JP2017227584A - ガスセルの製造方法および磁気計測装置の製造方法 - Google Patents

ガスセルの製造方法および磁気計測装置の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】封止部材から発生したガスの侵入を抑止してセル内の真空度を向上できるガスセルの製造方法および磁気計測装置の製造方法を提供する。【解決手段】ガスセル10の製造方法は、封止部材30を塗布したリッド19と開口18を有し開口18を仮栓36で封止したセル12とを減圧した封止装置38の内部に配置し、リッド19を加熱する第1工程と、封止装置38の内部においてセル12から仮栓36を外す第2工程と、封止装置38の内部においてリッド19を開口18に配置し、リッド19を加熱して封止部材30を介してセル12と接合し、開口18を封止する第3工程と、を含むことを特徴とする。【選択図】図7

Description

本発明は、ガスセルの製造方法および磁気計測装置の製造方法に関する。
アルカリ金属ガスが封入されたガスセルに直線偏光を照射し、偏光面の回転角に応じて磁場を測定する光ポンピング式の磁気計測装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、アルカリ金属が封入されたアンプルをセル内部に収容してセルを封止し、アンプルにレーザー光を照射することによりアンプルのガラス管に貫通孔を形成し、アンプル内のアルカリ金属を蒸発させて、その蒸気(ガス)をセル内部に充満させたガスセルの構成が開示されている。特許文献1の記載によれば、セルは、ガラスからなるパッケージ(容器)とリッド(蓋部)とを低融点ガラスなどの封止部材を介して真空環境下で接合して密封される。
特開2012−183290号公報
しかしながら、特許文献1に記載のガスセルの製造方法では、封止部材から発生するガスに対する配慮がなされていない。すなわち、特許文献1では、セルを封止する際に加熱された封止部材からガスが発生すると、内部の真空度が低下した状態でセルが封止されてしまうという課題がある。また、アンプル内のアルカリ金属を蒸発させる際に、セル内部に封止部材から発生したガスが入っていると、アルカリ金属のガスが封止部材から発生したガスと反応してしまうという課題がある。このようなガスセルを用いた場合、磁気計測装置の性能(感度、計測精度等)が著しく低下することとなる。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
[適用例1]本適用例に係るガスセルの製造方法は、封止部材を塗布したリッドと、開口を有し前記開口を仮栓で封止したセルと、を減圧した空間に配置し、前記リッドを加熱する第1工程と、前記減圧した空間において、前記セルから前記仮栓を外す第2工程と、前記減圧した空間において、前記リッドを前記開口に配置し、前記リッドを加熱して前記封止部材を介して前記セルと接合し、前記開口を封止する第3工程と、を含むことを特徴とする。
本適用例の製造方法によれば、第1工程において、減圧した空間で封止部材を塗布したリッドを加熱しリッドを介して封止部材を加熱するので、第3工程においてリッドを介して封止部材を加熱して開口を封止する前に封止部材からガスを発生させ抜いておくことができる。そのため、内部の真空度が低下した状態でセルが封止されることを抑止できる。また、第1工程で封止部材からガスを発生させる際、セルの開口が仮栓で封止されているので、封止部材から発生したガスがセル内部に侵入することを抑止できる。さらに、第1工程から第3工程までが減圧した同一の空間において実行されるので、別の空間で封止部材を加熱した後、セルが配置された空間で封止部材を加熱して開口を封止する場合と比べて、セル内部の真空度の低下や外部からの不純物の侵入を抑止できる。
[適用例2]上記適用例に係るガスセルの製造方法であって、前記第1工程では前記リッドを第1温度で加熱し、前記第3工程では前記リッドを第2温度で加熱し、前記第1温度は、前記第2温度よりも低いことが好ましい。
本適用例の製造方法によれば、第1工程で封止部材からガスを発生させる際にリッドを加熱する第1温度は、第3工程で封止部材を塗布したリッドでセルの開口を封止する際にリッドを加熱する第2温度よりも低い。すなわち、第1工程で封止部材を加熱する温度は、第3工程で封止部材を加熱する温度よりも低い。そのため、第1工程で封止部材からガスを発生させる際に、封止部材の温度が上昇し過ぎてリッドとセルとを接合する封止部材の密着力が劣化することを抑えることができる。
[適用例3]上記適用例に係るガスセルの製造方法であって、前記封止部材は低融点ガラスを含み、前記第1温度および前記第2温度は、前記封止部材の温度が前記低融点ガラスの軟化点以上、かつ、結晶化開始温度未満となる温度であり、前記第1温度は、前記第2温度よりも前記軟化点寄りの温度であることが好ましい。
本適用例の製造方法によれば、封止部材からガスを発生させる第1工程と、封止部材を介してリッドで開口を封止する第3工程とにおいて、封止部材の温度が低融点ガラスの軟化点以上、かつ、結晶化開始温度未満となるように、リッドを加熱する第1温度および第2温度が設定される。そのため、第1工程および第3工程において、低融点ガラスを結晶化させることなく軟化させることができる。また、第1温度が第2温度よりも軟化点寄りの温度であるので、第1工程で封止部材からガスを発生させる際に封止部材の温度が上昇し過ぎて、リッドとセルとを接合する封止部材の密着力が劣化することを抑えることができる。
[適用例4]上記適用例に係るガスセルの製造方法であって、前記第1工程において前記第1温度で加熱する時間は、前記第3工程において前記第2温度で加熱する時間よりも短いことが好ましい。
本適用例の製造方法によれば、第1工程において第1温度で加熱する時間が第3工程において第2温度で加熱する時間よりも短いので、第1工程で封止部材の温度が上昇し過ぎて、リッドとセルとを接合する封止部材の密着力が劣化することを抑えることができる。
[適用例5]上記適用例に係るガスセルの製造方法であって、前記第1工程、前記第2工程、および前記第3工程では、前記空間を10-4Pa以下に減圧することが好ましい。
本適用例の製造方法によれば、10-4Pa以下に減圧された空間で第1工程から第3工程の処理が行われるので、セル内部の真空度が高いガスセルを製造できる。
[適用例6]上記適用例に係るガスセルの製造方法であって、前記セルは、第1室と、前記第1室と連通し前記開口が設けられた第2室と、を有し、前記第1工程の前に、アルカリ金属を含む固形物を前記開口から挿入して前記第2室内に収納する工程と、前記第3工程の後に、前記固形物にレーザー光を照射して前記アルカリ金属のガスを発生させる工程と、をさらに含むことが好ましい。
本適用例の製造方法によれば、セルの第2室内にアルカリ金属を含む固形物を収納し、セルの開口を仮栓で封止して封止部材からガスを発生させた後に、セルの開口を封止しアルカリ金属を含む固形物にレーザー光を照射してアルカリ金属のガスを発生させる。そのため、アルカリ金属を含む固形物が収納されたセル内に封止部材から発生したガスが侵入することを抑止できるので、セル内でのアルカリ金属のガスと封止部材から発生したガスとの反応を抑止できる。これにより、高い性能(感度、計測精度等)を有するガスセルを製造できる。
[適用例7]本適用例に係る磁気計測装置の製造方法は、上記に記載のガスセルの製造方法を含むことを特徴とする。
本適用例の製造方法によれば、高い真空度で封止され、かつ、封止部材から発せられたガスとアルカリ金属のガスとの反応が抑止されたガスセルを備えた磁気計測装置を製造できるので、高い性能(感度、計測精度等)を有する磁気計測装置を提供できる。
本実施形態に係る磁気計測装置の構成を示すブロック図。 本実施形態に係るガスセルの長手方向に沿った断面図。 図2Aの左側からA部を見た平面図。 本実施形態に係るアンプルの長手方向に沿った断面図。 図3AのB−B’線に沿った断面図。 本実施形態に係るガスセルの製造方法を説明するフローチャート。 本実施形態に係るガスセルの製造方法を説明する図。 本実施形態に係るガスセルの製造方法を説明する図。 本実施形態に係るガスセルの製造方法を説明する図。 本実施形態に係るガスセルの製造方法を説明する図。 本実施形態に係るガスセルの製造方法を説明する図。 本実施形態に係るガスセルの製造方法を説明する図。 本実施形態に係るガスセルの製造方法を説明する図。 本実施形態に係るガスセルの製造方法を説明する図。 本実施形態に係るガスセルの製造方法を説明する図。 第1工程、第2工程、および第3工程における温度プロファイルの一例を示す図。 変形例1に係るピルの斜視図。 変形例1に係るガスセルの長手方向に沿った断面図。 変形例2に係る原子発振器の構成を示す概略図。 変形例2に係る原子発振器の動作を説明する図。 変形例2に係る原子発振器の動作を説明する図。 従来のガスセルの製造方法の一例を説明するフローチャート。
以下、本発明を具体化した実施形態について図面を参照して説明する。使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大、縮小、あるいは誇張して表示している。また、説明に必要な構成要素以外は図示を省略する場合がある。
<磁気計測装置の構成>
本実施形態に係る磁気計測装置の構成について、図1を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る磁気計測装置の構成を示すブロック図である。本実施形態に係る磁気計測装置100は、非線形光学回転(Nonlinear Magneto-Optical Rotation:NMOR)を用いた磁気計測装置である。磁気計測装置100は、例えば、心臓からの磁場(心磁)や脳からの磁場(脳磁)などの生体から発生される微小な磁場を測定する生体状態測定装置(心磁計または脳磁計など)に用いられる。磁気計測装置100は、金属探知機などにも用いることができる。
図1に示すように、磁気計測装置100は、光源1と、光ファイバー2と、コネクター3と、偏光板4と、ガスセル10と、偏光分離器5と、光検出器(Photo Detector:PD)6と、光検出器7と、信号処理回路8と、表示装置9とを備えている。ガスセル10内には、アルカリ金属ガス(気体の状態のアルカリ金属原子)が封入されている。アルカリ金属としては、例えば、セシウム(Cs)、ルビジウム(Rb)、カリウム(K)、ナトリウム(Na)などを用いることができる。以下では、アルカリ金属としてセシウムを用いる場合を例に取り説明する。
光源1は、セシウムの吸収線に応じた波長(例えばD1線に相当する894nm)のレーザービームを出力する装置、例えばチューナブルレーザーである。光源1から出力されるレーザービームは、連続的に一定の光量を有する、いわゆるCW(Continuous Wave)光である。
偏光板4は、レーザービームを特定方向に偏光させ、直線偏光にする素子である。光ファイバー2は、光源1により出力されたレーザービームを、ガスセル10側に導く部材である。光ファイバー2には、例えば、基本モードのみを伝播するシングルモードの光ファイバーが用いられる。コネクター3は、光ファイバー2を偏光板4に接続するための部材である。コネクター3は、ねじ込み式であり、光ファイバー2を偏光板4に接続する。
ガスセル10は、内部に空隙を有する箱(セル)であり、この空隙(図2Aに示す主室14)にはアルカリ金属の蒸気(図2Aに示すアルカリ金属ガス13)が封入されている。ガスセル10の構成については、後述する。
偏光分離器5は、入射したレーザービームを、互いに直交する2つの偏光成分のビームに分離する素子である。偏光分離器5は、例えば、ウォラストンプリズムまたは偏光ビームスプリッターである。光検出器6および光検出器7は、レーザービームの波長に感度を有する検出器であり、入射光の光量に応じた電流を信号処理回路8に出力する。光検出器6および光検出器7は、それ自体が磁場を発生すると測定に影響を与える可能性があるので、非磁性の材料で構成されることが望ましい。光検出器6および光検出器7は、ガスセル10からみて偏光分離器5と同じ側(下流側)に配置される。
磁気計測装置100における各部の配置を、レーザービームの経路に沿って説明すると、レーザービームの経路の最上流には光源1が位置し、以下、上流側から、光ファイバー2、コネクター3、偏光板4、ガスセル10、偏光分離器5、および光検出器6,7の順で配置されている。
光源1から出力されたレーザービームは、光ファイバー2に導かれて偏光板4に到達する。偏光板4を通過したレーザービームは、偏光度がより高い直線偏光になる。ガスセル10を透過しているレーザービームは、ガスセル10に封入されているアルカリ金属原子を励起(光ポンピング)する。このとき、レーザービームは、磁場の強さに応じた偏光面回転作用を受けて偏光面が回転する。ガスセル10を透過したレーザービームは偏光分離器5により2つの偏光成分のビームに分離される。2つの偏光成分のビームの光量は、光検出器6および光検出器7で計測(プロービング)される。
信号処理回路8は、光検出器6および光検出器7により計測されたビームの光量を示す信号をそれぞれから受け取る。信号処理回路8は、受け取った各信号に基づいて、レーザービームの偏光面の回転角を計測する。偏光面の回転角は、レーザービームの伝播方向の磁場の強さに基づく関数で表される(例えば、D.バドカー、外5名,「原子の共鳴非線形磁気光学回転効果」,レビュー・オブ・モダン・フィジクス誌,米国,米国物理学会,2002年10月,第74巻,第4号,p.1153−1201の数式(2)を参照。数式(2)は線形光学回転に関するものであるが、NMORの場合もほぼ同様の式を用いることができる)。信号処理回路8は、偏光面の回転角からレーザービームの伝播方向における磁場の強さを測定する。表示装置9は、信号処理回路8により測定された磁場の強さを表示する。
続いて、本実施形態に係るガスセルおよびガスセルに用いられるアンプルの構成について、図2A、図2B、図3A、および図3Bを参照して説明する。
<ガスセルの構成>
図2Aは、本実施形態に係るガスセルの長手方向に沿った断面図である。図2Bは、図2Aの左側からA部を見た平面図である。図2Aおよび図2Bにおいて、ガスセル10の高さ方向をZ軸とし、上方側を+Z方向とする。Z軸と交差する方向であって、ガスセル10の長手方向をX軸とし、図2Aにおける右側を+X方向とする。そして、Z軸およびX軸と交差する方向であって、ガスセル10の幅方向をY軸とし、図2Bの紙面における右側を+Y方向とする。
図2Aに示すように、本実施形態に係るガスセル10は、セル12とリッド19とを備えている。セル12は、内部に空隙を有する箱(セル)であり、例えば、石英ガラスなどからなる板状の部材により形成されている。セル12(板状の部材)の厚さは、1mm〜5mmであり、例えば、1.5mm程度である。
セル12は、内部の空隙として、第1室としての主室14と、X軸方向を長手方向とする第2室としてのリザーバー16とを有している。主室14とリザーバー16とは、X軸方向に沿って並ぶように配置されており、連通孔15を介して連通している。連通孔15は、主室14およびリザーバー16の上方側(+Z方向側)に設けられている。図示しないが、連通孔15は、例えば円形状である。連通孔15の内径は、例えば、0.4mm〜1mm程度である。
セル12(主室14およびリザーバー16)の内部には、アルカリ金属が蒸発したガス(以下ではアルカリ金属ガスという)13が充填されている。主室14およびリザーバー16には、アルカリ金属ガス13の他に、希ガスなどの不活性ガスが存在していてもよい。
リザーバー16内には、アンプル20が収納されている。アンプル20のガラス管22には、貫通孔(開口部)21が形成されている。アルカリ金属ガス13は、アンプル20内に充填されていたアルカリ金属固体24(図3A参照)が蒸発(ガス化)したものである。アンプル20の構成については後述する。
セル12(主室14およびリザーバー16)の内壁には、膜状のコーティング材32が配置されている。コーティング材32は、アルカリ金属原子がセル12(主室14)の内壁に直接衝突したときの挙動(例えば、スピン)の変化を抑制または低減する機能を有する。コーティング材32は、パラフィンなどの鎖式飽和炭化水素で構成されている。パラフィンの一例として、例えば、化学式(CH3(CH248CH3)で示されるペンタコンタンを用いることができる。
リザーバー16の長手方向における主室14および連通孔15の反対側(−X方向側)には、開口18が設けられている。開口18は、例えば円形状である(図2B参照)。開口18の内径は、例えば、0.4mm〜1.5mm程度である。開口18は、封止部材30を介してセル12に接合されたリッド19で封止されている。これにより、セル12(主室14およびリザーバー16)が密封されている。
図2Bは、リッド19の側からセル12のリザーバー16を見た平面図である。図2Bに示すように、リッド19は、例えば矩形状であるが、円形状など他の形状であってもよい。リッド19の材料としては、セル12と同じガラス基材が用いられ、例えば石英ガラスが用いられる。リッド19は、開口18の周囲に配置された封止部材30を介してセル12に固着されている。
本実施形態に係る封止部材30は、低融点ガラスを含む。封止部材30は、開口18を囲むように、例えば環状に設けられている。封止部材30の環状の内径は開口18の径よりも大きいことが好ましく、封止部材30の環状の外径はリッド19からはみ出さない大きさであることが好ましい。なお、封止部材30の平面形状は、開口18を囲む形状であれば、四角形状や多角形状であってもよい。
<アンプルの構成>
図3Aは、本実施形態に係るアンプルの長手方向に沿った断面図である。図3Bは、図3AのB−B’線に沿った断面図である。図3Aに示すように、本実施形態に係るアルカリ金属を含む固形物としてのアンプル20は、長手方向を有している。図3Aには、アンプル20を、その長手方向がX軸方向に沿うように配置したときのX−Z断面を示している。アンプル20は、中空状のガラス管22で構成される。ガラス管22は、例えば、ホウ珪酸ガラスにより形成されている。
ガラス管22は、一方向(図3AではX軸方向)に沿って延在しており、その両端部が溶着されている。これにより、内部が中空状のガラス管22は密封されている。なお、ガラス管22の両端部の形状は、図3Aに示すような丸い形状に限定されず、平面に近い形状や一部が尖った形状などであってもよい。ガラス管22の中空状の内部には、アルカリ金属固体(粒状や粉末状のアルカリ金属原子)24が充填されている。アルカリ金属固体24としては、上述したように、セシウムの他に、ルビジウム、カリウム、ナトリウムを用いることができる。
図3Aには、アンプル20(ガラス管22)が密封された状態を示している。アンプル20が製造された段階ではガラス管22は密封された状態であるが、ガスセル10が完成した段階では、ガラス管22に貫通孔21(図2A参照)が形成され密封が破られる。これにより、アンプル20内のアルカリ金属固体24が蒸発してガスセル10内に流出し、セル12の空隙がアルカリ金属ガス13で満たされる(図2A参照)。なお、アンプル20内からアルカリ金属固体24が蒸発して流出し易くなるように、アンプル20の上面とセル12の内面との間には、例えば+Z方向に1.5mm程度の隙間が設けられている(図2A参照)。
図3Bに、アンプル20の長手方向と交差する方向におけるY−Z断面を示す。図3Bに示すように、ガラス管22のY−Z断面の形状は、例えば略円形であるが、他の形状であってもよい。ガラス管22の外径φは、0.3mm≦φ≦1.2mmである。ガラス管22の肉厚tは、0.1mm≦t≦0.5mmであり、概ね外径φの20%程度であることが好ましい。ガラス管22の肉厚tが0.1mm未満であるとガラス管22が破損し易くなり、ガラス管22の肉厚tが0.5mmを超えると、ガラス管22に貫通孔21を形成する加工(詳細は後述する)が困難となる。
<ガスセルの製造方法>
次に、本実施形態に係るガスセルの製造方法を図4、図5A、図5B、図5C、図6A、図6B、図7、図8、図9A、および図9Bを参照して説明する。図4は、本実施形態に係るガスセルの製造方法を説明するフローチャートである。図5A、図5B、図5C、図6A、図6B、図7、図8、図9A、および図9Bは、本実施形態に係るガスセルの製造方法を説明する図である。なお、図5A、図5B、図6A、図6B、図7、図8、図9A、および図9Bは、図2Aに対応する断面図である。図5Cは、リッド19を封止部材30が配置された側から見た斜視図である。
まず、図4に示すステップS01(セル組み立て工程)では、セル12を組み立てる。図5Aに示すように、セル12は、例えば、石英ガラスからなるガラス板部材11を組み合わせて構成されている。図示を省略するが、石英ガラスからなるガラス板を切断して、セル12を構成する各壁面に対応するガラス板部材11を準備する。そして、これらのガラス板部材11を組み立て、ガラス板部材11同士を接着剤または溶着により接合して、図5Aに示すような主室14とリザーバー16とを有するセル12を得る。この段階では、セル12の開口18は開放されている。
続く、図4に示すステップS02(セル内壁コーティング工程)では、図5Bに示すように、セル12の内壁にコーティング材32の膜を形成する。図示を省略するが、ステップS01で組み立てたセル12内部の脱気を十分に行い、減圧環境下において、セル12の開口18からリザーバー16内に、例えばニードルなどを用いてコーティング材32を配置する。そして、開口18を仮栓などで仮封止し、セル12全体を、例えば200℃程度に加熱する。これにより、図5Bに示すように、セル12(主室14およびリザーバー16)の内壁を覆うコーティング材32の薄い膜が形成される。
続いて、図4に示すステップS03(封止部材塗布工程)では、図5Cに示すように、リッド19に封止部材30を塗布する。リッド19の表面(封止部材30を塗布する面)が梨地面であると、封止部材30との接合強度が高められる。塗布する際の封止部材30は、粉末状の低融点ガラス(低融点ガラスフリット)と、低融点ガラスフリットを繋ぐためのバインダーや分散媒を含むペースト状である。図5Cに示すように、例えばディスペンサーを用いて、リッド19の表面に封止部材30を環状に塗布する。
続く、図4に示すステップS04(封止部材焼成工程)では、リッド19に塗布した封止部材30(図5C参照)を焼成する。封止部材30を乾燥させた後、減圧環境下(例えば、70Pa程度)で仮焼成して、封止部材30からバインダーや分散媒を除去するとともに、封止部材30をリッド19に融着(接合)させる。
ステップS04で封止部材30を焼成する際の温度は、封止部材30に含まれる低融点ガラスの軟化点以上、かつ、結晶化開始温度未満の温度とするが、低融点ガラスの劣化(リッド19とセル12とを接合する密着力の低下)を避けるため、軟化点に近い温度とすることが好ましい。また、封止部材30にピンホール等が生じることを抑止するため、封止部材30の温度が低融点ガラスのガラス転移点付近および軟化点付近において段階的に上昇するように加熱することが好ましい。
なお、図示を省略するが、ステップS03およびステップS04の処理を、複数のリッド19が配列されたマザー基板の状態で行い、処理後にマザー基板から個々のリッド19に個片化するようにしてもよい。このようにすれば、リッド19に封止部材30を塗布し焼成を終えるまで、複数のリッド19を一括して取り扱うことができるので、リッド19単位で処理を行う場合と比べて、生産性を向上させることができる。
また、セル12を準備するステップS01およびステップS02の処理と、封止部材30が配置されたリッド19を準備するステップS03およびステップS04の処理とは、どちらを先に実行してもよいし、両者を並行して実行してもよい。
続いて、図4に示すステップS05(アルカリ金属を含む固形物収納工程)では、図6Aに示すように、セル12のリザーバー16内にアンプル20を収納する。図6Aに矢印で示すように、アンプル20を、セル12のリザーバー16側に設けられた開口18から長手方向(X軸方向)に沿って挿入し、リザーバー16内に配置する。アンプル20は、その延在方向がリザーバー16の長手方向(X軸方向)に沿うようにリザーバー16内に収納される。
なお、アンプル20は、図示しない別工程で、真空に近い低圧環境下(理想的には真空中)において、管状のガラス管22の中空状の内部にアルカリ金属固体24を充填し、ガラス管22の両端部をそれぞれ溶着し密封して形成される(図3Aおよび図3B参照)。アルカリ金属固体24として用いられるセシウムなどのアルカリ金属は、反応性に富み大気中で取り扱うことができないため、低圧環境下でアンプル20内に密封された状態でセル12に収納される。
続いて、図4に示すステップS06(仮封止工程)では、図6Bに示すように、セル12の開口18を仮栓36で仮封止する。本実施形態では、セル12をホルダー34で保持する。ホルダー34には、例えば、仮栓36を支持する支持部37が回動可能に取り付けられている。セル12がホルダー34で保持された状態で、開口18が仮栓36により仮封止され、ステップS05で収納されたアンプル20がリザーバー16内に保持される。
仮栓36としては、耐熱性が高く不要なガスを発生させない材料、例えば、パーフルオロエラストマー(FFKM)等のフッ素系ゴムを好適に用いることができる。なお、ホルダー34の形状や仮栓36を支持する構成は、図6Bに示す形態に限定されるものではない。
続いて、図4に示すステップS07(第1工程:封止部材ガス出し工程)、ステップS08(第2工程:仮栓外し工程)、およびステップS09(第3工程:封止工程)の各処理を、図7に示す封止装置38の内部で、一連の工程として実行する。
ステップS07(第1工程)は、リッド19に塗布した封止部材30からのガス出しを行う工程である。上述したステップS04で封止部材30を焼成する際にも封止部材30からガスがある程度は放出されるが、この焼成工程だけで封止部材30からガスを除去することは困難である。ステップS07では、後工程のステップS09においてセル12を密封(本封止ともいう)する際に封止部材30からガスが放出されてセル12内部に侵入することを抑止するため、予め封止部材30からガスを放出させる。
図7に示すように、封止部材30を塗布したリッド19と、開口18を仮栓36で仮封止したセル12とを、封止装置38の内部に配置する。より具体的には、リッド19を、封止装置38内部に設けられたステージ39上に、封止部材30を塗布した側を鉛直方向の上方(ステージ39とは反対側)にして配置する。そして、セル12を、封止部材30と接しないように、ホルダー34で保持された状態で封止部材30内部のリッド19から離れた位置に配置する。
リッド19とセル12とを配置した封止装置38内部を、例えば、真空ポンプ(図示しない)等により外部に排気して、10-4Pa以下に減圧する。そして、ステージ39の温度を所定の温度(第1温度)まで上昇させてリッド19を加熱することにより、リッド19を介して封止部材(低融点ガラス)30を加熱する。なお、減圧した状態の封止装置38の内部が、本発明の「減圧した空間」に相当する。
第1温度は、封止部材30の温度が低融点ガラスの軟化点以上、かつ、結晶化開始温度未満となる温度とする。これにより、封止部材30に含まれる低融点ガラスを結晶化させることなく軟化させることができる。第1温度は、低融点ガラスの劣化(密着力の低下)を避けるため、後述するステップS09における第2温度よりも低い温度とし、封止部材30の温度が低融点ガラスの軟化点付近となる温度とすることが好ましい。例えば、封止部材30に含まれる低融点ガラスの軟化点が311℃の場合、第1温度は380℃〜420℃程度とする。
ステージ39の温度を第1温度まで上昇させる際は、封止部材30にピンホール等が生じることを抑止するため、低融点ガラスのガラス転移点付近および軟化点付近において多段階で温度が上昇するように加熱することが好ましい。ステップS07においてステージ39を第1温度に加熱した状態を保持する時間は、低融点ガラスの劣化(密着力の低下)を避けるため、ステップS09においてステージ39の温度を第2温度に保持する時間よりも短いことが好ましく、例えば3分〜11分程度とする。
封止部材30が加熱されて封止部材30からガスが放出されると、封止装置38内部の真空度は一旦低下する。このとき、セル12の開口18が仮栓36により仮封止されているので、封止部材30から放出されるガスがセル12内部に侵入することを抑止できる。封止部材30から放出されたガスが封止装置38の外部へ排気されると、封止装置38の内部の真空度は再び上昇する。
続くステップS08(第2工程)は、セル12の開口18から仮栓36を外す工程である。ステップS08では、封止装置38の内部が減圧されたままの状態で、ステージ39の温度を第1温度から徐々に低下させる。ステップS08では、ステージ39の温度を、例えば270℃〜310℃程度まで低下させる。
ステップS07で一旦低下した封止装置38の内部の真空度が再び上昇した後、すなわち、封止部材30から放出されたガスが封止装置38の外部へ排気された後、セル12の開口18から仮栓36を外す。本実施形態では、図8に示すように、仮栓36を支持する支持部37を回動させることで、開口18から仮栓36を外すことができる。
続くステップS09(第3工程)は、リッド19で開口18を封止してセル12を密封(本封止)する工程である。ステップS09では、セル12の内部が十分に脱気され高真空で不純物が極めて少ない状態で処理を行う。ステップS09では、ステップS07およびステップS08よりも封止装置38内部の真空度が高いことが好ましい。
図8に示すように、ステージ39上に配置されたリッド19上に、セル12の長手方向が鉛直方向に沿うとともに、開口18が下方側(リッド19側)となるように配置する。そして、ステージ39の温度を上昇させてリッド19を加熱しながらセル12に荷重を付加し、セル12とリッド19との間で加熱された封止部材30を押し潰すようにしてセル12とリッド19とに密着させて、セル12とリッド19とを接合する。
ステップS09では、ステップS08の状態からステージ39の温度を徐々に所定の温度(第2温度)まで上昇させる。第2温度は、封止部材30をセル12とリッド19とに密着させるため、ステップS07における第1温度よりも高く設定される。第2温度は、封止部材(低融点ガラス)30の温度が、低融点ガラスの軟化点以上、かつ、低結晶化開始温度未満となる温度とし、低融点ガラスの結晶化開始温度付近の温度となるように設定することが好ましい。例えば、封止部材30に含まれる低融点ガラスの軟化点が311℃の場合、第2温度は480℃〜520℃程度とする。
セル12に荷重を付加してステージ39を第2温度に加熱した状態を、例えば5分〜30分程度保持した後、ステージ39の温度を徐々に下降させる。これにより、セル12の本封止が完了する。先にステップS07で封止部材30からのガス出しを行っているため、ステップS09では、封止部材30から放出されるガスは極めて少なく、セル12内部へのガスの侵入を抑止して、セル12内部の真空度が高い状態で開口18を封止することができる。
図10は、第1工程、第2工程、および第3工程における温度プロファイルの一例を示す図である。図10に示す例では、ステップS07(第1工程)における第1温度を400℃(保持時間を7分)とし、ステップS08(第2工程)における温度を第1温度よりも低い290℃とし、ステップS09(第3工程)における第3温度を第1温度よりも高い500℃(保持時間を15分)としている。
なお、図10に示す温度はステージ39を加熱する温度であるが、ステージ39と接するリッド19を介して封止部材30に熱が伝達されること、減圧された封止装置38内部では熱の対流や輻射が起きにくいこと等から、封止部材30が加熱される温度はステージ39を加熱する温度よりもある程度低くなる。したがって、ステップS07からステップS09でステージ39を加熱する温度およびその温度で保持する時間は、上述した例に限定されるものではなく、封止部材30に用いる低融点ガラスの材料(組成)や、封止装置38内部での熱の伝達状況等に基づいて適宜設定されるものとする。
続いて、図4に示すステップS10(レーザー光照射工程)では、図9Aに示すように、レーザー光としてのパルスレーザー光40を、集光レンズ42で集光して、セル12を間に介してアンプル20のガラス管22に照射する。パルスレーザー光40は、アンプル20(ガラス管22)の上面で焦点を結ぶように照射する。
これにより、図9Bに示すように、ガラス管22に貫通孔21が形成され、リザーバー16内でアンプル20内のアルカリ金属固体24(図3A参照)が蒸発してアルカリ金属ガス13となる。リザーバー16内に流出したアルカリ金属ガス13は、連通孔15を通ってセル12の主室14に流入し拡散する。この結果、図9Bに示すように、セル12の空隙がアルカリ金属ガス13で満たされる。
レーザー光は指向性や収束性に優れているので、パルスレーザー光40を照射することにより、ガラス管22に容易に貫通孔21を形成することができる。パルスレーザー光40のエネルギーは、例えば、20μJ/pulse〜200μJ/pulseとする。パルスレーザー光40のパルス幅は、例えば、10ナノ秒〜50ナノ秒とし、30ナノ秒程度であることが好ましい。パルスレーザー光40の繰り返し周波数は、例えば、50kHz程度とし、パルスレーザー光40の照射時間は、例えば、100msec程度とする。
また、ステップS10でアンプル20のガラス管22に確実に貫通孔21を形成するためには、アンプル20に対するパルスレーザー光40の照射位置を、パルスレーザー光40の焦点がアンプル20の幅方向(図3BのY軸方向)における中央部に位置するように設定することが好ましい。パルスレーザー光40の焦点がアンプル20の幅方向における中央部からずれると、深さ方向の加工が進まなくなりガラス管22を貫通させることができなくなる場合がある。
ステップS10では、セル12に損傷を与えることなく、アンプル20のガラス管22に貫通孔21を形成する必要がある。そこで、セル12が石英ガラスで形成されガラス管22がホウ珪酸ガラスで形成されている場合、例えば、紫外線領域の波長のパルスレーザー光40を用いる。紫外線領域の波長の光は、石英ガラスを透過するが、ホウ珪酸ガラスには僅かに吸収される。これにより、セル12に損傷を与えることなく、アンプル20のガラス管22を選択的に加工して貫通孔21を形成することができる。
なお、ステップS10では、アンプル20内からアルカリ金属固体24が蒸発して流出すればよいので、貫通孔21の形成に限定されず、例えば、ガラス管22に亀裂を生じさせてアンプル20を分断してもよいし、ガラス管22を破壊してもよい。
以上で、本実施形態に係るガスセル10が完成する。本実施形態に係る磁気計測装置100の製造方法は、上述したガスセル10の製造方法を含んでいる。本実施形態に係る磁気計測装置100を製造する工程は、ガスセル10を製造する工程以外の工程では公知の方法を用いることができるため、その説明を省略する。
ここで、本実施形態に係るガスセルの製造方法の効果を、従来のガスセルの製造方法の例と比較して説明する。図14は、従来のガスセルの製造方法の一例を説明するフローチャートである。図14に示す従来のガスセルの製造方法では、本実施形態に係るガスセルの製造方法に対して、ステップS05の後、ステップS06からステップS08までの工程を行うことなく、ステップS09の処理(本封止)が実行される。
そのため、従来のガスセルの製造方法では、ステップS09でセル12を本封止する際に封止部材30からガスが発生し、セル12内部の真空度が低下した状態で開口18が封止されてしまうという課題がある。また、ステップS10でアンプル20内のアルカリ金属固体24を蒸発させる際に、セル12内部に封止部材30から放出されたガスが入っていると、反応性に富むアルカリ金属ガス13が封止部材30から放出されたガスと反応してしまうという課題がある。その結果、磁気計測装置100の性能(感度や計測精度等)が著しい低下することとなる。
これに対して、本実施形態に係るガスセルの製造方法では、ステップS07で封止部材30からのガス出しを行った後に、ステップS09の本封止を行うので、内部の真空度が低下した状態でセル12が封止されることを抑止できる。また、ステップS07で封止部材30からガスを発生させる際、セル12の開口18が仮栓36で仮封止されているので、封止部材30から発生したガスがセル12内部に侵入することを抑止できる。
また、ステップS07からステップS09までの処理を同一の減圧された空間(封止装置38内部)において実行するので、これら一連の工程の間に封止装置38の開閉は行われない。そのため、封止部材30を塗布したリッド19を別の空間で加熱してガス出しを行った後に封止装置38内部に配置して本封止を行う場合と比べて、セル12内部の真空度の低下や、封止装置38の外部からセル12内部への不純物の侵入を抑止できる。そして、ステップS07からステップS09まで封止部材30内部が減圧されステージ39が加熱された状態が維持されるため、別の空間で封止部材30のガス出しを行う場合と比べて、封止部材30内部の減圧やステージ39の加熱に要する時間を短縮できるので、これら一連の工程全体の処理時間を抑えることができる。
以上述べたように、本実施形態に係るガスセル10の製造方法および磁気計測装置100の製造方法によれば、封止部材30から発生したガスが侵入することが抑止され真空度が高いセル12内部でアルカリ金属ガス13を発生させるので、アルカリ金属ガス13と封止部材30から発生したガスとの反応を抑止できる。これにより、高い性能(感度、計測精度等)を有するガスセル10および磁気計測装置100を製造できる。
上記実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能である。変形例としては、例えば、以下のようなものが考えられる。
(変形例1)
変形例1は、上記実施形態に対して、アルカリ金属を含む固形物がアンプルではなくピルである点が異なるが、セルの構成はほぼ同じである。変形例1に係るガスセルおよびガスセルに用いられるピルの構成について、図11Aおよび図11Bを参照して説明する。なお、上記実施形態と共通する構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
<ピルの構成>
まず、変形例1に係るアルカリ金属を含む固形物としてのピルの構成を説明する。図11Aは、変形例1に係るピルの斜視図である。図11Aに示すように、変形例1に係るピル26は、例えば略円筒形である。ピル26の円筒形の径φは、例えば1mm程度であり、ピル26の円筒形の高さhは、例えば1mm程度である。なお、ピル26の外形形状は略円筒形に限定されず、直方体や球体など他の形状であってもよい。
ピル26は、アルカリ金属化合物と吸着剤とを含む。ピル26は、図4に示すステップS10(レーザー光照射工程)でレーザー光を照射するとアルカリ金属化合物が加熱され活性化されることでアルカリ金属27が生成され、その際に放出される不純物や不純ガスは吸着剤28に吸着される(図11B参照)。アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属27としてセシウムを用いる場合、例えば、モリブデン酸セシウム、塩化セシウムなどのセシウム化合物を用いることができる。吸着剤28としては、例えば、ジルコニウム粉末、アルミニウムなどを用いることができる。
<ガスセルの構成>
図11Bは、変形例1に係るガスセルの長手方向に沿った断面図である。図11Bに示すように、変形例1に係るガスセル10Aは、上記実施形態に係るガスセル10と同様のセル12とリッド19とを備えている。ガスセル10Aが完成した状態では、リザーバー16内にピル26(図11A参照)のアルカリ金属化合物からアルカリ金属27(例えば、セシウム)が生成され、アルカリ金属27が蒸発したアルカリ金属ガス13で主室14およびリザーバー16が満たされている。リザーバー16内に、不純ガスを吸着した吸着剤28や不純物などが残留していてもよい。
<ガスセルの製造方法>
変形例1に係るガスセルの製造方法は、上記実施形態と同様の工程(図4参照)を有するが、ステップS05およびステップS10における処理方法が上記実施形態と異なる。以下では、図示を省略し、上記実施形態と異なる点を説明する。ステップS05(アルカリ金属を含む固形物収納工程)では、セル12のリザーバー16内に、アンプル20に代わり、ピル26を収納する。
ステップS10(レーザー光照射工程)では、パルスレーザー光40に代わり、連続発振レーザー光をピル26に照射する。連続発振レーザー光として、例えば、赤色から赤外線領域(680nm〜1200nm程度)の波長で連続発振するLD(Laser Diode)レーザーを用いることができる。連続発振レーザー光の波長は、800nm程度であることが好ましい。連続発振レーザー光の出力は、例えば、1W〜10W程度とし、2W〜5W程度であることが好ましい。連続発振レーザー光の照射時間は、例えば、10秒〜5分程度とし、30秒〜90秒程度であることが好ましい。
連続発振レーザー光を照射することにより、ピル26が加熱されてピル26に含まれるアルカリ金属化合物が活性化され、アルカリ金属27が生成される。そして、アルカリ金属27が蒸発しアルカリ金属ガス13となってリザーバー16内に流出し、連通孔15を通ってセル12の主室14に流入し拡散する。この結果、図11Bに示すように、セル12の空隙がアルカリ金属ガス13で満たされる。アルカリ金属化合物から放出された不純物や不純ガスは、吸着剤28に吸着される。
変形例1に係るガスセル10Aの製造方法および磁気計測装置100の製造方法においても、封止部材30から発生したガスが侵入することが抑止されたセル12内部でアルカリ金属ガス13を発生させるので、アルカリ金属ガス13と封止部材30から発生したガスとの反応を抑止できる。これにより、高い性能(感度、計測精度等)を有するガスセル10Aおよび磁気計測装置100を製造できる。
(変形例2)
上記実施形態に係るガスセルを適用可能な装置は、磁気計測装置100に限定されない。上記実施形態および変形例に係るガスセルは、例えば、原子時計などの原子発振器にも適用できる。図12は、変形例2に係る原子発振器の構成を示す概略図である。また、図13Aおよび図13Bは、変形例2に係る原子発振器の動作を説明する図である。
図12に示す変形例2に係る原子発振器(量子干渉装置)101は、量子干渉効果を利用した原子発振器である。図12に示すように、原子発振器101は、上記実施形態に係るガスセル10(またはガスセル10A)と、光源71と、光学部品72,73,74,75と、光検出部76と、ヒーター77と、温度センサー78と、磁場発生部79と、制御部80とを備えている。
光源71は、ガスセル10内のアルカリ金属原子を励起する励起光LLとして、後述する周波数の異なる2種の光(図13Aに示す共鳴光L1および共鳴光L2)を射出する。光源71は、例えば、垂直共振器面発光レーザー(VCSEL)などの半導体レーザーなどで構成される。光学部品72,73,74,75は、それぞれ、光源71とガスセル10との間における励起光LLの光路上に設けられ、光源71側からガスセル10側へ、光学部品72(レンズ)、光学部品73(偏光板)、光学部品74(減光フィルター)、光学部品75(λ/4波長板)の順に配置されている。
光検出部76は、ガスセル10内を透過した励起光LL(共鳴光L1,L2)の強度を検出する。光検出部76は、例えば、太陽電池、フォトダイオードなどで構成されており、後述する制御部80の励起光制御部82に接続されている。ヒーター77(加熱部)は、ガスセル10内のアルカリ金属をガス状に(アルカリ金属ガス13として)維持するために、ガスセル10を加熱する。ヒーター77(加熱部)は、例えば、発熱抵抗体などで構成される。
温度センサー78は、ヒーター77の発熱量を制御するために、ヒーター77またはガスセル10の温度を検出する。温度センサー78は、サーミスター、熱電対などの公知の各種温度センサーで構成される。磁場発生部79は、ガスセル10内のアルカリ金属の縮退した複数のエネルギー準位をゼーマン分裂させる磁場を発生させる。ゼーマン分裂により、アルカリ金属の縮退している異なるエネルギー準位間のギャップを拡げて、分解能を向上させることができる。その結果、原子発振器101の発振周波数の精度を高めることができる。磁場発生部79は、例えば、ヘルムホルツコイルやソレノイドコイルなどで構成される。
制御部80は、光源71が射出する励起光LL(共鳴光L1,L2)の周波数を制御する励起光制御部82と、温度センサー78の検出結果に基づいてヒーター77への通電を制御する温度制御部81と、磁場発生部79から発生する磁場が一定となるように制御する磁場制御部83とを有する。制御部80は、例えば、基板上に実装されたICチップに設けられている。
原子発振器101の原理を簡単に説明する。図13Aは原子発振器101のガスセル10内におけるアルカリ金属のエネルギー状態を説明する図であり、図13Bは原子発振器101の光源71からの2つの光の周波数差と光検出部76での検出強度との関係を示すグラフである。図13Aに示すように、ガスセル10内に封入されているアルカリ金属(アルカリ金属ガス13)は、3準位系のエネルギー準位を有しており、エネルギー準位の異なる2つの基底状態(基底状態S1、基底状態S2)と、励起状態との3つの状態をとり得る。ここで、基底状態S1は、基底状態S2よりも低いエネルギー状態である。
このようなアルカリ金属ガス13に対して周波数の異なる2種の共鳴光L1,L2を照射すると、共鳴光L1の周波数ω1と共鳴光L2の周波数ω2との差(ω1−ω2)に応じて、共鳴光L1,L2のアルカリ金属ガス13における光吸収率(光透過率)が変化する。そして、共鳴光L1の周波数ω1と共鳴光L2の周波数ω2との差(ω1−ω2)が基底状態S1と基底状態S2とのエネルギー差に相当する周波数と一致したとき、基底状態S1,S2から励起状態への励起がそれぞれ停止する。このとき、共鳴光L1,L2は、いずれも、アルカリ金属ガス13に吸収されずに透過する。このような現象をCPT現象または電磁誘起透明化現象(EIT:Electromagnetically Induced Transparency)と呼ぶ。
光源71は、ガスセル10に向けて、上述したような周波数の異なる2種の光(共鳴光L1および共鳴光L2)を射出する。ここで、例えば、共鳴光L1の周波数ω1を固定し、共鳴光L2の周波数ω2を変化させていくと、共鳴光L1の周波数ω1と共鳴光L2の周波数ω2との差(ω1−ω2)が基底状態S1と基底状態S2とのエネルギー差に相当する周波数ω0に一致したとき、光検出部76の検出強度は、図13Bに示すように急峻に上昇する。このような急峻な信号をEIT信号と呼ぶ。このEIT信号は、アルカリ金属の種類によって決まった固有値をもっている。したがって、このようなEIT信号を基準として用いることにより、高精度な原子発振器101を実現することができる。
原子発振器101に用いられるガスセル10には小型であり、かつ、長寿命であることが要求されるが、上記実施形態のガスセルの構成およびその製造方法によれば、小型で長寿命のガスセル10を安定的に製造できるので、小型で精度が高く長寿命の原子発振器101に好適に用いることができる。
10,10A…ガスセル、12…セル、13…アルカリ金属ガス(アルカリ金属のガス)、14…主室(第1室)、16…リザーバー(第2室)、18…開口、19…リッド、20…アンプル(アルカリ金属を含む固形物)、26…ピル(アルカリ金属を含む固形物)、30…封止部材、36…仮栓、40…パルスレーザー光(レーザー光)、100…磁気計測装置。

Claims (7)

  1. 封止部材を塗布したリッドと、開口を有し前記開口を仮栓で封止したセルと、を減圧した空間に配置し、前記リッドを加熱する第1工程と、
    前記減圧した空間において、前記セルから前記仮栓を外す第2工程と、
    前記減圧した空間において、前記リッドを前記開口に配置し、前記リッドを加熱して前記封止部材を介して前記セルと接合し、前記開口を封止する第3工程と、
    を含むことを特徴とするガスセルの製造方法。
  2. 請求項1に記載のガスセルの製造方法であって、
    前記第1工程では前記リッドを第1温度で加熱し、
    前記第3工程では前記リッドを第2温度で加熱し、
    前記第1温度は、前記第2温度よりも低いことを特徴とするガスセルの製造方法。
  3. 請求項2に記載のガスセルの製造方法であって、
    前記封止部材は低融点ガラスを含み、
    前記第1温度および前記第2温度は、前記封止部材の温度が前記低融点ガラスの軟化点以上、かつ、結晶化開始温度未満となる温度であり、
    前記第1温度は、前記第2温度よりも前記軟化点寄りの温度であることを特徴とするガスセルの製造方法。
  4. 請求項2または3に記載のガスセルの製造方法であって、
    前記第1工程において前記第1温度で加熱する時間は、前記第3工程において前記第2温度で加熱する時間よりも短いことを特徴とするガスセルの製造方法。
  5. 請求項1から4のいずれか一項に記載のガスセルの製造方法であって、
    前記第1工程、前記第2工程、および前記第3工程では、前記空間を10-4Pa以下に減圧することを特徴とするガスセルの製造方法。
  6. 請求項1から5のいずれか一項に記載のガスセルの製造方法であって、
    前記セルは、第1室と、前記第1室と連通し前記開口が設けられた第2室と、を有し、
    前記第1工程の前に、アルカリ金属を含む固形物を前記開口から挿入して前記第2室内に収納する工程と、
    前記第3工程の後に、前記固形物にレーザー光を照射して前記アルカリ金属のガスを発生させる工程と、
    をさらに含むことを特徴とするガスセルの製造方法。
  7. 請求項1から6のいずれか一項に記載のガスセルの製造方法を含むことを特徴とする磁気計測装置の製造方法。
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