本発明を実施するための形態について、以下に説明する。尚、同じ部材等については、同一の符号を付して説明を省略する。
〔第1の実施の形態〕
第1の実施の形態におけるアルカリ金属セルの製造方法について説明する。本実施の形態は、原子発振器等に用いられるアルカリ金属セルの製造方法であり、Si(シリコン)基板等により形成される本体基板と、ガラス基板等により形成される第1の透明基板及び第2の透明基板を用いた製造方法である。
最初に、図3に示されるように、本体基板10に第1の開口部11と第2の開口部12を形成する。本体基板10は、両面が鏡面研磨された厚さが0.2mm〜5.0mmのSi基板である。第1の開口部11は、本体基板10を貫通しているが、第2の開口部12は、必ずしも本体基板10を貫通していなくともよい。本実施の形態においては、第2の開口部12は、本体基板10を貫通している場合について説明する。尚、図3(a)は、この工程における上面図であり、図3(b)は、図3(a)における一点鎖線3A−3Bにおいて切断した断面図である。
第1の開口部11及び第2の開口部12の形成方法は、本体基板10の一方の面にフォトレジストを塗布し、露光装置による露光、現像を行うことにより、第1の開口部11及び第2の開口部12に開口を有する不図示のレジストパターンを形成する。この後、Si基板10を貫通するまで、レジストパターンの形成されていない領域のSiをICPエッチング等のドライエッチングにより除去する。このドライエッチングは、SF6、C4F8ガスを交互に供給するボッシュプロセスにより行われる。この後、レジストパターンは有機溶剤等により除去する。
これにより、本体基板10に第1の開口部11と第2の開口部12を形成することができる。このように形成された第1の開口部11は、直径が約3mmの円形の開口部であり、第2の開口部12は、縦横が約3mm×3mmの角形の開口部である。また、第1の開口部11から第2の開口部12までの最短の長さは、0.05mm〜30mmとなるように形成する。
上記における説明では、第1の開口部11及び第2の開口部12は、ドライエッチングにより形成する場合について説明したが、ウェットエッチング、サンドブラスト、イオンミリング等によっても形成することができる。
次に、図4に示されるように、本体基板10の一方の面に、ガラス基板により形成された第1の透明基板20を陽極接合により接合する。尚、第1の透明基板20は、厚さが0.1mm〜3mmであって、例えば、可動イオンを含有するホウケイ酸ガラス等により形成されたガラスウェハにより形成されている。具体的には、陽極接合装置のチャンバー内において、本体基板10及び第1の透明基板20を380℃に加熱して、本体基板10の一方の面に第1の透明基板20を接触させて、本体基板10側に−600Vの電圧を印加する。この状態で、本体基板10と第1の透明基板20との間に圧力を加えることにより、本体基板10の一方の面に第1の透明基板20を接合する。尚、図4(a)は、この工程における上面図であり、図4(b)は、図4(a)における一点鎖線4A−4Bにおいて切断した断面図である。
これにより、本体基板10と第1の透明基板20とは、第1の開口部11及び第2の開口部12を除いたすべての領域が接合される。尚、本体基板10と第1の透明基板20との接合は、陽極接合による接合以外にも、Au、Ag、Cu等の金属微粒子による接合、直接接合、Au−Si、Au−Sn、Al−Ge、Al−Siによる共晶接合、Au−Au、Cu−Cuによる拡散接合であってもよい。また、ガラスフリットによる接合であってもよい。
次に、図5に示されるように、本体基板10において、第1の透明基板20が接合されている一方の面と反対側の他方の面に、接合部金属膜31を形成し、更に、接合部金属膜31の上に、接合金属層40を形成する。尚、図5(a)は、この工程における上面図であり、図5(b)は、図5(a)における一点鎖線5A−5Bにおいて切断した断面図であり、図5(c)は、図5(a)における一点鎖線5C−5Dにおいて切断した断面図である。
具体的には、本体基板10の他方の面に、フォトレジストを塗布、または、ドライフィルムレジストを付着させた後、露光装置による露光、現像を行うことにより、接合部金属膜31が形成される領域に開口部を有する不図示のレジストパターンを形成する。本実施の形態においては、フォトレジストの塗布は、例えば、スピンコートやスプレイコートにより行う。この後、スパッタリング又は真空蒸着により、金属積層膜を成膜した後、有機溶剤に浸漬させることにより、レジストパターンの上に形成された金属積層膜をレジストパターンとともにリフトオフにより除去する。これにより、残存する金属積層膜により接合部金属膜31が形成される。このように形成された接合部金属膜31は、本体基板10の他方の面において、第1の開口部11の周囲と第2の開口部12の周囲及び、第1の開口部11と第2の開口部12との間の部分に形成される。
尚、この際、スパッタリングや真空蒸着により成膜される金属積層膜としては、Ti/Pt/Au、Cr/Pt/Au、Ti/Ni/Au等からなる金属積層膜が挙げられる。また、接合部金属膜31は、上記以外の方法により形成してもよく、例えば、メタルマスクを用いてメタルマスクの開口部に金属積層膜を成膜することにより、接合部金属膜31を形成してもよい。このような、接合部金属膜31は、後述するようにAu微粒子接合を行う際、Au微粒子の接合を良好に行うために形成される。
この後、接合部金属膜31の上に、接合金属層40を形成する。接合金属層40は、粒径が、0.05μm〜1μmのAu微粒子により形成されており、第1の開口部11の周囲に形成される部分41及び第2の開口部12の周囲に形成される部分42は幅W1が30μmとなるように形成される。また、第1の開口部11の周囲に形成される部分41と第2の開口部12の周囲に形成される部分42とを接続する接続部分43は幅W2が800μmとなるように形成されている。形成される接合金属層40は高さD1が60μmとなるように形成されており、接続部分43には、第1の開口部11と第2の開口部12とを空間的に接続するため、幅W3が600μm、高さD2が20μmとなる空洞領域44が形成されている。
このように形成される接合金属層40について、より詳細に説明する。前述したように、接合金属層40は、金属微粒子、即ち、粒径が0.05μm〜1.0μm程度のAu微粒子により形成されている。このようなAu微粒子を用いた接合では、接合金属層40により接合される基板を200℃に加熱した状態で荷重を加えることにより接合することができる。このようにして接合するAu微粒子接合においては、サイズ効果によりバルクのAu金属の融点に比べて、相当低い温度において金属微粒子間の結合が始まる。この結合部分は、小さい加圧エネルギーで変形することから、Au微粒子接合においては、200℃程度の低温の接合温度であっても、100MPa等の圧力で加圧することにより、十分な強度の接合を行うことができる。このような接合がされた後においては、金属微粒子間における空間がなくなり、バルク状態となるため耐熱性が高い、気密封止が可能等の特徴を有している。また、更に、Au微粒子パターンの接合前後の変形量が大きいことから、接合面の段差や粗さの許容性が高い等の特徴も有している。
次に、Au微粒子を用いた接合方法の一般的な手順について説明する。粒径が0.05μm〜1.0μm程度のAu微粒子を湿式還元法により作製し、有機溶剤にAu微粒子を分散させたスラリーを作製する。接合対象となる一方の基板の表面に接合部金属膜を形成し、次に、Au微粒子により形成される接合金属層が形成される領域に開口を有するレジストパターンを形成し、有機溶剤にAu微粒子を分散させたスラリーを流し込み、有機溶剤を揮発させる。
次に、ブレードを用いてレジストパターン上の余分なAu微粒子を除去した後、70℃〜100℃に加温する。次に、レジストを有機溶剤等により除去することによりAu微粒子により所望の形状の接合金属層を形成することができる。
この方法は、更に量産性に適した方法に発展させることができ、このような方法としては、例えば、後述する転写法が挙げられる。この方法においては、接合対象となる基板ではなく、一方の面の全面にTi膜等が形成されたガラス基板からなるキャリア基板を用いる。この方法では、最初にキャリア基板の上に、前述と同様の方法により、Au微粒子による接合金属層を形成する。このように形成された接合金属層を接合対象となる基板である本体基板の他方の面に形成された接合部金属膜に約150℃の温度で押し当てる。この後、室温まで冷却した後、キャリア基板を剥がすことにより、本体基板の他方の面の接合部金属膜の上に接合金属層を形成することができる。
次に、本実施の形態において、本体基板10の他方の面に形成された接合部金属膜31の上に、Au微粒子により形成された空洞領域44を有する接合金属層40を形成する方法について、図6及び図7に基づきより詳細に説明する。このような空洞領域44を有する接合金属層40は、2種類のレジストパターンを用いて転写法により形成することができる。このような2種類のレジストパターンを形成するためには、2種類のフォトマスクが用いられる。
最初に、図6(a)に示されるように、キャリア基板60の上に、第1のレジストパターン61を形成する。この第1のレジストパターン61は、形成される接合金属層40の上層部40aを形成するためのものである。具体的には、キャリア基板60の上に、フォトレジストを塗布し、露光装置による露光、現像を行うことにより、第1のレジストパターン61を形成する。
次に、図6(b)に示されるように、有機溶剤にAu微粒子を分散させたスラリーを第1のレジストパターン61の形成されている面に流し込み、有機溶剤を揮発させた後、ブレードを用いてレジストパターン61の上の余分なAu微粒子を除去する。この後、70℃〜100℃に加温し、接合金属層40の上層部40aを形成する。
次に、図6(c)に示されるように、第1のレジストパターン61及び接合金属層40の上層部40aの上に、第2のレジストパターン62を形成する。この第2のレジストパターン62は、形成される接合金属層40の下層部40bを形成するためのものである。具体的には、キャリア基板60に形成された第1のレジストパターン61及び接合金属層40の上層部40aの上にフォトレジストを塗布し、露光装置による露光、現像を行うことにより、第2のレジストパターン62を形成する。この際、接続部分43となる部分の上部層40aの上の一部においても、第2のレジストパターン62を形成することにより、上部層40aの上に形成された第2のレジストパターン62により空洞領域44が形成される。
次に、図7(a)に示されるように、有機溶剤にAu微粒子を分散させたスラリーを第2のレジストパターン62の形成されている面に流し込み、有機溶剤を揮発させた後、ブレードを用いてレジストパターン62の上の余分なAu微粒子を除去する。この後、70℃〜100℃に加温し、接合金属層40の上層部40aの上に下層部40bを形成する。このように形成された上層部40aと下層部40bにより接合金属層40が形成される。
次に、図7(b)に示されるように、有機溶剤等により、第1のレジストパターン61及び第2のレジストパターン62を除去する。これにより、キャリア基板60の上に、空洞領域44に相当する凹部を有する所望の形状の接合金属層40を形成することができる。
次に、図7(c)に示されるように、本体基板10の他方の面において、接合部金属膜31が形成されている所定の位置に、接続金属層40が位置するように、キャリア基板60の位置合せをした後、接続金属層40を本体基板10の接合部金属膜31に仮接続する。この仮接続は、前述した接合温度である200℃よりも低い温度、例えば、150℃で行われる。これにより、接続金属層40は本体基板10の一方の面の接合部金属膜31の上に、空洞領域44が形成された状態で接続される。
尚、上記においては、キャリア基板60を用いて転写する方法について説明したが、第2の透明基板50の上に、直接接続金属層40を形成する方法であってもよく、また、本体基板10の接続部金属膜31の上に直接接続金属層40を形成する方法であってもよい。
次に、図8に示されるように、第2の透明基板50の一方の面に、接合部金属膜32を形成する。尚、第2の透明基板50は、厚さが0.1mm〜3mmであって、例えば、可動イオンを含有するホウケイ酸ガラス等により形成されたガラスウェハにより形成されている。図8(a)は、この工程における上面図であり、図8(b)は、図8(a)における一点鎖線8A−8Bにおいて切断した断面図である。
具体的には、第2の透明基板50の一方の面に、フォトレジストを塗布、または、ドライフィルムレジストを付着させた後、露光装置による露光、現像を行うことにより、接合部金属膜32が形成される領域に開口部を有する不図示のレジストパターンを形成する。本実施の形態においては、フォトレジストの塗布は、例えば、スピンコートやスプレイコートにより行われる。この後、スパッタリング又は真空蒸着により、金属積層膜を成膜した後、有機溶剤に浸漬させることにより、レジストパターンの上に形成された金属積層膜をレジストパターンとともにリフトオフにより除去する。これにより、残存する金属積層膜により接合部金属膜32が形成される。このように形成される接合部金属膜32は、本体基板10の他方の面に形成されている接続金属層40の形状に対応した形状で形成されており、接続金属層40の形状よりも若干大きな形状で形成される。
尚、この際、スパッタリングや真空蒸着により成膜する金属積層膜としては、Ti/Pt/Au、Cr/Pt/Au、Ti/Ni/Au等からなる金属積層膜が挙げられる。また、接合部金属膜32は、上記以外の方法により形成してもよく、例えば、メタルマスクを用いてメタルマスクの開口部に金属積層膜を成膜することにより、接合部金属膜32を形成してもよい。このような、接合部金属膜32は、後述するようにAu微粒子接合を行う際、Au微粒子の接合を良好に行うために形成される。
次に、図9に示されるように、本体基板10における第2の開口部12の内部に、アルカリ金属発生材料70を設置し、本体基板10の他方の面の接合金属層40と第2の透明基板50とを仮接合する。この後、アルカリ金属発生材料70にレーザ光を照射することによりアルカリ金属ガスを発生させる。尚、図9(a)及び図9(b)は、この工程における断面図である。即ち、図9(a)は、図5(a)における一点鎖線5A−5Bに対応する部分で切断した断面図であり、図9(b)は、図5(a)における一点鎖線5C−5Dに対応する部分で切断した断面図である。
具体的には、高真空に真空引きした後の減圧チャンバー内に、Ne、Ar、Xe、Kr、N2のうちから選ばれる1又は2以上からなるバッファガスを導入し、減圧チャンバー内部の圧力を0.01kPa〜1000kPaにする。この後、アルカリ金属発生材料70が設置されている本体基板10と第1の透明基板20とが接合されたもの及び第2の透明基板50を減圧チャンバー内に設置し、200℃に加熱し、30MPaの圧力で本体基板10の他方の面に第2の透明基板50を仮接合する。
この仮接合においては、200℃の温度において、後述する本接合の圧力である100MPaよりも低い圧力である30MPaの圧力で行われる。これにより、本体基板10の他方の面にける接続金属層40の高さD3は、45μmとなり、接続金属層40の空洞領域44の高さD4は、5μmとなるが、空洞領域44は維持された状態にある。また、この仮接合により、本体基板10の他方の面と第2の透明基板50の一方の面とは、接続金属層40により第1の開口部11及び第2の開口部12の周囲において接合されているため、第1の開口部11及び第2の開口部12を含む領域は、密閉される。尚、本実施の形態においては、この仮接合を第1の接合または第1の接合工程と記載する場合がある。
この後、減圧されたチャンバー内より、本体基板10と第2の透明基板50とが仮接合されたものを取り出し、アルカリ金属発生材料70に、集光レンズ71により集光されたレーザ光を照射し加熱する。これにより、アルカリ金属発生材料70よりアルカリ金属を発生させる。このように、第2の開口部12において、アルカリ金属発生材料70より発生したアルカリ金属ガスは、接合金属部40における高さD4が約5μmとなった空洞領域44を通り、第1の開口部11に拡散し、第1の開口部11にアルカリ金属ガスが供給される。
尚、レーザ光の光源としては出力が、数W程度の630nm帯、808nm帯、940nm帯、980nm帯、1550nm帯の半導体レーザ、1064nmのNd:YAGレーザ、1455nm帯ラマンファイバーレーザ、10μm帯CO2レーザ等が挙げられる。レーザ光により加熱される温度は、アルカリ金属発生材料70が、還元剤がTi、Alであり酸化剤がクロム酸塩の場合は700℃程度であり、還元剤がSiであり酸化剤がモリブデン酸塩の場合は900℃程度である。
次に、図10に示されるように、第1の開口部11にアルカリ金属ガスが充填されたものを、200℃の温度に加熱し、100MPaの圧力を加えることにより本体基板10と第2の透明基板50とを接合金属層40により接合する。これにより、接合金属層40の厚さD5は30μmとなり、空洞領域44は消失し、第1の開口部11と第2の開口部12の間は遮断されて空間的に分離され、第1の開口部11と第2の開口部12は、各々独立に密閉される。本実施の形態においては、この接合を本接合と記載する場合があり、この本接合を第2の接合または第2の接合工程と記載する場合がある。本実施の形態においては、第2の接合における接合温度は、第1の接合温度と同じ約200℃で行われる。尚、図10(a)及び図10(b)は、この工程における断面図である。即ち、図10(a)は、図5(a)における一点鎖線5A−5Bに対応する部分で切断した断面図であり、図10(b)は、図5(a)における一点鎖線5C−5Dに対応する部分で切断した断面図である。
次に、図11に示されるように、第1の開口部11の接合金属層40の周囲を破線で示される分離ラインに沿って、ダイシングにより切断する。尚、図11(a)は、この工程における上面図であり、図11(b)は、図11(a)における一点鎖線11A−11Bにおいて切断した断面図である。
これにより、図12に示されるように、本体基板10の一方の面に陽極接合により第1の透明基板20が接合され、他方の面に接合金属層40により第2の透明基板50が接合されている第1の開口部11をセル内部とするアルカリ金属セルを作製することができる。尚、図12(a)は、本実施の形態におけるアルカリ金属セルの上面図であり、図12(b)は、図12(a)における一点鎖線12A−12Bにおいて切断した断面図である。
このように作製されたアルカリ金属セルにおいては、不十分な条件において行われる陽極接合による接合がなされていないため、アルカリ金属セルの内部に含まれるアルカリ金属ガスの純度が高く、不純物が少ない。また、アルカリ金属セルの内部には、アルカリ金属を発生させた後のアルカリ金属発生材料70の残渣等が残存していないため、アルカリ金属セル内におけるバッファガスの圧力変動が少なく、熱容量が小さい。
よって、本実施の形態においては、長期信頼性が高く温度制御が容易なアルカリ金属セルを提供することができる。これにより、後述するように、信頼性の高く周波数安定度が高い原子発振器を提供することができる。また、本実施の形態における製造方法により作製されたアルカリ金属セルは、後述する原子発振器以外にも、磁気センサに用いることも可能である。この磁気センサは、原子発振器と同じ原理を利用する2種類の共鳴光による量子干渉効果による光吸収特性により外部磁場による超微細構造エネルギー準位間のエネルギーを検出し外部磁場の強度を計測するものである。また、本実施の形態におけるアルカリ金属セルは、アルカリ金属原子の超微細構造エネルギー準位間の遷移を利用する他の原理を利用した原子時計や磁気センサにも用いることが可能である。
また、本実施の形態におけるアルカリ金属セルの製造方法においては、本体基板10に第1の開口部11に相当するものを複数形成することにより、複数のアルカリ金属セルを同時に製造することができる。これにより、低コストでアルカリ金属セルを製造することができる。
具体的には、図13に示されるように、本体基板10に複数の第1の開口部11と、一つの第2の開口部12を形成することり、低コストでアルカリ金属セルを製造することができる。この際、第1の開口部11と第2の開口部12との間における接続金属層40には、第1の開口部11と第2の開口部12とを接続するための不図示の空洞領域が形成されている。この空洞領域を介してアルカリ金属ガスが第2の開口部12より各々第1の開口部11に供給された後に、本接合を行うことにより空洞領域が塞がれる。これにより、各々の第1の開口部11は空間的に分離される。この後、ダイシング等により、破線で示される分離ラインに沿って、各々の第1の開口部11ごとに分離することにより、第1の開口部11をセル内部とするアルカリ金属セルを複数同時に作製することができる。尚、図13(a)は、この製造方法における途中の工程の上面図であり、図13(b)は、図13(a)における一点鎖線13A−13Bにおいて切断した断面図である。
このように、一つの第2の開口部12及び1回のアルカリ金属発生材料へのレーザ光の照射により、第1の開口部11により同時に複数のアルカリ金属セルを作製することができるため、低コストでアルカリ金属セルを作製することができる。
また、上記においては、本体基板10にはSi基板を用いた場合について説明したが、本体基板10は、他の半導体材料、セラミックス、金属材料等により形成されたものであってもよく、例えば、ステンレスにより形成されたものであってもよい。また、第1の透明基板20及び第2の透明基板50には、ガラス基板を用いた場合について説明したが、第1の透明基板20及び第2の透明基板50は、光を透過する材料により形成されているものであればよい。具体的には、第1の透明基板20及び第2の透明基板50は、両面研磨された石英基板、サファイア基板等であってもよい。
また、本体基板10と第2の透明基板50とは、Au微粒子により形成された接合金属層40を用いた接合について説明したが、Ag微粒子や、Cu微粒子により形成された接合金属層40を用いた接合であってもよい。
次に、本実施の形態の変形例について説明する。
(変形例1)
図14に基づき、本実施の形態における変形例1について説明する。本実施の形態における変形例1は、本体基板10側に、接合金属層40を形成するのではなく、第2の透明基板50側に接合金属層40を形成して、アルカリ金属セルを製造する製造方法である。具体的には、図6(a)から図7(b)に示す工程と同様の工程により、キャリア基板60の上に形成された空洞領域44を有する所望の形状の接合金属層40を、第2のガラス基板50の接合部金属膜32に形成しアルカリ金属セルを製造するものである。このように、第2の透明基板50に形成された接合金属層40を本体基板10に他方の面に形成された接合部金属膜31に仮接合することにより、本実施の形態におけるアルカリ金属セルを製造することができる。本変形例においても、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。尚、接合金属層40は、図6等に示されるように、キャリア基板60の上に一旦形成した後、第2のガラス基板50の接合部金属膜32の上に仮接続することにより形成してもよい。
(変形例2)
次に、図15に基づき、本実施の形態における変形例2について説明する。本実施の形態における変形例2は、本体基板10において、接合金属層40の空洞領域44が形成されていた領域に、第1の開口部11と第2の開口部12とを空間的に接続する接続溝13を形成する製造方法である。従って、この変形例においては、接合金属層40には空洞領域44は形成されていなくともよい。
図15(a)に示されるように、本体基板10の他方の面に形成された接続溝13は、幅W6が600μm、深さD6が20μmとなるように形成されており、接続溝13により、第1の開口部11と第2の開口部12とが空間的に接続されるように形成されている。また、接続溝13の側面は、テーパー状に形成されており、接続溝13を含む領域の上には、接続金属層40と接触する接続部金属膜31が形成されている。また、第2の透明基板50の一方の面には、接続部金属膜31に対応する領域に接続部金属膜32が形成されており、接続部金属膜32の上には、接続金属層40が形成されている。
次に、図15(b)に示されるように、本体基板10の他方の面に、接続金属層40により、第2の透明基板50の一方の面を仮接合する。尚、この仮接合は、上述した第1の接合に相当するものであり、本体基板10の接合部金属膜31と接合金属層40との間には、接続溝13が形成されている領域に、接合部金属膜31と接続金属層40とに挟まれた領域に空間が形成される。このように形成された空間により、第1の開口部11と第2の開口部12とは、空間的に接続されている。
次に、図15(c)に示されるように、不図示のアルカリ金属発生材料にレーザ光を照射し、アルカリ金属ガスを発生させた後、本体基板10の他方の面に、接続金属層40により、第2の透明基板50の一方の面を本接合する。尚、この本接合は、上述した第2の接合に相当するものであり、接合金属層40により、接続溝13に形成されていた空間は、塞がれ、第1の開口部11と第2の開口部12とは空間的に分離される。
これにより、本変形例におけるアルカリ金属セルを作製することができる。
次に、本体基板10に形成される接続溝13の形成方法について説明する。本体基板10に形成される接続溝13は、本体基板10の他方の面にフォトレジストを塗布した後、露光装置による露光、現像を行うことにより、接続溝13が形成される領域に開口を有する不図示のレジストパターンを形成する。この後、レジストパターンの形成されていない領域のSiをウェットエッチングまたはドライエッチングにより除去することにより接続溝13を形成する。この後、不図示のレジストパターンは有機溶剤等により除去する。接続溝13を形成する際のドライエッチングとしてはICPエッチング等が挙げられ、ウェットエッチングとしてはKOH水溶液をエッチング液として用いた方法等が挙げられ、これ以外にもサンドブラスト法や機械加工法等を用いて形成してもよい。
このように、接続溝13を形成する際に、レジストパターンを形成する工程を要する場合には、製造の便宜上、第1の開口部11及び第2の開口部12が形成される前に、接続溝13を形成する方法が好ましい。本変形例においても、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
(変形例3)
次に、図16に基づき、本実施の形態における変形例3について説明する。本実施の形態における変形例3は、第2の透明基板50において、接合金属層40の空洞領域44が形成されていた領域に、第1の開口部11と第2の開口部12とを空間的に接続する接続溝53を形成した製造方法である。従って、この変形例においても、接合金属層40には空洞領域44は形成されてはいなくともよい。
第2の透明基板50に形成される接続溝53は、例えば、幅W7が600μm、深さD7が20μmとなるように形成されており、接続溝53により、第1の開口部11と第2の開口部12とが空間的に接続されるように形成されている。また、接続溝53の側面は、テーパー状に形成されており、接続溝53を含む領域の上には、接続金属層40と接触する接続部金属膜32が形成されている。
第2の透明基板50に形成される接続溝53は、第2の透明基板50に接合部金属膜32が形成される前に形成することが好ましい。第2の透明基板50に形成される接続溝53は、第2の透明基板50の他方の面にフォトレジストを塗布した後、露光装置による露光、現像を行うことにより、接続溝53が形成される領域に開口を有する不図示のレジストパターンを形成する。この後、レジストパターンの形成されていない領域をウェットエッチングまたはドライエッチングにより除去することにより接続溝53を形成する。この後、不図示のレジストパターンは有機溶剤等により除去する。接続溝53を形成する際のドライエッチングとしては、フッ素系ガスを用いたドライエッチングが挙げられるが、特に、エッチング速度が大きいCF4等を用いた磁気中性線プラズマ(Neutral Loop Discharge:NLD)法等が好ましい。また、ウェットエッチングとしてはフッ酸系水溶液をエッチング液として用いた方法等が挙げられる。
本変形例においても、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
〔第2の実施の形態〕
次に、第2の実施の形態におけるアルカリ金属セルの製造方法について、図17及び図18に基づき説明する。本実施の形態は、本体基板10を2枚のSi基板により形成したアルカリ金属セルの製造方法である。このように、2枚のSi基板を用いることにより、セル内における光路長が長いアルカリ金属セル、例えば、セル内における光路長が約3mmのアルカリ金属セルを作製することができる。
本実施の形態においては、本体基板10に相当するものが、第1の本体基板110と第2の本体基板120により形成されている。このように、2枚の第1の本体基板110及び第2の本体基板120により、本体基板10に相当するものを形成することにより、セル内における光路長を長くすることができる。
本実施の形態においては、図17に示されるように、第1の本体基板110の一方の面に第1の透明基板20が接合されているものと、第2の本体基板120の一方の面に第2の透明基板50が接合されているものとを作製する。尚、図17(a)及び図17(b)は、この工程における断面図であり、図17(a)は、図5(a)における一点鎖線5A−5Bに対応する部分で切断した断面図、図17(b)は、図5(a)における一点鎖線5C−5Dに対応する部分で切断した断面図である。
具体的には、第1の本体基板110の一方の面に第1の開口部111及び第2の開口部112を第1の実施の形態と同様の方法により作製した後、第1の本体基板110の一方の面に第1の透明基板20を陽極接合等により接合する。この後、第1の本体基板110の他方の面において、第1の開口部111及び第2の開口部112の周囲、第1の開口部111と第2の開口部112との間の領域に接続部金属膜31を形成する。
同様に、第2の本体基板120の一方の面に第1の開口部121及び第2の開口部122を第1の実施の形態と同様の方法により作製した後、第2の本体基板120の一方の面に第2の透明基板50を陽極接合等により接合する。この後、第2の本体基板120の他方の面において、第1の開口部121及び第2の開口部122の周囲、第1の開口部121と第2の開口部122との間の領域に接続部金属膜32を形成し、更に、接続部金属膜32の上に、接続金属層40を形成する。形成される接続金属層40は、第1の実施の形態と同様に形成されており、第1の開口部111及び121と第2の開口部112及び122とを空間的に接続するための空洞領域44が形成されている。
第1の本体基板110及び第2の本体基板120は、両面研磨された厚さが1.5mmのSi基板が用いられている。また、第1の透明基板20及び第2の透明基板50は、厚さが0.1mm〜3mmであって、例えば、可動イオンを含有するホウケイ酸ガラス等により形成されたガラスウェハにより形成されている。
本実施の形態においては、第2の本体基板120に接続金属層40が仮接続されている点と、形成される接続金属層40の厚さを除き、第1の実施の形態と同様の形状で形成されている。具体的には、接続金属層40において、空洞領域44を除く領域の厚さD8は70μm、空洞領域44が形成される領域の厚さD9は45μmとなるように形成されている。尚、接続金属層40の形成方法は、第1の実施の形態と同様の方法により形成されている。
この後、第1の本体基板110における第2の開口部112にアルカリ金属発生材料70を設置した後、第1の本体基板110の他方の面に形成されている接続部金属膜31に、第2の本体基板120の他方の面に形成されている接続金属層40を仮接合する。
具体的には、高真空に真空引きした後の減圧チャンバー内に、Ne、Ar、Xe、Kr、N2のうちから選ばれる1又は2以上からなるバッファガスを導入し、減圧チャンバー内部の圧力を0.01kPa〜1000kPaにする。この後、減圧チャンバー内に、アルカリ金属発生材料70が設置されている第1の本体基板110と第1の透明基板20とが接合されたもの及び第2の本体基板120と第2の透明基板50とが接合されたものを設置する。この後、200℃に加熱した状態で、30MPaの圧力で、第1の本体基板110と第2の本体基板120の他方の面とを接合金属層40により仮接合する。
この仮接合においては、200℃の温度において、後述する本接合の圧力である100MPaよりも低い圧力である30MPaの圧力で行われる。これにより、接続金属層40の高さD8は、70μmから50μmに減少し、空洞領域44における高さD9は5μmとなるが、空洞領域44は維持された状態にある。また、この仮接合により、第1の本体基板110の他方の面と第2の本体基板120の他方の面とは、接続金属層40により第1の開口部111及び121、第2の開口部112及び122の周囲において接合される。よって、第1の開口部111及び121、第2の開口部112及び122を含む領域は、密閉される。尚、本実施の形態におけるこの仮接合は、第1の実施の形態における第1の接合と同様のものである。
この後、減圧されたチャンバー内より、第1の本体基板110と第2の本体基板120とが仮接合されたものを取り出し、アルカリ金属発生材料70に、集光レンズにより集光されたレーザ光を照射し加熱する。これにより、アルカリ金属発生材料70よりアルカリ金属ガスを発生させる。このように、第2の開口部112において、アルカリ金属発生材料70より発生したアルカリ金属ガスは、接合金属部40における高さD9が約5μmとなった空洞領域44を通り、第1の開口部111及び121により形成される領域に拡散する。このようにアルカリ金属ガスが拡散することにより、第1の開口部111及び121により形成される領域には、アルカリ金属ガスが供給される。
尚、レーザ光の光源としては出力が数W程度の630nm帯、808nm帯、940nm帯、980nm帯、1550nm帯の半導体レーザ、1064nmのNd:YAGレーザ、1455nm帯ラマンファイバーレーザ、10μm帯CO2レーザ等が挙げられる。本実施の形態においては、レーザ光の光源としては、例えば、約5Wの出力を有する808nm帯の半導体レーザが用いられている。レーザ光により加熱される温度は、アルカリ金属発生材料70が、還元剤がTi、Alであり酸化剤がクロム酸塩の場合は700℃程度であり、還元剤がSiであり酸化剤がモリブデン酸塩の場合は900℃程度である。
次に、図18に示されるように、第1の開口部111および121からなる領域にアルカリ金属ガスが充填されたものを、200℃の温度に加熱し、100MPaの圧力を加えて、第1の本体基板110と第2の本体基板120とを接合金属層40により接合する。これにより、接合金属層40の厚さD10は32μmとなり、空洞領域44は消失し、第1の開口部111及び121により形成される領域と第2の開口部112及び122により形成される領域の間は遮断されて空間的に分離される。これにより、第1の開口部111及び121により形成される領域と第2の開口部112及び122により形成領域とは、各々独立に密閉される。尚、本実施の形態におけるこの接合は本接合であり、第1の実施の形態における第2の接合である。尚、図18(a)及び図18(b)は、この工程における断面図であり、図18(a)は、図5(a)における一点鎖線5A−5Bに対応する部分で切断した断面図、図18(b)は、図5(a)における一点鎖線5C−5Dに対応する部分で切断した断面図である。
次に、接合金属層40の周囲をダイシングにより切断することにより、第1の開口部111及び121により、セル内部が形成される本実施の形態におけるアルカリ金属セルを形成することができる。
本実施の形態における製造方法により製造されたアルカリ金属セルを原子発振器に用いた場合、以下のような利点がある。具体的には、原子発振器であるCPT方式原子時計において、CPT観測レーザ光の光路長を3mmとする場合、1枚の本体基板で光路長空間を構成しようとすると、本体基板に深い第1の開口部を形成することになる。このような本体基板に深い第1の開口部を形成することは、工程が複雑になるため、歩留りの低下を招く。また、本体基板がSi基板である場合には、特に顕著であるが、このような深い第1の開口部を形成するためには、ドライエッチング法、ウェットエッチング法等においても、エッチング速度の速い高価な装置が必要となる。このため、製造コストの上昇を招いてしまう。本実施の形態においては、本体基板に相当するものを2枚の基板により形成することにより、歩留りの低下を抑制するとともに、製造コストが上昇することを抑制することができる。
尚、上記以外の内容については、第1の実施の形態と同様である。
〔第3の実施の形態〕
次に、第3の実施の形態におけるアルカリ金属セルの製造方法について、図19及び図20に基づき説明する。本実施の形態は、本体基板10の一方の面と第1の透明基板20との接合及び本体基板10の他方の面と第2の透明基板50との接合を、ともにAu微粒子により形成された接合金属層を用いて接合するものである。
本実施の形態においては、図19に示されるように、本体基板10の一方の面に接続部金属膜231を形成し、他方の面に接続部金属膜31を形成する。また、第1の透明基板20の一方の面に接続金属層240を形成し、第2の透明基板50の一方の面に接続金属層40を形成する。尚、図19(a)及び図19(b)は、この工程における断面図であり、図19(a)は、図5(a)における一点鎖線5A−5Bに対応する部分で切断した断面図、図19(b)は、図5(a)における一点鎖線5C−5Dに対応する部分で切断した断面図である。
具体的には、最初に、本体基板10に第1の開口部11と第2の開口部12を形成する。本体基板10は、両面が鏡面研磨された厚さが0.2mm〜5.0mmのSi基板、例えば、厚さが1.2mmのSi基板である。
第1の開口部11及び第2の開口部12の形成方法は、本体基板10の一方の面にフォトレジストを塗布し、露光装置による露光、現像を行うことにより、第1の開口部11及び第2の開口部12に開口を有する不図示のレジストパターンを形成する。この後、Si基板10を貫通するまで、レジストパターンの形成されていない領域のSiをICPエッチング等のドライエッチングにより除去する。このドライエッチングは、SF6、C4F8ガスを交互に供給するボッシュプロセスにより行われる。この後、レジストパターンは有機溶剤等により除去する。
これにより、本体基板10に第1の開口部11と第2の開口部12を形成することができる。このように形成された第1の開口部11は、直径が約3mmの円形の開口部であり、第2の開口部12は、縦横が約3mm×3mmの角形の開口部である。また、第1の開口部11から第2の開口部12までの最短の長さは、0.05mm〜30mm、例えば、2.0mmとなるように形成する。
上記における説明では、第1の開口部11及び第2の開口部12は、ドライエッチングにより形成する場合について説明したが、ウェットエッチング、サンドブラスト、イオンミリング等によっても形成することができる。
次に、本体基板10の一方の面に接合部金属膜231を形成し、他方の面に31を形成する。具体的には、本体基板10の一方の面に、フォトレジストを塗布、または、ドライフィルムレジストを付着させた後、露光装置による露光、現像を行うことにより、接合部金属膜231が形成される領域に開口部を有する不図示のレジストパターンを形成する。本実施の形態においては、フォトレジストの塗布は、例えば、スピンコートやスプレイコートにより行われる。この後、スパッタリング又は真空蒸着により、金属積層膜を成膜した後、有機溶剤に浸漬させることにより、レジストパターンの上に形成された金属積層膜をレジストパターンとともにリフトオフにより除去する。これにより、残存する金属積層膜により接合部金属膜231が形成される。このように形成される接合部金属膜231は、本体基板10の一方の面において、第1の開口部11の周囲と第2の開口部12の周囲及び、第1の開口部11と第2の開口部12との間の部分に形成される。
同様に、本体基板10の他方の面に、フォトレジストを塗布、または、ドライフィルムレジストを付着させた後、露光装置による露光、現像を行うことにより、接合部金属膜31が形成される領域に開口部を有する不図示のレジストパターンを形成する。この後、スパッタリング又は真空蒸着により、金属積層膜を成膜した後、有機溶剤に浸漬させることにより、レジストパターンの上に形成された金属積層膜をレジストパターンとともにリフトオフにより除去する。これにより、残存する金属積層膜により接合部金属膜31が形成される。このように形成される接合部金属膜31は、本体基板10の他方の面において、第1の開口部11の周囲と第2の開口部12の周囲及び、第1の開口部11と第2の開口部12との間の部分に形成される。
尚、この際、スパッタリングや真空蒸着により成膜する金属積層膜としては、Ti/Pt/Au、Cr/Pt/Au、Ti/Ni/Au等からなる金属積層膜が挙げられる。また、接合部金属膜31及び231は、上記以外の方法により形成してもよく、例えば、メタルマスクを用いてメタルマスクの開口部に金属積層膜を成膜することにより、接合部金属膜31及び231を形成してもよい。このような、接合部金属膜231及び31は、後述するようにAu微粒子接合を行う際、Au微粒子の接合を良好に行うために形成される。
この後、第1の透明基板20の一方の面に、接合部金属膜232を形成し、第2の透明基板50の一方の面に、接合部金属膜32を形成する。尚、第1の透明基板20及び第2の透明基板50は、厚さが0.1mm〜3mmであって、例えば、可動イオンを含有するホウケイ酸ガラス等により形成されたガラスウェハにより形成されている。
具体的には、第1の透明基板20の一方の面に、フォトレジストを塗布、または、ドライフィルムレジストを付着させた後、露光装置による露光、現像を行うことにより、接合部金属膜232が形成される領域に開口部を有する不図示のレジストパターンを形成する。本実施の形態においては、フォトレジストの塗布は、例えば、スピンコートやスプレイコートにより行われる。この後、スパッタリング又は真空蒸着により、金属積層膜を成膜した後、有機溶剤に浸漬させることにより、レジストパターンの上に形成された金属積層膜をレジストパターンとともにリフトオフにより除去する。これにより、残存する金属積層膜により接合部金属膜232が形成される。このように形成される接合部金属膜232は、本体基板10の一方の面に形成されている接続部金属膜231の形状に対応した形状で形成される。
また、第2の透明基板50の一方の面に、フォトレジストを塗布、または、ドライフィルムレジストを付着させた後、露光装置による露光、現像を行うことにより、接合部金属膜32が形成される領域に開口部を有する不図示のレジストパターンを形成する。本実施の形態においては、フォトレジストの塗布は、例えば、スピンコートやスプレイコートにより行われる。この後、スパッタリング又は真空蒸着により、金属積層膜を成膜した後、有機溶剤に浸漬させることにより、レジストパターンの上に形成された金属積層膜をレジストパターンとともにリフトオフにより除去する。これにより、残存する金属積層膜により接合部金属膜32が形成される。このように形成される接合部金属膜32は、本体基板10の他方の面に形成されている接続部金属膜31の形状に対応した形状で形成される。
尚、この際、スパッタリングや真空蒸着により成膜する金属積層膜としては、Ti/Pt/Au、Cr/Pt/Au、Ti/Ni/Au等からなる金属積層膜が挙げられる。また、接合部金属膜32及び232は、上記以外の方法により形成してもよく、例えば、メタルマスクを用いてメタルマスクの開口部に金属積層膜を成膜することにより、接合部金属膜32を形成してもよい。このような、接合部金属膜32及び232は、後述するようにAu微粒子接合を行う際、Au微粒子の接合を良好に行うために形成される。
次に、第1の透明基板20における接合部金属膜232の上に、接合金属層240を形成する。接合金属層240は、粒径が、0.05μm〜1μmのAu微粒子により形成されている。接合金属層240は、空洞領域44が形成されていないことを除き、第1の実施の形態における接合金属層40を形成する方法と同様の方法により、同様の形状で形成されている。このように形成された接合金属層240の厚さは、60μmである。
同様に、第2の透明基板50における接合部金属膜32の上に、接合金属層40を形成する。接合金属層40は、粒径が、0.05μm〜1μmのAu微粒子により形成されている。接合金属層40は、第2の実施の形態における接合金属層40と同様のものであり、空洞領域44が形成されている。このように形成された接合金属層40の空洞領域44が形成されていない領域の厚さは60μmであり、空洞領域44が形成される領域の厚さは、40μmである。
次に、接合装置により本体基板10の一方の面に、第1の透明基板20に形成されている接合金属層240を接触させた状態で配置し、本体基板10における第2の開口部12の内部にアルカリ金属発生材料70を設置する。続いて、本体基板10の他方の面に、第2の透明基板50に形成されている接合金属層40を接触させた状態で配置する。
この後、高真空に真空引きした後の減圧チャンバー内に、Ne、Ar、Xe、Kr、N2のうちから選ばれる1又は2以上からなるバッファガスを導入し、減圧チャンバー内部の圧力を0.01kPa〜1000kPaにする。この後、減圧チャンバー内に、アルカリ金属発生材料70が設置されている本体基板10、第1の透明基板20、第2の透明基板50を設置する。この後、200℃に加熱した状態で、30MPaの圧力で、本体基板10の一方の面に、第1の透明基板20を接合金属層240により仮接合し、同時に、本体基板10の他方の面に、第2の透明基板50を接合金属層40により仮接合する。この仮接合は、第1の実施の形態における第1の接合に相当するものである。
この仮接合により、接合金属層240の高さは37μmとなり、接合金属層40の高さは45μmになり空洞領域44の高さは5μmになるが、空洞領域44は維持された状態にある。この状態においては、第1の開口部11と第2の開口部12の周囲において、本体基板10と第1の透明基板20とが接合金属層240により接合されており、本体基板10と第2の透明基板50とが接合金属層40により接合されている。よって、第1の開口部11、第2の開口部12、空洞領域44は、密閉された空間となる。
次に、図20に示されるように、本体基板10に第1の透明基板20及び第2の透明基板50が接合されたものを大気中に取り出した後、レーザ加熱装置に設置し、アルカリ金属発生材料70にレーザ光を照射し加熱する。これにより、アルカリ金属発生材料70からアルカリ金属ガスが発生し、空洞領域44を介し、第1の開口部11に拡散する。本実施の形態においては、アルカリ金属発生材料70として、還元剤がTi、Alであり、酸化剤がクロム酸塩であるCs発生剤を用いているため、第1の開口部11の内部には、Csガスが充填される。尚、アルカリ金属発生材料70に照射されるレーザ光の光源としては、5W程度の出力が可能な1455nm帯ラマンファイバーレーザを用いており、アルカリ金属発生材料70であるCs発生剤を700℃程度まで加熱している。
次に、第1の開口部11にアルカリ金属ガスが充填された本体基板10と第1の透明基板20及び第2の透明基板50が接合されたものを接合装置に戻す。この後、200℃に加熱して、100MPaの圧力を加え、本体基板10の一方の面に第1の透明基板20を接合し、他方の面に第2の透明基板50を接合する。これにより、接合金属層240の高さは25μmとなり、接合金属層40は全体の厚さが30μmとなり空洞領域44が消失する。これにより、第1の開口部11と第2の開口部12とは空間的に分離され、各々独立に密閉される、本実施の形態におけるこの接合は本接合であり、第1の実施の形態における第2の接合に相当するものである。尚、図20(a)及び図20(b)は、この工程における断面図であり、図20(a)は、図5(a)における一点鎖線5A−5Bに対応する部分で切断した断面図、図20(b)は、図5(a)における一点鎖線5C−5Dに対応する部分で切断した断面図である。
次に、接合金属層40の周囲をダイシングにより切断することにより、第1の開口部11により、セル内部が形成される本実施の形態におけるアルカリ金属セルを形成することができる。
本実施の形態においては、本体基板10と第1の透明基板20との接合、本体基板10と第2の透明基板50との接合に、陽極接合を用いることなく、Au微粒子接合を用いている。よって、長期的にも、O2、OH基グループ、H2Oの放出を抑制することができるため、アルカリ金属セルの信頼性を高くすることができる。
尚、上記以外の内容については、第1の実施の形態と同様である。
〔第4の実施の形態〕
次に、第4の実施の形態について説明する。第1の実施の形態等においては、接合装置により第1の接合である仮接合のなされたものを大気中に取り出し、レーザ加熱装置においてアルカリ金属ガスを発生させた後、再び接合装置に戻し、第2の接合である本接合を行うものである。この場合、第1の接合工程における仮接合では、接続金属層40等は、完全にはバルク化されておらず、十分なセルの密封性が得られる条件の範囲が狭い場合がある。本実施の形態は、第1の接合工程、アルカリ金属充填工程、第2の接合工程を行う際に、大気中に露出させることなく、減圧環境下又は不活性ガス雰囲気下において行う製造方法である。
図21には、本実施の形態における製造方法に用いられる装置を示す。この装置は、アルカリ金属発生チャンバー310と接合チャンバー320とを有しており、アルカリ金属発生チャンバー310と接合チャンバー320とは搬送部330において接合されており、これらの内部は密閉された空間となっている。搬送部330は、本体基板10に第1の透明基板20及び第2の透明基板50が接合されたもの等が通過することができるように形成されている。また、搬送部330には、アルカリ金属発生チャンバー310及び接合チャンバー320を独立に密閉することができるように、ゲートバルブ331が設けられている。
アルカリ金属発生チャンバー310には、レーザ光が照射される側に石英窓311が設けられており、アルカリ金属発生チャンバー310の内部を排気するための真空ポンプ312、ガスを導入するためのガス導入部313、圧力計314が接続されている。また、接合チャンバー320には、本体基板10に第1の透明基板20及び第2の透明基板50を接合するための接合機構部321が設けられている。更に、接合チャンバー320の内部を排気するための真空ポンプ322、ガスを導入するためのガス導入部323、圧力計324が接続されている。
本実施の形態においては、接合チャンバー320において、接合機構部321により本体基板10に第1の透明基板20及び第2の透明基板50を仮接合(第1の接合)した後、搬送部330を介し、アルカリ金属発生チャンバー310に移動させる。アルカリ金属発生チャンバー310においては、石英窓311を介し、アルカリ金属発生材料70にレーザ光を照射しアルカリ金属ガスを発生させ、第1の開口部11にアルカリ金属ガスを充填させる。この後、再び搬送部330を介し、アルカリ金属発生チャンバー310から接合チャンバー320に移動させた後、接合機構部321により本体基板10に第1の透明基板20及び第2の透明基板50を本接合(第2の接合)する。
尚、各々の工程を行う際には、搬送部330に設けられたゲートバルブ331は閉じられていてもよい。また、アルカリ金属発生チャンバー310または接合チャンバー320は、減圧下またはNe、Ar、Xe、Kr、N2のうちから選ばれる1又は2以上からなるガス雰囲気下であってもよい。
本実施の形態においては、本体基板10に第1の透明基板20及び第2の透明基板50において、仮接合(第1の接合)を行う工程、アルカリ金属ガスを発生させる工程、本接合(第2の接合)を行う工程を大気中に露出させることなく行うことができる。このため、製造されるアルカリ金属セルの歩留りを向上させることができる。尚、本実施の形態は、第1から第3の実施の形態におけるアルカリ金属セルの製造方法においても適用することが可能である。
〔第5の実施の形態〕
次に、第5の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1から第4の実施の形態において製造されたガスセルを用いた原子発振器である。図22に基づき本実施の形態における原子発振器について説明する。本実施の形態における原子発振器は、CPT方式の小型原子発振器であり、光源610、コリメートレンズ620、λ/4波長板630、アルカリ金属セル640、光検出器650、変調器660を有している。
光源610は、面発光レーザ素子が用いられている。アルカリ金属セル640には、第1から第4の実施の形態のいずれかにおいて製造されたガスセルであり、アルカリ金属としてCs(セシウム)原子ガスが封入されており、D1ラインの遷移を用いるものである。光検出器650には、フォトダイオードが用いられている。
本実施の形態のおける原子発振器では、光源610より出射された光をセシウム原子ガスが封入されたアルカリ金属セル640に照射し、セシウム原子における電子を励起する。アルカリ金属セル640を透過した光は光検出器650において検出され、光検出器650において検出された信号は変調器660にフィードバックされ、変調器660により光源610における面発光レーザ素子を変調する。
図23に、CPTに関連する原子エネルギー準位の構造を示す。二つの基底準位から励起準位に電子が同時に励起されると光の吸収率が低下することを利用する。面発光レーザは搬送波波長が894.6nmに近い素子を用いている。搬送波の波長は面発光レーザの温度、もしくは出力を変化させてチューニングすることができる。温度や出力を上げると長波長にシフトするため、アルカリ金属セルの光密度の変動は好ましくないので温度変化を利用するのが好ましい。具体的に、波長の温度依存性は0.05nm/℃程度で調整できる。図24に示すように、変調をかけることで搬送波の両側にサイドバンドが発生し、その周波数差がCs原子の固有振動数である9.2GHzに一致するように4.6GHzで変調させている。図25に示すように、励起されたCsガスを通過するレーザ光はサイドバンド周波数差がCs原子の固有周波数差に一致した時に最大となる。よって、光検出器650の出力が最大値を保持するように変調器660においてフィードバックして光源610における面発光レーザ素子の変調周波数を調整する。原子の固有振動数が極めて安定なので変調周波数は安定した値となり、この情報がアウトプットとして取り出される。尚、波長が894.6nmの場合では、±1nmの範囲の波長の光源が必要となる。即ち、893.6nm〜895.6nmの範囲の波長の光源が必要となる。
本実施の形態における原子発振器は第1から第4の実施の形態において製造されたガスセルを用いているため、精度の高い原子発振器を低コストで作製し提供することができる。
また、本実施例ではアルカリ金属としてCsを用い、そのD1ラインの遷移を用いるために波長が894.6nmの面発光レーザを用いたが、CsのD2ラインを利用する場合は852.3nmを用いることもできる。また、アルカリ金属としてRb(ルビジウム)を用いることもでき、D1ラインを利用する場合は795.0nm、D2ラインを利用する場合は780.2nmを用いることができる。活性層の材料組成などは波長に応じて設計することができる。また、Rbを用いる場合の変調周波数は、87Rbでは3.4GHz、85Rbでは1.5GHzで変調させる。尚、これらの波長においても、±1nmの範囲の波長の光源が必要となる。即ち、CsのD2ラインを利用する場合は851.3nm〜853.3nmの範囲の波長の光源が必要となる。また、RbのD1ラインを利用する場合は794.0nm〜796.0nmの範囲の波長の光源が必要となる。また、RbのD2ラインを利用する場合は779.2nm〜781.2nmの範囲の波長の光源が必要となる。
また、図26は、本実施の形態における原子発振器の他の構造を示すものであり、光源610には、CsにおけるD1ライン遷移の波長894.35nmと同じ波長の単一モードで偏光が一定なレーザ光が出射されるVCSELが用いられている。アルカリ金属セル640は駆動電流により発生する磁界をキャンセルするように電流経路パターンを調整した2枚のITOヒータ641により挟まれている。また、地磁気などの磁気雑音をキャンセルする磁気シールドと、鋭いCPT共鳴信号のピークを得るためにセシウムの超微細準位にゼーマン分裂させる磁場を発生するためのコイルの図示は省略している。尚、λ/4波長板630とアルカリ金属セル640との間には、NDフィルター670が設けられている。
アルカリ金属セル640を透過した光は光検出器650によって検出され、光検出器650により検出された信号に基づき第1のロックインアンプ671において直流電流を数十kHzで変調し、VCSEL駆動用電源672及びバイアスティー673を介し、光源610であるVCSELの出力波長を最大吸収波長にロックさせることができる。また、光検出器650により検出された信号に基づき第2のロックインアンプ674において数kHzの変調波を発生させ電圧制御水晶発振記(VCO)675、マイクロ波電源676を介し、CPT信号が時計遷移周波数の半分の周波数(νclock/2:4.596GHz)にロックさせることができる。
以上、本発明の実施に係る形態について説明したが、上記内容は、発明の内容を限定するものではない。