JP5944854B2 - ニッケル水素蓄電池の製造方法 - Google Patents
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Description
このような電池に関して、例えば、特許文献1には、水素吸蔵合金からなる負極に酸化イットリウム(Y2O3)からなる添加物を含有しているアルカリ蓄電池が開示されている。
一方、水素吸蔵合金粉末の表面を被覆するイットリウム化合物は、電池において抵抗成分となる。このため、アルカリ電解液において、イットリウムイオンの濃度が高くなり、水素吸蔵合金粉末の表面を被覆するイットリウム化合物の析出量が多くなるほど、電池の内部抵抗が増大し、電池の出力が低下することも判ってきた。
加えて、アルカリ電解液中に溶出したイットリウムイオンの濃度が高いほど、水素吸蔵合金粉末の表面に析出する水酸化イットリウムの析出量が多くなると考えられる。
一方、ニッケル水素蓄電池における内部抵抗は、第1積が増大すると徐々に増大することが判ってきた。
これに対し、前述のニッケル水素蓄電池の製造方法では、負極板作製工程において、第1積が0.03〜0.17deg・wt%となる添加割合で、水素吸蔵合金粉末とY2O3粉末とを混合した混合物を用いる。従って、水素吸蔵合金粉末の耐蝕性を向上させて負極板ひいては電池の耐久性を向上させ、かつ、電池の内部抵抗の増大を適切に抑えた電池を製造することができる。
また、Y2O3粉末の(222)面のピークについての半価幅とは、CuKα線を用いた粉末X線回折において、回折角2θが28〜30degの付近に現れるピークについての半価幅をいう。
後述するように、第1積が0.12deg・wt%を超えると、内部抵抗が増大し始める。これに基づいて、上述のニッケル水素蓄電池の製造方法では、水素吸蔵合金粉末の耐蝕性を向上させて負極板ひいては電池の耐久性を向上させると共に、電池の内部抵抗の増大を確実に抑えた電池を製造することができる。
具体的には、Y2O3粉末をなすイットリウムイオンと同様、Yb2O3粉末をなすイッテルビウムイオンもまた、その一部がアルカリ電解液に一旦溶出し、その後、水素吸蔵合金粉末の表面に、主に水酸化イッテルビウムのイッテルビウム化合物として析出して、この表面を被覆する。これにより水素吸蔵合金粉末の腐食を抑制できる。なお、Yb2O3粉末からアルカリ電解液に溶出したイッテルビウムイオンの濃度が高いほど、水素吸蔵合金粉末上に析出するイッテルビウム化合物の析出量は多くなる。
また、イットリウム化合物と同様に、水素吸蔵合金粉末の表面を被覆するイッテルビウム化合物も電池の抵抗成分となるため、水素吸蔵合金粉末の表面を被覆するイッテルビウム化合物の析出量が多くなるほど、電池の内部抵抗が増大する。
なお、イットリウム及びイッテルビウムの少なくともいずれかの元素Mを含むM2O3粉末から所定条件のアルカリ性水溶液に溶出する元素Mのイオンの溶出のしやすさを標準溶解濃度(mol/l)で評価することとする。この標準溶解濃度とは、6.8mol/lの水酸化カリウム水溶液である標準アルカリ性水溶液50ml中に、M2O3粉末を2.2mmol投入し攪拌して、45℃下で168時間静置した後の上澄み液について、ICP発光分光分析法を用いて測定したイットリウムイオン及びイッテルビウムイオンの濃度をいう。
従って、上述の標準溶解濃度と、混合物におけるM2O3粉末の添加割合とを掛けた上述の第2積は、電池において、アルカリ電解液中に溶出した元素Mのイオンの濃度、及び、水素吸蔵合金粉末上に析出する元素Mの水酸化物の析出量と正の相関を示すことが判ってきた。
加えて、上述の第2積と、水素吸蔵合金粉末の耐蝕性との関係、及び、電池の内部抵抗との関係についてそれぞれ調査した。この第2積が0.014mmol/l・wt%になるまでは第2積が増大するのと共に、ニッケル水素蓄電池における水素吸蔵合金粉末の耐蝕性も向上する。しかし、第2積が0.014mmol/l・wt%以上になると、水素吸蔵合金粉末の耐蝕性はほぼ一定になることが判ってきた。一方、ニッケル水素蓄電池の内部抵抗は、第2積が増大すると徐々に増大することが判ってきた。
これに対し、上述の負極板作製工程において、第2積が0.014〜0.082mmol/l・wt%となる添加割合で、水素吸蔵合金粉末とM2O3粉末とを混合した混合物を用いるとした上述のニッケル水素蓄電池の製造方法では、水素吸蔵合金粉末の耐蝕性を向上させて負極板ひいては電池の耐久性を向上させ、かつ、電池の内部抵抗の増大を適切に抑えた電池を製造することができる。
後述するように、第2積が0.055mmol/l・wt%を超えると、内部抵抗が増大し始める。これに基づいて、上述のニッケル水素蓄電池の製造方法では、水素吸蔵合金粉末の耐蝕性を向上させて負極板ひいては電池の耐久性を向上させると共に、電池の内部抵抗の増大を確実に抑えた電池を製造することができる。
このニッケル水素蓄電池は、負極板ひいては電池自身の耐久性を向上させると共に、内部抵抗の増大を確実に抑えた電池とすることができる。
このニッケル水素蓄電池は、負極板ひいては電池自身の耐久性を向上させると共に、内部抵抗の増大を確実に抑えた電池とすることができる。
これに基づき、上述のイットリウムイオンの溶解濃度の推定方法では、所定条件下での溶解濃度と半価幅との相関関係を用いて、Y2O3粉末の物性値である半価幅の大きさから、上述の条件における溶解濃度を推定する。このため、Y2O3粉末をアルカリ性水溶液に浸漬してイットリウムイオンの溶解濃度を測定しなくとも、Y2O3粉末の物性値(上述の半価幅の大きさ)に基づいてイットリウムイオンの溶解濃度を容易に推定できる。
なお、溶解濃度として、例えば、前述の標準溶解濃度を用いることもできる。
まず、参考形態1について、図面を参照しつつ説明する。
本参考形態1にかかる電池1は、図1に示すように、矩形箱型の電池ケース70と、この電池ケース70内に収容する、水素吸蔵合金粉末22及びY2O3粉末21を含む負極板20を有する電極体10、及び、電解液50とを備えるニッケル水素蓄電池である。
このうち、電池ケース70は、いずれもニッケルめっき鋼板からなる、有底矩形箱形の電槽71と矩形板状の封口板72とを有する。この電池ケース70では、封口板72が電槽71の開口全体を閉塞している。
また、この電池ケース70は、封口板72上に、自己復帰型(即ち、ガスの発生により電池ケース70の内圧が上昇したらガス排出孔(図示しない)を開放してガスを外部に排出する一方、ガスを排出した後、ガス排出孔を再び閉塞する形態)の安全弁機構SVを配置している。
一方、電解液50は、水酸化カリウム(KOH)を主成分とする比重が1.2のアルカリ性水溶液である。
また、水素吸蔵合金粉末22は、組成がMmAl0.42Mn0.45Co0.20Ni4.18(Mm:ミッシュメタル)の合金からなる。この水素吸蔵合金粉末22は、表面を主に水酸化イットリウムのイットリウム化合物で覆われている。このイットリウム化合物は、上述したY2O3粉末21をなすイットリウムイオンの一部が、Y2O3粉末21から電池1の電解液50に一旦溶出し、その後、水素吸蔵合金粉末22の表面に析出してできたものである。このイットリウム化合物は、水素吸蔵合金粉末22を被覆してこの水素吸蔵合金粉末22の耐蝕性を向上させる一方で、電池1において抵抗成分となる。
具体的には、まず、Y2O3粉末について、(222)面のピークについての半価幅HWを調べた。
一方、このY2O3粉末2.2mmol(0.5g)を、6.8mol/lの水酸化カリウム水溶液からなる標準アルカリ性水溶液50ml中に投入し攪拌して、45℃下で168時間静置した。その後、ICP発光分光分析法を用いて、上澄み液におけるイットリウムイオンの濃度を測定し、Y2O3粉末のイットリウムイオンから溶出したイットリウムイオンの第1溶解濃度Y1(mol/l)を得た。
メーカ、製法、粒径等を異ならせた複数の種類のY2O3粉末についても、同様に半価幅HW及び溶解濃度Y1を測定し、その結果を横軸に半価幅HW、縦軸に第1溶解濃度Y1を示すグラフにプロットした(図2参照)。
また、第1溶解濃度Y1を測定するのに用いた標準アルカリ性水溶液と同じく、KOHを主とするアルカリ性水溶液である電解液50を用いる電池1でも、電解液中に溶出するイットリウムイオンの濃度と、Y2O3粉末の半価幅HWとの間に、同様の正の相関関係があると考えられる。
さらに、電解液50中に溶出したイットリウムイオンの濃度が高いほど、水素吸蔵合金粉末22の表面に析出する水酸化イットリウムの析出量も多くなる。
かくして、前述した半価幅HWと添加割合Pとを掛けた前述の第1積S1(=HW×P)は、電池1において、電解液50中に溶出しているイットリウムイオンの濃度、さらには水素吸蔵合金粉末22上に析出している水酸化イットリウムの析出量と正の相関を示す。
まず、電池1について、ニッケル磁性体量(VSM値)を測定した。具体的には、電池1を解体して、負極板20から水素吸蔵合金粉末22を採取した。そして、振動試料型磁力計VSM−5(東英工業製)を用いて、この水素吸蔵合金粉末22の単位質量当たりの飽和磁化強度(emu/g)を測定した。なお、この水素吸蔵合金粉末22の磁性体が全てニッケルであると仮定して、1emu/g=0.18384wt%を用いて、飽和磁化強度(emu/g)からニッケル磁性体量(VSM値,wt%)を算出した。このときのVSM値を耐久前VSM値V1とする。
電池1とは第1積S1が異なる電池についても、同様にしてVSM値の増加量ΔVを算出した。そして、各電池の結果を、横軸を第1積S1、縦軸をVSM値の増加量ΔVの逆数(1/ΔV)としたグラフにプロットした(図3参照)。
図3に示すグラフによれば、第1積S1が0.03deg・wt%以下では、第1積S1が増大するのと共に、逆数1/ΔVが大きくなる。つまり、第1積S1が増大するほど増加量ΔVが小さくなり、水素吸蔵合金粉末の耐蝕性が向上することが判る。一方、第1積S1が0.03deg・wt%以上になると、逆数1/ΔVがほぼ一定となる。即ち、第1積S1が増加しても、増加量ΔVは変化せず、水素吸蔵合金粉末の耐蝕性もほとんど変化しないことが判ってきた。
横軸を第1積S1、縦軸を内部抵抗値の増加率ΔRとしたグラフに、各電池の結果をプロットした(図4参照)。
図4に示すグラフによれば、第1積S1が増大すると、内部抵抗値の増加率ΔRも増大しているが、第1積S1が0.09〜0.12deg・wt%付近では増加率ΔRの上昇率(曲線の傾き)が一旦小さくなっている。そして、第1積S1が0.12deg・wt%よりも大きくなると、増加率ΔRの上昇率が再び大きくなり、0.17deg・wt%を超えると、増加率ΔRの上昇率がさらに大きくなることが判る。
また、第1積S1が0.03〜0.12deg・wt%の範囲内の電池は、水素吸蔵合金粉末の耐蝕性を向上させて負極板ひいては電池の耐久性を向上させると共に、Y2O3粉末を含まない負極板を用いた電池よりも内部抵抗値を確実(具体的には、1.7%未満の増加)に抑えることができ、より好ましいことが判る。
さらに、第1積S1が0.03〜0.09deg・wt%の範囲内の電池は、水素吸蔵合金粉末の耐蝕性を向上させて負極板ひいては電池の耐久性を向上させると共に、Y2O3粉末を含まない負極板を用いた電池よりも内部抵抗値を1.5%以内の増加に抑えることができ、より好ましいことが判る。
また、この電池1は、第1積S1が0.03〜0.12deg・wt%の範囲内にあるため、内部抵抗の増大を確実に抑えた電池1とすることができる。
さらに、この電池1は、第1積S1が0.03〜0.09deg・wt%の範囲内にあるため、内部抵抗の増大を確実に抑えた(具体的には、Y2O3粉末を含まない負極板を用いた電池よりも内部抵抗値を1.5%以内の増加に抑えた)電池1とすることができる。
この電池1の製造方法では、被覆前水素吸蔵合金粉末22bとY2O3粉末21とを混合した混合物を支持体28に塗工して負極板20を作製する負極板作製工程と、作製した負極板20を内部に収容した電池ケース70内に電解液50を注液する注液工程とを備える。なお、被覆前水素吸蔵合金粉末22bは、表面が水酸化イットリウムで被覆されていない水素吸蔵合金粉末である。
上述のスラリーを、前述した金属多孔板(パンチングメタル)からなる支持体28の両面に塗工(塗着)した。その後、塗工したスラリーを支持体28と共に乾燥しプレスし所定の寸法に切断して、矩形板状の負極板20bを作製した。この負極板20bに含まれる水素吸蔵合金は、表面を水酸化イットリウムに被覆されていない水素吸蔵合金粉末(被覆前水素吸蔵合金粉末22b)からなる。
電極体作製工程で作製した電極体10を、電池ケース70をなす前述の電槽71内に収容し、この電槽71の開口全体を前述の封口板72で塞ぐ。その後、前述した安全弁機構SVのガス排出孔(図示しない)を通じて、電池ケース70(電槽71)内に電解液50を注液する(注液工程)。
この注液工程の後、ガス排出孔を塞ぐように、封口板72の外表面上に安全弁機構SVを設置して、電池1を完成させた。
なお、この電池1では、注液工程の後、負極板20bに含まれるY2O3粉末21から、これをなすイットリウムイオンの一部が電解液50に一旦溶出し、その後、被覆前水素吸蔵合金粉末22bの表面に水酸化イットリウムとして析出して、この表面を被覆する。かくして、水酸化イットリウムに被覆された水素吸蔵合金粉末22とY2O3粉末21とを有する負極板20を備える電池1が出来上がる。
また、第1積S1が0.03〜0.12deg・wt%の範囲内の値(S1=0.06deg・wt%)であるため、電池1の内部抵抗の増大を確実に抑えた電池1を製造することができる。
さらに、第1積S1が0.03〜0.09deg・wt%の範囲内の値(S1=0.06deg・wt%)であるため、電池1の内部抵抗の増大を確実に抑えた(具体的には、Y2O3粉末を含まない負極板を用いた電池よりも内部抵抗値を1.5%以内の増加に抑えた)電池1を製造することができる。
一方、Y2O3粉末の粒径が、3.0μm以上、6.2μm以下の範囲内であることが好ましい。3.0μmより小さいと、表面積が大きくなり過ぎて、イットリウムイオンの溶解濃度が高くなるため、電池の内部抵抗が大きくなる。一方、6.2μmより大きいと、表面積が小さくなり過ぎて、イットリウムイオンの溶解濃度が低くなり、耐食性が低くなる。なお、粒径は、散乱式粒度分布測定装置(例えば、ホリバ製LA950V2)を用いて、得られた水酸化ニッケル粉末の粒度分布を測定したものである。
次に、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
なお、本実施形態にかかる電池101は、前述した参考形態1の電池1における第1積S1に代えて、所定条件でY2O3粉末から標準アルカリ性水溶液に溶出したイットリウムイオンの濃度(前述の第1溶解濃度Y1(mol/l))と、Y2O3粉末の添加割合Pとを掛けた積(第2積S2)を用いている点でのみ、参考形態1の電池1と異なる。
即ち、本実施形態では、所定の条件の標準アルカリ性水溶液におけるY2O3粉末のイットリウムイオンの第1溶解濃度Y1と、負極板20に用いる水素吸蔵合金粉末22及びY2O3粉末21の混合物におけるY2O3粉末の添加割合Pとの第2積S2が、S2=0.026mmol/l・wt%である。このうち、この第1溶解濃度Y1は、前述した参考形態1と同様の標準アルカリ性水溶液50ml中に、Y2O3粉末を2.2mmol投入し攪拌して、45℃下で168時間静置した後、その上澄み液について、ICP発光分光分析法を用いて測定したイットリウムイオンの濃度である。
なお、電解液50中のイットリウムイオンの濃度が高いほど、水素吸蔵合金粉末22の表面に析出する水酸化イットリウムの析出量も多くなる。
かくして、第1溶解濃度Y1と添加割合Pとを掛けた第2積S2は、電池101において、電解液50中に溶出したイットリウムイオンの濃度、さらには水素吸蔵合金粉末22上に析出している水酸化イットリウムの析出量と正の相関を示す。
具体的には、前述した参考形態1と同様、前述した耐久試験と、この耐久試験の前後におけるVSM値の測定(算出)とを行い、電池101のVSM値の増加量ΔVを算出した。さらに、電池101とは第2積S2が異なる電池についても、同様に行った。そして、横軸を第2積S2、縦軸を前述したVSM値の増加量ΔVの逆数1/ΔVとしたグラフに、各電池の結果をプロットした(図5参照)。
図5に示すグラフによれば、第2積S2が0.014mmol/l・wt%以下の範囲では、第2積S2が増大するのと共に、逆数1/ΔVが大きく、従って増加量ΔVが小さくなり、水素吸蔵合金粉末の耐蝕性が向上することが判る。一方、第2積S2が0.014mmol/l・wt%以上になると、逆数1/ΔVがほぼ一定となり、第2積S2が増加しても水素吸蔵合金粉末の耐蝕性がほとんど変化しないことが判る。
Y2O3粉末を含まない負極板を用いた電池(第2積S2=0の電池)を含む、電池101とは第2積S2が異なる電池についても、同様にして内部抵抗値を算出した。そして、第2積S2=0の電池の内部抵抗値を基準とした内部抵抗値の増加率ΔRをそれぞれ算出した。
横軸を第2積S2、縦軸を内部抵抗値の増加率ΔRとしたグラフに、各電池の結果をプロットした(図6参照)。
図6に示すグラフによれば、第2積S2が増大すると、内部抵抗値の増加率ΔRも増大しているが、第2積S2が0.044〜0.055mmol/l・wt%付近では増加率ΔRの上昇率が一旦小さくなっている。そして、第2積S2が0.055mmol/l・wt%よりも大きくなると、増加率ΔRの上昇率が再び大きくなり、0.082mmol/l・wt%を超えると、増加率ΔRがの上昇率がさらに大きくなることが判る。
また、第2積S2が0.014〜0.055mmol/l・wt%の範囲内の電池は、水素吸蔵合金粉末の耐蝕性を向上させて負極板ひいては電池の耐久性を向上させると共に、Y2O3粉末を含まない負極板を用いた電池よりも内部抵抗値を確実(具体的には、1.7%未満の増加)に抑えることができ、より好ましいことが判る。
さらに、第2積S2が0.014〜0.044mmol/l・wt%の範囲内の電池は、水素吸蔵合金粉末の耐蝕性を向上させて負極板ひいては電池の耐久性を向上させると共に、Y2O3粉末を含まない負極板を用いた電池よりも内部抵抗値を1.5%以内の増加に抑えることができ、より好ましいことが判る。
また、この電池101は、第2積S2が0.014〜0.055mmol/l・wt%の範囲内にあるため、内部抵抗の増大を確実に抑えた電池101とすることができる。
さらに、この電池101は、第2積S2が0.014〜0.044mmol/l・wt%の範囲内にあるため、内部抵抗の増大を確実に抑えた(具体的には、Y2O3粉末を含まない負極板を用いた電池よりも内部抵抗値を1.5%以内の増加に抑えた)電池101とすることができる。
この電池101の製造方法のうち負極板作製工程では、第2積S2がS2=0.026mmol/l・wt%となる添加割合Pで、前述の被覆前水素吸蔵合金粉末22bとY2O3粉末21とを混合した混合物を用いる。この混合物を水やCMC等の添加物と共に混練したスラリーを支持体28の両面に塗工し、その後、前述した参考形態1と同様にして矩形板状の負極板20bを作製した。
なお、この電池101では、参考形態1と同様、注液工程の後、負極板20bに含まれるY2O3粉末21から、これをなすイットリウムイオンの一部が電解液50に一旦溶出し、その後、被覆前水素吸蔵合金粉末22bの表面に水酸化イットリウムとして析出して、この表面を被覆する。かくして、水酸化イットリウムに被覆された水素吸蔵合金粉末22とY2O3粉末21とを有する負極板20を備える電池101が出来上がる。
また、第2積S2が0.014〜0.055mmol/l・wt%の範囲内の値(S2=0.026mmol/l・wt%)であるため、電池101の内部抵抗の増大を確実に抑えた電池101を製造することができる。
さらに、第2積S2が0.014〜0.044mmol/l・wt%の範囲内の値(S2=0.026mmol/l・wt%)であるため、電池101の内部抵抗の増大を確実に抑えた(具体的には、Y2O3粉末を含まない負極板を用いた電池よりも内部抵抗値を1.5%以内の増加に抑えた)電池101を製造することができる。
次に、参考形態2について、図面を参照しつつ説明する。
本参考形態2では、ニッケル水素蓄電池の負極板に用いるY2O3粉末のイットリウムイオンの溶解濃度を推定する推定方法について説明する。
例えば、前述の実施形態にかかる電池101(第2積S2が、S2=0.026mmol/l・wt%)について、水酸化イットリウムの析出量、従って、第2積S2の数値を変えずに、負極板20に用いるY2O3粉末21の製造ロットや粒径等の性状を変更する場合に、上述の推定方法を用いる。
具体的には、電池101に用いるY2O3粉末21を、前述の半価幅HWがHW1のもの(第1粉末)に変更する場合を示す。第2積S2は、第1溶解濃度Y1と添加割合Pとの積であるため、第1粉末の第1溶解濃度Y1が判れば、第2積S2をS2=0.026mmol/l・wt%に維持する第1粉末の添加割合Pを算出することができる。なお、前述のように、イットリウムイオンの第1溶解濃度Y1と、Y2O3粉末の半価幅HWとの間には、図2のグラフに示す正の相関関係がある。そこで、この相関関係を用いて、第1粉末の半価幅HW1から、この第1粉末の第1溶解濃度Y1の値を推定(第1推定値E1)する。
その後、この第1推定値E1及び第2積S2から、混合物における第1粉末の添加割合Pを算出する。具体的には、第2積S2を推定値E1で除した値を算出する(P=S2/E1)。得られた添加割合Pを用いることで、Y2O3粉末を第1粉末に変更しても、第2積S2を変えずに電池を製造することができる。
例えば、実施形態では、Y2O3粉末を用いて水素吸蔵合金上に水酸化イットリウムを析出させる形態の電池101を示した。しかし、Y2O3粉末ではなく、Y2O3粉末及びYb2O3粉末を用い、水酸化イットリウム及び水酸化イッテルビウムを析出させる電池に適用しても良い。また、Yb2O3粉末を用い、水酸化イッテルビウムを析出させる電池に適用しても良い。
また、実施形態及び参考形態1,2のいずれにおいても、イットリウムイオンの溶解濃度として、標準溶解濃度の第1溶解濃度Y1を用いた。しかしながら、参考形態1,2においては溶解濃度として、第1溶解濃度Y1とは異なる条件、例えば、前述の標準アルカリ性水溶液とは異なるアルカリ性水溶液を用いて、Y2O3粉末をアルカリ性水溶液に浸漬し溶出したイットリウムイオンの溶解濃度を用いても良い。
10 電極体
20 負極板
21 Y2O3粉末(M2O3粉末)
22 水素吸蔵合金粉末(水酸化イットリウムに被覆された水素吸蔵合金粉末,水酸化物に被覆された水素吸蔵合金粉末)
22b 被覆前水素吸蔵合金粉末(水素吸蔵合金粉末)
28 支持体(基材)
30 正極板
40 セパレータ
50 電解液(アルカリ電解液)
70 電池ケース
HW 半価幅
P 添加割合
S1 第1積
S2 第2積
Y1 第1溶解濃度(標準溶解濃度,溶解濃度)
Claims (3)
- イットリウム及びイッテルビウムの少なくともいずれかの元素Mの化合物に被覆された水素吸蔵合金粉末と、上記元素Mを含むM2O3粉末と、を有する負極板を備える
ニッケル水素蓄電池の製造方法であって、
水素吸蔵合金粉末と上記M2O3粉末とを混合した混合物を基材に塗工して負極板を作製する負極板作製工程と、
作製した上記負極板をセパレータを介して正極板と積層して電極体を作製する電極体作製工程と、
上記電極体を内部に収容した電池ケース内にアルカリ電解液を注液する注液工程と、を備え、
上記負極板作製工程は、
上記M2O3粉末2.2mmolを、6.8mol/lの水酸化カリウム水溶液50mlに投入し撹拌して、45℃下で168時間静置した後の上澄み液における上記元素Mのイオンの濃度を標準溶解濃度とした場合、
上記標準溶解濃度と上記混合物における上記M2O3粉末の添加割合との第2積が0.014〜0.082mmol/l・wt%となる添加割合で、上記水素吸蔵合金粉末と上記M2O3粉末とを混合した上記混合物を用いる
ニッケル水素蓄電池の製造方法。 - 請求項1に記載のニッケル水素蓄電池の製造方法であって、
前記負極板作製工程は、
前記第2積が0.014〜0.044mmol/l・wt%となる添加割合で、前記水素吸蔵合金粉末と上記M2O3粉末とを混合した前記混合物を用いる
ニッケル水素蓄電池の製造方法。 - 請求項1または請求項2に記載のニッケル水素蓄電池の製造方法であって、
前記M2O3粉末は、
Y2O3粉末であり、
前記水素吸蔵合金粉末は、
イットリウム化合物で被覆されてなる
ニッケル水素蓄電池の製造方法。
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