以下、実施形態に係る電線搬送装置及び電線処理装置について説明する。図1は電線処理装置20を示す概略全体図である。
この電線処理装置20は、複数の処理ユニット22、30、24、26と、電線搬送装置40とを備える。
処理ユニット22、30、24、26は、電線10に対して諸処理を施すユニットである。ここでは、電線処理装置20は、処理ユニット22、30、24、26として、電線調尺切断ユニット22と、ゴム栓装着ユニット30と、第1端子圧着ユニット24と、第2端子圧着ユニット26とを備える。これらの電線調尺切断ユニット22と、ゴム栓装着ユニット30と、第1端子圧着ユニット24と、第2端子圧着ユニット26とは、この順で、電線10の搬送方向Tに沿って配設されている。
電線調尺切断ユニット22は、リール21から連続的に引出される電線10を、調尺して所定長で切断可能に構成されている。ここでは、電線調尺切断ユニット22は、リール21から電線を引出して送給する一対のローラ22aと、電線10を切断する一対の切断刃22bとを備えている。そして、一対のローラ22aによって、リール21から電線10を調尺しつつ送給し、電線10を所定長引出した時点で当該電線10を一対の切断刃22bによって切断するようになっている。なお、ここでは、電線調尺切断ユニット22の上記一対の切断刃22b又は別途設けられた専用の皮剥刃によって、電線10の端部の被覆部が皮剥ぎされる。これにより、本電線調尺切断ユニット22において所定長に切断された電線10の端部には、芯線が露出している。
ゴム栓装着ユニット30は、電線10を挿入可能な環状のゴム栓を、電線10の端部に装着可能に構成されている。
第1端子圧着ユニット24と、第2端子圧着ユニット26は、電線10の端部に露出する芯線に端子を圧着可能に構成されている。
そして、電線10が上記各処理ユニット22、30、24、26を通過することで、両端部に端子が圧着されると共に、少なくとも一端部にゴム栓が装着された端子付電線が連続的に製造される。
なお、搬送方向Tの最下流側には、製造された端子付電線を外部に搬送する外部搬送機構部28が設けられている。
これらの処理ユニット22、30、24、26、外部搬送機構部28としては、周知技術を含む種々構成を採用することができる。なお、加工対象となる電線10に応じて、処理ユニット22、30、24、26、外部搬送機構部28の一部が省略されてもよい。
電線搬送装置40は、複数の把持機構部50と、複数の把持機構部50を搬送する搬送機構部42とを備える。
搬送機構部42は、一対の回転体44と、環状循環回転体46と、一対の回転体44の少なくとも一方を回転駆動する回転駆動部48とを備える。
一対の回転体44は、プーリー又は歯車等によって構成されており、搬送方向Tの上流側及び下流側に間隔をあけて設けられている。
環状循環回転体46は、環状ベルト又は環状チェーン等によって構成されており、一対の回転体44に巻掛けられている。
回転駆動部48は、回転量等を制御可能なサーボモータ等によって構成されており、一対の回転体44の少なくとも一方を回転駆動するように構成されている。
そして、回転駆動部48の駆動により一対の回転体44の少なくとも一方を回転させることによって、環状循環回転体46が循環回転し、環状循環回転体46のうち一対の回転体44の間の一方側(ここでは上側)を走行する部分が、搬送方向Tに沿って上流側から下流側に向けて走行する。これにより、環状循環回転体46に取付けられた複数の把持機構部50が、上記複数の処理ユニット22、30、24、26を通過するように搬送される。
複数の把持機構部50は、上記環状循環回転体46に、外周側に突出する姿勢で一定間隔をあけて取付けられている。複数の把持機構部50が、各処理ユニット22、30、24、26により処理可能な位置で一旦停止しつつ、順次下流側に搬送されるように、回転駆動部48が環状循環回転体46を断続的に循環回転させる。
各把持機構部50についてより詳細に説明する。図2は把持機構部50を示す側面図であり、図3〜図5は把持機構部50を示す正面図である。図3は把持機構部50が閉じた状態を示しており、図4は把持機構部50が開いた状態を示しており、図5は把持機構部50が電線10の端部を把持した状態を示している。
把持機構部50は、電線10の端部を把持可能に構成されており、ベース部52と、一対の把持爪部60と、付勢部70と、操作部80とを備えている。
ベース部52は、上記搬送機構部42によって搬送移動される部分である。より具体的には、ベース部52は、板状部53と、一対の揺動支持部54とを備える。
板状部53の一端部は、環状循環回転体46に固定されており、板状部53の他端部は環状循環回転体46の一側部から外方に延出している。一対の揺動支持部54は、板状部53の中間部と他端部とに間隔をあけて立設された板状部分である。一対の揺動支持部54のそれぞれの両端部には、支持孔54hが形成されている。また、板状部53のうち一対の揺動支持部54の間の中央部には、操作部80を挿通配置可能な孔部53hが形成されている。
一対の把持爪部60は、上記ベース部52に開閉可能に支持されている。より具体的には、一対の把持爪部60は、樹脂等により形成された部材であり、爪部62と、受部66とを備える。
爪部62は、爪基端部62aと、爪中間部62bと、爪先端部62cとを備える。爪基端部62aは、ベース部52によって回転可能に支持される部分である。爪中間部62bは、爪基端部62aの端部(上端部)から爪基端部62aの回転支持軸に沿って延出するように形成されている。また、爪先端部62cは、爪中間部62bの先端部からベース部52の突出方向(上方向)及び一対の爪部62の間に向けて延出するように形成されている。つまり、爪部62を、その回転支持軸方向に沿って視るとL字状に曲る形状に形成されている(図3参照)。また、爪部62を、その回転支持軸に直交する側方から見ると、爪中間部62bの一端部から爪基端部62aが垂設され、爪中間部62bの他端部から爪先端部62cが立上がる形状に形成されている(図2参照)。
より具体的には、爪部62の一端部である爪基端部62aには支持孔62hが形成されている。そして、爪基端部62aが一対の揺動支持部54間に配設された状態で、ピン状の支軸部56が一対の揺動支持部54の支持孔54h及び爪基端部62aの支持孔62hに挿通されることで、爪部62がベース部52に対して回転可能に支持される。
また、一対の爪部62が上記のようにベース部52に支持された状態で、一対の爪部62の他端部である爪先端部62cは、ベース部52の上方位置で上側に突出しつつ内側を向いている。そして、一対の爪部62をベース部52の上方で互いに近接させるように閉じると、一対の爪部62の爪先端部62cの間で電線10の端部を把持できるようになる。また、この状態から、一対の爪部62をベース部52の上方で互いに遠ざけるように開くと、一対の爪部62の爪先端部62cの間に、電線10を出し入れ可能な隙間が形成される。
なお、ここでは、一対の爪先端部62cの最先端部は、把持対象となる電線10の軸方向に沿って視て、当該電線10側に向けてV字状に開くV字状部分62dに形成されている。一対のV字状部分62dは、把持対象となる電線10の軸方向において相互に突合わないで噛合い可能な位置に設けられている。従って、一対の爪先端部62cの間に電線10を把持する際には、電線10は、V字状部分62dの最奥部に位置するように案内され、一対の爪先端部62cの間でなるべく一定位置で電線10が把持されるようになる。
受部66は、爪基端部62aの端部から互いに近づく方向に向けて延出するように形成されている。一対の爪部62の受部66は、支軸部56の軸方向において互いにずれた位置に形成されており、受部66の先端部は、支軸部56の軸方向において互いに重なっている。そして、一対の受部66の先端部、即ち、一対の受部66の重なり合い部分をベース部52から離れる方向(上方向)に移動させると、一対の爪部62が開くようになっている。逆に、一対の受部66の先端部、即ち、一対の受部66の重なり合い部分をベース部52に近づける方向(下方向)に移動させると、一対の爪部62が閉じるようになっている。
また、一方の把持爪部60の受部66と、他方の把持爪部60の受部66との間には、操作部80の端部(上側の端部)を配設可能な隙間が設けられている。さらに、各受部66の重なり合い部分には、その長手方向にそって細長い長孔状の受用孔部66hが形成されている。そして、一対の把持爪部60を閉じた状態では、一対の受部66は、互いに同一直線上に延在し、各受用孔部66hも互いに重なって配設される(図3参照)。また、一対の把持爪部60を開いた状態では、一対の受部66は、その先端部をベース部52から離れる方向(上方向)に持上げるように傾斜させた状態となる(図4参照)。この状態では、各受用孔部66hは、その受部66の先端側の部分を互いに重なる位置に配設した状態で、当該受部66の先端側の部分をベース部52から離れる方向(上方向)に持上げるように傾斜させた状態となる。上記一対の受部66に形成された受用孔部66hは、操作部80による力を受ける部分として機能する。
付勢部70は、一対の把持爪部60を閉方向に付勢可能に構成されている。ここでは、付勢部70は、両端部が一対の爪部62に連結されたコイルバネによって構成されている。より具体的には、一対の爪基端部62aにバネ固定用突部62pが突設されている。そして、付勢部70の各端部が一対の爪基端部62aのバネ固定用突部62pに連結され、付勢部70が伸された状態で一対の爪部62間に配設されている。そして、この付勢部70が縮もうとする力によって、一対の爪部62が閉方向に付勢されている。すなわち、各把持機構部50においては、一対の把持爪部60は、常時閉方向に付勢されている。このため、一対の把持爪部60に対して操作部80による外力を加えない状態では、爪先端部62cの間に電線10を把持した状態を維持できる(図5参照)。なお、ここでは、付勢部70は、2つ設けられているが、1つであってもよい。また、一対の爪部62を閉方向に付勢する構成としては、コイルバネの他、板バネ、ねじりコイルバネ等を用いることができる。
操作部80は、一対の把持爪部60の開閉動作に連動して、閉位置と開位置との間で移動可能に構成されている。より具体的には、操作部80は、棒状部材に形成されている。この操作部80の一端部は上記一対の受部66間の隙間に配設され、当該一対の受部66に連結されている。また、操作部80の他端部はベース部52の下方に突出して配設されている。そして、一対の把持爪部60の開閉動作と、ベース部52の下方への操作部80の突出退避移動動作とが連動するようになっている。
より具体的には、操作部80は、棒状部82と、鍔部86とを備える。
棒状部82は全体として棒状に形成され、より具体的には、棒状部82の一端部は上記一対の受部66間に配設可能な偏平形状に形成され、棒状部82の他端部は丸棒状に形成されている。そして、棒状部82がベース部52の孔部53hに貫通状に移動可能に配設され、棒状部82の一端部が一対の受部66に配設されると共に、棒状部82の他端部がベース部52の下方に突出配置されている。
また、棒状部82の一端部には、受部66の受用孔部66hに挿通可能な丸棒状の伝達用ピン82pが一対突設されている。そして、一対の伝達用ピン82pが一対の受部66の受用孔部66hに挿通配置されることにより、操作部80の一端部が一対の受部66のそれぞれに連結されている。一対の把持爪部60が閉じた状態では、一対の受部66の受用孔部66hの位置に連動して、操作部80が下方の閉位置に配設される(図3参照)。また、一対の把持爪部60が開いた状態では、一対の受部66の受用孔部66hの上方への移動に連動して、操作部80が上方の開位置に配設される(図4参照)。換言すれば、操作部80をベース部52に押込んだ位置が、一対の把持爪部60が開く開位置であり、操作部80をベース部52から引張った状態が、一対の把持爪部60が閉じる閉位置ということになる。
鍔部86は、後述する閉力付加駆動部による引込力を受けるための部分である。すなわち、鍔部86は、棒状部82の他端部の外周から外方に突出するように形成されている。より具体的には、鍔部86は、棒状部82の外径よりも大きい外径を有する円形板状に形成されている(図10参照)。鍔部86は、棒状部82の他端部に、当該他端部の外周側に張出すようにボルト86a等によって取付けられている。この鍔部86によって、操作部80を容易に引張り移動させることができる。
環状循環回転体46の循環回転により複数の把持機構部50を循環移動させる際には、各把持機構部50の一対の把持爪部60は、環状循環回転体46の外周側に突出しており、上記操作部80の他端部は環状循環回転体46の内周側に突出している。そして、各把持機構部50が、一対の回転体44間の上方部分間を移動する際に、後述する開駆動部90によって操作部80を押込むことで、一対の把持爪部60が開かれる。また、後述する閉力付加駆動部100によって操作部80を引張ることで、一対の把持爪部60に対して閉方向への力を付加することができる。
開駆動部90について説明する。図6及び図7は把持機構部50と開駆動部90とを示す概略正面図である。図6は開駆動部90が操作部80を押していない状態を示しており、図7は開駆動部90が操作部80を押込んだ状態を示している。
すなわち、開駆動部90は、複数の把持機構部50の移動経路であって、処理ユニット22、30、24、26の一部である電線調尺切断ユニット22と、第1端子圧着ユニット24と、第2端子圧着ユニット26とに対応する位置に設けられている。また、開駆動部90は、外部搬送機構部28に対応する位置にも設けられている。そして、把持機構部50が、電線調尺切断ユニット22、第1端子圧着ユニット24、第2端子圧着ユニット26、外部搬送機構部28に対応する位置に搬送されると、当該把持機構部50の操作部80の他端部に対向する下方位置に、開駆動部90が配設されるようになっている。
開駆動部90は、操作部80を閉位置から開位置に向けて移動させて、一対の把持爪部60を開動作させるように構成されている。すなわち、開駆動部90は、エアシリンダ、油圧シリンダ等によって構成されており、シリンダ本体部91と、当該シリンダ本体部91に対して進退駆動可能なロッド部92とを備えている。ロッド部92の先端部には、円板状の押動部92aが設けられている。開駆動部90は、ロッド部92を上向きにした姿勢で、図示省略のブラケット等によって上記各位置に支持されている。
シリンダ本体部91にロッド部92が退避した状態では、ロッド部92の上方端部と把持機構部50の操作部80の他端部(下端部)との間に隙間(僅かな隙間)が設けられる。そして、複数の把持機構部50が上記のように搬送されることによって、操作部80の他端部(下端部)がロッド部92の上方位置に配設される。この状態では、一対の把持爪部60は付勢部70の付勢力によって閉方向に付勢され、閉じた状態となっている(図6参照)。
そして、ロッド部92が進出駆動されると、ロッド部92の先端部が操作部80の他端部(下端部)に当接し、当該操作部80を上方に押込む。これにより、受部66の端部が持上げられ、付勢部70の付勢力に抗して、一対の把持爪部60が開く。これにより、一対の爪先端部62cの間に電線10を配設し、或は、一対の把持爪部60の間の電線10を取出せるようになる(図7参照)。また、一対の爪先端部62cの間に電線10を配設した状態で、ロッド部92が退避駆動されると、付勢部70の付勢力によって一対の把持爪部60が閉じ、これにより、一対の爪先端部62cの間に電線10が把持されるようになる。
閉力付加駆動部100について説明する。図8は閉力付加駆動部100を示す正面図であり、図9は閉力付加駆動部100の引込部110と把持機構部50の操作部80とを示す部分側面図であり、図10は図9のX−X線断面図であり、図11は閉力付加駆動部100を示す正面図である。図8は閉力付加駆動部100が閉力を付加していない状態において一対の把持爪部60が電線10を把持している状態を示し、図11は閉力付加駆動部100が閉力を付加している状態において一対の把持爪部60が電線10を把持している状態を示している。
閉力付加駆動部100は、複数の把持機構部50の移動経路であって、処理ユニット22、30、24、26の他の一部であるゴム栓装着ユニット30に対応する位置に設けられている。そして、把持機構部50が、ゴム栓装着ユニット30に対応する位置に搬送されると、当該把持機構部50の操作部80の他端部に対向する下方位置に、閉力付加駆動部100が配設されるようになっている。
閉力付加駆動部100は、操作部80に対して閉位置側への力を付与することによって、一対の把持爪部60に対して閉方向の力を付加可能に構成されている。
すなわち、閉力付加駆動部100は、駆動本体部102と、引込部110とを備える。
駆動本体部102は、エアシリンダ、油圧シリンダ等によって構成されており、シリンダ本体部103と、当該シリンダ本体部103に対して進退駆動可能なロッド部104とを備えている。ロッド部104の先端部には、引込部110が取付けられている。この駆動本体部102は、ロッド部104を上向きにした姿勢で、図示省略のブラケット等によって上記ゴム栓装着ユニット30に対応する位置に支持されている。
引込部110は、筒状、ここでは、角筒状に形成されており、その内部には、鍔部86の直径よりも幅広でかつ鍔部86の厚みよりも大きい高さの空間112が形成されている。ここでは、空間112は、鍔部86を固定するためのボルト86aをも配設可能な形状に形成されている。
また、引込部110の外周部、ここでは、上方部分に、引込部110の内部空間112の延在方向に沿ってスリット114が形成されている。スリット114は、上記棒状部82が通過可能で、かつ、鍔部86の直径よりも小さい幅に設定されている。そして、棒状部82をスリット114内に配設しつつ、鍔部86を空間112内に配設できるようになっている。また、鍔部86を空間112内に配設した状態で、スリット114を挟む両側縁部115が、鍔部86の上方に配設されている。このため、引込部110を下方に移動させると、前記両側縁部115が鍔部86に当接し、操作部80を下方に引張るように引込み移動させることができるようになっている。
シリンダ本体部103に対してロッド部104が進出した状態では、一対の把持爪部60が閉じた状態又は一対の把持爪部60が電線10を把持して閉じた状態にある把持機構部50に対して、引込部110は、鍔部86を配設可能な位置に配設されている。従って、シリンダ本体部103に対してロッド部104が進出した状態で、把持機構部50が閉力付加駆動部100に対応する位置に搬送されると、棒状部82がスリット114を通りつつ、鍔部86が引込部110の空間112内に配設されるようになる(図8〜図10参照)。
そして、この状態からロッド部104が退避駆動されると、引込部110の上記両側縁部115が鍔部86に当接し、鍔部86を下方に移動させる。鍔部86の下方移動に伴い、操作部80も下方に移動する。すると、両受部66の端部も下方に引込まれ、一対の把持爪部60が支軸部56周りに閉方向に付勢される。これにより、電線10に対して、付勢部70の付勢力P1に応じた力に、閉力付加駆動部100による付勢力P2に応じた力を付加した力Pが作用し、比較的大きな力Pによって電線10が把持されることになる。
なお、本電線処理装置20の各処理ユニット22、30、24、26、回転駆動部48、開駆動部90、閉力付加駆動部100等は、制御ユニット120に接続されている(図1参照)。制御ユニット120は、CPU、ROMおよびRAM等を備える一般的なマイクロコンピュータによって構成されており、予め格納されたソフトウェアプログラムに従って、電線処理装置20の動作制御を行う。なお、制御ユニット120が行う処理の一部或は全部の機能が、専用の論理回路等でハードウエア的に実現されてもよい。
上記電線処理装置20の全体動作について、ゴム栓装着動作を中心にして説明する。
まず、複数の搬送機構部42のうちの2つが電線調尺切断ユニット22に対応する位置に移動すると、当該位置に設けられた一対の開駆動部90によって当該2つの搬送機構部42のそれぞれの一対の把持爪部60が開かれる。これにより、電線調尺切断ユニット22によって調尺切断された電線10の両端部が、当該2つの搬送機構部42のそれぞれの一対の把持爪部60によって把持される。
1つの電線10を把持した2つの搬送機構部42のうちの1つがゴム栓装着ユニット30に対応する位置に移動すると、図12〜図14に示すようにして、ゴム栓140の装着動作がなされる。
すなわち、ゴム栓装着ユニット30は、ゴム栓保持部32と、ゴム栓抑え部34と、ガイド部36とが装着対象となる電線10の軸方向に沿って重ね合せて配設された構成とされている。
ゴム栓保持部32には、ゴム栓140を収容可能なゴム栓保持孔32hが形成されている。ゴム栓抑え部34には、電線10を挿通可能な逃し孔34hと、ゴム栓140が通過可能なゴム栓供給孔34pとが形成されている。ゴム栓保持部32は、図示省略の駆動機構によって、ゴム栓保持孔32hを逃し孔34hに対して同一直線上に配設する位置と、ゴム栓保持孔32hをゴム栓供給孔34pに対して同一直線上に配設する位置との間で往復移動可能に構成されている。そして、ゴム栓保持孔32hをゴム栓供給孔34pに対して同一直線上に配設した状態で、ゴム栓保持孔32hに対するゴム栓140の供給がなされる。また、この状態からゴム栓保持部32を移動させて、ゴム栓保持孔32hを逃し孔34hに対して同一直線上に配設した状態で、後述するようにして、ゴム栓140の装着が行われるようになっている。
また、ガイド部36には、装着対象となる電線10側に向けて拡開するテーパ状のガイド凹部36hが形成されている。このガイド部36は、図示省略の駆動機構によって、ガイド凹部36hを2分割するように開閉可能に構成されている。
そして、図12に示すように、1つの電線10を把持した2つの搬送機構部42のうちの1つがゴム栓装着ユニット30に対応する位置に移動すると、操作部80の鍔部86が、閉力付加駆動部100の引込部110内の空間112内に配設される。この状態で、閉力付加駆動部100により引込部110が下降移動すると、操作部80が下方に引込まれ、この力によって、一対の把持爪部60が閉方向に付勢される。これにより、電線10が付勢部70の付勢力P1に応じた力に、閉力付加駆動部100による力P2に応じた力を付加した力Pで、把持された状態となる。
この状態で、図13に示すように、図示省略の駆動機構によって、ゴム栓装着ユニット30のゴム栓保持部32とゴム栓抑え部34とガイド部36とが重ね合された状態のまま電線10に向けて移動する。すると、電線10の端部がガイド凹部36hを通ってゴム栓保持孔32h内のゴム栓140内に挿入される。ゴム栓140を突出した電線10の端部は、逃し孔34h内に配設される。電線10がゴム栓140内に挿入される際、電線10に対しては、一対の把持爪部60に対して電線10の基端側に押込む力が作用する。しかしながら、電線10は、一対の把持爪部60によって比較的大きな力Pによって把持されているため、一対の把持爪部60に対して電線10は位置ずれし難い。このため、ゴム栓保持部32の進出移動量に応じて、ゴム栓140を電線10に対してなるべく正確な位置で装着できることになる。
この後、ガイド部36が開き、図14に示すように、ゴム栓装着ユニット30のゴム栓保持部32とゴム栓抑え部34とガイド部36とが重ね合された状態のまま電線10から退避移動する。また、閉力付加駆動部100の駆動により引込部110が元の位置に上昇移動すると、把持機構部50は下流側に向けて移動可能な状態となる。
電線10の両端部を把持した一対の揺動支持部54は、さらに下流側に搬送される。そして、第1端子圧着ユニット24、第2端子圧着ユニット26の各位置で、電線10の端部に端子が圧着され、外部搬送機構部28の位置で電線10が外部に搬送される。
上記を連続的に行うことで、ゴム栓140が装着されると共に、端部に端子が圧着された端子付電線が連続的に製造される。
以上のように構成された電線処理装置20及び電線搬送装置40によると、各搬送機構部42において付勢部70の付勢力によって一対の把持爪部60を閉じて電線10を把持できる。また、複数の処理ユニット22、30、24、26の一部の処理ユニット22、24、26では、開駆動部90の駆動によって付勢部70の付勢力に抗して一対の把持爪部60を開いて、当該一対の把持爪部60に対する電線10の授受を行うことができる。また、複数の処理ユニット22、30、24、26の他の一部の処理ユニット30では、閉力付加駆動部100の駆動によって一対の把持爪部60に閉力を付加して、電線10の把持力を大きくすることができる。
このため、各搬送機構部に対して、ゴム栓の挿入力に耐え得るような構成、例えば、大きなバネ定数を持つバネを組込む必要がなくなる。また、開駆動部として、当該大きなバネ定数を持つバネの付勢力に抗して一対の把持爪部を開くことができるような、大きな推力のエアシリンダ等を用いる必要もなくなる。さらに、閉力付加駆動部100としても、一対の把持爪部60に閉力を付加できればよいため、それ程大きな推力のエアシリンダ等を用いなくてもよい。また、一対の把持爪部60が大きな把持力を発揮するのは、一時的であるため、一対の把持爪部60の剛性をそれ程高くする必要はない。結果、設備コストアップ及び設備の大型化を抑制でき、設備の低コスト化及び小型化、設備の製造期間の短縮等を実現できる。
なお、上記実施形態では、閉力付加駆動部100をゴム栓装着ユニット30に対応する位置に設けた例で説明したが、ゴム栓装着ユニット30に代えて、又は、ゴム栓装着ユニット30に加えて、他の処理ユニット、特に、電線10を大きな把持力で把持することが要請されるユニットに設けてもよい。
また、通常、端子付電線を製造する際には、一対の把持爪部60を開く処理数は、一対の把持爪部60に対して閉力を付加する処理数よりも多くなる。また、上記開駆動部90の構成よりも閉力付加駆動部100の構成の方が複雑であることから理解できるように、操作部80を押込むための構成は、操作部80を引込むための構成よりも簡易とし易い。そこで、操作部80を押込むことで一対の把持爪部60を開き、操作部80を引込むことで一対の把持爪部60に対して閉力を付加するようにすることで、設備全体をより簡易な構成とすることができる。
もっとも、操作部を押すことで一対の把持爪部に対して閉力が付加され、操作部を引込むことで一対の把持爪部が開かれるように、操作部と一対の把持爪部とが連結されてもよい。
なお、操作部の突出方向は、ベース部52の下方である必要はなく、その側方又は上方に突出しており、側方から又は上方から押し引きされる構成であってもよい。
また、操作部80は、棒状部82と鍔部86とを含み、閉力付加駆動部100は、内部に鍔部86を配設可能な筒形状に形成されると共に外周部に棒状部82が通過可能なスリット114が形成された引込部110を含むため、把持機構部50が閉力付加駆動部100に対応する位置に移動すると、鍔部86が引込部110内に配設され、スリット114の両側縁部115が鍔部86に引っ掛かり可能な状態となる。これにより、引込部110の移動により操作部80をより確実に引込み操作することができる。
また、鍔部86は、円形板状に形成されているため、棒状部82に対して如何なる回転姿勢で鍔部86を取付けても、当該鍔部86を引込部110内に配設することができる。このため、棒状部82に対する鍔部86の取付姿勢に関する制約を少なくできる。これにより、鍔部86を棒状部82に間単位取付けることができる。
もっとも、鍔部は、楕円板状、方形板状等、他の板形状であってもよい。また、閉力付加駆動部が操作部を引込むための構成は、上記例に限られない。操作部の下端部の周方向の一部に突出部分が形成されており、閉力付加駆動部のロッド部の先端部の突出部分が操作部の突出部分に上方から当接する構成であればよい。
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。