本実施形態は、上記した様な従来の技術が有する問題点に鑑みなされたものでその目的とするところは連続して大量に安定した切り屑・塵等の残留や付着のない電極用集電体としての多孔金属箔が製造出来て、従来の他の工法に比べて大幅に低コスト化を実現可能としたものである。即ち、本実施形態は、金属製ロール金型とゴム製受けロールを用いるその工法を用いる限りにおいては、避けて通れないハーフカットの問題と、抜きカエリ間での抜き屑の挟み込みをより有効に排除するという問題との、2つの問題点を同時に達成し、さらには抜き屑のゴム製受けロールの確実な除去を達成することのできる多孔金属箔のロール成形装置及び多孔金属箔のロール成形方法の提案である。更に、本実施形態は、その方法で成形したコイル状多孔金属箔の提供を目的とするものである。
まず、ハーフカット(不完全抜き状態)の原因は、従来では、金属箔がロール金型と受けロールの間で1度のみの短時間の挟み込み動作による成形工程で孔明け加工を実施しているからである。本実施形態においては、金属箔の成形加工のパスライン(成形加工領域X)をロール金型の周囲に接触状態を保った状態を長く確保し、最初にロール金型と受けロールの間に噛み込まれる位置Aから離間位置Cまでの成形工程において、ロール金型の凸形状の型が金属箔の貫通成形孔に噛み込んだままの状態で金属箔と共に回転しており、この接触状態を保っている間に、噛み込み位置の受けロールの次に配置した受けロールによって再度ロール金型との間の圧接による穿孔作業を達成させることにより、複数回のロール刃での加工状態を経過させることとなり、不完全な抜き状態・ハーフカットを完全な抜き状態とするものである。尚、この方式は、受けロールの数をさらに増やすことにより、成形工程の回数(段数)をさらに増やして、より完全な抜き状態を得ることが可能なものである。本明細書においては、3つ以上の受けロールを設けた例については、特に説明していないが、これは当業者において、本実施形態の思想を適用することにより容易に実施可能なものである。
次に、受けロール上の「残留抜き屑」により極まれに発生する「抜きカエリ」の対策を説明する。これは、成形後の孔に「残留抜き屑」が成形ロール金型に対して「抜きカエリ」として挟まった状態の「抜き屑」である。この「抜きカエリ」については、表面に樹脂製の弾性繊維を植立した回転ブラシを成形ロール金型に対して対向配置した状態で回転させ、成形ロールの微細金型が金属箔の貫通孔に未だ噛み込んでいる状態において、成形された金属箔に対向させて1000rpm程度で高速回転させることにより、成形金属箔に同伴してきた加工屑を排除するものである。
本実施形態の多孔金属箔のロール成形方法は、表面に多数の凸型を備えた成形ロールと弾性体表面を備えた受けロールにより、その間に挿入される金属箔に多数の孔を成形加工するものであり、本ロール成形において受けロールは重要なパーツである。そこで、本実施形態は、ハーフカットの改善のために受けロールの表面構造に改善を加えたものである。この際に、更に改善を加える必要がある事項は、受けロール上の「残留抜き屑」の埋没対策である。つまり、受けロール上の「埋没切り屑」が新たに供給される金属箔20に悪影響を与える問題である。本実施形態は、その点に大幅な改善を加えたものである。
上述の回転ブラシは、より効果を奏するためには、立体カム(溝カム)又は2軸のモータ駆動を用いて高速回転させることが有効である。これにより、同時に2軸方向に高速移動・揺動させることで、受けロールに挟まった抜け屑に対し全方位に排除しようとする力が作用し、加工屑の排除機能が高まることが期待できるものである。このような排除機能は、回転ブラシの金属箔表面への接触の回数(具体的には回転数或いは揺動樹脂ブラシ数)を増やすことにより、その目的とする抜き屑排除の精度が向上することは明白である。
また本実施形態の多孔金属箔のロール成形方法は、金属箔の加工後の移送ラインの途中にて集塵効率を考慮した密閉に近い容器内にて加圧・吸引により除塵する工程を備える。その際に、その容器の多孔金属箔が通る部分に平面的にて長方形状ブラシを設置し、多孔金属箔の移動の際に連続的に接触させて、その表面から塵等を剥がして舞い上がらせることで吸引し易くしている。容器内には所定減圧の吸引エアー流体が循環することにより排除した加工屑・塵等を集塵器にて回収するものである。
本実施形態の多孔金属箔のロール成形方法においては、抜き屑のように加工にて発生する比較的大きな屑以外の微細塵については、加工後の多孔金属箔の巻取りの直前の位置において、市販の乾式のクリーニング機能を有する除塵ローラを配置することが有用である。この除塵ローラによる除塵もその回数(除塵ローラの配置数)を増やすことでその目的とする微細塵の排除の精度が向上する。
本実施形態の多孔金属箔のロール成形方法では、多孔金属箔のロール成形の後の除塵・バリ取り工程で用いるユニットとして新規な超音波・電界エッチングユニットを開発・提供することを目的とする。この超音波・電界エッチングユニットは、本実施形態の方法に用いられる多孔金属箔のロール成形装置に組み込まれるユニットとして使用されるだけではなく、単独の装置として種々の金属の箔又は板状物の一般的なバリ取り技術として転用することが可能なものである。すなわち、本実施形態の多孔金属箔のロール成形方法は、コイル状に巻いた長尺の金属箔を巻き戻して、該長尺金属箔を成形ロールと受けロールの間に挟み込んで金属箔に多数の微細な孔を成形し、該微細孔成形後の成形長尺金属箔を再度コイル状に巻き取る多孔金属箔のロール成形方法であって、成形ロールは、ロール表面全周に渡って微細な凸型を多数形成してあり、受けロールは、成形ロール表面の凸型に対向して圧接させた弾性体表面より成るロールであり、微細孔成形後の長尺金属箔が再度コイル状に巻き取られる前の多孔金属箔移送ライン途中に、成形長尺金属箔の微細孔周辺に形成されたバリ先端の微屑発生の可能性ある部分を超音波・電界エッチング手段により除去するように構成し、これにより、成形後の金属箔の加工バリを効果的に除去することが可能なものである。
本実施形態の多孔金属箔のロール成形方法においては、加工により発生するバリ状の加工のカエリを、一対の平金属ロールにて挟持する圧延機能によって、箔厚近くまでに仕上げることが可能である。
しかしながら、このように圧延機能により箔厚近くまでに仕上げることが、新たな課題を発生させる。つまり、多孔金属箔の幅方向での両側辺部は未加工のためバリ状の加工返りがなく、厚みが薄い原箔状態となっている。このような厚みの異なる箔材を圧延ロールにて均一に加圧・圧延すると箔の移送方向に伸びが発生する際に、未加工部分の両側辺部と中心部分の加工部分とで伸び量が異なるため、長尺のコイル材の場合にはその伸び量の差が集積してシワが発生し、箔表面に圧延されたスジとなって現れる。本実施形態の多孔金属箔のロール成形装置及び多孔金属箔のロール成形方法は、このような現象を防止することを目的とするものである。
更に、本実施形態の多孔金属箔のロール成形方法においては、金属箔のロール成形後に加工条件的に不安定な両側辺部を連続トリムして多孔金属箔の品質改善を図ることも可能としている。
本実施形態の方法に用いられる多孔金属箔のロール成形装置は、コイル状に巻いた長尺の金属箔を巻き戻して、該長尺金属箔を成形ロールと受けロールの間に挟み込んで金属箔に多数の微細な孔を成形し、該微細孔成形後の多孔長尺金属箔を再度コイル状に巻き取る多孔金属箔のロール成形装置であって、成形ロールはロール表面に微細な凸型を多数形成してあり、受けロールは成形ロールに対向して圧接させた弾性体より成るロールであり、受けロールは金属箔の流れに沿って複数設けられている。
さらに、本実施形態の方法に用いられる多孔金属箔ロール成形装置は、受けロールの成形ロールとの対向圧接部よりも回転方向で下流側に、加工屑を掻き取るために表面に弾性繊維を持った掻取りブラシ設けている。
さらに、本実施形態の方法に用いられる多孔金属箔ロール成形装置は、成形ロールに対向して、複数の受けロールよりも更に金属箔の流れに沿って下流側に、弾性繊維を持った回転ブラシを設けている。
さらに、本実施形態の方法に用いられる多孔金属箔ロール成形装置は、金属箔の流れに沿って上流側に設けられた第1受けロールと成形ロールとの対向圧接位置は、巻き戻された長尺金属箔が成形ロールと接し始める位置Aの近傍であり、第1受けロールより金属箔の流れに沿って下流側に設けられた第2受けロールと成形ロールとの対向圧接位置Bは、長尺金属箔が成形ロールと接している領域の中間位置近傍であり、成形ロールに対向した回転ブラシの設置位置は、微細孔成形後の多孔長尺金属箔が成形ロールと離れ始める位置Cの近傍である。
さらに、本実施形態の方法に用いられる多孔金属箔ロール成形装置は、微細孔成形後の長尺金属箔が再度コイル状に巻き取られる前の金属箔移送ライン途中に、金属箔の加工によって発生したバリ状の加工返りを箔厚近くまでに圧延して仕上げるために、対向して回転する圧延ロールを設けている。
さらに、本実施形態の方法に用いられる多孔金属箔ロール成形装置は、微細孔成形後の長尺金属箔が再度コイル状に巻き取られる前の多孔金属箔移送ライン途中に、ほぼ密閉した空間部を設け、その中で移送多孔金属箔に圧縮気体の吹き付け或いは吸引することにより、多孔金属箔に同伴してくる加工屑・微粉・塵等の異物を除去するユニットを設けている。
上記のような装置を用いた本実施形態の多孔金属箔のロール成形方法は、コイル状に巻いた長尺の金属箔を巻き戻して、該長尺金属箔を成形ロールと受けロールの間に挟み込んで金属箔に多数の微細な孔を成形し、該微細孔成形後の長尺多孔金属箔を再度コイル状に巻き取る多孔金属箔のロール成形方法であって、成形ロールはロール表面に微細な凸型を多数形成してあり、受けロールは成形ロールに対向して圧接させた弾性体より成るロールであり、受けロールは金属箔の流れに沿って設けられた実質的に同一の機能・性能を有する第1受けロール及び第2受けロールによって構成されており、該第1受けロールにおいて金属箔孔のハーフカットが発生してもそれに続く第2受けロールによって金属箔に対しての成形を施すようにしたことを特徴とする。
さらに、本実施形態の多孔金属箔のロール成形方法は、微細孔成形後の長尺金属箔が再度コイル状に巻き取られる前の多孔金属箔移送ライン途中に設けた圧延ロールにより、金属箔の加工によって発生したバリ状の加工返りを箔厚近くまでに圧延して仕上げることを特徴とする。
さらに、本実施形態はコイル状多孔金属箔にもあり、このコイル状多孔金属箔は、コイル状に巻いた長尺の金属箔を巻き戻して、該長尺金属箔を成形ロールと受けロールの間に挟み込んで金属箔に多数の微細な孔を成形し、該微細孔成形後の長尺多孔金属箔を再度巻き取ったコイル状多孔金属箔であって、成形ロールにはロール表面に微細な凸型を多数形成してあり、受けロールは成形ロールに対向して圧接させた弾性体より成るロールであり、受けロールは金属箔の流れに沿って設けられた実質的に同一の機能・性能を有する第1受けロール及び第2受けロールによって構成されており、該第1受けロールにおいて金属箔孔のハーフカットが発生してもそれに続く第2受けロールによって金属箔に対しての成形が施されるようにし、微細孔成形後の長尺金属箔が再度コイル状に巻き取られる前の多孔金属箔移送ライン途中に設けた圧延ロールにより圧延された後に、ほぼ密閉した空間部を設け、その中で移送多孔金属箔に圧縮気体の吹き付け或いは吸引することにより、多孔金属箔に同伴してくる加工屑・微粉・塵等の異物を除去され、更に圧延ロールにより金属箔の加工によって発生したバリ状の加工返りを箔厚近くまでに圧延して仕上げるようにした後に再度巻き取った平坦で異物が除去されたコイル状多孔金属箔であることを特徴とする。
ここで、本実施形態の多孔金属箔のロール成形方法を実現する多孔金属箔のロール成形装置についても説明しておく。この多孔金属箔のロール成形装置は、コイル状に巻いた長尺の金属箔を巻き戻して、該長尺金属箔を成形ロールと受けロールの間に挟み込んで金属箔に多数の微細な孔を成形し、該微細孔成形後の成形長尺金属箔を再度コイル状に巻き取る多孔金属箔のロール成形装置であって、
前記成形ロールは、円周状のロール表面全周に渡って微細な凸型を多数形成してあり、前記受けロールは、前記成形ロール表面の凸型に対向して圧接される弾性体表面より成るロールであり、
前記長尺金属箔は、前記成形ロール表面の凸型に対して、噛み込み位置Aにおいて噛み込み導入され離間位置Cにおいて離間するように構成され、前記噛み込み位置Aから前記離間位置Cまでの成形加工領域Xが前記成形ロール表面全周域の内の180度以上を占めるように構成され、
これにより前記長尺金属箔は、前記成形加工領域Xにおいて前記成形ロール表面の凸型に対して噛み込まれた状態を維持して該成形ロールと共に回転するように構成されている。
これにより、加工されるべき長尺金属箔が、円周状の成形ロール表面の凸型に長い間噛み込んだ状態で共に回転することにより、金属箔への孔の加工を完全に達成することが可能なものである。
さらに、本実施形態の多孔金属箔のロール成形方法を実現する多孔金属箔のロール成形装置は、前記成形ロール表面に形成された凸型が、その頂部にクレーター状の凹部を形成している。
これにより、打ち抜かれた切り屑がクレーター状凹部によって変形されることにより、受けロールの弾性体表面内に埋没して、次の成形加工に悪影響を与えることが回避できるものである。
さらに、本実施形態の多孔金属箔のロール成形方法を実現する多孔金属箔のロール成形装置は、前記受けロールが、前記成形加工領域X内において前記成形ロール表面の凸型に対向して配置され、且つ、前記金属箔の流れ方向に沿って複数段設けられている。
これにより、一つの成形ロールによる加工であっても、複数段の成形加工が可能となり、ハーフカットによる抜き屑の問題が解消されるものである。
さらに、本実施形態の多孔金属箔のロール成形方法を実現する多孔金属箔のロール成形装置は、前記受けロールに形成された弾性体表面が、その軸線方向に強弱の弾性分布を構成されており、前記成形ロール表面に形成された凸型が配置されている軸線方向位置に対応する位置の弾性は弱く、該凸型が配置されてない軸線方向位置に対応する位置の弾性は強くされた弾性分布で構成されている。
このように受けロールの弾性体表面が軸線方向に強弱の弾性分布を形成することにより、孔の打ち抜き加工の際に、成形ロール凸型の対応部分は軟らかく、その周辺を硬くすることにより、従来の打ち抜き型による打ち抜きの際の材料押さえと似た効果を達成できるものである。
さらに、本実施形態の多孔金属箔のロール成形方法を実現する多孔金属箔のロール成形装置は、前記成形ロールの前記受けロールとの対向圧接部よりも回転方向で下流側の成形加工領域Xにおいて、加工屑を掻き取るために表面に弾性繊維を配置した掻取りブラシを設けている。
これにより、後段の処理に移送される成形後の金属箔に着いて移送される加工屑を極力掻き取ることが可能となるものである。
さらに、本実施形態の多孔金属箔のロール成形方法を実現する多孔金属箔のロール成形装置は、コイル状に巻いた長尺の金属箔を巻き戻して、該長尺金属箔を成形ロールと受けロールの間に挟み込んで金属箔に多数の微細な孔を成形し、該微細孔成形後の成形長尺金属箔を再度コイル状に巻き取る多孔金属箔のロール成形装置であって、
前記成形ロールは、ロール表面全周に渡って微細な凸型を多数形成してあり、前記受けロールは、前記成形ロール表面の凸型に対向して圧接させた弾性体表面より成るロールであり、
前記微細孔成形後の長尺金属箔が再度コイル状に巻き取られる前の多孔金属箔移送ライン途中に、前記金属箔の加工によって発生したバリ状の加工返りを箔厚近くまでに圧延して仕上げるために、対向して回転する圧延ロールを設けている。
これにより、この金属箔を2次電池用の電気要素に用いたとしても、バリによる電気的或いは機械的な悪影響を排除することが可能なものである。
さらに、本実施形態の多孔金属箔のロール成形方法を実現する多孔金属箔のロール成形装置は、前記微細孔成形後の長尺金属箔が再度コイル状に巻き取られる前の多孔金属箔移送ライン途中であって、前記圧延ロールによる圧延加工の前に、前記金属箔の未加工両側縁部にエンボス加工を施すように構成している。
これにより、多孔金属箔移送ライン中の圧延加工の際に、金属箔の幅方向において圧延による伸び率の相違を解消することができ、金属箔側縁部のシワの発生を抑えることができるものである。
さらに、本実施形態の多孔金属箔のロール成形方法を実現する多孔金属箔のロール成形装置は、コイル状に巻いた長尺の金属箔を巻き戻して、該長尺金属箔を成形ロールと受けロールの間に挟み込んで金属箔に多数の微細な孔を成形し、該微細孔成形後の成形長尺金属箔を再度コイル状に巻き取る多孔金属箔のロール成形装置であって、
前記成形ロールは、ロール表面全周に渡って微細な凸型を多数形成してあり、前記受けロールは、前記成形ロール表面の凸型に対向して圧接させた弾性体表面より成るロールであり、
前記微細孔成形後の長尺金属箔が再度コイル状に巻き取られる前の多孔金属箔移送ライン途中に、成形長尺金属箔の微細孔周辺に形成されたバリ先端の微屑発生の可能性ある部分を超音波・電界エッチング手段を設けている。
これにより、成形後の金属箔の加工バリからの微屑を効果的に除去することが可能なものである。
以下、より具体的に本実施形態を図面を参照しながら説明する。まず、本実施形態の多孔金属箔のロール成形について、図面全体を参照しながら詳細に説明する。本実施形態の方法を実現する多孔金属箔ロール成形装置は、二次電池等電子部品の電極用集電体として金属箔に多数の微細孔を幾何学的に搾設配列させるもので、更に説明すれば、図1に示すように、機械加工技術等で形成された多数の凸型としての微細突起(エンボス)11(300〜600μmφ)が幾何学的に等間隔で配置されている金属製の成形ロール10、及び、これと同期して回転する外周面が弾性体製(例えば合成ゴム)の受けロール30によってアルミニウムや銅等の金属箔20に微細孔を明けるものである。この際、表面弾性体製(例えば合成ゴム)の受けロール30は、金属製の成形ロール10に対して、所定の押圧力で加圧されて転動している。
これにより、金属箔20に微細の孔が成形され、その際に300〜600μmφで厚み10〜100μm程の抜き屑21が発生する。この抜き屑21の多くは、金属箔20から分離されて受けロール30であるゴムロールに伴われて(付着或いは埋没して)移送されるが、一部は金属箔20に同伴される。そのように金属箔20に同伴される抜き屑21は、受けロール30の下流側に配置されたブラシロール50により掻き落とされる。このブラシロール50の回転方向は、金属箔20の移送方向と対向する方向が望ましいが、同じ方向に回転させても良い。(40) JP 2014-100784 A 2014.6.5
このようにして、抜き屑21と微細な金属粉を表面がゴムロールである受けロール30で金属箔20から剥離分離し、分離しきれずに金属箔20に随伴される抜き屑21等(図9(B)参照)は、2軸のモータ駆動機構501等を成形ロール10の円周上に追加配置することにより掻き落し効果を向上させることができる(図8参照)。図8に示すように、この2軸のモータ駆動機構501は、高速回転モータ502によりブラシロール50の回転動作が達成される。加えて、回転モータ503及びカム504により、2軸モータ駆動機構501全体を成形ロール10の軸方向へ高速に揺動させる。この回転動作と高速移動・揺動動作により、加工後の孔に挟まった抜き屑21に対しても全方位的に排除しようとする力が作用し、加工抜き屑21の排除機能が高まることが期待できるものである。
さらに、金属箔20からは剥離され分離したものの、成形ロール10の凸型としての微細突起(エンボス)11に付着して、離間位置Cを越えても成形ロール10の凸型11等に随伴された粉塵等を排除するために、成型ロール10の金属箔20の導入部よりも回転方向で上流側に払い落としブラシロール56を設けることにより、成形ロール10の表面から粉塵を直接的に掻き落とすことができる。離間位置Cを越えて成形ロール10の凸型11等に随伴される粉塵等は、新たに成形ロール10に供給され噛み込まれる金属箔20次の成形の際に極めて大きな悪影響を与えるものであり、除去されなければならない。
さらに、後述するが、本実施形態の方法を実現する多孔金属箔ロール成形装置の全体構成においては、成形後の多孔金属箔の巻取り部までの箔の移動の途中で、ブラシつきの加圧・吸引容器と乾式クリーニング機能つき除塵ロールによって、全く金属片、金属粉等のない連続した広範囲に規則的な配列の微細孔を有する集電体として巻取ってコイル状の多孔金属箔を得るものである。
さらに詳細に本実施形態の方法を実現する多孔金属箔ロール成形装置を順次添付図面に沿って説明する。第1の実施形態としての多孔金属箔ロール成形装置は、図1に成形ロール10と受けロール30とによる成形加工部分の詳細図を示し、図2に全体的な装置構成を示している。
図1に示す第1の実施形態においては、外径100〜500mmφの成形ロール10に対して第1及び第2の受けロール30及び40が被加工金属箔20を挟み込んで転圧回転するものである。この際に、長尺金属箔20は、成形ロール10の表面の凸型11に対して噛み込み位置Aにおいて噛み込み導入され離間位置Cにおいて離間するように構成されている。そして、噛み込み位置Aから離間位置Cまでの成形加工領域Xは、成形ロール表面全周域の内の180度以上を占めるように構成されている。これにより、長尺金属箔20は、成形加工領域Xにおいて成形ロール10の表面の凸型11に対して噛み込まれた状態を維持して成形ロール10と共に回転するように構成されているので、加工されるべき長尺金属箔20が、円周状の成形ロール10の表面の凸型11に長い間噛み込んだ状態で共に回転することにより、金属箔20への孔の加工を完全に達成することが可能なものである。つまり、従来では、金属箔がロール金型と受けロールの間で1度の短い時間での挟み込み動作による成形工程で孔明けをしていたが故のハーフカットの問題を解決するものである。これが、本実施形態の基本的技術思想の一つである。
さらに上述のように、成形ロール10に対向させて複数の受けロール30,40を設けたことが本実施形態のもう一つの基本的技術思想である。これによっても、従来の金属箔がロール金型と受けロールの間で1度の挟み込み動作による成形工程故のハーフカットの問題を解決するものである。この第1及び第2の受けロール30及び40は、成形ロール10に対して所定の圧力で押圧されながら転動する。成形ロール10の周りには、更に金属箔20の流れの下流側に、外径80mmφで0.25φmmの樹脂ワイヤーのワイヤー長16mmのブラシロール50が配置されている。この際、ブラシロール50は、高速回転モータ502(図8)によって、被加工金属箔20の移動方向と対向して回転(成形ロール10の回転方向と反対の方向)すると共に、回転モータ503及びカム504により、全体を成形ロール10の軸方向へ高速に揺動させて、金属箔20に同伴してきた抜き屑21を金属箔20から排除する。
さらに、本実施形態の方法を実現する多孔金属箔ロール成形装置を、金属箔20の送り出しから巻き取りまでの全工程の概略を図2に沿って説明する。この全工程は、以上の実施形態で説明した内容を含んだリール状材料の金属箔20等のロール成形加工において、加工屑や粉塵が製品としての巻き取られたリール状多孔金属箔26に残留しない多孔金属箔ロール成形装置及び多孔金属箔のロール成形方法を提案するものである。
図2に示す多孔金属箔ロール成形装置の全工程での成形ロールユニット10,30,40及び抜き屑排除ユニット50等は、各実施形態の構成と同一構成であるのでここでは詳細な説明はしない。図2の多孔金属箔ロール成形装置においては、リール状金属箔25から長尺金属箔20が矢印方向に送り出され、導入ロール31によって、成形ロール10と第1の受けロール30の間に挟み込まれ、成形ロール10表面の凸状切刃型11(図2には図示なし)によって微小孔が成形される。抜き屑21は第1の受けロール30の表面のゴム内に一旦は捕捉され、その後、第1の受けロール30の回転により微小孔を成形加工後の金属箔20からは剥離分離される。第1の受けロール30表面のゴムに付着した抜き屑21は、下流に設けられた払い落としブラシロール39,39によって払い落とされる。
被加工金属箔20の成形加工は、送り出しローラ25から、巾260mmの被加工金属箔20が巻き戻されて矢印の方向に移送されながら、成形ロール10と受けロール30との間の挟み込み位置A近傍で挟み込まれ、所定の加圧力8(15Mpa)で押圧されることにより、成形ロール10上の微細な凸状の切刃型(エンボス)11が金属箔20の表面に接触し、受けロール30のゴムの弾力の弾性限界内の抵抗が被加工金属箔20の破断力に勝ることにより微細孔加工が施され、直後に上記抵抗は瞬間的に消え、成形ロール10の凸型11の押圧により弾性変形していた受けロール30の表面の弾性ゴムは元の形状に復帰し、抜き屑21が受けロール30上に残される。受けロール30上に残された抜き屑21は、回転ブラシ39,39によって受けロール30から取り除かれる。また、成形後の金属箔20に随伴する加工屑等は、ブラシロール50によって金属箔20から取り除かれる。その後、成形された金属箔20は、圧延ユニッット80により、抜き加工により金属箔20に発生した加工バリとしての「カエリ」を圧延して箔厚をロール成形加工前の原箔厚に近いレベルにしている。さらにその後段で、加工完成箔の巻取り直前にて、万が一にも金属箔20に同伴して来る抜き加工微粉の排除の目的でエアー除塵ユニット90及びクリーニング機能付き除塵ローラユニット100を備えている。
さらに、より実際の装置として改良された多孔金属箔のロール成形装置(図3)においては、送り出しローラ25から巻き戻された被加工金属箔20は、幾つかのテンションロール(符号なし)を経て巻き戻されて矢印の方向に移送されながら、成形ロール10と受けロール30との間の挟み込み位置A(図3では符号なし)近傍で挟み込まれ、所定の加圧力で押圧されることにより、成形ロール10上の微細な凸型が金属箔20の表面に接触して微細孔加工が施される。受けロール30上に残された抜き屑21は、回転ブラシ39,39によって受けロール30から取り除かれる。また、成形後の金属箔20に随伴する加工屑等は、4連ブラシロール51,52,53,54によって金属箔20から取り除かれる。その後、成形された金属箔20は、一次圧延ユニッット80により、抜き加工により金属箔20に発生した加工バリが圧延される。さらにその後段には、金属箔20に同伴して来る抜き加工微粉の排除の目的でエアー除塵ユニット90が設けられている。
さらに後段には、金属箔20の両縁部分の未加工部分をスリットする円形の上下スリッター刃によるスリッターユニット110(後述する)が設けられている。次いで、段差ロール(符号なし)を経て、表面に粘着性シートを配したクリーニング機能付きNo1クリーニングロールユニット100が設けられ、依然として金属箔20に随伴してくる加工微粉を除去する。さらに、No1クリーニングロールユニット100の後段には、二次圧延ユニット88が設けられている。この二次圧延ユニット88によって、移送されてきた金属箔20は、抜き加工により発生した加工バリとしての「カエリ」を圧延して箔厚をロール成形加工前の原箔厚に近いレベルにしている。この二次圧延ユニット88には一対の圧延ロールに対して粘着性の或るクリーニングロール(符号なし)が対向配置されている。
以上の各手段を経ても加工完成箔の巻取り直前にて、万が一にも金属箔20に同伴して来る抜き加工微粉の排除のために、後段に粘着性を備えたクリーニング機能付きNo1、No2クリーニングロールユニット100,100を備えており、その後に、耳端位置制御装置(EPC)120により金属箔20の耳端位置が制御されて完全に塵埃を除去した金属箔20が巻き取りロール26により巻き取られて製品が完成する。
本実施形態において用いられる弾性体製の受けロール30の外周面は、図4(A)に示すように構成されている。つまり、受けロール30は、内周の金属製受けロール芯金32と外周面の弾性体(例えば合成ゴム)の外周ロール33とから構成されている。
この成形ロール10の凸型(エンボス)11と受けロール30の間の圧力は被加工箔材質20の厚みと巾、及び幾何学的孔の配置状況等により微妙に適正値は変化するが、一つの最適実施形態として表1を示す。
そして、被加工金属箔20は、挟み込み位置Aにおいて成形ロール10に挟み込まれて成形加工が開始されると、その後も成形ロール10に対して微細金型11が金属箔20の加圧・孔加工の状態のまま、即ち、基本的に全ての微細孔に成形ロール10の凸部頂部径d1(0.3〜1.0mmφ)で、高さh1(0.1〜0.4mm)で、傾斜角度α1(10°〜45°)の凸形状の微細切刃の凸型(エンボス)11が挿入された状態で離間位置C近傍まで移送される。その後、30mmφ程度の方向変換ローラ60,66を配置することにより、最下流の巻取りローラ26に向けた方向付けがなされる。これにより、金属箔20は、挟み込み位置Aから離間位置Cの直前までの成形加工領域Xにおいては、長時間の間、成形ロール10に対して加圧・孔加工の状態が継続されることとなる。
金属箔20の挟み込み位置Aから離間位置Cの直前までの加圧・孔加工の状態の成形加工領域Xにおいて、被加工金属箔20は受けロール30による成形加工を終了した後に、加圧15MPaの加圧力で成形ロール10と第2受けロール40の間を通過する。その際に、被加工金属箔20にとっては再度加圧力が加えられて第1の加工と同様の微細孔加工の状態になることで、ハーフカット(不完全抜き加工)部分を孔貫通状態にすることができる。
成形ロール10に対向して設けられた第1受けロール30と第2受けロール40の設置範囲は、挟み込み位置A近傍から離間位置C近傍までの成形加工領域X(180°〜270°)内であって、挟み込み位置A近傍から第2成形加工位置B近傍までの90°〜180°程度の範囲内において適宜設定できる。本実施形態では、今まで説明してきた様に、長時間の成形加工状態の持続と、複数の成形ロール10に対向して複数の受けロールにより複数回の加工動作を達成してハーフカット(不完全抜き加工)を防止しようとするものであるから、成形ロール10の円周上に沿って下流側に第3以降の受けロール(図示なし)の設置も可能になる。そのためには、挟み込み位置A近傍から離間位置C近傍までの成形加工領域を広くとる必要がある。このようにしたり、成形ロール10の外径を可能な限り大きくしたりすることで、受けロールの配置位置と数量が増し、可能な限りのハーフカット(不完全抜き加工)の解消という目的への対応が可能となる。
ここで、ハーフカット(不完全抜き加工)の問題を考えるために、本実施形態のロール成形と金型による打ち抜き技術と対比して「切れ味」について考えて見る。一般的な金型による打ち抜きの場合には、ダイ(凹型で本実施形態の受けロールに対応)に対するパンチ(凸型で本実施形態の微細突起(エンボス)に対応)の往復運動で加工を実現しているものであるが、この際に、ダイとパンチの周囲の材料は材料押さえにより押さえられ、パンチによって打ち抜かれた材料はダイの中に入り込む。そして、ダイの中に入り込んだ材料はパンチの上昇工程においてノックアウトピン等でダイの外に排出されて加工を完了させる。この場合の加工精度の考え方では、ダイ及びパンチ共に剛性のある変形しない材料で作られていることを前提としている。
ここで、本実施形態のロール成形と一般的な金型を用いた打ち抜き加工とを対比すると、本実施形態のロール成形の場合には、凹型である受けロール30の表面の弾性体(図4では外周ロール33)に対して凸型である微細突起(エンボス)11が入り込む部分の硬度をその周辺部の硬度よりも柔らかくすることが「切れ味」にとっては有利となることは明確である。しかしながら、図4(A)に示す受けロール30の構成では、受けロール全幅に対して弾性体が均一の厚さになっているので、理論的には均一の硬度と考えられる。これを、金型による打ち抜き加工に例を取れば、ダイが変形を伴うことにも相当するものであり完全な抜き加工が保障できないことになる。
そこで、本実施形態では、図4(B)に示すように、凸型である微細突起(エンボス)11に相対する位置の受けロール芯金32の外周面側に所定の凹凸形状34を形成することにより、弾性体の外周ロール33の硬度の軟らかい部分a(一般的な打ち抜きでのダイ中央の中空部に対応)と硬い部分b(一般的な打ち抜きでの材料押さえ部に対応)とを形成する(図3(D)参照)ことを可能としたものである。図4(B)の受けロール30の構成においては、一般的に弾性体の肉厚寸法と硬度は反比例することになり、本実施形態の凸型である微細突起(エンボス)11の位置に対応して肉厚の厚い部分aを配置することで、金型による打ち抜き加工に近い成形を可能にするものである(図4(C)参照)。この場合の凹凸形状34の立ち上がり角度αは可能であるが、ない方(立ち上がり角度が90度)が有効である。その理由は、受けロール芯金32の凹形状のエッジ部分と微細突起(エンボス)11のエッジ部分とが刃物機能を果たすためである。この凹凸形状34は、ロール芯金32の外周面に円周状の突出した峰の列を形成することで構成されている。
次に、金属箔20の成形後に受けロール30上に埋没する「残留抜き屑」の対策について説明する。図1及び図2に示すように、受けロール30表面の弾性体33に付着した抜き屑21は、下流に設けられた払い落としブラシロール39,39によって払い落とされる。しかしながら、この抜き屑21が、受けロール30表面の弾性体33に埋没して「残留抜き屑」となってしまうと、次の成形工程にも悪影響を与え、金属箔としての特性を保ち得ないものである。
このように成形ロール30の表面に埋没して付着した粉塵を強制的に掻き落とすことにより、「残留抜き屑」の埋没対策を行うだけでは完全とは言い切れない。そこで、本実施形態においては、「残留抜き屑」をより除去しやすい方法を考えたものである。そのために考え出された案が、成形ロール10の凸型の微細突起(エンボス)11頂部に所定パターンの凹部を形成するものである。
これを、図5を用いて説明する。この成形ロール10の凸型の微細突起(エンボス)11頂部に所定パターンの凹部を形成することは、(1)切れ味の向上と(2)切り屑の除去性の向上の目的がある。
まず、切れ味の向上であるが、凸型の微細突起(エンボス)11が回転刃物として金属箔20に作用する際に、金属箔20が図5(C)の左右図上のようにして刃物との関係になり、その間にスベリ現象が生じない用に改善すれば、切れ味が向上する。そのために、微細突起(エンボス)11頂部に凹部35を形成する(図5(A)右図)ものである。これによって、図5(C)の右図下に示すように、微細突起(エンボス)11のエッジ部が鋭利に金属箔20に切り込み作用をする。そして、図4に示す受けロール芯金32の外周面側の凸形状34と相まって、切れ味の向上を達成することができる。
次に、切り屑の除去性の向上については、図5(D)の右図に示すように、図5(D)の左図に示す「エンボス頂部が平坦な場合」では、切り屑21が完全に受けロール30の弾性体33の中に入り込み、埋没切り屑21’となって除去できなくなる危険性が発生しないとは限らなかった。本実施形態のように、電気自動車及び家電等の電気エネルギー源としての電池・キャパシター等に用いられる集電体電極箔として用いられる金属箔としては、極々小さな残留切り屑の可能性であっても大問題となる場合がある。そこで、埋没切り屑21’の形状を回転ブラシ39,39によって確実に除去できる形状とすることが考えられた。
つまり、図5(A)の右図に示すように、凸型の微細突起(エンボス)11頂部に凹部35を形成することにより(図5(B)右図上参照)、それによって成形された切り屑21は、図5(B)右図下のように中央部が微細突起(エンボス)11頂部の凹部35に対応した凸部(符号なし)が形成される(図5(B)右図下)。これにより、エンボス頂部が平坦な場合には、切り屑21が埋没切り屑21’となり、回転ブラシ39,39によっての排除が困難となる危険性もあったが、エンボス頂部に凹部を形成したために、切り屑21に凸部が成形され、受けロール30への埋没切り屑21’となったとしても、確実な除去が可能となるものである。本実施形態の実施形態では、回転ブラシ39,39を用いているが、1枚以上のブレードならなるスクレーパ(詳細は図示せず)を設けることによっても目的は達成可能である。勿論、スクレーパと回転ブラシとを併用することも可能である。このように、受けロール30の表面上に残留の切り屑が存在しないことが、確実で安定した穴加工の基本である。ここで、頂部に凹部35を形成した凸型の微細突起(エンボス)11の大まかな寸法は凸型11の高さh2は0.1〜0.4mm、凹部35の深さh3は0.1〜0.3mm、凸型11の頂面の径d2は0.3〜1.0mm、凹部35の径d3は0.2〜0.8mmが好ましい数値範囲である。
次に、図6に示す第2の実施形態は、第1受けロール30と第2受けロール40の更に下流側に、第1のブラシロール50、第2のブラシロール55及び第3の払い落としブラシロール56が設けられているものである。
本実施形態の方法を実現する金属箔ロール成形装置に適用されるブラシロール50,55及び払い落としブラシロール56は、実質的に同じ構造を備えている。ブラシロール50,55及び払い落としブラシロール56は、樹脂製の導電性で弾性繊維を持つブラシであり、孔加工でのバリ状の微小高さの「カエリ」の間に挟まり固定されている排除困難な残留抜き屑21の排除に有効な硬さ及び密集度を持つものである。これ等のブラシロール50及び55は、設置スペースとの関係により寸法は任意に設定すれば良い。但し、加工孔内に残留した抜き屑21の排除には、有効な硬さ及び密集度は必要である。本実施形態のブラシロール50及び55の材質は主にカーボン繊維であり、必要に応じてナイロン繊維を併用することが可能である。本実施形態のブラシロール50及び55の回転方向は、被加工金属箔20の回転移動の方向に対向する方向であり、その回転速度は800rpm前後であり、ロール成形金型回転速度は8〜10rpmである。さらに、成形ロール10の微細突起(エンボス)11に付着した粉塵等を排除するために、成型ロール10の金属箔20の導入部よりも回転方向で上流側に払い落としブラシロール56を設けることにより、成形ロール10の凸型の微細突起(エンボス)11から粉塵を直接的に掻き落とすことができる。この場合は、当然のことではあるが、除去された切り屑21が新たに供給される金属箔20上に落下しないように吸引装置(図示せず)等により除塵する必要がある。
更に、本実施形態の方法を実現する金属箔ロール成形装置の第3の実施形態においては、図7に示すように、成形ロール10の円周沿って、更に多くの複数のブラシロール51,52,53,54(4連ブラシロール)の設置が可能になるように、成形ロール10の外径を大きくしたり、設置スペース、ロール成形金型製作等の諸条件の許す範囲で可能な限り選択したりすることで、回転及び揺動するブラシロールの配置の数量を増加することが可能である。これにより、成形加工後のバリ状の微小高さの「カエリ」の間に挟まり固定されている排除困難な残留抜き屑21の排除が可能となる。さらに、成形ロール10の凸型の微細突起(エンボス)11に付着した粉塵等を排除するために、第2の実施形態と同様に、成型ロール10の金属箔20の導入部よりも回転方向で上流側に払い落としブラシロール56を設けることにより、成形ロール10の微細突起(エンボス)11から粉塵を直接的に掻き落とすことができる。
次に、本実施形態の金属箔ロール成形方法の発明について、主に図9を用いて説明する。本実施形態の金属箔ロール成形方法は、成形ロール10が回転する軌跡中で加工を行うために、成形ロール10の表面の凸状切刃型(エンボス)11は、金属箔20の移動方向と移動速度に同期して、成形ロール10の回転方向に移動しながら金属箔20に接近してくる。被加工金属箔20は、成形ロール10表面の凸状切刃型(エンボス)11と受けロール30によって、挟み込み位置A近傍において挟み込まれる。受けロール30表面のゴムは、成形ロール10表面の凸状切刃型(エンボス)11からの押圧力によって変形し初め、挟み込まれた被加工金属箔20を切断し始める。成形ロール10の回転が進むと、成形ロール10表面の凸状切刃型(エンボス)11の受けロール30表面のゴム内への侵入が進み、凸状切刃型11がその変形終了に近づくに連れて、被加工金属箔20から抜き屑21が切断され、抜き屑21は受けロール30表面のゴム内に取り残されて、金属箔20から分離される(図8(A))。
しかしながら、凸状切刃型(エンボス)11に対し切断反力である受けロール30の表面ゴム圧が不安定であるために抜き孔22の成形が不完全加工になり易い。そこで、本実施形態の金属箔ロール成形方法では、成形ロール10の円周上に、挟み込み位置A近傍から離間位置C近傍までの成形加工領域Xを広く取り、その領域X内では成形ロール10に金属箔20を長い間巻き付けておき、その間に複数の受けロール30,40により、金属箔20が確実に受けロール表面のゴム変形の最大位置(最大反力位置)で接触するために確実な加工が可能となる。
更に、本実施形態では、複数の受けロール30,40の対向配置による回転のみでは前記した反力不安定により発生すると予想される不完全加工、即ち、ハーフカットや、バリ状の微小高さの「カエリ」の間に挟まり固定されている抜き屑21(図9(B))の排除が困難な場合があるので、その対策も取られている。つまり、前述の図8に示す様に、回転しているブラシロール50を軸方向にストローク長さ2mmで100spmで揺動する2軸駆動の機構を採用したものである。
このように、本実施形態の金属箔ロール成形方法においては、成形加工後のバリ状の微小高さの「カエリ」の間に挟まり固定されている排除困難な残留抜き屑21等の除去動作が達成される。この除去動作は、囲われた空間内で静圧2.5Kpaのエアーを吸引する雰囲気内で行われる。これらの構成は、詳細な図示はしないが、挟み込み位置A近傍から離間位置C近傍までの成形加工領域Xを囲われた空間で覆い、その空間内のエアーを吸引することにより、各ブラシロール50等で囲われた空間内に舞い上げられた抜き屑や微粉を集塵機(図示せず)で確実に収納する。
このようにして、本実施形態においては、成形ロール10と第1の受けロール30の間での第1の成形加工動作の後も、長い間、金属箔20は成形ロール10に巻き付けられたままで回転移送され、第2の受けロール40によって、第2の成形加工動作を受けることになる。ここで、第1の成形加工動作によっては完全に抜かれていない不完全加工部分、即ち、ハーフカットや、バリ状の微小高さの「カエリ」の間に挟まり固定されている抜き屑21等が、第2の成形加工動作によって完全に加工されることになる。やはり、第2の成形加工動作領域においても、金属箔20から抜かれた抜き屑21は第2の受けロール40表面のゴムに付着し、下流に設けられた払い落としブラシロール49によって払い落とされる。
以上によっても、なお、成形加工後の金属箔20に同伴する抜き屑21や粉塵等は、抜き屑排除ユニット50により除去される。抜き屑21や粉塵等が除去された金属箔20は、成形加工領域から出た後に、導出ロール60,66により方向転換され、方向転換後に水平移動位置において、抜き加工により金属箔20に発生した加工バリとしての「カエリ」を圧延ユニッット80により圧延し箔厚をロール成形加工前の原箔厚に近いレベルにする。
この圧延ユニット80は、図10にて説明すると、上下に一対の80mmφの金属製ロール81,82を設け、そのバックアップとして120mmφ補強ローラ83,84を備え、その両側にはガイドロール85,86を配置している。両側に配置したガイドロール85,86は、通称「ゼブラロール」と呼ばれ、金属箔20を巾方向に広げる機能を持たせている。尚、加圧については、ロール構造に強度を充分に持たせて、ロール間の隙間を制御することで加圧後の厚みを管理するものである。また、80mmφの下ロール82はモータ(図示なし)により、金属箔20の巻取り速度と同調して回転して箔送りをしているものである。被加工金属箔20の厚み等の条件により、上下ロール81,82の変形が無視できないときには、補強ロール83,84を設置することが有効である。
このように、抜き加工により金属箔20に発生した加工バリとしての「カエリ」を圧延ユニッット80により圧延して、箔の厚みをロール成形加工前の原箔厚に近いレベルにすることは可能であるが、ここで一つの新たな問題が発生する場合がある。図12を用いて説明する。
例えば、本実施形態の方法を実現する装置を用いて金属箔20に多孔を成形すると、図12(A)左図及び右図に示すような加工バリが発生する。ただし、図12の各図において、バリは理解の容易性のために強調して描かれている。このように加工バリが発生した金属箔20は、その後工程において、成形した抜き孔22の背面に残った加工バリcとしての「カエリ」を圧延ユニッット80により圧延して、最所の金属箔20の厚みと略等しい厚みにされる。この際に、金属箔20の加工部分a(多孔成形加工部分)と未加工部分b(箔の両縁部)とにおいて圧延時の伸びの量が相違する。このために、圧延後の金属箔20には、図12(B)左図に示すごとく、多くのシワdが発生する場合がある。これは、厚みの異なる箔材(加工部分aの厚み=t2、未加工部分bの厚み=t1、t2>t1)を圧延ロール80にて均一に加圧・圧延すると、箔の移動方向に伸びが発生し、未加工部分b(厚みt1)と加工部分a(厚みt2)の伸びが異なるため、長尺の連続加工においては高い頻度でシワdが発生し、箔表面に圧延されたスジとなって現れる。このような現象は、理論的には明確であり、圧延加工での圧延量が少ない金属箔の加工においては避けがたい課題である。
そこで、本実施形態においては、図12(C)左図に示すように、金属箔20の加工部分aに抜き孔22の貫通孔加工を施すと同時に、未加工部分bには貫通しないエンボス加工部eを同一パターンで加工するものである。このエンボス加工部eの高さ(t3)は、図12(C)右図に示すように、孔加工でのカエリcの高さ(t2)と略等しいか少し低くする(t3≦t2)ことが望ましい。これにより、ロール加工での両者の伸び率を可能な限り等しくすることにより圧延後のシワの発生を防止することが可能である。このエンボス加工部eの具体的形状の一例を図12(D)の左図及び右図に示す。図12(D)左図は単にお椀状のエンボスであり、図12(D)右図は「キ」字形のエンボスを成形した例を示している。
このようなエンボスの加工方法は、同じ成形ロール10の凸型の微細突起(エンボス)11の刃部のエッジを丸めるか、別の形状の突起を設けることにより実現できると共に、受けロール30の端部近傍を段差加工、即ち、端部近傍の受けロール30の径を中央部の孔加工部の径よりも小径にすることでも実現することが可能である。ここでは、いずれの実現手段によっても、t3≒t2又はt3≦t2となるように調整することは重要である。
本実施形態の実施形態においては、更に、新規な除塵洗浄・バリ取りユニットを積極的に設けることも可能である。その新規な除塵洗浄・バリ取りユニットは超音波・電界エッチング手段150であり、その詳細を図13に示す。この超音波・電界エッチング手段150は、本実施形態の多孔金属箔20のバリ取りに用いられるのみでなく、連続的に供給される板状・ウエブ状の材料のバリ取りであれば、一般的なスリッターのバリ取り手段への転用も可能である。
超音波・電界エッチング手段150は、内部に超音波発振機160を備えた超音波洗浄槽151が備えられており、電荷及び超音波が凸部へ集中する特性を利用することで、本多孔金属箔の加工返り面を超音波発振機160に対向・搬送する機能を具備している。この超音波洗浄槽151には洗浄水152が液面153まで入れられており、この洗浄水152は循環使用されている。この循環される洗浄水152は中空糸膜で構成されたフィルタ(図示せず)内を通過する間に減圧され洗浄水中の空気が除かれ(脱気)空気のブレーキ効果を排除する。処理されるべき金属箔20は、回転ドラム154の周囲に向けて電極ローラ155によって供給されニップルロール156によって離される。その間、金属箔20は回転ドラム154の周囲に接触して同時に回転させられる。回転ドラム154の周辺近傍には少し距離を離して電極片159が配置され、その両端部には電極部材157,158が設けられている。この電極部材157,158及び回転ドラム154は、夫々の設置高さは調節可能に構成(詳細な構成は図示せず)されている。
超音波・電界エッチング手段150は、このような構成により、回転ドラム154の周りで(電極ローラ155によって金属箔20に通電)電極片159との間に電界を生じさせ、そこに超音波発振機160によって発振された超音波を作用せしめて、金属疲労によりバリ取りを行うものであるが、超音波による洗浄水152のキャビテーションの真空核の生成・崩壊の力を強化してバリへの振動効果を高めるものである。
回転ドラム154よりニップルロール156によって引き出された金属箔20は、熱風乾燥室165によって乾燥される。この超音波・電界エッチング手段150は、実際の多孔金属箔のロール成形装置のシステムとしては、加工返りの凸形状がある状態にて第2圧延手段の前に供えるのが適切である。これは、図3のシステム構成図の矢印Aの位置に配置するものである。さらには、別の態様として、図3のシステム構成図の矢印Bの位置、つまり、加工済み金属箔を巻き取る直前である耳端位置制御装置(EPC)120の前段に配置することも可能である。
図2に本実施形態の方法を実現する全体構成を示す金属箔ロール成形装置のシステムでは、加工完成箔の巻取り直前にて、万が一にも金属箔20に同伴して来る抜き加工微粉の排除の目的でエアー除塵ユニット90及びクリーニング機能付き除塵ローラユニット100を備えている。図3に全体構成を示す金属箔ロール成形装置のシステムでは、このエアー除塵ユニット90は第1圧延ロール80による圧延工程の直後に設けている。
このエアー除塵ユニット90は、図11(A)及び(B)に示すように、理想的には可能な限り金属箔20の成形加工後の孔ピッチ(図11(C))に合せたエアーの噴出し穴121,121,121・・・の空いたプレート124と、それに対称位置にエアー吸引穴122,122,122・・・の空いたプレート125との間を微細孔加工後の金属箔20が移動する構成のユニットである。またそのプレートの金属箔20が移動する部分には、箔表面に接触する位置に長方形に囲った柔らかいブラシ123を配置し、微粉末を金属箔20の表面より剥離させる機能を持たせている。微粉末は剥離され舞い上がることでエアー集塵することが可能となる。尚、噴出しエアー圧は2〜3kg/cm2であり、吸引は集塵機静圧で2.5Kpaである。除塵の為のエアー通過孔は巾1mmの斜め長孔を巾100×長さ300の面積の上下プレートに必要数設置されている。
以上説明した通り、本実施形態の加工屑・微粉・塵を排除した孔明き金属箔の成形方法によれば、簡単な金型を弾性体に加圧することで金属箔の孔を形成しているので、コストをやすく抑え、しかもロール成型法であるために連続加工工法であり更には今後の該金属箔を用いた集電体電極用途のトレンドである薄い箔への微細孔加工に対しては微細凸形状の金型により、安定した生産性の高い、加工屑・微粉・塵を含まない、加工カエリ等の厚みも抑えた理想的な金属箔を市場に提供することが可能になる。
本実施形態は、これにより、厚さ50μm以下の金属箔を、表面に微細な凸型を形成した金属製の成形ロールと該金属箔を挟んで対向する弾性体よりなる受けロールにて長尺の金属箔に対し孔明け等の連続加工を行うロール成形システムである。同時に、加工直後の第1受けロールの弾性体に埋め込まれた加工屑・微粉を、高速回転する複数の弾性繊維ブラシロールの動作で、また成形ロールの回転方向に先方に、一つ又はそれ以上の第2、第3となる受けロール(第1受けロールと同一機能・性能を有する)を配設し、更に、金属箔が成形ロールの凸部に被嵌して機械的に安定した状態で移送される間に、複数の弾性繊維ブラシロールの高速回転動作によって、加工屑等を排除する。更には、金属箔の巻取り直前では自ら洗浄機能を有する粘着ラバーローラ、或いは超音波・電界エッチングユニットを配置して、ハーフカットへの対応、及び加工屑・箔表面付着微粉・塵を排除するロール成形システムを提供するものである。これにより、装置における加工設備での振動や組立公差の累積等によって避け得ない加工屑・箔表面付着微粉・塵をも排除しようとするものである。
前述したように、一般的な金型による打ち抜き加工の場合には、一般的理論として材料の加工時の逃げを可能な限り押さえ込むことにより、精密加工が可能となり、切れ味を良好にすること可能となる。それに対して、本実施形態の成形ロールによる加工の場合には、図14(A)に示すように、成形ロール10の中央部付近aは受けロール30の弾性体外周ロール33と金属箔20の接触面全てが材料押さえの機能を備えているものであるが、成形ロール10の端面近傍bでは押さえる部材が存在せず、孔加工が不安定な部分Lとなる。そこで、成形後の工程で、その不安定部分Lを連続トリム(図14(B))して、その加工屑を吸引又は排除して、金属箔20の品質を向上させることが可能である。図3に全体構成を示す本実施形態の方法を実現する金属箔ロール成形装置のシステムでは、エアー除塵ユニット90の後段にスリッターユニット110として備えている。