第2の実施の形態における原子発振器の製造方法の工程図(6) 第3の実施の形態における原子発振器の製造方法の工程図(1) 第3の実施の形態における原子発振器の製造方法の工程図(2) 第3の実施の形態における原子発振器の製造方法の工程図(3) 第4の実施の形態における原子発振器の製造方法の工程図(1) 第4の実施の形態における原子発振器の製造方法の工程図(2) 第4の実施の形態における原子発振器の製造方法の工程図(3) 第4の実施の形態における原子発振器の製造方法の工程図(4) 第4の実施の形態における原子発振器の製造方法の工程図(5) 第5の実施の形態における原子発振器の製造方法の工程図(1) 第5の実施の形態における原子発振器の製造方法の工程図(2) 第5の実施の形態における原子発振器の製造方法の工程図(3) 第5の実施の形態における原子発振器の製造方法の工程図(4) 第5の実施の形態における原子発振器の製造方法の工程図(5) 第6の実施の形態における原子発振器の構造図 CPT方式を説明する原子エネルギー準位の説明図 面発光レーザ変調時における出力波長の説明図 変調周波数と透過光量との相関図 第6の実施の形態における他の原子発振器の構造図
本発明を実施するための形態について、以下に説明する。尚、同じ部材等については、同一の符号を付して説明を省略する。
〔第1の実施の形態〕
第1の実施の形態における原子発振器の製造方法について、図3〜図7に基づき説明する。本実施の形態は、原子発振器におけるガスセルの製造方法であり、ガラス基板により形成される第1の基板10と、Si基板により形成される第2の基板20と、ガラス基板により形成される第3の基板30とを用いた製造方法である。尚、第1の基板10は、透明であり、厚さが0.2mm〜3mmであって、可動イオンを含むホウケイ酸ガラス等のガラスウェハにより形成されている。
図3に示すように、第2の基板20には、両面が鏡面研磨されている厚さ1.3mmのSi基板が用いられており、第1の穴となる第1の貫通穴21と、第2の穴となる第2の貫通穴22と、第2の基板20の一方の面において、第1の貫通穴21と第2の貫通穴22とを接続する連結溝23が形成されている。尚、図3(a)は、第2の基板20における一方の面側の上面図であり、図3(b)は、図3(a)における一点鎖線3A−3Bにおいて切断した断面図であり、図3(c)は、図3(a)における一点鎖線3C−3Dにおいて切断した断面図である。
第2の基板20の形成方法は、最初に、第2の基板20となるSi基板の表面に連結溝23を形成する。具体的には、第2の基板20となるSi基板の一方の面にフォトレジストを塗布し、露光装置による露光、現像を行なうことにより、連結溝23を形成するためのレジストパターンを形成する。このレジストパターンは、グレースケールフォトマスクを用いて露光することにより形成されており、連結溝23が形成される領域を除く領域は、レジストパターンの厚さが厚く形成されており、連結溝23が形成される領域は、形成される連結溝23の深さに応じて厚さが薄くなるように形成されている。この後、このレジストパターンをマスクとして、C等のエッチングガスを用いたICP(Inductively Coupled Plasma)ドライエッチングを行なう。これにより、連結溝23が形成される領域において薄く形成されているレジストパターンは除去されて、形成されていたレジストパターンの厚さに応じて、その下のSi基板の一部が除去され、凹状の連結溝23を形成することができる。このように形成された凹状の連結溝23の深さは、最も深いところで、150μmとなるように形成する。尚、この連結溝23は、封止のしやすさや歩留り等の観点から、図3(c)に示されるように、なめらかな形状となるように形成されていることが好ましい。
また、グレースケールフォトマスクを用いた方法以外にも、連結溝23が形成される領域に開口部を有するレジストパターンを形成した後、ウェットエッチングによりレジストパターンの形成されていない領域のSi基板の一部を除去することにより、連結溝23を形成する方法であってもよく、また、イオンを斜め方向から入射させるイオンエッチング等によりレジストパターンの形成されていない領域のSi基板の一部を除去することにより、連結溝23を形成する方法であってもよい。尚、連結溝23を形成した後は、レジストパターンは有機溶剤等により除去する。
次に、第2の基板20となるSi基板を貫通する第1の貫通穴21及び第2の貫通穴22を形成する。この第1の貫通穴21及び第2の貫通穴22は、連結溝23により接続されるように形成する。具体的には、第2の基板20となるSi基板の一方の面にフォトレジストを塗布し、露光装置による露光、現像を行なうことにより、第1の貫通穴21及び第2の貫通穴22が形成される領域に開口部を有するレジストパターンを形成する。この後、レジストパターンをマスクとして、ICPドライエッチング等においてSF、Cガスを交互に供給するボッシュプロセスにより、第1の貫通穴21及び第2の貫通穴22を形成する。この後、レジストパターンは有機溶剤等により除去する。
これにより、第1の貫通穴21、第2の貫通穴22及び第1の貫通穴21と第2の貫通穴22とを連結する連結溝23が形成された第2の基板20を形成することができる。このように形成された第1の貫通穴21と第2の貫通穴22との間隔は、0.05mm〜30mm程度である。また、上記においては、ドライエッチングにより形成する方法について説明したが、ウェットエッチング、サンドブラスト、機械加工等の方法によっても形成することが可能である。また、上記においては、第2の貫通穴22はSi基板を貫通するものであるが、必ずしも貫通させる必要はなく、Si基板の一部が残るようエッチングを行なうことにより穴を形成したものであってもよい。
次に、図4に示すように、第2の基板20の一方の面に第1の基板10を接合し、第2の基板20の他方の面に第3の基板30を接合する。尚、図4(a)は、この工程における図3(a)の一点鎖線3A−3Bに対応した部分の断面図であり、図4(b)は、この工程における図3(a)の一点鎖線3C−3Dに対応した部分の断面図である。
最初に、連結溝23が形成されている第2の基板20の一方の面と第1の基板10とを陽極接合法により接合する。具体的には、陽極接合装置の減圧チャンバー内において、第1の基板10及び第2の基板20を380℃に加熱し、第2の基板20の一方の面と第1の基板10とを接触させて、第1の基板10側に−800Vの電圧を印加し、第1の基板10と第2の基板20との間に圧力を加えることにより、第1の基板10と第2の基板20とを接合する。これにより、第1の基板10と第2の基板20とは、第1の貫通穴21、第2の貫通穴22及び連結溝23を除いた全ての領域が接合される。
次に、第2の基板20における第2の貫通穴22の内部にアルカリ金属発生剤40を設置した後、第2の基板20の他方の面と第3の基板30とを接合する。尚、第3の基板30は、透明であり、厚さが0.2mm〜3mmであって、可動イオンを含むホウケイ酸ガラス等のガラスウェハにより形成されている。具体的には、陽極接合装置の減圧チャンバー内に、アルカリ金属発生剤40が設置されている第1の基板10と第2の基板20とが接合されたものと、第3の基板30とを設置し、高真空に真空引きした後、減圧チャンバー内にNe、Ar、Xe、Kr、Nのうち1又は2以上からなるバッファガスを導入し、減圧チャンバー内部の圧力を0.1kPa〜1000kPaとし、この後、第2の基板20及び第3の基板30を380℃に加熱し、第2の基板20の他方の面と第3の基板30とを接触させて、第3の基板30側に−800Vの電圧を印加し、第2の基板20と第3の基板30との間に圧力を加えることにより、第2の基板20と第3の基板30とを接合する。
次に、図5に示すように、第2の基板20における第2の貫通穴22に設置されているアルカリ金属発生剤40に第1の基板10等を介してレーザ光50を照射し、アルカリ金属発生剤40よりアルカリ金属ガスが発生するまで加熱する。尚、図5(a)は、この工程における図3(a)の一点鎖線3A−3Bに対応した部分の断面図である。
これにより、第2の貫通穴22の内部より連結溝23を介して第1の貫通穴21の内部にアルカリ金属ガス41を充填させる。尚、レーザ光50の光源としては、数W程度の出力を有する630nm帯、808nm帯、940nm帯、980nm帯、1550nm帯の半導体レーザや、1064nmのNd:YAGレーザ、1455nm帯ラマンファイバーレーザ、10μm帯COレーザ等が挙げられる。また、照射されるレーザ光50は、図示されるように、レンズ等の光学系51を介しレーザ光が集光されたものであることが好ましい。レーザ光50により加熱される温度は、アルカリ金属発生剤40となるものが、還元剤がTi、Alであり酸化剤がクロム酸塩の場合は700℃程度であり、還元剤がSiであり酸化剤がモリブデン酸塩の場合は900℃程度である。
次に、図6に示すように、第1の基板10の連結溝23が設けられている領域において、第1の基板10を変形させて、第2の基板20に接合する。尚、図6(a)は、この工程における図3(a)の一点鎖線3A−3Bに対応した部分の断面図であり、図6(b)は、この工程における図3(a)の一点鎖線3C−3Dに対応した部分の断面図である。
具体的には、第2の基板20の一方の面に第1の基板10が接合され、他方の面に第3の基板30が接合されたものを陽極接合装置に設置し、第1の基板10のガラス転移点(Tg)以上の温度に加熱した後、連結溝23が形成されている領域において、第1の基板10に加熱されたグラファイト製の凸状の圧子52を接触させ加重を加える。本実施の形態では、第1の基板10はTgが約525℃のホウケイ酸ガラスにより形成されており、600℃〜680℃に加熱した圧子52により第1の基板10に圧力を加えることにより、第1の基板10において、圧子52により圧力が加えられた領域11が変形し、第2の基板20と接触して連結溝23を埋める。この後、圧子52を一端離し、圧子52の温度を450℃にした後、圧子52を第1の基板10の領域11に再度接触させ、圧子52側に電源53により−1000Vの電圧を印加する。これにより、領域11において第1の基板10は第2の基板20と陽極接合により接合することができる。よって、この陽極接合により、第1の貫通穴21と第2の貫通穴22との間を遮断することができ、第2の基板20における第1の貫通穴21が形成されている領域の内部にアルカリ金属ガス41を封入することができる。
尚、上記以外のアルカリ金属ガス41の封入方法としては、既に接合されている第1の基板10と第2の基板20を再度、450℃〜600℃の温度で加熱し、連結溝23が形成されている第1の基板10における領域11において、圧子52を用いて陽極接合を行ってもよい。また、連結溝23が形成されている領域において、電源53により電圧を印加することなく、圧子52の温度を高くすることにより、第1の基板10と第2の基板20とを融着させる方法や、第1の基板10及び第2の基板20をCOレーザにより局所的に加熱しながら圧子52により加圧することにより第1の基板10と第2の基板20とを融着させる方法であってもよい。
次に、図7に示すように、ダイシングにより、第2の基板20における第1の貫通穴21と第2の貫通穴22との間の連結溝23が形成されていた領域、即ち、第1の基板10における領域11において切断する。更に、第2の基板20における第1の貫通穴21の周囲をダイシングにより切断することにより、第2の基板20において第1の貫通穴21内にアルカリ金属ガス41が封入されているガスセル60を作製することができる。尚、図7(a)は、この工程における図3(a)の一点鎖線3A−3Bに対応した部分の断面図であり、図7(b)は、この工程における図3(a)の一点鎖線3C−3Dに対応した部分の断面図である。
このように作製されたガスセル60は、内部に含まれるアルカリ金属ガス41の純度が高く、不純物が少なく、また、製造工程も単純で少ない。よって、本実施の形態では、低コストで信頼性の高い原子発振器等に用いられるガスセルを提供することができるため、低コストで信頼性の高い原子発振器を提供することができる。
また、本実施の形態では、第2の基板20に複数の第1の貫通穴21、第2の貫通穴22及び連結溝23を形成することにより、複数のガスセル60を同時に製造することができる。よって、低コストでガスセル60を製造することができる。
(変形例)
次に、本実施の形態における変形例について説明する。本実施の形態における変形例は第2の基板120を複数のSi基板により形成するものである。このように複数のSi基板を用いることにより、ガスセルにおいて第1の基板10と第3の基板30との間隔を広くすることができる。
図8から図10に基づき、第2の基板120を第1のSi基板120aと第2のSi基板120bにより形成する場合について説明する。
図8に示されるように、第1のSi基板120aには、第1の貫通穴21aと、第2の貫通穴22aと、第1の貫通穴21aと第2の貫通穴22aとを連結する連結溝23が形成されている。また、図9に示されるように、第2のSi基板120bには、第1の貫通穴21bと第2の貫通穴22bが形成されている。尚、第1のSi基板120aにおける連結溝23は第1のSi基板120aの一方の面に形成されている。また、第2のSi基板120bにおいて、第1の貫通穴21b及び第2の貫通穴22bが形成される位置は、第1のSi基板120aにおいて、第1の貫通穴21aと第2の貫通穴22aが形成される位置に対応した位置に形成されている。
具体的には、第1のSi基板120aの形成方法は、上述した第2の基板20の形成方法と同様の方法により形成する。第1のSi基板120aの形成方法は、第2のSi基板120bは連結溝23を形成する工程を除き、上述した第2の基板20と同様の方法により形成する。
次に、図10に示すように、第1のSi基板120aの他方の面と第2のSi基板120bの一方の面とを直接接合等の接合方法により接合する。この際、第1のSi基板120aにおける第1の貫通穴21aの位置と第2のSi基板120bにおける第1の貫通穴21bの位置が一致し、第1のSi基板120aにおける第1の貫通穴22aの位置と第2のSi基板120bにおける第2の貫通穴22bの位置が一致するように接合する。これにより、第1のSi基板120aと第2のSi基板120bにより第2の基板120が形成される。また、第1のSi基板120aにおける第1の貫通穴21aと第2のSi基板120bにおける第1の貫通穴21bにより貫通穴21が形成され、第1のSi基板120aにおける第1の貫通穴22aと第2のSi基板120bにおける第2の貫通穴22bにより貫通穴22が形成される。
このように形成された第2の基板120は、前述した第2の基板20と同様に用いることができる。具体的には、図11に示されるように、第2の基板20と同様に、第2の基板120の一方の面、即ち、第1のSi基板120aの一方の面に第1の基板10を接合し、第2の貫通穴22にアルカリ金属発生剤40を設置し、第2の基板120の他方の面、即ち、第2のSi基板120bの他方の面に第3の基板30を接合する。
この後、上述した図5〜図7に示す工程を行なうことにより、第1の基板10と第3の基板30との間隔が広い構造のガスセルを作製することができる。
〔第2の実施の形態〕
次に、第2の実施の形態における原子発振器の製造方法について、図12〜図17に基づき説明する。本実施の形態は、原子発振器におけるガスセルの製造方法であり、ガラス基板により形成される第1の基板210と、Si基板により形成される第2の基板220と、ガラス基板により形成される第3の基板30とを用いた製造方法である。
最初に、図12に示されるように、第1の基板210を形成する。第1の基板210には、厚さが0.1mm〜3mmであって、可動イオンを含む透明なホウケイ酸ガラス等のガラスウェハが用いられており、連結溝213が形成されている。尚、図12(a)は、第1の基板210における一方の面側の上面図であり、図12(b)は、図12(a)における一点鎖線12A−12Bにおいて切断した断面図であり、図12(c)は、図12(a)における一点鎖線12C−12Dにおいて切断した断面図である。
具体的に、第1の基板210の形成方法は、第1の基板210となるガラスウェハの一方の面にフォトレジストを塗布し露光装置による露光、現像を行なうことにより連結溝213が形成される領域に開口部を有するレジストパターンを形成する。この後、このレジストパターンをマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングやフッ酸系水溶液を用いたウェットエッチングにより深さが1μm〜1000μmの連結溝213を形成する。尚、ドライエッチングにより形成する場合には、エッチング速度が大きいことから、CF等を用いた磁気中性線プラズマ(Neutral Loop Discharge:NLD)法等が好ましい。また、この連結溝213は、封止のしやすさや歩留り等の観点から、図12(c)に示されるように、なめらかな形状となるように形成されていることが好ましい。ウェットエッチングは等方的にエッチングがなされるため、なめらかな形状の連結溝213を容易に形成することができる。また、ドライエッチングにより形成する場合には、前述したようにグレースケールマスク等を用いる方法等により形成することができる。尚、この連結溝213は、後述する第2の基板220に形成される第1の貫通穴21と第2の貫通穴22とを連結させることができる位置に形成されている。
次に、図13に示されるように、第2の基板220を形成する。第2の基板220には、両面が鏡面研磨されている厚さ1.3mmのSi基板が用いられており、第1の貫通穴21と第2の貫通穴22が形成されている。尚、図13(a)は、第2の基板220における一方の面側の上面図であり、図13(b)は、図13(a)における一点鎖線13A−13Bにおいて切断した断面図であり、図13(c)は、図13(a)における一点鎖線13C−13Dにおいて切断した断面図である。
具体的に、第2の基板220の形成方法は、第2の基板220となるSi基板の一方の面又は他方の面にフォトレジストを塗布し、露光装置による露光、現像を行なうことにより、第1の貫通穴21及び第2の貫通穴22が形成される領域に開口部を有するレジストパターンを形成する。この後、レジストパターンをマスクとして、ICPドライエッチング等においてSF、Cガスを交互に供給するボッシュプロセスにより、第2の基板220となるSi基板を貫通する第1の貫通穴21及び第2の貫通穴22を形成する。この後、レジストパターンは有機溶剤等により除去する。このように形成された第1の貫通穴21と第2の貫通穴22との間隔は、0.05mm〜30mm程度である。
次に、図14に示すように、第2の基板220の他方の面と第3の基板30とを接合し、第2の基板220の一方の面に第1の基板210を接合する。尚、図14は、この工程における図13(a)の一点鎖線13A−13Bに対応した部分の断面図である。
最初に、第2の基板220の他方の面と第3の基板30とを接合する。尚、第3の基板30は、透明であり、厚さが0.2〜3mmであって、可動イオンを含むホウケイ酸ガラス等のガラスウェハにより形成されている。具体的には、陽極接合装置の減圧チャンバー内において、第2の基板220及び第3の基板30を380℃に加熱し、第2の基板220の他方の面と第3の基板30とを接触させて、第3の基板30側に−800Vの電圧を印加し、第2の基板220と第3の基板30との間に圧力を加えることにより、第2の基板220と第3の基板30とを接合する。これにより、第2の基板220と第3の基板30とは、第1の貫通穴21、第2の貫通穴22を除いた全ての領域が接合される。
この後、第2の基板220における第2の貫通穴22の内部にアルカリ金属発生剤40を設置した後、連結溝213が形成されている第1の基板210の一方の面と第2の基板220の一方の面とを陽極接合法により接合する。より詳細に説明すると、陽極接合装置の減圧チャンバー内に、アルカリ金属発生剤40が設置されている第2の基板220と第3の基板30とが接合されたものと、第1の基板210とを設置し、高真空に真空引きした後、1455nm帯ラマンファイバーレーザとビーム集光光学系51を有するレーザビーム加熱装置を用いて、第1の基板210を介してレーザ光50をアルカリ金属発生剤40に照射し、500℃程度に加熱する。これにより、アルカリ金属発生剤40から不純物ガスを脱ガスさせる。この後、減圧チャンバー内にNe等のバッファガスを導入し、減圧チャンバー内部の圧力を0.1kPa〜1000kPa、例えば、20kPaとし、第1の基板210及び第2の基板220を380℃に加熱し、第1の基板210の一方の面と第2の基板220の基板の一方の面とを接触させて、第1の基板210側に−800Vの電圧を印加し、第1の基板210と第2の基板220との間に圧力を加えることにより、第1の基板210と第2の基板220とを接合する。
次に、図15に示すように、第2の基板220における第2の貫通穴22に設置されているアルカリ金属発生剤40に第1の基板210等を介してレーザ光50を照射し、アルカリ金属発生剤40よりアルカリ金属ガスが発生するまで加熱する。尚、図15(a)は、この工程における図13(a)の一点鎖線13A−13Bに対応した部分の断面図であり、図15(b)は、この工程における図13(a)の一点鎖線13C−13Dに対応した部分の断面図である。
これにより、第2の貫通穴22の内部より連結溝213を介して第1の貫通穴21の内部にアルカリ金属ガス41を充填させる。レーザ光50により加熱される温度は、アルカリ金属発生剤40となるものが、還元剤がTi、Alであり酸化剤がクロム酸塩の場合は700℃程度であり、還元剤がSiであり酸化剤がモリブデン酸塩の場合は900℃程度である。
次に、図16に示すように、連結溝213が設けられている領域において、第1の基板210を変形させて、第2の基板220に接合する。尚、図16(a)は、この工程における図13(a)の一点鎖線13A−13Bに対応した部分の断面図であり、図16(b)は、この工程における図13(a)の一点鎖線13C−13Dに対応した部分の断面図である。
具体的には、第2の基板220に第1の基板210及び第3の基板30が接合されたものを陽極接合装置に設置し、第1の基板210のガラス転移点(Tg)以上の温度に加熱した後、連結溝213が形成されている領域において、第1の基板210に加熱されたグラファイト製の凸状の圧子52を接触させ加重を加える。本実施の形態では、第1の基板210はTgが約525℃のホウケイ酸ガラスにより形成されており、600℃〜680℃に加熱した圧子52により第1の基板210に圧力を加えることにより、第1の基板210において、圧子52により圧力が加えられた領域214は変形し、第2の基板220と接触し連結溝213を埋める。この後、圧子52を一端離し、圧子52の温度を450℃にした後、圧子52を第1の基板210の領域214に再度接触させ、圧子52側に電源53により−1000Vの電圧を印加する。これにより、領域214において第1の基板210は第2の基板220と陽極接合により接合される。この陽極接合により、第1の貫通穴21と第2の貫通穴22との間を遮断することができ、第2の基板220における第1の貫通穴21が形成されている領域の内部にアルカリ金属ガス41を封入することができる。
次に、図17に示すように、ダイシングにより、第1の貫通穴21と第2の貫通穴22との間となる第1の基板210において連結溝213が形成されていた領域、即ち、第1の基板210における領域214において切断する。更に、第2の基板220における第1の貫通穴21の周囲をダイシングにより切断することにより、第2の基板220において第1の貫通穴21内にアルカリ金属ガス41が封入されているガスセル260を作製することができる。尚、図17(a)は、この工程における図13(a)の一点鎖線13A−13Bに対応した部分の断面図であり、図17(b)は、この工程における図13(a)の一点鎖線13C−13Dに対応した部分の断面図である。
このように作製されたガスセル260は、内部に含まれるアルカリ金属ガス41の純度が高く、不純物が少なく、また、製造工程も単純で少ない。よって、本実施の形態では、低コストで信頼性の高い原子発振器等に用いられるガスセルを提供することができるため、低コストで信頼性の高い原子発振器を提供することができる。
また、本実施の形態では、第1の基板210に複数の連結溝213、第2の基板220に複数の第1の貫通穴21、第2の貫通穴22を形成することにより、複数のガスセル260を同時に製造することができる。よって、低コストでガスセル260を製造することができる。尚、上記以外の内容については、第1の実施の形態と同様である。
〔第3の実施の形態〕
次に、第3の実施の形態における原子発振器の製造方法について、図18〜図20に基づき説明する。本実施の形態は、原子発振器におけるガスセルの製造方法であり、ガラス基板により形成される第1の基板310と、Si基板により形成される第2の基板220と、ガラス基板により形成される第3の基板30とを用いた製造方法である。
最初に、図18に示されるように、第1の基板310を形成する。第1の基板310には、厚さが0.7mmであって、透明なホウケイ酸ガラス等のガラスウェハが用いられており、連結溝313が形成されている。更に、連結溝313にはガラスフリット315が形成されている。尚、図18(a)は、第1の基板310における一方の面側の上面図であり、図18(b)は、図18(a)における一点鎖線18A−18Bにおいて切断した断面図であり、図18(c)は、図18(a)における一点鎖線18C−18Dにおいて切断した断面図である。
具体的には、第1の基板310となるガラスウェハの一方の面にフォトレジストを塗布し露光装置による露光、現像を行なうことにより連結溝313が形成される領域に開口部を有するレジストパターンを形成する。この後、このレジストパターンをマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングやフッ酸系水溶液を用いたウェットエッチングにより深さが250μmの連結溝313を形成する。本実施の形態では、連結溝313は、CF等を用いた磁気中性線プラズマ法等により形成する。次に、この連結溝313内にガラスフリット315を印刷法により形成する。形成されるガラスフリット315の厚さは、約50μmである。
次に、第2の実施の形態と同様の方法により。図13に示されるような第2の基板220を形成する。
具体的には、第2の基板220となるSi基板の一方の面又は他方の面にフォトレジストを塗布し、露光装置による露光、現像を行なうことにより、第1の貫通穴21及び第2の貫通穴22が形成される領域に開口部を有するレジストパターンを形成する。この後、レジストパターンをマスクとして、ICPドライエッチング等においてSF、Cガスを交互に供給するボッシュプロセスにより、第2の基板220となるSi基板を貫通する第1の貫通穴21及び第2の貫通穴22を形成する。この後、レジストパターンは有機溶剤等により除去する。このように形成された第1の貫通穴21と第2の貫通穴22との間隔は、0.05mm〜30mm程度である。
次に、第2の実施の形態と同様の方法により、第2の基板220の他方の面と第3の基板30とを接合する。尚、第3の基板30は、透明であり、厚さが0.2〜3mmであって、可動イオンを含むホウケイ酸ガラス等のガラスウェハにより形成されている。具体的には、陽極接合装置の減圧チャンバー内において、第2の基板220及び第3の基板30を380℃に加熱し、第2の基板220の他方の面と第3の基板30とを接触させて、第3の基板30側に−800Vの電圧を印加し、第2の基板220と第3の基板30との間に圧力を加えることにより、第2の基板220と第3の基板30とを接合する。これにより、第2の基板220と第3の基板30とは、第1の貫通穴21、第2の貫通穴22を除いた全ての領域が接合される。
次に、図19に示すように、第2の基板220の一方の面に第1の基板310の一方の面とを接合する。尚、図19は、この工程における図18(a)の一点鎖線18A−18Bに対応した部分の断面図である。
具体的には、第2の基板220における第2の貫通穴22の内部にアルカリ金属発生剤40を設置した後、連結溝313が形成されている第1の基板310の一方の面と第2の基板220の一方の面とを陽極接合法により接合する。より詳細に説明すると、陽極接合装置の減圧チャンバー内に、アルカリ金属発生剤40が設置されている第2の基板220と第3の基板30とが接合されたものと、第1の基板310とを設置し、高真空に真空引きした後、1455nm帯ラマンファイバーレーザとビーム集光光学系51を有するレーザビーム加熱装置を用いて、第1の基板310を介してレーザ光50をアルカリ金属発生剤40に照射し、500℃程度に加熱する。これにより、アルカリ金属発生剤40から不純物ガスを脱ガスさせる。この後、減圧チャンバー内にNe等のバッファガスを導入し、減圧チャンバー内部の圧力を0.1kPa〜1000kPa、例えば、20kPaとし、第1の基板310及び第2の基板220を380℃に加熱し、第1の基板310の一方の面と第2の基板220の基板の一方の面とを接触させて、第1の基板310側に−800Vの電圧を印加し、第1の基板310と第2の基板220との間に圧力を加えることにより、第1の基板310と第2の基板220とを接合する。
次に、第2の基板220における第2の貫通穴22に設置されているアルカリ金属発生剤40に第1の基板310等を介してレーザ光50を照射し、アルカリ金属発生剤40よりアルカリ金属ガスが発生するまで加熱する。
これにより、第2の貫通穴22の内部より連結溝313を介して第1の貫通穴21の内部にアルカリ金属ガス41を充填させる。レーザ光50により加熱される温度は、アルカリ金属発生剤40となるものが、還元剤がTi、Alであり酸化剤がクロム酸塩の場合は700℃程度であり、還元剤がSiであり酸化剤がモリブデン酸塩の場合は900℃程度である。
次に、図20に示すように、連結溝313が形成されている領域における第1の基板310を変形させて、ガラスフリット315を介し第1の基板310と第2の基板220に接合する。尚、図20は、この工程における図18(a)の一点鎖線18A−18Bに対応した部分の断面図である。
具体的には、第2の基板220に第1の基板310及び第3の基板30が接合されたものを陽極接合装置に設置し、第1の基板310のガラス転移点(Tg)以上の温度に加熱した後、連結溝313が形成されている領域において、第1の基板310に加熱されたグラファイト製の凸状の圧子52を接触させ加重を加える。本実施の形態では、第1の基板210はTgが約525℃のホウケイ酸ガラスにより形成されており、600℃〜680℃に加熱した圧子52により第1の基板310に圧力を加えることにより、第1の基板310において、圧子52により圧力が加えられた領域314は変形し、第2の基板220と接触し、連結溝313が形成されている領域において、ガラスフリット315を介して、第1の基板310と第2の基板220とが接合される。これにより、第1の貫通穴21と第2の貫通穴22との間を遮断することができ、第2の基板220における第1の貫通穴21が形成されている領域の内部にアルカリ金属ガス41を封入することができる。
次に、ダイシングにより、第1の貫通穴21と第2の貫通穴22との間における第1の基板310において連結溝313が形成されていた領域、即ち、第1の基板210における領域314において切断する。更に、第2の基板220における第1の貫通穴21の周囲をダイシングにより切断することにより、第2の基板220において第1の貫通穴21内にアルカリ金属ガス41が封入されているガスセル260を作製することができる。
このように作製されたガスセルは、内部に含まれるアルカリ金属ガス41の純度が高く、不純物が少なく、また、製造工程も単純で少ない。よって、本実施の形態では、低コストで信頼性の高い原子発振器等に用いられるガスセルを提供することができるため、低コストで信頼性の高い原子発振器を提供することができる。
また、本実施の形態では、第1の基板310に複数の連結溝313、第2の基板220に複数の第1の貫通穴21、第2の貫通穴22を形成することにより、複数のガスセルを同時に製造することができる。よって、低コストでガスセルを製造することができる。尚、上記以外の内容については、第2の実施の形態と同様である。
〔第4の実施の形態〕
次に、第4の実施の形態における原子発振器の製造方法について、図21〜図25に基づき説明する。本実施の形態は、原子発振器におけるガスセルの製造方法であり、ガラス基板により形成される第1の基板410と、Si基板により形成される第2の基板420と、ガラス基板により形成される第3の基板430とを用いた製造方法である。
最初に、図21及び図22に示されるように、第1の基板410、第2の基板420を形成し、第1の基板410と第2の基板420の一方の面とを接合し、第2の基板420の他方の面と第3の基板430を接合する。尚、図21は、この工程における上面図であり、図22(a)は、図21における一点鎖線21A−21Bにおいて切断した断面図であり、図22(b)は、図21における一点鎖線21C−21Dにおいて切断した断面図であり、図22(c)は、図21における一点鎖線21E−21Fにおいて切断した断面図であり、図22(d)は、図21における一点鎖線21G−21Hにおいて切断した断面図である。
第1の基板410には、厚さが0.7mmであって、可動イオンを含む透明なホウケイ酸ガラス等のガラスウェハが用いられており、連結溝413及び開口部416が形成されている。
具体的には、第1の基板410となるガラスウェハの一方の面にフォトレジストを塗布し露光装置による露光、現像を行なうことにより連結溝413が形成される領域に開口部を有するレジストパターンを形成する。この後、このレジストパターンをマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングやフッ酸系水溶液を用いたウェットエッチングにより深さが200μmの連結溝413を形成する。この後、レジストパターンを除去した後、再度、第1の基板410となるガラスウェハの一方の面にフォトレジストを塗布し露光装置による露光、現像を行なうことにより開口部416が形成される領域に開口を有するレジストパターンを形成する。この後、このレジストパターンをマスクとして、フッ酸系水溶液を用いたウェットエッチングにより第1の基板410となるガラスウェハを貫通するφ3.5mmの開口部416を形成する。尚、この連結溝413は、後述する第2の基板420に形成される貫通穴421と貫通溝422とを連結することができる位置に形成されている。
また、第2の基板420には、両面が鏡面研磨されている厚さ1.3mmのSi基板が用いられており、第2の基板420となるSi基板を貫通する貫通穴421と貫通溝422が形成されている。
具体的には、第2の基板420となるSi基板の一方の面又は他方の面にフォトレジストを塗布し、露光装置による露光、現像を行なうことにより、貫通穴421及び貫通溝422が形成される領域に開口部を有するレジストパターンを形成する。この後、レジストパターンをマスクとして、ICPドライエッチング等においてSF、Cガスを交互に供給するボッシュプロセスにより、第2の基板420となるSi基板を貫通する貫通穴421及び貫通溝422を形成する。この後、レジストパターンは有機溶剤等により除去する。このように形成された貫通穴421と貫通溝422との間隔は、0.05mm〜30mm程度である。尚、貫通溝422は第2の基板420を貫通するものでなくともよく、第2の基板420の一部が残る溝であってもよい。
最初に、第2の基板420の他方の面と第3の基板430とを接合する。尚、第3の基板430は、透明であり、厚さが0.2〜3mmであって、可動イオンを含むホウケイ酸ガラス等のガラスウェハにより形成されている。
具体的には、陽極接合装置の減圧チャンバー内において、第2の基板420及び第3の基板430を380℃に加熱し、第2の基板420の他方の面と第3の基板430とを接触させて、第3の基板430側に−800Vの電圧を印加し、第2の基板420と第3の基板430との間に圧力を加えることにより、第2の基板420と第3の基板430とを接合する。これにより、第2の基板420と第3の基板430とは、貫通穴421、貫通溝422を除いた全ての領域が接合される。
次に、第2の基板420の一方の面と第1の基板410の一方の面とを接合する。具体的には、第2の基板420における貫通溝422の内部にアルカリ金属発生剤40を設置した後、連結溝413が形成されている第1の基板410の一方の面と第2の基板420の一方の面とを陽極接合法により接合する。より詳細に説明すると、陽極接合装置の減圧チャンバー内に、アルカリ金属発生剤40が設置されている第2の基板420と第3の基板430とが接合されたものと、第1の基板410とを設置し、高真空に真空引きした後、1455nm帯ラマンファイバーレーザとビーム集光光学系を有するレーザビーム加熱装置を用いて、第1の基板410を介してレーザ光をアルカリ金属発生剤40に照射し、500℃程度に加熱する。これにより、アルカリ金属発生剤40から不純物ガスを脱ガスさせる。この後、減圧チャンバー内にNe等のバッファガスを導入し、減圧チャンバー内部の圧力を0.1kPa〜1000kPa、例えば、20kPaとし、第1の基板410及び第2の基板420を380℃に加熱し、第1の基板410の一方の面と第2の基板420の基板の一方の面とを接触させて、第1の基板410側に−800Vの電圧を印加し、第1の基板410と第2の基板420との間に圧力を加えることにより、第1の基板410と第2の基板420とを接合する。
次に、図23に示すように、第1の基板410に形成された開口部416に配管460をバーナーによる溶着法、ガスケットを用いた封止法等により接続する。尚、配管460はターボ分子ポンプ461及びドライポンプ462が接続されており、配管460の途中には第1のバルブV1、配管分割部463、圧力計464、第2のバルブV2が設けられている。また、配管460内にバッファガスを導入するための第3のバルブV3が設けられている。尚、配管分割部463はガスケットやガラス製共通摺り合わせ接合(interchangeable ground glass joint)により接合されている。図23は、この工程における図22(c)に対応した部分の断面図である。
次に、ターボ分子ポンプ461及びドライポンプ462により、配管460を介し排気することにより、第1の基板420における貫通穴421、貫通溝422内を減圧した後、第2の基板420における貫通溝422に設置されているアルカリ金属発生剤40に第1の基板410等を介してレーザ光を照射し、アルカリ金属発生剤40を約400℃まで加熱して不要なガスの脱ガスを行なう。この際、第1の基板410、第2の基板420、第3の基板430における温度は、約150℃である。
次に、第1の基板410、第2の基板420、第3の基板430における温度を約120℃に保持した状態で、第2のバルブV2を閉じ、第3のバルブV3を開くことにより、配管460を介してNe−Ar(1:1)のバッファガスを貫通穴421、貫通溝422内に所定の圧力となるまで供給する。
次に、第1のバルブV1を閉じ、第2の基板420における貫通溝422に設置されているアルカリ金属発生剤40に第1の基板410等を介してレーザ光を照射し、アルカリ金属発生剤40よりアルカリ金属ガス41が発生するまで加熱する。これにより、貫通溝422の内部より連結溝413を介して貫通穴421の内部にアルカリ金属ガス41を充填させる。レーザ光により加熱される温度は、アルカリ金属発生剤40がTi、Alであり酸化剤がクロム酸塩の場合は700℃程度であり、還元剤がSiであり酸化剤がモリブデン酸塩の場合は900℃程度である。
次に、図24に示すように、配管460に設けられた配管分割部463において接続を切り離し、切り離されたものを陽極酸化装置に設置し、真空に排気した後、連結溝413が設けられている領域において、第1の基板410を変形させることにより、第2の基板420に接合する。尚、図24(a)は、この工程における図22(a)に対応した部分の断面図であり、図24(b)は、この工程における図22(d)に対応した部分の断面図である。
具体的には、配管460に設けられた配管分割部463において、ターボ分子ポンプ461等と切り離された第2の基板420に第1の基板410及び第3の基板430が接合されたものを陽極接合装置に設置し、第1の基板410のガラス転移点(Tg)以上の温度に加熱した後、連結溝413が形成されている領域において、第1の基板410に加熱されたグラファイト製の凸状の圧子を接触させ加重を加える。これにより、第1の基板410において、圧子により圧力が加えられた領域414は変形し、第2の基板420と接触し連結溝413を埋める。この後、圧子を一端離し、圧子の温度を450℃にした後、圧子を第1の基板410の領域414に再度接触させ、電源から圧子側に−1000Vの電圧を印加する。これにより、領域414において第1の基板410は第2の基板420と陽極接合により接合される。この陽極接合により、貫通穴421と貫通溝422との間を遮断することができ、第2の基板420における貫通穴421が形成されている領域の内部にアルカリ金属ガス41を封入することができる。
次に、図25に示すように、ダイシングにより、貫通穴421と貫通溝422との間における第1の基板410において連結溝413が形成されていた領域、即ち、第1の基板410における領域414において切断する。更に、第2の基板420における貫通穴421の周囲をダイシングにより切断することにより、第2の基板420において第1の貫通穴421内にアルカリ金属ガス41が封入されているガスセル460を作製することができる。尚、図25(a)は、この工程における図22(a)に対応した部分の断面図であり、図25(b)は、この工程における図22(d)に対応した部分の断面図である。
このように作製されたガスセル460は、内部に含まれるアルカリ金属ガス41の純度が高く、不純物が少なく、また、製造工程も単純で少ない。よって、本実施の形態では、低コストで信頼性の高い原子発振器等に用いられるガスセルを提供することができるため、低コストで信頼性の高い原子発振器を提供することができる。尚、上記以外の内容については、第2の実施の形態と同様である。
〔第5の実施の形態〕
次に、第5の実施の形態における原子発振器の製造方法について、図26〜図30に基づき説明する。本実施の形態は、原子発振器におけるガスセルの製造方法であり、ガラス基板により形成される第1の基板410と、ガラス基板により形成される第2の基板520と、ガラス基板により形成される第3の基板430とを用いた製造方法である。
最初に、図26及び図27に示されるように、第1の基板410、第2の基板520を形成し、第1の基板410と第2の基板520の一方の面とを接合し、第2の基板520の他方の面と第3の基板430を接合する。尚、図26は、この工程における上面図であり、図27(a)は、図26における一点鎖線26A−26Bにおいて切断した断面図であり、図27(b)は、図26における一点鎖線26C−26Dにおいて切断した断面図であり、図27(c)は、図26における一点鎖線26E−26Fにおいて切断した断面図であり、図27(d)は、図26における一点鎖線26G−26Hにおいて切断した断面図である。
第1の基板410には、厚さが0.7mmであって、可動イオンを含む透明なホウケイ酸ガラス等のガラスウェハが用いられており、連結溝413及び開口部416が形成されている。
具体的には、第1の基板410となるガラスウェハの一方の面にフォトレジストを塗布し露光装置による露光、現像を行なうことにより連結溝413が形成される領域に開口部を有するレジストパターンを形成する。この後、このレジストパターンをマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングやフッ酸系水溶液を用いたウェットエッチングにより深さが200μmの連結溝413を形成する。この後、レジストパターンを除去した後、再度、第1の基板410となるガラスウェハの一方の面にフォトレジストを塗布し露光装置による露光、現像を行なうことにより開口部416が形成される領域に開口部を有するレジストパターンを形成する。この後、このレジストパターンをマスクとして、フッ酸系水溶液を用いたウェットエッチングにより第1の基板410となるガラスウェハを貫通するφ3.5mmの開口部416を形成する。尚、この連結溝413は、後述する第2の基板520に形成される貫通穴521と貫通溝522とを連結することができる位置に形成されている。
また、第2の基板520には、厚さ1.1mmのガラス基板が用いられており、第2の基板520となるガラス基板を貫通する貫通穴521と貫通溝522が形成されている。
具体的には、第2の基板520となるガラス基板の両面の面にフォトレジストを塗布し、露光装置による露光、現像を行なうことにより、貫通穴521及び貫通溝522が形成される領域に開口部を有するレジストパターンを形成する。この後、レジストパターンをマスクとして、フッ酸系水溶液を用いてガラス基板の両面からウェットエッチングを行なうことにより、第2の基板520となるガラス基板を貫通する貫通穴521及び貫通溝522を形成する。この後、レジストパターンは有機溶剤等により除去する。このように形成された貫通穴521と貫通溝522との間隔は、0.05mm〜30mm程度、例えば、約3mmである。
最初に、第2の基板520の一方の面と第1の基板410の一方の面とを接合する。具体的には、第2の基板520の一方の面と第1の基板410の一方の面を研磨し、第2の基板520の一方の面と第1の基板410とを接触させて、直接接合により接合する。直接接合は、同種のガラス材料を用いた場合には、広い温度範囲において強固である。
次に、第2の基板520の他方の面と第3の基板430とを接合する。尚、第3の基板430は、透明であり、厚さが0.2〜3mm、例えば、7mmであって、ホウケイ酸ガラス等のガラスウェハにより形成されている。具体的には、第2の基板520の他方の面と第3の基板430の一方の面を研磨し、第2の基板520の他方の面と第3の基板430とを接触させて、直接接合により接合する。
次に、図28に示すように、第1の基板410に形成された開口部416に配管460をパーフロロエラストマーからなる不図示のOリングを介し接続する。尚、配管460はターボ分子ポンプ461及びドライポンプ462が接続されており、配管460の途中には第1のバルブV1、配管分割部463、圧力計464、第2のバルブV2が設けられている。また、配管460を介しバッファガスを導入するための第3のバルブV3が設けられており、更に、配管460を介しアルカリ金属ガスを導入するためのアルカリ金属発生室565が設けられており、配管460と第4のバルブV4を介し接続されている。アルカリ金属発生室565は、内部にアルカリ金属発生剤540が設置されており、外部には、ランプ加熱、抵抗加熱、高周波加熱、レーザ加熱装置などアルカリ金属発生剤540を加熱する加熱部566が設けられている。尚、加熱部566は、ランプ加熱、高周波加熱、レーザ加熱の場合はアルカリ金属発生室565の外部から加熱する方式が適切であるが、蒸着装置の蒸発源のようにアルカリ金属発生室565の内部に加熱部566を設けたものであってもよい。例えば、抵抗加熱ボートをもつ方式やアルカリ金属発生剤540に直接電流を流す抵抗加熱法が挙げられる。アルカリ金属発生室565は石英やホウケイ酸ガラス、セラミック、ステンレスなどからなりアルカリ金属発生の特性と加熱方式により適宜選択される。第2のバルブV2から開口部416までの間の配管460と第4のバルブV4等はアルカリ金属蒸気の滞留防ぐため100℃以上に加熱しておく。また、第2の基板520等は、更にこの配管460等における温度より低くしておく。この状態において、アルカリ金属発生室565において加熱部566によりアルカリ金属発生剤540を加熱することにより、アルカリ金属ガスを発生させることができる。尚、配管分割部463はガスケットやガラス製共通摺り合わせ接合(interchangeable ground glass joint)により接合されている。図28は、この工程における図27(c)に対応した部分の断面図である。
最初に、上記構成を準備した後、全系を高真空に真空引きする。次に、第1のバルブV1を閉じ、第4のバルブV4を開き、アルカリ金属発生室565におけるアルカリ金属発生剤540を加熱部566により400℃程度に加熱して、アルカリ金属発生剤540からの発生した不要なガスを系外に除去する。
次に、第4のバルブV4を閉じ、第1のバルブV1及び第2のバルブV2を開き、ターボ分子ポンプ461及びドライポンプ462により排気することにより、配管460を介し、第1の基板420における貫通穴521、貫通溝522内を減圧する。次に、第2のバルブV2を閉じ第4のバルブを開き、加熱部566によりアルカリ金属発生剤540を650℃〜1000℃程度に加熱して発生させたアルカリ金属蒸気を貫通穴521、貫通溝522内に供給する。次に、第4のバルブV4を閉じ、温度を下げた後、第3のバルブV3を開くことにより、配管460を介してバッファガスを貫通穴521、貫通溝522内に所定の圧力となるまで供給する。
これにより、貫通溝522及び連結溝413を介して貫通穴521の内部にバッファガスとアルカリ金属ガスを充填させる。この後、第3のバルブV3及び第1のバルブV1を閉じる。
次に、図29に示すように、配管460に設けられた配管分割部463において接続を切り離し、連結溝413が設けられている領域において、第1の基板410を変形させることにより、第2の基板520に接合する。尚、図29(a)は、この工程における図27(a)に対応した部分の断面図であり、図29(b)は、この工程における図27(d)に対応した部分の断面図である。
具体的には、配管460に設けられた配管分割部463において、ターボ分子ポンプ461等から切り離された第2の基板520に第1の基板410及び第3の基板430が接合されたものについて、圧子を第1の基板410のガラス転移点(Tg)以上の温度に加熱した後、連結溝413が形成されている領域において、第1の基板410に加熱されたグラファイト製の凸状の圧子を接触させ加重を加える。これにより、第1の基板410において、圧子により圧力が加えられた領域414は変形し、第2の基板520と接触し連結溝413を埋める。これにより、領域414において第1の基板410と第2の基板520とは接合され、貫通穴521と貫通溝522との間を遮断することができ、第2の基板520における貫通穴521が形成されている領域の内部にアルカリ金属ガス41を封入することができる。
次に、図30に示すように、ダイシングにより、貫通穴521と貫通溝522との間の第1の基板410において連結溝413が形成されていた領域、即ち、第1の基板410における領域414において切断する。更に、第2の基板520における貫通穴521の周囲をダイシングにより切断することにより、第2の基板520において第1の貫通穴521内にアルカリ金属ガス41が封入されているガスセル560を作製することができる。尚、図30(a)は、この工程における図27(a)に対応した部分の断面図であり、図30(b)は、この工程における図27(d)に対応した部分の断面図である。
このように作製されたガスセル560は、内部に含まれるアルカリ金属ガス41の純度が高く、不純物が少なく、また、製造工程も単純で少ない。よって、本実施の形態では、低コストで信頼性の高い原子発振器等に用いられるガスセルを提供することができるため、低コストで信頼性の高い原子発振器を提供することができる。尚、上記以外の内容については、第4の実施の形態と同様である。
〔第6の実施の形態〕
次に、第6の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1から第5の実施の形態において製造されたガスセルを用いた原子発振器である。図31に基づき本実施の形態における原子発振器について説明する。本実施の形態における原子発振器は、CPT方式の小型原子発振器であり、光源610、コリメートレンズ620、λ/4波長板630、アルカリ金属セル640、光検出器650、変調器660を有している。
光源610は、面発光レーザ素子が用いられている。アルカリ金属セル640には、第1から第5の実施の形態のいずれかにおいて製造されたガスセルであり、アルカリ金属としてCs(セシウム)原子ガスが封入されており、D1ラインの遷移を用いるものである。光検出器650には、フォトダイオードが用いられている。
本実施の形態のおける原子発振器では、光源610より出射された光をセシウム原子ガスが封入されたアルカリ金属セル640に照射し、セシウム原子における電子を励起する。アルカリ金属セル640を透過した光は光検出器650において検出され、光検出器650において検出された信号は変調器660にフィードバックされ、変調器660により光源610における面発光レーザ素子を変調する。
図32に、CPTに関連する原子エネルギー準位の構造を示す。二つの基底準位から励起準位に電子が同時に励起されると光の吸収率が低下することを利用する。面発光レーザは搬送波波長が894.6nmに近い素子を用いている。搬送波の波長は面発光レーザの温度、もしくは出力を変化させてチューニングすることができる。温度や出力を上げると長波長にシフトするため、アルカリ金属セルの光密度の変動は好ましくないので温度変化を利用するのが好ましい。具体的に、波長の温度依存性は0.05nm/℃程度で調整できる。図33に示すように、変調をかけることで搬送波の両側にサイドバンドが発生し、その周波数差がCs原子の固有振動数である9.2GHzに一致するように4.6GHzで変調させている。図34に示すように、励起されたCsガスを通過するレーザ光はサイドバンド周波数差がCs原子の固有周波数差に一致した時に最大となるので、光検出器650の出力が最大値を保持するように変調器660においてフィードバックして光源610における面発光レーザ素子の変調周波数を調整する。原子の固有振動数が極めて安定なので変調周波数は安定した値となり、この情報がアウトプットとして取り出される。尚、波長が894.6nmの場合では、±1nmの範囲の波長の光源が必要となる。即ち、893.6nm〜895.6nmの範囲の波長の光源が必要となる。
本実施の形態における原子発振器は第1から第5の実施の形態において製造されたガスセルを用いているため、精度の高い原子発振器を低コストで作製し提供することができる。
また、本実施例ではアルカリ金属としてCsを用い、そのD1ラインの遷移を用いるために波長が894.6nmの面発光レーザを用いたが、CsのD2ラインを利用する場合は852.3nmを用いることもできる。また、アルカリ金属としてRb(ルビジウム)を用いることもでき、D1ラインを利用する場合は795.0nm、D2ラインを利用する場合は780.2nmを用いることができる。活性層の材料組成などは波長に応じて設計することができる。また、Rbを用いる場合の変調周波数は、87Rbでは3.4GHz、85Rbでは1.5GHzで変調させる。尚、これらの波長においても、±1nmの範囲の波長の光源が必要となる。即ち、CsのD2ラインを利用する場合は851.3nm〜853.3nmの範囲の波長の光源が必要となる。また、RbのD1ラインを利用する場合は794.0nm〜796.0nmの範囲の波長の光源が必要となる。また、RbのD2ラインを利用する場合は779.2nm〜781.2nmの範囲の波長の光源が必要となる。
また、図35は、本実施の形態における原子発振器の他の構造を示すものであり、光源610には、CsにおけるD1ライン遷移の波長894.35nmと同じ波長の単一モードで偏光が一定なレーザ光が出射されるVCSELが用いられている。アルカリ金属セル640は駆動電流により発生する磁界をキャンセルするように電流経路パターンを調整した2枚のITOヒータ641により挟まれている。また、地磁気などの磁気雑音をキャンセルする磁気シールドと、鋭いCPT共鳴信号のピークを得るためにセシウムの超微細準位にゼーマン分裂させる磁場を発生するためのコイルの図示は省略している。尚、λ/4波長板630とアルカリ金属セル640との間には、NDフィルター670が設けられている。
アルカリ金属セル640を透過した光は光検出器650によって検出され、光検出器650により検出された信号に基づき第1のロックインアンプ671において直流電流を数十kHzで変調し、VCSEL駆動用電源672及びバイアスティー673を介し、光源610であるVCSELの出力波長を最大吸収波長にロックさせることができる。また、光検出器650により検出された信号に基づき第2のロックインアンプ674において数kHzの変調波を発生させ電圧制御水晶発振記(VCO)675、マイクロ波電源676を介し、CPT信号が時計遷移周波数の半分の周波数(νclock/2:4.596GHz)にロックさせることができる。
以上、本発明の実施に係る形態について説明したが、上記内容は、発明の内容を限定するものではない。
10 第1の基板
11 領域(第2の基板と接合される領域)
20 第2の基板
21 第1の開口部
22 第2の開口部
23 連結溝
30 第3の基板
40 アルカリ金属発生剤
41 アルカリ金属
50 レーザ光
51 光学系
52 圧子
53 電源
54 ガスセル
米国特許出願公開第2005/0007118号明細書 米国特許第7400207号明細書 特開平02―106845号公報 特許第4440887号公報 国際公開第2004/066337号パンフレット 国際公開第2004/066338号パンフレット 特表第2010−519017号公報
J. Kitching et al., IEEE Transactions on Instrumentation and Measurment, Vol.49(2000)pp.1313-1317 S. Knappe et al., Journal of the Optical Society of America B,Vol.18(2001)pp.1545-1553 L. Liew et al., Applied Physics Letters,Vol.84(2004)pp.2694-2696 S. Knappe et al., Optics Letters,Vol.30(2005)pp.2351-2353 L. Liew et al., Applied Physics Letters,Vol.90(2007)114106 L. Nieradko et al., Journal of Micro/Nanolith. MEMS MOEMS 7(3), (2008)033013

Claims (10)

  1. 光源よりアルカリ金属を封入したアルカリ金属セルに光を照射し、前記アルカリ金属セルを透過した光を光検出器により検出することにより、2種類の共鳴光による量子干渉効果による光吸収特性により発振周波数を制御する原子発振器の製造方法において、
    第2の基板に前記第2の基板を貫通する第1の穴と第2の穴を形成し、透明な第1の基板または前記第2の基板に前記第1の穴と前記第2の穴とを連結する連結溝を形成する工程と、
    前記第2の基板の前記第2の穴の形成されている領域にアルカリ金属発生剤を入れ、前記第2の基板の一方の面に前記第1の基板を接合し、前記第2の基板の他方の面に透明な第3の基板を接合する基板接合工程と、
    前記アルカリ金属発生剤を加熱しアルカリ金属ガスを発生させ、前記連結溝を介し発生した前記アルカリ金属ガスを前記第1の穴の形成されている領域内に供給する工程と、
    前記連結溝の形成されている領域において、前記第1の基板を変形させて、前記第1の基板を前記第2の基板に接合し、前記第1の穴と前記第2の穴との間を遮断する工程と、
    を有し、
    前記第1の穴が形成されている領域を含む部分により、前記アルカリ金属セルが形成されることを特徴とする原子発振器の製造方法。
  2. 前記第1の穴と前記第2の穴との間を遮断する工程の後、
    前記第1の穴の形成されている領域と前記第2の穴の形成されている領域とを分離する工程を有することを特徴とする請求項1に記載の原子発振器の製造方法。
  3. 前記連結溝にはガラスフリットが設けられており、
    前記第1の穴と前記第2の穴との間を遮断する工程は、前記連結溝の形成されている領域において、前記ガラスフリットにより前記第1の基板と前記第2の基板とを接合することを特徴とする請求項1または2に記載されている原子発振器の製造方法。
  4. 光源よりアルカリ金属を封入したアルカリ金属セルに光を照射し、前記アルカリ金属セルを透過した光を光検出器により検出することにより、2種類の共鳴光による量子干渉効果による光吸収特性により発振周波数を制御する原子発振器の製造方法において、
    第2の基板に前記第2の基板を貫通する貫通穴と溝を形成し、透明な第1の基板または前記第2の基板に前記貫通穴と前記溝とを連結する連結溝を形成する工程と、
    前記第2の基板の一方の面に前記第1の基板を接合し、前記第2の基板の他方の面に透明な第3の基板を接合する基板接合工程と、
    前記貫通穴の形成されている領域内に前記溝及び前記連結溝を介しアルカリ金属ガスを供給する工程と、
    前記連結溝の形成されている領域において、前記第1の基板を変形させて、前記第1の基板を前記第2の基板に接合し、前記貫通穴と前記溝との間を遮断する工程と、
    を有し、
    前記貫通穴の形成されている領域を含む部分により、前記アルカリ金属セルが形成されることを特徴とする原子発振器の製造方法。
  5. 前記アルカリ金属ガスは、アルカリ金属発生剤を加熱することにより発生させるものであって、
    前記アルカリ金属発生剤は、前記溝が形成されている領域内に設置されていることを特徴とする請求項4に記載の原子発振器の製造方法。
  6. 前記第1の基板には前記溝に接続される開口部が設けられており、
    前記開口部を介して前記貫通穴及び前記溝が形成されている領域内を排気することができるものであって、
    基板接合工程の後、前記開口部を介して前記貫通穴及び前記溝が形成されている領域内を排気する工程を行い、
    前記排気する工程の後に行なわれるアルカリ金属ガスを供給する工程は、アルカリ金属発生剤を加熱することによりアルカリ金属ガスを発生させ、前記貫通穴の形成されている領域にアルカリ金属ガスを供給するものであることを特徴とする請求項5に記載の原子発振器の製造方法。
  7. 前記第1の基板には前記溝に接続される開口部が設けられており、
    前記開口部を介して前記貫通穴及び前記溝が形成されている領域内を排気し、また、ガスを供給することができるものであって、
    基板接合工程の後、前記開口部を介して前記貫通穴及び前記溝が形成されている領域内を排気する工程を行ない、
    前記排気する工程の後に行なわれるアルカリ金属ガスを供給する工程は、前記開口部を介して前記溝及び貫通穴にアルカリ金属ガスを供給することを特徴とする請求項4に記載の原子発振器の製造方法。
  8. 前記連結溝の形成されている領域において、前記第1の基板を前記第2の基板に接合する工程は、前記第1の基板を加熱して変形させた後、陽極接合を行なうものであることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の原子発振器の製造方法。
  9. 前記第1の基板はガラスを含む材料により形成されているものであることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の原子発振器の製造方法。
  10. 前記第2の基板はシリコン、ガラス、セラミックスのいずれかを含む材料により形成されているものであることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の原子発振器の製造方法。
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