JP2018120977A - 原子セル、量子干渉装置、原子発振器、電子機器および移動体 - Google Patents

原子セル、量子干渉装置、原子発振器、電子機器および移動体 Download PDF

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Abstract

【課題】封止の信頼性に優れている原子セルを提供する、また、かかる原子セルを備える量子干渉装置、原子発振器、電子機器および移動体を提供する。【解決手段】原子セルは貫通孔231を有する第1窓部23と、第2窓部22と、前記第1窓部と前記第2窓部との間に配置され、アルカリ金属を収納している内部空間を前記貫通孔に連通させるように前記第1窓部および前記第2窓部とともに形成している胴体部21と、前記貫通孔を封止している封止材26と、を備え、前記貫通孔を形成している壁面の少なくとも一部は、前記封止材の構成材料の軟化点よりも高い歪点の材料で構成されている。【選択図】図3

Description

本発明は、原子セル、量子干渉装置、原子発振器、電子機器および移動体に関するものである。
長期的に高精度な発振特性を有する発振器として、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属の原子のエネルギー遷移に基づいて発振する原子発振器が知られている。
一般に、原子発振器の動作原理は、光およびマイクロ波による二重共鳴現象を利用した方式と、波長の異なる2種類の光による量子干渉効果(CPT:Coherent Population Trapping)を利用した方式とに大別される。いずれの原子発振器も、一般に、アルカリ金属を封入した原子セル(ガスセル)を備える。
このような原子セルの一例として、例えば、特許文献1には、アルカリ金属ガスが封入されたガスセルと、ガスセルの開口部を封止するリッドと、ガスセルとリッドとを接合するシール材とを備えるガスセルアレイについて開示されている。また、ガスセルおよびリッドは、それぞれ、石英ガラス等で形成されており、シール材は、低融点ガラスで形成されている。また、特許文献1に記載のガスセルアレイでは、レーザー光によりリッドとガスセルとの接合箇所を加熱し、その加熱と並行して加圧することで、ガスセルとリッドとをシール材により接合している。
特開2016−23121号公報
しかし、特許文献1に係るガスセルアレイでは、レーザーを照射することにより発生する熱によってガスセルやリッドに歪みが生じてクラックや割れが起きてしまうことがあった。その結果、ガスセルおよびリッドによるアルカリ金属を気密的に封止の信頼性を招いてしまうという問題があった。
本発明の目的は、封止の信頼性に優れている原子セルを提供すること、また、かかる原子セルを備える量子干渉装置、原子発振器、電子機器および移動体を提供することにある。
上記目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の原子セルは、貫通孔を有する第1窓部と、
第2窓部と、
前記第1窓部と前記第2窓部との間に配置され、アルカリ金属を収納している内部空間を前記貫通孔に連通させるように前記第1窓部および前記第2窓部とともに形成している胴体部と、
前記貫通孔を封止している封止材と、を備え、
前記貫通孔を形成している壁面の少なくとも一部は、前記封止材の構成材料の軟化点よりも高い歪点の材料で構成されていることを特徴とする。
このような原子セルによれば、貫通孔を形成している壁面の少なくとも一部の構成材料の歪点が封止材の構成材料の軟化点よりも高いため、例えば封止材となる材料(例えばガラスボール)にレーザー等のエネルギービームを照射して貫通孔を封止材で塞ぐ際、エネルギービームの照射により発生する熱によって第1窓部に歪みが生じることを低減することができる。そのため、エネルギービームの照射の影響により第1窓部にクラックや割れが起きることを低減することができる。その結果、原子セルによるアルカリ金属の封止の信頼性を優れたものとすることができる。
本発明の原子セルでは、前記貫通孔を形成している壁面の少なくとも一部と、前記封止材とは、それぞれ、ガラス材料で構成されていることが好ましい。
これにより、貫通孔を封止材によって簡単かつ確実に気密的に塞ぐことができる。また、封止材がアルカリ金属の化学的特性に悪影響を与えることを低減することができる。
本発明の原子セルでは、前記貫通孔を形成している壁面の少なくとも一部は、石英ガラスで構成されており、
前記封止材は、硼珪酸ガラスで構成されていることが好ましい。
これにより、エネルギービームの照射の影響により第1窓部にクラックや割れが起きることをより低減することができる。
本発明の原子セルでは、前記胴体部は、前記貫通孔を形成している壁面の少なくとも一部を構成している材料よりも低い歪点の材料で構成されていることが好ましい。
これにより、所望の形状をなす胴体部を簡単かつ高精度に形成することができる。
本発明の原子セルでは、前記第1窓部は、第1貫通孔を有する第1部材と、前記第1部材の前記胴体部とは反対側に設けられ、第2貫通孔を有する第2部材とを有し、
前記貫通孔は、前記第1貫通孔および前記第2貫通孔で構成されており、
前記封止材は、前記第2貫通孔に設けられており、
前記第2貫通孔を形成している壁面は、前記封止材の構成材料の軟化点よりも高い歪点の材料で構成されていることが好ましい。
これにより、封止材が第2貫通孔に設けられていることで、第2貫通孔を封止材で塞ぐことができる。そのため、第1貫通孔を形成する壁面と封止材との接触面積を減らすことができるので、第1貫通孔を形成する壁面が、エネルギービームの影響を直接的に受けることを低減または回避することができる。その結果、エネルギービームの照射の影響により第1部材にクラックや割れが起きることを低減または回避することができる。また、原子セルの製造の容易性とクラックのリスクの低減とを両立することができる。
本発明の原子セルでは、前記第2部材は、石英ガラスで構成されていることが好ましい。
これにより、エネルギービームの照射の影響により第2部材にクラックや割れが起きることをより低減することができ、その結果、封止の信頼性を優れたものとすることができる。
本発明の原子セルでは、前記第2部材の厚さは、0.1mm以上2mm以下の範囲内であることが好ましい。
これにより、封止を容易にしつつ、エネルギービームの照射により発生する熱の影響が第2部材を介して第1部材に伝達されることを効果的に低減することができる。
本発明の原子セルでは、前記第2貫通孔の形状は、前記内部空間に向かって幅が小さくなるテーパ状である部分を有することが好ましい。
これにより、第2貫通孔を封止材により塞ぐ際、封止材となる材料を第2貫通孔に安定的に載置することができる。その結果、封止の信頼性を優れたものとすることができる。
本発明の原子セルでは、前記第2部材は、前記第1窓部と前記第2窓部とが重なる方向から見た平面視で、前記内部空間の少なくとも一部と重ならない位置に設けられていることが好ましい。
これにより、例えば内部空間を、アルカリ金属を励起する光を通過させる空間として用いる場合、第2部分がその光に影響を与えることを回避することができる。
本発明の原子セルでは、前記第2貫通孔の前記第1貫通孔側の開口径は、前記第1貫通孔の前記第2貫通孔側の開口径以上であることが好ましい。
これにより、封止材と第1貫通孔を形成している壁面とを接触させることができる。そのため、第1部材と第2部材とを封止材により接続することができる。
本発明の量子干渉装置は、本発明の原子セルを備えることを特徴とする。
このような量子干渉装置によれば、原子セルがアルカリ金属の封止の信頼性に優れているため、優れた信頼性を発揮することができる。
本発明の原子発振器は、本発明の原子セルを備えることを特徴とする。
このような原子発振器によれば、原子セルがアルカリ金属の封止の信頼性に優れているため、優れた信頼性を発揮することができる。
本発明の電子機器は、本発明の原子セルを備えることを特徴とする。
このような電子機器によれば、本発明の原子セルを備えているため、優れた特性を発揮することができる。
本発明の移動体は、本発明の原子セルを備えることを特徴とする。
このような移動体によれば、本発明の原子セルを備えているため、優れた特性を発揮することができる。
本発明の第1実施形態に係る原子発振器(量子干渉装置)を示す概略図である。 図1に示す原子発振器が備える原子セルの内部空間を示す斜視図である。 図2に示す原子セルの縦断面図である。 図2に示す原子セルの製造方法を説明するフローチャートである。 図4に示す容器準備工程を説明する図である。 図4に示す載置工程を説明する図である。 図4に示す封止工程を説明する図である。 本発明の第2実施形態に係る原子セルの内部空間を示す斜視図である。 図8に示す原子セルの縦断面図である。 図8に示す原子セルの製造における載置工程を説明する図である。 図8に示す原子セルの製造における封止工程を説明する図である。 GPS衛星を利用した測位システムに本発明の原子発振器を用いた場合の概略構成を示す図である。 本発明の移動体の一例を示す図である。
以下、本発明の原子セル、量子干渉装置、原子発振器、電子機器および移動体を添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
1.原子発振器(量子干渉装置)
まず、本発明の原子発振器(本発明の原子セルを備える原子発振器)について説明する。なお、以下では、本発明の量子干渉装置が原子発振器である場合を例に説明するが、本発明の量子干渉装置は、これに限定されず、原子発振器の他、例えば、磁気センサー、量子メモリー等にも適用可能である。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る原子発振器(量子干渉装置)を示す概略図である。
図1に示す原子発振器1は、アルカリ金属原子に対して特定の異なる波長の2つの共鳴光を同時に照射したときに当該2つの共鳴光がアルカリ金属に吸収されずに透過する現象が生じる量子干渉効果(CPT:Coherent Population Trapping)を利用した原子発振器である。なお、この量子干渉効果による現象は、電磁誘起透明化(EIT:Electromagnetically Induced Transparency)現象とも言う。
この原子発振器1は、図1に示すように、量子干渉効果を生じさせるパッケージ部10と、パッケージ部10を制御する制御部9と、を有する。ここで、パッケージ部10は、原子セル2と、光源3と、光学系4と、光検出部5と、ヒーター6と、温度センサー7と、コイル8と、を有し、これらがパッケージ(図示せず)内に収納されている。また、制御部9は、光源制御部91と、温度制御部92と、磁場制御部93と、を有し、例えば、パッケージ部10が実装される基板(図示せず)上にIC(Integrated circuit)チップとして設けられている。
この原子発振器1では、光源3が光LLを光軸aに沿って光学系4を介して原子セル2に照射し、原子セル2を透過した光LLを光検出部5が検出する。
原子セル2は、光透過性を有し、原子セル2の空間Sには、アルカリ金属(金属原子)が封入されている。アルカリ金属は、互いに異なる2つの基底準位と励起準位とからなる3準位系のエネルギー準位を有する。また、原子セル2内のアルカリ金属は、ヒーター6により加熱され、気体状態となっている。また、原子セル2内のアルカリ金属は、コイル8から所望の方向の磁場が印加され、ゼーマン分裂している。
光源3から出射された光LLは、周波数の異なる2種の光を含んでいる。これら2種の光は、周波数差が原子セル2内のアルカリ金属の2つの基底準位間のエネルギー差に相当する周波数に一致する共鳴光対となったとき、EIT現象を生じさせる。
光源制御部91は、光検出部5の検出結果に基づいて、EIT現象を生じさせるように、上述した光源3から出射される光LLに含まれる2種の光の周波数を制御する。また、光源制御部91は、光検出部5の検出結果に応じて、発振周波数が制御される電圧制御型水晶発振器(図示せず)を備えている。そして、この電圧制御型水晶発振器(VCXO)の出力信号は、原子発振器1のクロック信号として出力される。
また、温度制御部92は、原子セル2の温度を検出する温度センサー7の検出結果に基づいて、原子セル2内が所望の温度となるように、ヒーター6への通電を制御する。また、磁場制御部93は、コイル8が発生する磁場が一定となるように、コイル8への通電を制御する。
以下、パッケージ部10の各部の構成を順次簡単に説明する。
[原子セル]
原子セル2は、光源3からの光LLに対する透過性を有する材料で構成され、原子セル2の空間Sには、アルカリ金属が封入されている。なお、原子セル2については、後に詳述する。
[光源]
光源3は、例えば、垂直共振器面発光レーザー(VCSEL)等の半導体レーザー等の発光素子であり、原子セル2中のアルカリ金属原子を励起し得る光LLを出射する機能を有する。
[光学系]
光学系4は、光源3と原子セル2との間に設けられており、遮光部材41および光学部品42、43を有する。
遮光部材41は、光LLの一部を通過させる開口を有する遮光性を有する膜状または板状の部材であり、例えば、樹脂材料、金属材料で構成されている。この開口の形状は、上述した空間Sの横断面形状に応じて決められている。このような遮光部材41の開口に光LLを通過させることで、原子セル2に入射する光LLの形状を調整するとともに当該光LLの幅方向での強度分布の均一化を図ることができる。
光学部品42は、減光フィルター(NDフィルター)である。これにより、光源3の出力が大きい場合でも、原子セル2に入射する光LLを所望の光量とすることができる。
光学部品43は、1/4波長板である。これにより、光源3からの光LLを直線偏光から円偏光(右円偏光または左円偏光)に変換することができる。円偏光をした光LLを用いることにより、所望のEIT現象を発現する原子数を増大させ、所望のEIT信号の強度を大きくすることができる。その結果、原子発振器1の発振特性を向上させることができる。
なお、光学系4は、上述した遮光部材41、光学部品42、43の他に、レンズ、偏光板等の他の光学部品を有していてもよい。また、光源3からの光LLの強度によっては、光学部品42を省略することができる。また、遮光部材41、光学部品42、43の並び順は、図示の順に限定されず、任意である。
[光検出部]
光検出部5は、例えば、フォトダイオード等の光検出器(受光素子)であり、原子セル2内を透過した光LL(より具体的には共鳴光対)の強度を検出する機能を有する。
[ヒーター]
ヒーター6は、通電により発熱する発熱抵抗体(加熱部)を有する。ヒーター6からの熱は、直接または他の部材を介して、原子セル2および光源3にそれぞれ伝達される。
[温度センサー]
温度センサー7は、例えば、サーミスタ、熱電対等であり、光源3、ヒーター6または原子セル2の温度を検出する機能を有する。なお、温度センサー7の設置位置は、特に限定されず、例えば、ヒーター6上であってもよいし、原子セル2の外表面上であってもよい。
[コイル]
コイル8は、例えば、原子セル2の胴体部21の外周に沿って光軸aまわりに巻回して設けられたソレノイド型のコイルであり、原子セル2内のアルカリ金属に磁場を印加する機能を有する。これにより、ゼーマン分裂により、原子セル2内のアルカリ金属原子の縮退している異なる複数のエネルギー準位間のギャップを拡げて、分解能を向上させることができる。その結果、原子発振器1の発振周波数の精度を高めることができる。
なお、コイル8は、光軸aに沿った方向に原子セル2を介して対向して設けられた1対のコイルからなるヘルムホルツ型のコイルであってもよい。また、コイル8が発生する磁場は、直流磁場または交流磁場のいずれかの磁場であってもよいし、直流磁場と交流磁場とを重畳させた磁場であってもよい。
以上、パッケージ部10の各部を簡単に説明した。以下、原子セル2について詳述する。
(原子セルの詳細な説明)
図2は、図1に示す原子発振器が備える原子セルの内部空間を示す斜視図である。図3は、図2に示す原子セルの縦断面図である。なお、以下では、図3中の上側を「上」、下側を「下」という。
図2に示す原子セル2は、貫通孔211、212を有する胴体部21と、胴体部21を挟んで設けられた窓部22(第2窓部)および窓部23(第1窓部)と、を有する。この原子セル2では、胴体部21および1対の窓部22、23が、1対の窓部22、23の間にアルカリ金属が封入されている空間Sを区画形成(構成)している。また、図3に示すように、窓部23は、貫通孔231を有しており、原子セル2は、貫通孔231を封止する封止材26を有している。以下、図2および図3を参照しつつ、原子セル2が有する各部について詳述する。
胴体部21は、窓部22と窓部23とが重なる方向から見た平面視で、四角形状をなす。また、胴体部21は、厚さ方向(図2中の上下方向)に貫通した貫通孔211、212と、これらを連通する溝213と、を有する。
貫通孔211は、平面視で(図2中の上方から見て)胴体部21の中央部に位置し、貫通孔212は、平面視で胴体部の角部に位置する。本実施形態では、貫通孔211、212の各横断面形状は、ぞれぞれ、円形をなしている。なお、貫通孔211、212の横断面形状は、円形に限定されず、例えば、四角形、五角形等の多角形、楕円形等であってもよい。また、貫通孔212の幅(径)すなわち貫通孔212を形成している内壁面の幅(径)は、貫通孔211よりも幅(径)すなわち貫通孔211を形成している内壁面の幅(径)よりも小さく構成されている。
また、溝213は、胴体部21の図2中の上方に開口しているが、窓部23によりその開口が閉じられて、貫通孔211および貫通孔212を連通する連通路を形成している。
また、胴体部21の厚さ(図2中の上下方向の長さ)は、特に限定されず、例えば5μm以上15μm程度である。
また、胴体部21の構成材料としては、例えば、ガラス材料、水晶、シリコン材料等が挙げられるが、中でも、ガラス材料を用いることが好ましい。胴体部21の構成材料としてガラス材料を用いると、窓部22、23および封止材26の構成材料としてガラス材料を用いた場合、すなわち、胴体部21、窓部22、23および封止材26のすべてをガラス材料で構成した場合、これらの熱膨張係数を一致または近似させることができる。そのため、封止材26による封止時に原子セル2に生じる残留応力を小さくすることができ、その結果、胴体部21、窓部22、23にクラックが生じるリスクを低減することができる。
ここで、ガラス材料とは、非結晶のガラスの他に、結晶化ガラス(結晶化ガラスとセラミックスとを含む材料であるガラスセラミックスを含む)を含む意味である。ガラス材料としては、具体的には、金属材料の含有量が少ないかまたは実質的に零(0)であるものが好ましく、例えば、テンパックス(登録商標)のような硼珪酸ガラス、ソーダガラス(ソーダ石灰ガラス)、ネオセラム(登録商標)のような結晶化ガラス、石英等が挙げられる。
このような胴体部21の下面には、窓部22が接合(固着)されており、一方、胴体部21の上面には、窓部23が接合(固着)されている。窓部22、23は、それぞれ、平面視で四角形状をなす平板状の部材(基板)であり、上述した光源3からの光LLに対する透過性を有している。窓部22は、原子セル2の空間S内(特に後述する空間S1内)へ光LLが入射する入射側窓部であり、窓部23は、原子セル2の空間S内(特に後述する空間S1内)から光LLが出射する出射側窓部である。
また、上述したように、窓部22、23と胴体部21とが接合されていることにより、上述した貫通孔211、212のそれぞれの下端側開口が窓部22により封止されるとともに、貫通孔211、212のそれぞれの上端側開口および溝213の開口が窓部23により封止されている。これにより、貫通孔211、212および溝213で構成された空間Sが気密空間として形成されている。この空間S(内部空間)は、貫通孔211の空間S1と、貫通孔212の空間S2と、溝213の空間で構成されており、空間S1と空間S2とは溝213の空間(連通路)を介して連通している。
空間S内には、気体状のアルカリ金属が収納されている。アルカリ金属としては、例えば、気体状のルビジウム、セシウム、ナトリウム等が挙げられる。このアルカリ金属は、貫通孔211の空間S1内において光LLによって励起される。すなわち、貫通孔211の空間S1は、光LLが通過する光通過領域を構成する。なお、空間Sには、必要に応じて、アルゴン、ネオン等の希ガス、窒素等の不活性ガスが緩衝ガスとしてアルカリ金属ガスとともに封入されていてもよい。
また、貫通孔212内の空間S2には、気体状のアルカリ金属に加えて、液体状または固体状のアルカリ金属も収納されている。この液体状または固体状のアルカリ金属は、空間S内の気体状のアルカリ金属と飽和蒸気圧で平衡状態となっており、これにより、空間S内の気体状のアルカリ金属を所定濃度に保つことができる。また、貫通孔211内の空間S1とは離れた貫通孔212内の空間S2に液体状または固体状のアルカリ金属を配置することにより、液体状または固体状のアルカリ金属が周波数特性に影響を与えるのを低減することができる。
このような窓部22、23のそれぞれの厚さ(上下方向の長さ)は、特に限定されず、例えば1μm以上10μm程度である。
窓部22、23の構成材料としては、上述したような光LLに対する透過性を有するものであり、具体的には、例えば、ガラス材料、水晶等が挙げられ、中でも、ガラス材料を用いることが好ましい。これにより、光LLに対する透過性を有する窓部22、23を実現することができる。
窓部22、23の胴体部21に対する接合方法は、これらの構成材料に応じて適宜決定されるものであり、特に限定されないが、例えば、直接接合法、溶融接合法、オプティカル接合法、陽極接合法、表面活性化接合法等を用いることができる。特に、胴体部21および窓部22、23の構成材料がガラス材料である場合、胴体部21と窓部22との接合方法としては、例えば、直接接合、溶融接合、オプティカル接合等が挙げられる。これにより、胴体部21と窓部22、23とを簡単に気密的に接合することができ、原子セル2の信頼性を優れたものとすることができる。
また、窓部23は、その厚さ方向に貫通している貫通孔231を有している。貫通孔231は、平面視で、窓部23の角部に位置しており、上述した胴体部21の貫通孔212に連通している。したがって、貫通孔231は、空間Sに連通している。
本実施形態では、貫通孔231の横断面形状は、円形をなしている。なお、貫通孔231の横断面形状は、円形に限定されず、例えば、四角形、五角形等の多角形、楕円形等であってもよい。また、貫通孔231は、幅が空間S側に向かうにつれて狭くなる形状をなしている。本実施形態では、貫通孔231は、円錐台形をなしている。これにより、後述する原子セル2の製造における封止材26による封止の際、貫通孔231内に封止材26となる材料を安定的に載置することができる。なお、貫通孔231の形状(全体形状)は、円錐台形に限定されず、筒状であってもよい。
このような貫通孔231は、封止材26により封止されている。具体的には、封止材26の構成材料としては、例えば、金属材料、ガラス材料等を用いることができ、中でもガラス材料を用いることが好ましい。特に、上述した貫通孔231を形成している壁面の少なくとも一部と、封止材26とは、それぞれ、ガラス材料で構成されていることが好ましい。これにより、貫通孔231を封止材26によって簡単かつ確実に気密的に塞ぐことができる。また、封止材26がアルカリ金属の化学的特性に悪影響を与えることを低減することができる。なお、上述の貫通孔231を形成している壁面である内壁面235の少なくとも一部は、封止材26と接触している箇所である。これにより、当該壁面と封止材26との接合強度を高めることができ、封止の信頼性をより高めることができる。
このような構成の原子セル2は、上述したように、貫通孔231を有する「第1窓部」としての窓部23と、「第2窓部」としての窓部22と、窓部23と窓部22との間に配置され、アルカリ金属を収納している「内部空間」としての空間Sを貫通孔231に連通させるように窓部22および窓部23とともに形成している胴体部21と、貫通孔231を封止している封止材26と、を備える。そして、本実施形態における原子セル2では、上述した貫通孔231を形成している壁面(内壁面235)の少なくとも一部は、封止材26の構成材料の軟化点よりも高い歪点の材料で構成されている。すなわち、貫通孔231を形成している壁面の少なくとも一部の歪点をT1とし、封止材26の構成材料の軟化点をT2としたとき、T1>T2の関係を満足する。ここで、例えば、結晶化ガラス等のように一般に歪点がないものは、上述の「軟化点よりも高い歪点の材料」に含まれるものとする。なお、「歪点」とは、粘性流動が起こらない温度で、粘度が1014.5dPa・sに相当する温度のことを言う。換言すると、「歪点」とは、それ以上になるとガラスが歪み始める温度のことを言う。
このような原子セル2によれば、貫通孔231を形成している壁面の少なくとも一部の構成材料の歪点が封止材26の構成材料の軟化点よりも高いため、例えば後述する原子セル2の製造において封止材26となる材料(例えば図6に示すガラス材26a)にエネルギービームLを照射して貫通孔231を封止材26で塞ぐ際、エネルギービームLの照射により発生する熱によって窓部23に歪みが生じることを低減することができる。そのため、エネルギービームLの照射の影響により窓部23にクラックや割れが起きることを低減することができる。その結果、窓部22、23と胴体部21とによるアルカリ金属の封止の信頼性を優れたものとすることができる。
また、上述の貫通孔231を形成している壁面の少なくとも一部の歪点をT1とし、封止材26の構成材料の軟化点をT2としたとき、T1−T2は、100℃以上500℃以下の範囲内であることが好ましく、200℃以上400℃以下の範囲内であることがより好ましい。これにより、エネルギービームLの照射により発生する熱によって窓部23に歪みが生じることを低減することができるという効果を高めることができる。また、貫通孔231の加工精度の大幅な低下を防ぐことができる。
上述の貫通孔231を形成している壁面の少なくとも一部の歪点としては、具体的には、800℃以上1500℃以下の範囲内であることが好ましく、1000℃以上1200℃以下の範囲内であることがより好ましい。また、結晶化ガラスを用いることも好ましい。
また、封止材26の構成材料の軟化点としては、具体的には、500℃以上1000℃以下の範囲内であることが好ましく、700℃以上900°以下の範囲内であることが好ましい。これにより、封止材26の封止において、エネルギービームLの出力を過度に高くする必要がなく、封止材26による貫通孔231の封止を確実に行うことができる。
具体的には、貫通孔231を形成している壁面(内壁面235)の少なくとも一部は、石英ガラス(例えば、歪点が1120℃程度のもの)で構成されており、封止材26は、硼珪酸ガラス(例えば、軟化点が820℃程度のもの)で構成されていることが好ましい。これにより、例えば後述する原子セル2の製造においてエネルギービームLの照射の影響により窓部23にクラックや割れが起きることをより低減することができる。また、貫通孔231を形成している壁面と封止材26の熱膨張係数を近似させることができるため、封止材26による封止時に窓部23に生じる残留応力を小さくすることができる。そのため、窓部23にクラックが生じるリスクを低減することができる。
特に、本実施形態では、窓部23の全体が、封止材26の構成材料の軟化点よりも高い歪点の材料で構成されている。特に、窓部23の全体が、石英ガラスで構成されていることが好ましい。これにより、光LLに対する透過性を有するとともに、エネルギービームLの照射の影響によるクラックのリスクを低減することができる窓部23を簡単かつ確実に形成ことができる。なお、例えば、貫通孔231を形成する壁面を含む部分のみを、封止材26の構成材料の軟化点よりも高い歪点の材料で被覆してもよい。
また、胴体部21は、貫通孔231を形成している壁面(内壁面235)の少なくとも一部を構成している材料よりも低い歪点の材料で構成されていることが好ましい。これにより、歪点が比較的低い材料を用いることで、所望の形状の胴体部21を簡単かつ高精度に形成することができる。
具体的には、貫通孔231を形成している壁面(内壁面235)が、石英ガラスで構成されている場合、胴体部21の構成材料としては、硼珪酸ガラス(例えば、歪点が518℃程度のもの)を用いることができる。硼珪酸ガラスは、石英ガラスに比べて加工がし易いため、硼珪酸ガラスを用いることで所望の形状の胴体部21を簡単かつ高精度に形成することができる。
また、窓部22も、窓部23の貫通孔231を形成している壁面を構成している材料よりも低い歪点の材料で構成されていることが好ましい。また、窓部22は、具体的には、胴体部21の構成材料と同様に、硼珪酸ガラスを用いることが好ましく、胴体部21と同様の組成比の硼珪酸ガラスであることがより好ましい。これにより、所望の形状の窓部22を簡単かつ高精度に形成することができる、また、胴体部21との接合強度を高めることができる。
以上、原子セル2について説明した。なお、本実施形態では、胴体部21と窓部23とは、別の部材で構成されていたが、これらは一体で構成されていてもよい。
次に、この原子セル2の製造方法の一例について説明する。
(原子セルの製造方法)
以下、上述した原子セル2の製造方法の一例について説明する。なお、以下では、胴体部21、窓部22および封止材26が、それぞれ、硼珪酸ガラスで構成されており、窓部23が、石英ガラスで構成されている場合を例に説明する。
図4は、図2に示す原子セルの製造方法を説明するフローチャートである。
原子セル2の製造方法は、図4に示すように、[1]容器準備工程S10と、[2]アルカリ金属導入工程S20と、[3]載置工程S30、[4]封止工程S40と、を有する。以下、各工程を順次説明する。
[1]容器準備工程S10
図5は、図4に示す容器準備工程を説明する図である。
まず、図5に示すように、容器20を用意する。この容器20は、上述した原子セル2において封止材26による封止およびアルカリ金属の封入がなされる前の状態であって、胴体部21および1対の窓部22、23を有する構造体である。
ここで、胴体部21および1対の窓部22、23は、それぞれ、エッチング技術やフォトリソグラフィ技術若しくは、機械加工、ブラスト加工技術を用いてガラス基板を加工することで形成することができる。また、このとき、胴体部21に貫通孔211、212および溝213を形成し、窓部23に上述したようなテーパ状の貫通孔231を形成する。そして、胴体部21と各窓部22、23とを例えば直接接合、溶融接合、オプティカル接合等により接合することで、容器20を得る。なお、本工程では、複数の容器20が連結するように、胴体部21および1対の窓部22、23をそれぞれウエハーの状態で接合してもよい。この場合、本工程後の任意の工程において(好ましくは[4]封止工程S40の後で)、複数の容器20が連結した構造体を容器20ごとに個片化すればよい。
また、上述したように、胴体部21および窓部22が、それぞれ、硼珪酸ガラス等の歪点が比較的小さい材料で構成されていることで、胴体部21および窓部22を所望の形状に加工し易い。
[2]アルカリ金属導入工程S20
次に、空間S2に液体状または固体状のアルカリ金属を配置する。より具体的には、貫通孔231を通じて空間S2に液体状または固体状のアルカリ金属を導入する。
[3]載置工程S30
図6は、図4に示す載置工程を説明する図である。
次に、図6に示すように、貫通孔231に封止材26になる材料としてガラス材26aを配置する。ここで、上述したように、貫通孔231は、空間S2に向かって(図6中の下方に向かって)、幅(径)が小さくなるテーパ状であるため、ガラス材26aを貫通孔231に安定的に載置することができる。
[4]封止工程S40
図7は、図4に示す封止工程を説明する図である。
次に、図7に示すように、貫通孔231を封止材26により塞ぐ。より具体的には,ガラス材26aにエネルギービームLを照射してガラス材26aを溶融させることにより、封止材26を形成する。このとき、必要に応じて、減圧下で封止を行う。また、エネルギービームLとしては、例えば、レーザー、イオンビーム等を用いることができる。ここでは、エネルギービームLが照射される部分の温度が、上述したような、封止材26の構成材料の軟化点以上、貫通孔231の壁面(内壁面235)の少なくとも一部を構成する材料の歪点以下の範囲の温度となるようにエネルギービームLの出力等を調整する。特に、ガラス材26aに対しては、例えば、COレーザーを好適に用いることができる。例えば、COレーザーを約4.3W、120秒程度で照射することにより、ガラス材26aを溶融して貫通孔231を封止材26により塞ぐことができる。
ここで、上述したように、窓部23が、石英ガラスで構成されており、封止材26が硼珪酸ガラスで構成されていることで、エネルギービームLの照射により発生する熱によって窓部23に歪みが生じることを低減することができる。
以上、原子セル2の製造方法について説明した。このような原子セル2の製造方法によれば、アルカリ金属の封止の信頼性に優れた原子セル2を簡単かつ確実に得ることができる。
以上、原子発振器1について説明した。このような原子発振器1(量子干渉装置)は、上述した原子セル2を備える。このような原子発振器1(量子干渉装置)によれば、上述したように、原子セル2がアルカリ金属の封止の信頼性に優れているため、優れた信頼性を発揮することができる。
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図8は、本発明の第2実施形態に係る原子セルの内部空間を示す斜視図である。図9は、図8に示す原子セルの縦断面図である。図10は、図8に示す原子セルの製造における載置工程を説明する図である。図11は、図8に示す原子セルの製造における封止工程を説明する図である。
本実施形態は、第1窓部の構成が異なる以外は、上述した第1実施形態と同様である。
なお、以下の説明では、第2実施形態に関し、上述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。
(原子セル)
図8および図9に示す原子セル2A(ガスセル)が備える窓部23A(第1窓部)は、第1部材24と、第2部材25とを有する。
〈第1部材〉
第1部材24は、上述した第1実施形態における窓部23とほぼ同様の構成であり、光源3からの光LLに対する透過性を有し、第1貫通孔241を有している。したがって、本実施形態における窓部23Aは、第1実施形態における窓部23とほぼ同様の構成である第1部材24と、第1部材24上に設けられた第2部材25と、を有する構成である。
ここで、第1部材24は、第1実施形態における窓部23と異なり、胴体部21の構成材料と同様に比較的低い歪点の材料で構成されていることが好ましい。具体的には、胴体部21の構成材料と同様に、硼珪酸ガラスを用いることが好ましく、胴体部21と同様の組成比の硼珪酸ガラスであることがより好ましい。これにより、所望の形状の第1部材24を簡単かつ高精度に形成することができる、また、胴体部21との接合強度を高めることができる。
〈第2部材〉
第2部材25は、第1部材24の胴体部21とは反対側に設けられている。第2部材25は、平面視で、第1部材24よりも小さい面積である。第2部材25は、第1部材24の角部に設けられており、胴体部21の貫通孔211すなわち空間S1と重ならない位置に設けられている。
また、第2部材25は、その厚さ方向に貫通している第2貫通孔251を有している。この第2貫通孔251は、第1部材24の第1貫通孔241に連通している。なお、第2貫通孔251と上述した第1貫通孔241とで、窓部23Aの貫通孔231Aを構成している。
また、本実施形態では、第2貫通孔251の横断面形状は、円形をなしている。なお、第2貫通孔251の横断面形状は、円形に限定されず、例えば、三角形、四角形、五角形等の多角形、楕円形等であってもよい。また、第2貫通孔251は、幅が空間S2側に向かうにつれて狭くなる形状をなしている。本実施形態では、第2貫通孔251は、円錐台形をなしている。なお、第2貫通孔251の形状(全体形状)は、円錐台形に限定されず、筒状であってもよい。また、第2貫通孔251の幅(径)すなわち第2貫通孔251を形成している内壁面236の幅(径)は、第1貫通孔241よりも幅(径)すなわち第1貫通孔241を形成している内壁面235の幅(径)よりも大きく構成されている。
また、第2部材25の構成材料としては、例えば、ガラス材料、水晶、シリコン材料等が挙げられる。特に、第2部材25の構成材料としてガラス材料を用い、第1部材24、窓部22、胴体部21および封止材26の構成材料としてガラス材料を用いた場合、これらの熱膨張係数を一致または近似させることができる。そのため、封止材26による封止時に原子セル2に生じる残留応力を小さくすることができる。
また、封止材26は、第2貫通孔251と第1貫通孔241の上部(第2貫通孔251側)に設けられている。この封止材26は、第1部材24と第2部材25とを接続する接続部材として機能している。本実施形態では、第2部材25の下面は、第1部材24に接合されておらず、第1部材24と第2部材25とは、封止材26が第2貫通孔251と第1貫通孔241とに接合されていることにより接続されている。
このような構成の原子セル2Aでは、上述したように、「第1窓部」としての窓部23Aは、第1貫通孔241を有する第1部材24と、第1部材24の胴体部21とは反対側に設けられ、第2貫通孔251を有する第2部材25とを有し、貫通孔231Aは、第1貫通孔241および第2貫通孔251で構成されており、封止材26は、第2貫通孔251に設けられている。そして、第2貫通孔251を形成している壁面(内壁面236)は、封止材26の構成材料の軟化点よりも高い歪点の材料で構成されている。
これにより、封止材26が第2貫通孔251に設けられていることで、第2貫通孔251を封止材26で塞ぐことができる。そのため、第1貫通孔241を形成する壁面と封止材26との接触面積を減らすことができるので、第1貫通孔241を形成する壁面が、エネルギービームLの影響を直接的に受けることを低減または回避することができる。その結果、エネルギービームLの照射の影響により第1部材24にクラックや割れが起きることを低減または回避することができるので、アルカリ金属の封止の信頼性をより優れたものとすることができる。また、本実施形態のように、窓部23Aが2つの部材(第1部材24および第2部材25)を有することで、第1部材24を構成する材料として、加工が容易な材料を選択することができる。一方、第2部材を構成する材料として、上述したようなエネルギービームLの照射の影響によりクラックや割れが起きることを低減または回避することができる材料を選択することができる。これにより、原子セル2の製造の容易性とクラックのリスクの低減とを両立することができる。
また、第2部材25は、石英ガラスで構成されていることが好ましい。これにより、エネルギービームLの照射の影響により第2部材25にクラックや割れが起きることをより低減することができ、その結果、封止の信頼性を優れたものとすることができる。
また、第2部材25の厚さは、0.1mm以上2mm以下の範囲内であることが好ましく、0.15mm以上0.45mm以下の範囲内であることがより好ましく、0.2mm以上0.40mm以下の範囲内であることがさらに好ましい。これにより、封止を容易にしつつ、エネルギービームLの照射により発生する熱の影響が第2部材25を介して第1部材24に伝達されることを効果的に低減することができる。
さらに、上述したように、第2部材25は、「第1窓部」としての窓部23Aと「第2窓部」としての窓部22とが重なる方向から見た平面視で、「内部空間」としての空間Sの少なくとも一部である空間S1と重ならない位置に設けられている。これにより、第2部材25がアルカリ金属を励起する光LLに影響を与えることを回避することができる。具体的には、第2部材25が平面視で空間S1と重ならない位置に設けられていないことで、第2部材25の下面で光LLが反射して光源3への戻り光となることを低減または防止することができる。
また、第2貫通孔251の第1貫通孔241側の開口径、すなわち図9中の下端開口の開口径(開口幅)は、第1貫通孔241の第2貫通孔251側の開口径、すなわち図9中の上端開口の開口径(開口幅)以上であることが好ましい。これにより、封止材26と第1貫通孔241を構成する壁面(内壁面235)とを接触させることができる。そのため、第1部材24と第2部材25とを封止材26により接続することができる。
(原子セルの製造方法)
以下、原子セル2Aの製造方法について説明する。
[1]容器準備工程S10
第1部材24および第2部材25は、それぞれ、エッチング技術やフォトリソグラフィ技術若しくは、機械加工、ブラスト加工技術を用いてガラス基板を加工することで形成することができる。
[3]載置工程S30
図10に示すように、第2貫通孔251に封止材26になる材料としてガラス材26aを配置する。
ここで、上述したように、第2貫通孔251の形状は、「内部空間」としての空間Sに向かって幅が小さくなるテーパ状である部分を有する。特に、本実施形態では、上述したように、第2貫通孔251の形状の全体が、テーパ状である。これにより、第2貫通孔251を封止材26により塞ぐ際、ガラス材26aを第2貫通孔251に安定的に載置することができる。その結果、封止の信頼性を優れたものとすることができる。
[4]封止工程S40
図11に示すように、第2貫通孔251を封止材26により塞ぐ。これにより、封止材26によって第2貫通孔251が封止されることで、第1貫通孔241内を気密空間とすることができる。また、封止材26が第2貫通孔251と第1貫通孔241とに接合されることにより、封止材26によって第1部材24と第2部材25とを接続することができる。
以上説明したような原子セル2Aによっても、エネルギービームLの照射により発生する熱によって窓部23Aに歪みが生じることを低減することができるため、原子セル2Aによるアルカリ金属の封止の信頼性を優れたものとすることができる。
2.電子機器
以上説明したような原子発振器1や原子セル2、2Aは、各種電子機器に組み込むことができる。
以下、本発明の電子機器について説明する。なお、以下では、原子セル2を備える電子機器を代表して説明する。
図12は、GPS衛星を利用した測位システムに本発明の原子発振器を用いた場合の概略構成を示す図である。
図12に示す測位システム100は、GPS衛星200と、基地局装置300と、GPS受信装置400とで構成されている。
GPS衛星200は、測位情報(GPS信号)を送信する。
基地局装置300は、例えば電子基準点(GPS連続観測局)に設置されたアンテナ301を介してGPS衛星200からの測位情報を高精度に受信する受信装置302と、この受信装置302で受信した測位情報をアンテナ303を介して送信する送信装置304とを備える。
ここで、受信装置302は、その基準周波数発振源として上述した本発明の原子発振器1を備える電子機器である。このような本発明の電子機器の一例としての受信装置302は、原子セル2(または原子セル2A)を備えている。このような受信装置302によれば、上述した原子セル2(または原子セル2A)の効果を享受することができるため、優れた特性を発揮することができる。また、受信装置302で受信された測位情報は、リアルタイムで送信装置304により送信される。
GPS受信装置400は、GPS衛星200からの測位情報をアンテナ401を介して受信する衛星受信部402と、基地局装置300からの測位情報をアンテナ403を介して受信する基地局受信部404とを備える。
3.移動体
また、上述したような原子発振器1や原子セル2、2Aは、各種移動体に組み込むことができる。
以下、本発明の移動体の一例について説明する。なお、以下では、原子セル2を備える電子機器を代表して説明する。
図13は、本発明の移動体の一例を示す図である。
この図において、移動体1500は、車体1501と、4つの車輪1502とを有しており、車体1501に設けられた図示しない動力源(エンジン)によって車輪1502を回転させるように構成されている。このような移動体1500には、原子発振器1が内蔵されている。
以上のような本発明の移動体の一例としての移動体1500は、原子セル2(または原子セル2A)を備えている。このような移動体1500は、原子セル2(または原子セル2A)を備えている。このような移動体1500によれば、上述した原子セル2(または原子セル2A)の効果を享受することができるため、優れた特性を発揮することができる。
なお、本発明の電子機器は、上述したものに限定されず、例えば、携帯電話機、スマートフォン、タブレット端末、時計、ディジタルスチルカメラ、インクジェット式吐出装置(例えばインクジェットプリンター)、パーソナルコンピューター(モバイル型パーソナルコンピューター、ラップトップ型パーソナルコンピューター)、テレビ、ビデオカメラ、ビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニター、電子双眼鏡、POS端末、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電図計測装置、超音波診断装置、電子内視鏡)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシミュレーター、地上デジタル放送、携帯電話基地局、GPSモジュール等に適用することができる。
以上、本発明の原子セル、量子干渉装置、原子発振器、電子機器および移動体について、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
また、本発明の各部の構成は、上述した実施形態の同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。
また、本発明は、上述した各実施形態の任意の構成同士を組み合わせるようにしてもよい。
また、上述した実施形態では、波長の異なる2種類の光による量子干渉効果を利用してセシウム等を共鳴遷移させる量子干渉装置に本発明の原子セルを用いた場合を例として説明したが、本発明の原子セルは、これに限定されず、光およびマイクロ波による二重共鳴現象を利用してルビジウム等を共鳴遷移させる二重共鳴装置にも用いることができる。
1…原子発振器、2…原子セル、2A…原子セル、3…光源、4…光学系、5…光検出部、6…ヒーター、7…温度センサー、8…コイル、9…制御部、10…パッケージ部、20…容器、21…胴体部、22…窓部、23…窓部、23A…窓部、24…第1部材、25…第2部材、26…封止材、26a…ガラス材、41…遮光部材、42…光学部品、43…光学部品、91…光源制御部、92…温度制御部、93…磁場制御部、100…測位システム、200…GPS衛星、211…貫通孔、212…貫通孔、213…溝、231…貫通孔、231A…貫通孔、235…内壁面、236…内壁面、241…第1貫通孔、251…第2貫通孔、300…基地局装置、301…アンテナ、302…受信装置、303…アンテナ、304…送信装置、400…GPS受信装置、401…アンテナ、402…衛星受信部、403…アンテナ、404…基地局受信部、1500…移動体、1501…車体、1502…車輪、L…エネルギービーム、LL…光、S…空間、S1…空間、S10…容器準備工程、S2…空間、S20…アルカリ金属導入工程、S30…載置工程、S40…封止工程、a…光軸

Claims (14)

  1. 貫通孔を有する第1窓部と、
    第2窓部と、
    前記第1窓部と前記第2窓部との間に配置され、アルカリ金属を収納している内部空間を前記貫通孔に連通させるように前記第1窓部および前記第2窓部とともに形成している胴体部と、
    前記貫通孔を封止している封止材と、を備え、
    前記貫通孔を形成している壁面の少なくとも一部は、前記封止材の構成材料の軟化点よりも高い歪点の材料で構成されていることを特徴とする原子セル。
  2. 前記貫通孔を形成している壁面の少なくとも一部と、前記封止材とは、それぞれ、ガラス材料で構成されている請求項1に記載の原子セル。
  3. 前記貫通孔を形成している壁面の少なくとも一部は、石英ガラスで構成されており、
    前記封止材は、硼珪酸ガラスで構成されている請求項2に記載の原子セル。
  4. 前記胴体部は、前記貫通孔を形成している壁面の少なくとも一部を構成している材料よりも低い歪点の材料で構成されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の原子セル。
  5. 前記第1窓部は、第1貫通孔を有する第1部材と、前記第1部材の前記胴体部とは反対側に設けられ、第2貫通孔を有する第2部材とを有し、
    前記貫通孔は、前記第1貫通孔および前記第2貫通孔で構成されており、
    前記封止材は、前記第2貫通孔に設けられており、
    前記第2貫通孔を形成している壁面は、前記封止材の構成材料の軟化点よりも高い歪点の材料で構成されている請求項1ないし4のいずれか1項に記載の原子セル。
  6. 前記第2部材は、石英ガラスで構成されている請求項5に記載の原子セル。
  7. 前記第2部材の厚さは、0.1mm以上2mm以下の範囲内である請求項5または6に記載の原子セル。
  8. 前記第2貫通孔の形状は、前記内部空間に向かって幅が小さくなるテーパ状である部分を有する請求項5ないし7のいずれか1項に記載の原子セル。
  9. 前記第2部材は、前記第1窓部と前記第2窓部とが重なる方向から見た平面視で、前記内部空間の少なくとも一部と重ならない位置に設けられている請求項5ないし8のいずれか1項に記載の原子セル。
  10. 前記第2貫通孔の前記第1貫通孔側の開口径は、前記第1貫通孔の前記第2貫通孔側の開口径以上である請求項5ないし9のいずれか1項に記載の原子セル。
  11. 請求項1ないし10のいずれか1項に記載の原子セルを備えることを特徴とする量子干渉装置。
  12. 請求項1ないし10のいずれか1項に記載の原子セルを備えることを特徴とする原子発振器。
  13. 請求項1ないし10のいずれか1項に記載の原子セルを備えることを特徴とする電子機器。
  14. 請求項1ないし10のいずれか1項に記載の原子セルを備えることを特徴とする移動体。
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