JP5957124B2 - 白色GaN粉末の製造方法 - Google Patents

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本発明は、高輝度かつ長寿命の蛍光体用薄膜や発振特性に優れた通信素子用薄膜の成膜に好適に用いられるGaNスパッタリングターゲットに関する。
近年、GaN等のIII族窒化物半導体は、その優れた発光特性を利用した短波長半導体レーザや発光ダイオード等が実用化されてきており、また、蛍光特性を利用した光学ディスプレイ等への応用も盛んに行われている。
一般に、III族窒化物半導体は、有機金属化学気相成長(MOCVD)法によって製造されている。MOCVD法は、トリメチルガリウム、トリメチルアルミニウム及びアンモニアを原料とし、キャリアガスに原料の蒸気を含ませて基板表面に運搬し、加熱された基板との反応により原料を分解して結晶を成長させる方法である。精密な膜厚及び組成の制御が可能であるという長所を有している一方、成膜時間が長いこと及び制御パラメータの操作が困難である等の短所がある。
このため、III族窒化物半導体をスパッタ法によって製造する研究も行われている。スパッタ法は、真空容器内に導入されたアルゴン等の希ガス元素がプラズマ化し、このプラズマ化された希ガス元素がスパッタリングターゲット(以下、単に、ターゲットともいう)に衝突することによって、スパッタ粒子がターゲットから飛び出し、これが基板上に堆積して薄膜が形成される。このスパッタ法は、成膜速度を大きくすることができ、また、制御パラメータの操作も比較的容易である。
したがって、GaNを用いたIII族窒化物半導体の積層構造体の製造において、MOCVD法とスパッタ法とを併用して、精密な膜厚及び組成の制御を行うとともに、成膜速度を大きくし、しかも、欠陥のない平滑な薄膜を形成することにより、生産性の向上を図ることも検討されている。
このように、III族窒化物半導体、特に、GaNをスパッタ法により成膜する技術の重要性が高まっている。
上記のようなスパッタ法では、ターゲットから飛び出したスパッタ粒子のほとんどがそのまま基板上に堆積して成膜されるため、形成される薄膜の品質特性は、ターゲットの品質特性に依存しやすい。特に、GaN薄膜は、輝度や寿命、発振特性等が不十分であると、蛍光体や通信素子として使用される際に不具合を招くこととなる。
このため、GaN薄膜の品質特性の向上を図るためには、GaNの成膜に用いられるGaNターゲットは、高純度かつ結晶性が良好であることが求められていた。
このようなGaNターゲットの作製に用いられるGaN原料粉末の製造方法としては、例えば、特許文献1には、GaN粉末を加圧下で加熱して昇華させた後、冷却して結晶化することにより、GaN単結晶を育成する方法が記載されている。また、特許文献2には、ガリウム蒸気とアンモニアガスとを反応させて生成したGaN結晶核上で、ハロゲン化ガリウムとアンモニアガスとを反応させてGaN粉末を得る方法、さらに、特許文献3には、ジアルキルジチオカルバミン酸Gaを主成分とする化合物をアンモニアガス雰囲気中で焼成してGaN粉末を得る方法が記載されている。
一方、GaNの成膜において、GaNターゲットに代えて、29℃以下に冷却したGaaターゲットを窒素雰囲気でスパッタする方法も提案されている(特許文献4参照)。
特開2006−89376号公報 特開2003−63810号公報 特開2001−151504号公報 特開平11−172424号公報
しかしながら、上記特許文献1〜3に記載されているようなGaN原料粉末の製造方法は、いずれも高コストな方法であり、必ずしも生産効率の点で好ましいとは言えなかった。
また、特許文献3に記載されているような反応性スパッタ法は、反応の進行の程度によって反応物の生成量が変動し、GaNターゲットを用いる直接的な方法に比べて、成膜速度を安定させ難いという課題を有していた。
したがって、低コストで高純度かつ結晶性が良好なGaN薄膜を安定したスパッタリングによって形成することができるターゲットが求められている。
すなわち、本発明は、蛍光体や通信素子としての特性に優れたGaN薄膜を得るために、スパッタ法により、低コストで高純度かつ結晶性が良好なGaN薄膜が形成可能なスパッタリングターゲットを提供することを目的とするものである。
本発明に係る白色GaN粉末の製造方法は、Ga粉末をアンモニアの加圧雰囲気炉内で900℃以下の温度で3〜4時間加熱する工程を含むことを特徴とする。
前記加圧雰囲気炉内の圧力は、3気圧以上であることが好ましい。
前記加圧雰囲気炉内の温度は、800〜850℃であることが好ましい。
本発明に係る白色GaN粉末は、上記製造方法により得られたものであり、Zn含有量が0.1%以下であることを特徴とする。
このように、ターゲット作製のためのGaN原料粉末が白色であれば、上記のような白色のターゲットが好適に得られる。
また、このようなターゲットを用いてGaN薄膜を形成することにより、成膜特性のゆらぎを防止することができ、輝度や寿命等の蛍光体特性、発振特性等の向上を図ることができる。
本発明に係るスパッタリングターゲットを用いれば、低コストで高純度かつ結晶性が良好なGaN薄膜を形成することができる。
したがって、本発明に係るターゲットを用いてGaN薄膜を形成すれば、蛍光体用薄膜の輝度特性や通信素子用薄膜の発振特性等の向上を図ることができる。
実施例において白色GaN粉末の製造に用いられる加圧雰囲気炉の概念図である。 実施例1における蛍光体用薄膜の輝度特性の相対評価を示したグラフである。 実施例2における通信素子用薄膜の発振特性の相対評価を示したグラフである。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明に係るスパッタリングターゲットは、白色GaN焼結体からなることを特徴とするものである。
ターゲットの表面及び内部が白色であるGaNターゲットを用いてスパッタ法でGaN薄膜を形成することにより、安定した成膜が可能となる。これにより、該GaN薄膜の成膜特性のゆらぎを防止することができ、輝度や寿命等の蛍光体特性、発振特性等の向上を図ることができる。
前記白色GaN焼結体を得るためには、白色のGaN粉末を焼結させることが好ましい。
GaN粉末の焼結体の色は、原料であるGaN粉末の色に左右されやすいことから、GaN焼結体の原料であるGaN粉末が白色であれば、上記のような白色のターゲットが好適に得られる。
しかしながら、従来から知られているGaN粉末の色は、文献(化学大辞典5、共立出版株式会社、1999年9月20日、縮刷版第36刷、p.880等)によると、暗灰色や黄色等であり、また、市販品においても有色であり、白色ではない。
特開2001−49250号公報に、白色GaN粉末の製法として、Ga又はGa23にZnOを添加した混合粉を管状炉内でアンモニアを流しながら1180℃以上で加熱する方法が開示されているが、この方法では0.1%を超えるZnが残るため、高純度のGaN粉末は得られない。
これに対して、Ga粉末のみを、管状炉内ではなく、アンモニアの加圧雰囲気炉内で所定の温度及び時間保持することにより、0.1%を超えるZnを含まない、高純度の白色GaN粉末が得られることを見出した。
反応雰囲気を加圧状態とすることにより、Gaの窒化反応が容易に進行し、3気圧以上であれば、反応温度を900℃以下とすることができ、一旦生成したGaNの分解を抑制することができる。
このようにして得られた白色GaN粉末を、例えば、ホットプレス炉により焼結することにより、Zn含有量が0.1%以下の白色のGaNターゲットを作製することができる。
このターゲットを用いてスパッタ法により成膜したGaN薄膜は、従来の黄色のGaN粉末やZnを0.1%超含むGaN粉末から作製したターゲットを用いて成膜したGaN薄膜に比べて、蛍光体用薄膜における輝度特性や通信素子用薄膜における発振特性の向上が図られる。
上記の本発明に係る白色のGaNターゲットは、酸素濃度が1.5%以下であることが好ましい。
上記酸素濃度であれば、ターゲットの白色化を図ることができ、これを用いて形成したGaN薄膜の上記のような薄膜特性の向上を図ることが可能となる。
酸素濃度が1.5%を超えると、酸素濃度が高くなるにつれてGaNは黄色みを帯びてくる。酸素濃度が1.5%以下であれば、GaNは白色である。
このことから、GaNターゲットを用いたスパッタ法により形成したGaN薄膜の成膜特性のゆらぎは、ターゲット中の酸素濃度に起因するものと示唆される。
したがって、GaNターゲットは、酸素濃度を低減させることにより白色化することができ、白色のGaN原料粉末を焼結してGaNターゲットを作製することにより、GaNスターゲットを用いてスパッタ法により成膜した薄膜特性の向上を図ることが可能となる。
なお、GaN粉末の焼結の際には、上述したように、通常、ホットプレス炉が用いられるが、このホットプレス炉での焼結においては、カーボン型を加熱し、炉内を還元雰囲気として行う。これにより、焼結体であるターゲットの酸素濃度は、GaN粉末の酸素濃度と同等程度に維持される。このため、ターゲットの酸素濃度を1.5%以下とするためには、GaN粉末の酸素濃度も1.5%以下であることが好ましい。
以下、本発明を実施例に基づきさらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例により制限されるものではない。
[実施例1]
図1に示すような加圧雰囲気炉1において、Ga粉末2を炉内のヒータ3上にセットして800℃に加熱した。純アンモニアガス4を炉のガス入口5から4〜4.5気圧で流入してガス出口6から流出させ、Ga粉末の上部を3時間流通させた。これにより、白色のGaN粉末が得られた。この粉末を燃焼赤外線吸収式酸素窒素分析装置にて分析したところ、酸素濃度が1.34%であることが確認された。
得られた白色GaN粉末を、ホットプレス炉にて、1000℃で30分間、150tで加圧して焼結し、直径164mm、厚さ5mmの白色のGaNターゲットを作製した。このターゲットについて、前記粉末と同様に分析したところ、酸素濃度が1.42%であった。
このターゲット(本発明品)を用いてスパッタ法により蛍光体用薄膜を形成した。
図2に、この蛍光体用薄膜と市販の黄色のGaN粉末から作製したターゲット(従来品)を用いてスパッタ法により形成した薄膜の輝度特性の比較を示す。図2に示す輝度特性は、フォトンエネルギーに対する発光強度の相対評価である。
図2に示したように、上記により作製した白色GaNターゲットを用いることにより、蛍光体用薄膜の輝度特性が向上することが認められた。
[実施例2]
図1に示すような加圧雰囲気炉1において、Ga粉末2を炉内のヒータ3上にセットして850℃に加熱した。純アンモニアガス4を炉のガス入口5から5〜5.5気圧で流入してガス出口6から流出させ、Ga粉末の上部を4時間流通させた。これにより、白色のGaN粉末が得られた。この粉末を燃焼赤外線吸収式酸素窒素分析装置にて分析したところ、酸素濃度が1.06%であることが確認された。
得られた白色GaN粉末を、ホットプレス炉にて、1000℃で30分間、150tで加圧して焼結し、直径110mm、厚さ5mmの白色のGaNターゲットを作製した。このターゲットについて、前記粉末と同様に分析したところ、酸素濃度が1.12%であった。
このターゲット(本発明品)を用いてスパッタ法により通信素子用薄膜を形成した。
図3に、この通信素子用薄膜と市販の黄色のGaN粉末から作製したターゲット(従来品)を用いてスパッタ法により形成した薄膜の発振特性の比較を示す。図3に示す発振特性は、連続発振時における電流に対する電圧の相対評価である。
図3に示したように、上記により作製した白色GaNターゲットを用いることにより、通信素子用薄膜の発振特性が向上することが認められた。
1 加圧雰囲気炉
2 Ga粉末
3 ヒータ
4 アンモニアガス
5 ガス入口
6 ガス出口

Claims (3)

  1. Ga粉末をアンモニアの加圧雰囲気炉内で900℃以下の温度で3〜4時間加熱する工程を含むことを特徴とする白色GaN粉末の製造方法。
  2. 前記加圧雰囲気炉内の圧力が、3気圧以上であることを特徴とする請求項1に記載の白色GaN粉末の製造方法。
  3. 前記加圧雰囲気炉内の温度が、800〜850℃であることを特徴とする請求項1又は2に記載の白色GaN粉末の製造方法。
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