JP5948515B1 - フロントパネルの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】フロントパネルの表面側端縁部に丸みを持たせることができ、表面側端縁部が白くなることを防ぐこともでき、コート層の端縁部に樹脂溜まりが出来ないようにすることができる新たなフロントパネルの製造方法を提供する。【解決手段】パネル基材の表面にコート層を備えたフロントパネルの製造方法において、上面視した際にフロントパネルに相当する上面視フロントパネル相当部分を、上面側に膨出してなる膨出部を備え、かつ、その膨出部の表面側端縁部の稜線を曲線としてなる構成を備えたパネル基材用部材の表面に、透明樹脂をコーティングしてコート層を形成すると共に、該コート層の端縁部の稜線を曲線として、コート層積層パネル基材用部材を作製することを特徴とするコーティング工程と、前記パネル基材用部材の膨出部における稜線の裏面側曲線終点或いは裏面側曲線終点よりも表面側曲線開始点寄りの位置或いは稜線の表面側曲線終点或いは表面側曲線終点よりも表面側曲線開始点寄りの位置において、前記コート層積層パネル基材用部材を垂直に切断して余肉部分を切削することにより、前記コート層の端縁部が丸みを持ち、その下方に連続する前記パネル基材の端面が垂直端面となるようにすることを特徴とする切除工程と、を備えたフロントパネルの製造方法を提案する。【選択図】図5

Description

本発明は、スマートフォンやタブレット端末、携帯ゲーム機器などのフロントパネルのほか、カーナビゲーションや産業機械などの操作パネルに使用されるフロントパネルの製造方法に関する。
スマートフォンやタブレット端末のほか、カーナビゲーションなどの操作パネルとして使用されるフロントパネルの基材に関しては、従来から、ガラス材料が使用されてきた。しかし、ガラス材料は、耐衝撃性や軽量性などに劣るため、合成樹脂材料への代替が提案されている。
例えば、特許文献1には、ポリカーボネート樹脂とアクリル樹脂を共押出した積層体にハードコート層を積層してなる樹脂積層体が開示されている。
また、特許文献2には、表面に傷が付き難く、しかも製造が比較的容易なタッチパネル用積層押出樹脂板として、ポリカーボネート樹脂層の少なくともタッチされる側の表面にアクリル樹脂層が共押出成形により積層されてなることを特徴とするタッチパネル用積層押出樹脂板が開示されている。
さらにまた、このような樹脂板を用いたタッチパネル表示装置として、前述のような樹脂板にタッチ入力用のタッチパネルを配置してなるフロントパネル装置が開示されている(例えば特許文献3など参照)。
特開2006−103169号公報 特開2010−182263号公報 特開2002−40243号公報
ところで、カーナビゲーションなどの車載用表示装置では、衝突安全性などの面から、フロントパネルの表面側端縁部に丸みを持たせることが求められる。
しかしながら、そのために、パネル基材用部材に樹脂をコーティングしてコート層を形成した後、その表面側端縁部が丸みを持つようにR面取り状に切断すると、その切断面、すなわちフロントパネルの表面側端縁部が白くなることがあった。
他方、パネル基材用部材を所定の形状に切断した後、樹脂をコーティングしてコート層を形成すると、コート層の端縁部に樹脂溜まりが出来て、外観や寸法精度を低下させることがあった。
そこで本発明は、かかる課題に鑑みて、フロントパネルの表面側端縁部に丸みを持たせることができ、表面側端縁部が白くなることを防ぐこともでき、しかも、コート層の端縁部に樹脂溜まりが出来ないようにすることができる、新たなフロントパネルの製造方法を提供せんとするものである。
本発明は、パネル基材の表面にコート層を備えたフロントパネルの製造方法において、上面視した際にフロントパネルに相当する上面視フロントパネル相当部分を、上面側に膨出してなる膨出部を備え、かつ、その膨出部の表面側端縁部の稜線を曲線としてなる構成を備えたパネル基材用部材の表面に、透明樹脂をコーティングしてコート層を形成すると共に、該コート層の端縁部の稜線を曲線として、コート層積層パネル基材用部材を作製することを特徴とするコーティング工程と、前記パネル基材用部材の膨出部における稜線の裏面側曲線終点若しくは裏面側曲線終点よりも表面側曲線開始点寄りの位置又は稜線の表面側曲線終点若しくは表面側曲線終点よりも表面側曲線開始点寄りの位置において、前記コート層積層パネル基材用部材を垂直に切断して余肉部分を切削することにより、前記コート層の端縁部が丸みを持ち、その下方に連続する前記パネル基材の端面が垂直端面となるようにすることを特徴とする切除工程と、を備えたフロントパネルの製造方法を提案する。
本発明が提案するフロントパネルの製造方法によれば、フロントパネルの表面側端縁部に丸みを持たせることができ、表面側端縁部が白くなることを防ぐこともでき、しかも、コート層の端縁部に樹脂溜まりが出来ないようにすることができる。
本発明の一例で作製するフロントパネルの一例を示した上面視斜視図である。 本発明の一例で作製するパネル基材用部材の一例であり、(1)はその断面図、(2)は上面視した際の平面図である。 本発明の一例で作製するパネル基材用部材にコート層を形成してなるコート層積層パネル基材用部材の一例を示した断面図である。 本発明の一例で作製する他のパネル基材用部材にコート層を形成してなるコート層積層パネル基材用部材の他例を示した断面図である。 本発明の一例で作製するパネル基材用部材にコート層を形成してなるコート層積層パネル基材用部材の一例の部分拡大断面図であり、2本の縦点線の間が切断適正位置である。 図2とは異なるパネル基材用部材の一例の断面図である。 本発明の一例で作製するパネル基材用部材にコート層を形成してなるコート層積層パネル基材用部材の図5とは異なる一例の部分拡大断面図であり、2本の縦点線の間が切断適正位置である。 本発明の一例で作製するフロントパネルの一例の部分拡大断面図である。 比較例1を示す図であり、(1)はパネル基材用部材上にコート層を形成してなるコート層積層パネル基材用部材の部分拡大断面図であり、(2)それを切削した後のフロントパネル(サンプル)の部分拡大断面図である。 比較例2で作製したフロントパネル(サンプル)の部分拡大断面図である。 比較例3で作製したフロントパネル(サンプル)の部分拡大断面図である。
次に、実施の形態例に基づいて本発明を説明する。但し、本発明が次に説明する実施形態に限定されるものではない。
<本製造方法>
本発明の実施形態の一例に係るフロントパネルの製造方法(「本製造方法」と称する)は、パネル基材用部材を射出成型する基材射出成型工程と、当該パネル基材用部材の基材表面部すなわち視認側表面部に透明樹脂をコーティングしてコート層を形成してコート層積層パネル基材用部材を作製するコーティング工程と、当該コート層積層パネル基材用部材の余分な部分(「余肉部分」とも称する)を削除する切削工程と、を備えたフロントパネル(「本フロントパネル」と称する)の製造方法である。
本製造方法は、前記基材射出成型工程、前記コーティング工程及び前記切削工程を備えていれば、他の工程を備えていてもよい。例えば後述するアニーリング工程、印刷工程、その他の工程を適宜挿入することが可能である。
図1には、本製造方法で製造するフロントパネルの一例の斜視図を示す。このフロントパネル1は、画像を表示する表示面部2の周囲に周囲部3を有するパネル表面を備えており、パネル基材10の上にコート層20を備えた構成を備えている。但し、これはあくまで本製造方法で製造するフロントパネルの一例であり、任意の形状を備えることができる。
<基材射出成型工程>
基材射出成型工程では、射出成型によってパネル基材用部材を形成する。
(パネル基材用部材の材料)
パネル基材用部材の材料は、透明な熱可塑性樹脂であればよい。例えばカーボネート系樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂やアクリロニトリル−スチレン共重合樹脂などのアクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、脂環式ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂及びエポキシ系樹脂からなる群から選ばれる1種又は2種以上の樹脂を例示することができる。中でも、透明性と歪防止などの観点から、ポリカーボネート、アクリル系樹脂などを好ましく例示することができる。中でも、車載機器用タッチパネルディスプレイに用いられるフロントパネルにおいては、飛散防止性の観点から、ポリカーボネートが好ましい。ポリカーボネートは、塗布による硬度の向上が望まれるため、樹脂溜まりの形成による影響を受けやすく、本発明における外観向上効果をより一層享受することができる。本製造方法で用いるポリカーボネートとしては、ビスフェノールAを主原料とする一般的な芳香族ポリカーボネートに限定されず、例えば、他の原料を主原料とする芳香族ポリカーボネート、脂肪族ポリカーボネート、芳香族脂肪族ポリカーボネートを用いることもできる。例えばジオール成分として、イソソルバイトなどのエーテルジオールが主成分であるポリカーボネートなども包含する。
(パネル基材用部材の形状・厚み)
射出成型によれば、任意の形状及び厚みのパネル基材用部材を形成することができる。よって、例えば、図2(1)に示すように、上面視した際にフロントパネル1に相当する面積部分すなわち上面視フロントパネル相当部分を、図2(2)に示すように、上面側言い換えれば視認側に適宜厚さ膨出してなる例えば砲台状の膨出部12を備え、その周囲外側には、一段下がった余肉鍔部14を備えたパネル基材用部材11を形成することができる。なお、膨出部12は砲台状に限定されるものではない。
この際、膨出部12は、図2(1)に示すように、上面側に膨出している分だけ肉厚に形成することもできるし、また、図6に示すように、余肉鍔部14と同一の厚さに形成することもできる。
また、上記膨出部12の表面側端縁部の稜線を曲線とする、言い換えれば稜線13にR状に丸みを持たせるのが好ましい。このようにすることにより、後述するコート層20の表面側端縁部の稜線13を容易に曲線とする、すなわち丸みを持たせることができ、その結果、フロントパネル1の表面側端縁部に丸みを持たせることができるから、例えば衝突安全性などを高めることができる。
この際、図5に示すように、パネル基材用部材11の膨出部12の表面側端縁部の稜線13において、表面側曲線開始点13aの高さと表面側曲線終点13bの高さの差h1言い換えれば表裏方向の距離h1は、安全性、例えばシャープエッジによる切創防止などの観点から、0.1〜1.0mmであるのが好ましく、中でも0.2mm以上或いは0.8mm以下、その中でも0.3mm以上或いは0.5mm以下であるのが好ましい。
また、例えば、図3に示すように、フロントパネル1の表示面部2に対応した部分である基材表示面部15を平坦面として形成し、平面視した際に当該基材表示面部15を囲む基材周囲部16の表面を平滑面とすることもできる。
さらにまた、例えば、図4に示すように、フロントパネル1の表示面部2に対応した部分である基材表示面部15の表面に多数の凹凸を形成し、平面視した際に当該基材表示面部15を囲む基材周囲部16の表面を平滑面とすることもできる。
この際、基材周囲部16は、周端縁部を湾曲面として形成してもよいし、うねり面として形成してもよい。また、基材周囲部16の適宜箇所に貫通穴などの開口部や凹部、凸部、リブなどを設けることも任意に可能である。また、適宜箇所に、格子模様や千鳥模様等の各種模様を付与することもできる。
基材表示面部15の表面に形成する多数の凹凸は、防眩効果を付与するために、例えばシボ状を呈する微細凹凸面、すなわちシボ加工表面とするのが好ましい。
基材表示面部15の表面に多数の凹凸を形成する場合、基材表示面部15の表面の表面粗さ(Rz)RzCは、5μm〜24μmであるのが好ましい。当該RzCが5μm以上であれば、十分な防眩効果が得られるため好ましく、24μm以下であれば、防眩効果が強過ぎて表示がぼやけるのをより一層防ぐことができるから、好ましい。
かかる観点から、基材表示面部15の表面の表面粗さ(Rz)RzCは5μm〜24μmであるのが好ましく、中でも8μm以上或いは20μm以下、その中でも12μm以上或いは18μm以下であるのがさらに好ましい。
なお、表面粗さ(Rz)は、JIS B 0601―1994に規定される十点平均粗さであり、例えば表面粗さ測定機、形状測定機、工具顕微鏡、レーザー顕微鏡、その他の機器によって測定することができる(後述する表面粗さ(Rz)についても同様である。)。
また、基材表示面部15の表面の凹凸の高さを大きくすると、コート層の厚さを厚くしても、防眩効果を得ることが可能である。但し、凹凸の高さが大き過ぎると液晶パネルの光がチラつく可能性がある。
かかる観点から、基材表示面部15の表面の凹凸の最大高さ(Ry)は10〜22μmであるのが好ましく、中でも14μm以上或いは20μm以下、その中でも特に16μm以上或いは18μm以下であるのがさらに好ましい。
なお、最大高さ(Ry)は、JIS B 0601―1994に規定される最大高さであり、表面粗さ測定機によって測定することができる(後述する最大高さ(Ry)についても同様である。
他方、基材周囲部16は、高級感を付与するために平滑面とするのが好ましく、中でも光沢を示す鏡面とするのが特に好ましい。
かかる観点から、基材周囲部16の表面の表面粗さ(Rz)は、8μm以下であるのが好ましく、中でも6μm以下、その中でも4μm以下であるのがさらに好ましい。
基材周囲部16の表面は、上記観点から、JIS Z8741に基づく入反射角60°の鏡面光沢度が85%以上であるのが好ましく、中でも90%以上であるのがさらに好ましい。
基材周囲部16の上側周縁部は、例えば本フロントパネルをカーナビなどに使用する場合には、衝突した際の人体に対する安全性(「衝突安全性」と称する)を高める観点から、湾曲面としてもよい。
(射出成型)
射出成型では、射出成形金型の成形キャビティ内に射出成形用樹脂材料を射出して、該成形キャビティを上記樹脂材料で充填し、その充填された樹脂材料を上記成形キャビティ内で冷却して固化させた後、上記射出成形金型を開いて射出成形品を取り出すことにより、パネル基材用部材を作製することができる。
射出成形金型としては、従来の一般的な射出成形型と同様、金属材料を主体に構成された射出成形金型を用いればよい。
成形キャビティに充填された射出成形用樹脂材料を固化させると、該キャビティに面する射出成形金型の内側表面(型面)の形状に対応した表面形状を有する射出成形品が形成される。
よって、例えば、上述のように、多数の凹凸を有する基材表示面部15の周囲に、平滑面からなる基材周囲部16を有する基材表面部を備えたパネル基材用部材を形成するためには、雄雌の射出成形金型によって形成される金型成形キャビティを、本フロントパネルの形態に対応するように形成すると共に、射出成形金型の内側表面(型面)において、上記基材表示面部15に対応した部位(「表示面部形成部」とも称する)に、多数の凹凸に対応した表面形状を形成し、上記基材周囲部16に対応した部位(「周囲部形成部」とも称する)の平滑面に対応した表面形状を形成すればよい。
より具体的には、雄雌金型の一方の金型上内面の表示面部形成部に多数の微細凹凸を形成し、これの周囲を囲むように鏡面形成して、周囲部形成部を形成しておき、表面に多数の凹凸を有する基材表示面部15の周囲に、平滑面からなる基材周囲部16を備えたパネル基材用部材11を形成することができる。
金型内表面に凹凸形状を付与する方法としては、切削加工(NC加工であり得る。)、サンドブラストその他の物理的処理、フッ酸などを含むエッチング液によるエッチング処理、その他の化学的処理等の公知の手法を挙げることができる。
必要に応じて、凹凸パターンが形成された表面を、砥石若しくは研磨布紙(サンドペーパー)によって研磨することが好ましい。また、必要に応じて、液状若しくはペースト状の研磨剤を用いて研磨することができる。
上記サンドブラスト法では、例えば、アルミナ、炭化ケイ素、金剛砂などの粒子を空気とともに吹き付けることで、凹凸表面を形成することができる。
上記エッチング法では、例えば、フッ酸と、フッ化アンモニウムと、硫酸や硝酸などの無機酸、酢酸や蟻酸などの有機酸などの酸と、水と、その他添加剤とを含むフッ酸系エッチング液を用いて凹凸表面を形成することができる。
<アニーリング工程>
射出成型後、パネル基材用部材11に生じた歪や反りを軽減するために、加熱してアニーリングするようにしてもよい。
アニーリング方法としては、公知の方法で行うことができる。例えば、大気雰囲気下で、炉内温度を80〜120℃、20分〜150分保持するように加熱処理すればよい。この際、炉内温度と品温はほとんど同温である。
<コーティング工程>
コーティング工程では、パネル基材部材11の表面側すなわち視認側に透明樹脂をコーティングしてコート層20を形成する。すなわち、膨出部12、稜線13及び余肉鍔部14の表面に透明樹脂をコーティングしてコート層20を形成し、コート層積層パネル基材用部材を作製することができる。
(コート方法)
透明樹脂のコート方法としては、例えばスピンコート法、ディッピングコート法、スプレー法、スライドコート法、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、インクジェット法、シルクスクリーン法、ダイコート法、フローコート法、キャスト転写法等の公知の塗布方法を挙げることができる。
中でも、コート層の厚み調整及び塗り分けの観点から、スプレー法、インクジェット法、グラビアコート法、シルクスクリーン法を採用するのが好ましく、例えばロボットアームスプレーなどを使用して、透明樹脂をスプレー塗付するのが好ましい。
例えばコーティングをする際の塗付量の調整、塗付回数の調整、被塗装物距離の調整、塗布パターン、及び、吐出口の移動速度の調整のうちの何れか一種の調整又は二種以上の調整の組合せによって、前記基材表示面部15におけるコート層22の厚み及び前記基材周囲部16におけるコート層23の厚みを調整することができる。
より具体的には、例えばロボットアームスプレーをコンピュータ制御するようにすれば、作業者としては、コーティングされるパネル基材用部材の形状や大きさに則した各部位での塗布量及び塗布回数(塗り重ね回数)などをコンピュータに入力することにより、前記基材表示面部15におけるコート層22の厚み及び前記基材周囲部16におけるコート層23の厚みを所望の厚みに調整することができる。
(コート層20の特徴)
本製造方法では、図3−5及び図7などに示すように、パネル基材部材11の膨出部12の表面側端縁部の稜線13を曲線とする、言い換えれば稜線13にR状に丸みを持たせることにより、透明樹脂を普通にコーティングすることで、コート層20の表面側端縁部の稜線21を曲線とすることができる。
この際、図5に示すように、コート層20の端縁部の稜線21において、表面側曲線開始点21aの高さと裏面側曲線終点21bの高さの差h2言い換えれば表裏方向の距離h2は、安全性、例えばシャープエッジによる切創防止の観点から、0.1〜1.0mmであるのが好ましく、中でも0.2mm以上或いは0.9mm以下、その中でも0.3mm以上或いは0.8mm以下であるのが好ましい。
コート層20の平均厚みは、ゆず肌が生じるのを防ぐ観点及び経済性の観点から、8μm〜25μmであるのが好ましい。
コート層20の平均厚みが8μm以上であれば、ゆず肌が生じるのを防ぐことができる一方、25μmより厚くても、ゆず肌防止効果は変わらないにもかかわらず経済的に負担が大きくなる。
よって、コート層20の平均厚みは、8μm〜25μmであるのが好ましく、中でも10μm以上或いは22μm以下、その中でも12μm以上或いは20μm以下であるのがさらに好ましい。
但し、上記のようなパネル基材にコーティングする場合には、防眩効果を高める観点から、基材表示面部15におけるコート層22の厚みの最大値Amaxが8μm〜16μmであるのが好ましく、中でも9μm以上或いは15μm以下、その中でも11μm以上或いは13μm以下であるのがさらに好ましい。
他方、前記基材周囲部16におけるコート層23の厚みの最大値Bmaxは、ゆず肌を防止する観点から、10μm〜25μmであるのが好ましく、中でも14μm以上或いは22μm以下、その中でも16μm以上或いは20μm以下であるのがさらに好ましい。
また、上記基材表示面部15におけるコート層22の厚みの平均値Aavと、前記基材周囲部16におけるコート層23の厚みの平均値Bavとが、Aav<Bavの関係となるように、透明樹脂をコーティングするのが好ましい。
このように、基材表示面部15におけるコート層22の厚みと、基材周囲部16におけるコート層23の厚みとに差を持たせて、表面に多数の凹凸を有する基材表示面部15におけるコート層22の厚みを、基材周囲部16におけるコート層23の厚みより小さくすることで、表示面部2における防眩効果を維持しつつ、周囲部3におけるゆず肌の発生を防ぐことができる。
前記基材表示面部15におけるコート層22の厚みの平均値Aavは10μm〜14μmとなるように、透明樹脂をコーティングするのが好ましい。
基材表示面部15におけるコート層22の厚みの平均値Aavが14μm以下であれば、十分な防眩効果を得ることができる。他方、10μm以上であれば、画像の鮮明度を損なうことをより防ぐことができる。また、塗膜としての強度を十分付与することができる。
かかる観点から、基材表示面部15におけるコート層22の厚みの平均値Aavは、5μm〜10μmであるのが好ましく、中でも6μm以上或いは9μm以下、その中でも7μm以上或いは8μm以下であるのが特に好ましい。
他方、前記基材周囲部16におけるコート層23の厚みの平均値Bavは8μm〜30μmとなるように、透明樹脂をコーティングするのが好ましい。
基材周囲部16におけるコート層23の厚みの平均値Bavが30μm以下であれば、経時による塗膜収縮や塗膜の破損を防ぐことができる。他方、8μm以上であれば、ゆず肌が生じるのをより防止することができる。
かかる観点から、基材周囲部16におけるコート層23の厚みの平均値Bavは、8μm〜30μmであるのが好ましく、中でも10μm以上或いは25μm以下、その中でも12μm以上或いは20μm以下であるのが特に好ましい。
なお、基材表示面部15におけるコート層22の厚みの平均値Aav及び基材周囲部16におけるコート層23の厚みの平均値Bavは、後述する実施例のように測定してもよいし、また、走査型電子顕微鏡(SEM)などの電子顕微鏡を用いて、コート層22、23の断面を観察し、任意の3か所以上の厚みを計測してその平均値を算出することで求めることもできる。
さらに、前記基材表示面部15におけるコート層22の表面粗さRzAと、前記基材周囲部16におけるコート層23の表面粗さRzBと、前記パネル基材用部材11の表示面部12の表面粗さRzCとが、次の関係式(1)を満たすように、透明樹脂をコーティングするのが好ましい。RzC、RzA及びRzBが次の関係式(1)又は(2)を満たせば、防眩効果がより一層高まり好ましい。
(1)・・表面粗さRzC>表面粗さRzA=表面粗さRzB
(2)・・表面粗さRzC>表面粗さRzA>表面粗さRzB
(樹脂組成物)
コートする樹脂組成物(「コート樹脂組成物」と称する)は、透明な樹脂組成物であれば特に限定するものではない。中でも、ハードコート材料として用いられている樹脂組成物が特に好ましい。
ハードコート樹脂組成物としては、紫外線(UV)硬化性の樹脂組成物、溶剤乾燥硬化性の樹脂組成物、熱硬化性の樹脂組成物などを挙げることができる。但し、他の透明なハードコート材料を適宜使用することができる。
紫外線硬化性の樹脂組成物としては、光重合性化合物、すなわち光重合性官能基を1つ以上有する化合物を含有する樹脂組成物を挙げることができる。
また、光重合性化合物を重合する際に照射する光としては、例えば可視光線、並びに紫外線、X線、電子線、α線、β線、およびγ線のような電離放射線などを挙げることができる。
上記光重合性化合物としては、分子中にアクリロイル基、メタアクリロイル基等の重合性不飽和結合、チオール基、またはエポキシ基、またはアリル基等のエチレン性二重結合を有する光重合性モノマー、光重合性オリゴマー、または光重合性ポリマーを挙げることができる。例えば、光重合性モノマーと、光重合性オリゴマー又は光重合性ポリマーとを組み合わせて使用することができる。
光重合性モノマーとしては、光重合性官能基を2つ(すなわち、2官能)以上有する多官能モノマーを挙げることができる。例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリエステルトリ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、アダマンチルジ(メタ)アクリレート、イソボロニルジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートや、これらをPO、EO等で変性したものが挙げられる。
光重合性オリゴマーとしては、2官能以上の多官能オリゴマーが好ましい。例えばポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、イソシアネート(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル−ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
光重合性ポリマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、イソシアネート(メタ)アクリレート、ポリエステル−ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
紫外線硬化性の樹脂組成物としては、光重合開始剤を含有し、該光重合開始剤が紫外線を吸収して、励起、活性化されることで重合反応を起こし、紫外線硬化性樹脂の硬化反応を起こす樹脂組成物であってもよい。
光重合開始剤としては、例えば、ベンジル、ベンゾフェノンやその誘導体、チオキサントン類、ベンジルジメチルケタール類、αヒドロキシアルキルフェノン類、α−ヒドロキシアセトフェノン類、ヒドロキシケトン類、アミノアルキルフェノン類、アシルホスフィンオキサイド類などを挙げることができる。中でも、α−ヒドロキシアルキルフェノン類は硬化時に黄変を起こしにくく、透明な硬化物が得られるので好ましい。また、アミノアルキルフェノン類は、非常に高い反応性を備え、優れた硬度の硬化物が得られるので好ましい。上記光重合開始剤は、1種のみを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
光重合開始剤の添加量は、硬化性樹脂100質量部に対して、0.1〜5質量部添加することが好ましい。
紫外線硬化性の樹脂組成物の場合、例えば、当該樹脂組成物をパネル基材表面に塗布し、次いで、当該樹脂組成物を乾燥させるために加熱して乾燥させて溶剤を蒸発させた後、該樹脂組成物に紫外線等の光を照射して、光重合性化合物を重合(架橋)させることによりコート層を硬化させることができる。但し、この方法に限定するものではない。
溶剤乾燥硬化性の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂等、塗工時に固形分を調整するために添加した溶剤を乾燥させるだけで、被膜となるような樹脂組成物であればよい。
溶剤乾燥型樹脂としては、透明ポリイミド前駆体ワニスなどを含む組成物を挙げることができる。
また、前記熱硬化性樹脂組成物としては、例えばポリウレタン系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等の熱硬化性樹脂を含有するものを挙げることができる。
熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂のほかに、必要に応じて、例えば架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、重合促進剤、溶剤、粘度調節剤、体質顔料等を含有してもよい。
硬化剤としては、通常、イソシアネート、有機スルホン酸等がポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂に用いられ、アミンがエポキシ樹脂に、メチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物、アゾビスイソブチルエステル等のラジカル開始剤が不飽和ポリエステル系樹脂によく使用される。
以上の中でも、耐擦傷性の観点から、ポリカーボネート製基材上にコーティングした場合の鉛筆硬度がH以上となるコート樹脂組成物であるのが好ましい。
また、コート樹脂組成物の濡れ性(JIS K 6768)は22.6dyn以下であるのが好ましく、コート樹脂組成物の粘度(JIS K 5600 2―2 フローカップ式)は7.5秒〜10.0秒であるのが好ましい。
かかる観点から、コート樹脂組成物のベース樹脂は、アクリル樹脂、ウレタン樹脂が特に好ましい。中でも、表面硬度の観点からすると、アクリル樹脂が特に好ましい。
上記コート樹脂組成物には、必要に応じて、従来公知の分散剤、界面活性剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、増粘剤、着色防止剤、着色剤(顔料、染料)、消泡剤、レベリング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤、易滑剤、酸化防止剤、耐衝撃性改質剤等の各種添加剤を含有することができる。
<切削工程>
本製造方法においては、コーティング工程後に切削工程を実施することが一つの特徴である。
切削工程では、例えば所定の形状になるように、コート層積層パネル基材用部材の余肉部分すなわち余肉鍔部14を切削すればよい。
例えば、図5の縦点線間で示すように、パネル基材用部材11の膨出部12における稜線13の裏面側曲線終点13b或いは裏面側曲線終点13bよりも表面側曲線開始点13a寄りの位置、特に裏面側曲線終点13bから表面側曲線開始点13a寄り0.2mm以内の位置、その中でも0.1mm以内の位置において、コート層積層パネル基材用部材を垂直に切断して余肉鍔部14を切削することにより、フロントパネル1を作製することができる。
また、図7の縦点線間で示すように、パネル基材用部材11の膨出部12における稜線13の表面側曲線終点13b或いは表面側曲線終点13bよりも表面側曲線開始点13a寄りの位置、特に表面側曲線終点13bから表面側曲線開始点13a寄り0.2mm以内の位置、その中でも0.1mm以内の位置において、コート層積層パネル基材用部材を垂直に切断して余肉鍔部14を切削することにより、フロントパネル1を作製することもできる。
このように、パネル基材用部材11の膨出部12における稜線13の裏面側曲線終点13b或いは裏面側曲線終点13bよりも表面側曲線開始点13a寄りの位置或いは稜線13の表面側曲線終点13c或いは表面側曲線終点13cよりも表面側曲線開始点13a寄りの位置においてコート層積層パネル基材用部材を垂直に切断することにより、例えば図8に示すように、コート層20の表面側端縁部に丸みを持たせることができると同時に、コート層20の表面側端縁部の下方に連続して、コート層20及びパネル基材10の垂直端面を形成することができる。すなわち、コート層20の切断面が少なくとも上向きにならないため、フロントパネル1の端縁部が白く見えないようにすることができる。
コート層20が積層してなるパネル基材用部材11を垂直に切断する方法としては、エンドミルを使用し回転による切削、刃物による打抜き切断などを挙げることができる。
<印刷工程>
本製造方法は、必要に応じて印刷工程を備えていてもよい。
例えば、基材表示面部15の周囲に隠蔽部を形成するように、すなわち基材周囲部16に対応したパネル基材の裏面に印刷、例えば黒色印刷を施すようにしてもよい。
印刷工程は、コーティング工程の前後いずれに導入してもよい。
また、ミラー印刷によって、ミラー印刷層を設けることもできる。
ミラー印刷層を設けることにより、ミラー効果を与えて良好なメタリック感を付与することができ、優れた意匠性を与え、高級感を付与することができる。
ミラー印刷に用いられる印刷インクには、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂などの合成樹脂に、アルミニウム粉末、銀粉末などの金属粉末を配合して分散させたシルバー印刷インクなどを用いることができる。
このような印刷インクの印刷方法としては、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷等の印刷法が用いられるが、なかでもスクリーン印刷が好適である。
また、上記ミラー印刷層上に白色印刷を施して白色印刷層を設けることも可能である。
この白色印刷は、内側のミラー印刷層にわずかに残る微少なピンホールを目止めし、光の透過を防止して、ミラー印刷によって得られたメタリック感のピンホールによる低下を抑えるためのものであり、白色着色剤を配合した通常の印刷インクが用いられ、スクリーン印刷等で印刷することができる。
また、マット仕上がり透明印刷または艶消し透明印刷を施すこともできる。
この種の用途に使用される印刷インクとしては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂などの透明合成樹脂をビヒクルとし、これにシリカ粉末、アルミナ粉末などの艶消し用の粉末を配合、分散した蒸発乾燥型あるいは紫外線硬化型の透明印刷インクが好ましい。
このような透明印刷の印刷方法としては、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷等の印刷法などを用いることができる。
<用途>
本フロントパネルは、そのまま、スマートフォンやタブレット端末、携帯ゲーム機器などのフロントパネルのほか、カーナビゲーションや産業機械などの操作パネルに使用することができる。
<語句の説明>
本明細書において「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
また、本明細書において「ベース樹脂」とは、樹脂組成物を構成する樹脂のうちで最も含有量の多い樹脂を意味し、通常は、該樹脂組成物を構成する樹脂の50質量%以上、中でも80質量%以上、その中でも90質量%以上(100質量%を含む)樹脂である。但し、樹脂組成物が2種類のベース樹脂を含む場合には、その合計量が上記質量割合となる。
また、本明細書において、「表面側」とは、フロントパネルからの表示光が出光する側であり、フロントパネルの表示を観察する側を意味する。
「裏面側」とは、前記「表面側」とは反対側を意味し、フロントパネルの表示光が入光する側を意味する。
「透明」とは、無色透明に限られず、着色透明もこれに包含されるものとする。
以下、本発明を下記実施例及び比較例に基づいてさらに詳述する。
<実施例1>
車載ディスプレイフロントパネルの形状に対応した形状のキャビティを有し、表示面部2の視認側表面に対応する型面がシボ加工面、周囲部3の表面に対応する型面が鏡面である射出成形用金型を用意した。
ポリカーボネートをベース樹脂として含有する射出成形用樹脂材料を用意した。この射出成形用樹脂材料を上記金型のキャビティにそれぞれ充填して冷却固化することによって、ポリカーボネート製のパネル基材用部材を成型した。
次いで、大気雰囲気下で炉内温度を100℃、700分保持するようにしてアニーリングを行って、パネル基材用部材A(サンプル)を得た。
得られたパネル基材用部材(サンプル)は、図2(1)に示すように、長手側面視した際にフロントパネル1に相当する面積部分すなわち上面視フロントパネル相当部分を、図2(2)に示すように、上面側言い換えれば視認側に0.4mm膨出してなる砲台状の厚さ0.4mmの膨出部12を備え、その周囲外側には、一段下がった余肉鍔部14を備えたパネル基材用部材11であって、膨出部12の表面側端縁部の稜線13は曲線をなし、当該膨出部12の表面側端縁部の稜線13において、表面側曲線開始点13aの高さと裏面側曲線終点13bの高さの差h1は、表1に示すように0.4mmであった。
また、図4に示すように、表面に多数の凹凸を有する基材表示面部15と、平面視した際に当該基材表示面部15を囲むようにその周囲に、平滑面からなる基材周囲部16とを形成してなる部材であり、基材表示面部15の表面の凹凸の最大高さ(Ry)は22μmであり、周囲部のそれは4μmであった。
さらに、基材周囲部16の裏面にシルクスクリーン印刷にて、黒色印刷を施した。
次に、ロボットアームスプレーを使用してパネル基材用部材(サンプル)の表面に透明樹脂をコーティングして厚さ18μmのコート層20を形成し、コート層積層パネル基材用部材を作製した。
この際、ロボットアームスプレーを制御するコンピュータに、それぞれの位置におけるスプレー量と塗り重ね回数を入力することで、基材表示面部15におけるコート層22の厚み及び前記基材周囲部16におけるコート層23の厚みを表1に示すように調整した。コート層20の端縁部の稜線21において、表面側曲線開始点21aの高さと裏面側曲線終点21bの高さの差h2は、表1に示すように0.4mmであった。
上記透明樹脂Aとしては、アクリル樹脂(粘度8.0秒)を使用した。この粘度は、JIS K 5600 2―2 フローカップ式に準拠して,アネスト岩田製 NK2カップを使用して測定した値である。
また、コート層表面の鉛筆硬度は、いずれの実施例・比較例でも2Hであった。
次に、エンドミルを使用し回転による切削で、パネル基材用部材11の膨出部12における稜線13の裏面側曲線終点13bにおいて、コート層積層パネル基材用部材を垂直に切断して余肉鍔部14を切削することにより、フロントパネル(サンプル)を作製した。
<実施例2、3>
実施例1において、スプレー量や塗り重ね回数を調整することにより、各コート層の厚みを表1に示すように変更した以外、実施例1と同様にフロントパネル(サンプル)を作製した。
<比較例1>
実施例1の膨出部12と同じ厚さのポリカーボネート板を用意し、実施例1と同様の透明樹脂を用いて厚さ18μmのコート層を形成し、コート層積層パネル基材用部材を作製した。
そして、図9に示すように、切断端縁部がR面取状となるようにR形状を付与したエンドミルを用いてコート層積層パネル基材用部材を切削して、フロントパネル(サンプル)を作製した。
<比較例2>
実施例1で得られたフロントパネル(サンプル)におけるパネル基材と同じ形状となるように、パネル基材用部材を切削した後、実施例1と同様の透明樹脂を用いて、図10に示すように、厚さ18μmのコート層を形成し、フロントパネル(サンプル)を作製した。
<比較例3>
実施例1の膨出部12と同じ厚さのポリカーボネート板を用意し、実施例1と同様の透明樹脂を用いて厚さ18μmのコート層を形成し、コート層積層パネル基材用部材を作製した。
そして、図11に示すように、切断端縁部が垂直端面となるようにエンドミルを用いてコート層積層パネル基材用部材を切削して、フロントパネル(サンプル)を作製した。
(コート層の厚みの最大値及び平均値の測定)
金属板に対して実施例と同様にコート層を形成し、電磁誘導式膜厚測定装置(株式会社ケット化学研究所製「パーマスコープMPOD」)を用いて、任意の3箇所のコート層の厚みを計測し、これらの平均値をそれぞれ平均値Aav、Bavとし、これらの最大値をそれぞれAmax、Bmaxとした。
この際、コート層42の厚みの平均値Bavを、コート層の端縁部に生じた膨出部より内側におけるコート層厚みaとした。
(外観の寸法精度評価)
実施例・比較例で作製したフロントパネル(サンプル)を目視で観察し、次の基準で、樹脂溜まりの寸法精度を評価した。
○(good):コート層端縁部側面の膨出厚みcが50μm未満であり、樹脂溜まりが目立たない。
×(poor):コート層端縁部側面の膨出厚みcが、50μm以上であって、樹脂溜まりが側面に大きく垂れこむ
(外観光沢評価)
実施例・比較例で作製したフロントパネル(サンプル)を目視で観察し、次の基準で、外観光沢を評価した。
○(good):上面視でフロントパネル全面の光沢が均一。
×(poor):上面視の外周部の光沢が下がる。
(安全性評価)
実施例・比較例で作製したフロントパネル(サンプル)を切断し、JIS B 0701―1987に規定される丸みの値Rを、断面の稜線部を顕微鏡で測定し、次の基準で、安全性を評価した。
○(good):Rが0.2以上
×(poor):Rが0.2未満
Figure 0005948515
比較例2のように、パネル基材用部材を切削した後、透明樹脂をコートすると、切削ガスが塗装時の異物となり、塗料不良を生じることも確認された。
上記実施例及び発明者がこれまで行ってきた試験結果より、パネル基材用部材を作製する際、上面側に膨出してなる膨出部の外側に余肉鍔部を備え、その膨出部の表面側端縁部の稜線を曲線としてなる構成を備えたパネル基材用部材を作製し、このパネル基材用部材の表面に、透明樹脂をコーティングしてコート層を形成してコート層積層パネル基材用部材を形成し、さらに該パネル基材用部材の膨出部における稜線の裏面側曲線終点或いは裏面側曲線終点よりも表面側曲線開始点寄りの位置或いは稜線の表面側曲線終点或いは表面側曲線終点よりも表面側曲線開始点寄りの位置において、前記コート層積層パネル基材用部材を垂直に切断して余肉部分を切削すれば、前記コート層の端縁部に丸みを持たせることができ、その下方に連続する前記パネル基材の端面が垂直端面とすることができるから、表面側端縁部が白くなることを防ぐこともでき、しかも、コート層の端縁部に樹脂溜まりが出来ないようにすることができることが分かった。
また、上記実施例及び発明者がこれまで行ってきた試験結果より、表示面部のコート層の厚みと、周囲部のコート層の厚みとに差を持たせて、表面に多数の凹凸を有する表示面部のコート層の厚みを比較的大きくすることで、表示面部における防眩効果を維持しつつ、平滑面においてゆず肌の発生を防ぐことができることが分かった。かかる観点から、周囲部のコート層の厚みの平均値Bavは10μmより厚く30μm以下であるのが好ましく、表示面部のコート層の厚みの平均値Aavは5μm〜10μmであるのが好ましいことが分かった。
1 フロントパネル
2 表示面部
3 周囲部
10 パネル基材
11 パネル基材用部材
12 膨出部
13 稜線
14 余肉鍔部
15 基材表示面部
16 基材周囲部
20 コート層
21 稜線
22 コート層
23 コート層
24 コート層

Claims (6)

  1. パネル基材の表面にコート層を備えたフロントパネルの製造方法において、
    上面視した際にフロントパネルに相当する上面視フロントパネル相当部分を、上面側に膨出してなる膨出部を備え、かつ、その膨出部の表面側端縁部の稜線を曲線としてなる構成を備えたパネル基材用部材の表面に、透明樹脂をコーティングしてコート層を形成すると共に、該コート層の端縁部の稜線を曲線として、コート層積層パネル基材用部材を作製することを特徴とするコーティング工程と、
    前記パネル基材用部材の膨出部における稜線の裏面側曲線終点若しくは裏面側曲線終点よりも表面側曲線開始点寄りの位置又は稜線の表面側曲線終点若しくは表面側曲線終点よりも表面側曲線開始点寄りの位置において、前記コート層積層パネル基材用部材を垂直に切断して余肉部分を切削することにより、前記コート層の端縁部が丸みを持ち、その下方に連続する前記パネル基材の端面が垂直端面となるようにすることを特徴とする切除工程と、
    を備えたフロントパネルの製造方法。
  2. コート層の平均厚みを8〜25μmとすると共に、前記コート層の端縁部の稜線において、表面側曲線開始点の高さと裏面側曲線終点の高さの差すなわち表裏方向の距離を0.1〜1.0mmとすることを特徴とする請求項1に記載のフロントパネルの製造方法。
  3. 上記パネル基材用部材の膨出部の表面側端縁部の稜線において、表面側曲線開始点の高さと裏面側曲線終点の高さの差すなわち表裏方向の距離を0.1〜1.0mmとすることを特徴とする、請求項1又は2に記載のフロントパネルの製造方法。
  4. 上記パネル基材用部材は、多数の凹凸を表面に有する基材表示面部の周囲に、平滑面からなる基材周囲部を備えており、
    上記コーティング工程では、前記基材表示面部におけるコート層の厚みの最大値Amaxが8〜16μmであり、且つ、前記基材周囲部におけるコート層の厚みの最大値Bmaxが10〜25μmとなるように、透明樹脂をコーティングすることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のフロントパネルの製造方法。
  5. 前記基材表示面部におけるコート層の厚みの平均値Aavを10μm〜14μmとすることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のフロントパネルの製造方法。
  6. 前記フロントパネルは、車載機器用タッチパネルディスプレイに用いられるフロントパネルであることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のフロントパネルの製造方法。
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